説明

発光装置の作製方法

【課題】複数の蒸着材料を用いて、所望の有機化合物層を容易に形成することができる発光装置の作製方法を提供する。
【解決手段】第1の基板100は、第1の有機化合物と第2の有機化合物とを含有する第1の層104を有し、第2の有機化合物の蒸着温度は、第1の有機化合物の蒸着温度よりも高く、第1の層において、第1の有機化合物は第2の有機化合物よりも多く含まれており、第2の基板102は、第1の電極を有し、第1の基板100上の第1の層104と、第2の基板102上の第1の電極とを対向させ、第1の層104を、第1の有機化合物の蒸着温度以上第2の有機化合物の蒸着温度未満の温度に加熱し、第1の電極上に第2の層106を形成し、第2の層106上に第2の電極を形成する発光装置の作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型軽量、高速応答性、直流低電圧駆動などの特徴を有する有機化合物を発光体として
用いた発光素子は、次世代のフラットパネルディスプレイへの応用が検討されている。特
に、発光素子をマトリクス状に配置した表示装置は、従来の液晶表示装置と比較して、視
野角が広く視認性が優れる点に優位性があると考えられている。
【0003】
有機化合物を含む層(以下、有機化合物層ともいう)を発光層とする発光素子の発光機
構は、一対の電極間に有機化合物層を挟んで電圧を印加することにより、陰極から注入さ
れた電子および陽極から注入された正孔が前記有機化合物層中で再結合して分子励起子を
形成し、その分子励起子が基底状態に戻る際にエネルギーを放出して発光するといわれて
いる。励起状態には一重項励起と三重項励起が知られ、発光はどちらの励起状態を経ても
可能であると考えられている。
【0004】
発光素子を構成する有機化合物層は、少なくとも発光層を有する。また、有機化合物層
は、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等を有する積層構造
とすることもできる。
【0005】
発光層は、発光材料のみで形成することもできるが、発光波長や発光効率等の所望の特
性を得るため、ホスト材料及びドーパント材料を組み合わせた構成とすることが知られて
いる。例えば、本出願人は、ホスト材料及びドーパント材料を含む発光素子を特許文献1
に開示している。
【0006】
また、有機化合物層を形成するEL材料は低分子系(モノマー系)材料と高分子系(ポ
リマー系)材料に大別される。一般に、低分子系材料は、蒸着装置を用いて成膜されるこ
とが多い。従来の蒸着装置は基板ホルダに基板を設置し、EL材料、つまり蒸着材料を封
入したルツボ(または蒸着ボート)と、昇華するEL材料の上昇を防止するシャッターと
、ルツボ内のEL材料を加熱するヒーターとを有している。そして、前記ヒーターにより
加熱されたEL材料が昇華し、基板に成膜される。例えば、本出願人は、基板に対して蒸
着源を相対的に移動させることが可能な蒸着装置を特許文献2に開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−288439号公報
【特許文献2】特開2004−043965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の蒸着装置を用いて、ホスト材料及びドーパント材料を含む有機化合物層を形成す
る場合、複数のルツボにそれぞれホスト材料、ドーパント材料を入れて、共蒸着を行う方
法が知られている。発光層を形成する場合、ドーパント材料はホスト材料に対して極少量
添加されるものである。そのため、ホスト材料の蒸着レートに対してドーパント材料の蒸
着レートが極めて小さくなるように制御する必要があり、蒸着レートの精密な制御が必要
になる。
【0009】
しかしながら、ルツボを用いて蒸着を行う場合、ルツボ内の温度分布が不均一になりや
すく、一定の蒸着レートを維持するのは困難である。特に、ホスト材料及びドーパント材
料といった異種材料を共蒸着する場合、蒸着レートをそれぞれ精密に制御するのは非常に
困難である。
【0010】
上記問題を鑑み、本発明は複数の蒸着材料を用いて、所望の有機化合物層を容易に形成
することができる作製方法を提供することを目的とする。また、複数の材料が混合した有
機化合物層を、精度良く形成することができる作製方法を提供することを目的とする。ま
た、上記方法を用いて成膜した有機化合物層を含む発光装置の作製方法を提供することを
目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の基板上に蒸着温度の異なる複数の蒸着材料を含有する第1の有機化合物層を形成
する。第1の基板と対向する位置に、第2の基板を配置する。第2の基板は、第1の基板
に設けられた第1の有機化合物層と対向するように配置する。第1の有機化合物層を蒸着
源として加熱して蒸発させ、第1の基板と対向して配置させた第2の基板上に、所望の第
2の有機化合物層を形成して発光装置を作製する。
【0012】
第1の有機化合物層は、蒸着温度の異なる複数の蒸着材料を予め混合し、当該混合物を
用いて基板上に形成する。なお、第1の有機化合物層は湿式法で形成することが好ましい
。また、蒸着温度の異なる複数の蒸着材料とは、例えば発光素子の発光層を形成するホス
ト材料及びドーパント材料が挙げられる。第1の有機化合物層に含有される複数の蒸着材
料を加熱により蒸発させて、第2の有機化合物層を成膜することができる。
【0013】
本明細書で開示する発明の一は、第1の基板上に、それぞれ蒸着温度の異なる複数の蒸
着材料を含有する第1の有機化合物層を形成し、第1の電極を有する第2の基板を第1の
基板と対向する位置に配置し、第1の電極と第1の有機化合物層とを対向させ、第1の有
機化合物層を加熱して蒸発させることにより、第2の基板に設けられた第1の電極上に第
2の有機化合物層を形成し、第2の有機化合物層上に第2の電極を形成する発光装置の作
製方法である。
【0014】
また、本明細書で開示する発明の一は、第1の基板上にホスト材料及びホスト材料より
も蒸着温度が高いドーパント材料を含有する第1の有機化合物層を形成し、第1の電極を
有する第2の基板を第1の基板と対向する位置に配置し、第1の電極と第1の有機化合物
層とを対向させ、第1の有機化合物層を、ホスト材料の蒸着温度以上ドーパント材料の蒸
着温度未満の温度で加熱して蒸発させることにより、第2の基板に設けられた第1の電極
上に第2の有機化合物層を形成し、第2の有機化合物層上に第2の電極を形成する発光装
置の作製方法である。
【0015】
上記構成において、ドーパント材料としては、ホスト材料の蒸着温度よりも分解温度が
高い材料を用いることができる。なお、本明細書において「蒸着温度」とは、材料が昇華
する温度を示す。また、「分解温度」とは、熱の作用によって、材料を示す化学式の少な
くとも一部に変化が起こる温度を示す。
【0016】
また、上記構成において、第2の基板に形成された第2の有機化合物層は、第1の有機
化合物層と同じ材料を含む。従って、上記構成での第2の有機化合物層の形成は、第1の
基板から第2の基板への有機化合物層の転写とも言える。
【0017】
なお、本明細書では、第1の基板上に形成された蒸着源となる第1の有機化合物層の表
面と第2の基板の表面との間隔を距離dとする。また、第2の基板上に何らかの層(例え
ば、電極として機能する導電層や隔壁として機能する絶縁層等)が形成されている場合、
距離dは、第1の基板上の有機化合物層の表面と、第2の基板上に形成された層の表面と
の距離で定義する。ただし、第2の基板或いは第2の基板上に形成された層の表面に凹凸
を有する場合は、距離dは、第1の基板上の有機化合物層の表面と、第2の基板或いは第
2の基板上に形成された層の最表面との間の最も短い距離で定義する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、蒸着温度の異なる複数の材料が混合した有機化合物層を、容易に形成す
ることが可能となる。また、複雑な制御を必要とすることなく、精度良く所望の有機化合
物層を得ることができる。また、得られた有機化合物層を含む発光装置を提供することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る成膜工程の断面を示す模式図。
【図2】本発明に係る蒸着源の作製工程の例を示すフローチャート図。
【図3】本発明に係る蒸着源の作製工程の例を示すフローチャート図。
【図4】発光素子の例を示す図。
【図5】パッシブマトリクス型発光装置の上面図および断面図の例。
【図6】パッシブマトリクス型発光装置の斜視図の一例。
【図7】パッシブマトリクス型発光装置の上面図の一例。
【図8】アクティブマトリクス型発光装置の上面図および断面図の一例。
【図9】成膜装置の例を示す図。
【図10】成膜装置の例を示す図。
【図11】電気器具の例を示す図。
【図12】実施例1の成膜工程の断面を示す模式図。
【図13】実施例1の発光スペクトルを示す図。
【図14】本発明に係る成膜工程の断面を示す模式図。
【図15】実施例2の成膜工程の断面を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説
明に限定されず、本発明の主旨及びその範囲から逸脱することなく、その形態及び詳細を
様々に変更しうることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下
に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する
本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる場合がある

【0021】
(実施の形態1)
図1乃至図3を用いて、本発明に係る発光装置の作製方法を説明する。図1は、成膜装
置の簡略な模式図を示している。また、図2及び図3は、本発明に係る蒸着源を作製する
フローチャート図を示す。
【0022】
第1の基板100上に、第1の有機化合物層104を形成する(図1(A)参照)。
【0023】
第1の有機化合物層104は本発明に係る蒸着源である。第1の有機化合物層104は
、少なくとも2種類の蒸着温度の異なる蒸着材料を含有する。本実施の形態では、発光素
子を構成する有機化合物層(例えば発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、又は
電子注入層)を形成するホスト材料及びドーパント材料を、少なくとも1つずつ含有する

【0024】
第1の基板100は、蒸着源となる第1の有機化合物層104を成膜する基板であり、
第1の有機化合物層104の支持基板となる。第1の基板100としては、例えば石英、
セラミック、或いはサファイヤ等の酸化物基板や、金、白金、銅、銀、タングステン、タ
ンタル、チタン、或いはアルミニウム等の金属材料及びこれらの合金材料からなる導電性
基板を用いることができる。また、酸化物基板上に、前述の金属材料や合金材料を成膜し
た基板などを用いることができる。その他、シリコン、ゲルマニウム等の半導体材料を成
膜した導電性基板を用いることができる。また、透光性を有する基板(ガラス基板、石英
基板、無機材料を含むプラスチック基板など)上にアモルファスシリコン膜、微結晶シリ
コン膜を形成したものを用いてもよい。
【0025】
第1の有機化合物層104は、蒸着温度の異なる複数の蒸着材料(例えばホスト材料及
びドーパント材料)を混合した後に第1の基板100上に成膜する。ここで、第1の有機
化合物層104の作製方法について、図2及び図3を用いて詳しく説明する。
【0026】
まず、所望の蒸着材料を準備する。ここでは、所望の蒸着材料として、蒸着温度の異な
るホスト材料202及びドーパント材料204を準備する(st1)。なお、蒸着により
作製する有機化合物層の機能及び用途に応じて、準備するホスト材料202とドーパント
材料204の重量比を決定する。ここで準備する材料の重量比は、蒸着により作製する有
機化合物層の成分比を制御するものである。発光層として機能する有機化合物層を形成す
る場合、ホスト材料に極少量のドーパント材料を添加するのが一般的である。例えば、ホ
スト材料に対してドーパント材料が0.5wt%乃至10wt%の範囲で含有されるよう
にする。また、発光層を形成する場合、ドーパント材料は発光材料となり、ホスト材料は
ドーパント材料を分散させる機能を有する。
【0027】
また、本実施の形態では、蒸着温度が異なる複数の蒸着材料を用いており、複数の蒸着
材料がそれぞれ有する蒸着温度のうち、最も高い蒸着温度よりも低い加熱温度で有機化合
物層を成膜することを目的の1つとする。そのためには、ホスト材料202として、ドー
パント材料204よりも蒸着温度が低いものを準備することが好ましい。また、ホスト材
料202は、ドーパント材料204の分解温度よりも蒸着温度が低いものを準備すること
が好ましい。つまり、準備するホスト材料202の蒸着温度は、ドーパント材料204の
蒸着温度未満であり、ドーパント材料204の分解温度未満であることが好ましい。
【0028】
また、蒸着材料は、少なくとも1種類ずつのホスト材料及びドーパント材料を用いるも
のとする。よって、2種類以上のホスト材料と1種類のドーパント材料を用いてもよいし
、2種類以上のドーパント材料と1種類のホスト材料を用いてもよい。また、2種類以上
のホスト材料及び2種類以上のドーパント材料を用いてもよい。
【0029】
発光層を形成する場合、ホスト材料202としては、例えば4,4’−ビス[N−(1
−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、トリス(8−キノリ
ノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジ
メチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPB
i)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム
(III)(略称:BAlq)などの他、4,4’−ジ(9−カルバゾリル)ビフェニル
(略称:CBP)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン
(略称:t−BuDNA)、9−[4−(9−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニ
ルアントラセン(略称:CzPA)などが挙げられる。
【0030】
ドーパント材料204としては、例えば燐光性化合物や蛍光性化合物を用いることがで
きる。燐光性化合物としては、具体的には、(アセチルアセトナート)ビス(2,3,5
−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(ac
ac)])、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C’]
イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、トリス(2−フェニルピリ
ジナト−N,C’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フ
ェニルピリジナト−N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:I
r(ppy)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C’)イ
リジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))、トリ
ス(2−フェニルキノリナト−N,C’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq)
)、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C’)イリジウム(III)アセチルアセ
トナート(略称:Ir(pq)(acac))、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−
α]チエニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(
略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2
’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac)
)、(アセチルアセトナート)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリ
ナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、2,3,7,
8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II
)(略称:PtOEP)等が挙げられる。また、蛍光性化合物としては、具体的にはペリ
レン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン(略称:TBP)、4,
4’−ビス[2−(N−エチルカルバゾール−3−イル)ビニル]ビフェニル(略称:B
CzVBi)、5,12−ジフェニルテトラセン、N,N’−ジメチルキナクリドン(略
称:DMQd)、N,N’−ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、4−ジシアノ
メチレン−2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン
−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJTI)、ルブレン、クマリン6、
クマリン30等が挙げられる。その他、9−(4−{N−[4−(カルバゾール−9−イ
ル)フェニル]−N−フェニルアミノ}フェニル)−10−フェニルアントラセン(略称
:YGAPA)等を用いることもできる。
【0031】
次に、ホスト材料202及びドーパント材料204を混合し、ホスト材料202及びド
ーパント材料204の混合物(以下、「ホスト−ドーパント混合物」と記す)206を形
成する(st2)。ホスト材料202及びドーパント材料204の混合は、適宜溶媒を用
いて行う。溶媒は、ホスト材料202及びドーパント材料204を十分に溶解或いは分散
させることができ、且つ両者の材料と反応しないものであれば特に限定されない。例えば
、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、或い
はクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケト
ン、n−プロピルメチルケトン、或いはシクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ベンゼン
、トルエン、或いはキシレンなどの芳香族系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸
n−ブチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、或いは炭酸ジエチルなどのエス
テル系溶媒、テトラヒドロフラン、或いはジオキサンなどのエーテル系溶媒、ジメチルホ
ルムアミド、或いはジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド、
ヘキサン、又は水等を用いることができる。
【0032】
次に、ホスト−ドーパント混合物206を第1の基板100に湿式で塗布し、第1の有
機化合物層104を形成する(st3)。第1の有機化合物層104は、ホスト材料20
2にドーパント材料204が分散された混合層である。
【0033】
基板上にホスト−ドーパント混合物を塗布する方法は湿式法であれば特に限定されない
。例えば、スピンコート法、インクジェット法、ディップコート法、キャスト法、ダイコ
ート法、ロールコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、又は印
刷法等を用いることができる。以上で、蒸着源となる第1の有機化合物層104を得るこ
とができる。このように、所望の蒸着材料を混合して溶媒に溶解或いは分散させることで
、湿式法を用いて簡便に蒸着源を形成することが可能である。また、本発明に係る蒸着源
は、予め蒸着温度の異なる複数の蒸着材料が混合されている。そのため、共蒸着を適用す
る場合と異なり、蒸着源は単数となる。
【0034】
なお、基板上にホスト−ドーパント混合物206を塗布した後、形成した第1の有機化
合物層104が変化しない温度範囲で真空ベークを行ってもよい。また、ホスト−ドーパ
ント混合物206は、ホスト材料202及びドーパント材料204の他に、バインダーと
して機能するポリマー(ポリマーバインダーともいわれる)を混合させてもよい。バイン
ダーとしては、ホスト材料202及びドーパント材料204と反応しない材料であれば特
に限定されない。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチ
ルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェ
ニレンオキシド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリア
ミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽
和ポリエステル、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラール、
又はポリビニルアセタール等を用いることができる。
【0035】
次に、第1の基板100を成膜室内に搬入する。次に、第1の基板100の第1の有機
化合物層104が設けられた基板面に対向する第2の基板102を配置する。ここでは、
第1の有機化合物層104と第2の基板102の一方の面を対向させる。第2の基板10
2は、蒸着処理により所望の層が成膜される被成膜基板である。そして、成膜室内の第1
の基板100と第2の基板102とを至近距離、具体的には第1の基板100に設けられ
た第1の有機化合物層104と第2の基板102との距離dを、0mm以上50mm以下
、好ましくは0mm以上10mm以下となるように近づけて対向させる(図1(A)参照
)。
【0036】
なお、距離dは、第1の基板100上に形成された第1の有機化合物層の表面と、第2
の基板の表面との距離で定義する。また、第2の基板上に何らかの層(例えば、電極とし
て機能する導電層や隔壁として機能する絶縁層等)が形成されている場合、距離dは、第
1の基板上の有機化合物層の表面と、第2の基板上に形成された層の表面との距離で定義
する。ただし、第2の基板或いは第2の基板上に形成された層の表面に凹凸を有する場合
は、距離dは、第1の基板上の有機化合物層の表面と、第2の基板或いは第2の基板上に
形成された層の最表面との間の最も短い距離で定義する。
【0037】
ここでは材料の利用効率を向上させるために、第1の基板と第2の基板の基板間の距離
は狭いほうが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。材料の利用効率を考
慮しないのであれば、第1の基板と第2の基板の距離dは50mmより大きくてもよい。
【0038】
成膜室内は、真空排気しておくことが好ましい。具体的には、真空度が5×10−3
orr(0.665Pa)以下、好ましくは10−4Torr乃至10−6Torr程度
の範囲まで真空排気する。成膜室に連結して設けられる真空排気手段は、大気圧から1P
a程度をオイルフリーのドライポンプで真空排気し、それ以上の圧力は磁気浮上型のター
ボ分子ポンプまたは複合分子ポンプにより真空排気する。成膜室には水分を除去するため
にクライオポンプを併設しても良い。このようにすることで、排気手段からの主に油など
の有機物による汚染を防止している。内壁面は、電解研磨により鏡面処理し、表面積を減
らしてガス放出を防いでいる。
【0039】
また、成膜室内には、加熱手段が設けられている。第1の基板100は加熱手段の近傍
に配置される。図1では加熱手段としてヒーター110を設ける例を示す。なお、加熱手
段は特に限定されず、短時間に均一な加熱を行えればよく、例えばランプでもよいし、抵
抗加熱方式を利用してもよい。また、第1の基板100として導電性基板を適用し、該導
電性基板に電流を流すことで加熱を行うこともできる。この場合、第1の基板100は支
持基板であり、且つ加熱手段としての機能も有する。
【0040】
次に、第1の基板100に設けられた第1の有機化合物層104を加熱して蒸発させ、
対向して配置された第2の基板102の被成膜面(図1では下方面)に第2の有機化合物
層106を成膜する(図1(B)参照)。
【0041】
このようにして、第2の基板102の一方の面、具体的には第1の基板100に対向す
る基板面に第2の有機化合物層106を形成することができる。なお、成膜される第2の
有機化合物層106の膜厚は、蒸着源となる第1の有機化合物層104の膜厚に依存する
。このとき、第1の有機化合物層104を形成する材料によっては、第2の有機化合物層
106と第1の有機化合物層104との膜厚を、略同じとすることも可能である。つまり
、蒸着源によって、蒸着処理により形成する層の膜厚を制御することも可能である。
【0042】
本実施の形態では、蒸着源となる有機化合物層を基板上に湿式で塗布して形成したもの
を利用し、蒸着処理を行っている。つまり、蒸着源は被成膜基板と同程度の面積を有する
。このようにすることで、従来のルツボや蒸着ボートを用いた場合よりも蒸着源全体を短
時間で均一に加熱することが可能となる。よって、被成膜基板である第2の基板に精度良
く有機化合物層を成膜することができる。さらに、蒸着源を形成する第1の基板と、被成
膜基板である第2の基板との距離dを狭めることによって、蒸着材料が第2の基板以外(
例えば、成膜室内壁等)へ飛散することを抑えることができる。そのため、蒸着材料を無
駄にすることなく、被成膜基板に有機化合物層を成膜することができる。
【0043】
第1の有機化合物層104は、蒸着温度の異なる複数の蒸着材料(ここではホスト材料
及びドーパント材料)を含有している。第1の有機化合物層104を蒸発させて第2の有
機化合物層106を成膜するための加熱は、該第1の有機化合物層104に含有される蒸
着材料が有する蒸着温度のうち、最も高い蒸着温度よりも低い加熱温度で行う。例えば、
本実施の形態では、第1の有機化合物層104にホスト材料及びドーパント材料が含有さ
れており、ドーパント材料はホスト材料よりも高い蒸着温度を有する。この場合、第1の
有機化合物層104の加熱は、ドーパント材料の蒸着温度よりも低い加熱温度で行うもの
とする。好ましくは、ホスト材料の蒸着温度程度で加熱する。さらに好ましくは、ドーパ
ント材料の分解温度よりも低い加熱温度で行うものとする。つまり、第1の有機化合物層
104の加熱は、ドーパント材料の蒸着温度未満、好ましくはドーパント材料の分解温度
未満で行うものとする。
【0044】
上述のように第1の有機化合物層104を加熱して蒸発させることで、第2の有機化合
物層106を成膜することができる。本実施の形態では、第1の有機化合物層104を、
当該第1の有機化合物層104に含有されるドーパント材料の蒸着温度よりも低い温度で
加熱することで、被成膜基板である第2の基板102に第2の有機化合物層106を形成
することができる。このように第1の有機化合物層104を形成するための加熱温度をド
ーパント材料の蒸着温度よりも低い温度とすることができるのは、ホスト材料に極少量の
ドーパント材料を添加することで、ホスト材料が蒸発する際に、当該ホスト材料に分散さ
れたドーパント材料も一緒に蒸発させることができるためと考えられる。なお、ドーパン
ト材料の分解温度よりも低い蒸着温度を有するホスト材料を用いることで、蒸着材料を分
解させることなく、第2の有機化合物層106を成膜することが可能になる。このように
、選択する蒸着材料によっては、蒸着の際の加熱温度を下げることを可能とする。そのた
め、本発明は、単体では温度制御が困難な材料、例えば蒸着温度と分解温度が非常に近い
材料を蒸着するのに非常に有効である。特に、発光材料としてドーパント材料を用いて発
光層を形成する場合、発光材料の分解を防止することができるので、所望の発光を得るこ
とができる。このようにして形成する発光層を適用することで、鮮明な画像表示を行う発
光装置を製造することが可能となる。
【0045】
なお、第1の有機化合物層104にバインダーとして機能するポリマーを混合させてい
る場合、選択的にホスト材料及びドーパント材料を蒸発させて、第2の有機化合物層10
6を成膜することが可能である。
【0046】
第1の有機化合物層104の加熱は、成膜室内に設けられた加熱手段を利用して行う。
例えば、図1に示すようにヒーター110を設ける場合、加熱前(蒸着前)は第1の基板
100からヒーター110を離しておき、加熱時に第1の基板100にヒーター110を
近づける構成としてもよい。また、ヒーター110に連動するスイッチを設けて、オンオ
フすることにより加熱及び断熱を制御してもよい。加熱手段としてランプを用いる場合は
、ランプの点灯及び消灯により、加熱及び断熱を制御することができる。また、加熱手段
と第1の基板100の間に開閉式のシャッターを設けて加熱及び断熱を制御してもよい。
【0047】
また、加熱手段としてランプを用いる場合、成膜室の内壁の一部を透光性部材として、
成膜室の外側にランプを配置してもよい。成膜室の外側にランプを配置すると、ランプの
ライトバルブの交換などのメンテナンスを簡便なものとすることができる。
【0048】
また、第1の基板100として導電性基板を用い、該導電性基板に電流を流して加熱を
行うこともできる。例えば、図14(A)に示すように、導電性基板である第1の基板1
00と電気的に接続する電源150及びスイッチ152を設ける。そして、図14(B)
に示すようにスイッチ152をオンすることで、第1の基板100に電流を流して加熱を
行うことができる。第1の有機化合物層104は、第1の基板100に電流を流すことに
よって加熱されて蒸発し、第2の基板102に第2の有機化合物層106を形成すること
ができる。なお、この場合は第1の基板100は加熱手段の一部としての機能も有する。
【0049】
なお、図1(A)及び図1(B)では、第1の基板100と第2の基板102が同じ大
きさの例を示すが、特に限定されず、一方の基板が他方の基板より大きい面積を有してい
てもよい。
【0050】
また、被成膜基板に選択的に成膜を行う場合には、第1の基板と第2の基板の間に、開
口部を有するマスクを配置すればよい。
【0051】
本発明に係る発光装置に適用する成膜方法は、蒸着温度の異なる複数の蒸着材料として
、ホスト材料及びドーパント材料が、予め所望の重量比で混合されたものを含有した蒸着
源を用いている。蒸着源に含有される蒸着材料は均一に蒸発させることができ、蒸着源と
同じ蒸着材料を略同じ重量比で含有する有機化合物層を被成膜基板に成膜することができ
る。このように、本発明に係る成膜方法は、蒸着温度の異なる複数の蒸着材料を用いて成
膜する場合、共蒸着のようにそれぞれ蒸着レートを制御する必要がない。そのため、蒸着
レート等の複雑な制御を行うことなく、所望の有機化合物層を容易に精度良く成膜するこ
とができる。
【0052】
また、本発明に係る発光装置に適用する成膜方法は、支持基板に形成した蒸着源の膜厚
によって、蒸着処理により被成膜基板に成膜される有機化合物層の膜厚を制御することが
できる。つまり、支持基板に形成した蒸着源をそのまま蒸着すればよいため、膜厚モニタ
ーが不要である。よって、膜厚モニターを利用した蒸着速度の調節を使用者が行う必要が
なく、成膜工程を全自動化することが可能である。そのため、スループットの向上を図る
ことができる。
【0053】
また、本発明に係る成膜方法は、所望の蒸着材料を無駄にすることなく、被成膜基板に
成膜することが可能である。よって、蒸着材料の利用効率が向上し、コスト削減を図るこ
とができる。また、成膜室内壁に蒸着材料が付着することも防止でき、成膜装置のメンテ
ナンスを簡便にすることができる。
【0054】
よって、本発明を適用することで、所望の有機化合物層の成膜が容易になり、当該有機
化合物層を用いた発光装置等の製造におけるスループットを向上させることが可能となる

【0055】
なお、本実施の形態では、蒸着源として蒸着材料が形成された基板を用いているが、本
発明はこれに限定されるものではない。つまり、被成膜基板と同程度の面積を有する基板
を用いた蒸着源でなくともよい。成膜後の膜厚の均一性が特に重要でない場合、例えば、
予め混合した蒸着温度の異なる複数の蒸着材料をルツボ或いは蒸着ボート等に入れ、これ
を蒸着源として用いてもよい。また、蒸着材料をルツボや蒸着ボートに入れる場合、適宜
溶媒やバインダー等を加えてもよい。
【0056】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【0057】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明を適用して、発光装置を作製する方法について説明する。
【0058】
例えば、図4(A)、(B)に示す発光素子を作製することができる。図4(A)に示
す発光素子は、基板300上に第1の電極層302、発光層304として機能する有機化
合物層、第2の電極層306が順に積層して設けられている。第1の電極層302及び第
2の電極層306のいずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。陽極
から注入される正孔及び陰極から注入される電子が発光層304で再結合して、発光を得
ることができる。本実施の形態において、発光層304はホスト材料に発光材料である極
少量のドーパント材料が分散された有機化合物層で形成される。また、第1の電極層30
2を陽極とし、第2の電極層306を陰極とする。
【0059】
また、図4(B)に示す発光素子は、上述の図4(A)に示す構成に加えて、正孔注入
層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層が設けられている。正孔輸送層は、陽極と発
光層の間に設けられる。また、正孔注入層は陽極と発光層との間、或いは陽極と正孔輸送
層との間に設けられる。一方、電子輸送層は、陰極と発光層との間に設けられ、電子注入
層は陰極と発光層との間、或いは陰極と電子輸送層との間に設けられる。なお、正孔注入
層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層は全ての層を設ける必要はなく、適宜求める
機能等に応じて選択して設ければよい。図4(B)では、基板300上に、陽極として機
能する第1の電極層302、正孔注入層322、正孔輸送層324、発光層304、電子
輸送層326、電子注入層328、及び陰極として機能する第2の電極層306が順に積
層して設けられているものとする。
【0060】
発光層304、正孔注入層322、正孔輸送層324、電子輸送層326又は電子注入
層328は、上記実施の形態1で示した成膜方法を適用して形成することができる。
【0061】
例えば、図4(A)に示す発光素子を形成する場合、支持基板上に発光層を形成する蒸
着源となる第1の有機化合物層を形成し、当該支持基板を被成膜基板に対向させて配置す
る。支持基板上に形成された第1の有機化合物層を加熱して蒸発させ、被成膜基板上に発
光層304を形成する。そして、発光層304上に第2の電極層306を形成する。被成
膜基板は、ここでは基板300である。なお、被成膜基板上には、予め第1の電極層30
2を形成しておく。したがって、支持基板に形成された第1の有機化合物層と、基板30
0に形成された第1の電極層302と、を対向させる。発光層を形成する蒸着源となる第
1の有機化合物層は、ホスト材料に極少量のドーパント材料(発光材料)が分散された混
合層である。第1の有機化合物層を形成するホスト材料は、ドーパント材料よりも蒸着温
度が低い材料が用いられている。本実施の形態において、第1の有機化合物層は、含有す
るドーパント材料の蒸着温度よりも低い温度で加熱して蒸発され、被成膜基板上に発光層
304を形成することができる。また、ドーパント材料の分解温度よりも低い蒸着温度を
有するホスト材料を用いると、第1の有機化合物層に含有される蒸着材料を分解させるこ
となく、被成膜基板上に発光層304を形成することができる。発光層304は第1の有
機化合物層と同じ材料を含み、ホスト材料にドーパント材料が分散された構成となる。
【0062】
また、図4(B)に示す各種機能層が積層した発光素子を形成する場合は、支持基板上
に第1の有機化合物層を形成し、当該支持基板を被成膜基板に対向させて配置し、支持基
板上に形成された第1の有機化合物層を加熱して蒸発させ、被成膜基板上に第2の有機化
合物層を形成する手順を繰り返せばよい。例えば、支持基板上に正孔注入層を形成する蒸
着源となる有機化合物層を形成し、当該支持基板を被成膜基板に対向させて配置した後、
支持基板上に形成された有機化合物層を加熱して蒸発させ、被成膜基板上に正孔注入層3
22を形成する。被成膜基板はここでは基板300であり、予め第1の電極層302が設
けられている。続けて、支持基板上に正孔輸送層を形成する蒸着源となる有機化合物層を
形成し、当該支持基板を被成膜基板に対向させて配置した後、支持基板上に形成された有
機化合物層を加熱して蒸発させ、被成膜基板上の正孔注入層322上に正孔輸送層324
を形成する。この後、同様に発光層304、電子輸送層326、電子注入層328を順に
積層して形成した後、第2の電極層306を形成する。
【0063】
正孔注入層322、正孔輸送層324、電子輸送層326又は電子注入層328は、公
知のEL材料を用いて形成すればよい。各層を形成する材料は1種類としてもよいし、複
数種類の複合材料としてもよい。複合材料を用いて形成する場合は、上記実施の形態1に
示すように、予め材料を混合させて蒸着源となる第1の有機化合物層を形成すればよい。
1種類の材料を用いて形成する場合も、上記実施の形態1で示した成膜方法を適用して第
1の有機化合物層を形成すればよい。具体的には、所望の材料を溶媒に溶解或いは分散さ
せたものを湿式で塗布して、蒸着源となる第1の有機化合物層を形成すればよい。また、
正孔注入層322、正孔輸送層324、電子輸送層326又は電子注入層328は、それ
ぞれ単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。例えば、正孔輸送層324を、第
1の正孔輸送層及び第2の正孔輸送層からなる積層構造としてもよい。
【0064】
基板300は、絶縁表面を有する基板または絶縁基板を適用する。具体的には、アルミ
ノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電
子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板又はサファイヤ基板等を
用いることができる。
【0065】
第1の電極層302又は第2の電極層306は、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化
シリコンを含むインジウム錫酸化物(ITSO)、酸化インジウムにさらに2wt%乃至
20wt%の酸化亜鉛を混合したターゲットを用いてスパッタリング法により形成される
酸化物(IZO)等の酸化物導電材料の他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni
)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト
(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、窒化チタン、又は窒化カルシウム等を用い
て、単層膜又は積層膜で形成することができる。また、アルミニウム、マグネシウムと銀
との合金、アルミニウムとリチウムとの合金等も用いることができる。なお、発光層30
4で発光する光を外部に取り出すため、第1の電極層302又は第2の電極層306のい
ずれか一方或いは両方は、発光を通過させるように形成する。例えば、インジウム錫酸化
物等の透光性を有する導電材料を用いて形成するか、或いは、銀、アルミニウム等を数n
m乃至数十nmの厚さとなるように形成する。また、膜厚を薄くした銀、アルミニウムな
どの金属薄膜と、ITO膜等の透光性を有する導電材料を用いた薄膜との積層構造とする
こともできる。なお、第1の電極層302又は第2の電極層306は、公知の方法を用い
て形成すればよい。
【0066】
以上で、発光素子を作製することができる。本実施の形態に係る発光素子は、本発明を
適用することで、発光層をはじめとする各種機能層を容易に形成することができる。そし
て、このような発光素子を適用して、発光装置を作製することができる。例えば、本発明
を適用して作製したパッシブマトリクス型の発光装置の例を図5、図6、及び図7を用い
て説明する。
【0067】
パッシブマトリクス型(単純マトリクス型ともいう)発光装置は、ストライプ状(帯状
)に並列された複数の陽極と、ストライプ状に並列された複数の陰極とが互いに直交する
ように設けられており、その交差部に発光層が挟まれた構造となっている。従って、選択
された(電圧が印加された)陽極と選択された陰極との交点にあたる画素が点灯すること
になる。
【0068】
図5(A)は、封止前における画素部の上面図を示す図であり、図5(A)中の鎖線A
−A’で切断した断面図が図5(B)であり、鎖線B−B’で切断した断面図が図5(C
)である。
【0069】
第1の基板1501上には、下地絶縁層として絶縁層1504を形成する。なお、下地
絶縁層が必要でなければ特に形成しなくともよい。絶縁層1504上には、ストライプ状
に複数の第1の電極層1513が等間隔で配置されている。また、第1の電極層1513
上には、各画素に対応する開口部を有する隔壁1514が設けられ、開口部を有する隔壁
1514は絶縁材料(感光性または非感光性の有機材料(ポリイミド、アクリル、ポリア
ミド、ポリイミドアミド、レジストまたはベンゾシクロブテン)、またはSOG膜(例え
ば、アルキル基を含むSiOx膜))で構成されている。なお、各画素に対応する開口部
が発光領域1521となる。
【0070】
開口部を有する隔壁1514上に、第1の電極層1513と交差する互いに平行な複数
の逆テーパ状の隔壁1522が設けられる。逆テーパ状の隔壁1522はフォトリソグラ
フィ法に従い、未露光部分がパターンとして残るポジ型感光性樹脂を用い、パターンの下
部がより多くエッチングされるように露光量または現像時間を調節することによって形成
する。
【0071】
また、平行な複数の逆テーパ状の隔壁1522を形成した直後における斜視図を図6に
示す。なお、図5と同一の部分には同一の符号を用いている。
【0072】
開口部を有する隔壁1514及び逆テーパ状の隔壁1522を合わせた高さは、発光層
を含むEL層及び第2の電極層となる導電層の膜厚より大きくなるように設定する。図6
に示す構成を有する第1の基板に対して発光層を含むEL層と、導電層とを積層形成する
と、図5に示すように複数の領域に分離された、発光層を含むEL層1515R、EL層
1515G、EL層1515Bと、第2の電極層1516とが形成される。なお、複数に
分離された領域は、それぞれ電気的に独立している。第2の電極層1516は、第1の電
極層1513と交差する方向に伸長する互いに平行なストライプ状の電極である。なお、
逆テーパ状の隔壁1522上にも発光層を含むEL層及び導電層が形成されるが、発光層
を含むEL層1515R、1515G、1515B及び第2の電極層1516とは分断さ
れている。なお、本実施の形態において、EL層とは少なくとも発光層を含む層であって
、該発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、又は電子注入層等を含んでいて
もよい。
【0073】
ここでは、発光層を含むEL層1515R、1515G、1515Bを選択的に形成し
、3種類(R、G、B)の発光が得られるフルカラー表示可能な発光装置を形成する例を
示している。発光層を含むEL層1515R、1515G、1515Bはそれぞれ互いに
平行なストライプパターンで形成されている。これらのEL層を形成するには、上記実施
の形態1に示す成膜方法を適用すればよい。例えば、赤色の発光が得られる発光層の蒸着
源を形成した第1支持基板、緑色の発光が得られる発光層の蒸着源を形成した第2支持基
板、青色の発光が得られる発光層の蒸着源を形成した第3支持基板をそれぞれ準備する。
また、被成膜基板として第1の電極層1513が設けられた基板を準備する。そして、第
1支持基板、第2支持基板、又は第3支持基板を、被成膜基板と適宜対向して配置し、前
記支持基板に形成された蒸着源を加熱して蒸発させ、被成膜基板に発光層を含むEL層を
形成する。なお、所望の場所に選択的にEL層を形成するため、適宜マスク等を用いる。
【0074】
また、全面に同じ発光色を発光する発光層を含むEL層を形成し、単色の発光素子を設
けてもよく、モノクロ表示可能な発光装置、或いはエリアカラー表示可能な発光装置とし
てもよい。また、白色発光が得られる発光装置として、カラーフィルタと組み合わせるこ
とによってフルカラー表示可能な発光装置としてもよい。
【0075】
また、必要であれば、封止缶や封止のためのガラス基板などの封止材を用いて封止する
。例えば、第2の基板としてガラス基板を用い、シール材などの接着材を用いて第1の基
板と第2の基板とを貼り合わせ、シール材などの接着材で囲まれた空間を密閉なものとす
る。密閉された空間には、充填材や、乾燥した不活性ガスを充填する。また、発光装置の
信頼性を向上させるために、第1の基板と封止材との間に乾燥材などを封入してもよい。
乾燥材によって微量な水分が除去され、十分乾燥される。また、乾燥材としては、酸化カ
ルシウムや酸化バリウムなどのようなアルカリ土類金属の酸化物のような化学吸着によっ
て水分を吸着する物質を用いることが可能である。なお、他の乾燥材として、ゼオライト
やシリカゲル等の物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。
【0076】
ただし、発光素子を覆って接する封止材が設けられ、十分に外気と遮断されている場合
には、乾燥材は、特に設けなくともよい。
【0077】
次いで、FPCなどを実装した発光モジュールの上面図を図7に示す。
【0078】
なお、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは
光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexi
ble printed circuit)もしくはTAB(Tape Automat
ed Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Packa
ge)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設け
られたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On Glass)方式により
IC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【0079】
図7に示すように画像表示を構成する画素部は、走査線群とデータ線群が互いに直交す
るように交差している。
【0080】
図5における第1の電極層1513が図7の走査線1603に相当し、第2の電極層1
516がデータ線1602に相当し、逆テーパ状の隔壁1522が隔壁1604に相当す
る。データ線1602と走査線1603の間には発光層を含むEL層が挟まれており、領
域1605で示される交差部が画素1つ分となる。
【0081】
なお、走査線1603は配線端で接続配線1608と電気的に接続され、接続配線16
08が入力端子1607を介してFPC1609bに接続される。また、データ線160
2は入力端子1606を介してFPC1609aに接続される。
【0082】
また、必要であれば、射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板
(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また
、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を
拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0083】
以上でパッシブマトリクス型の発光装置を作製できる。本発明を適用することで、発光
素子を構成する有機化合物層を容易に形成することができ、当該発光素子を有する発光装
置の製造も簡便になる。また、ホスト材料にドーパント材料が分散された発光層を形成す
る場合、共蒸着を適用する場合と比べ複雑な制御を必要としない。さらに、ドーパント材
料の添加量等も制御し易いため、容易に精度良く成膜でき、所望の発光色も得られやすく
なる。また、蒸着材料の利用効率も向上させることができるため、コスト削減を図ること
もできる。
【0084】
また、図7では、駆動回路を基板上に設けていない例を示したが、本発明は特に限定さ
れず、基板に駆動回路を有するICチップを実装させてもよい。
【0085】
ICチップを実装させる場合、画素部の周辺(外側)の領域に、画素部へ各信号を伝送
する駆動回路が形成されたデータ線側IC、走査線側ICをCOG方式によりそれぞれ実
装する。COG方式以外の実装技術としてTCPやワイヤボンディング方式を用いて実装
してもよい。TCPはTABテープにICを実装したものであり、TABテープを素子形
成基板上の配線に接続してICを実装する。データ線側IC、および走査線側ICは、シ
リコン基板を用いたものであってもよいし、ガラス基板、石英基板もしくはプラスチック
基板上にTFTで駆動回路を形成したものであってもよい。また、片側に一つのICを設
けた例を説明しているが、片側に複数個に分割して設けても構わない。
【0086】
次に、本発明を適用して作製したアクティブマトリクス型の発光装置の例について、図
8を用いて説明する。なお、図8(A)は発光装置を示す上面図であり、図8(B)は図
8(A)を鎖線A−A’で切断した断面図である。本実施の形態に係るアクティブマトリ
クス型の発光装置は、素子基板1710上に設けられた画素部1702と、駆動回路部(
ソース側駆動回路)1701と、駆動回路部(ゲート側駆動回路)1703と、を有する
。画素部1702、駆動回路部1701、及び駆動回路部1703は、シール材1705
によって、素子基板1710と封止基板1704との間に封止されている。
【0087】
また、素子基板1710上には、駆動回路部1701、及び駆動回路部1703に外部
からの信号(例えば、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、又はリセット信号等)
や電位を伝達する外部入力端子を接続するための引き回し配線1708が設けられる。こ
こでは、外部入力端子としてFPC(フレキシブルプリントサーキット)1709を設け
る例を示している。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリ
ント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、
発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むも
のとする。
【0088】
次に、断面構造について図8(B)を用いて説明する。素子基板1710上には駆動回
路部及び画素部が形成されているが、ここでは、ソース側駆動回路である駆動回路部17
01と、画素部1702が示されている。
【0089】
駆動回路部1701はnチャネル型TFT1723とpチャネル型TFT1724とを
組み合わせたCMOS回路が形成される例を示している。なお、駆動回路部を形成する回
路は、公知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また
、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしも
その必要はなく、基板上ではなく外部に駆動回路を形成することもできる。
【0090】
また、画素部1702はスイッチング用TFT1711と、電流制御用TFT1712
と当該電流制御用TFT1712の配線(ソース電極又はドレイン電極)に電気的に接続
された第1の電極層1713とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極層
1713の端部を覆って絶縁物1714が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性ア
クリル樹脂を用いることにより形成する。
【0091】
また、上層に積層形成される膜の被覆性を良好なものとするため、絶縁物1714の上
端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにするのが好ましい。例えば、絶
縁物1714の材料としてポジ型の感光性アクリル樹脂を用いた場合、絶縁物1714の
上端部に曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また
、絶縁物1714として、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或
いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。さ
らに、絶縁物1714としては、有機化合物に限らず無機化合物、例えば、酸化シリコン
、酸窒化シリコン等、有機化合物又は無機化合物の両者を使用することができる。
【0092】
第1の電極層1713上には、発光層を含むEL層1700及び第2の電極層1716
が積層形成されている。第1の電極層1713は上述の第1の電極層302に相当し、第
2の電極層1716は第2の電極層306に相当する。なお、第1の電極層1713をI
TO膜とし、第1の電極層1713と接続する電流制御用TFT1712の配線として窒
化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層膜、或いは窒化チタン膜、アルミニ
ウムを主成分とする膜、窒化チタン膜との積層膜を適用すると、配線としての抵抗も低く
、ITO膜との良好なオーミックコンタクトがとれる。なお、ここでは図示しないが、第
2の電極層1716は外部入力端子であるFPC1709に電気的に接続されている。
【0093】
EL層1700は、少なくとも発光層が設けられており、発光層の他に正孔注入層、正
孔輸送層、電子輸送層又は電子注入層を適宜設ける構成とする。第1の電極層1713、
EL層1700及び第2の電極層1716との積層構造で、発光素子1715が形成され
ている。
【0094】
また、図8(B)に示す断面図では発光素子1715を1つのみ図示しているが、画素
部1702において、複数の発光素子がマトリクス状に配置されているものとする。画素
部1702には、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子をそれぞれ選択的に形
成し、フルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。また、全面に同じ発光色
を発光する発光層を含むEL層を形成し、単色の発光素子を設けてもよく、モノクロ表示
可能な発光装置、或いはエリアカラー表示可能な発光装置としてもよい。また、白色発光
が得られる発光装置として、カラーフィルタと組み合わせることによってフルカラー表示
可能な発光装置としてもよい。
【0095】
さらにシール材1705で封止基板1704を素子基板1710と貼り合わせることに
より、素子基板1710、封止基板1704、およびシール材1705で囲まれた空間1
707に発光素子1715が備えられた構造になっている。なお、空間1707には、不
活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材1705で充填される構
成も含むものとする。
【0096】
なお、シール材1705にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材
料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板17
04に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−R
einforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエス
テルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0097】
以上のようにして、本発明を適用して発光装置を得ることができる。アクティブマトリ
クス型の発光装置は、TFTを作製するため、1枚あたりの製造コストが高くなりやすい
が、本発明を適用することで、発光素子を形成する際の材料のロスを大幅に削減すること
が可能である。よって、コスト削減を図ることができる。また、本発明を適用することで
、ホスト材料に分散された発光材料(ドーパント材料)からなる発光層も容易に形成でき
、さらに含有する発光材料の量も制御しやすくなる。
【0098】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【0099】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明に係る発光装置の作製を可能とする成膜装置の例について説
明する。本実施の形態に係る成膜装置の断面の模式図を図9、図10に示す。
【0100】
図9(A)において、成膜室801は、真空チャンバーであり、第1のゲート弁802
、及び第2のゲート弁803によって他の処理室と連結している。また、成膜室801内
には、第1の基板支持手段804である基板支持機構と、第2の基板支持手段805であ
る被成膜基板支持機構と、熱源806として上下移動可能なヒーターとを少なくとも有し
ている。
【0101】
まず、他の成膜室において、支持基板である第1の基板807上に材料層808を形成
する。本実施の形態において、第1の基板807は図1に示した第1の基板100に相当
し、材料層808は第1の有機化合物層104に相当する。ここでは、第1の基板807
として、銅を主材料とした四角平板状の基板を用いる。また、材料層808としては、蒸
着可能であり、蒸着温度が異なる複数の材料が混合された混合層を用いる。なお、第1の
基板807としては、被成膜基板と面積が同じ、若しくはそれより大きい面積を有してい
れば特に形状は限定されない。また、材料層808の形成方法は湿式法であれば特に限定
されず、スピンコート法、印刷法、またはインクジェット法などを用いる。
【0102】
他の成膜室から第1の基板807を成膜室801に搬送し、基板支持機構にセットする
。また、第1の基板807における材料層808の形成されている面と、被成膜基板であ
る第2の基板809の被成膜面とが、対向するように、第1の基板807を基板支持機構
に固定する。
【0103】
第2の基板支持手段805を移動させて、第1の基板807と第2の基板809の基板
間隔が距離dとなるように近づける。なお、距離dは、第1の基板807上に形成された
材料層808の表面と、第2の基板809の表面との距離で定義する。また、第2の基板
809上に何らかの層(例えば、電極として機能する導電層や隔壁として機能する絶縁層
等)が形成されている場合、距離dは、第1の基板807上の材料層808の表面と、第
2の基板809上に形成された層の表面との距離で定義する。ただし、第2の基板809
或いは第2の基板809上に形成された層の表面に凹凸を有する場合は、距離dは、第1
の基板807上の材料層808の表面と、第2の基板809或いは第2の基板809上に
形成された層の最表面との間の最も短い距離で定義する。ここでは、距離dを2mmとす
る。また、第2の基板809が石英基板のように硬く、ほとんど変形(反り、撓みなど)
しない材料であれば、距離dは0mmを下限として近づけることができる。また、図9で
は基板間隔の制御は、基板支持機構を固定し、被成膜基板支持機構を移動させる例を示し
ているが、基板支持機構を移動させ、被成膜基板支持機構を固定する構成としてもよい。
また、基板支持機構と被成膜基板支持機構の両方を移動させても良い。なお、図9(A)
では、第2の基板支持手段805を移動させて、第1の基板と第2の基板を近づけて距離
dとした段階の断面を示している。
【0104】
また、基板支持機構及び被成膜基板支持機構は、上下方向だけでなく、水平方向にも移
動させる機構としてもよく、精密な位置合わせを行う構成としてもよい。また、精密な位
置合わせや距離dの測定を行うため、成膜室801にCCDなどのアライメント機構を設
けてもよい。また、成膜室801内を測定する温度センサや、湿度センサなどを設けても
よい。
【0105】
基板間隔を距離dに保持した状態で、熱源806を支持基板に近づける。なお、均一な
加熱が行われるように、熱源806と支持基板は広い面積で接することが好ましい。図9
(A)では、支持基板の下方で上下移動可能なヒーターを用いている。
【0106】
熱源806を支持基板に近接させると、直接的な熱伝導により短時間に支持基板上の材
料層808を加熱して蒸発させ、対向して配置された第2の基板809の被成膜面(即ち
、下平面)に蒸着材料が成膜される。図9(A)に示す成膜装置において、予め第1の基
板807に材料層808が均一な膜厚で得られていれば、膜厚モニターを設置しなくとも
、第2の基板に膜厚均一性の高い成膜を行うことができる。また、従来の蒸着装置は、基
板を回転させていたが、図9(A)に示す成膜装置は、被成膜基板を回転させずに固定し
て成膜するため、割れやすい大面積のガラス基板への成膜に適している。また、図9(A
)に示す成膜装置は、成膜中、支持基板も回転せずに固定している。
【0107】
また、待機時の熱源(ヒーター)の輻射による支持基板上の材料層808への熱の影響
を緩和するため、待機時(蒸着処理前)は熱源806と第1の基板807(支持基板)と
の距離を大きく保持してもよい。
【0108】
図9(A)に示す成膜装置は、従来の蒸着装置に比べ大幅にチャンバー内の容積を小さ
くすることができる。さらに、チャンバー内の容積を小さくするため、熱源806と第1
の基板807(支持基板)の間に、断熱化のための開閉式のシャッターを設けても良い。
【0109】
また、熱源806はヒーターに限定されず、短時間に均一な加熱を行える加熱手段であ
ればよい。例えば、図9(B)に示すようにランプ810を設けてもよい。なお、図9(
B)において、図9(A)と共通の部分には同じ符号を用いて説明する。図9(B)に示
す例では、ランプ810は第1の基板の下方に固定して設けられており、ランプ810が
点灯した直後に第2の基板809の下平面に成膜が行われる。なお、図9(B)では、ラ
ンプ810を点灯する前の、第1の基板と第2の基板とを基板距離dまで近づけた段階の
断面を示している。
【0110】
ランプ810としては、フラッシュランプ(キセノンフラッシュランプ、クリプトンフ
ラッシュランプなど)、キセノンランプ、メタルハライドランプのような放電灯、ハロゲ
ンランプ、タングステンランプのような発熱灯を用いることができる。フラッシュランプ
は短時間(0.1ミリ秒乃至10ミリ秒)で非常に強度の高い光を繰り返し、大面積に照
射することができるため、第1の基板の面積にかかわらず、効率よく均一に加熱すること
ができる。また、発光させる時間の間隔を変えることによって第1の基板の加熱の制御も
できる。また、フラッシュランプは寿命が長く、発光待機時の消費電力が低いため、ラン
ニングコストを低く抑えることができる。また、フラッシュランプを用いることにより、
急速加熱が容易となり、ヒーターを用いた場合の上下機構やシャッター等を簡略化できる
。従って、さらなる成膜装置の小型化が図れる。
【0111】
また、図9(B)では、ランプ810を成膜室801内に設置する例を示しているが、
成膜室の内壁の一部を透光性部材として、成膜室の外側にランプ810を配置してもよい
。成膜室801の外側にランプ810を配置すると、ランプ810のライトバルブの交換
などのメンテナンスを簡便なものとすることができる。
【0112】
また、図9(C)は、第2の基板809の温度を調節する機構を備えた成膜装置の例を
示す。図9(C)において、図9(A)、(B)と共通の部分には同じ符号を用いて説明
する。図9(C)では、第2の基板支持手段805に冷媒を流すチューブ811が設けら
れている。冷媒を流すチューブ811により、第2の基板支持手段805は、コールドプ
レートとすることができる。なお、チューブ811は、第2の基板支持手段805の上下
移動に追随できるような仕組みとなっている。なお、ここでは冷媒ガスや、液体の冷媒を
流すチューブを用いた例を示したが、冷却する手段として、ペルチェ素子などを第2の基
板支持手段805に設けてもよい。
【0113】
蒸発材料の異なる材料層を積層する場合に、図9(C)の成膜装置は有用である。例え
ば、第2の基板に既に第1の材料層が設けられている場合、その上に第1の材料層よりも
蒸着温度が高い第2の材料層を積層することができる。図9(A)においては、第2の基
板と第1の基板が近接するため、第2の基板に予め成膜されている第1の材料層が、蒸発
してしまう恐れがある。そこで、図9(C)の成膜装置とすると、冷却機構によって第2
の基板に予め成膜されている第1の材料層の蒸発を抑えつつ、第2の材料層を積層するこ
とができる。
【0114】
また、冷却機構だけでなく、第2の基板支持手段805にヒーターなどの加熱手段を設
けてもよい。第2の基板の温度を調節する機構(加熱または冷却)を設けることで、基板
の反りなどを抑えることができる。
【0115】
なお、図9(A)乃至(C)には、被成膜基板の成膜面が下方となるフェイスダウン方
式の成膜装置の例を示したが、図10(A)、10(B)に示すようにフェイスアップ方
式の成膜装置を適用することもできる。
【0116】
図10(A)において、成膜室901は、真空チャンバーであり、第1のゲート弁90
2、及び第2のゲート弁903によって他の処理室と連結している。また、成膜室901
内には、第1の基板支持手段905である被成膜基板支持機構と、第2の基板支持手段9
04である基板支持機構と、熱源906として上下移動可能なヒーターとを少なくとも有
している。
【0117】
成膜の手順は、まず、他の成膜室において、支持基板である第2の基板907上に材料
層908を形成する。本実施の形態において、第2の基板907は図1に示した第1の基
板100に相当する。第2の基板907としては、被成膜基板と面積が同じ、若しくはそ
れより大きい面積を有していれば特に形状は限定されない。また、材料層908は第1の
有機化合物層104に相当し、蒸着可能であり、蒸着温度の異なる複数の材料を含有する
。材料層908の形成方法は湿式法であれば特に限定されず、スピンコート法、印刷法、
またはインクジェット法などを用いる。
【0118】
他の成膜室から第2の基板907を成膜室901に搬送し、基板支持機構にセットする
。また、第2の基板907における材料層908の形成されている面と、第1の基板90
9の被成膜面とが、対向するように基板支持機構に第2の基板を固定する。また、図10
(A)に示すように、この構成は、基板の成膜面が上方となるからフェイスアップ方式の
例を示している。フェイスアップ方式の場合、撓みやすい大面積のガラス基板をフラット
な台に載せる、或いは複数のピンで支持することで基板のたわみをなくし、基板全面にお
いて均一な膜厚が得られる成膜装置とすることができる。
【0119】
第1の基板支持手段905を移動させて、第2の基板907と第1の基板909を近づ
けて距離dとする。なお、距離dは、第2の基板907に形成された材料層908の表面
と、第1の基板909の表面との距離で定義する。また、第1の基板909上に何らかの
層(例えば、電極として機能する導電層や隔壁として機能する絶縁層等)が形成されてい
る場合、距離dは、第2の基板907の材料層908の表面と、第1の基板909上に形
成された層の表面との距離で定義する。ただし、第1の基板909或いは第1の基板90
9に形成された層の表面に凹凸を有する場合は、距離dは、第2の基板907上の材料層
908の表面と、第1の基板909或いは第1の基板909上に形成された層の最表面と
の間の最も短い距離で定義する。ここでは、距離dを5mmとする。また、基板支持機構
を固定し、被成膜基板支持機構を移動させる例を示したが、基板支持機構を移動させ、被
成膜基板支持機構を固定する構成としてもよい。また、基板支持機構と被成膜基板支持機
構の両方を移動させて距離dを調節しても良い。
【0120】
図10(A)に示すように基板距離dを保持した状態で、熱源906を近づけて支持基
板に近接させる。なお、均一な加熱が行われるように、熱源906と支持基板は広い面積
で接することが好ましい。図10(A)では、支持基板の上方で上下移動可能なヒーター
を用いている。
【0121】
熱源906を近づけて支持基板に近接させると、直接的な熱伝導により短時間に支持基
板上の材料層908を加熱して蒸発させ、対向して配置された第1の基板909の被成膜
面(即ち、上平面)に蒸着材料が成膜される。このようにすることで、従来の大容量のチ
ャンバーである蒸着装置に比べチャンバー容量が大幅に小さい小型の成膜装置を実現でき
る。
【0122】
また、熱源906はヒーターに限定されず、短時間に均一な加熱を行える加熱手段であ
ればよい。例えば、図10(B)に示すようにランプ910を設けてもよい。なお、図1
0(B)において、図10(A)と共通の部分には同じ符号を用いて説明する。図10(
B)に示す例では、ランプ910は第2の基板の上方に固定して設けられており、ランプ
910が点灯した直後に第1の基板909の上平面に成膜が行われる。
【0123】
なお、図9(A)乃至(C)及び図10(A)、(B)では基板横置き方式の成膜装置
の例を示したが、図10(C)に示すように基板縦置き方式の成膜装置を適用することも
できる。
【0124】
図10(C)において、成膜室951は、真空チャンバーである。また、成膜室951
内には、第1の基板支持手段954である基板支持機構と、第2の基板支持手段955で
ある被成膜基板支持機構と、熱源としてランプ960と少なくとも有している。
【0125】
成膜室951は、図示しないが、被成膜基板が縦置きで搬送される第1の搬送室と連結
している。また、図示しないが、支持基板が縦置きで搬送される第2の搬送室と連結して
いる。また、本明細書では、基板面が水平面に対して垂直に近い角度(70度乃至110
度の範囲)にすることを基板の縦置きと呼ぶ。大面積のガラス基板などは撓みが生じやす
いため、縦置きで搬送することが好ましい。
【0126】
また、熱源は、ヒーターよりもランプ960を用いて加熱するほうが、大面積のガラス
基板に適している。
【0127】
成膜の手順は、まず、他の成膜室において、支持基板である第1の基板957の一方の
面に材料層958を形成する。なお、第1の基板957は、図1に示した第1の基板10
0に相当し、材料層958は第1の有機化合物層104に相当する。
【0128】
次に、他の成膜室から第1の基板957を成膜室951に搬送し、基板支持機構にセッ
トする。また、第1の基板957における材料層958の形成されている面と、第2の基
板959の被成膜面とが、対向するように基板支持機構に第1の基板957を固定する。
【0129】
次に、基板距離dを保持した状態で、ランプ960から光を照射して支持基板を急速に
加熱する。支持基板を急速に加熱すると、間接的な熱伝導により短時間に支持基板上の材
料層958を加熱して蒸発させ、対向して配置された被成膜基板である第2の基板959
の被成膜面に蒸着材料が成膜される。このようにすることで、従来の大容量のチャンバー
である蒸着装置に比べチャンバー容量を大幅に小さい小型の成膜装置を実現できる。
【0130】
また、本実施の形態に示した成膜装置を複数設け、マルチチャンバー型の製造装置にす
ることができる。勿論、他の成膜方法の成膜装置との組み合わせも可能である。また、本
実施の形態に示した成膜装置を直列に複数並べて、インライン型の製造装置にすることも
できる。
【0131】
また、本実施の形態で示した図9(A)乃至図10(C)の成膜装置において、第1の
基板807、第2の基板907、又は第1の基板957である支持基板として導電性基板
を適用し、該支持基板に電流を流して加熱を行い、蒸着処理を行うことも可能である。こ
の場合、支持基板そのものも熱源の一部として機能する。
【0132】
このような成膜装置を用い、本発明に係る発光装置を作製することが可能である。本発
明は、蒸着源を湿式法で容易に準備できる。また、蒸着源をそのまま蒸着すればよいため
、膜厚モニターを不要にできる。よって、成膜工程を全自動化でき、スループットの向上
を図ることができる。また、成膜室内壁に蒸着材料が付着することも防止でき、成膜装置
のメンテナンスを簡便にすることができる。
【0133】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【0134】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明を適用して作製した発光装置を用いて完成させた様々な電気
器具について、図11を用いて説明する。
【0135】
本発明に係る発光装置を適用した電気器具として、テレビジョン、ビデオカメラ、デジ
タルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビ
ゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型
パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話
、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはデジ
タルビデオディスク(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を
備えた装置)、照明器具などが挙げられる。これらの電気器具の具体例を図11に示す。
【0136】
図11(A)は表示装置であり、筐体8001、支持台8002、表示部8003、ス
ピーカー部8004、ビデオ入力端子8005等を含む。本発明を用いて形成される発光
装置をその表示部8003に用いることにより作製される。なお、表示装置は、パーソナ
ルコンピュータ用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用装置が含まれる
。本発明を適用することでスループットを向上できるため、表示装置の製造における生産
性を向上させることができる。また、表示装置の製造における材料のロスを削減できるた
め、製造コストの低減を図ることができ、安価な表示装置を提供することができる。
【0137】
図11(B)はノート型パーソナルコンピュータであり、本体8101、筐体8102
、表示部8103、キーボード8104、外部接続ポート8105、マウス8106等を
含む。本発明の成膜装置を用いて形成された発光素子を有する発光装置をその表示部81
03に用いることにより作製される。本発明を適用することでスループットを向上できる
ため、表示装置の製造における生産性を向上させることができる。また、表示装置の製造
における材料のロスを削減できるため、製造コストの低減を図ることができ、安価なノー
ト型パーソナルコンピュータを提供することができる。
【0138】
図11(C)はビデオカメラであり、本体8201、表示部8202、筐体8203、
外部接続ポート8204、リモコン受信部8205、受像部8206、バッテリー820
7、音声入力部8208、操作キー8209、接眼部8210等を含む。本発明の成膜装
置を用いて形成された発光素子を有する発光装置をその表示部8202に用いることによ
り作製される。本発明を適用することでスループットを向上できるため、表示装置の製造
における生産性を向上させることができる。また、表示装置の製造における材料のロスを
削減できるため、製造コストの低減を図ることができ、安価なビデオカメラを提供するこ
とができる。
【0139】
図11(D)は卓上照明器具であり、照明部8301、傘8302、可変アーム830
3、支柱8304、台8305、電源8306を含む。本発明の成膜装置を用いて形成さ
れる発光装置を照明部8301に用いることにより作製される。なお、照明器具には天井
固定型の照明器具または壁掛け型の照明器具なども含まれる。本発明を適用することでス
ループットを向上できるため、表示装置の製造における生産性を向上させることができる
。また、表示装置の製造における材料のロスを削減できるため、製造コストの低減を図る
ことができ、安価な卓上照明器具を提供することができる。
【0140】
図11(E)は携帯電話であり、本体8401、筐体8402、表示部8403、音声
入力部8404、音声出力部8405、操作キー8406、外部接続ポート8407、ア
ンテナ8408等を含む。本発明の成膜装置を用いて形成された発光素子を有する発光装
置をその表示部8403に用いることにより作製される。本発明を適用することでスルー
プットを向上できるため、表示装置の製造における生産性を向上させることができる。ま
た、表示装置の製造における材料のロスを削減できるため、製造コストの低減を図ること
ができ、安価な携帯電話を提供することができる。
【0141】
以上のようにして、本発明に係る発光装置を適用して電気器具や照明器具を得ることが
できる。本発明に係る発光装置の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電気器具に適用
することが可能である。
【0142】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【実施例1】
【0143】
本発明を適用して、ホスト材料にドーパント材料が分散された有機化合物層を実際に成
膜し、ホスト材料にドーパント材料が均一に分散されていることを確認した実験について
、図12、図13を用いて説明する。
【0144】
まず、ホスト材料としてNPBを0.1g、ドーパント材料としてIr(tppr)
(acac)を0.005g準備し、溶媒であるトルエンを10g用いて混合させた。ま
た、支持基板である第1の基板4000として、厚さ0.2mm、面積90mm×90m
mのタングステンを主成分とする基板を準備した。
【0145】
スピンコート法により、第1の基板4000上にNPB及びIr(tppr)(ac
ac)を含む混合液を滴下して第1の有機化合物層4010を形成した。第1の基板40
00の周縁部はアセトンを染みこませた布で拭き、第1の基板4000の周縁部における
第1の有機化合物層4010は除去した。このとき、第1の基板4000の裏面及び側面
に付着した第1の有機化合物層4010も除去した。
【0146】
次に、被成膜基板である第2の基板4012として石英基板を準備した。そして、図1
2(A)に示すように第1の基板4000の第1の有機化合物層4010が設けられてい
る面に対向するように、第2の基板4012を配置した。このとき、第1の基板4000
と第2の基板4012との間にスペーサ4002を設け、第1の基板4000と第2の基
板4012との距離d’は1.4mmとなるようにした。スペーサ4002は、膜厚0.
7mmのガラス片2枚を重ねたものを用いた。また、スペーサ4002は第1の有機化合
物層4010を除去した第1の基板4000周縁部に設けた。
【0147】
次に、第1の基板4000に直流電圧を印加して14.5Aの電流をおよそ1分間流し
た。ここでは第1の基板4000の周縁部の2箇所を導電性の電極用板で挟み、電流を流
した。その結果、第1の有機化合物層4010が加熱され、蒸発して、図12(B)に示
すように、第2の基板4012に第2の有機化合物層4014が形成された。なお、第2
の基板4012に形成された第2の有機化合物層4014は、第1の基板4000周縁部
を除去した状態の第1の有機化合物層4010と略同じ面積に形成された。
【0148】
図13に、第1の有機化合物層4010のトルエン溶液状態の発光スペクトルAと、第
2の有機化合物層4014の薄膜状態での発光スペクトルBを示す。図13において、横
軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。図13に示す発光スペクトルA
及び発光スペクトルBからは、NPB由来とIr(tppr)(acac)由来のピー
クが確認できる。これら2成分のピーク強度の比率はスペクトルA、スペクトルBともほ
ぼ同じであることがわかる。よって、第2の有機化合物層4014は、溶液状態と同じよ
うにドーパント材料がホスト材料に均一に分散されていることがわかった。
【実施例2】
【0149】
本発明を適用して、ホスト材料にドーパント材料が分散された有機化合物層を実際に成
膜し、ドーパント材料の蒸着温度よりも低い温度で蒸着可能であることを確認した実験に
ついて説明する。
【0150】
まず、ホスト材料としてNPBを0.1g、ドーパント材料としてIr(tppr)
(acac)を0.01g準備し、溶媒であるクロロホルムを10g用いて混合させた。
また、支持基板である第1の基板5000として、厚さ0.05mm、面積50mm×5
0mmの銀を主成分とする基板を準備した。
【0151】
スピンコート法により、第1の基板5000上にNPB及びIr(tppr)(ac
ac)を含む混合液を滴下して第1の有機化合物層5010を形成した。なお、第1の基
板5000の周縁部はアセトンを染みこませた布で拭き、第1の基板5000の周縁部に
おける第1の有機化合物層5010は除去した。このとき、第1の基板5000の裏面及
び側面に付着した第1の有機化合物層5010も除去した。
【0152】
次に、被成膜基板である第2の基板5012として石英基板を準備した。そして、図1
5(A)に示すように第1の基板5000の第1の有機化合物層5010が設けられてい
る面に対向するように、第2の基板5012を配置した。第1の基板5000は、スイッ
チ5016がオフ状態であるヒーター5018の上に配置した。なお、ここでは、ヒータ
ー5018の電源は図示しないものとする。また、第1の基板5000と第2の基板50
12との間にスペーサ5002を設け、第1の基板5000と第2の基板5012との距
離d’は1.4mmとなるようにした。スペーサ5002は、膜厚0.7mmのガラス片
2枚を重ねたものを用いた。また、スペーサ5002は第1の有機化合物層5010を除
去した第1の基板5000周縁部に設けた。
【0153】
次に、図15(B)に示すようにスイッチ5016をオンにし、ヒーターの設定温度を
300℃程度にして、第1の有機化合物層5010を加熱したところ、第2の基板501
2に第2の有機化合物層5014が形成されていた。なお、第2の基板5012に形成さ
れた第2の有機化合物層5014は、第1の基板5000周縁部を除去した状態の第1の
有機化合物層5010と略同じ面積に形成された。
【0154】
次に、ドーパント材料のみ含有する有機化合物層を成膜した実験について説明する。な
お、第1の基板5200、第2の基板5212、スペーサ5202、ヒーター5218、
スイッチ5216は、それぞれ第1の基板5000、第2の基板5012、スペーサ50
02、ヒーター5018、スイッチ5016に相当する。
【0155】
先の実験でドーパント材料として用いたIr(tppr)(acac)を0.1gの
みを準備し、溶媒であるクロロホルムを10g用いて混合させた。その溶液を、スピンコ
ート法により、第1の基板5200上に滴下して第1の有機化合物層5210を形成した
。第1の基板5200の周縁部はアセトンを染みこませた布で拭き、第1の基板5200
の周縁部における第1の有機化合物層5210は除去した。このとき、第1の基板520
0の裏面及び側面に付着した第1の有機化合物層5210も除去した。
【0156】
次に、図15(C)に示すように第1の基板5200の第1の有機化合物層5210が
設けられている面に対向するように、第2の基板5212を配置した。第1の基板520
0は、スイッチ5216がオフ状態であるヒーター5218の上に配置した。なお、ここ
では、ヒーター5218の電源は図示しないものとする。また、第1の基板5200と第
2の基板5212との間にスペーサ5202を設け、第1の基板5200と第2の基板5
212との距離d’は1.4mmとなるようにした。また、スペーサ5202は第1の有
機化合物層5210を除去した第1の基板5200周縁部に設けた。
【0157】
次に、図15(D)に示すようにスイッチ5216をオンにし、第1の有機化合物層5
210を加熱した。第1の有機化合物層5210は、ヒーター5218の温度がおよそ3
50℃になったときに蒸着が開始した。そのままヒーター温度を350℃程度に保持して
30分以上加熱したところ、第2の基板5212に第2の有機化合物層5214が形成さ
れた。なお、第2の基板5212に形成された第2の有機化合物層5214は、第1の基
板5200周縁部を除去した状態の第1の有機化合物層5210と略同じ面積に形成され
た。
【0158】
以上より、ドーパント材料であるIr(tppr)(acac)をホスト材料に分散
した有機化合物層を蒸着する場合は、ドーパント材料のみを含有する有機化合物層を蒸着
する場合よりも、低い加熱温度で成膜できることがわかった。
【0159】
また、ドーパント材料として用いたIr(tppr)(acac)は、優れた特性を
有する赤色の発光材料である。しかし、Ir(tppr)(acac)は、蒸発温度(
昇華温度)が320℃、分解温度が330℃と非常に近いため、蒸着ボートやルツボなど
を用いた従来の蒸着法で成膜すると、大部分が蒸着されずに分解されてしまうという問題
があった。しかしながら、本発明を適用することで、蒸着処理の際の加熱温度を低くでき
るため、ドーパント材料であるIr(tppr)(acac)を分解せず、且つホスト
材料であるNPBに分散された膜を成膜できることがわかった。したがって、本発明は、
このように単体では蒸着が制御困難な材料、例えば蒸着温度と分解温度の差が近い材料の
蒸着に、特に有効であることがわかった。
【符号の説明】
【0160】
100 第1の基板
102 第2の基板
104 第1の有機化合物層
106 第2の有機化合物層
110 ヒーター
150 電源
152 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板は、第1の有機化合物と第2の有機化合物とを含有する第1の層を有し、
前記第2の有機化合物の蒸着温度は、前記第1の有機化合物の蒸着温度よりも高く、
前記第1の層において、前記第1の有機化合物は前記第2の有機化合物よりも多く含まれており、
第2の基板は、第1の電極を有し、
前記第1の基板上の前記第1の層と、前記第2の基板上の前記第1の電極とを対向させ、
前記第1の層を、前記第1の有機化合物の蒸着温度以上前記第2の有機化合物の蒸着温度未満の温度に加熱し、前記第1の電極上に第2の層を形成し、
前記第2の層上に第2の電極を形成する発光装置の作製方法。
【請求項2】
請求項1または請求項2において、
前記第1の層は、光を照射することにより加熱されることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項3】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記第1の基板上の前記第1の層と、前記第2の基板上の前記第1の電極との距離を50mm以下となるように対向させることを特徴とする発光装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−84613(P2013−84613A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−278788(P2012−278788)
【出願日】平成24年12月21日(2012.12.21)
【分割の表示】特願2008−96755(P2008−96755)の分割
【原出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】