説明

発光装置および電子機器

【課題】 温度に依存する発光素子の特性を迅速に所期の特性に遷移させる。
【解決手段】 発光装置10は、複数の発光素子Eを基板21の面状に配列してなる発光パネル20と、各発光素子Eの周辺の温度を検出する温度センサ32と、各発光素子Eを加熱する電熱体34と、各発光素子Eを冷却する冷却体36とを含む。制御装置50は、温度センサ32からの信号に応じて特定される温度Tが所定の温度T1を下回る場合には電熱体34を作動させて各発光素子Eを加熱する一方、温度Tが所定の温度T2を上回る場合には冷却体36を作動させて各発光素子Eを冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(ElectroLuminescent)材料などの発光材料によって形成された発光素子を発光させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の発光素子を基板に配列した構造の発光装置が各種の電子機器の表示装置や露光装置として従来から提案されている。例えば特許文献1には、有機EL材料からなる発光層を電極間に介在させた発光素子の発光によって感光体ドラムなどの像担持体を露光する画像形成装置(印刷装置)が開示されている。
【特許文献1】特開2005−149853号公報(図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、有機EL材料に代表される各種の発光材料はその温度に応じて発光の特性が変化する場合がある。例えば、発光層に電圧を印加した時点から発光の輝度が所定値に到達するまでの時間は、発光層の温度が低くなるほど長くなる。したがって、例えば発光素子を像担持体の露光のために利用する画像形成装置を低温の環境で使用した場合には、感光体ドラムのうち先に露光された部分の露光量が、その後の露光の進行によって発光素子の温度が上昇した段階で露光された部分の露光量と比べて不足する。この結果、本来ならば同階調となるべきにも拘わらず、用紙に印刷された画像の階調が印刷の先後に応じて相違するといった具合に、画像の品質を均一化することが困難であるという問題があった。特に有機EL材料は温度に応じた特性の変化が他の発光材料と比較して顕著であるから、有機EL材料を含む発光層を利用した装置において以上の問題は深刻である。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、温度に依存する発光素子の特性を迅速に所期の特性に遷移させるという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、本発明に係る発光装置は、複数の発光素子を基板の面上に配列してなる発光パネルと、各発光素子を加熱する加熱手段(例えば図1ないし図3の電熱体34)とを具備する。この構成によれば、各発光素子が加熱手段によって加熱されるから、例えば発光装置が低温の環境で使用される場合であっても、各発光素子を迅速に所期の状態に遷移させることができる。
【0005】
なお、本発明における発光素子とは、光を放射する要素であり、より具体的には電気エネルギの付与によって発光する素子である。本発明における発光素子の具体的な構造や材料は任意であるが、例えば、有機EL材料や無機EL材料からなる発光層を電極間に介在させた素子が本発明の発光素子として採用され得る。さらに、LED(Light Emitting Diode)素子や、プラズマの放電により発光する素子など様々な発光素子を本発明に利用することができる。
【0006】
なお、加熱手段が設置される位置は任意である。例えば、本発明の発光装置が搭載される電子機器(例えば印刷装置などの画像形成装置)の筐体に加熱手段が配置される。ただし、各発光素子の効率的な加熱を実現するためには発光パネルに加熱手段を設置した構成が好適である。
【0007】
本発明の加熱手段は、例えば電気エネルギの付与によって発熱する物体であり、典型的には電流の供給によって熱(ジュール熱)を放射する電熱体である。この構成によれば極めて簡易な構造によって発光素子を効率的に加熱することができる。より好適な態様において、電熱体は、基板のうち各発光素子が配列された表面に配置される。この態様によれば、基板のうち発光素子の配列面とは反対側の表面に加熱手段が配置された構成や基板から離間した位置に加熱手段が配置された構成と比較して、電熱体から放射された熱を各発光素子に効率的に到達させることができる。この態様における電熱体は、例えば、基板の表面に形成された導電膜を所望の形状にパターニングした配線や、発光パネル(特に基板の表面)に固定されたニクロム線などの配線である。もっとも、本発明の加熱手段は、各発光素子の温度を上昇させる能力を備えた手段であれば足り、その具体的な構造や加熱の原理の如何は不問である。例えば、発光パネルに対して温風を送る加熱器を加熱手段として採用してもよい。
【0008】
本発明の各発光素子は、例えば、相互に対向する第1電極および第2電極と、第1電極および第2電極の間に介在する発光層とを備える。基板の表面に形成された導電膜のパターニングによって電極が形成される態様において、本発明の電熱体は、第1電極および第2電極の一方と同層から形成されることが望ましい。この態様によれば、電熱体が第1電極および第2電極の一方と共通の工程で形成されるから、電熱体が第1電極や第2電極とは別個に形成される構成と比較して、発光装置の製造工程の簡素化やこれによる製造コストの低減を実現することができる。
【0009】
なお、本発明において電熱体と電極(第1電極および第2電極の一方)とが「同層から形成される」とは、電熱体と電極とが単一の導電膜から形成されることを意味し、典型的には基板の表面上に成膜された単一の導電膜の選択的な除去(パターニング)によって電熱体と電極とがひとつの工程で一括的に形成されることを意味する。したがって、電熱線と第1電極および第2電極の一方とは、同じ材料によって略同一の膜厚に形成される。
【0010】
電熱体の発熱量はその電気抵抗に比例するから、電熱体の発熱量を充分に確保するという観点からすると、電熱体は抵抗率(比抵抗)が高い導電材料によって形成されることが望ましい。したがって、本発明の望ましい態様において、電熱体は、第1電極および第2電極のうち抵抗率が高い材料からなる電極と同層から形成される。ただし、第1電極および第2電極のうち抵抗率が低い材料で形成された電熱線によっても各発光素子の加熱に充分な熱量が得られる場合(あるいは抵抗率が高い材料によって電熱線が形成されると発熱量が過大となる場合)には、その低抵抗の材料によって電熱体が形成されてもよい。
【0011】
本発明の望ましい態様において、電熱体は、複数の発光素子の集合を包囲する形状に形成される。この態様によれば、特定の発光素子のみに近接して電熱体が設置された構成と比較して、複数の発光素子が均一かつ効率的に加熱される。したがって、本態様によれば、温度に依存する各発光素子の特性のバラツキを効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明の望ましい態様において、発光パネルは、基板に接合されて各発光素子を被覆する封止体を含み、電熱体は、基板のうち各発光素子が配列された表面であって封止体が被覆していない領域(例えば図3の領域201)に形成される。この態様によれば、電熱体が他の箇所に設置された構成と比較して各発光素子を効率的に加熱することができる。ただし、本発明において電熱体が設置される位置やその形態は任意である。例えば、基板のうち各発光素子の配列面とは反対側の表面に電熱体が配置されてもよいし、封止体の上面(基板とは反対側の表面)や側端面に電熱体が配置されてもよい。
【0013】
本発明の望ましい態様に係る発光装置は、各発光素子またはその周辺の温度を検出する温度検出手段(例えば図2の温度センサ32)と、温度検出手段が検出した温度が所定の閾値(例えば図4の温度T1)を下回る場合に加熱手段を作動させる制御手段(例えば図1の制御装置50)とを具備する。この態様によれば、温度検出手段によって検出された温度が所定の閾値を下回る場合に加熱手段が作動するから、各発光素子は所定の温度と略同一かそれを上回る温度に維持される。したがって、低温に起因して各発光素子の特性が所期の特性から相違する事態は有効に回避される。
【0014】
また、本発明の別の態様に係る発光装置は、各発光素子またはその周辺の温度を検出する温度検出手段(例えば図2の温度センサ32)と、各発光素子を冷却する冷却手段(例えば図1ないし図3の冷却体36)と、温度検出手段が検出した温度が所定の閾値(例えば図4の温度T2)を上回る場合に冷却手段を作動させる制御手段(例えば図1の制御装置50)とを具備する。各発光素子は加熱手段による過熱や長時間にわたる点灯によって高温となり得るが、この態様によれば、温度検出手段によって検出された温度が所定の閾値を上回る場合に冷却手段が作動するから、各発光素子は所定の温度と略同一かそれを下回る温度に維持される。したがって、高温に起因して各発光素子の特性が所期の特性から相違する事態は有効に回避される。
【0015】
本発明のさらに望ましい態様に係る発光装置は、各発光素子またはその周辺の温度を検出する温度検出手段(例えば図2の温度センサ32)と、各発光素子を冷却する冷却手段(例えば図1ないし図3の冷却体36)と、温度検出手段が検出した温度が所定の閾値(例えば図4の温度T1)を下回る場合に加熱手段を作動させる一方、温度検出手段が検出した温度が所定の閾値(例えば図4の温度T2(T2≧T1))を上回る場合に冷却手段を作動させる制御手段(例えば図1の制御装置50)とを具備する。この態様によれば、各発光素子の温度が所定の範囲内の温度(理想的には特定の温度)に制御されるから、高温および低温に起因して各発光素子の特性が所期の特性から相違する事態を効果的に防止することができる。
なお、この態様における温度検出手段は、例えば、冷却手段の作動・非作動を区別するための指標となる温度を検出するセンサと加熱手段の作動・非作動を区別するための指標となる温度を検出するセンサとを個別に含み得る。ただし、構成の簡素化や製造コストの低減という観点からすると、加熱手段および冷却手段の双方の制御のためにセンサが兼用される構成(すなわち単一のセンサによって検出された温度に基づいて制御手段が加熱手段と冷却手段の双方を制御する構成)が望ましい。
【0016】
本発明における冷却手段の具体的な機構としては、発光パネルや発光素子に対して送風または吸気する空冷式の機構(ファン)、冷媒となる流体を各発光素子に近接する管路に流通させる水冷式の機構、あるいは、ペルチェ素子に代表される熱電変換素子によって熱移動を発生させる熱電変換式の機構などが好適に採用される。ただし、本発明の冷却手段は、各発光素子の温度を下降させる能力を備えた手段であれば足り、その具体的な構造や冷却の原理は任意である。また、冷却手段が配置される位置は任意であるが、例えば、各発光素子を被覆する封止体が基板に接合された構成においては、この封止体のうち基板とは反対側の表面に冷却手段を設置した構成が特に好適である。この構成によれば、各発光素子を効率的に冷却することが可能となる。
【0017】
本発明における温度検出手段は、各発光素子の温度に応じて温度が変化する箇所に配置される。例えば、基板に接合された封止体によって発光素子が基板の表面上に封止された構成においては、封止体によって被覆された箇所(すなわち各発光素子とともに封止体によって封止される空間)に温度検出手段が配置される。この態様によれば、各発光素子の温度を高精度に検出することが可能となる。もっとも、温度検出手段が設置される位置はこの例示に限定されない。例えば、温度検出手段が発光パネルから離間して設置された構成(例えば発光パネルが固定される筐体に温度検出手段が設置された構成)としてもよい。本発明の温度検出手段による温度の検出の対象となる「各発光素子の周辺」とは、温度が発光素子の温度に連動して変化する範囲を意味する。また、本発明における温度検出手段がひとつの温度センサのみを含むか複数の温度センサを含むかは不問である。
【0018】
本発明に係る発光装置は各種の電子機器に利用される。この電子機器の典型例は、本発明の発光装置を露光装置(露光ヘッド)として利用した画像形成装置である。この画像形成装置は、露光により像形成面に潜像が形成される像担持体と、像形成面を露光する本発明の発光装置と、潜像に対する現像剤(例えばトナー)の付着によって顕像を形成する現像器とを含む。本発明の発光装置によれば、例えば発光装置が低温の環境で使用される場合であっても、各発光素子の状態を迅速に所期の状態に遷移させることができるから、画像形成装置が使用される環境の温度に拘わらず、像形成面を均一に露光して高品位かつ均質な画像を記録材(用紙など)に形成することができる。この種の画像形成装置の好適な態様において、複数の発光素子は線状に配列される。この態様によれば、複数の発光素子が面状に配列された構成と比較して、各発光素子を均等に加熱し易いという利点がある。
【0019】
ただし、本発明に係る発光装置の用途は露光に限定されない。例えば、本発明の発光装置を各種の電子機器の表示装置として利用することもできる。この種の電子機器としては例えばパーソナルコンピュータや携帯電話機がある。また、液晶装置の背面側に配置されてこれを照明する装置(バックライト)や、スキャナなどの画像読取装置に搭載されて原稿に光を照射する装置など各種の照明装置としても本発明の発光装置は好適である。
【0020】
また、本発明は発光装置の制御方法としても特定される。すなわち、本発明に係る制御方法のひとつの態様は、複数の発光素子を基板の面上に配列してなる発光パネルと、各発光素子またはその周辺の温度を検出する温度検出手段と、各発光素子を加熱する加熱手段と、各発光素子を冷却する冷却手段とを具備する発光装置を制御する方法であって、温度検出手段が検出した温度が所定の閾値を下回る場合に加熱手段を作動させる一方、温度検出手段が検出した温度が所定の閾値を上回る場合に冷却手段を作動させることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の各図面においては、各部の寸法の比率を便宜的に実際のものとは相違させている。
【0022】
<A:構成>
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の部分的な構成を示す斜視図である。図1に示すように、この画像形成装置は、副走査方向に回転できるように軸支された円筒状の感光体ドラム110と、この感光体ドラム110の外周面(以下「像形成面」という)110Aを露光する発光装置10とを備える。
【0023】
発光装置10は、感光体ドラム110に向けて光を出射する発光パネル(光ヘッド)20と、発光パネル20と感光体ドラム110との間隙に設置された集束性レンズアレイ40と、発光パネル20の動作を制御する制御装置50とを含む。発光パネル20からの出射光は集束性レンズアレイ40を透過したうえで感光体ドラム110の像形成面110Aに到達する。集束性レンズアレイ40は、発光パネル20からの出射光を集光するための手段である。この集束性レンズアレイ40としては、例えば日本板硝子株式会社から提供されるSLA(セルフォックレンズアレイ)が好適に採用される(「セルフォック/SELFOC」は日本板硝子株式会社の登録商標)。
【0024】
発光パネル20は、基板21と封止体29との間隙に多数の発光素子(図1においては図示略)が封止された構造となっている。図1に示すように、発光パネル20は、基板21を感光体ドラム110の像形成面110Aに対向させた姿勢に固定される。この基板21は、ガラスやプラスチックといった光透過性の絶縁材料によって形成された略長方形の板材である。
【0025】
図2は、発光パネル20を感光体ドラム110とは反対側(図1の上方)からみた平面図であり、図3は、図2におけるIII−III線からみた断面図である。図2および図3に示すように、基板21のうち感光体ドラム110とは反対側の表面上には、各々が制御装置50による制御のもとに発光する複数の発光素子Eが配置される。これらの発光素子Eは、感光体ドラム110の回転軸の方向(基板21の長手方向)に沿って2列かつ千鳥状に配列される。制御装置50は、用紙などの記録材に印刷されるべき画像の態様に応じて複数の発光素子Eの各々を選択的に発光させる。図3に矢印で示すように、各発光素子Eからの出射光は基板21を透過したうえで集束性レンズアレイ40から感光体ドラム110の像形成面110Aに到達する(ボトムエミッション型)。この露光によって像形成面110Aには所望の画像に応じた潜像(静電潜像)が形成される。なお、発光素子Eの配列のパターンは任意であり、例えば単列または3列以上であってもよいし他の適切なパターンであってもよい。
【0026】
図3に示すように、各発光素子Eは、第1電極22と発光層25と第2電極27とが基板21側からこの順番に積層された構造となっている。このうち第1電極22は、発光素子Eごとに相互に離間して形成された電極であり、発光素子Eの陽極として機能する。本実施形態における第1電極22は、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)といった光透過性の導電材料によって形成される。
【0027】
第1電極22が形成された基板21の表面上には絶縁材料によってバンク層23が形成される。このバンク層23は、基板21の表面上の空間を発光素子Eごとに仕切るように格子状に形成された隔壁である。発光層25は、バンク層23の内壁に包囲されて第1電極22を底面とする空間(凹部)に形成される。
【0028】
第2電極27は、バンク層23や各発光層25を被覆するように複数の発光素子Eにわたって連続に分布する導電性の膜体であり、発光素子Eの陰極として機能する。この第2電極27は、例えばアルミニウムや銀などの単体金属またはこれらの金属を主成分とする合金など光反射性の材料によって形成される。発光層25から基板21とは反対側に出射した光は第2電極27の表面で反射して像形成面110Aの露光に利用される。
【0029】
発光層25は、有機EL材料からなる膜体であり、第1電極22と第2電極27との電位差(換言すると第1電極22と第2電極27とにわたって流れる電流)に応じた輝度に発光する。なお、発光層25と第1電極22との間に正孔注入層や正孔輸送層が介挿された構成、または発光層25と第2電極27との間に電子注入層や電子輸送層が介挿された構成としてもよい。すなわち、相互に対向する第1電極22と第2電極27との間に少なくとも発光層25が介在する構成であれば足りる。
【0030】
図2および図3に示すように、封止体29は、複数の発光素子Eを被覆(封止)するように例えば接着剤によって基板21の表面に接合される。この封止体29は、基板21よりも外形の寸法が小さい略長方形の板材であり、基板21と協働して複数の発光素子Eを外気(特に水分や酸素)から隔離する。
【0031】
ところで、本実施形態における発光層25の特性はその温度に応じて変化する。例えば、発光層25に電圧を印加した時点から発光の輝度が所定値に到達するまでの時間は、発光層25の温度が低いほど長い(換言すると温度が高いほど迅速に発光する)。したがって、発光パネル20から感光体ドラム110に照射される光量は各発光素子Eの発光層25の温度に依存する。本実施形態における発光装置10は、発光層25を所定の範囲内の温度に維持して感光体ドラム110への照射の光量を所期値に維持するために、図1ないし図3に示すように温度センサ32と電熱体34と冷却体36とを備える。なお、図2は平面図であるが、図3の断面図と同じ態様のハッチングが便宜的に電熱体34と冷却体36とに施されている。
【0032】
図2に示すように、温度センサ32は、基板21のうち封止体29によって被覆された領域に発光素子Eに近接して配置される。この温度センサ32は、各発光素子Eまたはその周囲の温度(すなわち基板21と封止体29とによって包囲された空間内の温度)を検出するための手段であり、自身の周囲の温度に応じた信号を出力するセンサ(例えばサーミスタ)である。なお、温度センサ32は発光素子Eの温度に応じて温度が変化する箇所に設置されていればよく、その位置は図2の例示に限定されない。例えば、温度センサ32は、基板21のうち封止体29の外周縁から張り出した領域201(図3参照)や基板21の側端面または感光体ドラム110との対向面に配置されていてもよいし、封止体29の何れかの箇所に固定されてもよい。
【0033】
図2および図3に示すように、電熱体34は基板21のうち封止体29の外周縁から張り出した領域201に配置される。この電熱体34は、制御装置50による制御のもとに各発光素子Eを加熱するための手段である。本実施形態における電熱体34は、図2に示すように、基板21の周縁に沿って複数の発光素子Eの集合を包囲する形状(換言すると封止体29を包囲する形状)形成された配線(電熱線)であり、制御装置50から各端部341に供給される電流に応じて熱(ジュール熱)を発生する。この電熱体34は、制御装置50からの電流の供給の有無に応じて、各発光素子Eを加熱する作動状態と各発光素子Eを加熱しない非作動状態との何れかの状態に択一的に制御される。
【0034】
電熱体34は各発光素子Eから離間した位置に形成されるが、この電熱体34による放射熱が基板21を介して発光素子Eに伝導することによって各発光素子Eは加熱される。このように電熱体34が各発光素子Eを間接的に加熱する構成によれば、各発光素子Eに接触する電熱体34が各発光素子Eを直接的に加熱する構成と比較して、各発光素子Eの過熱やこれに起因した特性の劣化を有効に防止することができる。
【0035】
本実施形態の電熱体34は、第2電極27よりも抵抗率が高い第1電極22と同層からなる。すなわち、発光パネル20の製造工程においては、第1に、基板21を被覆する単一の導電膜が例えばITO(Indium Tin Oxide)によって形成され、第2に、この導電膜のうち第1電極22と電熱体34とを除く部分が選択的に除去されることによって第1電極22と電熱体34とがひとつの工程で一括的に形成される。この構成によれば、第1電極22と電熱体34とを別個の工程で形成する場合と比較して、製造工程の簡素化やこれによる製造コストの低減を実現することができる。
【0036】
また、電熱体34から放射される熱量は電熱体34の抵抗に比例する。本実施形態においては、第2電極27よりも抵抗率が高い第1電極22と同層から電熱体34を形成することによって電熱体34を高抵抗とすることができるから、第2電極27と同層から電熱体34を形成した場合と比較して、電熱体34による発熱量を充分に確保することが可能となる。
【0037】
図2および図3に示すように、冷却体36は、封止体29のうち基板21とは反対側の表面に設置される。この冷却体36は、制御装置50による制御のもとに各発光素子Eを冷却するための手段である。本実施形態における冷却体36は、P型の熱電半導体とN型の熱電半導体とを直列に接続した構造の複数のペルチェ素子を面状に配列したペルチェモジュールである。この構造の冷却体36は、制御装置50からの電流の供給の有無に応じて、各発光素子Eを冷却する作動状態と各発光素子Eを冷却しない非作動状態との何れかの状態に択一的に制御される。
【0038】
<B:動作>
本実施形態の制御装置50は、以上に説明したように所望の画像に応じて各発光素子Eの発光を制御するほか、各発光素子Eの温度を所定の範囲内に維持するために図4のタイマ割込処理を繰返し実行する。同図の処理は所定の間隔で発生するタイマ割込を契機として実行される。
【0039】
このタイマ割込処理を開始すると、制御装置50はまず、温度センサ32から出力される信号に基づいて当該温度センサ32の周囲の温度Tを検出する(ステップS1)。次いで、制御装置50は、ここで検出した温度(以下「検出温度」という)Tが所定の温度T1を下回るか否かを判定する(ステップS2)。温度T1は、温度Tの目標となる範囲の下限値である。ステップS2における結果が肯定である場合(T<T1)、制御装置50は、電熱体34への給電によって電熱体34を所定の時間にわたって作動させる(ステップS3)。この電熱体34の作動によって各発光素子Eは加熱される。一方、ステップS2の判定の結果が否定である場合(T≧T1)、制御装置50は、ステップS3を経ることなくステップS4に処理を移行させる。このとき各発光素子Eは加熱されない。
【0040】
ステップS4において、制御装置50は、ステップS1における検出温度Tが所定の温度T2を上回るか否かを判定する。この温度T2は、検出温度Tの目標となる範囲の上限値(T2>T1)である。ステップS4における判定の結果が肯定である場合(T>T2)、制御装置50は、冷却体36への給電によって冷却体36を所定の時間にわたって作動させたうえで(ステップS5)、今回のタイマ割込処理を終了する。この冷却体36の作動によって各発光素子Eは冷却される。一方、ステップS4の判定の結果が否定である場合(T≦T2)、制御装置50は、ステップS5を経ることなくタイマ割込処理を終了する。このとき各発光素子Eは冷却されない。
【0041】
以上のタイマ割込処理が繰り返されることによって、各発光素子Eの温度T(より厳密には温度センサ32による検出温度T)は、温度T1以上で温度T2以下の範囲内に収束していく(T1≦T≦T2)。このように本実施形態によれば、電熱体34や冷却体36が配置されていない従来の構成と比較して各発光素子Eが迅速かつ確実に所期の温度に調整されるから、各発光素子Eの特性(特に電圧の印加から実際の発光までの時間)を、発光装置10が使用される環境の温度に拘わらず、所期の特性に維持することができる。したがって、本実施形態によれば、感光体ドラム110の像形成面110Aの露光量を高い精度で所期値に制御して均質な潜像を形成することができ、さらには用紙などの記録材に形成される画像を所期の品質に維持することができる。
【0042】
<C:変形例>
以上の形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0043】
(1)変形例1
以上の実施形態においては発光装置10にひとつの温度センサ32が設置された構成を例示したが、複数の温度センサ32が設置された構成としてもよい。これらの温度センサ32の各々は互いに相違する位置に分散して設置される。この構成において、制御装置50は、温度センサ32の各々による検出温度Tに基づいて電熱体34や冷却体36を制御する。例えば、制御装置50は、複数の温度センサ32のうち少なくともひとつの温度センサ32による検出温度Tが温度T1を下回る場合には電熱体34を作動させ、少なくともひとつの温度センサ32による検出温度Tが温度T2を越える場合には冷却体36を作動させる。
【0044】
また、複数の温度センサ32が設置された態様においては、各々が別個の温度センサ32に対応する複数の電熱体34を備えた構成としてもよい。各電熱体34は、これに対応した温度センサ32の近傍に設置される。この構成において、制御装置50は、検出温度Tが温度T1を下回る温度センサ32を特定し、複数の電熱体34のうちこの特定した温度センサ32に対応した電熱体34のみを選択的に作動させる。同様に、各々が別個の温度センサ32の近傍に位置する複数の冷却体36を備えた構成としてもよい。この構成において、制御装置50は、検出温度Tが温度T2を上回る温度センサ32の近傍に位置する冷却体36のみを選択的に作動させる。以上の構成によれば、特に複数の発光素子Eが広い範囲にわたって分布する構成(すなわち各発光素子Eの温度にバラツキが発生し易い構成)であっても、各発光素子Eの温度を高い精度で所定の範囲内の温度に制御することが可能である。
【0045】
(2)変形例2
以上の実施形態においては、電熱体34を作動させる閾値となる温度T1と冷却体36を作動させる閾値となる温度T2とが相違する構成を例示したが、ステップS2で検出温度Tに比較される温度T1とステップS4で検出温度Tに比較される温度T2とは等しい温度であってもよい。この構成によれば、各発光素子Eの温度を高い精度で特定の温度(T1=T2)に収束させることができる。
【0046】
(3)変形例3
以上の実施形態においては、電熱体34および冷却体36の双方が検出温度Tに基づいて制御される構成を例示したが、電熱体34と冷却体36との双方が検出温度Tに基づいて制御される必要は必ずしもない。例えば、電熱体34を検出温度Tとは無関係に随時に(例えば所定の間隔で)作動させるとともに冷却体36を検出温度Tに基づいて制御する構成としてもよいし、これとは逆に、冷却体36を検出温度Tとは無関係に作動させるとともに電熱体34を検出温度Tに基づいて制御する構成としてもよい。
【0047】
(4)変形例4
以上の実施形態においては、各発光素子Eの発光を制御する制御装置50が電熱体34や冷却体36の制御も実行する構成を例示したが、各発光素子Eと電熱体34や冷却体36とが別個の装置によって制御される構成としてもよい。また、電熱体34と冷却体36とが別体の装置によって制御されてもよい。
【0048】
(5)変形例5
以上の実施形態においては第1電極22が陽極として機能するとともに第2電極27が陰極として機能する構成を例示したが、これとは逆に、第1電極22が陰極として機能するとともに第2電極27が陽極として機能する構成としてもよい。また、実施形態においてはボトムエミッション型の発光パネル20を例示したが、トップエミッション型の発光パネルにも本発明は適用される。トップエミッション型の発光パネルにおいては、基板21のうち封止体29とは反対側の表面に冷却体36が設置される。
【0049】
<D:電子機器>
<D−1:画像形成装置>
次に、図5を参照して、本発明に係る電子機器のひとつの態様である画像形成装置について説明する。この画像形成装置は、ベルト中間転写体方式を利用したタンデム型のフルカラー画像形成装置である。
【0050】
この画像形成装置では、各々が同様の構成である4個の発光装置(露光装置)10K,10C,10M,10Yが、各々の構成が同様である4個の感光体ドラム(像担持体)110K,110C,110M,110Yの像形成面110Aに対向する位置にそれぞれ配置されている。発光装置10K,10C,10M,10Yは、以上に例示した実施形態に係る発光装置10である。
【0051】
図5に示すように、この画像形成装置には、駆動ローラ121と従動ローラ122とが設けられており、これらのローラ121,122には無端の中間転写ベルト120が巻回されて、矢印に示すようにローラ121,122の周囲を回転させられる。図示しないが、中間転写ベルト120に張力を与えるテンションローラなどの張力付与手段を設けてもよい。
【0052】
この中間転写ベルト120の周囲には、外周面に感光層を有する4個の感光体ドラム110K,110C,110M,110Yが互いに所定の間隔をおいて配置される。添字「K」,「C」,「M」,「Y」はそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの顕像を形成するために使用されることを意味している。他の部材についても同様である。感光体ドラム110K,110C,110M,110Yは、中間転写ベルト120の駆動と同期して回転駆動される。
【0053】
各感光体ドラム110(K,C,M,Y)の周囲には、コロナ帯電器111(K,C,M,Y)と、発光装置10(K,C,M,Y)と、現像器114(K,C,M,Y)とが配置されている。コロナ帯電器111(K,C,M,Y)は、これに対応する感光体ドラム110(K,C,M,Y)の像形成面110A(外周面)を一様に帯電させる。発光装置10(K,C,M,Y)は、各感光体ドラムの帯電した像形成面110Aに静電潜像を書き込む。各発光装置10(K,C,M,Y)においては、図2に示したように、感光体ドラム110(K,C,M,Y)の母線(主走査方向)に沿って複数の発光素子Eが配列する。静電潜像の書き込みは、複数の発光素子Eによって感光体ドラム110(K,C,M,Y)に光を照射することにより行う。現像器114(K,C,M,Y)は、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラム110(K,C,M,Y)に顕像(すなわち可視像)を形成する。
【0054】
このような4色の単色顕像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各顕像は、中間転写ベルト120上に順次に一次転写されることによって中間転写ベルト120上で重ね合わされ、この結果としてフルカラーの顕像が形成される。中間転写ベルト120の内側には、4つの一次転写コロトロン(転写器)112(K,C,M,Y)が配置されている。一次転写コロトロン112(K,C,M,Y)は、感光体ドラム110(K,C,M,Y)の近傍にそれぞれ配置されており、感光体ドラム110(K,C,M,Y)から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写コロトロンの間を通過する中間転写ベルト120に顕像を転写する。
【0055】
最終的に画像を形成する対象(記録材)としてのシート102は、ピックアップローラ103によって、給紙カセット101から1枚ずつ給送されて、駆動ローラ121に接した中間転写ベルト120と二次転写ローラ126の間のニップに送られる。中間転写ベルト120上のフルカラーの顕像は、二次転写ローラ126によってシート102の片面に一括して二次転写され、定着部である定着ローラ対127を通ることでシート102上に定着される。この後、シート102は、排紙ローラ対128によって、装置上部に形成された排紙カセット上へ排出される。
【0056】
次に、図6を参照して、本発明に係る画像形成装置の他の形態について説明する。この画像形成装置は、ベルト中間転写体方式を利用したロータリ現像式のフルカラー画像形成装置である。図6に示すように、感光体ドラム110の周囲には、コロナ帯電器168と、ロータリ式の現像ユニット161と、以上の実施形態に係る発光装置10と、中間転写ベルト169とが設けられている。
【0057】
コロナ帯電器168は、感光体ドラム110の外周面を一様に帯電させる。発光装置10は、感光体ドラム110の帯電させられた像形成面110A(外周面)に静電潜像を書き込む。この発光装置10においては、図2に示したように、感光体ドラム110の母線(主走査方向)に沿って複数の発光素子Eが配列する。静電潜像の書き込みは、これらの発光素子Eから感光体ドラム110に光を照射することにより行う。
【0058】
現像ユニット161は、4つの現像器163Y,163C,163M,163Kが90°の角間隔をおいて配置されたドラムであり、軸161aを中心にして反時計回りに回転可能である。現像器163Y,163C,163M,163Kは、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ、黒のトナーを感光体ドラム110に供給して、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラム110に顕像(すなわち可視像)を形成する。
【0059】
無端の中間転写ベルト169は、駆動ローラ170a、従動ローラ170b、一次転写ローラ166およびテンションローラに巻回されて、これらのローラの周囲を矢印に示す向きに回転させられる。一次転写ローラ166は、感光体ドラム110から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラム110と一次転写ローラ166の間を通過する中間転写ベルト169に顕像を転写する。
【0060】
具体的には、感光体ドラム110の最初の1回転で、発光装置10によりイエロー(Y)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Yにより同色の顕像が形成され、さらに中間転写ベルト169に転写される。また、次の1回転で、発光装置10によりシアン(C)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Cにより同色の顕像が形成され、イエローの顕像に重なり合うように中間転写ベルト169に転写される。そして、このようにして感光体ドラム110が4回転する間に、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の顕像が中間転写ベルト169に順次に重ね合わせられ、この結果としてフルカラーの顕像が転写ベルト169上に形成される。最終的に画像を形成する対象としてのシートの両面に画像を形成する場合には、中間転写ベルト169に表面と裏面の同色の顕像を転写し、次に中間転写ベルト169に表面と裏面の次の色の顕像を転写する形式で、フルカラーの顕像を中間転写ベルト169上に形成する。
【0061】
画像形成装置には、シートが通過させられるシート搬送路174が設けられている。シートは、給紙カセット178から、ピックアップローラ179によって1枚ずつ取り出され、搬送ローラによってシート搬送路174を進行させられ、駆動ローラ170aに接した中間転写ベルト169と二次転写ローラ171の間のニップを通過する。二次転写ローラ171は、中間転写ベルト169からフルカラーの顕像を一括して静電的に吸引することにより、シートの片面に顕像を転写する。二次転写ローラ171は、図示しないクラッチにより中間転写ベルト169に接近および離間させられるようになっている。そして、シートにフルカラーの顕像を転写する時に二次転写ローラ171は中間転写ベルト169に当接させられ、中間転写ベルト169に顕像を重ねている間は二次転写ローラ171から離される。
【0062】
以上のようにして画像が転写されたシートは定着器172に搬送され、定着器172の加熱ローラ172aと加圧ローラ172bの間を通過させられることにより、シート上の顕像が定着する。定着処理後のシートは、排紙ローラ対176に引き込まれて矢印Fの向きに進行する。両面印刷の場合には、シートの大部分が排紙ローラ対176を通過した後、排紙ローラ対176が逆方向に回転させられ、矢印Gで示すように両面印刷用搬送路175に導入される。そして、二次転写ローラ171により顕像がシートの他面に転写され、再び定着器172で定着処理が行われた後、排紙ローラ対176でシートが排出される。
【0063】
図5および図6に例示した画像形成装置は、有機EL材料からなる発光層25を含む発光素子Eを光源(露光手段)として利用しているので、レーザ走査光学系を用いた場合よりも装置が小型化される。なお、以上に例示した以外の電子写真方式の画像形成装置にも本発明の発光装置を採用することができる。例えば、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラムからシートに対して直接的に顕像を転写するタイプの画像形成装置や、モノクロの画像を形成する画像形成装置にも本発明に係る発光装置を応用することが可能である。
【0064】
<D−2:画像読取装置>
以上の実施形態に係る発光装置10は、読取の対象に光を照射するためのライン型の光ヘッドとして画像読取装置に使用される。このような画像読取装置としては、スキャナ、複写機やファクシミリの読取部分、バーコードリーダ、あるいはQRコード(登録商標)のような二次元画像コードを読む二次元画像コードリーダがある。
【0065】
図7は、発光装置10をライン型の光ヘッドとして用いた画像読取装置の構成を示す断面図である。この画像読取装置のキャビネット601の上部には、平板状のプラテンガラス602が設けられており、プラテンガラス602には読取の対象である原稿603がその画像面を下方に向けて載置される。そして、図示しないプラテンカバーが原稿603をプラテンガラス602に向けて押さえる。
【0066】
キャビネット601の内部には、高速キャリッジ604と低速キャリッジ605とが横方向に移動可能に配置されている。高速キャリッジ604には原稿603を照射する発光装置10と反射鏡607とが搭載されており、低速キャリッジ605には2個の反射鏡608および609が搭載されている。これらの発光装置10および3個の反射鏡(607・608・609)は図7の紙面に垂直な方向(主走査方向)に延びている。また、発光装置10は、複数の発光素子Eの配列方向が主走査方向に沿うように設置される。
【0067】
キャビネット601の内部には、原稿読取器610が固定されている。この原稿読取器610は、低速キャリッジ605からの出射光を結像する結像レンズ612と、多数の受光素子が配列されたラインセンサ(受光装置)613とを備える。ラインセンサ613は図7の紙面に垂直な方向(主走査方向)に延びており、複数の受光素子の配列の方向が主走査方向に沿うように設置される。
【0068】
発光装置10からの出射光は、プラテンガラス602を透過して原稿603の下面で反射する。原稿603からの反射光は、プラテンガラス602を透過し、3個の反射鏡(607・608・609)にて順次に反射したうえで、結像レンズ612を通過してラインセンサ613で結像する。高速キャリッジ604は横方向に移動して、原稿603の全面を発光装置10で照射し、低速キャリッジ605は高速キャリッジ604の半分の速度で移動して、原稿603からラインセンサ613に到る光路長を略一定に維持する。
【0069】
なお、本発明の発光装置が採用される画像読取装置の構成は図7に示したものに限られない。例えば、照明装置としての発光装置10とともに受光装置が移動してもよいし、受光装置および発光装置10とがともに固定されたうえで読取対象が移動して読み取られるようにしてもよい。
【0070】
<D−3:その他>
なお、本発明に係る発光装置の用途は露光に限定されない。例えば、各種の電子機器の表示装置としても本発明の発光装置を利用することができる。本発明の発光装置が表示装置として利用される電子機器としては、例えば、可搬型のパーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態における発光装置と感光体ドラムの構成を示す斜視図である。
【図2】感光体ドラムとは反対側からみたときの発光パネルの構成を示す平面図である。
【図3】図2におけるIII−III線からみた断面図である。
【図4】制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る電子機器の一例である画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図6】他の形態に係る画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図7】本発明に係る電子機器の一例である画像読取装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
10……発光装置、20……発光パネル、E……発光素子、21……基板、22……第1電極、23……バンク層、25……発光層、27……第2電極、29……封止体、32……温度センサ、34……電熱体(加熱手段)、36……冷却体(冷却手段)、40……集束性レンズアレイ、50……制御装置、110……感光体ドラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子を基板の面上に配列してなる発光パネルと、
前記各発光素子を加熱する加熱手段と
を具備する発光装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記発光パネルに設置された電熱体である
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記電熱体は、前記基板のうち前記各発光素子が配列された表面に配置される
請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記各発光素子は、相互に対向する第1電極および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の間に介在する発光層とを備え、
前記電熱体は、前記第1電極および前記第2電極の一方と同層から形成されている
請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記電熱体は、前記第1電極および前記第2電極のうち抵抗率が高い材料の電極と同層から形成されている
請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記電熱体は、前記複数の発光素子の集合を包囲する形状に形成されている
請求項2から請求項5の何れかに記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光パネルは、前記基板に接合されて前記各発光素子を被覆する封止体を含み、
前記電熱体は、前記基板のうち前記各発光素子が配列された表面であって前記封止体が被覆していない領域に形成される
請求項2から請求項5の何れかに記載の発光装置。
【請求項8】
前記各発光素子またはその周辺の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段が検出した温度が所定の閾値を下回る場合に前記加熱手段を作動させる制御手段と
を具備する請求項1から請求項7の何れかに記載の発光装置。
【請求項9】
前記各発光素子またはその周辺の温度を検出する温度検出手段と、
前記各発光素子を冷却する冷却手段と、
前記温度検出手段が検出した温度が所定の閾値を上回る場合に前記冷却手段を作動させる制御手段と
を具備する請求項1から請求項7の何れかに記載の発光装置。
【請求項10】
前記各発光素子またはその周辺の温度を検出する温度検出手段と、
前記各発光素子を冷却する冷却手段と、
前記温度検出手段が検出した温度が所定の閾値を下回る場合に前記加熱手段を作動させる一方、前記温度検出手段が検出した温度が所定の閾値を上回る場合に前記冷却手段を作動させる制御手段と
を具備する請求項1から請求項7の何れかに記載の発光装置。
【請求項11】
前記冷却手段は、前記基板に接合されて前記各発光素子を被覆する封止体のうち前記基板とは反対側の表面に設置されている
請求項9または請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11の何れかに記載の発光装置を具備する電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−66952(P2007−66952A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247282(P2005−247282)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】