説明

発光装置および電子機器

【課題】絶縁層のコンタクトホールに起因した光量のムラを抑制する。
【解決手段】駆動トランジスタTdrを覆う第2絶縁層42の表面には第1電極61が形成
される。第1電極61は、第2絶縁層42のコンタクトホールCHを介して駆動トランジ
スタTdrのドレイン電極34に接触する。第1電極61とこれに対向する第2電極62と
の間には発光層66が形成される。発光層66はコンタクトホールCHの内側の空間に入
り込む。発光層66からの放射光の出射側には補助配線70が形成される。補助配線70
は、第2電極62よりも抵抗率が低い導電材料によって形成されて第2電極62に電気的
に接続される配線であり、第2絶縁層42のコンタクトホールCHと重なり合う部分を含
む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(ElectroLuminescent)材料など各種の発光材料によって形成され
た発光層を有する発光装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
発光層による発光を制御するためにスイッチング素子(典型的にはトランジスタ)を利
用したアクティブマトリクス方式の発光装置が従来から提案されている。この種の発光装
置は、基板の面上に形成されたスイッチング素子と、このスイッチング素子を覆う絶縁層
と、絶縁層の面上に形成された第1電極および第2電極と、両電極の間に介挿された発光
層とを含む。第1電極は、絶縁層に形成されたコンタクトホールを介して、スイッチング
素子の電極(ドレイン電極またはソース電極)に電気的に接続される(例えば特許文献1
)。
【特許文献1】特開2002−318556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この構成においては、太陽光や照明光などの外光が絶縁層のコンタクト
ホールを通過してスイッチング素子の電極に到達し、その表面における反射光(以下「不
要反射光」という)が観察側に出射する場合がある。この不要反射光は、発光層からの出
射光とは特性(例えば光量や分光特性)が相違するから、発光装置の面内における光量(
輝度)のバラツキの原因となる。
【0004】
また、例えば、絶縁層の表面上だけでなくコンタクトホールの内側にも入り込むように
発光層が形成された構成においては、発光層のうちコンタクトホールの内周面に沿った部
分からも光(以下「不要放射光」という)が出射する。しかしながら、発光層のうち絶縁
層の表面上に位置する部分とコンタクトホールの内側に入り込んだ部分とでは膜厚が相違
するから、前者の部分からの出射光と後者の部分から出射する不要放射光とは光量や分光
特性が相違する。したがって、この構成における不要放射光も発光装置の面内における光
量のバラツキ(ムラ)の原因となり得る。
【0005】
以上に説明したように、スイッチング素子と第1電極とが絶縁層のコンタクトホールを
介して導通する構成においては、コンタクトホールの底面に位置する電極での不要反射光
やコンタクトホールの内側に入り込んだ発光層からの不要放射光に起因して光量にムラが
発生する(発光の均一性が損なわれる)という問題があった。このような事情を背景とし
て、本発明は、絶縁層のコンタクトホールに起因した光量のムラを抑制するという課題の
解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明に係る発光装置は、基板の面上に形成されたスイッ
チング素子(例えば図2の駆動トランジスタTdr)と、前記スイッチング素子を覆う絶縁
層(例えば図3の第2絶縁層42)と、前記絶縁層の面上に形成され、当該絶縁層のコン
タクトホール(例えば図2や図3のコンタクトホールCH)を介して前記スイッチング素
子に電気的に接続される第1電極と、前記第1電極を挟んで前記基板とは反対側に形成さ
れた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在するとともに前記コンタクト
ホールの内側の空間に入り込む発光層と、前記絶縁層に対して前記発光層による放射光の
出射側に配置され、前記基板に垂直な方向からみて前記コンタクトホールと重なり合う部
分を含む遮光体(例えば各実施形態における補助配線70や遮光層81)とを具備する。
【0007】
この構成においては、コンタクトホールと重なり合う遮光体が発光層による放射光の出
射側(観察側)に配置される。したがって、太陽光や照明光などの外光は遮光体によって
遮断されるからコンタクトホールやスイッチング素子(特にその電極)には到達しない。
また、仮に外光がコンタクトホールを通過してスイッチング素子に到達した場合であって
も、その表面における不要反射光は遮光体によって遮断される。
【0008】
また、この構成においては、発光層がコンタクトホールの内側に入り込んだ構成とされ
るから、コンタクトホールに入り込んでその窪みを埋める絶縁性の部材は原理的には不要
である。したがって、発光装置の製造工程の簡素化や製造コストの低減が図られるという
利点がある。一方、本発明のように発光層がコンタクトホールの内側に入り込んだ構成に
おいては、発光層のうちコンタクトホールの内周面に沿った部分から不要放射光が出射す
るが、この不要放射光は遮光体によって遮断される。このように本発明によれば、不要反
射光だけでなく不要放射光についても観察側への出射が防止される。したがって、コンタ
クトホールに起因した光量のムラを抑制することができる。
【0009】
なお、本発明における「絶縁層に対して発光層による放射光の出射側」とは、発光層か
らの放射光の出射が本来的に予定された側という意味である。例えば、第1電極が光透過
性を有するボトムエミッション型の発光装置においては、絶縁層からみて基板側が「発光
層による放射光の出射側」に相当する。また、第2電極が光透過性を有するトップエミッ
ション型の発光装置においては、絶縁層からみて基板とは反対側が「発光層による放射光
の出射側」に相当する。また、例えば発光装置の用途に着目すると、例えば発光装置が表
示装置として利用される場合には、絶縁層に対して観察側(すなわち発光装置による表示
画像を視認する観察者が位置する側)が「発光層による放射光の出射側」に相当し、感光
体ドラムなどの感光体を露光する露光装置(露光ヘッド)として発光装置が利用される場
合には、絶縁層に対して感光体側が「発光層による放射光の出射側」に相当する。
【0010】
コンタクトホールの内側の空間に発光層が入り込む構成の典型例は、発光層が複数の画
素(各々がスイッチング素子と第1電極とを含む)にわたって連続に分布する態様である
。この態様によれば、発光層を画素ごとに区分するための仕組み(例えば基板上の空間を
画素ごとに仕切る隔壁)が不要となるから、発光装置の製造工程の簡素化や製造コストの
低減を実現することができる。
【0011】
遮光体の光反射率がスイッチング素子の電極よりも高い場合、コンタクトホールに起因
した発光の不均一性は確かに解消されるものの、今度は遮光体における外光の反射光が発
光の均一性に影響を与える可能性もある。そこで、本発明の好適な態様において、スイッ
チング素子は、コンタクトホールを介して絶縁層から露出した部分が第1電極に接触する
電極(例えば図2や図3のドレイン電極34)を含み、遮光体は、スイッチング素子の電
極よりも光反射率が低い材料によって形成される。この構成によれば、スイッチング素子
の電極よりも光反射率が低い材料によって遮光体が形成されるから、コンタクトホールに
おける反射光の影響と遮光体における反射光の影響とを双方とも解消して発光の均一性を
増進することができる。
【0012】
第2電極の抵抗値が高い場合には第2電極における電圧降下に起因して発光層における
発光の均一性が損なわれる可能性がある。第2電極がITO(Indium Tin Oxide)やIZ
O(Indium Zinc Oxide)など高抵抗の材料によって形成された構成(トップエミッショ
ン型)や、第2電極が広範囲にわたって連続に分布する構成においては、第2電極におけ
る電圧降下が特に顕著となるから、発光の不均一性はいっそう深刻である。
そこで、本発明の好適な態様において、第2電極よりも抵抗率が低い導電材料によって
形成されて当該第2電極に電気的に接続される補助配線が遮光体として利用される。この
態様によれば、第2電極に導通する補助配線によって電圧降下が抑制されるから、第2電
極の面内における電圧降下に起因した発光の不均一性は抑制される。なお、この態様の具
体例は第1実施形態(図2・図3)、第2実施形態(図5・図6)、第5実施形態(図1
1・図12)として後述される。
【0013】
なお、以上においては補助配線が遮光体として兼用される構成を例示したが、本発明に
おいては、遮光体とは別個に補助配線が形成された構成も採用される。この後者の構成に
おいて、良好な光透過性を有する材料によって補助配線が形成されるならば特段の問題は
発生しない。しかしながら、第2電極よりも抵抗率が低いという条件を満たすためには、
補助配線の材料として遮光性の導電材料を採択せざるを得ない場合が多い。そして、遮光
体とは別個に遮光性の補助配線が形成された構成においては、補助配線が形成されない構
成と比較すると、補助配線のぶんだけ開口率(画素が分布する領域のうち実際に光が出射
する領域の占める割合)が低下するという問題がある。これに対し、以上に例示したよう
に補助配線が遮光体として兼用される態様によれば、補助配線が遮光体から独立して形成
された構成と比較して開口率が向上するという利点がある。また、開口率が増加するとい
うことは、所期の光量を発光装置から出射するために発光層に供給されるべき電気エネル
ギが低減されることを意味する。発光層(特に有機EL材料)は高い電気エネルギが供給
されるほど特性の劣化が進行するから、発光層に供給される電気エネルギを低減できる本
態様によれば、補助配線によって開口率が制約される構成と比較して、発光層の寿命(発
光量や発光効率などの特性値が所定値に低下するまでの時間長)を長期化することができ
るという利点がある。
【0014】
補助配線が遮光体として利用される態様において、この補助配線は、基板に垂直な方向
からみて、コンタクトホールの内周縁に包囲された領域(開口領域)の全域と重なり合う
。この態様によれば、コンタクトホールに起因した不要反射光や不要放射光のうち遮光体
によって遮断される割合を増大させることができる。この態様の具体例は第1実施形態(
図2・図3)として後述される。なお、マスクを利用した蒸着などの成膜技術によって遮
光体(補助配線)が形成される場合には、たとえコンタクトホールの開口領域の全域と重
なり合うように遮光体を形成しようとしても、製造上のバラツキ(マスクのズレ)に起因
して遮光体の位置に誤差が生じる場合がある。このように誤差を原因として開口領域の一
部が遮光体と重なり合わない構成であっても、設計上において遮光体が開口領域の全域と
重なり合う以上は、本態様の「コンタクトホールの内周縁に包囲された領域の全域と重な
り合う」という要件を充足すると言える。
もっとも、補助配線が、基板に垂直な方向からみて、コンタクトホールの内周縁に包囲
された領域の一部(例えば図6における領域A1)のみと重なり合う構成としてもよい。
この構成において、より望ましくは、コンタクトホールの内周縁に包囲された領域のうち
補助配線と重なり合わない領域(例えば図6における領域A2)に重なり合う部分を含む
遮光層がさらに配置される。この構成によれば、補助配線によって遮断されない不要反射
光や不要放射光が遮光層によって遮断される。したがって、コンタクトホールの開口の全
域と重なるように補助配線が形成された態様と同様に、コンタクトホールに起因した不要
反射光や不要放射光のうち遮光体によって遮断される割合を増大させることができる。な
お、この態様の具体例は、例えば第2実施形態(図5・図6)として後述される。
【0015】
以上においては補助配線が遮光体として兼用される構成を例示したが、遮光体とは別個
に補助配線が配置された構成も採用される。この態様のもとで補助配線が光反射性を有す
るならば、補助配線の表面における反射光(外光)によって発光の均一性が損なわれる可
能性がある。そこで、より好適な態様において、遮光体は、基板に垂直な方向からみて補
助配線と重なり合う。この態様によれば、コンタクトホールにおける不要反射光や不要放
射光はもちろん補助配線の表面における反射光も遮光体によって遮断されるから、発光の
均一性を維持することが可能である。換言すると、補助配線の材料として光反射性の導電
材料を採択した場合であっても発光の不均一性が阻害されないのであるから、補助配線の
材料の選択の余地を拡大することができるという利点がある。なお、この態様の具体例は
、例えば第3実施形態(図7・図8)および第4実施形態(図9・図10)として後述さ
れる。
【0016】
本発明の他の態様において、遮光体は所定の方向に延在し、コンタクトホールは、基板
に垂直な方向からみて所定の方向を長手とする形状に形成される。この態様によれば、コ
ンタクトホールの面積が充分に確保されるから、第1電極とスイッチング素子との接触部
分での抵抗を低減し、あるいは両者の導通の確実性を増進することができる。
【0017】
本発明の発光装置は、トップエミッション型およびボトムエミッション型の何れにも適
用される。トップエミッション型の発光装置においては、第2電極が発光層からの出射光
を透過させる。ボトムエミッション型の発光装置においては、第1電極が発光層からの出
射光を透過させる。ボトムエミッション型の発光装置の好適な態様において、スイッチン
グ素子は、コンタクトホールを介して絶縁層から露出した部分が第1電極に接触する電極
(例えば図11や図12のドレイン電極34)を含み、遮光体は、スイッチング素子の電
極よりも光反射率が低い材料によってスイッチング素子の電極と基板との間に形成されて
当該電極に対向する。この態様によっても、スイッチング素子の電極における反射光が遮
光体によって遮断されるから、発光の均一性を維持することができる。なお、ボトムエミ
ッション型の発光装置の具体例は第5実施形態(図11・図12)として後述される。
【0018】
なお、以上に例示したボトムエミッション型の発光装置において、補助配線が遮光体と
して兼用される構成も採用される。この構成において、補助配線は、絶縁層のコンタクト
ホール(例えば図11のコンタクトホールCH5)を介して第2電極に電気的に接続され
る。また、遮光体は、スイッチング素子を構成する要素(例えば図11や図12のゲート
電極242)と同一の材料によって形成されることが望ましい。この態様によれば、単一
の導電膜のパターニングによってスイッチング素子の電極と遮光体とをひとつの工程で一
括的に形成することができるから、遮光体がスイッチング素子とは別個の工程で形成され
る場合と比較して、製造工程の簡素化や製造コストの低減が図られる。
【0019】
本発明に係る発光装置は各種の電子機器に利用される。この電子機器の典型例は、発光
装置を表示装置として利用した機器である。この種の電子機器としては、パーソナルコン
ピュータや携帯電話機などがある。もっとも、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示
に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体に潜像を形成
するための露光装置(露光ヘッド)としても本発明の発光装置を適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る発光装置の電気的な構成を示すブロック図である
。この発光装置Dは、各種の電子機器に搭載されて画像を表示する表示装置であり、図1
に示すように、X方向に延在する複数の選択線11と、X方向と直交するY方向に延在す
る複数の信号線13とを有する。選択線11と信号線13との各交差には画素Pが配置さ
れる。したがって、これらの画素Pは所定の領域(以下「発光領域」という)内にてX方
向およびY方向にわたってマトリクス状に配列する。
【0021】
ひとつの画素Pは、電流の供給によって発光する発光素子Eと、この発光素子Eに供給
される電流を制御するための駆動トランジスタTdrおよび選択トランジスタTslとを含む
。発光素子Eは、有機EL材料からなる発光層66を第1電極61と第2電極62との間
に介在させた素子である。発光層66は、第1電極61から第2電極62に流れる電流に
応じた輝度(光量)で発光する。
【0022】
駆動トランジスタTdrは、発光素子Eに供給される電流量を制御するためのスイッチン
グ素子であり、ソース電極が電源線15に接続される。電源線15には高位側の電源電位
Vddが供給される。駆動トランジスタTdrのゲート電極とソース電極との間には、駆動ト
ランジスタTdrのゲート電極の電位を保持するための容量素子Cが介挿される。また、駆
動トランジスタTdrのドレイン電極は発光素子Eの第1電極61に接続される。発光素子
Eの第2電極62には補助配線70を介して低位側の電源電位Gndが供給される。なお、
補助配線70の作用やその具体的な形態については後述する。
【0023】
一方、選択トランジスタTslは、駆動トランジスタTdrのゲート電極と信号線13との
間に介在して両者の電気的な接続を制御するスイッチング素子である。この選択トランジ
スタTslのゲート電極は選択線11に接続される。なお、本実施形態においては駆動トラ
ンジスタTdrがpチャネル型で選択トランジスタTslがnチャネル型である構成を例示す
るが、各々の導電型は任意に変更され得る。
【0024】
選択線11に供給される選択信号がアクティブレベルに遷移して選択トランジスタTsl
がオン状態に変化すると、画素Pに指定された階調に応じたデータ電位Vdataが信号線1
3から選択トランジスタTslを経由して駆動トランジスタTdrのゲート電極に供給される
。このときに容量素子Cにはデータ電位Vdataに応じた電荷が蓄積されるから、選択線1
1が非アクティブレベルに遷移して選択トランジスタTslがオフ状態に変化しても、駆動
トランジスタTdrのゲート電極はデータ電位Vdataに維持される。発光素子Eには、駆動
トランジスタTdrのゲート電極の電位に応じた電流(すなわちデータ電位Vdataに応じた
電流)が供給される。この電流の供給によって発光素子Eはデータ電位Vdataに応じた輝
度(光量)で発光する。
【0025】
次に、図2は、ひとつの画素Pの具体的な構成を示す平面図であり、図3は、図2にお
けるIII−III線からみた断面図である。なお、図2は平面図であるが、各要素の把握を容
易化するために、図3と共通する各要素については図3と同じ態様のハッチングが施され
ている。以下の各実施形態に係る平面図(図5、図7、図9、図11)においても同様で
ある。また、図2においては、図1の発光層66や第2電極62の図示が便宜的に省略さ
れている。
【0026】
図3に示すように、駆動トランジスタTdrや発光素子Eといった図1の各要素は基板1
0の表面上に形成される。基板10は、ガラスやプラスチックなど各種の絶縁性材料を略
長方形状に成形した板状の部材である。なお、基板10を覆う絶縁性の膜体(例えば酸化
珪素や窒化珪素などの膜体)を下地として各画素Pの要素を形成してもよい。以下では、
基板10からみて駆動トランジスタTdrや発光素子Eが形成された側(すなわち図3にお
ける上方)を「観察側」と表記する。すなわち、「観察側」とは、発光装置Dによって表
示された画像を視認する観察者の側である。
【0027】
図2および図3に示すように、駆動トランジスタTdrは、基板10の面上に形成された
半導体層31と、基板10の全面に形成されて半導体層31を覆うゲート絶縁層40と、
ゲート絶縁層40を挟んで半導体層31に対向するゲート電極242と、ソース電極33
およびドレイン電極34とを含む。半導体層31は、シリコンなどの半導体材料によって
略矩形に形成された膜体である。
【0028】
図2に示すように、ゲート絶縁層40の面上には中間導電体24が形成される。この中
間導電体24のうちX方向に延在して半導体層31に重なり合う部分がゲート電極242
である。図3に示すように、半導体層31は、ゲート絶縁層40を挟んでゲート電極24
2に対向するチャネル領域31cと、このチャネル領域31cを挟むソース領域31sおよ
びドレイン領域31dとを含む。
【0029】
図3に示すように、半導体層31やゲート電極242(中間導電体24)が形成された
基板10の表面はその全域にわたって第1絶縁層41に覆われる。ソース電極33やドレ
イン電極34は第1絶縁層41の面上に形成される。ソース電極33は、図2に示すよう
に、X方向に延在する電源線15の部分であり、第1絶縁層41とゲート絶縁層40とを
貫通するコンタクトホールCH1aを介して半導体層31のソース領域31sに導通する。
【0030】
ドレイン電極34は、第1部分341と第2部分342とが連続する形状に成形される
。第1部分341は、第1絶縁層41とゲート絶縁層40とを貫通するコンタクトホール
CH1bを介して半導体層31のドレイン領域31dに導通する。第2部分342は、図2
に示すようにX方向に延在する部分である。
【0031】
図2に示すように、中間導電体24は、電源線15に重なり合う電極部244とゲート
電極242からY方向に延在して電源線15と交差する配線部246とを含む。電極部2
44と電源線15とが第1絶縁層41を挟んで対向することによって図1の容量素子Cが
構成される。
【0032】
一方、選択トランジスタTslは、図2に示すように、基板10の面上に形成された半導
体層51と、ゲート絶縁層40を挟んで半導体層51のチャネル領域に対向するゲート電
極112と、ゲート電極112を覆う第1絶縁層41の面上に形成されたドレイン電極5
3およびソース電極54とを含む。ゲート電極112は、X方向に延在する選択線11か
らY方向に分岐して半導体層51に重なる部分である。選択線11と中間導電体24とは
共通の導電膜のパターニングによって同一の工程で一括的に形成される。同様に、ドレイ
ン電極53およびソース電極54と、駆動トランジスタTdrのソース電極33(電源線1
5)およびドレイン電極34とは、単一の導電膜のパターニングによって同じ工程で形成
される。
【0033】
ドレイン電極53は、第1絶縁層41とゲート絶縁層40とを貫通するコンタクトホー
ルCH2bを介して半導体層51のドレイン領域に導通する。同様に、ソース電極54は、
コンタクトホールCH2aを介して半導体層51のソース領域に導通する。また、ソース電
極54は、第1絶縁層41を貫通するコンタクトホールCH3を介して中間導電体24の
配線部246に導通する。これによって選択トランジスタTslのソース電極54と駆動ト
ランジスタTdrのゲート電極242とが電気的に接続される。
【0034】
図2に示すように、図1の信号線13は、電源線15の下層にてY方向に延在して電源
線15と交差する交差部131と、各電源線15の間隙にてY方向に延在する配線部13
2とを含む。交差部131は、選択線11や中間導電体24と共通の導電膜から形成され
る。配線部132は、トランジスタTdrのソース電極33やドレイン電極34と共通の導
電膜から形成される。配線部132の端部13aは第1絶縁層41のコンタクトホールC
H4aを介して交差部131に導通する。同様に、配線部132の端部13bは第1絶縁層
41のコンタクトホールCH4bを介して交差部131に導通する。以上のように各交差部
131と各配線部132との電気的な接続によって信号線13が構成される。選択トラン
ジスタTslのドレイン電極53は、配線部132のうち半導体層51と重なり合う部分で
ある。
【0035】
図3に示すように、電源線15やドレイン電極34が形成された第1絶縁層41の表面
はその全域にわたって第2絶縁層42に覆われる。第1絶縁層41や第2絶縁層42は、
例えば酸化珪素や窒化珪素といった絶縁材料によって形成される。図2および図3に示す
ように、第2絶縁層42のうち基板10に垂直な方向からみてドレイン電極34の第2部
分342と重なり合う部分には、第2絶縁層42を厚さ方向に貫通するコンタクトホール
CHが形成される。したがって、第2部分342はコンタクトホールCHを介して第2絶
縁層42から露出する。図2のように基板10に垂直な方向からみると、コンタクトホー
ルCHは、X方向を長手とする略長方形である。
【0036】
第2絶縁層42の面上(コンタクトホールCH以外の表面)には略長方形の反射層44
が画素Pごとに相互に離間して形成される。反射層44は、アルミニウムや銀などの合金
またはこれらを主成分とする合金など光反射性を有する材料によって形成された膜体であ
り、発光層66から基板10側への出射光を観察側(図3の上方)に反射する。さらに、
第2絶縁層42の表面上には、発光素子Eの陽極として機能する第1電極61(図1参照
)が画素Pごとに相互に離間して形成される。第1電極61は、反射層44を覆う略長方
形の電極であり、例えばITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)な
ど光透過性の導電材料によって形成される。図2および図3に示すように、第1電極61
は、第2絶縁層42のコンタクトホールCHに入り込んで駆動トランジスタTdrのドレイ
ン電極34(第2部分342)に接触する。この接触によって第1電極61と駆動トラン
ジスタTdrとが電気的に接続される。
【0037】
第1電極61は、スパッタリングや真空蒸着といった各種の成膜技術によって、コンタ
クトホールCHの外形の寸法に対して充分に薄い膜厚に形成される。したがって、図3に
示すように、第1電極61には、第2絶縁層42の膜厚とコンタクトホールCHの外形と
を反映した凹部(窪み)611が形成される。すなわち、第1電極61のうちドレイン電
極34に接触する部分が凹部611の底面部に相当し、第1電極61のうちコンタクトホ
ールCHの内周面を覆う部分が凹部611の側面部に相当する。
【0038】
図1の発光層66は第2絶縁層42の表面上に形成される。図1においては発光層66
が便宜的に画素Pごとに図示されているが、実際の発光層66は、図3に示すように、複
数の画素Pにわたって連続に分布するように基板10の全域に形成されて各第1電極61
を覆う。なお、第1電極61は画素Pごとに相互に離間して形成されるから、発光層66
が複数の画素Pにわたって連続するとは言っても、発光層66からの発光量は画素Pごと
に個別に制御される。
【0039】
本実施形態のように発光層66が複数の画素Pにわたって連続に分布する構成によれば
、各画素Pの発光層66をひとつの工程で一括的に形成することができる。また、発光層
66の形成には、スピンコート法に代表される印刷技術など、それ以外の成膜技術と比較
して低廉な方法を採用することができる。加えて、発光層66を画素Pごとに仕切るため
の仕組み(例えば基板10の表面上に格子状に形成された隔壁)を形成する必要はない。
したがって、発光層66が画素Pごとに区分される構成と比較して製造工程の簡素化や製
造コストの低減が実現される。なお、発光層66は高分子材料および低分子材料の何れに
よって形成されてもよい。また、発光層66による発光を促進ないし効率化するための各
種の機能層(正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子
ブロック層)が発光層66に積層された構成も採用される。
【0040】
図3に示すように、発光層66のうちコンタクトホールCHと重なり合う部分は、第1
電極61の凹部611の内側(コンタクトホールCHの内側の空間)に入り込み、この凹
部611の内周面と底面とに接触する。発光層66はコンタクトホールCHの外形の寸法
と比較して充分に薄い膜厚に形成されるから、発光層66の表面には第1電極61の凹部
611の段差を反映した凹部(窪み)が現れる。
【0041】
図3に示すように、第2電極62は、基板10の全域にわたって連続に分布して発光層
66を覆う電極である。本実施形態の第2電極62は、ITOやIZOなど光透過性の導
電材料によって形成される。したがって、発光層66から基板10とは反対側に出射した
光と、発光層66から基板10側に出射して反射層44の表面で反射した光とは、第2電
極62を透過して観察側に出射する。すなわち、本実施形態の発光装置Dは、発光素子E
による放射光が基板10とは反対側に出射するトップエミッション型である。
【0042】
光透過性を有する導電材料の多くは抵抗率が高いから、この種の材料によって形成され
た第2電極62は高抵抗となってその面内における電圧降下が顕著となる。したがって、
各発光素子Eに供給される電位が第2電極62の面内における位置に応じて相違し、この
結果として発光領域における光量のムラ(輝度や階調のムラ)が発生する場合がある。
【0043】
この光量のバラツキを解消するために、本実施形態においては、第2電極62の導電性
を補助するための補助配線70が形成される。補助配線70は、第2電極62よりも抵抗
率が低い導電材料によって形成される。本実施形態の補助配線70は、第2電極62の表
面に接触するように形成されて第2電極62と電気的に導通する。この構成によれば、電
流の大部分は低抵抗の補助配線70を流れるから、第2電極62における電圧降下は抑制
される。したがって、各発光素子Eに供給される電位が均一化され、この結果として電圧
降下に起因した光量のムラを有効に抑制することができる。本実施形態の補助配線70は
遮光性の導電材料によって形成される。より好適には、ドレイン電極34よりも光反射率
が低い材料によって補助配線70が形成される。
【0044】
図4は、本実施形態における補助配線70の具体的な形態を例示する平面図である。同
図においては各第1電極61の外形が破線で併記されている。図4に示すように、補助配
線70は、画素Pの各行に対応してX方向に延在する複数の第1部分71と、画素Pの各
列に対応してY方向に延在する複数の第2部分72とが交差した格子状に成形される。も
っとも、補助配線70の形状は図4の例示に限定されない。例えば、X方向に延在する複
数の第1部分71のみを含む形状としてもよい。
【0045】
補助配線70の第1部分71は、図2に示すように基板10に垂直な方向からみると、
第2絶縁層42のコンタクトホールCHと重なり合う。さらに詳述すると、本実施形態の
第1部分71は、X方向に延在するコンタクトホールCHの幅(Y方向の寸法)と略同一
の幅またはこれよりも幅広に形成される。したがって、図2および図3に示すように、第
1部分71は、基板10に垂直な方向からみてコンタクトホールCHの内周縁が包囲する
領域(以下「開口領域」という)の全域と重なり合う。
【0046】
ところで、駆動トランジスタTdrのドレイン電極34の材料として採択され得る導電材
料の多くは光反射性を有する。したがって、補助配線70が形成されない従来の構成にお
いては、太陽光や照明光などの外光が観察側からドレイン電極34の表面に到達し、その
表面における反射光(不要反射光)が観察側に出射する場合がある。そして、この不要反
射光の特性と発光層66からの出射光の特性との相違に起因して、発光領域の面内におけ
る光量の均一性が損なわれるという問題がある。これに対し、本実施形態においては、遮
光性の補助配線70がコンタクトホールCHの開口領域の全域と重なり合うように形成さ
れる。したがって、観察側からドレイン電極34に向かう外光は補助配線70の観察側の
表面にて遮断される。また、仮に外光がドレイン電極34に到達したとしても、その表面
における不要反射光は補助配線70の基板10側の表面にて遮断される。以上のように、
本実施形態によれば不要反射光の観察側への出射が防止されるから、発光領域の面内にお
ける光量(輝度または階調)を均一化することができる。
【0047】
また、図3に示すように、発光層66のうち第1電極61の凹部611の内周面を覆う
部分661は、それ以外の部分と同様に第1電極61と第2電極62との間に介在する。
したがって、各発光素子Eの駆動に際しては部分661からも光(すなわち不要放射光)
が出射する。しかしながら、この不要放射光の特性(光量や分光特性)は発光層66のう
ち第2絶縁層42の表面上に位置する平坦な部分からの出射光の特性とは相違するから、
不要放射光を観察側に出射させた場合には発光装置Dの発光の均一性が損なわれる。また
、発光層66のうち部分661以外の部分からの出射光と部分661からの不要放射光と
が相互に干渉し合い、この結果として観察側への出射光が特定の色味を呈する可能性もあ
る。本実施形態においては、コンタクトホールCHと重なり合うように補助配線70が形
成されるから、凹部611から観察側に向かう不要放射光が補助配線70によって遮断さ
れる。以上のように、本実施形態によれば、不要放射光および不要反射光の双方を遮断し
て発光領域における光量を均一化することができる。
【0048】
なお、本実施形態においては補助配線70がコンタクトホールCHと重なり合う構成を
例示したが、以上の効果を実現するための構成としては、例えば、補助配線70とは別個
の遮光性の物体(以下「遮光体」という)がコンタクトホールCHと重なり合うように形
成された構成も考えられる。この構成において、補助配線70はコンタクトホールCHと
重なり合わないように形成される(例えば図8や図10を参照)。しかしながら、この構
成においては、コンタクトホールCHおよび補助配線70の双方の領域が発光に寄与しな
い領域(いわゆるデッドスペース)となるから、発光装置Dの開口率(画素Pが分布する
発光領域のうち実際に光が出射する領域の占める比率)が制約されるという問題がある。
これに対し、本実施形態においては、補助配線70がコンタクトホールCHの遮光体とし
て兼用されるから、以上の構成と比較して開口率を増加させることができる。なお、本実
施形態において開口率を増加させ得るということは、所期の光量を発光装置Dから放射す
るために発光層66に供給されるべき電気エネルギが低減されることを意味する。発光層
66は高い電気エネルギが供給されるほど特性の劣化が促進されるから、本実施形態によ
れば、開口率の増加によって発光層66の寿命が長期化されると言うこともできる。
【0049】
また、駆動トランジスタTdrと第1電極61とを確実に導通させるためには、コンタク
トホールCHの面積(すなわち第1電極61とドレイン電極34とが接触する面積)が充
分に確保されることが望ましい。しかしながら、補助配線70とコンタクトホールCHと
が重なり合わない構成のもとでコンタクトホールCHの面積を拡大すると、その拡大分だ
け開口率が低下するという問題がある。これに対し、本実施形態においては、コンタクト
ホールCHと重なり合うように補助配線70が形成されるから、補助配線70によって覆
われる領域の範囲内であればコンタクトホールCHの面積を拡大しても開口率は低下しな
い。したがって、本実施形態によれば、図2に示すようにX方向に長尺の形状とすること
でコンタクトホールCHの面積を充分に確保することができ、この結果として駆動トラン
ジスタTdrと第1電極61との接触部分での抵抗を低減することができる。
【0050】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下に示す各形態の発光装置D
のうち第1実施形態と同様の要素については共通の符号を付してその詳細な説明を適宜に
省略する。
【0051】
図5は、本実施形態における画素Pの構成を示す平面図であり、図6は、図5における
VI−VI線からみた断面図である。第1実施形態においては、コンタクトホールCHの開口
領域の全域と重なり合うように補助配線70が形成された構成を例示した。これに対し、
本実施形態においては、図5および図6に示すように、コンタクトホールCHの開口領域
のうち領域A1のみと重なり合うように補助配線70(第1部分71)が形成される。図
6の領域A2は、開口領域のうち補助配線70と重なり合わない領域である。
【0052】
図6に示すように、本実施形態における発光装置Dは基板80を具備する。この基板8
0は、発光素子Eに対する外気や水分の付着を防止するための光透過性の板材であり、基
板10のうち発光素子Eが配置された表面と対向するように配置される。基板80におけ
る基板10との対向面には遮光層81が形成される。この遮光層81は、黒色に着色され
た樹脂やクロムなどの金属といった遮光性の材料によって形成された膜体である。図5お
よび図6に示すように、遮光層81は、基板10と垂直な方向からみて開口領域のうち領
域A2と重なり合う部分を含む。本実施形態の遮光層81は、図4に例示した補助配線7
0と同様に各画素Pに対応した格子状に形成され、コンタクトホールCHの開口領域の全
域と重なり合うように寸法および形状が選定されている。したがって、遮光層81は補助
配線70の全域と重なり合う。さらに、本実施形態の遮光層81は、ドレイン電極34や
補助配線70よりも光反射率が低い材料によって形成される。
【0053】
この構成によれば、ドレイン電極34の表面で反射して領域A2内を進行する不要反射
光や発光層66の部分661から出射した不要放射光が遮光層81によって遮断される。
したがって、補助配線70が領域A1のみを覆うとは言っても、第1実施形態と同様の作
用および効果が奏される。
【0054】
さらに、本実施形態においては、補助配線70よりも光反射率が低い材料によって形成
された遮光層81が補助配線70と重なり合う。この構成においては、観察側から補助配
線70に向かう外光は遮光層81によって遮断される。また、外光が補助配線70に到達
したとしても、その表面における反射光は遮光層81によって遮断される。したがって、
光反射率が高い材料によって補助配線70が形成された場合であっても、この補助配線7
0の反射光に起因した発光領域内の光量のムラは抑制される。つまり、本実施形態によれ
ば、ドレイン電極34および補助配線70の双方からの反射光(不要反射光)が観察側に
出射するのを防止できる。
【0055】
なお、以上に説明したように、補助配線70からみて観察側に遮光層81が形成された
構成によれば、補助配線70の表面で反射する外光の影響を低減することができる。もっ
とも、第4実施形態や第5実施形態のように発光層66がコンタクトホールCHに入り込
む構成においては、例えば部分661からの不要放射光が、補助配線70の裏面(基板1
0側の表面)とドレイン電極342や反射層44との間で反射を繰返したうえで最終的に
は観察側に出射する可能性がある。この不要放射光の出射を防止するという観点からする
と、補助配線70と発光層66との間(例えば図9や図10の補助配線70と第2電極6
2との間)に、補助配線70よりも光反射率の低い遮光体(換言すると補助配線70より
も光吸収率が高い遮光体)を配置した構成が好適に採用される。この構成によれば、発光
層66の部分661から出射した不要放射光は補助配線70の裏面に到達しないから、補
助配線70における不要放射光の反射に起因した発光のムラを確実に防止することができ
る。
【0056】
<C:第3実施形態>
図7は、本発明の第3実施形態における画素Pの構成を示す平面図であり、図8は、図
7におけるVIII−VIII線からみた断面図である。第1実施形態および第2実施形態におい
ては、基板10に垂直な方向からみて補助配線70がコンタクトホールCHと重なり合う
構成を例示した。これに対し、図7および図8に示すように、本実施形態の補助配線70
は開口領域とは重なり合わない。
【0057】
図8に示すように、本実施形態の補助配線70は、発光層66のうちコンタクトホール
CHに重なり合わない部分(コンタクトホールCHからみてY方向の不側の領域である。
以下「平坦部分」という)663の表面に形成される。したがって、図7に示すように基
板10に垂直な方向からみると、補助配線70はコンタクトホールCHとは重なり合わな
い。平坦部分663は、第2絶縁層42の表面に分布するから、発光層66のうちコンタ
クトホールCHに重なり合う部分と比較して平坦である。第2電極62は、発光層66の
全域にわたって形成されて補助配線70を覆う。
【0058】
本実施形態においては、第2実施形態と同様に、基板80の表面に遮光層81が形成さ
れる。この遮光層81は、ドレイン電極34や補助配線70よりも光反射率が低い遮光性
の材料によって形成される。図7および図8に示すように、基板10に垂直な方向からみ
ると、遮光層81は、コンタクトホールCHおよび補助配線70の双方に重なり合う。し
たがって、本実施形態においても、ドレイン電極34や補助配線70からの反射光(不要
反射光)や発光層66の部分661からの不要放射光が観察側に出射するのを防止するこ
とができる。
【0059】
ところで、コンタクトホールCHと重なり合うように形成された各要素(発光層66や
第2電極62)の表面には、このコンタクトホールCHの形状(凹部)を反映した段差が
現れる場合がある。したがって、これらの要素の面上に補助配線70が形成された構成に
おいては、その表面の段差によって補助配線70が断線または剥離する可能性がある。こ
れに対し、本実施形態においては、発光層66のうちコンタクトホールCHから外れた平
坦な部分661の面上に補助配線70が形成される。したがって、補助配線70の断線や
剥離を有効に防止することができる。
【0060】
<D:第4実施形態>
図9は、本発明の第4実施形態における画素Pの構成を示す断面図であり、図10は、
図9におけるX−X線からみた断面図である。以上の第3実施形態においては、遮光層8
1がコンタクトホールCHの開口領域の全域を覆う構成を例示した。これに対し、本実施
形態の遮光層81は、開口領域の一部である領域A3と補助配線70とを覆うように形成
され、開口領域のうち領域A3以外の領域A4は被覆しない。補助配線70は発光層66の
平坦部分663(コンタクトホールCHから外れた位置)に形成されるから、本実施形態
においても第3実施形態と同様に、補助配線70の断線や剥離を有効に防止することがで
きる。
【0061】
図10に示すように、発光層66のうちコンタクトホールCHに重なり合う部分(特に
第1電極61の凹部611の底面を覆う部分)からの放射光の一部は、図10に矢印Lで
示すように領域A4を通過して観察側に出射する。したがって、本実施形態によれば、第
3実施形態の構成と比較して領域A4の分だけ開口率を増加させることができる。
【0062】
<E:第5実施形態>
図11は、本発明の第5実施形態に係る画素Pの構成を示す平面図であり、図12は、
図11におけるXII−XII線からみた断面図である。以上の各形態においてはトップエミッ
ション型の発光装置Dを例示した。これに対し、本実施形態の発光装置Dはボトムエミッ
ション型である。すなわち、図12に示すように、以上の各形態にて説明した反射層44
は形成されず、その代わりに第2電極62が光反射性の導電材料によって形成される。し
たがって、発光層66から基板10側に出射した光と発光層66から基板10とは反対側
に出射して第2電極62の表面で反射した光とは、第1電極61や基板10を透過して図
12の下方に出射する。
【0063】
本実施形態においても、第1実施形態や第2実施形態と同様に、ドレイン電極34よる
反射光の出射を防止する遮光体として補助配線70が利用される。ただし、本実施形態に
おいては発光層66からみて基板10側(図12の下方)が観察側となるから、図12に
示すように、補助配線70はドレイン電極34と基板10との間に形成される。本実施形
態の補助配線70は、基板10の全域にわたって形成された単一の導電膜のパターニング
によって、ゲート電極242(さらには選択線11や交差部131)と同一の工程にて形
成される。したがって、補助配線70はゲート電極242と同一の材料によって形成され
る。より好適には、ドレイン電極34よりも光反射率が低い導電材料によって補助配線7
0やゲート電極242が形成される。
【0064】
図11のように基板10に垂直な方向からみると、補助配線70はドレイン電極34(
より詳細にはコンタクトホールCHの開口領域)と重なり合う。第2電極62は、図11
に示すように、第1絶縁層41と第2絶縁層42とを貫通するコンタクトホールCH5を
介して補助配線70に電気的に接続される。この構成によれば、観察側(図12の下方)
からドレイン電極34に向かう外光やドレイン電極34の表面で反射して観察側に向かう
不要反射光が補助配線70によって遮断されるから、発光領域の面内における光量を均一
化することができる。
【0065】
また、本実施形態の補助配線70はゲート電極242(さらには選択線11や交差部1
31)と同一の工程にて形成される。この構成によれば、補助配線70の形成のみに利用
される導電膜の形成やそのパターニングが不要となるから、以上の各形態のように補助配
線70が他の要素とは別個の工程にて形成される場合と比較して、製造工程の簡素化や製
造コストの低減が実現される。また、本実施形態においては、発光層66などの有機材料
の面上に補助配線70を形成する必要がなく、さらにはゲート電極242と共通の低抵抗
な導電性材料によって補助配線70が形成される。したがって、発光層66の面上に補助
配線70が形成された構成と比較して補助配線70の低抵抗化が容易であるという利点も
ある。
【0066】
なお、以上においてはボトムエミッション型の発光装置Dを例示したが、本実施形態は
トップエミッション型にも適用される。このトップエミッション型の発光装置Dにおいて
は、第1電極61と基板10との間に反射層44が介挿され、第2電極62は光透過性の
材料から形成される。この構成のもとでは、第1実施形態と同様に、補助配線70と重な
り合う領域の範囲内であればコンタクトホールCHの面積を拡大しても開口率は低下しな
いから、コンタクトホールCHの面積を充分に確保して駆動トランジスタTdrと第1電極
61との接触部分での抵抗を低減することができる。さらに、補助配線70が図14や図
15のように第1電極61の下層に形成されたトップエミッション型の発光装置Dにおい
ては、例えば補助配線70が遮光性の材料によって形成された場合であっても、発光層6
6からの放射光が補助配線70によって遮断されることはない。したがって、開口率を向
上することができるという利点がある。
【0067】
<F:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば
以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0068】
(1)以上の各形態に例示したように発光層66が複数の画素Pにわたって連続する構成
において、発光層66からの出射光の特性は必然的に複数の画素Pについて共通する。し
たがって、複数色からなる画像の表示を実現する場合には、例えば各画素Pに対応するカ
ラーフィルタを基板80の表面に形成した構成が採用される。また、発光層66からの出
射光を第1電極61と第2電極62との間で共振させる共振器構造を画素Pごとに形成し
、画素Pに割り当てられた表示色ごとに共振器構造の共振波長を相違させた構成によって
も、複数色からなる画像を表示することが可能である。
【0069】
(2)以上の各形態においては基板80に遮光層81が形成された構成を例示したが、こ
の遮光層81が形成される位置は適宜に変更される。例えば、第2電極62の表面上に遮
光層81が形成された構成も採用される。また、第2電極62の表面に補助配線70が形
成された構成(例えば第1実施形態や第2実施形態)においては補助配線70の表面上に
遮光層81が形成されてもよい。
【0070】
(3)第2実施形態(図5・図6)においては、コンタクトホールCHの開口領域のうち
補助配線70によって覆われない領域A2に遮光層81が重なり合う構成を例示したが、
この構成における遮光層81は適宜に省略され得る。遮光層81が形成されない構成にお
いては領域A2から不要反射光や不要放射光が観察側に出射するが、領域A1における不要
反射光や不要放射光は補助配線70によって遮光されるから、如何なる遮光体もコンタク
トホールCHと重なり合わない従来の構成と比較すれば、発光領域における光量のムラが
抑制されるという所期の効果は確かに奏される。
【0071】
また、第1実施形態(図2・図3)のようにコンタクトホールCHの開口領域の全域と
重なり合うように補助配線70が形成された構成であっても、不要反射光や不要放射光を
さらに確実に防止するために、コンタクトホールCHと重なり合う部分を含む遮光層81
が配置されてもよい。さらに、コンタクトホールCHの少なくとも一部と重なり合うよう
に遮光層81が形成された構成(例えば第2実施形態から第4実施形態)において、第2
電極62における電圧降下が問題とならないのであれば、補助配線70は適宜に省略され
る。
【0072】
以上のように、本発明においては、基板10に垂直な方向からみてコンタクトホールC
Hと重なり合うように遮光性の物体(遮光体)が配置された構成であれば足り、この遮光
体の具体的な形態(例えば補助配線70であるか遮光層81であるか)や材料(例えば導
電性であるか絶縁性であるか)の如何は不問である。もっとも、コンタクトホールCHに
起因した光量のムラを確実に防止するという観点からすると、コンタクトホールCHより
も広い範囲にわたって遮光体を配置した構成が好適である。
【0073】
(4)第5実施形態においてはドレイン電極34による不要反射光の遮断のために補助配
線70が利用される構成を例示したが、補助配線70以外の要素によって不要反射光を遮
断してもよい。例えば、ドレイン電極34と基板10との間に補助配線70とは別個の遮
光性の膜体が形成された構成としてもよい。この構成における補助配線70は、例えば第
1実施形態と同様に第2電極62の面上に形成され得る。
【0074】
(5)以上の各形態においては発光層66が有機EL材料によって形成される場合を例示
したが、発光層66の材料は適宜に変更される。例えば無機EL材料によって発光層を形
成することもできる。本発明における発光層は、電気エネルギの付与によって発光する発
光材料によって形成されていれば足りる。
【0075】
<G:応用例>
次に、本発明に係る発光装置を利用した電子機器について説明する。図13は、以上に
説明した何れかの形態に係る発光装置Dを表示装置として採用したモバイル型のパーソナ
ルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装
置としての発光装置Dと本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ
2001およびキーボード2002が設けられている。この発光装置Dは発光素子Eに有
機EL材料を使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0076】
図14に、何れかの形態に係る発光装置Dを適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電
話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに
表示装置としての発光装置Dを備える。スクロールボタン3002を操作することによっ
て、発光装置Dに表示される画面がスクロールされる。
【0077】
図15に、何れかの形態に係る発光装置Dを適用した携帯情報端末(PDA:Personal
Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン40
01および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての発光装置Dを備える。電源
スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が発光装置
Dに表示される。
【0078】
なお、本発明に係る発光装置が適用される電子機器としては、図13から図15に示し
たもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置
、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、
テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネル
を備えた機器等などが挙げられる。また、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示に限
定されない。例えば、光書込み型のプリンタや電子複写機といった画像形成装置において
は、用紙などの記録材に形成されるべき画像に応じて感光体を露光する書込みヘッドが使
用されるが、この種の書込みヘッドとしても本発明の発光装置は利用される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置の電気的な構成を示す回路図である。
【図2】ひとつの画素の構成を示す平面図である。
【図3】図2におけるIII−III線からみた断面図である。
【図4】補助配線の形態を例示する平面図である。
【図5】本発明の第2実施形態における画素の構成を示す平面図である。
【図6】図5におけるVI−VI線からみた断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態における画素の構成を示す平面図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線からみた断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態における画素の構成を示す平面図である。
【図10】図9におけるX−X線からみた断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態における画素の構成を示す平面図である。
【図12】図11におけるXII−XII線からみた断面図である。
【図13】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図14】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図15】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0080】
D……発光装置、P……画素、E……発光素子、10……基板、11……選択線、13…
…信号線、15……電源線、70……補助配線、40……ゲート絶縁層、41……第1絶
縁層、42……第2絶縁層、44……反射層、61……第1電極、62……第2電極、6
6……発光層、80……基板、81……遮光層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の面上に形成されたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子を覆う絶縁層と、
前記絶縁層の面上に形成され、当該絶縁層のコンタクトホールを介して前記スイッチン
グ素子に電気的に接続される第1電極と、
前記第1電極を挟んで前記基板とは反対側に形成された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に介在するとともに前記コンタクトホールの内側の
空間に入り込む発光層と、
前記絶縁層に対して前記発光層による放射光の出射側に配置され、前記基板に垂直な方
向からみて前記コンタクトホールと重なり合う部分を含む遮光体と
を具備する発光装置。
【請求項2】
前記スイッチング素子と前記第1電極とを各々が含む複数の画素を具備し、
前記発光層は、前記複数の画素にわたって連続に分布する
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記スイッチング素子は、前記コンタクトホールを介して前記絶縁層から露出した部分
が前記第1電極に接触する電極を含み、
前記遮光体は、前記スイッチング素子の前記電極よりも光反射率が低い材料によって形
成される
請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記遮光体は、前記第2電極よりも抵抗率が低い導電材料によって形成されて当該第2
電極に電気的に接続される補助配線である
請求項1から請求項3の何れかに記載の発光装置。
【請求項5】
前記補助配線は、前記基板に垂直な方向からみて、前記コンタクトホールの内周縁に包
囲された領域の全域と重なり合う
請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記補助配線は、前記基板に垂直な方向からみて、前記コンタクトホールの内周縁に包
囲された領域の一部と重なり合い、
前記コンタクトホールの内周縁に包囲された領域のうち前記補助配線と重なり合わない
領域に重なり合う部分を含む遮光層をさらに具備する
請求項4に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第2電極よりも抵抗率が低い導電材料によって形成されて当該第2電極に電気的に
接続される補助配線を具備し、
前記遮光体は、前記基板に垂直な方向からみて前記補助配線と重なり合う
請求項1から請求項3の何れかに記載の発光装置。
【請求項8】
前記遮光体は所定の方向に延在し、
前記コンタクトホールは、前記基板に垂直な方向からみて前記所定の方向を長手とする
形状に形成される
請求項1から請求項7の何れかに記載の発光装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れかに記載の発光装置を具備する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−134268(P2007−134268A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328492(P2005−328492)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】