発光装置に用いる蛍光体
【課題】350−415nmの光を発生する第1の発光体(励起源)と第2の発光体(蛍光体)を組み合わせ、かつ、高い発光強度を有する発光装置を提供する。
【解決手段】350−415nmの光を発生する第1の発光体(励起源)と第2の発光体(蛍光体)を組み合わせた装置において、以下の(A)及び/又は(B)の条件を満たすことを特徴とする発光装置。
(A)蛍光体の量子吸収効率αqが0.8以上(B)蛍光体の量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積αq・ηiが0.55以上
【解決手段】350−415nmの光を発生する第1の発光体(励起源)と第2の発光体(蛍光体)を組み合わせた装置において、以下の(A)及び/又は(B)の条件を満たすことを特徴とする発光装置。
(A)蛍光体の量子吸収効率αqが0.8以上(B)蛍光体の量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積αq・ηiが0.55以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光装置に関し、詳しくは、電力源により紫外光から可視光領域の光を発光する第1の発光体と、その紫外光から可視光領域にある光を吸収し長波長の可視光を発する母体化合物が発光中心イオンを含有する蛍光体を有する波長変換材料しての第2の発光体とを組み合わせることにより、使用環境によらず演色性が良く、かつ、高強度の発光を発生させることのできる発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
青、赤、緑の混色により、白色その他の様々な色を、むらなくかつ演色性良く発生させるために、LEDやLDの発光色を蛍光体で色変換させた発光装置が提案されている。例えば、特公昭49−1221号公報では、300−530nmの波長の放射ビームを発するレーザーのビームを燐光体(Y3-x-yCexGdyM5-zGazO12(YはY、Lu,またはLa、
MはAl、Al-In、またはAl-Scを表す。))に照射させ、これを発光させてディスプレーを形成する方法が示されている。また、近年では、青色発光の半導体発光素子として注目されている発光効率の高い窒化ガリウム(GaN)系LEDやLDと、波長変換材料としての蛍光体とを組み合わせて構成される白色発光の発光装置が、消費電力が小さく長寿命であるという特徴を活かして画像表示装置や照明装置の発光源として提案されている。実際に、特開平10−242513号公報において、この窒化物系半導体のLED又はLDチップを使用し、蛍光体としてイットリウム・アルミニウム・ガーネット系を使用することを特徴とする発光装置が示されている。米国特許第6,294,800号公報において、LEDからの光に代表される330〜420nm領域の光の照射を受けて白色発光を発生しうる物質として、Ca8Mg(SiO4)4Cl2:Eu2+,Mn2+を含む緑色発光体と赤色蛍光体と青色蛍光体を組み合わせた物質が開示されており、その青色蛍光体として(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Eu2+があげられている。
【0003】
しかしながら、今までのところ、LED等の第1の発光体に対し、特開平10−242513号公報に示されるようなイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を第2の発光体として組み合わせたような発光装置では発光強度が充分とは言えず、ディスプレイやバックライト光源、信号機などの発光源としてさらなる改良が求められる。また、米国特許第6,294,800号公報に示されるようなLED光の青色可視光への変換材料として記載されている(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Eu2+についても同様であり、より高い発光強度が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭49−1221号公報
【特許文献2】特開平10−242513号公報
【特許文献3】米国特許第6,294,800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述の従来技術に鑑み、発光強度の極めて高い発光装置を開発すべくなされたものであって、従って、本発明は、製造が容易であると共に、発光強度が極めて高いダブル発光体型発光装置を得ることを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、350−415nmの光を発生
する第1の発光体と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発生する第2の発光体とを有する発光装置において、上記第2の発光体として、(A)量子吸収効率αq
が0.8以上、及び/または、(B)量子吸収効率と内部量子効率の積となるαq・ηiが0.55以上、の条件を満たす蛍光体を用いると、前記蛍光体が350−415nm付近の光の照射を受け、高い強度で可視光の発光を起こす結果、前記目的を達成できることを見出し本発明に到達した。また、上記第2の発光体として、一般式[1]の化学組成を有する結晶相を含有してなる蛍光体を用いることでも、前記目的を達成すること、好ましい具体例としては、(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Eu2+を基本的な組成とする結晶相の中でSrの割合のより高い組成を使用する、及び/又はEuの割合のより高い組成を使用することによって前記目的が達成できることを見出し本発明に到達した。
【0007】
EuaSrbM5-a-b(PO4)cXd・・・・・・[1]
(上記一般式[1]において、MはEu及びSr以外の金属元素を表すまた、XはPO4
以外の一価のアニオン基を表す。c及びdは、2.7≦c≦3.3、0.9≦d≦1.1
を満足する数である。aはa>0、bはb≧0、a+b≦5となる数であるが、a≧0.1又はb≧3という条件を満足する。)
ここで、5−a−b、d、c、a及びbは、それぞれ順に、元素Mに対応する元素のモル比、アニオン基Xのモル比、PO4基のモル比、Eu原子のモル比、及びSr原子のモ
ル比を表す。例えば、Eu0.5Sr3.5Ba0.8Mn0.195Sm0.005(PO4)3Cl0.95F0.05なる組成の場合、MはBa、Mn、およびSmを表し、XはClとFとを表すので、Eu0.5Sr3.5M1.0(PO4)3X1.0と表すことができるので、前記[1]式の範疇に入る。
【0008】
一般にA5(PO4)3Cl(Aはアルカリ土類金属)の結晶の中のAサイトにEu2+等の他の2価金属元素が置換しえて、その置換体が、Hg共鳴線254nmの短紫外線で励起され発光することを利用して、ランプ用蛍光体として使用されうることは知られている。本発明は、上記とは波長の異なる400nm付近の励起光による発光強度は、A5(PO4)3Clのアルカリ土類金属Aの種類によって大きく異なり、アルカリ土類金属AとしてのSrを多く含有するものを使用すると特異的に400nm付近の光の励起によって大きな発光強度が得られること、及び、同様の励起光に対する発光強度は、付活剤であるEuの含有割合が高いと特異的に大きくなることを知得したことに基づくものである。
【0009】
従って本発明は、次の(1)〜(21)をその要旨とする。
(1)350−415nmの光を発生する第1の発光体と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発生する第2の発光体とを有する発光装置において、前記第2の発光体が以下の(A)及び/又は(B)
(A)量子吸収効率αqが0.8以上、
(B)量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積αq・ηiが0.55以上
の条件を満たす蛍光体を含有することを特徴とする発光装置。
(2)前記蛍光体が、下記一般式[1]
EuaSrbM5-a-b(PO4)cXd・・・・・・[1]
(上記一般式[1]において、MはEu及びSr以外の金属元素を表す。また、XはPO4以外の一価のアニオン基を表す。c及びdは、2.7≦c≦3.3、0.9≦d≦1.
1を満足する数である。aはa>0、bはb≧0、a+b≦5となる数であるが、a≧0.1又はb≧3という条件を満足する。)
の化学組成を有する結晶相を含有してなることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。(3)350−415nmの光を発生する第1の発光体と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発生する第2の発光体とを有する発光装置において、前記第2の発光体が、下記一般式[1]
EuaSrbM5-a-b(PO4)cXd・・・・・・[1]
(上記一般式[1]において、MはEu及びSr以外の金属元素を表す。また、XはPO
4以外の一価のアニオン基を表す。c及びdは、2.7≦c≦3.3、0.9≦d≦1.
1を満足する数である。aはa>0、bはb≧0、a+b≦5となる数であるが、a≧0.1又はb≧3という条件を満足する。)
の化学組成を有する結晶相を有する蛍光体を含有してなることを特徴とする発光装置。
(4)bが、b>0であることを特徴とする(3)に記載の発光装置。
(5)第1の発光体がレーザーダイオード又は発光ダイオードである(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の発光装置。
(6)第1の発光体がレーザーダイオードである(5)に記載の発光装置。
(7)a及びbが、0.1≦a<5且つ0.01≦b<5を満足するか、0.0001≦a<5、且つ3≦b<5を満足することを特徴とする(2)ないし(6)のいずれか1つに記載の発光装置。
(8)元素Mのうちの70mol%以上がBa、Mg、Ca、Zn及びMnからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であることを特徴とする(2)ないし(7)のいずれか1つに記載の発光装置。
(9)Xのうち50mol%以上がClであることを特徴とする(2)ないし(8)のいずれか1つに記載の発光装置。
(10)a及びbが、a≧0.1かつb≧3を満足する(2)ないし(9)のいずれか1つに記載の発光装置。
(11)aが、a>0.2を満足する(2)ないし(10)のいずれか1つに記載の発光装置。
(12)aが、0.2<a≦3を満足する(11)に記載の発光装置。
(13)元素Mが、Ba、Mg、Ca、Zn、およびMnからなる群から選ばれる少なくとも一種からなり、且つXがClからなる(2)ないし(12)のいずれか1つに記載の発光装置。
(14)元素Mが、Ba、Mg、及びCaからなる群から選ばれる少なくとも一種からなり、且つXがClからなる(2)ないし(13)のいずれか1つに記載の発光装置。
(15)第1の発光体がGaN系化合物半導体を使用してなることを特徴とする(1)ないし(14)のいずれか1つに記載の発光装置。
(16)第1の発光体が面発光型GaN系レーザーダイオードであることを特徴とする(1)ないし(15)のいずれか1つに記載の発光装置。
(17)第2の発光体が膜状であることを特徴とする(1)ないし(16)のいずれか1つに記載の発光装置。
(18)第1の発光体の発光面に、直接第2の発光体の膜面を接触させてなることを特徴とする(17)に記載の発光装置。
(19)第2の発光体が、蛍光体の粉を樹脂に分散させてなることを特徴とする(1)ないし(18)のいずれか1つに記載の発光装置。
(20)発光装置からの取り出し光が、第1の発光体からの光と第2の発光体からの光を混合した光であって、該取り出し光が白色であることを特徴とする(1)ないし(19)のいずれか1つに記載の発光装置。
(21)(1)ないし(20)のいずれか1つに記載の発光装置を有する照明装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発光強度の高い発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】Sr5(PO4)8ClのX線回折パターン(X線源Cu Kαに換算したもの)
【図2】面発光型GaN系ダイオードに膜状蛍光体を接触させた発光装置の一例を示す模式的斜視図。
【図3】本発明の発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。
【図4】本発明の実施例1の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図5】発光波長400nmのGaN系発光ダイオードにより照射を受けた本発明の実施例1、比較例1、および比較例2のそれぞれの蛍光体の発光スペクトルを重ね合わせたスペクトル。
【図6】本発明の実施例2の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図7】本発明の実施例3の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図8】本発明の実施例4の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図9】本発明の面発光照明装置の一例を示す模式的断面図。
【図10】本発明の実施例5の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図11】本発明の実施例6の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図12】本発明の実施例7の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図13】本発明の実施例8の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図14】本発明の実施例9の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図15】本発明の実施例10の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図16】分光光度計に反射板を取り付けて測定した際のスペクトルIref(λ)
【図17】分光光度計に量子吸収効率αq,内部量子効率ηiを測定しようとするサンプルを取り付けて測定したした際のスペクトルI(λ)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、350−415nmの光を発生する第1の発光体と蛍光体を含む第2の発光体を組み合わせた発光装置であり、その第2の発光体に含まれる蛍光体が、(A)量子吸収効率αqが0.8以上、より好ましくは,0.9以上、さらに好ましくは、0.95以
上、及び/または、(B)量子吸収効率と内部量子効率の積となるαq・ηiが0.55以上、好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.65以上であることを特徴とする。実質的に、αqの取りうる値の上限は1、ηiの取りうる値の上限は0.99である。蛍光体が(A)の条件を満たしている場合、第1の発光体から発せられたフォトンのうち、蛍光体内で素励起を起こすことができるものの数が多くなり、結果として蛍光体から単位時間当たりに放出されるフォトンの数を増加させる、すなわち高い発光強度を有する発光装置を得ることができる。ここで、素励起とは、Euのスピン状態が変化することによるエネルギー励起(一般に発光中心励起と呼ぶ。)、各イオン近傍に存在確率を持つ電子の平均的な数が変化することによるエネルギー励起(一般にCT励起と呼ぶ。)、電子のバンド間遷移によるエネルギー励起(一般にバンド励起と呼ぶ。)などのことを指す。また、蛍光体が(B)の条件を満たしている場合、第1の発光体から発せられたフォトンによって引き起こされた素励起のうち、その後さらにフォトンの形成を引き起こす経緯をたどるものの割合が増加することになり、結果として蛍光体から単位時間当たりに放出されるフォトンの数を増加させる、すなわち高い発光強度を有する発光装置を得ることができる。また、蛍光体が(B)の条件を満たしている場合に、通常αqおよびηiが取りうる値の範囲は、それぞれ、0.55≦αq≦1、0.55≦ηi≦0.99である。
【0013】
以下に、量子吸収効率αq、内部量子効率ηiを求める方法を説明する。まず、測定対象となる粉末状などにした蛍光体サンプルを、測定精度が保たれるように、十分に表面を平滑にしてセルに詰め、積分球などがついた分光光度計に取り付ける。この分光光度計としては、例えば大塚電子株式会社製MCPD2000などがある。積分球などを用いるのは、サンプルで反射したフォトンおよびサンプルからフォトルミネッセンスで放出されたフォトンを全て計上できるようにする、すなわち、計上されずに測定系外へ飛び去るフォトンをなくすためである。この分光光度計に蛍光体を励起する発光源を取り付ける。この発光源は、例えばXeランプ等であり、発光ピーク波長が400nmとなるようにフィルター等を用いて調整がなされる。この400nmの波長ピークを持つように調整された発光源からの光を測定しようとしているサンプルに照射し、その発光スペクトルを測定する。この測定スペクトルには、実際には、励起発光光源からの光(以下では単に励起光と記す
。)でフォトルミネッセンスによりサンプルから放出されたフォトンの他に、サンプルで
反射された励起光の分のフォトンの寄与が重なっている。吸収効率αqは、サンプルによ
って吸収された励起光のフォトン数Nabsを励起光の全フォトン数Nで割った値である。
まず、後者の励起光の全フォトン数Nは、次のように求める。すなわち、励起光に対してほぼ100%の反射率Rを持つ物質、例えばLabsphere製Spectralon(400nmの励起光に対して98%の反射率を持つ。)等の反射板を、測定対象として該分光光度計に取り付け、反射スペクトルIref(λ)を測定する。ここでこの反射スペ
クトルIref(λ)から(式1)で求められた数値は、Nに比例する。
【0014】
【数1】
【0015】
ここで、積分区間は実質的にIref(λ)が有意な値を持つ区間のみで行ったもので良
い。図16にIref(λ)の一例を示すが、この場合は、380nmから420nmの範囲で取れば十分である。前者のNabsは(式2)で求められる量に比例する。
【0016】
【数2】
【0017】
ここで、I(λ)は,αqを求めようとしている対象サンプルを取り付けたときの、反
射スペクトルである。(式2)の積分範囲は(式1)で定めた積分範囲と同じにする。このように積分範囲を限定することで、(式2)の第二項は,対象サンプルが励起光を反射することによって生じたフォトン数に対応したもの、すなわち、対象サンプルから生ずる全フォトンのうち励起光によるフォトルミネッセンスで生じたフォトンを除いたものに対応したものになる。実際のスペクトル測定値は、一般にはλに関するある有限のバンド幅で区切ったデジタルデータとして得られるため、(式1)および(式2)の積分は、そのバンド幅に基づいた和分によって求まる。以上より、αq=Nabs/N=(式2)/(式1)と求まる。
【0018】
次に、内部量子効率ηiを求める方法を説明する。ηiは、フォトルミネッセンスによって生じたフォトンの数NPLをサンプルが吸収したフォトンの数Nabsで割った値である。
ここで、NPLは、(式3)で求められる量に比例する。
【0019】
∫λ・I(λ)dλ ―――(式3)
この時、積分区間は、サンプルからフォトルミネッセンスによって生じたフォトンが持つ波長域に限定する。サンプルから反射されたフォトンの寄与をI(λ)から除くためで
ある。具体的に(式3)の積分の下限は、(式1)の積分の上端を取り、フォトルミネッセンス由来のスペクトルを含むのに好適な範囲を上端とする。図17がI(λ)の例であ
るが、この場合、420nmから520nmを(式3)における積分範囲に取れば良い。以上により、ηi=(式3)/(式2)と求まる。なお、デジタルデータとなったスペク
トルから積分を行うことに関しては、αqを求めた場合と同様である。
【0020】
一般に量子吸収効率αqを高めること自体は、サンプル内に取り込まれる励起光源のフ
ォトン数を上昇させることにつながるので発光輝度が高まる期待はある。しかし実際には、例えば発光中心であるEu等の濃度を上昇させることなどでαqの上昇を試みると、フォトンが最終的なフォトルミネッセンスの過程に到達する前に、そのエネルギーをサンプル結晶内のフォノンの励起に変えてしまう確率が高まり、十分な発光強度を得ることができなかった。しかしながら、励起光源の波長を特に350−415nmに選び、かつ発光装置の第2の発光体として量子吸収効率αqの高い蛍光体を用いると、前記非フォトルミネッセンス過程が抑制され、高発光強度の発光装置が実現されることが見出された。またここで、αqが高いことに加え、αq・ηiの値が高い蛍光体を用いた第2の発光体と、350−415nmの波長を持つ第1の発光体を組み合わせることで、さらに好ましい特性をもった発光装置が得られることも見出された。
【0021】
上記(A)及び/または、(B)の条件を満たす限り、蛍光体を構成する材料は、特に限定されないが、結晶相を有することが好ましく、下記一般式[1]の化学組成を有する結晶相を有するもの(以下、一般式[1]の結晶相と略すことがある)から選ぶのがより好ましい。なお、該蛍光体には、性能を損なわない範囲で他の成分、例えば、光散乱物質等を含んでいてもよいため、蛍光体中に含まれる前記結晶相の割合は、10wt%以上、好ましくは50wt%以上、より好ましくは80wt%以上である。
【0022】
EuaSrbM5-a-b(PO4)cXd・・・・・・[1]
但し、MはEu及びSr以外の金属元素を表す。また、XはPO4以外の一価のアニオ
ン基を表す。c及びdは、2.7≦c≦3.3、0.9≦d≦1.1を満足する数である。aはa>0、bはb≧0、a+b≦5となる数であるが、a≧0.1又はb≧3という条件を満足する。
【0023】
第2の発光体が、上記一般式[1]の蛍光体を含有する本発明の発光装置自体新規で、従来の発光装置より優れた発光強度を有する。但し、上記(A)及び/または(B)の条件を満たす蛍光体を含有する第2の発光体は、これに含有される蛍光体として、上記一般式[1]の蛍光体の中でも好ましいものを選択することで得ることが出来る傾向にある。以下、一般式[1]の蛍光体について説明する。式[1]中の元素MはEuとSr以外の金属元素を表す。元素Mについては、発光強度等の面から、Ba、Mg、Ca、Zn、およびMnの合計の元素Mに占める割合を70mol%以上とすることが好ましく、中でもBa、Mg、およびCaの合計の元素Mに占める割合を70mol%以上とすることが好ましく、Ba、Mg、およびCaの合計の元素Mに占める割合を90mol%以上とすることが更に好ましく、元素MのすべてをBa、Mg、Ca、Zn、およびMnからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素とするのがさらに好ましく、元素MのすべてをBa、Mg、およびCaからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素とするのが最も好ましい。
【0024】
元素M中の金属元素として上記以外の金属元素を結晶中に含有させる場合、その金属元素に特に制約はないが、Srやこれら5種金属元素と同じ価数、即ち2価の金属元素を含有させると、結晶構造を保持しやすいので、望ましい。2価の金属元素及び発光中心Eu2+の焼成時の固体内拡散による複合酸化物の結晶化を助ける意味で、1価、3価、4価、5価、又は6価等の金属元素を少量導入しても良い。一つの例を挙げると、Sr5(PO4)3Cl:Eu蛍光体中のSr2+の一部を等モルのLi+とGa3+で電荷補償効果を保持しながら置換することができる。増感剤となりうる金属元素を少量置換してもよい。
【0025】
なお、金属元素Mを含有させない、即ちa+bの値を5とすることもできる。
前記一般式[1]中のXはPO4以外の一価の基である。Xについては、発光強度等の
面から、Xのうちの50mol%以上をハロゲン原子とすることが好ましく、70mol%以上、特に90mol%以上とすることがより好ましい。ハロゲン原子としてはCl、F、Br等を挙げることができるが、好ましくはClである。Xとして、その50mol%以上をハロゲン原子とした場合、残余のアニオン基として水酸基等を含んでいてもよい。最も好ましい態様においては、アニオン基Xのうちの50mol%以上、特に70mol%以上、さらには90mol%以上をClとする。この場合、残余の基としては、他のハロゲン原子やOH基を挙げることができる。
【0026】
前記一般式[1]中のSrのモル比bについては、b≧0、好ましくはb>0であり、具体的には0≦b<5、好ましくは0<b<5とし、通常は0.01以上、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上とするが、発光強度等の面から、3以上、特に4以上とするのが最も好ましい。一般に(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Eu2+を基本的な組成とする結晶相はSrのモル比として広範な値をとりうるが、本発明においては、上記のようなb<5を上限とする比較的大きめの数値を採用することによって顕著に高い発光強度を得ることができる。一方、Srのモル比が小さい場合、即ちbの値を小さめの数値、特に0とすることにより、原料コストを低減させることが出来るため好ましく、特にCaを50mol%以上とすることが好ましく、この場合においても比較的高い発光強度を得ることができる。
【0027】
前記一般式[1]中のEuのモル比aについては、0<a<5とし、通常は0.0001以上、好ましくは0.001以上、さらに好ましくは0.005以上とするが、発光強度等の面から、通常a≧0.1、好ましくはa≧0.2、より好ましくはa>0.2、さらに好ましくはa≧0.3とし、特に、a≧0.4、さらにはa≧0.45とするのが最も好ましい。発光中心イオンEu2+のモル比aが小さすぎると、発光強度が小さくなる傾向があるが、あまりにaの値が大きいと、濃度消光と呼ばれる現象により、やはり発光強度が減少する傾向があるので通常はa≦4.8、好ましくはa≦3、より好ましくはa≦2.5、特に好ましくはa≦2、最も好ましくはa≦1.5とする。前記一般式[1]中、a>0.2、更にはa≧0.3のものを用いると、条件(A)及び/または(B)を満たす蛍光体を有する第2の発光体よりなる発光装置を得る上で、特に好ましい。
【0028】
本発明においては、a≧0.1及びb≧3のどちらか一方を満足すれば、十分な発光強度を得ることができる。従って、a及びbのどちらか一方が上記式を満足すれば、必ずしも他方は上記式を満足する必要はないので、この点についてa及びbの値の好ましい組み合わせを列挙すれば、(1)a≧0.1且つb≧0.01、(2)a≧0.1且つb≧0.1、(3)a≧0.1且つb≧0.2、(4)a≧0.2且つb≧0.01、(5)a≧0.2且つb≧0.1、(6)0.0001≦a、且つb≧3、(7)0.001≦a、且つb≧3、(8)0.005≦a、且つb≧3、(9)0.0001≦a、且つb≧4、(10)0.001≦a、且つb≧4、(11)0.005≦a、且つb≧4等を挙げることができる。ただし、発光強度をさらに大きくできる点で、本発明においては、a≧0.1及びb≧3の両者を満足させるのが特に好ましく、この点についてa及びbの値の好ましい組み合わせを列挙すれば、(1)a≧0.1且つb≧3、(2)a≧0.1且つb≧4、(3)a≧0.2且つb≧3、(4)a≧0.2且つb≧4等を挙げることができる。特に、a>0.2及びb≧3の両者を満足させることにより、より発光強度を大きくすることができ、この点についてa及びbの値のさらに好ましい組み合わせを列挙すれば、(1)a>0.2且つb≧3、(2)a>0.2且つb≧4、(3)a≧0.3且つb≧3、(4)a≧0.3且つb≧4、(5)a≧0.4且つb≧3、(6)a≧0.4且つb≧4、(7)a≧0.45且つb≧3、(8)a≧0.45且つb≧4等を挙げることができる。
【0029】
前記一般式[1]において、cおよびdは、2.7≦c≦3.3、0.9≦d≦1.1
を満足するが、cについては、好ましくは2.8≦c≦3.2、さらに好ましくは2.9
≦c≦3.1であり、dについては、好ましくは0.93d≦1.07、さらに好ましく
は0.95≦d≦1.05とする。
前記一般式[1]の基本結晶EuaSrbM5-a-b(PO4)cXdにおいては、格子欠損が多少生じていても本目的の蛍光性能に大きな影響がないので、上記a,b,c,dの不等式の範囲で使用す
ることができる。
【0030】
一般にA5(PO4)3Cl(Aはアルカリ土類金属)の結晶は、六方晶構造をとり、その空間群
はP63/mである。
本発明における結晶構造は、通常上記に示したA5(PO4)3Cl構造である。図1に代表的なSr5(PO4)3ClのX線回折パターンを示す(粉末X線回折データベースより)。Sr5(PO4)3ClのSrサイトには、Ba、Mg、Ca、Zn、Mn等の2価金属を広い組成範囲で置換させることができる。また、少量であれば、NaやLa等の価数の異なる金属も置換させうる。そのClサイトには、F、Br、OH等のアニオン種を置換させることができ、その構造が保たれる。本発明においては、これら置換体のうち、通常カチオン種としてSrを用いた置換体を母体とし、更にカチオンサイトにEu2+を付活剤として置換させた結晶相に対応する。
【0031】
本発明で使用する蛍光体は、第1の発光体からの350−415nmの光によって励起され、可視光を発生する。上記蛍光体は、350−415nmの光の励起によって非常に強い発光強度の可視光を発生する。
本発明で使用する蛍光体は、前記一般式[1]に示されるようなM源、X源、PO4源
の化合物、Sr源の化合物、及び、発光中心イオン(Eu)の元素源化合物を、ハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機を用いて粉砕した後、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機により混合するか、或いは、混合した後、乾式粉砕機を用いて粉砕する乾式法、又は、水等の媒体中にこれらの化合物を加え、媒体攪拌式粉砕機等の湿式粉砕機を用いて粉砕及び混合するか、或いは、これらの化合物を乾式粉砕機により粉砕した後、水等の媒体中に加え混合することにより調製されたスラリーを、噴霧乾燥等により乾燥させる湿式法により、調製した粉砕混合物を、加熱処理して焼成することにより製造することができる。
【0032】
これらの粉砕混合法の中で、特に、発光中心イオンの元素源化合物においては、少量の化合物を全体に均一に混合、分散させる必要があることから液体媒体を用いるのが好ましく、又、他の元素源化合物において全体に均一な混合が得られる面からも、後者湿式法が好ましく、又、加熱処理法としては、アルミナや石英製の坩堝やトレイ等の耐熱容器中で、通常700〜1500℃、好ましくは900〜1300℃の温度で、大気、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、水素、アルゴン等の気体の単独或いは混合雰囲気下、10分〜24時間、加熱することによりなされる。尚、加熱処理後、必要に応じて、洗浄、乾燥、分級処理等がなされる。
【0033】
尚、前記加熱雰囲気としては、発光中心イオンの元素が発光に寄与するイオン状態(価数)を得るために必要な雰囲気が選択される。本発明における2価のEu等の場合には、一酸化炭素、窒素、水素、アルゴン等の中性若しくは還元雰囲気下が好ましいが、大気、酸素等の酸化雰囲気下も条件さえ選べば可能である。
又、ここで、M源、X源、Sr源、およびEu源の化合物としては、M、X、Sr、およびEuの各酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物等が挙げられ、PO4源の化合物としては、元素M、NH4等のリン酸水素塩、リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、P2O5、PX3、PX5、M2PO4X、リン酸、メタリン酸、ピロリン酸等が挙げられ、X源の化合物としては、MX、NH4X、HX、M2PO4X等が挙げられ、これらの中から、化学組成、反応性、及び、焼成時におけるNOx、SOx等の非発生性等を考慮して選択される。
【0034】
Srに対して好ましいとするSr源化合物を具体的に例示すれば、SrO、Sr(OH)2・8H2O、SrCO3、Sr(NO3)2、Sr(OCO)2・H2O、Sr(OCOC
H3)2・0.5H2O、SrCl2等が挙げられる。
金属元素群M中のBa、Mg、Ca、Zn、またはMnの合成原料用化合物を具体的に例示すれば、Ba源化合物としては、BaO、Ba(OH)2・8H2O、BaCO3、B
a(NO3)2、BaSO4、Ba(OCO)2・2H2O、Ba(OCOCH3)2、BaC
l2等が、又、Mg源化合物としては、MgO、Mg(OH)2、MgCO3、Mg(OH
)2・3MgCO3・3H2O、Mg(NO3)2・6H2O、Mg(OCO)2・2H2O、Mg(OCOCH3)2・4H2O、MgCl2等が、又、Ca源化合物としては、CaO、Ca(OH)2、CaCO3、Ca(NO3)2・4H2O、Ca(OCO)2・H2O、Ca(
OCOCH3)2・H2O、CaCl2等が、又、Zn源化合物としては、ZnO、Zn(OH)2、ZnCO3、Zn(NO3)2・6H2O、Zn(OCO)2、Zn(OCOCH3)2、ZnCl2等が、又、Mn源化合物としては、MnO2、Mn2O3、Mn3O4、MnOOH、MnCO3、Mn(NO3)2、Mn(OCOCH3)2・2H2O、Mn(OCOCH3
)3・nH2O、MnCl2・4H2O等がそれぞれ挙げられる。
【0035】
更に、発光中心イオンの元素として好ましいとする前記Euについて、その元素源化合物を具体的に例示すれば、Eu2O3、Eu(OCOCH3)3・4H2O、EuCl3・6H2O、Eu2(OCO)3・6H2O等が挙げられる。
本発明において、前記蛍光体に光を照射する第1の発光体は、波長350−415nmの光を発生する。好ましくは波長350−415nmの範囲にピーク波長を有する光を発生する発光体を使用する。第1の発光体の具体例としては、発光ダイオード(LED)またはレーザーダイオード(LD)等を挙げることができる。消費電力が良く少ない点でより好ましくはレーザーダイオードである。その中で、GaN系化合物半導体を使用した、GaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系はSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlXGaYN発光層、GaN発光層、またはInXGaYN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でInXGaYN発光層を有するものが発光強度が非常に強いので、特に好ましく、GaN系LDにおいては、InXGaYN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、および基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlXGaYN層、GaN層、またはInXGaYN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが発光効率が高く、好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが発光効率がさらに高く、より好ましい。
【0036】
本発明においては、面発光型の発光体、特に面発光型GaN系レーザーダイオードを第1の発光体として使用することは、発光装置全体の発光効率を高めることになるので、特に好ましい。面発光型の発光体とは、膜の面方向に強い発光を有する発光体であり、面発光型GaN系レーザーダイオードにおいては、発光層等の結晶成長を制御し、かつ、反射層等をうまく工夫することにより、発光層の縁方向よりも面方向の発光を強くすることができる。面発光型のものを使用することによって、発光層の縁から発光するタイプに比べ、単位発光量あたりの発光断面積が大きくとれる結果、第2の発光体を構成する蛍光体にその光を照射する場合、同じ光量で照射面積を非常に大きくすることができ、照射効率を良くすることができるので、蛍光体からより強い発光を得ることができる。
【0037】
第1の発光体として面発光型のものを使用する場合、第2の発光体を膜状とするのが好ましい。その結果、面発光型の発光体からの光は断面積が十分大きいので、第2の発光体をその断面の方向に膜状とすると、第1の発光体からの蛍光体への照射断面積が蛍光体単位量あたり大きくなるので、蛍光体からの発光の強度をより大きくすることができる。
【0038】
また、第1の発光体として面発光型のものを使用し、第2の発光体として膜状のものを用いる場合、第1の発光体の発光面に、直接膜状の第2の発光体を接触させた形状とするのが好ましい。ここでいう接触とは、第1の発光体と第2の発光体とが空気や気体を介さないでぴたりと接している状態をつくることを言う。その結果、第1の発光体からの光が第2の発光体の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を良くすることができる。
【0039】
本発明の発光装置の一例における第1の発光体と第2の発光体との位置関係を示す模式的斜視図を図2に示す。図2中の1は、前記蛍光体を有する膜状の第2の発光体、2は第1の発光体としての面発光型GaN系LD、3は基板を表す。相互に接触した状態をつくるために、LD2と第2の発光体1とをそれぞれ別個につくっておいてそれらの面同士を接着剤やその他の手段によって接触させても良いし、LD2の発光面上に第2の発光体を製膜(成型)させても良い。これらの結果、LD2と第2の発光体1とを接触した状態とすることができる。
【0040】
第1の発光体からの光や第2の発光体からの光は通常四方八方に向いているが、第2の発光体として用いられる蛍光体の粉を樹脂中に分散させると、光が樹脂の外に出る時にその一部が反射されるので、ある程度光の向きを揃えられる。従って、効率の良い向きに光をある程度誘導できるので、第2の発光体として、前記蛍光体の粉を樹脂中へ分散したものを使用するのが好ましい。蛍光体の粉としては、通常、平均粒径が0.5〜15μm程度のものが用いられる。第1の発光体の光を有効に使用できるので、平均粒径は0.8〜5μmが好ましく、0.8〜2μmがより好ましい。また、蛍光体を樹脂中に分散させると、第1の発光体からの光の第2の発光体への全照射面積が大きくなるので、第2の発光体からの発光強度を大きくすることができるという利点も有する。この場合に使用できる樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等各種のものが挙げられるが、蛍光体粉の分散性が良い点で好ましくはエポキシ樹脂である。蛍光体の粉を樹脂中に分散させる場合、蛍光体の粉と樹脂の全体に対するその粉の重量比は、通常10〜95%、好ましくは20〜90%、さらに好ましくは30〜80%である。蛍光体が多すぎると粉の凝集により発光効率が低下することがあり、
少なすぎると今度は樹脂による光の吸収や散乱のため発光効率が低下することがある。
【0041】
本発明の発光装置は、第1の発光体からの光、第2の発光体からの光を混合して発光装置からの取り出し光を白色にすることができる。この時、第2の発光体として本発明の蛍光体の他に、その他の蛍光体、例えば、青色、緑色、赤色の蛍光体を必要に応じて組み合わせることにより白色とすることができる。また、必要に応じてカラーフィルター等を用いても良い。取り出し光を白色光にすることで、発光装置によって照射される物体の演色性が高くなる。これは特に本発光装置を照明用途に応用する際において重要である。
【0042】
本発明の発光装置は、波長変換材料としての前記蛍光体と、350−415nmの光を発生する発光素子とから構成されてなり、前記蛍光体が発光素子の発する350−415nmの光を吸収して、使用環境によらず演色性が良く、かつ、高強度の可視光を発生させることのできる発光装置であり、バックライト光源、信号機などの発光源、又、カラー液晶ディスプレイ等の画像表示装置や面発光等の照明装置等の光源に適している。
【0043】
本発明の発光装置を図面に基づいて説明すると、図3は、第1の発光体(350−41
5nm発光体)と第2の発光体とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図であり、4は発光装置、5はマウントリード、6はインナーリード、7は第1の発光体(350−415nmの発光体)、8は第2の発光体としての蛍光体含有樹脂部、9は導電性ワイヤー、10はモールド部材である。
【0044】
本発明の一例である発光装置は、図3に示されるように、一般的な砲弾型の形態をなし、マウントリード5の上部カップ内には、GaN系発光ダイオード等からなる第1の発光体(350−415nm発光体)7が、その上に、蛍光体をエポキシ樹脂やアクリル樹脂等のバインダーに混合、分散させ、カップ内に流し込むことにより第2の発光体として形成された蛍光体含有樹脂部8で被覆されることにより固定されている。一方、第1の発光体7とマウントリード5、及び第1の発光体7とインナーリード6は、それぞれ導電性ワイヤー9で導通されており、これら全体がエポキシ樹脂等によるモールド部材10で被覆、保護されてなる。
【0045】
又、この発光素子1を組み込んだ面発光照明装置98は、図9に示されるように、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース910の底面に、多数の発光装置91を、その外側に発光素子91の駆動のための電源及び回路等(図示せず。)を設けて配置し、保持ケース910の蓋部に相当する箇所に、乳白色としたアクリル板等の拡散板99を発光の均一化のために固定してなる。
【0046】
そして、面発光照明装置98を駆動して、発光素子91の第1の発光体に電圧を印加することにより350−415nmの光を発光させ、その発光の一部を、第2の発光体としての蛍光体含有樹脂部における前記蛍光体が吸収し、可視光を発光し、一方、蛍光体に吸収されなかった青色光等との混色により演色性の高い発光が得られ、この光が拡散板99を透過して、図面上方に出射され、保持ケース910の拡散板99面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における相対発光強度は、比較例1における発光強度を100とし、その相対値で表した。
【0048】
実施例1
SrHPO4;0.1055モル、SrCO3;0.0352モル、SrCl2;0.0
176モル、およびEu2O3;0.0088モルを純水と共に、アルミナ製容器及びビー
ズの湿式ボールミル中で粉砕、混合し、乾燥後、ナイロンメッシュを通過させた後、得られた粉砕混合物をアルミナ製坩堝中で、4%の水素を含む窒素ガス流下、1200℃で2時間、加熱することにより焼成し、引き続いて、水洗浄、乾燥、及び分級処理を行うことにより蛍光体Sr4.5Eu0.5(PO4)3Clを製造した。図4に、この蛍光体のX線回折パターンを示す。図4のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致しているこ
とがわかる。図5に、GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光スペクトルを示した。表−1に、GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光ピークの波長、相対発光強度、蛍光体の量子吸収効率αq、蛍光体の量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積αq・ηiを示した。
【0049】
実施例2
仕込み原料を、SrHPO4;0.1055モル、SrCO3;0.0176モル、SrCl2;0.0176モル、およびEu2O3;0.0176モルと変えた以外は、実施例
1と同様にして蛍光体Sr4Eu1(PO4)3Clを製造した。図6に、この蛍光体のX線回折パター
ンを示す。図6のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致してい
ることがわかる。GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長、相対発光強度、蛍光体の量子吸収効率αq、蛍光体の量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積αq・ηiを示した。
【0050】
実施例3
仕込み原料を、SrHPO4;0.1055モル、SrCl2;0.0176モル、およびEu2O3;0.0264モルと変えた以外は、実施例1と同様にして蛍光体Sr3.5Eu1.5(PO4)3Clを製造した。図7に、この蛍光体のX線回折パターンを示す。図7のピークパタ
ーンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致していることがわかる。GaN系発
光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長、相対発光強度、蛍光体の量子吸収効率αq、蛍光体の量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積αq・ηiを示した。
【0051】
実施例4
仕込み原料を、SrHPO4;0.0879モル、SrCl2;0.0176モル、Eu2O3;0.0352、および(NH4)2HPO4;0.0176モルと変えた以外は、実
施例1と同様にして蛍光体Sr3Eu2(PO4)3Clを製造した。図8に、この蛍光体のX線回折パ
ターンを示す。図8のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致し
ていることがわかる。GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長と相対発光強度を示した。
【0052】
実施例5
仕込み原料を、SrHPO4;0.1055モル、SrCO3;0.0484モル、SrCl2;0.0176モル、CaCO3;0.00176モル、塩基性炭酸マグネシウム(Mgのモル数0.00088モル)、およびEu2O3;0.00088モルと変えた以外は、実施例1と同様にして蛍光体Sr4.875Ca0.05Mg0.025Eu0.05(PO4)3Clを製造した。図10に、この蛍光体のX線回折パターンを示す。図10のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致していることがわかる。GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長と相対発光強度、蛍光体の量子吸収効率αq、蛍光体の量子吸収
効率αqと内部量子効率ηiの積αq・ηiを示した。
【0053】
実施例6
仕込み原料を、SrHPO4;0.1055モル、SrCO3;0.0396モル、BaCO3;0.00879モル、塩基性炭酸マグネシウム(Mgのモル数0.00264モ
ル)、BaCl2;0.0176モル、およびEu2O3;0.00088モルと変えた以
外は、実施例1と同様にして蛍光体Sr4.125Ba0.75Mg0.075Eu0.05(PO4)3Clを製造した。図11に、この蛍光体のX線回折パターンを示す。図11のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致していることがわかる。GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長と相対発光強度を示した。
【0054】
実施例7
仕込み原料を、SrHPO4;0.0527モル、SrCl2;0.0176モル、Eu2O3;0.0527、および(NH4)2HPO4;0.0527モルと変えた以外は、実
施例1と同様にして蛍光体Sr2Eu3(PO4)3Clを製造した。図12に、この蛍光体のX線回折
パターンを示す。図12のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一
致していることがわかる。GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長、相対発光強度、蛍光体の量子吸収効率αq、蛍光体の量子吸収効率αqと内部量子効率ηi
の積αq・ηiを示した。
【0055】
実施例8
仕込み原料を、SrCl2;0.0176モル、Eu2O3;0.0791、および(N
H4)2HPO4;0.1055モルと変えた以外は、実施例1と同様にして蛍光体Sr0.5Eu4.5(PO4)3Clを製造した。図13に、この蛍光体のX線回折パターンを示す。図13のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致していることがわかる。GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長と相対発光強度を示した。
【0056】
実施例9
仕込み原料を、SrHPO4;0.1055モル、SrCO3;0.0302モル、CaCO3;0.0199モル、塩基性炭酸マグネシウム(Mgのモル数0.00088モル)、BaCl2;0.0176モル、およびEu2O3;0.00088モルと変えた以外は、実施例1と同様にして蛍光体Sr3.86Ba0.5Ca0.565Mg0.025Eu0.05(PO4)3Clを製造した。図14に、この蛍光体のX線回折パターンを示す。図14のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致していることがわかる。GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長と相対発光強度を示した。
【0057】
実施例10
仕込み原料を、SrHPO4;0.1055モル、SrCO3;0.0121モル、BaCO3;0.0204モル、CaCO3;0.0176モル、塩基性炭酸マグネシウム(Mgのモル数0.00088モル)、BaCl2;0.0176モル、およびEu2O3;0.00088モルと変えた以外は、実施例1と同様にして蛍光体Sr3.345Ba1.08Ca0.5Mg0.025Eu0.05(PO4)3Clを製造した。図15に、この蛍光体のX線回折パターンを示す。図15のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致していることがわかる。GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長と相対発光強度を示した。
【0058】
実施例11
塩化カルシウム2水和物;0.01382モル、塩化ユーロピウム6水和物;0.00028モルを秤取り20mlの水に溶解させた。この水溶液に85%リン酸をリン酸として0.00846モル添加し、混合溶液を磁性皿に移し全溶液量を30〜40mlにした。この溶液を、攪拌下、加熱、乾燥させた。乾燥後の固体を回収し、メノウ乳鉢で粉砕した。この粉砕品の一部をアルミナ製坩堝に移し、4%の水素を含む窒素ガス流下、1000℃で2時間焼成し、蛍光体Ca4.9Eu0.1(PO4)3Clを製造した。
【0059】
表−1にGaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光ピークの波長と相対発光強度を示す。
実施例12
塩化カルシウム2水和物;0.01325モル、塩化ユーロピウム6水和物;0.00055モルを秤取り20mlの水に溶解させた。この水溶液に85%リン酸をリン酸として0.00828モル添加し、混合溶液を磁性皿に移し全溶液量を30〜40mlにした。この溶液を、攪拌下、加熱、乾燥させた。以下、実施例11と同様にして蛍光体Ca4.8Eu0.2(PO4)3Clを製造した。
【0060】
表−1にGaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光ピークの波長と相対発光強度を示す。
実施例13
塩化カルシウム2水和物;0.0122モル、塩化ユーロピウム6水和物;0.00106モルを秤取り20mlの水に溶解させた。この水溶液に85%リン酸をリン酸として0.00796モル添加し、混合溶液を磁性皿に移し全溶液量を30〜40mlにした。更に35%塩酸水溶液50マイクロリットルを滴下し、攪拌下、加熱、乾燥させた。以下、実施例11と同様にして蛍光体Ca4.6Eu0.4(PO4)3Clを製造した。
【0061】
表−1にGaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光ピークの波長と相対発光強度を示す。
実施例14
塩化カルシウム2水和物;0.0117モル、塩化ユーロピウム6水和物;0.0013モルを秤取り20mlの水に溶解させた。この水溶液に85%リン酸をリン酸として0.0078モル添加し、混合溶液を磁性皿に移し全溶液量を30〜40mlにした。更に35%塩酸水溶液50マイクロリットルを滴下し、攪拌下、加熱、乾燥させた。以下、実施例11と同様にして蛍光体Ca4.5Eu0.5(PO4)3Clを製造した。
【0062】
表−1にGaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光ピークの波長と相対発光強度を示す。
実施例15
塩化カルシウム2水和物;0.01054モル、硝酸ユーロピウム6水和物;0.00186モルを秤取り20mlの水に溶解させた。この水溶液に85%リン酸をリン酸として0.00744モル添加し、混合溶液を磁性皿に移し全溶液量を30〜40mlにした。更に35%塩酸水溶液100マイクロリットルを滴下し、攪拌下、加熱、乾燥させた。以下、実施例11と同様にして蛍光体Ca4.25Eu0.75(PO4)3Clを製造した。この蛍光体のX線回折パターンは、Ca5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致していることがわかった。
【0063】
表−1にGaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光ピークの波長と相対発光強度を示す。
実施例16
塩化カルシウム2水和物;0.00948モル、硝酸ユーロピウム6水和物;0.00237モルを秤取り20mlの水に溶解させた。この水溶液に85%リン酸をリン酸として0.00711モル添加し、混合溶液を磁性皿に移し全溶液量を30〜40mlにした。更に35%塩酸水溶液150マイクロリットルを滴下し、攪拌下、加熱、乾燥させた。以下、実施例11と同様にして蛍光体Ca4Eu1(PO4)3Clを製造した。
【0064】
表−1にGaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光ピークの波長と相対発光強度を示す。
比較例1
BaCO3 ;0.0103モル、塩基性炭酸マグネシウム(Mgのモル数0.0103モル)、及びγ-Al2O3;0.0570モル、並びに発光中心イオンの元素源化合物と
してEu2O3;0.00057モルを純水と共に、アルミナ製容器及びビーズの湿式ボールミル中で粉砕、混合し、乾燥後、ナイロンメッシュを通過させた後、得られた粉砕混合物をアルミナ製坩堝中で、4%の水素を含む窒素ガス流下、1500℃で2時間、加熱することにより焼成し、引き続いて、水洗浄、乾燥、及び分級処理を行うことにより青色発光の蛍光体Ba0.9Eu0.1MgAl10O17を製造した。図5に、GaN系発光ダイオードの紫外光
領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光スペクトルを示し、実施例1と比較例1の青色発光蛍光体の性能を比較した。表−1にその発光ピークの波長と相対発光強度を示した。400nm励起による実施例1の蛍光体の発光強度が比較例1の
蛍光体のそれの5.1倍もあることがわかる。
【0065】
比較例2
仕込み原料を、SrHPO4;0.0897モル、BaCO3;0.0325モル、CaCO3;0.0176モル、塩基性炭酸マグネシウム(Mgのモル数0.00088モル)、BaCl2;0.0176モル、BaHPO4;0.0158モル、およびEu2O3;0.00088モルと変えた以外は、実施例1と同様にして蛍光体Sr2.55Ba1.875Ca0.5Mg0.025Eu0.05(PO4)3Clを製造した。表1に、GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光ピークの波長と相対強度を示した。図5に、GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光スペクトルを示し、実施例1と比較例2の青色発光蛍光体の性能を比較した。表−1にその発光ピークの波長と相対発光強度を示した。400nm励起による実施例1の蛍光体の発光強度が比較例2の蛍光体のそれの5.1倍もあることがわかる。
【0066】
【表1】
【符号の説明】
【0067】
1;第2の発光体
2;面発光型GaN系LED
3;基板
4;発光装置
5;マウントリード
6;インナーリード
7;第1の発光体(350〜415nmの発光体)
8;本発明中の蛍光体を含有させた樹脂部
9;導電性ワイヤー
10;モールド部材
【技術分野】
【0001】
本発明は発光装置に関し、詳しくは、電力源により紫外光から可視光領域の光を発光する第1の発光体と、その紫外光から可視光領域にある光を吸収し長波長の可視光を発する母体化合物が発光中心イオンを含有する蛍光体を有する波長変換材料しての第2の発光体とを組み合わせることにより、使用環境によらず演色性が良く、かつ、高強度の発光を発生させることのできる発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
青、赤、緑の混色により、白色その他の様々な色を、むらなくかつ演色性良く発生させるために、LEDやLDの発光色を蛍光体で色変換させた発光装置が提案されている。例えば、特公昭49−1221号公報では、300−530nmの波長の放射ビームを発するレーザーのビームを燐光体(Y3-x-yCexGdyM5-zGazO12(YはY、Lu,またはLa、
MはAl、Al-In、またはAl-Scを表す。))に照射させ、これを発光させてディスプレーを形成する方法が示されている。また、近年では、青色発光の半導体発光素子として注目されている発光効率の高い窒化ガリウム(GaN)系LEDやLDと、波長変換材料としての蛍光体とを組み合わせて構成される白色発光の発光装置が、消費電力が小さく長寿命であるという特徴を活かして画像表示装置や照明装置の発光源として提案されている。実際に、特開平10−242513号公報において、この窒化物系半導体のLED又はLDチップを使用し、蛍光体としてイットリウム・アルミニウム・ガーネット系を使用することを特徴とする発光装置が示されている。米国特許第6,294,800号公報において、LEDからの光に代表される330〜420nm領域の光の照射を受けて白色発光を発生しうる物質として、Ca8Mg(SiO4)4Cl2:Eu2+,Mn2+を含む緑色発光体と赤色蛍光体と青色蛍光体を組み合わせた物質が開示されており、その青色蛍光体として(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Eu2+があげられている。
【0003】
しかしながら、今までのところ、LED等の第1の発光体に対し、特開平10−242513号公報に示されるようなイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を第2の発光体として組み合わせたような発光装置では発光強度が充分とは言えず、ディスプレイやバックライト光源、信号機などの発光源としてさらなる改良が求められる。また、米国特許第6,294,800号公報に示されるようなLED光の青色可視光への変換材料として記載されている(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Eu2+についても同様であり、より高い発光強度が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭49−1221号公報
【特許文献2】特開平10−242513号公報
【特許文献3】米国特許第6,294,800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述の従来技術に鑑み、発光強度の極めて高い発光装置を開発すべくなされたものであって、従って、本発明は、製造が容易であると共に、発光強度が極めて高いダブル発光体型発光装置を得ることを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、350−415nmの光を発生
する第1の発光体と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発生する第2の発光体とを有する発光装置において、上記第2の発光体として、(A)量子吸収効率αq
が0.8以上、及び/または、(B)量子吸収効率と内部量子効率の積となるαq・ηiが0.55以上、の条件を満たす蛍光体を用いると、前記蛍光体が350−415nm付近の光の照射を受け、高い強度で可視光の発光を起こす結果、前記目的を達成できることを見出し本発明に到達した。また、上記第2の発光体として、一般式[1]の化学組成を有する結晶相を含有してなる蛍光体を用いることでも、前記目的を達成すること、好ましい具体例としては、(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Eu2+を基本的な組成とする結晶相の中でSrの割合のより高い組成を使用する、及び/又はEuの割合のより高い組成を使用することによって前記目的が達成できることを見出し本発明に到達した。
【0007】
EuaSrbM5-a-b(PO4)cXd・・・・・・[1]
(上記一般式[1]において、MはEu及びSr以外の金属元素を表すまた、XはPO4
以外の一価のアニオン基を表す。c及びdは、2.7≦c≦3.3、0.9≦d≦1.1
を満足する数である。aはa>0、bはb≧0、a+b≦5となる数であるが、a≧0.1又はb≧3という条件を満足する。)
ここで、5−a−b、d、c、a及びbは、それぞれ順に、元素Mに対応する元素のモル比、アニオン基Xのモル比、PO4基のモル比、Eu原子のモル比、及びSr原子のモ
ル比を表す。例えば、Eu0.5Sr3.5Ba0.8Mn0.195Sm0.005(PO4)3Cl0.95F0.05なる組成の場合、MはBa、Mn、およびSmを表し、XはClとFとを表すので、Eu0.5Sr3.5M1.0(PO4)3X1.0と表すことができるので、前記[1]式の範疇に入る。
【0008】
一般にA5(PO4)3Cl(Aはアルカリ土類金属)の結晶の中のAサイトにEu2+等の他の2価金属元素が置換しえて、その置換体が、Hg共鳴線254nmの短紫外線で励起され発光することを利用して、ランプ用蛍光体として使用されうることは知られている。本発明は、上記とは波長の異なる400nm付近の励起光による発光強度は、A5(PO4)3Clのアルカリ土類金属Aの種類によって大きく異なり、アルカリ土類金属AとしてのSrを多く含有するものを使用すると特異的に400nm付近の光の励起によって大きな発光強度が得られること、及び、同様の励起光に対する発光強度は、付活剤であるEuの含有割合が高いと特異的に大きくなることを知得したことに基づくものである。
【0009】
従って本発明は、次の(1)〜(21)をその要旨とする。
(1)350−415nmの光を発生する第1の発光体と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発生する第2の発光体とを有する発光装置において、前記第2の発光体が以下の(A)及び/又は(B)
(A)量子吸収効率αqが0.8以上、
(B)量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積αq・ηiが0.55以上
の条件を満たす蛍光体を含有することを特徴とする発光装置。
(2)前記蛍光体が、下記一般式[1]
EuaSrbM5-a-b(PO4)cXd・・・・・・[1]
(上記一般式[1]において、MはEu及びSr以外の金属元素を表す。また、XはPO4以外の一価のアニオン基を表す。c及びdは、2.7≦c≦3.3、0.9≦d≦1.
1を満足する数である。aはa>0、bはb≧0、a+b≦5となる数であるが、a≧0.1又はb≧3という条件を満足する。)
の化学組成を有する結晶相を含有してなることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。(3)350−415nmの光を発生する第1の発光体と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発生する第2の発光体とを有する発光装置において、前記第2の発光体が、下記一般式[1]
EuaSrbM5-a-b(PO4)cXd・・・・・・[1]
(上記一般式[1]において、MはEu及びSr以外の金属元素を表す。また、XはPO
4以外の一価のアニオン基を表す。c及びdは、2.7≦c≦3.3、0.9≦d≦1.
1を満足する数である。aはa>0、bはb≧0、a+b≦5となる数であるが、a≧0.1又はb≧3という条件を満足する。)
の化学組成を有する結晶相を有する蛍光体を含有してなることを特徴とする発光装置。
(4)bが、b>0であることを特徴とする(3)に記載の発光装置。
(5)第1の発光体がレーザーダイオード又は発光ダイオードである(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の発光装置。
(6)第1の発光体がレーザーダイオードである(5)に記載の発光装置。
(7)a及びbが、0.1≦a<5且つ0.01≦b<5を満足するか、0.0001≦a<5、且つ3≦b<5を満足することを特徴とする(2)ないし(6)のいずれか1つに記載の発光装置。
(8)元素Mのうちの70mol%以上がBa、Mg、Ca、Zn及びMnからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であることを特徴とする(2)ないし(7)のいずれか1つに記載の発光装置。
(9)Xのうち50mol%以上がClであることを特徴とする(2)ないし(8)のいずれか1つに記載の発光装置。
(10)a及びbが、a≧0.1かつb≧3を満足する(2)ないし(9)のいずれか1つに記載の発光装置。
(11)aが、a>0.2を満足する(2)ないし(10)のいずれか1つに記載の発光装置。
(12)aが、0.2<a≦3を満足する(11)に記載の発光装置。
(13)元素Mが、Ba、Mg、Ca、Zn、およびMnからなる群から選ばれる少なくとも一種からなり、且つXがClからなる(2)ないし(12)のいずれか1つに記載の発光装置。
(14)元素Mが、Ba、Mg、及びCaからなる群から選ばれる少なくとも一種からなり、且つXがClからなる(2)ないし(13)のいずれか1つに記載の発光装置。
(15)第1の発光体がGaN系化合物半導体を使用してなることを特徴とする(1)ないし(14)のいずれか1つに記載の発光装置。
(16)第1の発光体が面発光型GaN系レーザーダイオードであることを特徴とする(1)ないし(15)のいずれか1つに記載の発光装置。
(17)第2の発光体が膜状であることを特徴とする(1)ないし(16)のいずれか1つに記載の発光装置。
(18)第1の発光体の発光面に、直接第2の発光体の膜面を接触させてなることを特徴とする(17)に記載の発光装置。
(19)第2の発光体が、蛍光体の粉を樹脂に分散させてなることを特徴とする(1)ないし(18)のいずれか1つに記載の発光装置。
(20)発光装置からの取り出し光が、第1の発光体からの光と第2の発光体からの光を混合した光であって、該取り出し光が白色であることを特徴とする(1)ないし(19)のいずれか1つに記載の発光装置。
(21)(1)ないし(20)のいずれか1つに記載の発光装置を有する照明装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発光強度の高い発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】Sr5(PO4)8ClのX線回折パターン(X線源Cu Kαに換算したもの)
【図2】面発光型GaN系ダイオードに膜状蛍光体を接触させた発光装置の一例を示す模式的斜視図。
【図3】本発明の発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。
【図4】本発明の実施例1の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図5】発光波長400nmのGaN系発光ダイオードにより照射を受けた本発明の実施例1、比較例1、および比較例2のそれぞれの蛍光体の発光スペクトルを重ね合わせたスペクトル。
【図6】本発明の実施例2の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図7】本発明の実施例3の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図8】本発明の実施例4の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図9】本発明の面発光照明装置の一例を示す模式的断面図。
【図10】本発明の実施例5の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図11】本発明の実施例6の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図12】本発明の実施例7の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図13】本発明の実施例8の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図14】本発明の実施例9の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図15】本発明の実施例10の蛍光体のX線回折パターン(X線源:Cu Kα)
【図16】分光光度計に反射板を取り付けて測定した際のスペクトルIref(λ)
【図17】分光光度計に量子吸収効率αq,内部量子効率ηiを測定しようとするサンプルを取り付けて測定したした際のスペクトルI(λ)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、350−415nmの光を発生する第1の発光体と蛍光体を含む第2の発光体を組み合わせた発光装置であり、その第2の発光体に含まれる蛍光体が、(A)量子吸収効率αqが0.8以上、より好ましくは,0.9以上、さらに好ましくは、0.95以
上、及び/または、(B)量子吸収効率と内部量子効率の積となるαq・ηiが0.55以上、好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.65以上であることを特徴とする。実質的に、αqの取りうる値の上限は1、ηiの取りうる値の上限は0.99である。蛍光体が(A)の条件を満たしている場合、第1の発光体から発せられたフォトンのうち、蛍光体内で素励起を起こすことができるものの数が多くなり、結果として蛍光体から単位時間当たりに放出されるフォトンの数を増加させる、すなわち高い発光強度を有する発光装置を得ることができる。ここで、素励起とは、Euのスピン状態が変化することによるエネルギー励起(一般に発光中心励起と呼ぶ。)、各イオン近傍に存在確率を持つ電子の平均的な数が変化することによるエネルギー励起(一般にCT励起と呼ぶ。)、電子のバンド間遷移によるエネルギー励起(一般にバンド励起と呼ぶ。)などのことを指す。また、蛍光体が(B)の条件を満たしている場合、第1の発光体から発せられたフォトンによって引き起こされた素励起のうち、その後さらにフォトンの形成を引き起こす経緯をたどるものの割合が増加することになり、結果として蛍光体から単位時間当たりに放出されるフォトンの数を増加させる、すなわち高い発光強度を有する発光装置を得ることができる。また、蛍光体が(B)の条件を満たしている場合に、通常αqおよびηiが取りうる値の範囲は、それぞれ、0.55≦αq≦1、0.55≦ηi≦0.99である。
【0013】
以下に、量子吸収効率αq、内部量子効率ηiを求める方法を説明する。まず、測定対象となる粉末状などにした蛍光体サンプルを、測定精度が保たれるように、十分に表面を平滑にしてセルに詰め、積分球などがついた分光光度計に取り付ける。この分光光度計としては、例えば大塚電子株式会社製MCPD2000などがある。積分球などを用いるのは、サンプルで反射したフォトンおよびサンプルからフォトルミネッセンスで放出されたフォトンを全て計上できるようにする、すなわち、計上されずに測定系外へ飛び去るフォトンをなくすためである。この分光光度計に蛍光体を励起する発光源を取り付ける。この発光源は、例えばXeランプ等であり、発光ピーク波長が400nmとなるようにフィルター等を用いて調整がなされる。この400nmの波長ピークを持つように調整された発光源からの光を測定しようとしているサンプルに照射し、その発光スペクトルを測定する。この測定スペクトルには、実際には、励起発光光源からの光(以下では単に励起光と記す
。)でフォトルミネッセンスによりサンプルから放出されたフォトンの他に、サンプルで
反射された励起光の分のフォトンの寄与が重なっている。吸収効率αqは、サンプルによ
って吸収された励起光のフォトン数Nabsを励起光の全フォトン数Nで割った値である。
まず、後者の励起光の全フォトン数Nは、次のように求める。すなわち、励起光に対してほぼ100%の反射率Rを持つ物質、例えばLabsphere製Spectralon(400nmの励起光に対して98%の反射率を持つ。)等の反射板を、測定対象として該分光光度計に取り付け、反射スペクトルIref(λ)を測定する。ここでこの反射スペ
クトルIref(λ)から(式1)で求められた数値は、Nに比例する。
【0014】
【数1】
【0015】
ここで、積分区間は実質的にIref(λ)が有意な値を持つ区間のみで行ったもので良
い。図16にIref(λ)の一例を示すが、この場合は、380nmから420nmの範囲で取れば十分である。前者のNabsは(式2)で求められる量に比例する。
【0016】
【数2】
【0017】
ここで、I(λ)は,αqを求めようとしている対象サンプルを取り付けたときの、反
射スペクトルである。(式2)の積分範囲は(式1)で定めた積分範囲と同じにする。このように積分範囲を限定することで、(式2)の第二項は,対象サンプルが励起光を反射することによって生じたフォトン数に対応したもの、すなわち、対象サンプルから生ずる全フォトンのうち励起光によるフォトルミネッセンスで生じたフォトンを除いたものに対応したものになる。実際のスペクトル測定値は、一般にはλに関するある有限のバンド幅で区切ったデジタルデータとして得られるため、(式1)および(式2)の積分は、そのバンド幅に基づいた和分によって求まる。以上より、αq=Nabs/N=(式2)/(式1)と求まる。
【0018】
次に、内部量子効率ηiを求める方法を説明する。ηiは、フォトルミネッセンスによって生じたフォトンの数NPLをサンプルが吸収したフォトンの数Nabsで割った値である。
ここで、NPLは、(式3)で求められる量に比例する。
【0019】
∫λ・I(λ)dλ ―――(式3)
この時、積分区間は、サンプルからフォトルミネッセンスによって生じたフォトンが持つ波長域に限定する。サンプルから反射されたフォトンの寄与をI(λ)から除くためで
ある。具体的に(式3)の積分の下限は、(式1)の積分の上端を取り、フォトルミネッセンス由来のスペクトルを含むのに好適な範囲を上端とする。図17がI(λ)の例であ
るが、この場合、420nmから520nmを(式3)における積分範囲に取れば良い。以上により、ηi=(式3)/(式2)と求まる。なお、デジタルデータとなったスペク
トルから積分を行うことに関しては、αqを求めた場合と同様である。
【0020】
一般に量子吸収効率αqを高めること自体は、サンプル内に取り込まれる励起光源のフ
ォトン数を上昇させることにつながるので発光輝度が高まる期待はある。しかし実際には、例えば発光中心であるEu等の濃度を上昇させることなどでαqの上昇を試みると、フォトンが最終的なフォトルミネッセンスの過程に到達する前に、そのエネルギーをサンプル結晶内のフォノンの励起に変えてしまう確率が高まり、十分な発光強度を得ることができなかった。しかしながら、励起光源の波長を特に350−415nmに選び、かつ発光装置の第2の発光体として量子吸収効率αqの高い蛍光体を用いると、前記非フォトルミネッセンス過程が抑制され、高発光強度の発光装置が実現されることが見出された。またここで、αqが高いことに加え、αq・ηiの値が高い蛍光体を用いた第2の発光体と、350−415nmの波長を持つ第1の発光体を組み合わせることで、さらに好ましい特性をもった発光装置が得られることも見出された。
【0021】
上記(A)及び/または、(B)の条件を満たす限り、蛍光体を構成する材料は、特に限定されないが、結晶相を有することが好ましく、下記一般式[1]の化学組成を有する結晶相を有するもの(以下、一般式[1]の結晶相と略すことがある)から選ぶのがより好ましい。なお、該蛍光体には、性能を損なわない範囲で他の成分、例えば、光散乱物質等を含んでいてもよいため、蛍光体中に含まれる前記結晶相の割合は、10wt%以上、好ましくは50wt%以上、より好ましくは80wt%以上である。
【0022】
EuaSrbM5-a-b(PO4)cXd・・・・・・[1]
但し、MはEu及びSr以外の金属元素を表す。また、XはPO4以外の一価のアニオ
ン基を表す。c及びdは、2.7≦c≦3.3、0.9≦d≦1.1を満足する数である。aはa>0、bはb≧0、a+b≦5となる数であるが、a≧0.1又はb≧3という条件を満足する。
【0023】
第2の発光体が、上記一般式[1]の蛍光体を含有する本発明の発光装置自体新規で、従来の発光装置より優れた発光強度を有する。但し、上記(A)及び/または(B)の条件を満たす蛍光体を含有する第2の発光体は、これに含有される蛍光体として、上記一般式[1]の蛍光体の中でも好ましいものを選択することで得ることが出来る傾向にある。以下、一般式[1]の蛍光体について説明する。式[1]中の元素MはEuとSr以外の金属元素を表す。元素Mについては、発光強度等の面から、Ba、Mg、Ca、Zn、およびMnの合計の元素Mに占める割合を70mol%以上とすることが好ましく、中でもBa、Mg、およびCaの合計の元素Mに占める割合を70mol%以上とすることが好ましく、Ba、Mg、およびCaの合計の元素Mに占める割合を90mol%以上とすることが更に好ましく、元素MのすべてをBa、Mg、Ca、Zn、およびMnからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素とするのがさらに好ましく、元素MのすべてをBa、Mg、およびCaからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素とするのが最も好ましい。
【0024】
元素M中の金属元素として上記以外の金属元素を結晶中に含有させる場合、その金属元素に特に制約はないが、Srやこれら5種金属元素と同じ価数、即ち2価の金属元素を含有させると、結晶構造を保持しやすいので、望ましい。2価の金属元素及び発光中心Eu2+の焼成時の固体内拡散による複合酸化物の結晶化を助ける意味で、1価、3価、4価、5価、又は6価等の金属元素を少量導入しても良い。一つの例を挙げると、Sr5(PO4)3Cl:Eu蛍光体中のSr2+の一部を等モルのLi+とGa3+で電荷補償効果を保持しながら置換することができる。増感剤となりうる金属元素を少量置換してもよい。
【0025】
なお、金属元素Mを含有させない、即ちa+bの値を5とすることもできる。
前記一般式[1]中のXはPO4以外の一価の基である。Xについては、発光強度等の
面から、Xのうちの50mol%以上をハロゲン原子とすることが好ましく、70mol%以上、特に90mol%以上とすることがより好ましい。ハロゲン原子としてはCl、F、Br等を挙げることができるが、好ましくはClである。Xとして、その50mol%以上をハロゲン原子とした場合、残余のアニオン基として水酸基等を含んでいてもよい。最も好ましい態様においては、アニオン基Xのうちの50mol%以上、特に70mol%以上、さらには90mol%以上をClとする。この場合、残余の基としては、他のハロゲン原子やOH基を挙げることができる。
【0026】
前記一般式[1]中のSrのモル比bについては、b≧0、好ましくはb>0であり、具体的には0≦b<5、好ましくは0<b<5とし、通常は0.01以上、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上とするが、発光強度等の面から、3以上、特に4以上とするのが最も好ましい。一般に(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Eu2+を基本的な組成とする結晶相はSrのモル比として広範な値をとりうるが、本発明においては、上記のようなb<5を上限とする比較的大きめの数値を採用することによって顕著に高い発光強度を得ることができる。一方、Srのモル比が小さい場合、即ちbの値を小さめの数値、特に0とすることにより、原料コストを低減させることが出来るため好ましく、特にCaを50mol%以上とすることが好ましく、この場合においても比較的高い発光強度を得ることができる。
【0027】
前記一般式[1]中のEuのモル比aについては、0<a<5とし、通常は0.0001以上、好ましくは0.001以上、さらに好ましくは0.005以上とするが、発光強度等の面から、通常a≧0.1、好ましくはa≧0.2、より好ましくはa>0.2、さらに好ましくはa≧0.3とし、特に、a≧0.4、さらにはa≧0.45とするのが最も好ましい。発光中心イオンEu2+のモル比aが小さすぎると、発光強度が小さくなる傾向があるが、あまりにaの値が大きいと、濃度消光と呼ばれる現象により、やはり発光強度が減少する傾向があるので通常はa≦4.8、好ましくはa≦3、より好ましくはa≦2.5、特に好ましくはa≦2、最も好ましくはa≦1.5とする。前記一般式[1]中、a>0.2、更にはa≧0.3のものを用いると、条件(A)及び/または(B)を満たす蛍光体を有する第2の発光体よりなる発光装置を得る上で、特に好ましい。
【0028】
本発明においては、a≧0.1及びb≧3のどちらか一方を満足すれば、十分な発光強度を得ることができる。従って、a及びbのどちらか一方が上記式を満足すれば、必ずしも他方は上記式を満足する必要はないので、この点についてa及びbの値の好ましい組み合わせを列挙すれば、(1)a≧0.1且つb≧0.01、(2)a≧0.1且つb≧0.1、(3)a≧0.1且つb≧0.2、(4)a≧0.2且つb≧0.01、(5)a≧0.2且つb≧0.1、(6)0.0001≦a、且つb≧3、(7)0.001≦a、且つb≧3、(8)0.005≦a、且つb≧3、(9)0.0001≦a、且つb≧4、(10)0.001≦a、且つb≧4、(11)0.005≦a、且つb≧4等を挙げることができる。ただし、発光強度をさらに大きくできる点で、本発明においては、a≧0.1及びb≧3の両者を満足させるのが特に好ましく、この点についてa及びbの値の好ましい組み合わせを列挙すれば、(1)a≧0.1且つb≧3、(2)a≧0.1且つb≧4、(3)a≧0.2且つb≧3、(4)a≧0.2且つb≧4等を挙げることができる。特に、a>0.2及びb≧3の両者を満足させることにより、より発光強度を大きくすることができ、この点についてa及びbの値のさらに好ましい組み合わせを列挙すれば、(1)a>0.2且つb≧3、(2)a>0.2且つb≧4、(3)a≧0.3且つb≧3、(4)a≧0.3且つb≧4、(5)a≧0.4且つb≧3、(6)a≧0.4且つb≧4、(7)a≧0.45且つb≧3、(8)a≧0.45且つb≧4等を挙げることができる。
【0029】
前記一般式[1]において、cおよびdは、2.7≦c≦3.3、0.9≦d≦1.1
を満足するが、cについては、好ましくは2.8≦c≦3.2、さらに好ましくは2.9
≦c≦3.1であり、dについては、好ましくは0.93d≦1.07、さらに好ましく
は0.95≦d≦1.05とする。
前記一般式[1]の基本結晶EuaSrbM5-a-b(PO4)cXdにおいては、格子欠損が多少生じていても本目的の蛍光性能に大きな影響がないので、上記a,b,c,dの不等式の範囲で使用す
ることができる。
【0030】
一般にA5(PO4)3Cl(Aはアルカリ土類金属)の結晶は、六方晶構造をとり、その空間群
はP63/mである。
本発明における結晶構造は、通常上記に示したA5(PO4)3Cl構造である。図1に代表的なSr5(PO4)3ClのX線回折パターンを示す(粉末X線回折データベースより)。Sr5(PO4)3ClのSrサイトには、Ba、Mg、Ca、Zn、Mn等の2価金属を広い組成範囲で置換させることができる。また、少量であれば、NaやLa等の価数の異なる金属も置換させうる。そのClサイトには、F、Br、OH等のアニオン種を置換させることができ、その構造が保たれる。本発明においては、これら置換体のうち、通常カチオン種としてSrを用いた置換体を母体とし、更にカチオンサイトにEu2+を付活剤として置換させた結晶相に対応する。
【0031】
本発明で使用する蛍光体は、第1の発光体からの350−415nmの光によって励起され、可視光を発生する。上記蛍光体は、350−415nmの光の励起によって非常に強い発光強度の可視光を発生する。
本発明で使用する蛍光体は、前記一般式[1]に示されるようなM源、X源、PO4源
の化合物、Sr源の化合物、及び、発光中心イオン(Eu)の元素源化合物を、ハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機を用いて粉砕した後、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機により混合するか、或いは、混合した後、乾式粉砕機を用いて粉砕する乾式法、又は、水等の媒体中にこれらの化合物を加え、媒体攪拌式粉砕機等の湿式粉砕機を用いて粉砕及び混合するか、或いは、これらの化合物を乾式粉砕機により粉砕した後、水等の媒体中に加え混合することにより調製されたスラリーを、噴霧乾燥等により乾燥させる湿式法により、調製した粉砕混合物を、加熱処理して焼成することにより製造することができる。
【0032】
これらの粉砕混合法の中で、特に、発光中心イオンの元素源化合物においては、少量の化合物を全体に均一に混合、分散させる必要があることから液体媒体を用いるのが好ましく、又、他の元素源化合物において全体に均一な混合が得られる面からも、後者湿式法が好ましく、又、加熱処理法としては、アルミナや石英製の坩堝やトレイ等の耐熱容器中で、通常700〜1500℃、好ましくは900〜1300℃の温度で、大気、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、水素、アルゴン等の気体の単独或いは混合雰囲気下、10分〜24時間、加熱することによりなされる。尚、加熱処理後、必要に応じて、洗浄、乾燥、分級処理等がなされる。
【0033】
尚、前記加熱雰囲気としては、発光中心イオンの元素が発光に寄与するイオン状態(価数)を得るために必要な雰囲気が選択される。本発明における2価のEu等の場合には、一酸化炭素、窒素、水素、アルゴン等の中性若しくは還元雰囲気下が好ましいが、大気、酸素等の酸化雰囲気下も条件さえ選べば可能である。
又、ここで、M源、X源、Sr源、およびEu源の化合物としては、M、X、Sr、およびEuの各酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物等が挙げられ、PO4源の化合物としては、元素M、NH4等のリン酸水素塩、リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、P2O5、PX3、PX5、M2PO4X、リン酸、メタリン酸、ピロリン酸等が挙げられ、X源の化合物としては、MX、NH4X、HX、M2PO4X等が挙げられ、これらの中から、化学組成、反応性、及び、焼成時におけるNOx、SOx等の非発生性等を考慮して選択される。
【0034】
Srに対して好ましいとするSr源化合物を具体的に例示すれば、SrO、Sr(OH)2・8H2O、SrCO3、Sr(NO3)2、Sr(OCO)2・H2O、Sr(OCOC
H3)2・0.5H2O、SrCl2等が挙げられる。
金属元素群M中のBa、Mg、Ca、Zn、またはMnの合成原料用化合物を具体的に例示すれば、Ba源化合物としては、BaO、Ba(OH)2・8H2O、BaCO3、B
a(NO3)2、BaSO4、Ba(OCO)2・2H2O、Ba(OCOCH3)2、BaC
l2等が、又、Mg源化合物としては、MgO、Mg(OH)2、MgCO3、Mg(OH
)2・3MgCO3・3H2O、Mg(NO3)2・6H2O、Mg(OCO)2・2H2O、Mg(OCOCH3)2・4H2O、MgCl2等が、又、Ca源化合物としては、CaO、Ca(OH)2、CaCO3、Ca(NO3)2・4H2O、Ca(OCO)2・H2O、Ca(
OCOCH3)2・H2O、CaCl2等が、又、Zn源化合物としては、ZnO、Zn(OH)2、ZnCO3、Zn(NO3)2・6H2O、Zn(OCO)2、Zn(OCOCH3)2、ZnCl2等が、又、Mn源化合物としては、MnO2、Mn2O3、Mn3O4、MnOOH、MnCO3、Mn(NO3)2、Mn(OCOCH3)2・2H2O、Mn(OCOCH3
)3・nH2O、MnCl2・4H2O等がそれぞれ挙げられる。
【0035】
更に、発光中心イオンの元素として好ましいとする前記Euについて、その元素源化合物を具体的に例示すれば、Eu2O3、Eu(OCOCH3)3・4H2O、EuCl3・6H2O、Eu2(OCO)3・6H2O等が挙げられる。
本発明において、前記蛍光体に光を照射する第1の発光体は、波長350−415nmの光を発生する。好ましくは波長350−415nmの範囲にピーク波長を有する光を発生する発光体を使用する。第1の発光体の具体例としては、発光ダイオード(LED)またはレーザーダイオード(LD)等を挙げることができる。消費電力が良く少ない点でより好ましくはレーザーダイオードである。その中で、GaN系化合物半導体を使用した、GaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系はSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlXGaYN発光層、GaN発光層、またはInXGaYN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でInXGaYN発光層を有するものが発光強度が非常に強いので、特に好ましく、GaN系LDにおいては、InXGaYN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、および基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlXGaYN層、GaN層、またはInXGaYN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが発光効率が高く、好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが発光効率がさらに高く、より好ましい。
【0036】
本発明においては、面発光型の発光体、特に面発光型GaN系レーザーダイオードを第1の発光体として使用することは、発光装置全体の発光効率を高めることになるので、特に好ましい。面発光型の発光体とは、膜の面方向に強い発光を有する発光体であり、面発光型GaN系レーザーダイオードにおいては、発光層等の結晶成長を制御し、かつ、反射層等をうまく工夫することにより、発光層の縁方向よりも面方向の発光を強くすることができる。面発光型のものを使用することによって、発光層の縁から発光するタイプに比べ、単位発光量あたりの発光断面積が大きくとれる結果、第2の発光体を構成する蛍光体にその光を照射する場合、同じ光量で照射面積を非常に大きくすることができ、照射効率を良くすることができるので、蛍光体からより強い発光を得ることができる。
【0037】
第1の発光体として面発光型のものを使用する場合、第2の発光体を膜状とするのが好ましい。その結果、面発光型の発光体からの光は断面積が十分大きいので、第2の発光体をその断面の方向に膜状とすると、第1の発光体からの蛍光体への照射断面積が蛍光体単位量あたり大きくなるので、蛍光体からの発光の強度をより大きくすることができる。
【0038】
また、第1の発光体として面発光型のものを使用し、第2の発光体として膜状のものを用いる場合、第1の発光体の発光面に、直接膜状の第2の発光体を接触させた形状とするのが好ましい。ここでいう接触とは、第1の発光体と第2の発光体とが空気や気体を介さないでぴたりと接している状態をつくることを言う。その結果、第1の発光体からの光が第2の発光体の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を良くすることができる。
【0039】
本発明の発光装置の一例における第1の発光体と第2の発光体との位置関係を示す模式的斜視図を図2に示す。図2中の1は、前記蛍光体を有する膜状の第2の発光体、2は第1の発光体としての面発光型GaN系LD、3は基板を表す。相互に接触した状態をつくるために、LD2と第2の発光体1とをそれぞれ別個につくっておいてそれらの面同士を接着剤やその他の手段によって接触させても良いし、LD2の発光面上に第2の発光体を製膜(成型)させても良い。これらの結果、LD2と第2の発光体1とを接触した状態とすることができる。
【0040】
第1の発光体からの光や第2の発光体からの光は通常四方八方に向いているが、第2の発光体として用いられる蛍光体の粉を樹脂中に分散させると、光が樹脂の外に出る時にその一部が反射されるので、ある程度光の向きを揃えられる。従って、効率の良い向きに光をある程度誘導できるので、第2の発光体として、前記蛍光体の粉を樹脂中へ分散したものを使用するのが好ましい。蛍光体の粉としては、通常、平均粒径が0.5〜15μm程度のものが用いられる。第1の発光体の光を有効に使用できるので、平均粒径は0.8〜5μmが好ましく、0.8〜2μmがより好ましい。また、蛍光体を樹脂中に分散させると、第1の発光体からの光の第2の発光体への全照射面積が大きくなるので、第2の発光体からの発光強度を大きくすることができるという利点も有する。この場合に使用できる樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等各種のものが挙げられるが、蛍光体粉の分散性が良い点で好ましくはエポキシ樹脂である。蛍光体の粉を樹脂中に分散させる場合、蛍光体の粉と樹脂の全体に対するその粉の重量比は、通常10〜95%、好ましくは20〜90%、さらに好ましくは30〜80%である。蛍光体が多すぎると粉の凝集により発光効率が低下することがあり、
少なすぎると今度は樹脂による光の吸収や散乱のため発光効率が低下することがある。
【0041】
本発明の発光装置は、第1の発光体からの光、第2の発光体からの光を混合して発光装置からの取り出し光を白色にすることができる。この時、第2の発光体として本発明の蛍光体の他に、その他の蛍光体、例えば、青色、緑色、赤色の蛍光体を必要に応じて組み合わせることにより白色とすることができる。また、必要に応じてカラーフィルター等を用いても良い。取り出し光を白色光にすることで、発光装置によって照射される物体の演色性が高くなる。これは特に本発光装置を照明用途に応用する際において重要である。
【0042】
本発明の発光装置は、波長変換材料としての前記蛍光体と、350−415nmの光を発生する発光素子とから構成されてなり、前記蛍光体が発光素子の発する350−415nmの光を吸収して、使用環境によらず演色性が良く、かつ、高強度の可視光を発生させることのできる発光装置であり、バックライト光源、信号機などの発光源、又、カラー液晶ディスプレイ等の画像表示装置や面発光等の照明装置等の光源に適している。
【0043】
本発明の発光装置を図面に基づいて説明すると、図3は、第1の発光体(350−41
5nm発光体)と第2の発光体とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図であり、4は発光装置、5はマウントリード、6はインナーリード、7は第1の発光体(350−415nmの発光体)、8は第2の発光体としての蛍光体含有樹脂部、9は導電性ワイヤー、10はモールド部材である。
【0044】
本発明の一例である発光装置は、図3に示されるように、一般的な砲弾型の形態をなし、マウントリード5の上部カップ内には、GaN系発光ダイオード等からなる第1の発光体(350−415nm発光体)7が、その上に、蛍光体をエポキシ樹脂やアクリル樹脂等のバインダーに混合、分散させ、カップ内に流し込むことにより第2の発光体として形成された蛍光体含有樹脂部8で被覆されることにより固定されている。一方、第1の発光体7とマウントリード5、及び第1の発光体7とインナーリード6は、それぞれ導電性ワイヤー9で導通されており、これら全体がエポキシ樹脂等によるモールド部材10で被覆、保護されてなる。
【0045】
又、この発光素子1を組み込んだ面発光照明装置98は、図9に示されるように、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース910の底面に、多数の発光装置91を、その外側に発光素子91の駆動のための電源及び回路等(図示せず。)を設けて配置し、保持ケース910の蓋部に相当する箇所に、乳白色としたアクリル板等の拡散板99を発光の均一化のために固定してなる。
【0046】
そして、面発光照明装置98を駆動して、発光素子91の第1の発光体に電圧を印加することにより350−415nmの光を発光させ、その発光の一部を、第2の発光体としての蛍光体含有樹脂部における前記蛍光体が吸収し、可視光を発光し、一方、蛍光体に吸収されなかった青色光等との混色により演色性の高い発光が得られ、この光が拡散板99を透過して、図面上方に出射され、保持ケース910の拡散板99面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における相対発光強度は、比較例1における発光強度を100とし、その相対値で表した。
【0048】
実施例1
SrHPO4;0.1055モル、SrCO3;0.0352モル、SrCl2;0.0
176モル、およびEu2O3;0.0088モルを純水と共に、アルミナ製容器及びビー
ズの湿式ボールミル中で粉砕、混合し、乾燥後、ナイロンメッシュを通過させた後、得られた粉砕混合物をアルミナ製坩堝中で、4%の水素を含む窒素ガス流下、1200℃で2時間、加熱することにより焼成し、引き続いて、水洗浄、乾燥、及び分級処理を行うことにより蛍光体Sr4.5Eu0.5(PO4)3Clを製造した。図4に、この蛍光体のX線回折パターンを示す。図4のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致しているこ
とがわかる。図5に、GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光スペクトルを示した。表−1に、GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光ピークの波長、相対発光強度、蛍光体の量子吸収効率αq、蛍光体の量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積αq・ηiを示した。
【0049】
実施例2
仕込み原料を、SrHPO4;0.1055モル、SrCO3;0.0176モル、SrCl2;0.0176モル、およびEu2O3;0.0176モルと変えた以外は、実施例
1と同様にして蛍光体Sr4Eu1(PO4)3Clを製造した。図6に、この蛍光体のX線回折パター
ンを示す。図6のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致してい
ることがわかる。GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長、相対発光強度、蛍光体の量子吸収効率αq、蛍光体の量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積αq・ηiを示した。
【0050】
実施例3
仕込み原料を、SrHPO4;0.1055モル、SrCl2;0.0176モル、およびEu2O3;0.0264モルと変えた以外は、実施例1と同様にして蛍光体Sr3.5Eu1.5(PO4)3Clを製造した。図7に、この蛍光体のX線回折パターンを示す。図7のピークパタ
ーンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致していることがわかる。GaN系発
光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長、相対発光強度、蛍光体の量子吸収効率αq、蛍光体の量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積αq・ηiを示した。
【0051】
実施例4
仕込み原料を、SrHPO4;0.0879モル、SrCl2;0.0176モル、Eu2O3;0.0352、および(NH4)2HPO4;0.0176モルと変えた以外は、実
施例1と同様にして蛍光体Sr3Eu2(PO4)3Clを製造した。図8に、この蛍光体のX線回折パ
ターンを示す。図8のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致し
ていることがわかる。GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長と相対発光強度を示した。
【0052】
実施例5
仕込み原料を、SrHPO4;0.1055モル、SrCO3;0.0484モル、SrCl2;0.0176モル、CaCO3;0.00176モル、塩基性炭酸マグネシウム(Mgのモル数0.00088モル)、およびEu2O3;0.00088モルと変えた以外は、実施例1と同様にして蛍光体Sr4.875Ca0.05Mg0.025Eu0.05(PO4)3Clを製造した。図10に、この蛍光体のX線回折パターンを示す。図10のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致していることがわかる。GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長と相対発光強度、蛍光体の量子吸収効率αq、蛍光体の量子吸収
効率αqと内部量子効率ηiの積αq・ηiを示した。
【0053】
実施例6
仕込み原料を、SrHPO4;0.1055モル、SrCO3;0.0396モル、BaCO3;0.00879モル、塩基性炭酸マグネシウム(Mgのモル数0.00264モ
ル)、BaCl2;0.0176モル、およびEu2O3;0.00088モルと変えた以
外は、実施例1と同様にして蛍光体Sr4.125Ba0.75Mg0.075Eu0.05(PO4)3Clを製造した。図11に、この蛍光体のX線回折パターンを示す。図11のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致していることがわかる。GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長と相対発光強度を示した。
【0054】
実施例7
仕込み原料を、SrHPO4;0.0527モル、SrCl2;0.0176モル、Eu2O3;0.0527、および(NH4)2HPO4;0.0527モルと変えた以外は、実
施例1と同様にして蛍光体Sr2Eu3(PO4)3Clを製造した。図12に、この蛍光体のX線回折
パターンを示す。図12のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一
致していることがわかる。GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長、相対発光強度、蛍光体の量子吸収効率αq、蛍光体の量子吸収効率αqと内部量子効率ηi
の積αq・ηiを示した。
【0055】
実施例8
仕込み原料を、SrCl2;0.0176モル、Eu2O3;0.0791、および(N
H4)2HPO4;0.1055モルと変えた以外は、実施例1と同様にして蛍光体Sr0.5Eu4.5(PO4)3Clを製造した。図13に、この蛍光体のX線回折パターンを示す。図13のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致していることがわかる。GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長と相対発光強度を示した。
【0056】
実施例9
仕込み原料を、SrHPO4;0.1055モル、SrCO3;0.0302モル、CaCO3;0.0199モル、塩基性炭酸マグネシウム(Mgのモル数0.00088モル)、BaCl2;0.0176モル、およびEu2O3;0.00088モルと変えた以外は、実施例1と同様にして蛍光体Sr3.86Ba0.5Ca0.565Mg0.025Eu0.05(PO4)3Clを製造した。図14に、この蛍光体のX線回折パターンを示す。図14のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致していることがわかる。GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長と相対発光強度を示した。
【0057】
実施例10
仕込み原料を、SrHPO4;0.1055モル、SrCO3;0.0121モル、BaCO3;0.0204モル、CaCO3;0.0176モル、塩基性炭酸マグネシウム(Mgのモル数0.00088モル)、BaCl2;0.0176モル、およびEu2O3;0.00088モルと変えた以外は、実施例1と同様にして蛍光体Sr3.345Ba1.08Ca0.5Mg0.025Eu0.05(PO4)3Clを製造した。図15に、この蛍光体のX線回折パターンを示す。図15のピークパターンは図1のSr5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致していることがわかる。GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起し、発光スペクトルを測定した。表−1にその発光ピークの波長と相対発光強度を示した。
【0058】
実施例11
塩化カルシウム2水和物;0.01382モル、塩化ユーロピウム6水和物;0.00028モルを秤取り20mlの水に溶解させた。この水溶液に85%リン酸をリン酸として0.00846モル添加し、混合溶液を磁性皿に移し全溶液量を30〜40mlにした。この溶液を、攪拌下、加熱、乾燥させた。乾燥後の固体を回収し、メノウ乳鉢で粉砕した。この粉砕品の一部をアルミナ製坩堝に移し、4%の水素を含む窒素ガス流下、1000℃で2時間焼成し、蛍光体Ca4.9Eu0.1(PO4)3Clを製造した。
【0059】
表−1にGaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光ピークの波長と相対発光強度を示す。
実施例12
塩化カルシウム2水和物;0.01325モル、塩化ユーロピウム6水和物;0.00055モルを秤取り20mlの水に溶解させた。この水溶液に85%リン酸をリン酸として0.00828モル添加し、混合溶液を磁性皿に移し全溶液量を30〜40mlにした。この溶液を、攪拌下、加熱、乾燥させた。以下、実施例11と同様にして蛍光体Ca4.8Eu0.2(PO4)3Clを製造した。
【0060】
表−1にGaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光ピークの波長と相対発光強度を示す。
実施例13
塩化カルシウム2水和物;0.0122モル、塩化ユーロピウム6水和物;0.00106モルを秤取り20mlの水に溶解させた。この水溶液に85%リン酸をリン酸として0.00796モル添加し、混合溶液を磁性皿に移し全溶液量を30〜40mlにした。更に35%塩酸水溶液50マイクロリットルを滴下し、攪拌下、加熱、乾燥させた。以下、実施例11と同様にして蛍光体Ca4.6Eu0.4(PO4)3Clを製造した。
【0061】
表−1にGaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光ピークの波長と相対発光強度を示す。
実施例14
塩化カルシウム2水和物;0.0117モル、塩化ユーロピウム6水和物;0.0013モルを秤取り20mlの水に溶解させた。この水溶液に85%リン酸をリン酸として0.0078モル添加し、混合溶液を磁性皿に移し全溶液量を30〜40mlにした。更に35%塩酸水溶液50マイクロリットルを滴下し、攪拌下、加熱、乾燥させた。以下、実施例11と同様にして蛍光体Ca4.5Eu0.5(PO4)3Clを製造した。
【0062】
表−1にGaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光ピークの波長と相対発光強度を示す。
実施例15
塩化カルシウム2水和物;0.01054モル、硝酸ユーロピウム6水和物;0.00186モルを秤取り20mlの水に溶解させた。この水溶液に85%リン酸をリン酸として0.00744モル添加し、混合溶液を磁性皿に移し全溶液量を30〜40mlにした。更に35%塩酸水溶液100マイクロリットルを滴下し、攪拌下、加熱、乾燥させた。以下、実施例11と同様にして蛍光体Ca4.25Eu0.75(PO4)3Clを製造した。この蛍光体のX線回折パターンは、Ca5(PO4)3Clのそれと結晶構造的に一致していることがわかった。
【0063】
表−1にGaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光ピークの波長と相対発光強度を示す。
実施例16
塩化カルシウム2水和物;0.00948モル、硝酸ユーロピウム6水和物;0.00237モルを秤取り20mlの水に溶解させた。この水溶液に85%リン酸をリン酸として0.00711モル添加し、混合溶液を磁性皿に移し全溶液量を30〜40mlにした。更に35%塩酸水溶液150マイクロリットルを滴下し、攪拌下、加熱、乾燥させた。以下、実施例11と同様にして蛍光体Ca4Eu1(PO4)3Clを製造した。
【0064】
表−1にGaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光ピークの波長と相対発光強度を示す。
比較例1
BaCO3 ;0.0103モル、塩基性炭酸マグネシウム(Mgのモル数0.0103モル)、及びγ-Al2O3;0.0570モル、並びに発光中心イオンの元素源化合物と
してEu2O3;0.00057モルを純水と共に、アルミナ製容器及びビーズの湿式ボールミル中で粉砕、混合し、乾燥後、ナイロンメッシュを通過させた後、得られた粉砕混合物をアルミナ製坩堝中で、4%の水素を含む窒素ガス流下、1500℃で2時間、加熱することにより焼成し、引き続いて、水洗浄、乾燥、及び分級処理を行うことにより青色発光の蛍光体Ba0.9Eu0.1MgAl10O17を製造した。図5に、GaN系発光ダイオードの紫外光
領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光スペクトルを示し、実施例1と比較例1の青色発光蛍光体の性能を比較した。表−1にその発光ピークの波長と相対発光強度を示した。400nm励起による実施例1の蛍光体の発光強度が比較例1の
蛍光体のそれの5.1倍もあることがわかる。
【0065】
比較例2
仕込み原料を、SrHPO4;0.0897モル、BaCO3;0.0325モル、CaCO3;0.0176モル、塩基性炭酸マグネシウム(Mgのモル数0.00088モル)、BaCl2;0.0176モル、BaHPO4;0.0158モル、およびEu2O3;0.00088モルと変えた以外は、実施例1と同様にして蛍光体Sr2.55Ba1.875Ca0.5Mg0.025Eu0.05(PO4)3Clを製造した。表1に、GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光ピークの波長と相対強度を示した。図5に、GaN系発光ダイオードの紫外光領域の主波長である400nmでこの蛍光体を励起したときの発光スペクトルを示し、実施例1と比較例2の青色発光蛍光体の性能を比較した。表−1にその発光ピークの波長と相対発光強度を示した。400nm励起による実施例1の蛍光体の発光強度が比較例2の蛍光体のそれの5.1倍もあることがわかる。
【0066】
【表1】
【符号の説明】
【0067】
1;第2の発光体
2;面発光型GaN系LED
3;基板
4;発光装置
5;マウントリード
6;インナーリード
7;第1の発光体(350〜415nmの発光体)
8;本発明中の蛍光体を含有させた樹脂部
9;導電性ワイヤー
10;モールド部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
350−415nmの光を発生する第1の発光体と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発生する第2の発光体とを有する発光装置に用いる蛍光体であって、
該蛍光体は、前記第2の発光体に含有され、下記一般式[1]の化学組成を有する結晶相を有することを特徴とする蛍光体。
EuaSrbM5-a-b(PO4)cXd・・・・・・[1]
(上記一般式[1]において、MはEu及びSr以外の金属元素であって、その70mol%以上がBa、Mg及びCaからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を表す。また、XはPO4以外の一価のアニオン基であって、その70mol%以上がClであるこ
とを表す。c及びdは、2.7≦c≦3.3、0.9≦d≦1.1を満足する数である。a及びbは、a>0.2、b≧3、a+b≦5を満足する数である。)
【請求項2】
第1の発光体が、レーザーダイオード又は発光ダイオードである、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
元素Mが、Ba、Mg、及びCaからなる群から選ばれる少なくとも一種からなり、且つXがClからなる、請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項4】
第1の発光体が、GaN系化合物半導体を使用してなる、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の蛍光体。
【請求項5】
第1の発光体が、面発光型GaN系レーザーダイオードである請求項1ないし4のいずれか1つに記載の蛍光体。
【請求項6】
第2の発光体が、膜状である、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の蛍光体。
【請求項7】
第1の発光体の発光面に、直接第2の発光体の膜面を接触させてなる、請求項6に記載の蛍光体。
【請求項8】
第2の発光体が、蛍光体の粉を樹脂に分散させてなる、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の蛍光体。
【請求項9】
発光装置からの取り出し光が、第1の発光体からの光と第2の発光体からの光を混合した光であって、該取り出し光が白色である、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の蛍光体。
【請求項1】
350−415nmの光を発生する第1の発光体と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発生する第2の発光体とを有する発光装置に用いる蛍光体であって、
該蛍光体は、前記第2の発光体に含有され、下記一般式[1]の化学組成を有する結晶相を有することを特徴とする蛍光体。
EuaSrbM5-a-b(PO4)cXd・・・・・・[1]
(上記一般式[1]において、MはEu及びSr以外の金属元素であって、その70mol%以上がBa、Mg及びCaからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を表す。また、XはPO4以外の一価のアニオン基であって、その70mol%以上がClであるこ
とを表す。c及びdは、2.7≦c≦3.3、0.9≦d≦1.1を満足する数である。a及びbは、a>0.2、b≧3、a+b≦5を満足する数である。)
【請求項2】
第1の発光体が、レーザーダイオード又は発光ダイオードである、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
元素Mが、Ba、Mg、及びCaからなる群から選ばれる少なくとも一種からなり、且つXがClからなる、請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項4】
第1の発光体が、GaN系化合物半導体を使用してなる、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の蛍光体。
【請求項5】
第1の発光体が、面発光型GaN系レーザーダイオードである請求項1ないし4のいずれか1つに記載の蛍光体。
【請求項6】
第2の発光体が、膜状である、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の蛍光体。
【請求項7】
第1の発光体の発光面に、直接第2の発光体の膜面を接触させてなる、請求項6に記載の蛍光体。
【請求項8】
第2の発光体が、蛍光体の粉を樹脂に分散させてなる、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の蛍光体。
【請求項9】
発光装置からの取り出し光が、第1の発光体からの光と第2の発光体からの光を混合した光であって、該取り出し光が白色である、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の蛍光体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−21578(P2010−21578A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241645(P2009−241645)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【分割の表示】特願2003−49899(P2003−49899)の分割
【原出願日】平成15年2月26日(2003.2.26)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【分割の表示】特願2003−49899(P2003−49899)の分割
【原出願日】平成15年2月26日(2003.2.26)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
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