説明

発光装置および電子機器

【課題】白色の有機EL素子と共振構造を組み合わせたトップエミッション方式の発光装置において、高い光取り出し効率を維持しつつ、画素部の凹凸を極力小さくし、かつ、上下導通部からの反射による混色を抑制する。
【解決手段】反射層12から対向電極22間の距離をD、反射層12での反射における位相シフトをφ、対向電極22での反射における位相シフトをφ、反射層12と対向電極22の間に発生する定在波のピーク波長をλ、2以下の整数をmとしたとき、D={(2πm+φ+φ)/4π}λを満たす光学構造を有する発光装置E1において、上下導通部330の画素電極15との界面から対向電極22までの長さは、前記式においてm=0の場合の赤色のピーク波長が得られる距離Dから、前記式においてm=1の場合の青色のピーク波長が得られる距離Dまでの値に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の発光素子を利用した発光装置およびこの発光装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上に有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を発光層として形成し、発光素子の発光光を基板と反対側に取り出すトップエミッション方式の発光装置が電子機器の表示装置などとして多用されている。トップエミッション方式は、発光素子を挟み、基板側に形成された一方の第1電極(例えば陽極)と基板との間に反射層を形成し、発光層を挟む他方の第2電極(例えば陰極)側から光を取り出す方式であって、光の利用効率が高い方式である。
【0003】
トップエミッション方式の発光装置において、白色の有機EL素子を用い、前記第2電極と反射層との間で所定の波長の光を共振させて、光の取り出し効率を高める技術が開示されている(例えば非特許文献1)。この技術では、共振構造におけるピーク波長をλ、反射層から前記第2電極の光学的距離をD、前記反射層での反射における位相シフトをφ、前記第2電極での反射における位相シフトをφ、整数をmとしたとき、下記の式を満たす光学構造が提案されている。
D={(2πm+φ+φ)/4π}λ・・・(1)
【0004】
特に、前記(1)式において、m=0とした場合には、有機EL素子におけるアレイ構造を単純にしつつ、広い波長の光をある程度の効率で取り出すことができるため、発光装置の低コスト化を実現でき、かつ、高精細画素を作り込みやすいなどの利点がある。
【0005】
しかしながら、前記(1)式においてm=0とした光学構造の発光装置では、赤色領域、緑色領域、および、青色領域の全ての領域の光を取り出すため、赤色画素、緑色画素、および、青色画素の色分離はカラーフィルターなどで行う必要がある。したがって、観測側での発光スペクトルの帯域幅が広くなり、色純度が悪いという問題があった。また、赤色、緑色、および、青色の各波長領域で比較した場合、光取り出し効率が低いという問題があった。その結果、発光装置の消費電力が高くなり、パネル特性として不利になるという問題があった。
【0006】
また、光取り出し効率を高めるために、上記(1)式を満たす反射層から第2電極の光学的距離Dを、赤色画素、緑色画素および青色画素ごとに異なるように透明層や電極層の層厚を設定した発光装置も提案されている。
【0007】
しかしながら、このような発光装置では、有機EL素子からなる発光層を成膜する際、その下層となる層の凹凸形状が発光特性に大きく影響するという問題があった。特に、このような発光装置では、画素表面や画素電極のエッジ部などを平坦化することが困難であるため、発光層の層厚が変化し、上記光学的距離Dが変化することにより、目的とする出力光波長だけでなく、他の波長の光が出力される場合がある。その結果、色純度が低下するなど、表示品質が低下するという問題があった。
【0008】
そこで、特許文献1のように、第2電極(画素電極)の各々を、反射層の全体に重なるように反射層よりも大きな面積とした発光装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−280677号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】SID2010 P-146/S.Lee, Samsung Mobile Display Co.,Ltd
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1のような発光装置では、下辺基板に形成される回路素子またはこの回路素子に接続される配線部と、第2電極(画素電極)との導通を図るために、上下導通部が設けられる。しかし、この上下導通部を平坦化することは困難であり、上述したように光学的距離Dが変化するという問題があった。
しかも、この上下導通部にはアルミニウム等の金属材料が用いられるため、発光層からの光が上下導通部で反射して混色が生じ、その結果、色域が狭くなってしまうという問題があった。
【0012】
このような事情を背景として、本発明は、白色の有機EL素子と共振構造を組み合わせたトップエミッション方式の発光装置において、高い光取り出し効率を維持しつつ、画素部の凹凸を極力小さくし、かつ、上下導通部からの反射による混色を抑えるという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するために、本発明に係る発光装置は、赤色発光素子、青色発光素子、および緑色発光素子と、回路素子が形成された基板と、を備えるものであって、前記赤色発光素子、前記青色発光素子、および前記緑色発光素子の各々は、前記基板上に形成された光反射層と、前記光反射層上に形成された透明層と、前記透明層上に形成された画素電極と、前記透明層および画素電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された対向電極と、前記回路素子と前記画素電極との導通を図る上下導通部とを備え、前記光反射層から対向電極間の距離をD、前記光反射層での反射における位相シフトをφ、前記対向電極での反射における位相シフトをφ、前記光反射層と対向電極の間に発生する定在波のピーク波長をλ、2以下の整数をmとしたとき、次の式 D={(2πm+φ+φ)/4π}λ・・・(2)を満たす光学構造を有し、前記上下導通部と前記画素電極との界面から前記対向電極までの長さは、前記式においてm=0の場合の赤色のピーク波長が得られる距離Dから、前記式においてm=1の場合の青色のピーク波長が得られる距離Dまでの値に設定されている。
【0014】
本発明においては、前記上下導通部の前記画素電極との界面から前記対向電極までの膜厚は、前記式(2)においてm=0の場合の赤色のピーク波長が得られる距離Dから、前記式においてm=1の場合の青色のピーク波長が得られる距離Dまでの値に設定されているので、前記上下導通部と前記対向電極とに挟まれる領域においては可視光領域の光が取り出し難くなる。その結果、前記上下導通部からの反射光の発生が抑制され、その反射光による混色がなくなり、色域が狭くなることが抑制される。
【0015】
本発明に係る発光装置として、前記発光層は、前記赤色発光素子、前記緑色発光素子、前記青色発光素子において、同一の膜厚で一体に形成されることが好ましい。この場合は、発光層を赤色発光素子、緑色発光素子、および青色発光素子で区別することなく一体として形成できるので、発光装置は容易に製造することが可能となる。
【0016】
本発明に係る発光装置として、前記上下導通部は、Al、Cr、Mo、Ti、TiN、W、Cu、もしくはこれらを主成分とした合金で形成することもできる。本発明によれば、前記上下導通部を反射率の高いAlまたはAlを主成分とした合金で形成した場合でも、前記上下導通部と前記対向電極とに挟まれる領域においては可視光領域の光が取り出し難くなる。その結果、前記上下導通部からの反射光の発生が抑制され、その反射光による混色がなくなり、色域が狭くなることが抑制される。また、前記上下導通部をCr、Mo、Ti、TiN、W、Cu、もしくはこれらを主成分とした合金で形成すれば、反射率をAlが低いので、前記上下導通部からの反射光の発生がより一層抑制される。
【0017】
本発明に係る発光装置においては、前記画素電極は透明導電膜で形成し、赤色画素、緑色画素、青色画素において前記画素電極の膜厚を同一としてもよい。本発明によれば、画素部の凹凸が極力抑えられ、上記(2)式における距離Dのばらつきが抑制される。その結果、混色がなくなり、色域が狭くなることが抑制される。
【0018】
本発明に係る発光装置は、前記上下導通部と前記対向電極との間に絶縁層を形成してもよい。本発明によれば、前記上下導通部上に絶縁層があるので、前記上下導通部からの反射光がより一層確実に抑制される。
【0019】
本発明に係る電子機器は、前記発光装置を備えていることを特徴とする。本発明に係る電子機器においては、前記発光装置を備えているので、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る実施例1の発光装置の概要を示す模式的な断面図である。
【図2】図1における正孔輸送層、発光層、および、電子輸送層に用いられた材料を示す図である。
【図3】共振構造におけるピーク波長をλ、反射層から第2電極の光学的距離をD、第1電極での反射における位相シフトをφ、第2電極での反射における位相シフトをφ、整数をmとしたとき、D={(2πm+φ+φ)/4π}λというの式を満たす光学構造において、整数mと、反射膜間の膜厚と、ピーク波長の関係を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る実施例4の発光装置の概要を示す模式的な断面図である。
【図5】図1の実施形態に係る発光装置を表示装置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図6】図1の実施形態に係る発光装置を表示装置として採用した携帯電話機の構成を示す斜視図である。
【図7】図1の実施形態に係る発光装置を表示装置として採用した携帯情報端末の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。
<A:実施例1>
<A−1:発光装置の構造>
図1は、本発明の一実施形態に係る発光装置E1の概要を示す模式的な断面図である。発光装置E1は、複数の発光素子U1、U2、U3が第1基板10の面上に配列された構成であるが、図1においては、説明の便宜上、赤色、緑色および青色の各色の発光素子U1、U2、U3が一つずつ例示されている。
本実施形態の発光装置E1は、トップエミッション型であり、発光素子U1、U2、U3にて発生した光は第1基板10とは反対側に向かって進行する。従って、ガラスなどの光透過性を有する板材のほか、セラミックスや金属のシートなど不透明な板材を第1基板10として採用することができる。本実施形態では、第1基板10の厚さを0.5mmとした。
第1基板10には、発光素子U1、U2、U3に給電して発光させるための配線が配置されているが、配線の図示は省略する。また、第1基板10には、発光素子U1、U2、U3に給電するための回路素子薄膜11が配置されている。
【0022】
回路素子薄膜11が配置された第1基板10上には、コンタクトホール360を形成するたに、層間絶縁膜301が形成される。層間絶縁膜301は、SiOまたはSiNで形成される。
【0023】
層間絶縁膜301上には、反射層12が形成される。反射層12は、光反射性を有する材料によって形成される。この種の材料としては、例えばAl(アルミニウム)、Ag(銀)、Au(金)、Cu(銅)などの単体金属、またはAu、CuまたはAgを主成分とする合金などが好適に採用される。本実施例では、反射層12はAlで形成され、膜厚を100nmとした。
【0024】
反射層12上には、透明層302が形成される。透明層302はSiOまたはSiNで形成され、本実施形態では、赤色発光素子U1、緑色発光素子U2および青色発光素子U3ごとに透明層302の膜厚を変え、各発光素子ごとに反射層12と対向電極22との間の距離を調節している。本実施形態では、赤色発光素子U1においては透明層302を3層にして層厚を150nmとした。また、緑色発光素子U2においては透明層302を2層にして層厚を100nmとした。さらに、青色発光素子U3においては透明層302を1層にして層厚を70nmとした。
【0025】
透明層302上には、画素電極(陽極)15が形成される。本実施形態では、画素電極15はITOの透明導電膜から形成される。また、本実施形態では、反射層12と対向電極22との距離は前記透明層302で調節するため、画素電極15の膜厚は、赤色発光素子U1、緑色発光素子U2および青色発光素子U3において同一の膜厚に設定されている。一例として、本実施形態では、画素電極15の膜厚を20nmに設定した。このように、本実施形態では、各色の発光素子において画素電極15の膜厚を同一にしたので、画素部の凹凸を極力減らすことができる。
【0026】
上述したコンタクトホール360を埋めるように上下導通部330が形成され、回路素子膜11と画素電極15との導通が図られる。本実施形態では、上下導通部330にはAl(アルミニウム)を用いた。
【0027】
画素電極15上には、OLED層16が形成される。OLED層16は、正孔注入層上に形成された正孔輸送層(HTL:Hole transport layer)と、正孔輸送層上に形成された発光層(EML:Emitting Layer)と、発光層上に形成された電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)とからなる。この例において、OLED層16は、発光素子U1、U2、U3において一体として形成され、膜厚も同一である。
【0028】
本実施形態では、正孔輸送層(HTL)は図2に示すようにα−NPDで形成される。本実施形態では、正孔輸送層の膜厚を40nmとした。
発光層(EML)は、正孔と電子が結合して発光する有機EL物質から形成されている。本実施形態では、有機EL物質は低分子材料であって、白色光を発する。赤色のホスト材料および赤色のドーパント材料、ならびに緑色および青色のホスト材料としては図2に示すものが使用される。さらに、青色のドーパント材料としてはDPAVBi(4,4´−ビス[2−{4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル)が使用される。緑色のドーパント材料としてはキナクリドンが使用される。本実施形態では、発光層(EML)の膜厚を50nmとした。
電子輸送層(ETL)は図2に示すように、Alq3(トリス8−キノリノラトアルミニウム錯体)で形成される。本実施形態では、電子輸送層の膜厚を40nmとした。
【0029】
OLED層16上には、対向電極22(陰極)が形成される。対向電極22は、OLED層16を覆うように形成され、複数の発光素子U1、U2、U3に渡って連続している。対向電極22は、その表面に到達した光の一部を透過するとともに他の一部を反射する性質(すなわち半透過反射性)を持った半透過反射層として機能し、例えばマグネシウムや銀などの単体金属、またはマグネシウムや銀を主成分とする合金から形成される。本実施形態では、対向電極30は、MgAg(マグネシウム銀合金)で形成される。対向電極22の膜厚は、10nmとした。
【0030】
対向電極22上には、封止層30が形成される。封止層30は、透明の樹脂材料、例えばエポキシ樹脂などの硬化性樹脂から形成される。本実施形態では、封止層30をエポキシ樹脂などの硬化性樹脂で形成し、層厚を400nmとした。また、この封止層30上には、赤色、緑色、青色のカラーフィルター40、41、42および遮光膜32が形成される。さらに、赤色、緑色、青色のカラーフィルター40、41、42および遮光膜32上には、第2基板50が設けられ、第2基板50は封止層30を介して第1基板10とを貼り合わせられる。第2基板50はガラスなどの光透過性を有する材料で形成される。第2基板50の厚さは0.5mmとした。
【0031】
本実施形態の発光素子U1、U2、U3においては、反射層12と光取り出し側半透明反射層としての対向電極22との間でOLED層16が発する光を共振させる共振器構造が形成される。これにより、特定の波長の光を効率良く取り出すことができる。
【0032】
<A−2:光学構造>
次に、本実施形態の発光装置E1における光学構造について説明する。本実施形態における発光装置E1は、反射層12から光取り出し側半透明反射層としての対向電極22までの光学的距離を所定値に設定することにより、反射層12から対向電極22に定在波を発生させる共振構造を採用している。
【0033】
具体的には、反射層12から対向電極22間の光学的距離をD、反射層12での反射における位相シフトをφ、対向電極22での反射における位相シフトをφ、定在波のピーク波長をλ、整数をmとすると、下記の式を満たす構造となっている。
D={(2πm+φ+φ)/4π}λ・・・(3)
【0034】
上記(3)式で、Alの反射層12とMgAgの対向電極22の間のOLED層16および透明層302の屈折率nを1.8として、反射層12から対向電極22間の光学的距離Dと、整数m、および、赤色、緑色、青色の各色を想定してピーク波長をプロットした図が図3である。
【0035】
図3に示すように、斜線部の150〜200nmの領域では、可視光領域の光が取り出し難い領域であることがわる。つまり、AlからMgAgまでの膜厚を、上記(3)式でm=0の場合の光学構造における赤色のピーク波長が得られる膜厚と、上記(3)式でm=1の場合の光学構造における青色のピーク波長が得られる膜厚との間に設定すれば、可視光領域の光が取り出し難いことがわかる。
【0036】
本実施形態では、図1に示すように、透明導電膜の画素電極15にAlの上下導通部330が接触している。従って、この上下導通部330の上面からMgAgの対向電極22までの膜厚(図1に矢印D4で示す膜厚)を、150〜200nmになるように設定することにより、上下導通部330と対向電極22で挟まれた領域からは、可視光領域の光が取り出し難くなる。その結果、上下導通部330からの反射光が生じ難くなり、混色の発生を抑えることができ、色域が狭くなることを防止することができる。
【0037】
本実施形態では、OLED層16の膜厚が130nmに設定され、画素電極15の膜厚が20nmに設定されている。従って、Alの上下導通部330の上面からMgAgの対向電極22までの膜厚(図1に矢印D4で示す膜厚)は、150nmに設定されている。
【0038】
また、赤色発光素子U1における反射層12と対向電極22の間の膜厚(図1に矢印D1で示す膜厚)、緑色発光素子U2における反射層12と対向電極22の間の膜厚(図1に矢印D2で示す膜厚)、および、青色発光素子U3における反射層12と対向電極22の間の膜厚(図1に矢印D3で示す膜厚)のそれぞれは、m=1の場合に上記(3)式を満たすように設定されている。従って、赤色発光素子U1、緑色発光素子U2、および、青色発光素子U3の各画素領域においては、高い光取り出し効率で各色の光を良好に取り出すことができる。しかも、上述のように、上下導通部330からの反射光が生じ難くなり、混色の発生を抑えることができ、色域が狭くなることを防止することができる。
【0039】
<B:実施例2>
次に、本実施形態の実施例2の発光装置について説明する。実施例1で説明した図1の例は、反射層をAl、対向電極をMgAgとした場合の計算結果であるが、反射層としてAl以外の材料を用いた場合でも、同様に可視光領域の光が殆ど得られない膜厚がある。従って、上下導通部330にAl以外の材料を用いた場合でも、上下導通部330から対向電極22までの膜厚を、上記(3)式でm=0の場合の光学構造における赤色のピーク波長が得られる膜厚と、上記(3)式でm=1の場合の光学構造における青色のピーク波長が得られる膜厚との間に設定すれば、可視光領域の光が取り出し難くなり、上下導通部330からの反射光の発生を抑えることができる。
【0040】
実施例2は、上下導通部330にAl以外の材料を用いた例である。上下導通部330に、Alよりも反射率の低い金属材料を用いれば、より一層確実に上下導通部330からの反射光の発生を抑えることができる。
【0041】
そこで、実施例2では、上下導通部330に、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タングステン(W)などを用いる。特に、タングステン(W)は、上下導通部330の材料としてよく使われる材料であり、製造プロセス上も容易に上下導通部330を形成することができる。また、これらのCr、Ti、TiN、Wは、透明導電膜のITOと接触しても電蝕が生じないという利点もある。
【0042】
実施例2では、上下導通部330を、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タングステン(W)などで形成し、上下導通部330から対向電極22までの膜厚を、上記(3)式でm=0の場合の光学構造における赤色のピーク波長が得られる膜厚と、上記(3)式でm=1の場合の光学構造における青色のピーク波長が得られる膜厚との間に設定した。
その結果、可視光領域の光が取り出し難くなり、かつ、上下導通部330の反射率がAlよりも低いので、上下導通部330からの反射光の発生をより一層確実に抑えることができる。
【0043】
<C:実施例3>
次に、本実施形態の実施例3の発光装置について説明する。実施例3では、上下導通部330をCu(銅)、または、Cuを主成分とした合金で形成した。
上下導通部330に、CuまたはCuを主成分とした材料を用いることにより、赤色領域では反射率が高いものの、青色領域の反射率は低く、可視光領域の光が出てこないように設計しやすいという利点がある。
また、上下導通部330に、CuまたはCuを主成分とした材料を用いた場合には、上下導通部330をダマシン法で形成しやすく、Si等を用いる半導体製造ラインで製造することができるという利点がある。
実施例3によれば、可視光領域の光が取り出し難くなり、かつ、上下導通部330の反射率がAlよりも低いので、上下導通部330からの反射光の発生をより一層確実に抑えることができる。しかも、上下導通部330の製造も容易になる。
【0044】
<D:実施例4>
次に、本実施形態の実施例4の発光装置を図4に基づいて説明する。実施例3では、図4に示すように、上下導通部330と対向電極22の間に絶縁層370を設ける。絶縁層370は、SiOやSiNで形成する。
上下導通部330と対向電極22の間に絶縁層370を設けることより、上下導通部330からの反射光をより一層確実に防止することができる。
【0045】
実施例4においても、上下導通部330から対向電極22までの膜厚を、上記(3)式でm=0の場合の光学構造における赤色のピーク波長が得られる膜厚と、上記(3)式でm=1の場合の光学構造における青色のピーク波長が得られる膜厚との間に設定する。
【0046】
また、上下導通部330と対向電極22の間に絶縁層370は、実施例1から実施例3までのどの発光装置に設けてもよい。また、図4の例では、隣の発光素子の画素電極15に重ならないように絶縁層370を形成したが、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、緑色発光素子U2の画素電極15と絶縁層370を覆うと共に、隣の赤色発光素子U1の画素電極15の端部にも絶縁層370が重なるように形成してもよい。つまり、図4における絶縁層370を隣の発光素子の画素電極15の端部に重なるように形成してもよい。
実施例4によれば、可視光領域の光が取り出し難くなり、かつ、上下導通部330を絶縁層370で覆うので、上下導通部330からの反射光の発生をより一層確実に抑えることができる。
【0047】
<E:応用例>
次に、本発明に係る発光装置を利用した電子機器について説明する。図5は、上述の実施形態に係る発光装置E1を表示装置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての発光装置E1と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。この発光装置E1は有機EL素子を使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0048】
図6に、上述の実施形態に係る発光装置E1を適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示装置としての発光装置E1を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、発光装置E1に表示される画面がスクロールされる。
【0049】
図7に、上述の実施形態に係る発光装置E1を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての発光装置E1を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が発光装置E1に表示される。
【0050】
なお、本発明に係る発光装置が適用される電子機器としては、図5から図7に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンター、スキャナー、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【0051】
なお、上述した実施形態においては、各発光素子の光学構造を、上記(3)式において整数mが1となる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、整数mが2以上となる場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10……第1基板、11……回路素子薄膜、12……反射層、15……画素電極、16……OLED層、22……対向電極、30……封止層、32……遮光膜、40……赤色用カラーフィルター、41……緑色用カラーフィルター、42……青色用カラーフィルター、50……第2基板、301……層間絶縁膜、302……透明層、330……上下導通部、360……コンタクトホール、370……絶縁膜、E1……発光装置、U1…赤色発光素子、U2…緑色発光素子、U3…青色発光素子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色発光素子、青色発光素子、および緑色発光素子と、回路素子が形成された基板と、を備えた発光装置であって、
前記赤色発光素子、前記青色発光素子、および前記緑色発光素子の各々は、
前記基板上に形成された光反射層と、
前記光反射層上に形成された透明層と、
前記透明層上に形成された画素電極と、
前記透明層および画素電極上に形成された発光層と、
前記発光層上に形成された対向電極と、
前記回路素子と前記画素電極との導通を図る上下導通部とを備え、
前記光反射層から対向電極間の距離をD、前記光反射層での反射における位相シフトをφ、前記対向電極での反射における位相シフトをφ、前記光反射層と対向電極の間に発生する定在波のピーク波長をλ、2以下の整数をmとしたとき、次の式
D={(2πm+φ+φ)/4π}λ
を満たす光学構造を有し、
前記上下導通部と前記画素電極との界面から前記対向電極までの長さは、前記式においてm=0の場合の赤色のピーク波長が得られる距離Dから、前記式においてm=1の場合の青色のピーク波長が得られる距離Dまでの値に設定されている、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記発光層は、前記赤色発光素子、前記緑色発光素子、前記青色発光素子において、同一の膜厚で一体に形成されることを特徴する請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記上下導通部は、Al、Cr、Mo、Ti、TiN、W、Cu、もしくはこれらを主成分とした合金で形成することを特徴する請求項1または2に記載の発光装置
【請求項4】
前記画素電極は透明導電膜で形成されており、前記赤色発光素子、前記緑色発光素子、前記青色発光素子において前記画素電極の膜厚が同一であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一記載の発光装置。
【請求項5】
前記上下導通部と前記対向電極との間に絶縁層を形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一記載の発光装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一記載の発光装置を備えたことを特徴とする電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−248517(P2012−248517A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121791(P2011−121791)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】