説明

発光装置の製造方法、電子機器

【課題】 画素領域を区画する無機隔壁と有機隔壁との位置ずれを容易かつ確実に防止することができる発光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 発光装置1の製造方法において、基板20上に第1電極23を形成する工程と、第1電極23上に無機絶縁材料層71を形成する工程と、無機絶縁材料層71上の所定位置に有機材料からなる第1隔壁74を形成する工程と、第1隔壁74をマスクとして無機絶縁材料層71をエッチングして第2隔壁72を形成すると共に第1電極23を露出させる工程と、第1隔壁74及び第2隔壁72に囲まれた領域に有機機能材料を液滴吐出法により配置して第1電極23上に有機機能層60を形成する工程と、有機機能層60上に第2電極50を形成する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと称す)素子を備えた有機EL装置が注目されている。有機EL素子は、対向する一対の電極間に有機EL層、すなわち発光層を有して構成されたもので、特にフルカラー表示を行う場合には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色に対応する発光波長帯域を持ち、これにより各色の発光をなす発光層(有機EL層)が備えられて構成されている。
【0003】
発光層については、液滴吐出法を用いて、高分子材料を所望位置に所定量配す技術が知られている。このように液滴吐出法により高分子材料を配置する場合には、発光層を形成する画素領域を予め隔壁で囲んでおき、この隔壁内に高分子材料が良好に配置されるようにする方法が行われている。
この際、隔壁の形状が変動して、これに囲まれる画素領域内の面積が変動すると、隔壁内に形成される発光層を含む機能層の膜厚にばらつきが生じてしまう。各有機EL層の発光特性に差が生じてしまう。すると、結果として有機EL装置の表示品質が損なわれてしまうことになる。
そこで特許文献1等に開示されるように、隔壁の寸法のばらつきを抑えることで、有機EL装置の表示品質の低下を防止し、表示品質を高める技術がある。
【特許文献1】特開2005−11572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発光層を形成する画素領域を区画する隔壁としては、無機絶縁材料からなる無機隔壁と有機材料からなる有機隔壁とを積層させて形成するものがある。この場合、無機隔壁と有機隔壁をそれぞれ均一な形状に形成したとしても、無機隔壁と有機隔壁との配置位置にずれが生じると、無機隔壁及び有機隔壁で囲まれた各画素領域の形状に偏りが発生する。そして、画素領域の形状に偏り(非対称的形)があると、機能層が偏在して略均一な膜厚に形成することが困難となる。
このため、上述した技術を用いたとしても、発光層を含む機能層の膜厚が不均一となり、有機EL層の発光特性の悪化や寿命低下を招いてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、画素領域を区画する無機隔壁と有機隔壁との位置ずれを容易かつ確実に防止することができる発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置の製造方法、電子機器では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
第1の発明は、発光装置の製造方法において、基板上に第1電極を形成する工程と、前記第1電極上に無機絶縁材料層を形成する工程と、前記無機絶縁材料層上の所定位置に有機材料からなる第1隔壁を形成する工程と、前記第1隔壁をマスクとして前記無機絶縁材料層をエッチングして第2隔壁を形成すると共に前記第1電極を露出させる工程と、前記第1隔壁及び前記第2隔壁に囲まれた領域に有機機能材料を液滴吐出法により配置して前記第1電極上に有機機能層を形成する工程と、前記有機機能層上に第2電極を形成する工程と、を有するようにした。
この発明によれば、第1隔壁と第2隔壁とがセルフアラインメトにより形成されるので、第1隔壁及び第2隔壁に囲まれた領域の形状が偏りのない、略対象的な形状に形成される。これにより、この領域内に配置される有機機能層が偏りのない略均一な膜厚に形成される。したがって、発光特性に優れ、長寿命の発光装置を得ることができる。
【0007】
また、前記第2隔壁を形成した後に、前記第1隔壁をエッチングして、前記第1電極側に前記第2隔壁の一部を露出させる工程を有するものでは、第1隔壁が第2隔壁に覆い被さった状態(オーバーハング)で形成されることが回避されるので、有機機能層に気泡等が混在する不都合を抑制できる。
また、前記第1隔壁をエッチングするに先立って、前記第1隔壁上に耐エッチング層を配置する工程を有するものでは、耐エッチング層により第1隔壁の上面がエッチングされないようにすることで、第1隔壁の厚みを略均一に維持することができる。これにより、有機機能層を均一に形成することが可能となる。
【0008】
第2の発明は、電子機器が、第1の発明の製造方法により製造された発光装置を備えるようにした。
この発明によれば、発光特性等に優れた表示部等を備える、高品質な電子機器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の発光装置の製造方法、電子機器の実施形態について図を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る有機EL装置の配線構造を示す模式図である。
有機EL装置(発光装置)1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下では、TFTと略記する)を用いたアクティブマトリクス方式の有機EL装置である。なお、以下に示す各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならせてある。
【0010】
有機EL装置1は、複数の走査線101と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103とがそれぞれ配線された構成を有すると共に、走査線101と信号線102の各交点付近に、画素領域Xが設けられている。
【0011】
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路100が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続されている。
更に、画素領域Xの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT112と、このスイッチング用TFT112を介して信号線102から共有される画素信号を保持する保持容量113と、この保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT123と、この駆動用TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに電源線103から駆動電流が流れ込む陽極23と、この陽極23と陰極50との間に挟み込まれた発光機能層60とが設けられている。
発光機能層(有機機能層)110は、有機エレクトロルミネッセンス素子に相当するものであり、陽極23及び陰極50から注入される正孔と電子が結合することで、発光現象が生じるようになっている。
【0012】
この有機EL装置1によれば、走査線101が駆動されてスイッチング用TFT112がオン状態になると、そのときの信号線102の電位が保持容量113に保持され、この保持容量113の状態に応じて、駆動用TFT123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT123のチャネルを介して、電源線103から陽極23に電流が流れ、更に発光機能層60を介して陰極50に電流が流れる。発光機能層60は、これを流れる電流量に応じて発光する。そこで、発光はそれぞれ陽極23毎にオン・オフを制御されるから、陽極23は画素電極となっている。
【0013】
次に、本実施形態の有機EL装置1の具体的な態様を、図2〜図4を参照して説明する。
図2は有機EL装置1の構成を模式的に示す平面図、図3は図2のA−B線の断面に対応した図、図4は有機EL装置1の画素Xの平面構造を示す平面図である。
【0014】
有機EL装置1は、電気絶縁性を備える基板20と、この基板20よりも小さいサイズの封止基板30と、が対向配置された構成となっている。基板20と封止基板30との間には、封止樹脂層40(図3参照)が配置されており、両基板20,30を貼り合わせて接着させた構成となっている。
【0015】
基板20上には、スイッチング用TFT(不図示)に接続された陽極23が基板20上にマトリックス状に配置されてなる画素電極領域(不図示)と、画素電極領域の周囲に配置されると共に各陽極23に接続される電源線103(図1参照)と、少なくとも画素電極領域上に位置する平面視ほぼ矩形の画素部3(図2中一点鎖線枠内)とが形成されている。
また、画素部3は、中央部分の表示領域4(図2中二点鎖線枠内)と、表示領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線及び二点鎖線の間の領域)とに区画されている。
【0016】
表示領域4には、それぞれ陽極23を有する発光層64R,64G,64Bが離間して配置されている。また、表示領域4の図中両側には、走査線駆動回路80が配置されている。この走査線駆動回路80はダミー領域5の下側に位置して設けられている。
更に、表示領域4の図中上側には、検査回路90が配置されている。この検査回路90はダミー領域5の下側に位置して設けられている。この検査回路90は、有機EL装置1の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する不図示の検査情報出力手段を備え、製造途中や出荷時に装置の品質を検査できるように構成されている。
【0017】
また、図3に示すように、有機EL装置1は、基板20と封止基板30とが封止樹脂層40によって貼り合わされて構成されている。
基板20としては透明基板が採用され、封止基板30としては金属製基板が採用される。有機EL装置1は、発光機能層60を発光させ、この光を基板20に透過させて出射する、所謂ボトムエミッション型の有機EL装置となる。
【0018】
基板20としては、無アルカリガラスを材料とするガラス基板が採用される。基板20の表面には、不図示の下地絶縁膜を介して駆動用TFT123が形成され、更に、この駆動用TFT123上に層間絶縁層21が形成されている。
【0019】
基板20上に形成された駆動用TFT123は、陽極23を駆動するための駆動用スイッチング素子として機能するものである。駆動用TFT123は、公知のTFT製造技術を用いることにより形成されており、不純物がドーピングされたシリコン膜、ゲート電極、ゲート絶縁膜等が積層された部材である。更に、駆動用TFT123は、発光層64R,64G,64Bの位置に対応して設けられており、後述するように陽極23に各々接続している。
【0020】
陽極(第1電極)23は、透明電極材料によって構成され、印加された電圧によって、正孔を正孔輸送層62に向けて注入するものであり、仕事関数が高く導電性を有している。
陽極23を形成するための材料としては、例えば、金属酸化物が挙げられるが、インジウム錫酸化物(ITO)、もしくは、金属酸化物に亜鉛(Zn)を含有した材料、例えば、酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス透明導電膜(Indium Zinc Oxide、IZO/アイ・ゼット・オー:登録商標)を採用できる。
なおトップエミッション型の有機EL装置の場合には透明電極材料に限るものではなく、特に光透過性を備えた材料を採用する必要はなく、好適な材料であればよい。
陽極23は、駆動用TFT123と接続する。
【0021】
そして、陽極23が形成された基板の表面には、SiO2等の親液性材料を主体とする無機バンク(第2隔壁)72と、アクリル樹脂やポリイミド樹脂等からなる有機バンク(第1隔壁)74が配置される。無機バンク72及び有機バンク74は、陽極23の回りを取り囲むように、2次元的に配置される。
つまり、図4に示すように、有機バンク74及び無機バンク72は、画素電極23の形成領域に対応した平面視略矩形状の開口76を有している。
【0022】
そして、陽極23の上層には、発光機能層60が形成される。すなわち、複数の発光機能層60が、無機バンク72及び有機バンク74によって仕切られる(区画される)構成となっている。
陽極23の上層に形成される発光機能層60は、陽極23と陰極50に挟まれる多層構造を備えており、陽極23側から正孔輸送層62、発光層64が順に形成されたものである。
【0023】
正孔輸送層62は、導電性高分子材料の一つであり、陽極23からの正孔を発光層64に注入するためのものであり、その膜厚は、30nmに形成されている。このような正孔輸送層62を形成する材料としては、特に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液が好適に用いられる。なお、正孔輸送層62の形成材料としては、前記のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、適宜な分散媒、例えば前記のポリスチレンスルフォン酸に分散させたものなどが使用可能である。
【0024】
発光層64は、陽極23から正孔輸送層62を経て注入された正孔と、陰極50から注入された電子とが結合して蛍光を発生させるようになっている。
このような発光層64を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料を用いることができる。具体的には、ポリフルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料、例えば、ルブレン、ペリレン、9,10-ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の材料をドープして用いることもできる。
また、本実施形態の有機EL装置1は、カラー表示を行うべく構成されている。即ち、光の三原色R,G,Bに対応して発光層64R,64G,64Bが形成されている。
【0025】
なお、発光層64と陰極50の間に、電子注入/輸送層を設けた構成を採用してもよい。電子注入/輸送層は、発光層64に電子を注入する役割を果たすものであり、この形成材料としては、特に限定されることなく、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体等が例示される。
なお、電子注入/輸送層は、光透過性を有する程度の膜厚であることが好ましい。このようにすれば陰極50によって反射する発光光が遮蔽されることがなく、発光強度の低下を防止できる。
【0026】
また、陰極(第2電極)50は、表示領域4及びダミー領域5の総面積より広い面積を備え、それぞれを覆うように形成されている。陰極50は、陽極23の対向電極として、電子を発光層64に注入する機能を備える。
陰極50を形成する材料としては、例えばカルシウム金属又はカルシウムを主成分とする合金を発光層64側に積層して第1の陰極層とし、その上層にアルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金、もしくは銀又は銀−マグネシウム合金などを積層して第2の陰極層とした積層体を採用できる。なお、第2の陰極層は第1の陰極層を覆って、酸素や水分などとの化学反応から保護すると共に、陰極50の導電性を高めるために設けられる。従って、陰極50は化学的に安定で仕事関数が低く電気抵抗が低い材料を用いる場合には、単層構造でもよく、また金属材料に限るものではない。
【0027】
そして、陰極50の表面には、封止樹脂層40及び封止基板30が配置される。
封止樹脂層40は、基板20と封止基板30を接着して貼り合わせるものである。また、封止樹脂層40は、発光層64等への酸素及び水分の侵入を防止する機能や、陰極50を構成する無機材料と不安定な有機バンク74との界面の接着性を向上して陰極50の剥離を防止する機能も有する。
封止樹脂層40の具体的な材料としては、親油性で低吸水性を有する高分子材料が好適に採用される。例えば、熱硬化性を有するアクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ポリオレフィン系等の樹脂材料が採用される。また、硬化剤と、モノマー/オリゴマー樹脂材料とを混合させて硬化させる、2液硬化性の樹脂材料を採用してもよい。
【0028】
封止基板30としては、金属製基板が採用される。具体的には、封止基板30は、鉄−ニッケル合金や鉄−ニッケル−コバルト合金からなり、コバール、42ニッケルアロイ、及び36ニッケルアロイのうちのいずれかを採用することが好ましい。
【0029】
このような構成を有する有機EL装置1においては、電源線103(図1参照)から駆動電流が発光機能層60の陽極23に流れ込むと、陽極23と陰極50の間に電位差が生じ、陽極23から正孔輸送層62を経て正孔が、陰極50から電子が発光層64に注入される。これにより、注入された正孔と電子とが結合して発光する。そして、発光層64からの発光光は、基板20を透過して表示領域4へ出射される。
【0030】
次に、本実施形態に係る有機EL装置1の製造方法の一例について、図5,図6を参照して説明する。
図5,図6に示す各断面図は、図2中のA−B線の断面に対応した図である。
【0031】
まず、図5(a)に示すように、基板20上に駆動用TFT123を形成し、更に基板20の全面を覆うように、陽極23となる透明導電膜が形成される。そして、この透明導電膜をパターニングすることにより、陽極23と駆動用TFT123が導通される。
【0032】
次いで図5(b)に示すように、基板20の全面を覆うように、無機バンク62となる無機絶縁材料層71が形成される。なお無機絶縁材料層71は、陽極23からの正孔移動を阻止する正孔移動遮蔽層として機能するものである。
更に図5(c)に示すように、無機絶縁材料層71を覆うように、有機材料からなる有機バンク74を形成する。具体的な有機バンク74の形成方法としては、例えば感光性を有するアクリル樹脂やポリイミド樹脂などを溶媒に溶解したものを、スピンコート法、ディップコート法などの各種塗布法により塗布して有機材料層を形成する。更に有機材料層をフォトリソグラフィー技術によりパターニングして、有機材料層に開口74aを形成することにより、有機バンク74を形成する。
【0033】
次いで図5(d)に示すように、有機バンク74をマスクにして無機絶縁材料層71をエッチングする。すなわち、有機バンク74の開口74aに露出する無機絶縁材料層71をエッチングにより除去する。
無機絶縁材料層71をエッチングする方法としては、弗酸系水溶液を用いるウエットエッチング、弗素系ガスを用いるドライエッチングのいずれであってもよい。
これにより、無機絶縁材料層71に、有機バンク74で囲まれる開口74aに一致する開口72aを形成し、この開口72aの底面に陽極23を露出させる。なお無機絶縁材料層71の一部が除去(開口72aが形成)されることで、有機バンク74の下層に無機バンク72が形成される。
このように、有機バンク74をマスクにして無機絶縁材料層71をエッチングすることで無機バンク72を形成するので、有機バンク74と無機バンク72との平面方向の位置及び形状は必然的に一致する。すなわち、有機バンク74と無機バンク72とはセルフアライメントされて形成されることで、無機バンク72の開口72aと有機バンク74の開口74aからなる開口76の形状が、偏り(位置ずれ)なく形成される。
【0034】
次に、図6(a)に示すように、有機バンク74をエッチングする。
上述したように、有機バンク74をマスクにして無機絶縁材料層71をエッチングすると、無機絶縁材料層71が有機バンク74の内部側まで除去(オーバーハング)されてしまう可能性がある。有機バンク74がオーバーハング状態となると、後工程において正孔輸送層形成材料を配置した場合に、この空間に気泡が混入してしまい均一な膜厚の正孔輸送層を形成することが困難となってしまう。
そこで、有機バンク74の一部をエッチングすることで、無機バンク72を露出させて、有機バンク74のオーバーハングの状態を解消する。
【0035】
有機バンク74をエッチングする方法としては、ウエットエッチング法、ドライエッチング法のいずれであってもよいが、陽極23への汚染等の悪影響を回避するため、ドライエッチング法が好ましい。ドライエッチング法としは、減圧下で行う方法、大気圧下で行う方法があるが、スループット、ランニングコスト、装置コスト等を考慮して選択可能である。
アクリルやポリイミドからなる有機バンク74をドライエッチングする場合には、酸素ガスを用いるが、表面荒れやエッチングレートの低下を防止するために、5〜10%のCF4等を添加することが好ましい。
また、無機バンク72を効率的に露出させるために、異方性の低い(縦方向のエッチング速度と横方向のエッチング速度に違いの小さい)プラズマによるエッチングを行うことが望ましい。異方性の低いエッチングを行うには、例えば減圧下でのプラズマを用いる場合、5〜20Pa程度の比較的高い圧力で行うと良い。プラズマとしては、基板へのバイアスと、プラズマの励起エネルギーを個々に制御可能なICP(誘導結合型プラズマ)やマイクロ波による励起するものが好ましい。これらのプラズマを用い、基板バイアスを0にするか、低い値に制御することで有機バンク74の横方向のエッチング起こり易くし、無機バンク72を効率的に露出させることができる。また、化学反応によるエッチングが主体となるため、有機バンク74の表面が滑らかな状態でエッチングを進めることができる。
【0036】
有機バンク74がエッチングされると、図6(a)に示すように、陽極23を取り囲む開口74aが拡大し、有機バンク74の下層に配置された無機バンク72の一部が露出する。つまり、図4に示すように、陽極23を無機バンク72の開口72aが取り囲み、更にこの無機バンク72を有機バンク74の開口74aが取り囲むように、開口76が形成される。具体的には、無機バンク72が有機バンク74から0.5μm以上突出するように露出させる。
さらに、上記の様な方法で有機バンクのエッチングを行う場合、有機バンクの膜厚を予め厚く形成しておくことが望ましい。例えば、最終的な有機バンクの膜厚を2μmとする場合には、初期には5μmの膜厚に形成しておく。上記の方法で有機バンクを3μmエッチングすることで、エッチング量とほぼ同じ3μm程度の幅の無機バンクを露出させることができる。
【0037】
次いで、熱処理を行うことにより有機バンク74を安定化させる。この熱処理の条件を制御することにより、有機バンク74を一部軟化させて、側面が傾斜を有する様に断面形状を制御しても良い。
さらに、CF4等のフルオロカーボンガスを含む雰囲気中で、プラズマ処理を行うことにより有機バンク74の表面を撥液性にする。陽極23の表面は、有機バンク72をエッチングする際に酸素プラズマにより親液化されているため、有機バンク74上と陽極23上での親液性を制御することができる。
【0038】
次いで、図6(b)に示すように、無機バンク72及び有機バンク74の開口76、すなわち陽極23上に、正孔輸送層62及び発光層64を形成する。
正孔輸送層形成工程では、インクジェット法等の液滴吐出法により、正孔輸送層材料を陽極23上に塗布し、その後、乾燥処理および熱処理を行い、正孔輸送層62を形成する。
同様に、発光層形成工程では、インクジェット法等の液滴吐出法により、発光層形成材料を正孔輸送層62上に吐出し、その後、乾燥処理および熱処理を行うことにより発光層64を形成する。
【0039】
上述したように、有機バンク74と無機バンク72とがセルフアライメントされることで、有機バンク74の開口74aと無機バンク72の開口72aとが位置ずれなく形成されている。これにより、無機バンク72及び有機バンク74で囲まれる開口76(開口72a,74a)内において、有機バンク74の下層から突出(露出)する無機バンク72の幅がいずれの方向も略一定である。この露出する無機バンク72の幅は、有機バンク74の開口部内に液体状の材料を配置する場合の表面の濡れ性に大きく影響を与えるものである。このため、有機バンク74の開口内に配置された液体状の材料は、有機バンク全周に渡っての濡れ性を得ることが出来、偏りの無い配置を行うことが出来る。従って、この液体材料を乾燥することで得られる正孔輸送層62及び発光層64は、略均一な膜厚で、偏りのない略対称的な形状に形成される。
また、有機バンク74と無機バンク72のそれぞれをフォトリソグラフィーにより形成する場合と比べ、露光工程での位置合わせのばらつきを吸収するための余裕を設ける必要が無くなり、発光層64を形成する領域の比率(開口率)を向上することができる。
【0040】
次いで、図6(c)に示すように、陰極50の形成を行う。例えば、イオンプレーティング法等の物理気相成長法により陰極形成材料を成膜して、陰極50とする。このとき陰極50は、発光層64及び有機バンク74の上面を覆うのはもちろん、有機バンク74の外側部を形成する壁面についても、これを覆った状態となるように形成する。
【0041】
そして最後に、基板20と封止基板30の貼り合わせを行う。ここでは、まず、基板20上に形成した陰極50の面上に、陰極50を覆う様に封止樹脂層40を配置した後、減圧雰囲気下において封止基板30を封止樹脂層40上に配置し接着することによって行う。
この様に減圧雰囲気下で接着を行うことにより、封止樹脂層40と基板20との間、もしくは封止樹脂層40と封止基板30との間に、気泡が侵入することを防止できる。このため、気泡を介して発光層64に酸素及び水分が侵入することが防止され、発光層64の発光特性や寿命の低下を抑制できる。
なお、封止樹脂層40の硬化(接着)は基板20をホットプレートにより60℃に加熱することで行う。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態に係る有機EL装置1の製造方法のついて、図7,図8を参照して説明する。
本実施形態は、上記の第1実施形態とは、無機バンク72と有機バンク74の形成方法が異なるもので、他の工程は上記の実施形態と同じである。このため、無機バンク72と有機バンク74の形成方法についてのみ説明する。
【0043】
まず、図7(a)に示すように、陽極23を形成後、無機バンク72となる無機絶縁材料層71を形成する。更に、絶縁材料層71を覆う様に感光性を有する有機材料層73aと、有機材料層73bを形成する。
有機材料層73aは、有機バンク74となるもので、感光性を有するアクリル樹脂やポリイミド樹脂などを溶媒に溶かしたものをスピンコート法、スリットコート法等を用いて塗布する。塗布した材料を熱処理(プリベーク)することで膜化する。
更に有機材料層73a上に有機材料層73bとなる材料を塗布する。有機材料層73bは、無機バンク72を露出させるエッチング工程でのエッチングマスクとなるものである。有機材料層73bは、感光性を有する有機材料層73aとは異なる樹脂を溶媒に溶かしたものを、スピンコート法、スリットコート法を用いて塗布することにより形成する。有機材料層73bとしては、通常のエッチングマスクとして多く用いられるノボラック樹脂等を用いることが可能で、フッ素を含有する或いは膜が安定化する温度が有機材料層73aよりも低い等、有機材料層73aよりも酸素プラズマによるエッチング速度の遅いものを用いる。塗布した材料をプリベークすることで膜化する。
【0044】
次に、図7(b)に示すように、有機材料層73a及び有機材料層73bに所定のパターンで露光し、有機アルカリ溶液による現像を行って、陽極23上に開口部を有するパターン形成する。
そして、図7(c)に示すように、この有機材料層73a及び有機材料層73bをマスクとして、無機絶縁材料層71のエッチングを行い、無機バンク72を形成する。このエッチングは、第1実施形態と同様なウエットエッチング又はドライエッチングにより行うことができる。
【0045】
更に、図7(d)に示すように、無機バンク72の一部を露出させるために、有機材料層73a及び有機材料層73bのエッチングを行う。第1実施形態と同様な酸素プラズマを用いて異方性の低い条件でのエッチングを行う。この時、有機材料層73aは有機材料層73bよりも酸素プラズマによるエッチング速度が早いために有機材料層73aが大きく横方向にエッチングされる。このため、有機材料層73bをエッチングする厚さと比べて大きく有機材料層73aの開口を広げることができる。
そして、図8に示すように、有機材料層73bを全てエッチング除去することで、残された有機材料層73aのパターンが有機バンク74となる。
【0046】
有機材料層73aと有機材料層73bには異なる材料が用いられているため、エッチング中にそのプラズマの発光を観察すると、有機材料層73bが全てエッチングされた時点で発光が変化する。このため有機材料層73bのエッチングの終点検出が可能で、この有機材料層73bの終点を基準としてエッチングを制御することで、再現性の高いエッチングを行うことができる。従って、エッチングの速度が変動した場合でも常に一定の厚さの有機バンク74を形成することができる。
また、有機材料層73a、有機材料層73bの膜厚を極端に厚くすること無く、無機バンク72の露出する部分の幅を大きくすることができる。例えば、有機材料層73aを2μm、有機材料層73bの膜厚を2μmとし、有機材料層73bの酸素プラズマに対するエッチング速度が有機材料層73aの1/3とすると、6μm程度の幅の無機バンク72を露出させることができる。このため、無機バンク72、有機バンク74のパターンの寸法精度を向上することが可能となる。
以降、第1実施形態と同様の工程を用いて有機EL装置1を形成する。
【0047】
上述した有機EL装置1の実施形態では、ボトムエミッション型を例にして説明したが、本発明はこれに限定されることなく、トップエミッション型にも、また、両側に発光光を出射するタイプのものにも適用可能である。
また、アクティブマトリックス型を例にして説明したが、本発明はこれに限定されることなく、パッシブマトリックス型にも適用可能である。
【0048】
上述したように、本発明によれば、無機バンク72と有機バンク74とを位置ずれなく形成することができる。具体的には、無機バンク72の開口72aと有機バンク74の開口74aからなる開口76が偏りのない対象的な形状に形成される。
つまり、従来のように、開口を有する無機バンク72を形成した後に、重ねて開口を有する有機バンク74を形成する場合には、無機バンク72と有機バンク74との位置ずれを解消することは困難であった。無機バンク72が20〜200nm程度の膜厚であるため、無機バンク72を基準(目視)にして有機バンク74を配置することができないので、例えば信号線101と同一層の金属パターンを基準とする間接的な位置合わせを行っていた。このため、無機バンク72の開口と有機バンク74の開口との位置ずれが発生し、偏りのある開口が形成されていた。したがって、この開口に形成される発光層64等が不均一な膜厚で形成されていた。
しかし、本発明によれば、発光層64等が略均一な膜厚で形成されるので、良好な発光特性、長寿命の有機EL装置1が得られる。
【0049】
次に、上述した有機EL装置1を表示部として有する電子機器について、図9を参照して説明する。
図9(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図9(a)において、携帯電話1000は、上述した有機EL装置1を用いた表示部1001を備える。
図9(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図9(b)において、時計1100は、上述した有機EL装置1を用いた表示部1101を備える。
図9(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図9(c)において、情報処理装置1200は、キーボードなどの入力部1202、情報処理装置本体(筐体)1204、上述した有機EL装置1を用いた表示部1206を備える。
図9(d)は、薄型大画面テレビの一例を示した斜視図である。図9(d)において、薄型大画面テレビ1300は、薄型大画面テレビ本体(筐体)1302、スピーカーなどの音声出力部1304、上記有機EL装置1からなる表示部1306を備える。
【0050】
このように、図9に示す電子機器1000,1100,1200,1300は、上記有機EL装置(発光装置)1を備えているので、表示部1001,1101,1206,1306の高品質化、長寿命化が図られたものとなる。
【0051】
また、有機EL装置1を表示部として備える場合に限らず、発光部として備える電子機器であってもよい。例えば、有機EL装置1を露光ヘッド(ラインヘッド)として備えるページプリンタ(画像形成装置)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態に係る有機EL装置1の配線構造を示す模式図である。
【図2】有機EL装置1の構成を示す模式図である。
【図3】図2のA−B線に沿う断面図である。
【図4】画素の平面形状を模式的に示す図である。
【図5】有機EL装置1の製造方法を工程順に示す図である。
【図6】図5に続く工程を示す図である。
【図7】有機EL装置1の製造方法の第2実施形態を工程順に示す図である。
【図8】図7に続く工程を示す図である。
【図9】本実施形態に係る電子機器を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1…有機EL装置(発光装置)、 20…基板、 23…画素電極,陽極(第1電極)、 50…陰極(第2電極)、 60…発光機能層(有機機能層)、 64…発光層、 71…無機絶縁材料層、 72…無機バンク(第2隔壁)、 72a…開口、 74…有機バンク(第1隔壁)、 74a…開口、 76…開口、 1000,1100,1200,1300…電子機器、 1001,1101,1202,1306…表示部(発光装置)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極上に無機絶縁材料層を形成する工程と、
前記無機絶縁材料層上の所定位置に有機材料からなる第1隔壁を形成する工程と、
前記第1隔壁をマスクとして前記無機絶縁材料層をエッチングして第2隔壁を形成すると共に前記第1電極を露出させる工程と、
前記第1隔壁及び前記第2隔壁に囲まれた領域に有機機能材料を液滴吐出法により配置して前記第1電極上に有機機能層を形成する工程と、
前記有機機能層上に第2電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2隔壁を形成した後に、前記第1隔壁をエッチングして、前記第1電極側に前記第2隔壁の一部を露出させる工程を有することを特徴とする請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1隔壁をエッチングするに先立って、前記第1隔壁上の一部に耐エッチング層を配置する工程を有することを特徴とする請求項2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の製造方法により製造された発光装置を備えることを特徴とする電子機器。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−73284(P2007−73284A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257552(P2005−257552)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】