説明

発光装置および電子機器

【課題】割れたり剥離したりし難いガスバリア層で発光素子を十分に封止する。
【解決手段】主基板10上に配列された複数の有機EL素子P1と、複数の有機EL素子P1を覆う有機緩衝層19と、有機緩衝層19上に配置された第1のガスバリア層20および第2のガスバリア層21を備える。有機EL素子P1は、電界により励起して発光する有機化合物を用いて発光する。主基板10上には、有機EL素子P1により段差がもたらされている。有機緩衝層19は、有機化合物から形成されており、陰極上面の段差よりも有機緩衝層上面の段差の方が小さく略平坦化されている。無機化合物から形成された第1のガスバリア層20に重なる基板10上の領域と無機化合物から形成された第2のガスバリア層21に重なる基板10上の領域は、完全には一致せずに重なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の薄膜封止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子の一種として、2つの電極で挟まれ電界により励起して発光する多層の有機化合物からなる有機発光層薄膜を有する発光素子を用いて発光する有機EL(electro-luminescent)素子がある。有機EL素子を備える装置の製造工程では、外気や水分等により有機発光材料及びカルシウムやマグネシウム、アルミニウム錯体などの電子注入層を含む陰極が劣化するのを防ぐために封止が行われる。この封止の技術として、極薄の無機化合物膜で有機EL素子を覆う薄膜封止技術が知られている(特許文献1〜4)。この技術では、無機化合物膜が外気を遮断するガスバリア層として機能する。
【特許文献1】特開平9−185994号公報
【特許文献2】特開2001−284041号公報
【特許文献3】特開2000−223264号公報
【特許文献4】特開2003−17244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、ガスバリア層による封止性(特にクリーンルームでも取りきれない微細な異物に対する被覆性)を十分に高くするには、ガスバリア層を厚く形成する必要がある。一方、上記の薄膜封止技術では、有機EL素子は基板上に形成され、ガスバリア層は有機EL素子を覆うように例えば気相成長法により基板上に薄膜形成されるから、ガスバリア層の表面には複数の素子に分離するために絶縁性の画素隔壁の存在に起因する凹凸などの段差が生まれる。このような段差のあるガスバリア層を一様に厚く形成すると、段差部の応力集中が著しくなり、ガスバリア層にクラックが生じたり、ガスバリア層が剥離したりし易くなってしまう。加えて、ガスバリア層が透明かつ耐湿性に優れる珪素化合物などの無機化合物膜の場合には、有機化合物膜に比較して密度および弾性率(ヤング率)が高いため、応力集中によるクラックが生じ易い。
ガスバリア層が割れたり剥離したりすると、外部の大気成分に含まれる水分が浸入してしまうため、有機EL素子が著しく劣化してしまう問題がある。また、クラックを防止するためガスバリア層を弾性率の低い有機化合物材料にしたり、ガスバリア層を薄くし過ぎたりすると、ガスバリア層が割れたり剥離したりしなくても、十分な封止性を得られず、やはり、有機EL素子の早期劣化を招く。
本発明は、上述した事情に鑑み、割れたり剥離したりし難いガスバリア層で発光素子を十分に封止することができる発光装置および電子機器を提供することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る発光装置は、基板上に、絶縁性の画素隔壁により分離された陽極と、有機発光層薄膜と陰極が順次積層された電界により励起して発光する複数の発光素子と、
有機化合物から形成され、前記複数の発光素子領域よりも広い範囲を覆い、前記基板上の陰極表面よりも段差が小さく略平坦化された有機化合物からなる有機緩衝層と、
無機化合物から形成され、前記有機緩衝層の外側に配置され、前記複数の発光素子を外気から保護する第1および第2のガスバリア層とを備え、
前記第1のガスバリア層または前記第2のガスバリア層のどちらか一方だけが、有機緩衝層よりも広い範囲を覆うように基板上の無機化合物からなる絶縁層表面と接していることを特徴とする。有機化合物は、炭素からなる骨格を構造の基本とする化合物である。
この発光装置では、複数の発光素子は絶縁性の画素隔壁とその間にある多数の陽極によって配列されるから、有機発光層上に形成される陰極表面には多くの段差が生じる。しかし、有機緩衝層では、これらの凹凸を略平坦化するように充填されることで陰極上部の段差よりも有機緩衝層上部の段差の方が小さくなる。したがって、有機緩衝層を設けない場合と比較すると、複数の発光素子上において、ガスバリア層がより平坦となり、ガスバリア層の応力負荷が小さく割れ難くなる。
また、基板において、略平坦化された有機緩衝層の周囲の終端部には少なからず角度が発生するため、有機緩衝層終端部のガスバリア層も割れやすい箇所となる。そこで、第1のガスバリア層および第2のガスバリア層を設けることで、有機緩衝層で略平坦化された発光素子領域は極めて封止性を向上させなければならないため2層のガスバリア層で被覆し、応力がかかりやすい有機緩衝層終端部のみをガスバリア層を1層で薄くすることで応力が減少し、クラックを防止する。
また、有機緩衝層は無機化合物に比較して弾性率が低く柔軟性のある有機化合物から形成されているため、応力を分散させ易い。
以上より、この発光装置によれば、割れたり剥離したりし難いガスバリア層で発光素子を十分に封止することができる。
【0005】
上記の発光装置において、前記第1のガスバリア層は、前記有機緩衝層よりも広い範囲を覆い、前記第2のガスバリア層は、有機緩衝層よりも狭く、前記複数の発光素子領域よりも広い範囲を被覆することを特徴とするようにしてもよい。
この発光装置によれば、有機緩衝層を設けない場合と比較すると、複数の発光素子上において、ガスバリア層がより平坦となり、ガスバリア層が割れ難くなる。また、複数の発光素子領域には、第1および第2のガスバリア層で被覆されるから、ガスバリア層が十分に厚く、複数の発光素子を十分に封止することができる。また、有機緩衝層の終端部付近は第2のガスバリア層がないためガスバリア層の厚さが薄く、この部分のガスバリア層が平坦でなくても、割れたり剥離したりし難い。また、有機緩衝層が応力を分散させ易い低弾性率の有機化合物から形成されているから、ガスバリア層がより割れ難くなる。以上より、この発光装置によれば、割れたり剥離したりし難いガスバリア層で発光素子を十分に封止することができる。
【0006】
上記の発光装置において、前記第2のガスバリア層は前記第1のガスバリア層よりも厚いことを特徴とするようにしてもよい。
この発光装置によれば、複数の発光素子の封止性に大きな影響を与えることなく、第1のガスバリア層の厚さを比較的に薄くすることができる。つまり、ガスバリア層の割れ難さや剥離し難さを向上させることができる。
【0007】
本発明に係る別の発光装置は、基板上に絶縁性の画素隔壁により分離された陽極と有機発光層薄膜と陰極が順次積層された電界により励起して発光する複数の発光素子と、
有機化合物から形成され、前記複数の発光素子領域よりも広い範囲を覆い、前記基板上の陰極表面よりも段差が小さく略平坦化された有機化合物からなる有機緩衝層と、
無機化合物から形成され、前記有機緩衝層を覆って前記複数の発光素子を外気から保護するガスバリア層とを備え、
前記ガスバリア層において、前記複数の発光素子領域を被覆する部分は、有機緩衝層終端部を覆う周囲の部分よりも厚いことを特徴とする。
この発光装置では、複数の発光素子は間隔をあけて基板上に配列されるから、複数の発光素子を覆う有機緩衝層の第1の面には段差が生じる。しかし、有機緩衝層では、第1の面における段差よりも第2の面における段差の方が小さくなる。したがって、有機緩衝層を設けない場合と比較すると、複数の発光素子上において、ガスバリア層がより平坦となり、ガスバリア層が割れたり剥離したりし難くなる。また、複数の発光素子領域には、ガスバリア層の厚い部分が重なるから、複数の発光素子を十分に封止することができる。また、ガスバリア層は、その厚さを薄くすることで平坦でなくても、割れたり剥離したりし難くなる。また、有機緩衝層が応力を分散させ易い有機化合物から形成されているから、ガスバリア層が厚くても割れ難く剥離し難い。以上より、この発光装置によれば、割れたり剥離したりし難いガスバリア層で発光素子を十分に封止することができる。
【0008】
上記の発光装置において、前記有機緩衝層の終端部において前記有機緩衝層の上面と前記基板の上面とがなす角は20度以下であるようにしてもよい。
この発光装置によれば、ガスバリア層の総厚が薄い部分においてガスバリア層が折れ曲がる角度を十分に小さくすることができる。したがって、ガスバリア層における応力集中を抑制し、ガスバリア層をより割れ難く剥離し難くすることができる。
【0009】
本発明に係る電子機器は、上記の発光装置を備える。上記の発光装置では、割れたり剥離したりし難いガスバリア層で発光素子が十分に封止され、その劣化が抑止される。よって、本発明に係る電子機器によれば、長期にわたる品質の維持が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明する。なお、以下の各図面においては、各部の寸法の比率を実際のものとは適宜に異ならせている。図1〜図4の断面図に描かれている面は全て断面であるから、一部を除いてハッチングを省略している。これらの断面の一部にはハッチングを施してある。また、以下の説明において、「上」および「下」は図の紙面を基準とした表現であり、層の「厚さ」は断面図の紙面上下方向における層の長さを意味する。
【0011】
<A:第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態に係る有機ELパネル(発光装置)は、後述の高分子系有機EL材料を用いるフルカラーパネルである。この有機ELパネルは、赤色光を発する有機EL素子、緑色光を発する有機EL素子、および青色光を発する有機EL素子を並置して、フルカラーの表示を可能としている。また、この有機ELパネルは、有機EL素子からの光が主基板とは反対の側から出射されるトップエミッションタイプである。
【0012】
<A1:構成>
図1はこの有機ELパネルの断面図であり、図2は、その一部Aを拡大して示す断面図である。この有機ELパネルは平板状の主基板10を備える。主基板10は、ガラスまたはプラスチックから形成され、その上面には複数の有機EL素子P1が形成されている。有機EL素子P1は、後述の高分子系有機EL材料を用いて形成された有機発光層16を有し、電気エネルギの供給を受けて有機発光層16(詳しくは有機発光層16内の発光層)を発光させる。有機EL素子P1は、発光色により3種類に分類される。主基板10上では、これら3種類の有機EL素子P1が規則的に配列されている。
【0013】
主基板10上には、複数の有機EL素子P1に1対1で対応する複数のTFT(Thin Film Transistor)11および各種の配線(一部を除いて図示略)が形成されている。TFT11は、電気エネルギおよび制御信号を受けて自己に対応する有機EL素子P1を駆動する。具体的には、逐次発光させるタイミングで有機EL素子P1に電流を供給する。また、主基板10上には、複数のTFT11を覆うように、無機絶縁層12が形成されている。無機絶縁層12は、複数のTFT11および各種の配線を絶縁するものであり、例えば珪素化合物から形成されている。
【0014】
無機絶縁層12上には、親液バンク層(無機画素隔壁絶縁層)13が例えば膜厚50〜200nmの二酸化珪素が形成されており、親液バンク層13上には撥液バンク層(有機画素隔壁絶縁層)14が例えば膜厚1〜3μmのポリイミドまたはアクリル樹脂から形成されている。無機絶縁層12、親液バンク層13および撥液バンク層14は凹部を画定しており、この凹部の底部を有機EL素子P1が占めている。なお、単色で用いる発光装置及び電子機器の場合は、塗り分けが必要でないため撥液バンク層14を除いた構造として、有機発光層16を陽極15と親液バンク層13に跨ってスピンコートやスリットコートなどによって形成しても良い。
【0015】
有機EL素子P1は、有機発光層16を挟む陽極15および共通陰極層17を有する。陽極15および共通陰極層17は、有機発光層16に正孔および電子を注入するための電極であり、供給された電気エネルギにより電界を発生させる。陽極15は、仕事関数が5eV以上の正孔注入性の高いITO(Indium Tin Oxide)などからなる電極であり、上記の配線により対応するTFT11に接続されている。共通陰極層17は、有機発光層16および撥液バンク層14上に形成されて複数の有機EL素子P1に跨る共通の電極として機能する層であり、例えば、有機発光層16へ電子を注入し易くするための電子注入バッファー層と、電子注入バッファー層上にITOやアルミニウムなどの金属から形成された電気抵抗の小さい層とを有する。電子注入バッファー層は、例えばフッ化リチウムやカルシウム金属、マグネシウム−銀合金から形成されている。
【0016】
有機発光層16は、電界により注入された正孔と電子との再結合により励起して発光する発光層を含む。発光層以外の層をも含むように多層からなる有機発光層16を構成することも可能であり、電気抵抗を少なくするため全ての層が300nm以下の薄膜になることが好ましい。発光層以外の層としては、正孔を注入し易くするための正孔注入層や、注入された正孔を発光層へ輸送し易くするための正孔輸送層、電子を注入し易くするための電子注入層、注入された電子を発光層へ輸送し易くするための電子輸送層などの、上記の再結合に寄与する層がある。
【0017】
発光層は高分子系有機EL材料から形成されている。高分子系有機EL材料は、正孔と電子との再結合により励起して発光する有機化合物のうち、分子量が比較的に高いものである。有機EL素子P1を形成している高分子系有機EL材料は、有機EL素子P1の種類(発光色)に応じた物質となっている。発光層における再結合に寄与する層の材料は、この層に接する層の材料に応じた物質となっている。これらの材料を溶媒で希釈してインクジェット法やその他印刷法によってパターン塗布する場合、撥液バンク層14に対する有機発光層16の材料が撥液バンク層14表面をはじくため、画素ごとに各色が塗り分けられる。単色で塗り分けが必要ない場合は、撥液バンク層14を除くことで、スピンコートやスリットコートなどによって有機発光層16を親液バンク層13と陽極15の上を跨いで形成しても、画素の分離ができる。親液バンク層13は、凹部の底の陽極15の端部まで有機発光層16の膜厚を安定化させるもので、上部には有機発光層16が形成される。例えば、膜厚50〜200nmの二酸化珪素から形成されている。
【0018】
無機絶縁層12および共通陰極層17上には、共通陰極層17を覆うように陰極保護層18が形成されている。陰極保護層18上には、画素による凹凸を平坦化するため複数の有機EL素子P1の全部に重なるように有機緩衝層19が形成されている。陰極保護層18および有機緩衝層19上には、有機緩衝層19を終端部まで完全に覆うようにさらに広い範囲に第1のガスバリア層20が形成されている。第1のガスバリア層20上には、複数の有機EL素子P1よりも広く、かつ有機緩衝層19よりも狭い範囲に、第2のガスバリア層21が形成されている。
【0019】
第1のガスバリア層20および第2のガスバリア層21は、光透過性、ガスバリア性、および耐水性に優れた材料から形成されている。このような材料としては珪素酸窒化物、珪素窒化物、SiNHなどの窒素を含む珪素化合物が好ましい。ガスバリア層の形成方法として、ICPやECRプラズマ、プラズマガンで発生させた高密度プラズマを用いる、スパッタやイオンプレーティング、CVD法などの高密度プラズマ成膜法を用いることで、低温かつ高密度で高品位の無機化合物の薄膜が形成される。第1のガスバリア層20は有機緩衝層19および複数の有機EL素子P1の封止性の向上に寄与する。第1のガスバリア層20の厚さは200nm〜400nmである。この範囲の下限は、有機緩衝層19の側面やその近傍における封止性が不足しないように定められている。第2のガスバリア層21は複数の有機EL素子P1の封止性の向上に寄与する。第2のガスバリア層21の厚さは、200nm〜800nmである。また、本実施の形態では、第1のガスバリア層20の厚さと第2のガスバリア層21の厚さの和、すなわちガスバリア層の総厚が1000nm未満となるように、両層の厚さが制限されている。この制限は、複数の有機EL素子P1の封止性の度合い、ガスバリア層にクラックが生じたりガスバリア層が剥離したりする可能性、および製造コストを考慮して定められている。
【0020】
有機緩衝層19は、第1のガスバリア層20の平坦性および密着性の向上と、第1のガスバリア層20に生じる応力の緩衝とを目的として設けられており、後述の粘度および組成の有機緩衝層材料を減圧雰囲気下で硬化させて形成されている。有機緩衝層19の、複数の有機EL素子P1の全部に被覆される部分の上面は平坦である。有機緩衝層19の終端部において、有機緩衝層19の上面と主基板10の上面とがなす角(θ1)は20度以下である。終端部付近を除く、複数の有機EL素子P1の全部に被覆される部分の有機緩衝層19の厚さは3μm〜10μmである。形成方法としてスクリーン印刷法を用いることで、スクリーンメッシュとスキージを用いて画素隔壁による凹凸を膜厚を制御して埋めることができるため、有機緩衝層19上面の平坦性が得られる。有機緩衝層19の厚さの下限は、画素隔壁の高さと前工程で基板に付着した微細な異物に対する被覆性を確保するために定められている。厚さの上限は、有機緩衝層の終端部の角度20度以下を得るためと、後述の表面保護基板23の上面に到達せずに表面保護基板23の側面や後述の接着層22の側面に逃げる光が多くなり過ぎないように定められている。
【0021】
陰極保護層18は、共通陰極層17の保護と、硬化前の有機緩衝層19の濡れ性及び接着性の向上とを目的として設けられており、光透過性、密着性および耐水性に優れた珪素酸窒化物などの珪素化合物から形成されている。上記の共通陰極層17は、特にトップエミッション構造の場合に透明性を考慮して共通陰極層の膜厚が薄くなるためピンホール等の発生頻度が増加する。そのため、有機緩衝層19を形成するまでの輸送時に付着する微量の水分や、硬化前の有機緩衝層19の材料の浸透による有機発光層16へのダメージがダークスポットとなるため、これらを防ぐ役割を持つ。このため、陰極保護層18の厚さは100nm以上となっている。また、共通陰極層17の上面には、バンク14と有機EL素子P1との段差による凹凸があるため、陰極保護層18において応力集中が生じる。この応力集中による破損を防ぐために、陰極保護層18の厚さは200nm以下となっている。
【0022】
主基板10上には、無機絶縁層12、陰極保護層18、第1のガスバリア層20および第2のガスバリア層21を覆うように、接着層22が形成されている。接着層22上には、接着層22の全部に重ねて表面保護基板23が固定されている。表面保護基板23の下面全面は接着層22に接している。接着層22は表面保護基板23を主基板10に接着するものであり、光透過性に優れた樹脂接着剤から形成されている。この樹脂接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などがある。表面保護基板23は、光学特性及びガスバリア層の保護を目的として設けられたものであり、ガラスまたは光透過性に優れたプラスチックから形成されている。このようなプラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレートやアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリオレフィンなどがある。表面保護基板23には、カラーフィルタの機能や、紫外線を遮断/吸収する機能、外光の反射を防止する機能、フィンにより放熱する機能などを持たせてもよい。
【0023】
<A2:製造手順>
本実施の形態に係る有機ELパネルを製造するには、まず、主基板10上にTFT11および各種の配線と無機絶縁層12を形成する。次に、無機絶縁層12上または下にアルミニウム−銅合金材料などの光反射性の反射層と、透明なITOをスパッタ法により成膜して複数の画素となる陽極15を形成する。有機発光層16と接する陽極15の最表面は、正孔注入性を考慮して仕事関数の大きいITOが好ましい。これにより、TFT11と陽極15とが1対1で接続される。次に、無機絶縁層12上に、陽極15を囲むように親液バンク層13を形成する。次に、親液バンク層13上に例えばポリイミドやアクリル樹脂などの有機化合物からなる撥液バンク層14を形成する。次に、主基板10上から有機物系の異物除去とITO表面の濡れ性を向上させるために、プラズマ洗浄などの洗浄処理を行う。
【0024】
次に、有機発光層16を陽極15上に形成する。この形成では、材料が塗布され、親液バンク層13に接して平坦に広がる。したがって、厚さが均一の平坦な有機発光層16が形成される。有機発光層16に含まれる発光層の形成では、赤色光を発する有機EL素子P1を構成することになる陽極15上には、赤色光を発する有機発光層16を形成するための高分子系有機EL材料を塗布する。これと同様のことを、緑色光を発する有機EL素子P1および青色光を発する有機EL素子P1についても行う。塗布方法としては、単色のみ使用する場合にはスピンコートやスリットコート法の方が塗布時間が短く済み、3色を塗り分ける場合にはインクジェット法やスクリーン印刷法を用いて画素ごとにパターン塗布をすると材料効率の良い塗布ができる。有機発光層16が複数の層からなる場合には、各層を順に成膜することになる。
【0025】
次に、複数の有機EL素子P1に共通の電極、すなわち共通陰極層17を形成する。例えば、まず、加熱ボート(るつぼ)を用いた真空蒸着法によりフッ化リチウム及びカルシウムやマグネシウムなどの電子注入性の高い金属または合金を成膜し、次に、電極抵抗を下げるため、真空蒸着法により画素部を避けるようにパターン形成したアルミニウムか、ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマスパッタ法やイオンプレーティング法、対向ターゲットスパッタ法などの減圧雰囲気下で高密度プラズマ成膜法により透明なITOを成膜する。次に、酸素プラズマ処理を行い、ITOと同様にECRスパッタ法やイオンプレーティング法などの高密度プラズマ成膜法により、共通陰極層17を覆うように、珪素酸窒化物からなる陰極保護層18を形成する。酸素プラズマ処理を行うのは、共通陰極層17と陰極保護層18との密着性を向上させるためである。
【0026】
次に、減圧雰囲気スクリーン印刷法により、陰極保護層18上に、粘度が室温(25℃)で2000〜10000mPa・sの液状の有機緩衝層材料を印刷し、窒素ガスを導入して大気圧に戻した後、硬化室に搬送して60〜100℃の範囲で基板ごと加熱して完全硬化させることにより、有機緩衝層19を形成する。この形成を減圧雰囲気下で行うのは、塗布時に発生する気泡の除去とできるだけ水分を除去するためである。共通陰極17や陰極保護層18の形成と違って、100〜5000Paという比較的低い真空度で塗布がおこなわれるが、窒素で置換することによって露点は−60℃以下になるまで水分が除去されている。粘度が室温で2000mPa・s以上の有機緩衝層材料を用いるのは、有機緩衝層材料が陰極保護層18を透過して共通陰極層17や有機発光層16に滲入する事態を避けるためである。
【0027】
有機緩衝層材料の主成分(例えば70重量%以上)としては、硬化前には流動性に優れかつ溶媒のような揮発成分を持たない有機化合物を用いることが可能であり、本実施の形態では、エポキシ基を有する分子量3000以下のエポキシモノマー(分子量1000以下)/オリゴマー(分子量1000〜3000)を用いている。具体的には、ビスフェノールA型エポキシオリゴマーやビスフェノールF型エポキシオリゴマー、フェノールノボラック型エポキシオリゴマー、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキレートなどを単独でまたは組み合わせて用いることが可能である。
【0028】
有機緩衝層材料の副成分としては、エポキシモノマー/オリゴマーと反応する硬化剤がある。この硬化剤としては、電気絶縁性に優れかつ強靭で耐熱性に優れる硬化被膜を形成するものが良く、光透過性に優れかつ硬化のばらつきの少ない付加重合型のものがよい。具体的には、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物またはそれらの重合物などの酸無水物系硬化剤が好適である。その理由の第1は、酸無水物系硬化剤の硬化は60〜100℃の範囲の加熱で行われ、その硬化被膜は珪素酸窒化物との密着性に優れるエステル結合を持つ高分子となるからである。第2は、酸無水の開環を促進する硬化促進剤として芳香族アミンやアルコール類、アミノフェノールなどの比較的分子量の高いものを添加することで低温かつ短時間での硬化が可能となるからでもある。第3は、カチオン放出タイプの光重合開始剤に比較して、急激な硬化収縮による各部の損傷を招き難いからである。
【0029】
有機緩衝層材料の他の副成分としては、共通陰極層17や第1のガスバリア層20との密着性を向上させるシランカップリング剤や、イソシアネート化合物などの捕水剤、硬化時の収縮を防ぐ微粒子などの添加剤が混入されていてもよい。
【0030】
本実施の形態で用いる主成分材料および副成分材料の硬化前の粘度は、いずれも室温で1000mPa・s以上が好ましい。これは、硬化前の材料が有機発光層16に滲入してしまう可能性を抑制するためである。これらの材料の粘度は、この抑制だけでなく、必要なパターン精度での生膜を実現できること、かつ所望の厚さの膜を形成できること、かつ形成した膜内に気泡が生じないことなどをも考慮して定められるべきである。
【0031】
次に、再び減圧雰囲気にして、酸素プラズマ処理を行い、ECRスパッタ法やイオンプレーティング法などの高密度プラズマ成膜法により、有機緩衝層19の終端部まで完全に覆うようなより広い範囲で第1のガスバリア層20を形成する。酸素プラズマ処理を行うのは、有機緩衝層19と第1のガスバリア層20との密着性を向上させるためである。次に、ECRスパッタ法やイオンプレーティング法などの高密度プラズマ成膜法により、第1のガスバリア層20上に、複数の有機EL素子P1の領域を被覆しつつ有機緩衝層19の終端部は覆わないように第2のガスバリア層21を形成する。
【0032】
次に、大気圧まで戻した後、無機絶縁層12、陰極保護層18、第1のガスバリア層20および第2のガスバリア層21を覆うように光透過性に優れた樹脂接着剤を塗布し、この樹脂接着剤に表面保護基板23の下面全面を接触させ、この樹脂接着剤を硬化させて接着層22を形成する。なお、樹脂接着剤に代えて液状の接着剤を用いるようにしてもよいし、予めシート状に形成された接着剤を第2のガスバリア層12と表面保護基板23とで挟んで圧迫することにより接着する両者を接着するようにしてもよい。
【0033】
<A3:効果>
本実施の形態に係る有機ELパネルでは、複数の有機EL素子P1上において、陰極上面の凹凸よりも有機緩衝層19の上面の凹凸の方が小さく略平坦化されている。したがって、有機緩衝層19を設けない構造と比較すると、複数の有機EL素子P1上において、ガスバリア層がより平坦となり、応力集中が抑制され、ガスバリア層が割れ難く剥離し難くなる。また、複数の有機EL素子P1の全部には、第1のガスバリア層20および第2のガスバリア層21が重なるから、ガスバリア層が十分に厚く、複数の有機EL素子P1を十分に封止することができる。また、第2のガスバリア層21が重ならない部分ではガスバリア層の厚さが薄いから、この部分に有機緩衝層の終端部があってガスバリア層の表面に凹凸が生じても割れ難く剥離し難い。また、有機緩衝層19の材料の主成分は有機化合物であるから、応力を緩衝させ易く、ガスバリア層がより割れ難く剥離し難くなる。以上より、この有機ELパネルによれば、割れたり剥離したりし難いガスバリア層で複数の有機EL素子P1を十分に封止することができる。なお、有機緩衝層19により緩衝される応力としては、有機ELパネルの外部から加えられた力によるものや、温度変化による有機化合物からなる撥液バンク層14の伸縮によるものなどがある。
【0034】
有機ELパネルでは、複数の有機EL素子の封止性を十分に高くする必要がある。例えば、有機発光層が電子注入層を含む場合に、ある有機EL素子の電子注入層に水分が滲入すると、この有機EL素子の発光が阻害され、いわゆるダークスポットとなる虞がある。よって、本実施の形態に係る有機ELパネルでは、複数の有機EL素子P1上のガスバリア層の厚さを厚くしている。しかも、その実現方法は、第1のガスバリア層20および第2のガスバリア層21を共に厚くする、というものではなく、第2のガスバリア層21のみを厚くする、というものである。よって、この有機ELパネルによれば、第1のガスバリア層20を厚くすることなく、つまり第1のガスバリア層20を割れ難く剥離し難くしつつ、複数の有機EL素子P1の封止性を十分に高くすることができる。
【0035】
第1のガスバリア層20の第2のガスバリア層21が重なっていない部分が割れたり剥離したりすると、封止性が著しく低下する。この部分のうち、最も折れ曲がる角度が大きいのは、第1のガスバリア層20が陰極保護層18から離れて立ち上がる部分、すなわち有機緩衝層19の終端部付近である。本実施の形態に係る有機ELパネルでは、有機緩衝層19の終端部において、第1のガスバリア層20の下面と主基板10の上面とがなす角(θ1)が20度以下となる。したがって、ガスバリア層における応力集中を抑制し、ガスバリア層をより割れ難く剥離し難くすることができる。
【0036】
上述したように、本実施の形態に係る有機ELパネルのガスバリア層は、割れたり剥離したりし難い。したがって、複数の有機EL素子P1の封止性が高く維持され、この有機ELパネルが良好に発光し続けることが可能な時間が長くなる。このことを裏付けるために、本実施の形態に係る各種有機ELパネルや他の有機ELパネルを、気温60℃、RH(相対湿度)90%の雰囲気下で600時間連続して暴露し、暴露後の発光状態を調べる実験を行った。この実験に用いた有機ELパネルは、いずれも、エポキシ樹脂から形成された厚さが5μmの有機緩衝層を有し、有機緩衝層の終端部を完全に被覆するまで広い範囲を珪素酸窒化物から形成されたガスバリア層を有する。
【0037】
実験の結果、ガスバリア層として、厚さが800μmのガスバリア層を1つしか持たない有機ELパネルでは、複数の有機EL素子のうち、周辺部(有機緩衝層の終端部)に近い有機EL素子が発光不良となった。また、厚さ400nmのガスバリア層を2つ持ち、下層のガスバリア層に重なる主基板上の領域と上層のガスバリア層に重なる主基板上の領域とが完全に一致する有機ELパネルでは、複数の有機EL素子のうち、周辺部の有機EL素子が発光不良となった。両パネルで周辺部の有機EL素子が発光不良となったのは、有機緩衝層のテーパ部分の周囲のガスバリア層が割れたり剥離したりして水分が浸入したためである。
【0038】
これらに対し、本実施の形態に係る有機ELパネルのように、厚さ400nmのガスバリア層を2つ持ち、下層のガスバリア層400nmが有機緩衝層の終端部まで完全に被覆するように形成し、上層のガスバリア層400nmが有機緩衝層の終端部を露出させるように有機緩衝層よりも小さい範囲に形成された有機ELパネルでは、複数の有機EL素子の全てが良好に発光可能であった。また、本実施の形態に係る有機ELパネルのように、厚さ200nmのガスバリア層とこのガスバリア層上に厚さ700nmのガスバリア層とを持ち、下層のガスバリア層が有機緩衝層の終端部まで完全に被覆するように形成し、上層のガスバリア層が有機緩衝層の終端部を露出させるように有機緩衝層よりも小さい範囲に形成された有機ELパネルでは、複数の有機EL素子の全てが良好に発光可能であった。
【0039】
有機EL素子の封止の方法として、キャップ状の封止基板を用いる方法が知られている。一方、有機ELパネルには、大型化、薄型化および軽量化の要請がある。これらの要請に応えようとする場合、キャップ状の封止基板を用いる方法では、周辺を接着剤によって主基板と保持するため、外部応力に対して十分な強度を有機ELパネルに持たせるのが難しくなる。これに対して、本実施の形態に係る有機ELパネルでは、いわゆる薄膜封止により複数の有機EL素子P1上に広い接着面積で接触して封止しており、パネルとしての強度は非常に高く、かつガスバリア層が割れたり剥離したり難く、かつ複数の有機EL素子P1の封止性も十分に高い。したがって、この有機ELパネルによれば、大型化、薄型化および軽量化の要請に応えることができる。また、有機ELパネルが大型化すると、有機EL素子と主基板との間のTFTや配線が多くなり、有機発光層からの光が主基板側から出射されるボトムエミッションタイプでは、画素の開口率が小さくなり発光効率が低下する虞がある。しかし、この有機ELパネルはトップエミッションタイプであるから、そのような虞がない。
【0040】
有機ELパネルの製造において、ゴミ等の異物や水分の付着を防ぐには、1Pa以下の高真空下で作業を行うのが望ましい。しかし、有機緩衝層材料は液状であるから、有機緩衝層19を高真空下で形成するのは困難である。そこで、本実施の形態では、100〜5000Paの減圧雰囲気下にてスクリーン印刷法を用い、有機緩衝層19を形成するようにしている。これは、塗布時に発生する気泡の除去と異物を被覆することで、ガスバリア層のピンホール除去に寄与する。また、ガスバリア層は高密度プラズマ成膜法により0.1〜10Paの高真空下でかつ低温下で形成される。したがって、ガスバリア層の形成過程で複数の有機EL素子P1にダメージを与えずに済む。また、上述した製造手順から明らかなように、この有機ELパネルの封止の工程は、クリーンルームであっても付着を避けられない微細な異物の影響を受け難い工程となっている。これは、有機発光層の形成を始めてしまうと封止の工程を終えるまでは洗浄処理を行うことが難しいという実情に鑑みれば、極めて有利な特徴である。
【0041】
<B:第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態に係る有機ELパネルは、後述の低分子系有機EL材料を用いるフルカラーパネルである。この有機ELパネルは、白色光を発する有機EL素子およびカラーフィルタを用いて、フルカラーの表示を可能としている。また、この有機ELパネルは、有機EL素子からの光が主基板とは反対の側から出射されるトップエミッションタイプである。
【0042】
<B1:構成>
図3はこの有機ELパネルの断面図であり、図4は、その一部Bを拡大して示す断面図である。この有機ELパネルは平板状の主基板30を備える。主基板30は、ガラスまたはプラスチックから形成され、その上面には複数の有機EL素子P2が形成されている。有機EL素子P2は、白色光を発する素子であり、後述の低分子系有機EL材料を用いて形成された有機発光層37を有し、電気エネルギの供給を受けて有機発光層37(詳しくは有機発光層37内の発光層)を発光させる。
【0043】
基板30上には、複数の有機EL素子P2に1対1で対応する複数のTFT31および各種の配線(図示略)が形成されている。TFT31は、第1の実施の形態におけるTFT11と同様に、自己に対応する有機EL素子P2を駆動する。また、基板30上には、複数のTFT31を覆うように、無機絶縁層32が形成されている。無機絶縁層32は、複数のTFT31および各種の配線を絶縁するものであり、例えば珪素窒化物から形成されている。
【0044】
無機絶縁層32上には、平坦化層33が形成されている。平坦化層33は配線やTFTによる段差を無くして発光層からの光路を等距離にするためのものであり、その材料としては例えばポリイミドやアクリル樹脂などの有機化合物が挙げられる。平坦化層33の上面には凹凸がある。凸部は平坦な上面を有し、複数の有機EL素子P2に重なっている。凹部は複数のTFT31に重なっている。平坦化層33内には、有機EL素子P2から陽極35を通ってきた光を反射する金属反射層34が光反射性の金属から形成されている。
【0045】
平坦化層33上には、平坦化層33の凹部から立ち上がる画素隔壁絶縁層36が、例えばポリイミドやアクリルなどの有機化合物から形成されている。画素隔壁絶縁層36の上端は平坦化層33の凸部よりも高い位置にあり、平坦化層33および画素隔壁絶縁層36は凹部を画定している。画素隔壁絶縁層36が無く、陽極35と有機発光層37が接触する部分が有機EL素子P2となる。
【0046】
有機EL素子P2は、有機発光層37を挟む複数の陽極35および共通陰極層38を有する。陽極35および共通陰極層38は、有機発光層37に正孔および電子を注入するための電極として機能する。陽極35は、平坦化層33上に例えば仕事関数が大きく正孔注入性の高いITOから形成された透光性の電極であり、平坦化層33と画素隔壁絶縁層36との隙間を通って対応するTFT31に接続されている。共通陰極層38は、有機発光層37および画素隔壁絶縁層36上に形成されて複数の有機EL素子P2に共通の電極として機能する層であり、例えば、有機発光層37へ電子を注入し易くするための電子注入バッファー層と、電子注入層上に透明なITO層または非画素領域にパターン形成するアルミニウム層などから形成された電気抵抗の低い層とを有する。電子注入バッファー層は、例えばフッ化リチウムやマグネシウム−銀合金から形成されている。
【0047】
有機発光層37は、第1の実施の形態における有機発光層16に相当する。前者が後者と異なるのは、複数の有機発光層37に共通している点と、発光層が低分子系有機EL材料から形成されている点である。低分子系有機EL材料は、正孔と電子との再結合により励起して発光する有機化合物のうち、分子量が比較的に低いものである。例えば、スチリルアミン系のホストにアントラセン系のドーパントを色素ドーピングしたものや、スチリルアミン系のホストにルブレン系のドーパントを色素ドーピングしたものが挙げられる。有機発光層37に、発光層における再結合に寄与する他の層が含まれる場合、他の層の材料は、この層に接する層の材料に応じた物質となっている。例えば、正孔注入層の材料としてはトリアリールアミン(ATP)多量体が挙げられ、正孔輸送層の材料としてはTPD(トリフェニルジアミン)系化合物が挙げられ、電子注入層の材料としてはアルミニウムキノリノール錯体が挙げられる。
【0048】
無機絶縁層32および共通陰極層38上には、共通陰極層38および平坦化層33を覆うように陰極保護層39が形成されている。陰極保護層39上には、複数の有機EL素子P2及び画素隔壁絶縁層36、平坦化層33の全部を被覆するように有機緩衝層40が形成されている。陰極保護層39および有機緩衝層40上には、有機緩衝層40の終端部まで完全に覆うように第1のガスバリア層41が形成されている。第1のガスバリア層41上には、複数の有機EL素子P2の全部を被覆しつつ、有機緩衝層の終端部が露出するように有機緩衝層よりも狭い領域を被覆する第2のガスバリア層42が形成されている。
【0049】
陰極保護層39、有機緩衝層40、第1のガスバリア層41および第2のガスバリア層42は、第1の実施の形態における陰極保護層18、有機緩衝層19、第1のガスバリア層20および第2のガスバリア層21に相当する。有機緩衝層40、第1のガスバリア層41および第2のガスバリア層42の、複数の有機EL素子P2の全部に重なっている部分は、平坦ではあるものの、その平坦性は、第1の実施の形態に比較して低い。これは、有機緩衝層40の厚さが3μm〜5μmであり、第1の実施の形態と同等の平坦性を実現するには足りないからである。しかし、それでも、有機緩衝層40の上面の凹凸は0.5μm以下であり、共通陰極38の上面の凹凸よりも遥かに小さい。なお、有機緩衝層40の形成にスクリーン印刷を用いてスクリーンメッシュとスキージによる平坦化制御を利用すれば、有機緩衝層40の上面の凹凸をより小さくすることが可能である。
【0050】
主基板30上には、無機絶縁層32、陰極保護層39、第1のガスバリア層41および第2のガスバリア層42を覆うように、接着層43が形成されている。接着層43上には、接着層43の全部に重ねてカラーフィルタ基板44が固定されている。カラーフィルタ基板44の下面全面は接着層43に接している。接着層43はカラーフィルタ基板44を主基板30に接着するものであり、光透過性に優れた樹脂接着剤から形成されている。この樹脂接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などがある。また、接着層43は2種類の異なった接着剤から構成されてもよく、周辺は紫外線硬化型接着剤、中央の発光面は熱硬化型接着剤であるのが好ましい。カラーフィルター基板の位置精度及び接着剤の厚さ管理が極めて必要であり、紫外線硬化型であれば位置ずれすることなく数秒間で硬化させることができ、位置制御や厚さ制御が容易であるためである。
【0051】
カラーフィルタ基板44は、有機EL素子P2からの光から赤色光、緑色光および青色光を取り出すためのものであり、光透過性の低いブラックマトリックス層45と、この層に形成された開口を塞ぐフィルタ層46とを有する。ブラックマトリックス層45には複数の開口があり、フィルタ層46には、赤色光だけを通過させるもの、緑色光だけを通過させるもの、および青色光だけを通過させるもの3種類がある。各フィルタ層46は有機EL素子P2に重なっており、重なっている有機EL素子P2からの光の赤色光成分、緑色光成分または青色光成分を透過させる。カラーフィルタ基板44は、ガスバリア層の保護をも目的としており、ブラックマトリックス層45およびフィルタ層46以外の部分は、ガラスまたは光透過性に優れたプラスチックから形成されている。このようなプラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレートやアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリオレフィンなどがある。カラーフィルタ基板44には、紫外線を遮断/吸収する機能、外光の反射を防止する機能、放熱する機能などを持たせてもよい。
【0052】
<B2:製造手順>
本実施の形態に係る有機ELパネルを製造するには、まず、主基板30上にTFT31および各種の配線と無機絶縁層32を形成する。次に、無機絶縁層32上に平坦化層33および金属反射層34を形成する。次に、金属反射層34の電飾腐食を防ぐため表面及びその周辺部を無機絶縁層で被覆した後、複数の陽極35を形成する。これにより、TFT31と陽極35とが1対1で接続される。陽極35の形成方法としては、陽極35の材料に適した公知の方法を採用可能である。次に、陽極35の一部と平坦化層33との上に、例えばポリイミドをパターン形成して画素隔壁絶縁層36を形成する。次に、主基板30上から有機系異物の除去や仕事関数を上げるために、プラズマ洗浄などの洗浄処理を行う。
【0053】
次に、露出している陽極35上に、複数の有機EL素子P2に共通の有機発光層37の残りの層を形成する。この形成では、発光層が低分子系有機EL材料で成膜される。有機発光層37の形成方法は、加熱ボートを用いた真空蒸着法である。これは、有機発光層37が発光層のみからなる場合であっても、複数の層からなる場合であっても同様である。有機発光層37が複数の層からなる場合には、各層を順に成膜することになる。
【0054】
次に、複数の有機EL素子P2に共通の電極、すなわち共通陰極層38を形成する。次に、酸素プラズマ処理を行う。次に、共通陰極層38を覆うように陰極保護層39を形成する。次に、減圧雰囲気スクリーン印刷法により、陰極保護層39上に有機緩衝層40を形成する。次に、酸素プラズマ処理を行い、有機緩衝層40の全てを覆うように有機緩衝層よりも広い範囲で第1のガスバリア層41を形成する。次に、第1のガスバリア層41上に、複数の有機EL素子P2の全部に重なりつつ、有機緩衝層の終端部が露出するように有機緩衝層よりも狭い範囲で第2のガスバリア層42を形成する。有機緩衝層40、第1のガスバリア層41および第2のガスバリア層42の形成材料や形成方法は、第1の実施の形態において述べた通りである。
【0055】
次に、無機絶縁層32、陰極保護層39、第1のガスバリア層41および第2のガスバリア層42を覆うように光透過性に優れた樹脂接着剤を塗布し、この樹脂接着剤にカラーフィルタ基板44の下面全面を接触させ、この樹脂接着剤を硬化させて接着層43を形成する。この硬化は、カラーフィルタ基板44の複数のフィルタ46と複数の有機EL素子P2とが1対1で重なる位置で行われる。カラーフィルタ基板44の接着のバリエーションとしては、第1の実施の形態における表面保護基板23の接着のバリエーションと同様のものがある。
【0056】
<B3:効果>
本実施の形態に係る有機ELパネルによれば、第1の実施の形態に係る有機ELパネルにより得られる効果と同様の効果が得られる。
【0057】
<C:変形例>
上述した実施の形態を変形し、単色光を発するパネルとしてもよいし、色変換層を有するフルカラーパネルとしてもよい。また、ボトムエミッションタイプのパネルとしてもよい。この場合、高い光透過性が要求されるのは発光層の下方の層に限られる。したがって、共通陰極層が発光層の上方に位置する場合には、共通陰極層を例えば低電気抵抗のアルミニウムなどの金属材料を厚くかつ全面に形成することも可能である。
【0058】
上述した実施の形態を変形し、第1のガスバリア層の下方に第2のガスバリア層が存在するようにしてもよいし、この第2のガスバリア層が有機緩衝層内に存在するようにしてもよい。また、ガスバリア層の数を3つ以上としてもよい。ただし、これらのガスバリア層には、有機緩衝層の終端部が露出するように有機緩衝層よりも狭い範囲で形成されるガスバリア層が少なくとも1つは含まれていなければならない。
【0059】
上述した実施の形態を変形し、ガスバリア層の数を1つとしてもよい。ただし、このガスバリア層は、有機緩衝層を覆い、複数の有機EL素子の全部に重なる部分が有機緩衝層の終端部を被覆する部分よりも厚いものでなければならない。このようなガスバリア層の形成方法は任意である。例えば、蒸着源を複数の有機EL素子の中央に近接させて配置することにより形成してもよいし、一様な厚さのガスバリア層を形成してから有機EL素子に重ならない部分をエッチングにより薄くして形成してもよい。
【0060】
<D:電子機器>
上述した有機ELパネルは様々な電子機器に適用可能である。上述した有機ELパネルを適用した電子機器として、ここでは、画像表示装置および画像印刷装置を例示する。
【0061】
<D1:画像表示装置>
上述した有機ELパネルを備えた画像表示装置は、有機ELパネルに電気エネルギおよび制御信号を供給するための配線と、外部の装置から与えられた画像データに応じた光像を有機ELパネルに形成させるための制御信号を生成する回路を備える。このような画像表示装置は様々な形態を採りうるが、ここでは、2つの例を挙げて説明する。
【0062】
図5に、上述した有機ELパネルを表示部31として用いたパーソナルコンピュータの構成を示す。パーソナルコンピュータ30は、表示ユニットとしての表示部31と本体部32を備える。本体部32には、電源スイッチ33及びキーボード34が設けられている。パーソナルコンピュータ30によれば、上述した有機ELパネルを表示部31として用いているから、表示部31の大型化、薄型化および軽量化の要請に応えることができる。また、有機ELパネルの発光品質が劣化し難いため、長期にわたる品質の維持が容易となる。
【0063】
図6に、上述した有機ELパネルを表示部41として用いた携帯電話機の構成を示す。携帯電話機40は、複数の操作ボタン42及びスクロールボタン43、並びに表示ユニットとしての表示部41を備える。スクロールボタン43を操作することによって、表示部41に表示される画面がスクロールされる。携帯電話機40によれば、有機ELパネルを表示部41として用いているから、表示部41の薄型化および軽量化の要請に応えることができる。また、有機ELパネルの発光品質が劣化し難いため、長期にわたる品質の維持が容易となる。
【0064】
<D2:画像印刷装置>
次に、上述した有機ELパネルを用いた画像印刷装置について説明する。この種の画像印刷装置の例としては、プリンタ、複写機の印刷部分およびファクシミリの印刷部分がある。このように、上述した有機ELパネルを用いた画像印刷装置は様々な形態を採りうるが、ここでは、電子写真方式のフルカラー画像印刷装置について2つの例を挙げて説明する。
【0065】
図7は、上述した有機ELパネルをライン型の露光ヘッドとして用いた画像印刷装置の一例を示す縦断面図である。この画像印刷装置は、ベルト中間転写体方式を利用したタンデム型のフルカラー画像印刷装置である。この画像印刷装置では、同様な構成の4個の露光ヘッド10K,10C,10M,10Yが、同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)110K,110C,110M,110Yの露光位置にそれぞれ配置されている。
【0066】
この図に示すように、この画像印刷装置には、駆動ローラ121と従動ローラ122が設けられており、これらのローラ121,122には無端の中間転写ベルト120が巻回されて、矢印に示すようにローラ121,122の周囲を回転させられる。図示しないが、中間転写ベルト120に張力を与えるテンションローラなどの張力付与手段を設けてもよい。
【0067】
この中間転写ベルト120の周囲には、互いに所定間隔をおいて4個の外周面に感光層を有する感光体ドラム110K,110C,110M,110Yが配置される。添え字K,C,M,Yはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの顕像を形成するために使用されることを意味している。他の部材についても同様である。感光体ドラム110K,110C,110M,110Yは、中間転写ベルト120の駆動と同期して回転駆動される。
【0068】
各感光体ドラム110(K,C,M,Y)の周囲には、コロナ帯電器111(K,C,M,Y)と、露光ヘッド10(K,C,M,Y)と、現像器114(K,C,M,Y)が配置されている。コロナ帯電器111(K,C,M,Y)は、対応する感光体ドラム110(K,C,M,Y)の外周面を一様に帯電させる。露光ヘッド10(K,C,M,Y)は、感光体ドラムの帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。各露光ヘッド10(K,C,M,Y)は、複数の有機EL素子の配列方向が感光体ドラム110(K,C,M,Y)の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、上記の複数の有機EL素子により光を感光体ドラムに照射することにより行う。現像器114(K,C,M,Y)は、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラムに顕像すなわち可視像を形成する。
【0069】
このような4色の単色顕像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各顕像は、中間転写ベルト120上に順次一次転写されることにより、中間転写ベルト120上で重ね合わされて、この結果フルカラーの顕像が得られる。中間転写ベルト120の内側には、4つの一次転写コロトロン(転写器)112(K,C,M,Y)が配置されている。一次転写コロトロン112(K,C,M,Y)は、感光体ドラム110(K,C,M,Y)の近傍にそれぞれ配置されており、感光体ドラム110(K,C,M,Y)から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写コロトロンの間を通過する中間転写ベルト120に顕像を転写する。
【0070】
最終的に画像を形成する対象としてのシート102は、ピックアップローラ103によって、給紙カセット101から1枚ずつ給送されて、駆動ローラ121に接した中間転写ベルト120と二次転写ローラ126の間のニップに送られる。中間転写ベルト120上のフルカラーの顕像は、二次転写ローラ126によってシート102の片面に一括して二次転写され、定着部である定着ローラ対127を通ることでシート102上に定着される。この後、シート102は、排紙ローラ対128によって、装置上部に形成された排紙カセット上へ排出される。
上述した画像印刷装置によれば、上述した有機ELパネルを露光ヘッド10(K,C,M,Y)として用いているから、露光ヘッドの小型化の要請に応えることができる。また、有機ELパネルの発光品質が劣化し難いため、長期にわたる品質の維持が容易となる。
【0071】
図8は、上述した有機ELパネルをライン型の露光ヘッドとして用いた他の画像印刷装置の一例を示す縦断面図である。この画像印刷装置は、ベルト中間転写体方式を利用したロータリ現像式のフルカラー画像印刷装置である。
【0072】
この図に示す画像印刷装置において、感光体ドラム(像担持体)165の周囲には、コロナ帯電器168、ロータリ式の現像ユニット161、露光ヘッド167、中間転写ベルト169が設けられている。
【0073】
コロナ帯電器168は、感光体ドラム165の外周面を一様に帯電させる。露光ヘッド167は、感光体ドラム165の帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。露光ヘッド167は、上述した有機ELパネルであり、複数の有機EL素子の配列方向が感光体ドラム165の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、上記の複数の有機EL素子により光を感光体ドラムに照射することにより行う。
【0074】
現像ユニット161は、4つの現像器163Y,163C,163M,163Kが90°の角間隔をおいて配置されたドラムであり、軸161aを中心にして反時計回りに回転可能である。現像器163Y,163C,163M,163Kは、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ、黒のトナーを感光体ドラム165に供給して、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラム165に顕像すなわち可視像を形成する。
【0075】
無端の中間転写ベルト169は、駆動ローラ170a、従動ローラ170b、一次転写ローラ166およびテンションローラに巻回されて、これらのローラの周囲を矢印に示す向きに回転させられる。一次転写ローラ166は、感光体ドラム165から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写ローラ166の間を通過する中間転写ベルト169に顕像を転写する。
【0076】
具体的には、感光体ドラム165の最初の1回転で、露光ヘッド167によりイエロー(Y)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Yにより同色の顕像が形成され、さらに中間転写ベルト169に転写される。また、次の1回転で、露光ヘッド167によりシアン(C)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Cにより同色の顕像が形成され、イエローの顕像に重なり合うように中間転写ベルト169に転写される。そして、このようにして感光体ドラム9が4回転する間に、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の顕像が中間転写ベルト169に順次重ね合わせられ、この結果フルカラーの顕像が転写ベルト169上に形成される。最終的に画像を形成する対象としてのシートの両面に画像を形成する場合には、中間転写ベルト169に表面と裏面の同色の顕像を転写し、次に中間転写ベルト169に表面と裏面の次の色の顕像を転写する形式で、フルカラーの顕像を中間転写ベルト169上で得る。
【0077】
画像印刷装置には、シートが通過させられるシート搬送路174が設けられている。シートは、給紙カセット178から、ピックアップローラ179によって1枚ずつ取り出され、搬送ローラによってシート搬送路174を進行させられ、駆動ローラ170aに接した中間転写ベルト169と二次転写ローラ171の間のニップを通過する。二次転写ローラ171は、中間転写ベルト169からフルカラーの顕像を一括して静電的に吸引することにより、シートの片面に顕像を転写する。二次転写ローラ171は、図示しないクラッチにより中間転写ベルト169に接近および離間させられるようになっている。そして、シートにフルカラーの顕像を転写する時に二次転写ローラ171は中間転写ベルト169に当接させられ、中間転写ベルト169に顕像を重ねている間は二次転写ローラ171から離される。
【0078】
上記のようにして画像が転写されたシートは定着器172に搬送され、定着器172の加熱ローラ172aと加圧ローラ172bの間を通過させられることにより、シート上の顕像が定着する。定着処理後のシートは、排紙ローラ対176に引き込まれて矢印Fの向きに進行する。両面印刷の場合には、シートの大部分が排紙ローラ対176を通過した後、排紙ローラ対176が逆方向に回転させられ、矢印Gで示すように両面印刷用搬送路175に導入される。そして、二次転写ローラ171により顕像がシートの他面に転写され、再度定着器172で定着処理が行われた後、排紙ローラ対176でシートが排出される。
上述した画像印刷装置によれば、上述した有機ELパネルを露光ヘッド167として用いているから、露光ヘッドの小型化の要請に応えることができる。また、有機ELパネルの発光品質が劣化し難いため、長期にわたる品質の維持が容易となる。
【0079】
以上、画像印刷装置を例示したが、発光装置10は、他の電子写真方式の画像印刷装置にも応用可能である。例えば、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラムから直接シートに顕像を転写するタイプの画像印刷装置や、モノクロの画像を形成する画像印刷装置、像担持体として感光体ベルトを用いる画像印刷装置にも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る有機ELパネルの断面図である。
【図2】同図の一部Aを拡大して示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る有機ELパネルの断面図である。
【図4】同図の一部Bを拡大して示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る有機ELパネルを用いたパーソナルコンピュータの外観を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る有機ELパネルを用いた携帯電話機の外観を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る有機ELパネルを用いた画像印刷装置の一例を示す縦断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る有機ELパネルを用いた画像印刷装置の他の例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0081】
10,30……主基板(基板)、14,36……バンク、16,37……有機発光層、17,38……共通陰極層、18,39……陰極保護層、19,40……有機緩衝層、20,41……第1のガスバリア層、21,42……第2のガスバリア層、P1,P2……有機EL素子(発光素子)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、絶縁性の画素隔壁により分離された陽極と、有機発光層薄膜と陰極が順次積層された電界により励起して発光する複数の発光素子と、
有機化合物から形成され、前記複数の発光素子領域よりも広い範囲を覆い、前記基板上の陰極上面よりも段差が小さく略平坦化された有機化合物からなる有機緩衝層と、
無機化合物から形成され、前記有機緩衝層の外側に配置され、前記複数の発光素子を外気から保護する第1および第2のガスバリア層とを備え、
前記第1のガスバリア層または前記第2のガスバリア層のどちらか一方だけが、有機緩衝層よりも広い範囲を覆うように基板上の無機化合物からなる絶縁層表面と接している、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記陰極と有機緩衝層の間に、無機化合物からなる陰極保護層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1のガスバリア層は、前記有機緩衝層よりも広い範囲を覆い、
前記第2のガスバリア層は、前記有機緩衝層よりも狭く、かつ前記複数の発光素子領域よりも広い範囲を被覆することを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第2のガスバリア層は前記第1のガスバリア層よりも厚いことを特徴とする請求項1または2または3に記載の発光装置。
【請求項5】
基板上に、絶縁性の画素隔壁により分離された陽極と有機発光層薄膜と陰極が順次積層された電界により励起して発光する複数の発光素子と、
有機化合物から形成され、前記複数の発光素子領域よりも広い範囲を覆い、前記基板上の陰極表面よりも段差が小さく略平坦化された有機化合物からなる有機緩衝層と、
無機化合物から形成され、前記有機緩衝層を覆って前記複数の発光素子を外気から保護するガスバリア層とを備え、
前記ガスバリア層において、前記複数の発光素子領域を被覆する部分は、有機緩衝層の終端部を覆う周囲の部分よりも厚い、ことを特徴とする発光装置。
【請求項6】
前記有機緩衝層の終端部において前記有機緩衝層の上面と前記基板上の無機化合物からなる絶縁層表面の上面とがなす角は20度以下である、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の発光装置を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−141749(P2007−141749A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336650(P2005−336650)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】