説明

発光装置および電子機器

【課題】反射膜27の端部において無機絶縁膜25にクラックが発生するのを抑制することが可能な発光装置を提供する。
【解決手段】素子基板2上に設けられた有機絶縁膜284と、有機絶縁膜284の表面に形成された反射膜27と、反射膜27の表面に無機絶縁膜25を介して配置された発光素子3とを備え、複数の発光素子3G,3B,3Rが整列配置されてなる表示装置であって、反射膜27は、複数の発光素子3G,3B,3Rと平面視において重なるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光素子であるEL(エレクトロルミネッセンス)素子を画素として用いたEL装置の開発が進められている。特許文献1には、発光装置の発光素子として、絶縁表面上に形成されたTFT上に、有機樹脂材料から成る層間絶縁膜が形成され、当該層間絶縁膜上に、一対の電極間に有機化合物から成る発光層が形成されたものが記載されている。
【0003】
特許文献1によれば、層間絶縁膜として適した有機樹脂材料は、水蒸気を透過し、水分を吸収しやすいという特性を持っている。一方、有機化合物層は、低分子系、高分子系によらず、酸素や水分に極めて弱く、すぐ劣化してしまうという欠点を有している。さらに発光素子の陽極もしくは陰極に、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属が用いられ、これらは酸素により酸化しやすい。すなわち水分は発光素子の劣化の要因となり、ダークスポット等の不良の原因となる。
そこで特許文献1には、層間絶縁膜と発光素子との間に、珪素と窒素とを主成分とする無機絶縁膜、或いはSP3結合を有し水素を含有する炭素膜が形成された発光装置が提案されている。
【0004】
特許文献1の発光装置は、発光層からの光を素子基板側から取り出すボトムエミッション型の有機EL装置であるが、最近では、光を主に素子基板とは反対側から取り出すトップエミッション型の有機EL装置の開発が進められている。
図8および図9は従来技術に係る発光装置の説明図である。図8(a)は平面図であり、図8(b)は図8(a)のA−A´線における断面図であり、図9は図8(a)のC−C´線における断面図である。トップエミッション型の有機EL装置では、図8(b)に示すように、発光層60の素子基板2側に反射膜27が設けられている。この反射膜27と画素電極23との間に、特許文献1と同様の無機絶縁膜25が形成されている。
【0005】
一般に有機EL発光素子3は、発光層60から取り出される光のスペクトルがブロードで、発光輝度も小さく、表示装置に適用した場合に、十分な色再現性が得られないという問題があった。そこで、光共振構造を備えた有機EL装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この光共振器構造を備えた有機EL装置においては、発光層から発光した光は、反射膜27と共通電極50との間で往復し、その光学的距離に対応した共振波長の光だけが増幅されて取り出される。このため、発光輝度が高く、スペクトルもシャープな光を取り出すことができるようになっている。また、発光素子ごとに画素電極23の厚み(すなわち、反射膜27と共通電極50との間の光学的距離)を変えることで、赤(R),緑(G),青(B)に対応した波長の光を取り出すこともできる。
【特許文献1】特開2003−114626号公報
【特許文献2】特許第2797883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した有機EL装置では、図8(a)に示すように、反射膜27の角部を起点に、反射膜27の端部に沿って、クラック90が発生する場合がある。図9に示すように、クラック90は、無機絶縁膜25および画素電極23を貫通するように発生する。このクラック90は、有機絶縁膜284や反射膜27、無機絶縁膜25、画素電極23などの成膜時の残留応力や、熱膨張率の違いによる熱応力等が、反射膜27の端部に集中するために発生すると考えられる。無機絶縁膜25および画素電極23にクラック90が発生すると、有機絶縁膜284に含まれていた水分などが、有機EL発光素子3に拡散する。これにより、ダークスポットと呼ばれる欠陥が発生するという問題がある。
【0007】
さらに、発光素子ごとに画素電極23の厚さを変え、光共振条件を満たした有機EL装置では、青色発光素子3Bにおいて高い頻度でダークスポットが発生する。これは、青色発光素子3Bの画素電極が最も薄く設定されているため、クラックへの耐性がもっとも小さいからであると考えられる。
なお、光共振条件を満たすためには、無機絶縁膜の厚さを極めて薄くする必要がある。そのため、無機絶縁膜を厚くしてクラックの発生を抑制することは困難である。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、無機絶縁膜および画素電極にクラックが発生するのを抑制することが可能な、発光装置の提供を目的とする。また、信頼性に優れた電子機器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る発光装置は、基板の一方面側に設けられた有機絶縁膜と、前記有機絶縁膜の前記一方面側に形成された反射膜と、前記反射膜の前記一方面側に無機絶縁膜を介して形成された発光素子とを備え、複数の前記発光素子が整列配置されてなる発光装置であって、前記反射膜は、複数の前記発光素子と平面視において重なるように形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、反射膜の角部および端部が少なくなるので、無機絶縁膜にクラックが発生するのを抑制することができる。
【0010】
また前記発光装置は、異なる色光の前記発光素子が整列配置されてなり、前記反射膜は、異なる色光のうち青色の前記発光素子に加えて、前記青色発光素子の両側に隣接する青色以外の前記発光素子と平面視において重なるように形成されていることが望ましい。
この構成によれば、青色発光素子の周囲に反射膜の角部が配置されないので、無機絶縁膜にクラックが発生するのを抑制することができる。
【0011】
また前記反射膜は、前記有機絶縁膜の前記一方面側を覆うように形成されていることが望ましい。
この構成によれば、反射膜の角部および端部が少なくなるので、無機絶縁膜にクラックが発生するのを抑制することができる。
【0012】
また前記反射膜は、前記有機絶縁膜の貫通孔の内面を覆うように形成されていることが望ましい。
この構成によれば、反射膜によって有機絶縁膜の略全面を覆うことができるので、有機絶縁膜からの水分の流出を防止することができる。
【0013】
また前記反射膜は、前記有機絶縁膜の貫通孔の底部に配置された無機材料層の前記一方面側で開口していることが望ましい。
この構成によれば、反射膜の開口端部において無機絶縁膜にクラックが発生するのを抑制することができる。
【0014】
また前記無機絶縁膜は、前記反射膜を電極とした陽極酸化法によって形成されていることが望ましい。
この構成によれば、反射膜の表面全体に欠陥の極めて少ない緻密な無機絶縁膜を形成することが可能になる。また、無機反射膜の製造コストを低減することができる。
【0015】
また前記発光装置は、複数の前記発光素子に対する共通電極を備え、前記反射膜は、前記共通電極と電気的接続されていることが望ましい。
この構成によれば、共通電極の導電性を向上させることができる。また共通電極の表面に補助電極を設ける必要がなくなり、製造コストを低減することができる。
【0016】
また前記発光素子は、有機材料からなる発光層を含んでいてもよい。
この構成によれば、クラックの発生を抑制することにより、有機絶縁膜からの水分の拡散を防止することが可能になる。したがって、有機材料を含む発光素子の劣化を抑制することができる。
【0017】
一方、本発明に係る電子機器は、上述した発光装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、クラックの発生を抑制することが可能な発光装置を備えているので、信頼性に優れた電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下で参照する各図面においては、理解を容易にするために、各構成要素の寸法等を適宜変更して表示している。
【0019】
(第1実施形態)
図1および図2は、第1実施形態に係る発光装置の説明図である。なお図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A´線における断面図であり、図2は図1(a)のB−B´線における断面図である。図1(b)に示すように、第1実施形態に係る発光装置は、光共振構造を備えたトップエミッション型の有機EL装置であって、青色発光素子3B並びにその両側の緑色発光素子3Gおよび赤色発光素子3Rと平面視において重なるように、反射膜27が形成されたものである。
【0020】
(有機EL装置)
図1(b)に示すトップエミッション型の有機EL装置では、発光層60における発光光を封止基板30側から取り出すので、素子基板2としては透明基板のほか不透明基板を用いることも可能である。透明基板としては、ガラスや石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等を用いることが可能であり、特にガラス基板が好適に用いられる。
【0021】
素子基板2上には、発光素子3の駆動用TFT(スイッチング素子)123などを含む駆動回路部5が形成されている。なお、駆動回路を備えた半導体素子(ICチップ)を素子基板2に実装して、有機EL装置を構成することも可能である。
【0022】
駆動回路部5の表面には、SiOを主体とする第1層間絶縁層283が形成されている。その第1層間絶縁層283の上層には、感光性、絶縁性および耐熱性を備えたアクリル系やポリイミド系等の樹脂材料を主体とする、有機絶縁膜(平坦化膜)284が形成されている。この有機絶縁膜284は、駆動用TFT123やソース電極243、ドレイン電極244などによる表面の凹凸を抑制するために形成されている。
【0023】
その有機絶縁膜284の表面には、後に詳述する反射膜27が形成されている。その反射膜27の表面には、SiOやSiNなどからなる無機絶縁膜(パッシベーション膜、エッチング保護膜)25が形成されている。この無機絶縁膜25は、反射膜27と後述する画素電極23とを電気的に分離するとともに、両者間の電触を防止する機能を有している。また無機絶縁膜25は、画素電極23をパターニングする際のエッチング液から、反射膜27および有機絶縁膜284を保護する機能を有している。なお上述した有機絶縁膜284は水分を含みやすく、また後述する発光素子3は水分によって劣化しやすいという性質を有する。そこで無機絶縁膜25は、有機絶縁膜284から発光素子3への水分の浸入を遮断する機能を有している。
【0024】
そして、無機絶縁膜25の表面には、画素電極23が形成されている。図1(a)に示すように、画素電極23は発光素子3の形成領域よりも広く形成され、発光装置の開口率の向上が図られている。また複数の画素電極23が、マトリクス状に整列配置されている。なお発光素子3の形成領域に隣接して、有機絶縁膜を貫通するコンタクトホール70が形成されている。図2に示すように、このコンタクトホール(貫通孔)70を通して、画素電極23と駆動用TFT123のドレイン電極244とが電気的接続されている。
【0025】
図1(b)に戻り、画素電極23の周囲には、ポリイミド等の有機絶縁材料からなる有機隔壁221が形成されている。この有機隔壁221は、画素電極23の周縁部に乗り上げるように形成されている。そして、有機隔壁221の開口部221aの内側に、複数の機能膜が積層形成されて、発光素子3が構成されている。すなわち、有機隔壁221の開口部221aにより、発光素子3の形成領域が規定されている。
【0026】
発光素子3は、陽極として機能する画素電極23と、有機EL物質からなる発光層60と、陰極として機能する共通電極50とを少なくとも積層して構成されている。この発光素子3により画像表示単位となるサブ画素が構成され、異なる色光の発光素子(緑色発光素子3G、青色発光素子3B、赤色発光素子3R)の組み合わせにより1個の画素が構成されている。
【0027】
陽極として機能する画素電極23は、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電材料によって形成されている。
【0028】
なお、画素電極23と発光層60との間に、画素電極23から供給された正孔を発光層60に注入/輸送する正孔注入層を設けてもよい。正孔注入層の形成材料としては、特に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液が好適に用いられる。具体的には、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させたものが好適に用いられる。
なお、正孔注入層の形成材料としては、前記のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、適宜な分散媒、例えば前記のポリスチレンスルフォン酸に分散させたものなどが使用可能である。またα−NPD(4,4'-ビス-[N-(ナフチル)-N-フェニル-アミノ]ビフェニル)やMTDATA(4,4',4"-トリス(N-3-メチルフェニル-N-フェニル-アミノ)トリフェニルアミン)などの芳香族アミンや銅フタロシアニン(CuPc)などのフタロシアニンやその誘導体などの低分子材料を真空蒸着などの方法で正孔注入層として形成することもできる。
【0029】
発光層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料が用いられる。具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。またカルバゾール(CBP)などの低分子材料にこれらの低分子色素をドープして発光層とすることもできる。またトリス−8−キノリノラトアルミニウム錯体(Alq3)を電子輸送層として発光層の一部として加えることもできる。
【0030】
陰極として、素子基板2の略全面を覆う共通電極50が形成されている。共通電極50は、仕事関数の小さいマグネシウム(Mg)、リチウム(Li)若しくはカルシウム(Ca)を含む材料を用いる。好ましくはMgAg(MgとAgをMg:Ag=10:1で混合した材料)でなる薄膜の透光性電極を用いれば良い。他にもMgAgAl電極、LiAl電極、また、LiFAl電極が挙げられる。またこれらの金属薄膜とITO等の透明導電材料を積層した膜を共通陰極50とすることもできる。
トップエミッション型の有機EL装置では、光取出し効率を向上させるため共通電極50が薄膜状に形成されるので、共通電極50の導電性が低くなっている。そこで、図1(a)に示すように、共通電極の表面にライン状の補助電極52が形成されている。この補助電極52は、上述した共通電極の導電性を補助するものであり、導電性に優れたAlやAu、Ag等の金属材料で構成されている。また補助電極52は、開口率の低下を防止するため、サブ画素の周囲に配置されている。なお、補助電極52を遮光膜として機能させることも可能である。また補助電極52は、素子基板の表面を横断するように延設されている。なお複数の補助電極52が、一方向にストライプ状に整列配置されていてもよく、二方向に格子状に整列配置されていてもよい。
【0031】
図1(b)に戻り、共通電極50の表面には、SiO等からなる無機封止膜41が形成されている。さらに接着層40を介して、ガラス等の透明材料からなる封止基板30が貼り合わされている。この無機封止膜41により、封止基板30側から発光素子3への水分や酸素等の浸入が防止されている。なお、共通電極50の全体を覆う封止キャップを素子基板2の周縁部に固着し、その封止キャップの内側に水分や酸素等を吸収するゲッター剤を配置してもよい。
【0032】
上述した有機EL装置では、外部から供給された画像信号が、駆動用TFT123により所定のタイミングで画素電極23に印加される。そして、その画素電極23から注入された正孔と、共通電極50から注入された電子とが、発光層60で再結合して所定波長の光が放出される。なお発光層60は画素電極23との接触領域において正孔の注入を受けるので、発光層60のうち画素電極23との接触領域が発光部になる。その発光部から共通電極50側に放出された光は、透明材料からなる封止基板30を透過して外部に取り出される。また画素電極23側に放出された光は、反射膜27により反射され、封止基板30から外部に取り出される。これにより、封止基板30側において画像表示が行われるようになっている。
【0033】
(光共振構造)
図1(b)に示す共通電極50は、発光層60から発光した光の一部を透過し残りの光を反射膜27側に反射する、半透過反射膜として機能する。一般に、金属薄膜等の透光性導電膜は、発光層60との界面で10〜50%程度の反射率を有しており、特段の工夫を施さなければ、このような透光性導電膜を用いた共通電極50は、上記のような半透過反射膜としての機能を有するものとなっている。発光層60は、このような半透過反射機能を有する共通電極50と反射膜27との間に挟持されており、これら共通電極50と反射膜27との間で、発光層60から発光した光を共振させる光共振構造が形成されている。この有機EL装置では、発光層60から発光した光は、反射膜27と共通電極50との間で往復し、その光学的距離に対応した共振波長の光だけが増幅されて取り出される。このため、発光輝度が高く、スペクトルもシャープな光を取り出すことができる。
【0034】
各色発光素子3G,3B,3Rから出力される光は、当該発光素子に形成された光共振器構造の共振波長、すなわち反射膜27と共通電極50との間の光学的距離に対応した波長の光である。この光学的距離は、反射膜27と共通電極50との間に配置される各層の光学的距離の総和として得られる。各層の光学的距離は、その膜厚と屈折率との積によって求められる。各色発光素子3G,3B,3Rでは、それぞれ出力される光の色が異なるため、これらの発光素子3G,3B,3Rに設けられる光共振器構造の共振波長もそれぞれ異なっている。これらの共振波長は、本実施形態の場合、発光素子の素子基板2側の電極である画素電極23の膜厚によって調節されている。各色発光素子における画素電極23の膜厚は、共振波長が最も大きくなる赤色発光素子3Rで最大となり、その次に緑色発光素子3G、青色発光素子3Bの順で膜厚が小さくなっている。
【0035】
これらの発光素子3G,3B,3Rでは、出力される光の色は画素電極23の膜厚によって調節されているので、発光層60の材料は、必ずしも各色発光素子で異なっている必要はない。このため、各色発光素子3G,3B,3Rの発光層材料を白色発光材料によって共通化することも可能である。この場合、各色発光素子3G,3B,3Rの各々について寿命を等しくすることができるので、長期間使用しても表示の色味が変わることはない。ただし、特定の波長の光以外は表示に寄与しないので、光利用効率を高めたい場合には、画素毎に適切な発光材料を配置する方が好ましい。すなわち、各色発光素子3G,3B,3Rに対して、それぞれ赤色発光材料,緑色発光材料,青色発光材料を配置し、これらの発光材料のピーク波長に合わせて光共振器構造の光学的距離を調節すれば、光利用効率が高く、より高輝度な表示が可能となる。
【0036】
(反射膜)
図1(b)に示すように、有機絶縁膜284の表面には、反射膜27が形成されている。この反射膜27は、AgやAl等の高反射率の金属材料で構成することが望ましい。図1(a)に示すように、反射膜27は、平面視(基板2の法線方向からみた場合)において、複数の発光素子3G,3B,3Rと重なるように形成されている。すなわち、各色発光素子3G,3B,3Rの形成領域より広範囲に、反射膜27が形成されている。なお反射膜27の端部は、画素電極23の端部より内側に配置されていてもよく、外側に配置されていてもよい。また反射膜27の端部は、図2に示すように有機絶縁膜284の表面のみに形成されていてもよく、コンタクトホールの内面に延設されていてもよい。
【0037】
図1(a)に戻り、本実施形態では、青色発光素子3Bを中心として、青色発光素子3Bの両側に隣接配置された緑色発光素子3Gおよび赤色発光素子3Rと平面視において重なるように、反射膜27が形成されている。すなわち、各色発光素子3G,3B,3Rを備えた3個のサブ画素で構成される1個の画素につき、1個の反射膜27が形成されている。なお、複数の画素につき1個の反射膜27を形成してもよい。
【0038】
ところで、図8(b)に示す従来技術に係る有機EL装置では、発光素子3G,3B,3Rごとに反射膜27が分離形成されている。この有機EL装置では、図8(a)に示すように、反射膜27の角部を起点に、反射膜27の端部に沿って、クラック90が発生する場合がある。図9に示すように、クラック90は、無機絶縁膜25および画素電極23を貫通するように発生する。このクラック90は、有機絶縁膜284や反射膜27、無機絶縁膜25、画素電極23などの成膜時の残留応力や、熱膨張率の違いによる熱応力等が、反射膜27の端部に集中するために発生すると考えられる。
【0039】
これに対して、図1(b)に示す本実施形態では、複数の発光素子3G,3B,3Rと平面視において重なるように、反射膜27が形成されている。言い換えれば、複数の発光素子の形成領域に跨って共通して反射膜27が形成されている。この構成によれば、反射膜27の角部および端部が少なくなるので、無機絶縁膜25および画素電極23にクラックが発生するのを抑制することができる。これにより、有機絶縁膜284に含まれていた水分などが、クラックを通って発光素子3に拡散するのを防止することが可能になる。したがって、ダークスポットの発生等の欠陥を防止することができる。また反射膜27の端部が少なくなるので、開口率を向上させることができる。
【0040】
また図8(b)に示すように、発光素子3ごとに画素電極23の厚さを変え、光共振条件を満たした有機EL装置では、青色発光素子3Bにおいて高い頻度でダークスポットが発生する。これは、青色発光素子3Bの画素電極23が最も薄く設定されているため、クラックへの耐性がもっとも小さいからであると考えられる。
これに対して、図1(a)に示す本実施形態では、青色発光素子3Bを中心として、青色発光素子3Bの両側に隣接配置された緑色発光素子3Gおよび赤色発光素子3Rと平面視において重なるように、反射膜27が形成されている。この構成によれば、青色発光素子3Bの周囲に反射膜27の角部が配置されないので、青色発光素子3Bの画素電極23にクラックが発生するのを防止することができる。これにより、ダークスポットの発生を効果的に抑制することができる。
【0041】
(第2実施形態)
図3および図4は、第2実施形態に係る発光装置の説明図である。なお図3(a)は平面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A´線における断面図であり、図4は図3(a)のB−B´線における断面図である。図3(b)に示すように、第2実施形態に係る発光装置は、反射膜27が素子基板2の略全面に形成されている点で、画素ごとに形成されている第1実施形態とは異なっている。なお第1実施形態と同様の構成となる部分については、その詳細な説明を省略する。
【0042】
図3(b)に示すように、有機絶縁膜284の表面を覆うように、反射膜27が形成されている。図4に示すように、その反射膜27は、コンタクトホール70の内面を覆うように延設されている。そのコンタクトホール70の底部には、第1層間絶縁層283が形成されている。そして反射膜27は、その第1層間絶縁層283の表面で開口し、その開口部を通して画素電極とドレイン電極とが電気的接続されている。これにより、本実施形態における反射膜27の端部は、コンタクトホール70の底部に形成された開口端部のみとなっている。しかもその開口端部は、コンタクトホール70の内面から離間配置されている。
【0043】
第2実施形態では、反射膜27が素子基板2の略全面に形成されているので、反射膜を電極とした陽極酸化法により無機絶縁膜を形成することが望ましい。具体的には、Al材料からなる反射膜27を陽極に接続し、白金電極を陰極に接続する。そして、約5%の濃度を有する硫酸水溶液41中で、反射膜27の表面と白金電極の表面とを対向配置し、約30Vの電圧を印加することにより約20分間の酸化処理を行う。これにより、反射膜27の表面に微細な孔を有する酸化アルミニウム層が自己組織化的に形成される。このような構成とすることで光共振構造により生じた過剰な光取り出し方向の指向性を緩和することができる。また有機酸などを用いて微細な孔のない平坦な酸化アルミニウム層を形成してもよい。
このように陽極酸化法を用いることにより、反射膜の表面全体に欠陥の極めて少ない緻密な無機絶縁膜を形成することが可能になる。また、無機反射膜の製造コストを低減することができる。
【0044】
第2実施形態の構成によれば、反射膜27の端部が少なくなるので、無機絶縁膜25におけるクラックの発生を抑制することができる。また反射膜27の端部は、有機絶縁膜284の表面ではなく、無機材料からなる第1層間絶縁層283の表面に配置されているので、クラックの発生を防止することができる。なお金属材料からなる反射膜が軟らかい有機絶縁膜284と硬い無機絶縁膜との間に形成されることで、界面で発生するストレスが緩和されクラックや膜はがれなどが防止される。仮に反射膜27の端部において無機絶縁膜25にクラックが発生しても、反射膜27の端部は有機絶縁膜284から離間配置されているので、有機絶縁膜284に含まれていた水分などがクラックを通って発光素子3に拡散することはない。したがって、ダークスポットの発生等の欠陥を防止することができる。
【0045】
また第2実施形態の構成によれば、駆動用TFT123が反射膜によって覆われるので、駆動用TFT123への入射光を遮断することが可能になり、駆動用TFT123における光リーク電流の発生を防止することができる。
【0046】
(第3実施形態)
図5および図6は、第3実施形態に係る発光装置の説明図である。なお図5は平面図であり、図6は図5のC−C´線における断面図である。なお図5のA−A´線における断面図は、図3(a)と同様である。図6に示すように、第3実施形態に係る発光装置は、反射膜27と共通電極50とが電気的接続されている点で、第2実施形態と異なっている。なお第1実施形態および第2実施形態と同様の構成になる部分については、その詳細な説明を省略する。
【0047】
図5に示すように、本実施形態では、青色発光素子3Bの形成領域に隣接して、有機隔壁を貫通するコンタクトホール80が形成されている。なおコンタクトホール80は、他の発光素子の端部に形成されていてもよく、全ての発光素子の端部に形成されていてもよい。図6に示すように、有機隔壁221を貫通するコンタクトホール80の底部に、素子基板2の略全面に形成された反射膜27の一部が露出している。そして、共通電極50が有機隔壁221の表面からコンタクトホール80の内部に延設され、反射膜27と電気的接続されている。なお共通電極50と反射膜27との間に、他の導電性材料23aが介在していてもよい。
【0048】
第3実施形態の構成によれば、素子基板2の略全面に反射膜27が形成され、反射膜27と共通電極50とが電気的接続されているので、反射膜27を共通電極50の補助電極として機能させることが可能になる。これにより、共通電極の表面に補助電極を形成する必要がなくなり、製造コストを低減することができるとともに、発光装置の開口率を向上させることができる。
【0049】
(電子機器)
次に、上記各実施形態の有機EL装置を備えた電子機器につき図7を用いて説明する。
図7は、電子機器の一例である携帯電話機の斜視構成図である。同図に示す携帯電話機1300は、複数の操作ボタン1302と、受話口1303と、送話口1304と、先の実施形態の有機EL装置からなる表示部1301とを備えて構成されている。この表示部には、上記各実施形態の有機EL装置が採用されている。上記各実施形態の発光装置では、ダークスポットの発生を防止することができるので、信頼性に優れた携帯電話機を提供することができる。
【0050】
なお、本発明における発光装置を備えた電子機器としては、上記のものに限らず、他に例えば、デジタルカメラ、パーソナルコンピュータ、テレビ、携帯用テレビ、ビューファインダ型・モニタ直視型のビデオテープレコーダ、PDA、携帯用ゲーム機、ページャ、電子手帳、電卓、時計、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器などを挙げることができる。また、本発明における有機EL装置を備えた電子機器として、車載用オーディオ機器や自動車用計器、カーナビゲーション装置等の車載用ディスプレイ、プリンタ用の光書き込みヘッド等を挙げることもできる。
【0051】
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、各実施形態で挙げた具体的な材料や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。例えば、本発明に係る表示装置は、トップエミッション型の有機EL装置のマイクロキャビティ構造を有した表示装置や、反射型の液晶装置、半透過反射型の液晶装置等にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1実施形態に係る発光装置の平面図および断面図である。
【図2】第1実施形態に係る発光装置の断面図である。
【図3】第2実施形態に係る発光装置の平面図および断面図である。
【図4】第2実施形態に係る発光装置の断面図である。
【図5】第3実施形態に係る発光装置の平面図である。
【図6】第3実施形態に係る発光装置の断面図である。
【図7】携帯電話の斜視図である。
【図8】従来技術に係る発光装置の平面図および断面図である。
【図9】従来技術に係る発光装置の断面図である。
【符号の説明】
【0053】
2…素子基板 3…発光素子 3G…緑色発光素子 3B…青色発光素子 3R…赤色発光素子 23…画素電極 25…無機絶縁膜 27…反射膜 50…共通電極 60…発光層 70…コンタクトホール(貫通孔) 283…第1層間絶縁層(無機材料層) 284…有機絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方面側に設けられた有機絶縁膜と、前記有機絶縁膜の前記一方面側に形成された反射膜と、前記反射膜の前記一方面側に無機絶縁膜を介して形成された発光素子とを備え、複数の前記発光素子が整列配置されてなる発光装置であって、
前記反射膜は、複数の前記発光素子と平面視において重なるように形成されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記発光装置は、異なる色光の前記発光素子が整列配置されてなり、
前記反射膜は、異なる色光のうち青色の前記発光素子に加えて、前記青色発光素子の両側に隣接する青色以外の前記発光素子と平面視において重なるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記反射膜は、前記有機絶縁膜の前記一方面側を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記反射膜は、前記有機絶縁膜の貫通孔の内面を覆うように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記反射膜は、前記有機絶縁膜の貫通孔の底部に配置された無機材料層の前記一方面側で開口していることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記無機絶縁膜は、前記反射膜を電極とした陽極酸化法によって形成されていることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光装置は、複数の前記発光素子に対する共通電極を備え、
前記反射膜は、前記共通電極と電気的接続されていることを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記発光素子は、有機材料からなる発光層を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の発光装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−188751(P2007−188751A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5770(P2006−5770)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】