説明

発光装置及びその作製方法

【課題】偏光板を用いることなくコントラストの高い発光装置を提供することを課題とする。特に、カラーフィルターを備えた発光装置に対して、コントラスト制御を簡便にすることを課題とする。
【解決手段】発光装置は、反射電極による発光層からの光の反射を低減させる構成を有することを特徴とする。さらにカラーフィルターにより、該光以外の波長を選択的に吸収させ、コントラストを高めることを特徴とする。その結果、発光素子からの自発光成分のみを考慮して、コントラスト制御を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセンス等の発光を利用する発光装置に係り、特に一対の電極間に発光層を挟んで成る発光素子を備えた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子を有する表示装置(以下、発光装置と呼ぶ)は、液晶表示装置と比較して、広視野角、低消費電力、高応答速度という利点を有しており、その研究開発が盛んに行われている。
【0003】
発光素子は、一対の電極間に発光物質を備えた構成を有しており、該電極の透光性に応じて、発光物質からの光が出現される。
【0004】
例えば、一方向に光を出現させたい場合、該一方向側に設けられた一方の電極に透光性を有する材料を用い、他方の電極を非透光性、つまり反射性を有する材料を用いて形成する。他方の電極による反射を有効に使うことにより、光の取り出し効率を高めることができる。
【0005】
一方、このような反射性を有する材料を電極に用いると、外光の映り込みが問題となる。外光の映り込みを防止するため、偏光板や円偏光板を設ける構成がある。しかし、偏光板等を用いると、発光素子からの光の損失が懸念される。
【0006】
また外光の映り込み防止の方法として、一対の電極間の光学的距離がある数式を満たすようにし、共振器構造を導入し、共振波長と、取り出したい光のスペクトルのピーク波長を一致させた表示装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−178930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1は、第1の電極の発光層側の端面と、第2の電極の発光層側の端面との光学的距離がある数式を満たし、多重干渉により、色純度を向上させた発光素子が記載されている。この光学的距離は、赤色、緑色、青色の発光層の膜厚を異ならせることにより制御している。このように発光層の膜厚を異ならせると、各発光素子の駆動電圧が異なってしまい、特に厚くなるにつれて発光素子の駆動電圧は高くなってしまう。
【0008】
また上記特許文献1に記載の電極において、できるだけ高い反射率を有する材料として、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、タングステン(W)を用いて第1の電極を形成することが記載されている。そしてカラーフィルターにより、配線によって反射された外光を吸収し、コントラストを改善することが記載されている。
【0009】
しかし、反射率の高い材料を第1の電極に用い、これにより反射された外光を吸収するためにカラーフィルターを設けただけでは、外光反射防止の効果が不十分と考えられ、コントラストの低下を招いてしまう。
【0010】
そこで本発明は、コントラストの高い発光装置を提供することを課題とする。具体的には、偏光板を用いることなくコントラストを高めた発光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を鑑み本発明は、発光素子からの光の波長(発光波長と記す)を反射させる側の電極において、発光素子からの発光色の特定波長又は特定波長帯(以下、波長と記す)の反射が低減する発光装置を特徴とする。発光素子からの発光色の波長の反射を低減するために、一対の電極間の電界発光層の膜厚を決定する。このとき電界発光層の膜厚は、該電極において、発光素子からの発光色の波長の反射率が低減するように決定する。
【0012】
本発明の発光装置は、単色発光表示を行うことができ、光の出射方向にカラーフィルターを有することができる。カラーフィルターは、発光素子からの発光波長の透過率が高い材料からなることを特徴とする。言い換えると、カラーフィルターは、発光素子からの発光波長を選択的に透過することを特徴とする。
【0013】
本発明の発光装置において、発光素子からの光の波長が異なるフルカラー表示を行う場合は、それぞれの発光素子からの発光波長の反射率が低減する構成とする。すなわち、それぞれの発光素子における発光波長の反射率が低減された電極を有し、低減させるために電界発光層の膜厚を決定する。
【0014】
具体的な本発明は、第1の電極と、第1の電極に対向して設けられた第2の電極と、第1の電極、及び第2の電極を有する発光素子と、発光素子からの光を透過するカラーフィルターと、を有し、第1の電極における発光素子から出射される光の発光波長の発光波長反射が低減される構成を有することを特徴とする発光装置である。さらに本発明の発光装置において、カラーフィルターを設けることができる。発光波長また該発光装置の作製方法を特徴とする。
【0015】
本発明の別の形態は、第1の電極と、第1の電極に対向して設けられた第2の電極と、第1の電極、及び第2の電極を有する発光素子と、発光素子からの光を透過するカラーフィルターと、を有し、発光素子は全て単色の発光を出射し、第1の電極における前記単色発光素子からの発光波長の反射が低減される構成を有することを特徴とする発光装置である。さらに本発明の発光装置において、カラーフィルター発光波長を設けることができる。また該発光装置の作製方法を特徴とする。
【0016】
本発明の別の形態は、第1の電極と、第1の電極に対向して設けられた第2の電極と、第1の電極と、第2の電極との間に設けられた電界発光層と、第1の電極、第2の電極、電界発光層を有する発光素子と、発光素子からの光を透過するカラーフィルターと、を有し、電界発光層のいずれかの層は、第1の電極による発光素子からの発光波長の反射を低減する厚みを有する構造を有することを特徴とする発光装置である。さらに本発明の発光装置において、カラーフィルター発光波長を設けることができる。また該発光装置の作製方法を特徴とする。
【0017】
本発明の別の形態は、第1の電極と、第1の電極に対向して設けられた第2の電極と、第1の電極と、第2の電極との間に設けられた電界発光層と、第1の電極、第2の電極、電界発光層を有する発光素子と、発光素子からの光を透過するカラーフィルターと、を有し、発光素子は全て単色の発光を出射し、電界発光層のいずれかの層は、第1の電極による単色の発光素子からの発光波長の反射を低減する厚みを有する構造を有することを特徴とする発光装置。さらに本発明の発光装置において、カラーフィルターを設けることができ、前記単色の発光素子からの発光波長の透過率が高い材料からなる。また該発光装置の作製方法を特徴とする。
【0018】
本発明の発光装置において、発光素子からの発光波長の反射を低減する厚みを有する電界発光層のいずれかの層は、バナジウム酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、レニウム酸化物、タングステン酸化物、ルテニウム酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物のいずれかから選択された金属酸化物を有する層を有することを特徴とする発光装置である。また該発光装置の作製方法を特徴とする。
【0019】
本発明において、カラーフィルターとは、色変換層を含んでいてもよい。
【0020】
特に本発明は、該発光色を単色とした発光装置を特徴とする。このような単色発光装置は、フルカラー発光装置と比べて、トランジスタが設けられたTFT基板と、TFT基板に対向する対向基板との距離が大きくても、混色することがなく、視野角依存性がない。またTFT基板と、対向基板とを貼り合わせるとき、アライメントの制約を緩和できる。またカラーフィルターを色毎に作り分ける必要がないため、製造工程が簡便なものとなる。またフルカラー発光装置と同じデザインルールで、精細度を上げることができる。
【0021】
またTFT基板又は対向基板のうち、光の出射方向の基板に、その両面、または片面に反射防止コーティング(ARコート:Anti−Reflection treatment coating)を施してもよい。なお片面とは、発光素子が設けられていない側、所謂対向基板側の面である。
【0022】
またさらに発光装置は、対抗基板側に発光が出射される上面出射型の発光装置に好適である。上面出射型の発光装置に、本発明の電極構造を備えた発光素子を用い、加えてカラーフィルターを用いることによって、外光の映り込みを効果的に防止することができる。またTFT基板側に発光が出射される下面出射型の発光装置の場合にも本発明の電極構造を備えた発光素子を適用することができるが、電極と基板との間に設けられた保護膜、ゲート絶縁膜、配線層を考慮する必要もある。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、電極による不必要な反射を低減した発光素子、及び該発光素子を有する発光装置を提供することができる。そして発光装置が有するカラーフィルター等により、発光素子からの発光のみを透過させることによって、コントラスト等を設定することができる。
【0024】
このような本発明により、偏光板等を必要としない発光装置を提供することができる。その結果、発光素子からの発光が、偏光板等によって減衰することがない。また偏光板等は高価であるが、本発明は偏光板等を必要としないため、コストを抑えることができる。さらに偏光板等は傷つきやすいといった問題もあるが、この問題も生じない。
【0025】
また本発明の単色発光装置に適用することができ、フルカラー発光装置と比べて低コスト化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態では、発光素子からの発光波長の反射率を低下させる構成を有する発光装置について説明する。本実施の形態において、発光装置はカラーフィルターを有し、発光装置は、単色の発光装置の場合で説明する。
【0028】
図1には、第1の電極101、それに対向する第2の電極102、これらの間に第1の電極101から順に、第1の層111、第2の層112、第3の層113が設けられている発光素子を示す。第1の電極101は反射性を有し、第2の電極102は透光性を有する。なお透光性とは、透光性材料を用いて第2の電極102を形成することにより得られるが、非透光性材料であっても透光性を呈する程度にまで薄膜化することによっても得ることができる。そして光の出射方向、つまりに第2の電極102側にカラーフィルター105が設けられている。カラーフィルターは、公知の材料を用い、スクリーン印刷法、又は液滴吐出法等により形成することができる。なお、第1の電極101、第2の電極102、第1の層111乃至第3の層113は蒸着法で形成することができ、さらに大気に曝すことなく連続して形成することができる。
【0029】
そして、第1の電極101は、第1の層111乃至第3の層113のいずれかから出射される発光波長に対する反射率が、低減されることを特徴とする。そしてカラーフィルターは、少なくとも該発光波長を有する可視光を透過することができる。具体的には、第1の電極101での当該反射率を低減するように、第1の層111乃至第3の層113少なくとも一つの層の膜厚を決定する。このとき、以下の実施例で示すように、反射率が10%以下となるように膜厚を決定すると好ましい。特に、第1の層111乃至第3の層113のうち、第1の層111の膜厚を制御するとよい。第1の層111の膜厚は、電子と正孔が再結合する発光層に該当する層に基づきつまり発光波長に基づき決定することができる。その結果、第1の層111乃至第3の層113のいずれかから出射される光の発光波長に対する、第1の電極101の反射率を低くすることができ、発光装置における当該発光波長の反射を低くすることができる。このようにして本発明は、反射光を考慮することなく、第1の層111乃至第3の層113のいずれかから出射される発光のみ(自発光成分のみ)を得ることができる。
【0030】
さらにカラーフィルター105は、上記発光素子からの発光波長の透過率が高くなるようにする。言い換えると、カラーフィルター105は、発光素子からの発光波長を選択的に透過する。その結果、カラーフィルター105は、上記発光色以外を吸収することができ、外光成分は第1の電極101まで入射されない。その結果、コントラストを高めることができる。
【0031】
このような本発明は、自発光成分のみを考慮してコントラスト等を制御することができる。すなわち、第1の電極101からの反射成分の光を考慮することないため、コントラスト等の制御を簡便なものとすることができる。コントラストの制御には、カラーフィルターを用いることができる。
【0032】
一方、特許文献1には、第1の電極に対して、できるだけ高い反射率を有する技術思想が開示されており、本発明の技術的思想と異なっている。
【0033】
すなわち本発明は、特定の光を呈する発光素子において、反射性を有する第1の電極による該光の反射を小さくし、該光の波長以外をカラーフィルター105で抑えることにより、偏光板のような効果を奏することができる。このような本発明の発光装置は、第1の電極101に対向する第2の電極102側から、光が出射する上面出射型の発光装置に好適である。
【0034】
また本発明は、第1の層111乃至第3の層113のいずれかの膜厚を異ならせるので、いずれか層を通常より厚膜化する必要がある。そこで、厚膜化する層に、有機化合物と、無機化合物である金属酸化物とが混在した層(単に金属酸化物を有する層とも記す)を用いることを特徴とする。なお、混在した層とは、有機化合物と無機化合物とが混成された層や積層された層が含まれる。
【0035】
一般に、発光素子の層を厚膜化すると、駆動電圧が増加してしまうため、好ましくなかった。しかし、有機化合物と、金属酸化物とが混在した層を用いると、駆動電圧自体を低くすることができ、さらには厚膜化しても駆動電圧が高くならない。
【0036】
また有機化合物と、無機化合物とが混在した層を用いることによって、該有機化合物の結晶化を抑制することができ、抵抗の増加を伴わずに厚膜化することが可能となる。そのため、基板上にゴミや汚れ等に起因する凹凸がある場合であっても、凹凸の影響をほとんど受けない。従って、凹凸に起因する第1の電極101と、第2の電極102とのショート等の不良を防止することができる。その結果、量産性を高めることもできる。
【0037】
また本実施の形態では、単色発光装置の場合で説明したが、フルカラー発光装置としてもよい。フルカラー発光装置の場合、例えば図12に示すように、カラーフィルター105R、105G、105Bを、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれかを出現させたい領域毎に、それぞれ設ければよい。そして、第1の電極101において、各RGB発光素子の発光波長が低反射となるように、各RGB発光素子の第1の層111乃至第3の層113のいずれか、好ましくは第1の層111の膜厚を制御する。
【0038】
以上により、第1の電極101での発光素子からの光の反射を低減し、カラーフィルター105により該発光素子からの発光色以外の波長の透過を防止させた発光装置を得ることができる。その結果、発光素子からの光のみを調整することにより、コントラストを高めることができ、偏光板等を必要としない発光装置を提供することができる。
【0039】
(実施の形態2)
本実施の形態では、図1と異なり、第の1電極2101側から、光が出射する下面出射型の発光装置であって、第1の電極101側にカラーフィルター105を設ける場合の形態を図2を用いて説明する。その他の構成は、図1と同様であるため説明を省略する。
【0040】
図2に示すように、本実施の形態において、出射される光の発光波長に対する第2の電極102の反射率を低減させ、発光装置における当該発光波長の反射を低くすることができる。反射率を低減させるため、第1の層111乃至第3の層113のいずれかの膜厚を決定することを特徴とする。このとき、第1の層111乃至第3の層113のうち電子と正孔が再結合する発光層と、第2の電極102との間にある第3の層113の膜厚を決定するとよい。さらに厚膜化する必要のある層には、有機化合物と金属酸化物とが混在した層を用いると、駆動電圧が高くならず好ましい。
【0041】
さらに第1の電極101側にカラーフィルター105を設ける場合、第1の電極101の下方(第1の電極と基板との間に相当する)には、薄膜トランジスタを構成する複数の絶縁膜等が積層して設けられている。そのため、これら絶縁膜間等で反射する光までも考慮して、第1の層111乃至第3の層113の膜厚を決定すると好ましい。また、光が通過する領域では、該絶縁膜等を除去してもよい。
【0042】
また本実施の形態では、単色発光装置の場合で説明したが、フルカラー発光装置としてもよい。フルカラー発光装置の場合、図13に示すようにカラーフィルター105R、105G、105Bを、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれかを出現させたい領域毎に、それぞれ設ければよい。そして、第2の電極102において、各RGB発光素子の発光波長が低反射となるように、各RGB発光素子の第1の層111乃至第3の層113のいずれか、好ましくは第3の層113の膜厚を決定すればよい。
【0043】
以上により、第2の電極102での発光素子からの光の反射を低減し、カラーフィルター105により該発光素子からの発光色以外の波長の透過を防止することができる。その結果、発光素子からの光のみを調整することにより、コントラストを高めることができ、偏光板等を必要としない発光装置を提供することができる。
【0044】
(実施の形態3)
本実施の形態では、発光素子の構造について説明する。
【0045】
図3に示すように、本発明の発光素子は、対向する第1の電極101、第2の電極102を有し、第1電極101から順に、第1の層111、第2の層112、第3の層113が積層されている。このような発光素子は、例えば、第2の電極102の電位よりも第1の電極101の電位が高くなるように電圧を印加すると、第1の層111から第2の層112へ正孔が注入され、第3の層113から第2の層112へ電子が注入される。そして正孔と、電子とが、第2の層112において再結合し、発光物質を励起状態にする。そして、励起状態の発光物質は、基底状態に戻るときに発光する。
【0046】
次いで、これら第1の層111から第3の層113、第1の電極101、及び第2の電極102の材料について説明する。
【0047】
第1の層111は、正孔を発生する層である。このような機能を奏するためには、例えば、正孔輸送性物質と、その物質に対して電子受容性を示す物質とを含む層とにより達成できる。また正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質は、正孔輸送性物質に対して、モル比が0.5〜2(=正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質/正孔輸送性物質)と成るように含まれていることが好ましい。
【0048】
正孔輸送性物質とは、電子よりも正孔の輸送性が高い物質であり、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:α−NPD)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−{4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル}−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物や、フタロシアニン(略称:HPc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等のフタロシアニン化合物等の有機化合物を用いることができる。なお、正孔輸送性物質は、これらに限定されるものではない。
【0049】
また、正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質は、周期表第4族乃至第12族のいずれかから選ばれた金属の酸化物(金属酸化物)を用いることができる。中でも、周期表第4族乃至第8族のいずれかの金属酸化物は電子受容性の高いものが多く、特にバナジウム酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、レニウム酸化物、タングステン酸化物、ルテニウム酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物が好適である。酸化物以外であっても、上記金属の窒化物、酸化窒化物を用いてもよい。なお正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質は、これらに限定されるものではない。
【0050】
そして第1の層111は、有機化合物からなる正孔輸送性物質と、上記金属酸化物からなる正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質とが混在した層から形成すると、好ましい。このような有機化合物と、無機化合物とが混在した層を用いることによって、第1の層111に用いる有機化合物の結晶化を抑制することができ、抵抗の増加を伴わずに第1の層111を厚く形成することが可能となる。そのため、基板上にゴミや汚れ等に起因する凹凸がある場合であっても、第1の層111の厚膜化により凹凸の影響をほとんど受けない。従って、凹凸に起因する第1の電極101と、第2の電極102とのショート等の不良を防止することができる。さらに、上記金属酸化物からなる正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質が混在した層は導電性が高くなるため、厚膜化を図ることができる。このように第1の層111を厚膜化することにより、第1の電極101と、第2の層112とを離すことができるので、金属に起因して発光が消光することを防ぐこともできる。
【0051】
なお第1の層111に、その他の有機化合物を含んでいてもよい。その他の有機化合物には、ルブレン等が挙げられる。ルブレンを加えることにより、信頼性を向上させることができる。
【0052】
この他、第1の層111は、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、コバルト酸化物、銅酸化物のような金属酸化物からなる層としてもよい。また金属酸化物以外に、これら金属元素を有する金属窒化物からなる層としてもよい。
【0053】
このような第1の層111は、蒸着法により形成することができる。第1の層111として、複数の化合物が混在した層を形成する場合には共蒸着法を用いることができる。共蒸着法は、抵抗加熱蒸着同士による共蒸着法、電子ビーム蒸着同士による共蒸着法、抵抗加熱蒸着と電子ビーム蒸着による共蒸着法があり、その他抵抗加熱蒸着とスパッタリング法による成膜、電子ビーム蒸着とスパッタリングによる成膜など、同種、異種方法を組み合わせて形成することができる。また、上記例は2種の材料を含む層を示しているが、3種以上の材料を含む場合も同様に、同種、異種方法を組み合わせて形成することができる。
【0054】
次に、発光層を含む層である第2の層112について説明する。発光層を含む層とは、発光層のみからなる単層であっても、発光層を含む多層でも構わない。具体的な多層を示すと、発光層の他、電子輸送層、及び正孔輸送層のいずれから選ばれた層を含んでいる。図3において、第2の層112が正孔輸送層122、発光層123、電子輸送層124を含む多層の場合を示す。
【0055】
正孔輸送層122は、公知な材料から形成することができる。典型的な例としては、芳香族アミン系化合物であり、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(以下、α−NPDと示す)や、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(以下、TDATAと示す)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(以下、MTDATAと示す)などのスターバースト型芳香族アミン化合物が挙げられる。
【0056】
発光層123は、発光物質が、発光物質の有するエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有する物質からなる層中に、分散して含まれた層であることが好ましい。なお、エネルギーギャップとはLUMO準位とHOMO準位との間のエネルギーギャップをいう。また発光物質は、発光効率が良好で、所望の発光波長の発光を得る物質を用いればよい。
【0057】
発光物質を分散状態にするために用いる物質は、例えば、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)等のアントラセン誘導体、または4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾール誘導体の他、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:ZnBOX)等の金属錯体等を用いることができる。但し、発光物質を分散状態にするために用いる物質はこれらの材料に限定されない。発光物質を分散状態とする構造であると、発光物質からの発光が、濃度に起因して消光してしまうことを防ぐことができる。
【0058】
次に発光層123の発光物質を示す。赤色の発光を得たいときには、4−ジシアノメチレン−2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJTI)、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJTB)やペリフランテン、2,5−ジシアノ−1,4−ビス[2−(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]ベンゼン、ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナイト]イリジウム(アセチルアセトナート)(略称:Ir[Fdpq]acac)等を用いることができる。但しこれらの材料に限定されず、600nmから680nmに発光波長のスペクトルのピークを有する発光を呈する物質を用いることができる。
【0059】
緑色の発光を得たいときは、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリン6やクマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)等を用いることができる。但しこれらの材料に限定されず、500nmから550nmに発光波長のスペクトルのピークを有する発光を呈する物質を用いることができる。
【0060】
青色の発光を得たいときは、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)、9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−ガリウム(略称:BGaq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等を用いることができる。但しこれらの材料に限定されず、420nmから500nmに発光波長のスペクトルのピークを有する発光を呈する物質を用いることができる。
【0061】
単色発光装置を形成する場合、上記3色の発光層材料から選ぶことができ、さらにカラーフィルターによって所望の発光を呈することができる。
【0062】
このような発光層となる有機化合物に、金属酸化物を混在させた層を用いてもよい。
【0063】
次いで電子輸送層124について説明する。電子輸送層124とは、第2の電極102から注入された電子を発光層123へ輸送する機能を有する層である。このように、電子輸送層124を設け、第2の電極102と発光層123とを離すことによって、発光が金属に起因して消光することを防ぐことができる。
【0064】
電子輸送層124は、正孔の移動度よりも電子の移動度が高い物質を用いて形成することが好ましい。また、電子輸送層124は、10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質を用いて形成することがより好ましい。また、電子輸送層124は、以上に述べた物質からなる層を二以上組み合わせて形成した多層構造の層であってもよい。具体的な電子輸送層の材料は、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、先に述べたBAlqなど、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体が好適である。また、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体もある。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。
【0065】
このような第2の層112は、蒸着法により作製することができる。なお第2の層112を構成する層のうち、混在した層を形成する場合には共蒸着法を用いることができる。共蒸着法は、抵抗加熱蒸着同士による共蒸着法、電子ビーム蒸着同士による共蒸着法、抵抗加熱蒸着と電子ビーム蒸着による共蒸着法があり、その他抵抗加熱蒸着とスパッタリング法による成膜、電子ビーム蒸着とスパッタリングによる成膜など、同種、異種方法を組み合わせて形成することができる。また、上記例は2種の材料を含む層を示しているが、3種以上の材料を含む場合も同様に、同種、異種方法を組み合わせて形成することができることは、上述のとおりである。
【0066】
次いで電子を発生する層である第3の層113について説明する。このような第3の層113は、例えば、電子輸送性物質と、その物質に対して電子供与性を示す物質とを含む層が挙げられる。
【0067】
なお電子輸送性物質とは、正孔よりも電子の輸送性が高い物質であり、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))等の金属錯体の他、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’ −ビス(5−メチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン(略称:BzOS)等を用いることができる。また第3の層113は、n型の半導体を用いて形成することができる。但し、電子輸送性物質はこれらに限定されない。
【0068】
また、電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の中から選ばれた物質、具体的にはリチウム(Li)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)等を用いることができる。また、具体的な材料としては、上記アルカリ金属の酸化物またはアルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属の窒化物、アルカリ土類金属の窒化物等、具体的にはリチウム酸化物(LiO)、カルシウム酸化物(CaO)、ナトリウム酸化物(NaO)、カリウム酸化物(KO)、マグネシウム酸化物(MgO)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等が挙げられる。但し、電子輸送物質に対して電子供与性を示す物質は、これらに限定されない。なお、電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質は、電子輸送性物質に対して、モル比が0.5〜2(=電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質/電子輸送性物質)と成るように含まれていることが好ましい。
【0069】
また、第3の層113は、酸化亜鉛、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、酸化スズ、酸化チタンのような物質からなる層であってもよい。
【0070】
そして第3の層113は、有機化合物からなる電子輸送性物質と、上記金属酸化物からなる電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質とが混在した層から形成すると、好ましい。このような有機化合物と、無機化合物とが混在した層を用いることによって、第3の層113に用いる有機化合物の結晶化を抑制することができ、抵抗の増加を伴わずに第3の層113を厚く形成することが可能となる。そのため、基板上にゴミや汚れ等に起因する凹凸がある場合であっても、第3の層113の厚膜化により凹凸の影響をほとんど受けない。従って、凹凸に起因する第1の電極101と、第2の電極102とのショート等の不良を防止することができる。さらに、上記金属酸化物からなる電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質が混在した層は導電性が高くなるため、厚膜化を図ることができる。このように第3の層113を厚膜化することにより、第1の電極101と、第2の層112とを離すことができるので、金属に起因して発光が消光することを防ぐこともできる。
【0071】
このような第3の層113は、蒸着法により作製することができる。第3の層113として、混在した層を形成する場合には共蒸着法を用いることができる。共蒸着法は、抵抗加熱蒸着同士による共蒸着法、電子ビーム蒸着同士による共蒸着法、抵抗加熱蒸着と電子ビーム蒸着による共蒸着法があり、その他抵抗加熱蒸着とスパッタリング法による成膜、電子ビーム蒸着とスパッタリングによる成膜など、同種、異種方法を組み合わせて形成することができる。また、上記例は2種の材料を含む層を示しているが、3種以上の材料を含む場合も同様に、同種、異種方法を組み合わせて形成することができることは、上述のとおりである。
【0072】
以上のような、発光素子において、第3の層113に含まれる電子輸送性物質の電子親和力と、第2の層112に含まれる層のうち第3の層113と接する層に含まれる物質の電子親和力との差は、好ましくは2eV以下、より好ましくは1.5eV以下とするとよい。また、第3の層113がn型の半導体からなるとき、n型の半導体の仕事関数と、第2の層112に含まれる層のうち第3の層113と接する層に含まれる物質の電子親和力との差は、好ましくは2eV以下、より好ましくは1.5eV以下とするとよい。このように、第2の層112と第3の層113とを接合することによって、第3の層113から第2の層112への電子の注入が容易になる。
【0073】
なお本発明は、出射される光の発光波長に対する第1の電極101の反射率を低減するように、第1の層111乃至第3の層113の膜厚を決定することを特徴としており、図3に示す発光素子構成に限定されるものではない。例えば、第3の層113に接して形成された電子輸送層124設ける構成を示したが、電子輸送層124を有しない場合もある。すると発光層123は、第3の層113と接する構成となる。この場合、該発光層123には、発光物質を分散状態とするための物質を用いるとよい。同様に、正孔輸送層122を有しない場合もあり得る。
【0074】
また、Alq等のように分散状態としなくても発光することができる物質を発光層123に用いることができる。Alq等は、キャリアの輸送性の良い発光物質であるため、分散状態とすることなくAlqのみからなる層を発光層として機能させることができる。この場合、発光層123が発光物質そのものに相当する。
【0075】
このような第1の層111から第3の層113の作製は、同一方法により形成することができる。そのため、大気解放することなく連続して形成することができる。このように大気解放することなく連続して第1の層111から第3の層113を形成することにより、界面等への不純物混入を低減することができる。
【0076】
次に電極について説明する。第1の電極101と第2の電極102とは、導電性を有する物質で形成する。また発光層からの光を外部に取り出す側に設けられた第2の電極102は、導電性に加えて透光性を有する必要がある。なお透光性を有するためには、非透光性を有する材料を、非常に薄く形成することによって、得ることもできる。
【0077】
第1の電極101の材料は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、若しくはパラジウム(Pd)等の金属材料であって反射性の高い材料(反射性材料)を用いることができる。なお、第1の電極101は、例えばスパッタ法や蒸着法等を用いて形成することができる。但し、第1の電極101の材料は、これらに限定されない。このように反射性の高い金属材料を用いて第1の電極101を形成しても、第1の層111乃至第3の層113によって、出射される光の発光波長に対する反射率を低くすることを特徴とする。
【0078】
また第1の電極101は、上記金属材料の単層、又は積層を用いることができる。
【0079】
また、第2の電極102の材料は、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物、2〜20%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム等の透光性の高い材料(透光性材料)を用いることができる。その他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、若しくはパラジウム(Pd)等の金属材料であって、透光性を有する程度に薄膜化して用いることができる。但し、第2の電極102の材料は、これらに限定されない。
【0080】
また第2の電極102は、上記金属材料の単層、又は積層を用いることができる。第2の電極102に積層を用いる場合、上記材料を薄膜化し、その上に透光性材料を積層する構成を用いることもできる。勿論、薄い上記材料を単層で用いて、第2の電極102を形成してもよい。第2の電極102を薄く形成することにより、抵抗が高くなることを防止するため、補助配線を設けることもできる。
【0081】
なお第1の電極101、又は第2の電極102は、発光素子に印加する電圧によって、それぞれ陽極、又は陰極となりえる。陽極となる場合は、仕事関数の大きい(仕事関数4.0eV以上)材料とする。また陰極となる場合は、仕事関数の小さい(仕事関数3.8eV以下)材料とする。
【0082】
第1の電極101、又は第2の電極102は、スパッタリング法や蒸着法等を用いて形成することができる。なお、蒸着法を用いる場合、第1の電極101、第1の層111から第3の層113、第2の電極102の作製において、大気解放することなく連続して形成することが可能となる。このように大気解放することなく連続して発光素子を形成することにより、界面等への不純物混入を低減することができる。
【0083】
また本発明は厚膜化する層に有機化合物と、金属酸化物とが混在した層を用い、低駆動電圧化を達成した発光装置を提供することができる。また該層を厚くすることにより、発光層と第1の電極、又は発光層と第2の電極とを離すことができるため、発光の消光を防止できる。また発光素子を厚く形成することができるので、電極間の短絡を防止でき、量産性を高めることができる。
【0084】
以上のような発光素子構造を有する本発明は、第1の電極101又は第2の電極102での発光素子からの光の反射を低減し、カラーフィルター105により該発光素子からの発光色以外の波長の透過を防止することができる。その結果、発光素子からの光のみを調整することにより、コントラストを高めることができ、偏光板等を必要としない発光装置を提供することができる。
【0085】
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態と異なる発光素子の構造について説明する。
【0086】
図4に示すように、本実施の形態に示す発光素子は、対向する第1の電極101、第2の電極102を有し、第1電極101から順に、第1の層111、第2の層112、第3の層113、第4の層128が積層されており、第4の層128を設けたことを特徴とする。第4の層128は、第1の層111と同様の材料から形成することができ、その他の構成は、上記実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0087】
このように第4の層128を設けると、第2の電極102を形成するときの各層へのダメージを低減することができる。
【0088】
そして各発光色に応じて、第1の層111乃至第4の層128のいずれかの膜厚を異ならせる。その結果、第1の電極101での該発光波長の反射率を低減することができる。また膜厚を異ならせる場合、第4の層128においても、有機化合物と金属酸化物とが混在された層を用いるとよい。具体的には金属酸化物として、バナジウム酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、レニウム酸化物、タングステン酸化物、ルテニウム酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、及びタンタル酸化物のいずれかを用いることができる。またこれら金属の窒化物であってもよいし、酸化窒化物であってもよい。これら金属酸化物等は、厚膜化しても駆動電圧を高くならず好ましいことは上述の通りである。
【0089】
そして第4の層128を厚膜化することにより、第2の電極102を形成するときのダメージの、さらなる低減を期待できる。
【0090】
以上のような発光素子構造を有する本発明は、第1の電極101又は第2の電極102での発光素子からの光の反射を低減し、カラーフィルター105により該発光素子からの発光色以外の波長の透過を防止することができる。その結果、発光素子からの光のみを調整することにより、コントラストを高めることができ、偏光板等を必要としない発光装置を提供することができる。
【0091】
(実施の形態5)
本実施の形態では、発光素子への電流の供給を制御するトランジスタ(駆動用トランジスタと記す)がp型TFTの場合における、画素の断面構造について説明する。なお本実施の形態では、第1の電極が陽極、第2の電極が陰極の場合について説明する。
【0092】
図5に、TFT611がp型で、発光素子603から発せられる光を第2の電極102側から取り出す上方出射型であって、3つ分の画素の断面図を示す。図5では、発光素子603の第1の電極101と、TFT611がそれぞれ電気的に接続されている。また第1の電極101に隣接した電界発光層605、当該電界発光層に隣接するように第2の電極102が順に積層されている。電界発光層605は、上記第1の層111及び第3の層113、またさらに第4の層128からなる。このような電界発光層からは、発光波長のスペクトルのピークが可視光帯域にある光が出射される。
【0093】
TFT611は、厚さが10nm乃至200nmであって、島状に分離された半導体膜により、チャネル形成領域が形成されている。半導体膜は、非晶質半導体膜、結晶性半導体膜、微結晶半導体膜のいずれを用いてもよい。例えば、結晶性半導体膜の場合、まず非晶質半導体膜を形成し、加熱処理により結晶化された結晶性半導体膜を用いることができる。加熱処理とは、加熱炉、レーザー照射、若しくはレーザー光の代わりにランプから発する光の照射(以下、ランプアニールと表記する)、又はそれらを組み合わせて用いることができる。
【0094】
レーザー照射を用いる場合、連続発振型のレーザー(CWレーザー)やパルス発振型のレーザー(パルスレーザー)を用いることができる。
【0095】
またさらにレーザーの入射角を、半導体膜に対してθ(0°<θ<90°)となるようにしてもよい。その結果、レーザーの干渉を防止することができる。
【0096】
なお連続発振の基本波のレーザー光と、連続発振の高調波のレーザー光とを照射するようにしてもよいし、連続発振の基本波のレーザー光と、パルス発振の高調波のレーザー光とを照射するようにしてもよい。複数のレーザー光を照射することにより、エネルギーを補うことができる。
【0097】
またパルス発振型のレーザーであって、半導体膜がレーザー光によって溶融してから固化するまでに、次のパルスのレーザー光を照射できるような発振周波数でレーザー光を発振させることで、走査方向に向かって連続的に成長した結晶粒を得ることができる。すなわち、パルス発振の周期が、半導体膜が溶融してから完全に固化するまでの時間よりも短くなるように、発振の周波数の下限を定めたパルスビームを使用することができる。実際に用いることができるパルスビームの発振周波数は10MHz以上であって、通常用いられている数十Hz〜数百Hzの周波数帯よりも著しく高い周波数帯を使用する。
【0098】
その他の加熱処理による結晶化手段として、加熱炉を用いる場合、非晶質半導体膜を500〜550℃で2〜20時間かけて加熱する方法がある。このとき、徐々に高温となるように温度を500〜550℃の範囲で多段階に設定するとよい。最初の低温加熱工程により、半導体膜の水素等が出てくるため、結晶化の際の膜荒れを低減し、さらにダングリングボンドの終端を行うことができる。さらに、結晶化を促進させる金属元素、例えばNiを非晶質半導体膜上に形成すると、加熱温度を低減することができ好ましい。このような金属元素を用いた結晶化であっても、600〜950℃に加熱しても構わない。
【0099】
但し、金属元素を形成する場合、半導体素子の電気特性に悪影響を及ぼすことが懸念されるので、該金属元素を低減又は除去するためのゲッタリング工程を施す必要が生じる。例えば、非晶質半導体膜をゲッタリングシンクとして金属元素を捕獲するよう工程を行えばよい。
【0100】
さらにTFT611は、該半導体膜を覆うゲート絶縁膜、第1の導電膜及び第2の導電膜が積層しているゲート電極を有し、該ゲート電極上には水素を含む絶縁膜が設けられている。該水素によっても、ダングリングボンドを終端することができる。
【0101】
TFT611は、p型を有し、半導体膜は高濃度不純物領域のみを有するシングルドレイン構造とする。またTFT611は、半導体膜に低濃度不純物領域、及び高濃度不純物領域を有するLDD(低濃度ドレイン)構造としてもよい。なお低濃度不純物領域がゲート電極と重なったGOLD構造としてもよい。
【0102】
TFT611は層間絶縁膜607で覆われており、層間絶縁膜607上には開口部を有する隔壁608が形成されている。隔壁608の開口部において、第1の電極101が一部露出しており、該開口部において第1の電極101、電界発光層605、第2の電極102が順に積層されている。
【0103】
電界発光層605は、第1の層111、第2の層112、及び第3の層113、加えて第4の層128に相当しており、第1の電極101における電界発光層605からの発光色の反射が低くなるように、その膜厚が決定されている。そしてこれらの層には、有機化合物と、金属酸化物とが混在する層を用いると、厚膜化による駆動電圧の上昇を防止できる。
【0104】
上方出射型であるため、第1の電極101は、非透光性を有し、第2の電極102は透光性を有する材料から形成する。これら材料は、上記実施の形態を参照することができる。
【0105】
電界発光層605は、発光層の他に、正孔を発生する層、電子を発生する層等を有していることは上述の通りである。第1の電極101が陽極であるため、第1の電極101から正孔を発生する層、発光層、電子を発生する層の順に積層する。なお第1の電極101が陰極の場合、電子を発生する層、発光層、正孔を発生する層の順に積層する。
【0106】
図5に示した画素の場合、発光素子603から発せられる光を、白抜きの矢印で示すように第2の電極102側から取り出すことができる。そして、第1の電極101では、当該光の反射が低減される。具体的には、第1の電極101での発光波長の反射率が低減されるように、電界発光層の膜厚を決定する。
【0107】
そして、第2の電極側に設けられたカラーフィルター105により、該発光素子からの発光色以外の波長の透過を防止することができる。すなわちカラーフィルター105は、該発光素子からの発光色の波長を選択的に透過させることができる。その結果、電界発光層からの光のみを調整することにより、コントラスト等の制御を行うことができる。そしてさらに本発明の構成によって、偏光板等を必要としない発光装置を提供することができる。
【0108】
(実施の形態6)
次に図6を用いて、TFT611がp型で、発光素子603から発せられる光を第1の電極101側から取り出す下方出射型における、3つ分の画素の断面図を示す。
【0109】
図6では、発光素子603の第1の電極101と、TFT611がそれぞれ電気的に接続されている。また第1の電極101上に電界発光層605、第2の電極102が順に積層されている。
【0110】
TFT611は、上記実施の形態と同様に形成することができる。また下方出射型であるため、第1の電極101は透光性を有し、第2の電極102は非透光性を有する。これら材料は、上記実施の形態を参照することができる。そして、光の出射側である第1の電極101側に、カラーフィルター105が設けられている。
【0111】
電界発光層605も、上記実施の形態と同様に形成することができる。ただし、本実施の形態において、第1の電極101が陰極であるため、電子を発生する層、発光層、正孔を発生する層の順に積層するとよい。そして第2の電極102における電界発光層からの発光色の反射を低減するように、第1の層111乃至第3の層113、さらに第4の層128の膜厚が決定される。図6では、下方出射型の場合を示しているため、電界発光層605のうち、第2の電極102に近い第3の層113に相当する層の膜厚を決定するとよい。
【0112】
図6に示した画素の場合、発光素子603から発せられる光を、白抜きの矢印で示すように第1の電極101側から取り出すことができ、第2の電極102での反射を低減し、カラーフィルター105により該発光素子からの発光色以外の波長の透過を防止することができる。その結果、電界発光層からの光のみを調整することにより、コントラストを高めることができ、偏光板等を必要としない発光装置を提供することができる。
【0113】
(実施の形態7)
本実施の形態では、発光素子を有する画素の等価回路図について、図7を用いて説明する。
【0114】
図7(A)は、画素の等価回路の一例を示したものであり、信号線712、電源線715、走査線710それらの交点に発光素子603、トランジスタ703、711、容量素子704を有する画素の等価回路である。
【0115】
このような等価回路において、信号線712には信号線駆動回路から、映像信号が入力される。トランジスタ711は、走査線710に入力される選択信号に従って、トランジスタ703のゲートへの、該映像信号の電位の供給を制御することができ、スイッチング用トランジスタと呼ばれる。トランジスタ703は、該映像信号の電位に従って、発光素子603への電流の供給を制御することができ、駆動用トランジスタと呼ばれる。発光素子は、供給される電流に伴い発光状態、又は非発光状態をとり、これにより表示を行うことができる。容量素子704は、トランジスタ703のゲート・ソース間の電圧を保持することができる。なお、図7(A)では、容量素子704を図示したが、トランジスタ703のゲート容量や他の寄生容量で賄うことが可能な場合には、設けなくてもよい。
【0116】
図7(B)は、図7(A)に示した画素の等価回路に、新たに走査線719、トランジスタ718を設けた画素の等価回路である。
【0117】
トランジスタ718は、トランジスタ703のゲートとソースを同電位とし、強制的に発光素子603に電流が流れない状態を作ることができ、消去用トランジスタと呼ばれる。そのため、時間階調表示において、全画素に映像信号が入力され終わる前に、次に映像信号を入力することができ、デューティー比を高くすることができる。
【0118】
またトランジスタ718の代わりにダイオードとして機能する素子を設けてもよい。本実施の形態では、トランジスタ703のゲート電極と、走査線719との間にダイオード接続したトランジスタやPN型のダイオードを設けることができる。その結果、強制的に発光素子603に電流が流れない状態を作ることもできる。
【0119】
図7(C)は、図7(B)に示した画素の等価回路に、新たにトランジスタ725と、配線726を設けた画素の等価回路である。トランジスタ725は、そのゲートの電位が固定されている。例えば、配線726に接続されることによってゲート電位が固定される。そして、トランジスタ703とトランジスタ725は、電源線715と発光素子603との間に直列に接続されている。よって図7(C)では、トランジスタ725により発光素子603に供給される電流の値が制御され、トランジスタ703により発光素子603への該電流の供給の有無が制御できる。
【0120】
以上、図7(A)(B)(C)に示した画素の等価回路は、デジタル方式で駆動させることができる。デジタル方式で駆動させる場合、各駆動用トランジスタに多少の電気特性ばらつきがあっても、該トランジスタをスイッチング素子として使用するため、問題にならない。
【0121】
本発明の発光装置が有する画素の等価回路は、デジタル方式であっても、アナログ方式であっても駆動させることができる。例えば図7(D)に示す画素の等価回路は、信号線712、電源線715、走査線710、それらの交点に発光素子603、トランジスタ711、720、721、容量素子704を有する。図7(D)において、トランジスタ720、721はカレントミラー回路を構成しており、p型のトランジスタからなる。このような画素の等価回路では、デジタル方式の場合、信号線712からデジタルビデオ信号が入力され、時間階調により発光素子603に供給される電流の値が制御される。またアナログ方式の場合、信号線712からアナログビデオ信号が入力され、その値に応じて発光素子603に供給される電流の値が制御される。アナログ方式で駆動させる場合、低消費電力化を図ることができる。
【0122】
以上のような画素において、信号線712、電源線715、726には、信号線駆動回路から信号が入力される。また走査線710、719には、走査線駆動回路から信号が入力される。信号線駆動回路や走査線駆動回路は、単数、又は複数設けることができる。例えば、画素部を介して第1の走査線駆動回路、第2の走査線駆動回路を設けることができる。
【0123】
また図7(A)に示す画素において、図7(B)を用いて説明したように、強制的に発光素子603に電流が流れない状態を作ることができる。例えば、第1の走査線駆動回路により、発光素子603が点灯するタイミングで、トランジスタ711を選択し、第2の走査線駆動回路により発光素子603へ強制的に電流が流れないような信号を走査線710に供給する。強制的に電流が流れないような信号(Wirte Erase Signal)とは、発光素子603の第1の電極101と、第2の電極102とが同電位となるための電位を与える信号である。このように、駆動方法によっても、強制的に発光素子603に電流が流れない状態を作ることができ、デューティー比を高めることができる。
【0124】
このように本発明の発光装置が有する画素の等価回路は、多くの形態をとることができる。なお、本発明の画素回路は、本実施の形態で示した構成に限定されない。また本実施の形態は、上記の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0125】
(実施の形態8)
本発明の発光装置を表示部に備えた電子機器として、テレビジョン装置(単にテレビ、又はテレビジョン受信機ともよぶ)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話装置(単に携帯電話機、携帯電話ともよぶ)、PDA等の携帯情報端末、携帯型ゲーム機、コンピュータ用のモニター、コンピュータ、カーオーディオ等の音響再生装置、家庭用ゲーム機等の記録媒体を備えた画像再生装置等が挙げられる。その具体例について、図8を参照して説明する。
【0126】
図8(A)に示す携帯情報端末機器は、本体9201、表示部9202等を含んでいる。表示部9202には、本発明の発光装置を適用することができる。その結果、コントラストを高めることができ、偏光板等を必要としない携帯情報端末機器を提供することができる。
【0127】
図8(B)に示すデジタルビデオカメラは、表示部9701、表示部9702等を含んでいる。表示部9701には、本発明の発光装置を適用することができる。その結果、コントラストを高めることができ、偏光板等を必要としないデジタルビデオカメラを提供することができる。
【0128】
図8(C)に示す携帯電話機は、本体9101、表示部9102等を含んでいる。表示部9102には、本発明の発光装置適用することができる。その結果、コントラストを高めることができ、偏光板等を必要としない携帯電話機を提供することができる。
【0129】
図8(D)に示す携帯型のテレビジョン装置は、本体9301、表示部9302等を含んでいる。表示部9302には、本発明の発光装置を適用することができる。その結果、コントラストを高めることができ、偏光板等を必要としない携帯型のテレビジョン装置を提供することができる。また携帯型のテレビジョン装置としては、携帯電話機などの携帯端末に搭載する小型のものから、持ち運びをすることができる中型のものまで、幅広く本発明の発光装置を適用することができる。
【0130】
図8(E)に示す携帯型のコンピュータは、本体9401、表示部9402等を含んでいる。表示部9402には、本発明の発光装置を適用することができる。その結果、コントラストを高めることができ、偏光板等を必要としない携帯型のコンピュータを提供することができる。
【0131】
図8(F)に示すテレビジョン装置は、本体9501、表示部9502等を含んでいる。表示部9502には、本発明の発光装置を適用することができる。その結果、コントラストを高めることができ、偏光板等を必要としないテレビジョン装置を提供することができる。
【0132】
このように、本発明の発光装置により、コントラストを高めることができ、偏光板等を必要としない電子機器を提供することができる。
【実施例1】
【0133】
本実施例では、波長400nmから800nmに対する反射率、又は透過率について、実測値及び計算値等を示す。
【0134】
図9には、赤色を呈するため、赤色のカラーフィルターを用いた結果を示す。素子構造は、第1の電極としてチタン(Ti)を形成し、有機化合物としてαNPD及びルブレンを用い、それらとモリブデン酸化物とが混在した層を196nm、αNPDを10nm、Alqに赤色の発光物質を分散させた層を40nmに、Alqを20nm、BzOSとリチウム(Li)とを有する層を20nm、第2の電極としてアルミニウム(Al)を15nm、と順に積層したものである。なおチタンの膜厚は、光を透過しない程度であればよく、40nm以上とする。
【0135】
曲線(A)は、第1の電極における反射率の計算値であり、本発光素子からの発光のスペクトルとなる630nm辺りで、もっとも反射率が低くなることがわかる。曲線(B)は、赤色用のカラーフィルターの透過率の実測値である。カラーフィルターの膜厚は1.5μmとした。(B)をみると、本発光素子からの発光のスペクトルとなる630nm辺りで、もっとも透過率が高くなっていることがわかる。曲線(C)は、(A)の反射率に、(B)の透過率の2乗をかけたものであり、実際の発光装置における外光の反射を検討するために求めている。外光の光路は、カラーフィルターを通過し、第1の電極で反射し、再びカラーフィルターを通過して、使用者に認識されるためである。曲線(C)をみると、本発光素子からの発光のスペクトルとなる630nm辺りで、十分反射率が小さくなっていることがわかる。具体的には、発光素子からの発光波長のスペクトルのピーク(630nm付近)の反射率は10%以下であることがわかる。
【0136】
また図10には、緑色を呈するため、緑色のカラーフィルターを用いた結果を示す。素子構造は同様な材料であって、第1の電極としてチタン(Ti)を形成し、有機化合物としてαNPD及びルブレンを用い、それらとモリブデン酸化物とが混在した層を140nm、αNPDを10nm、Alqに緑色の発光物質を分散させた層を40nm、Alqを20nm、BzOSとリチウム(Li)とを有する層を20nm、第2の電極としてアルミニウム(Al)を15nm、と順に積層したものであり、有機化合物としてαNPD及びルブレンを用い、それらとモリブデン酸化物とが混在した層の膜厚が上記赤色の素子と異なっている。なおチタンの膜厚は、光を透過しない程度であればよく、40nm以上とする。
【0137】
曲線(A)は、第1の電極における反射率の計算値であり、本発光素子からの発光のスペクトルとなる530nm辺りで、もっとも反射率が低くなることがわかる。(B)は、緑色用のカラーフィルターの透過率の実測値である。カラーフィルターの膜厚は1.5μmとした。曲線(B)をみると、本発光素子からの発光のスペクトルとなる530nm辺りで、もっとも透過率が高くなっていることがわかる。曲線(C)は、曲線(A)の反射率に、曲線(B)の透過率の2乗をかけたものである。曲線(C)をみると、本発光素子からの発光のスペクトルとなる530nm辺りで、十分反射率が小さくなっていることがわかる。具体的には、発光素子からの発光波長のスペクトルのピーク(530nm付近)の反射率は10%以下であることがわかる。
【0138】
また図11には、青色を呈するため、青色のカラーフィルターを用いた結果を示す。素子構造は同様な材料であって、第1の電極としてチタン(Ti)を形成し、有機化合物としてαNPD及びルブレンを用い、それらとモリブデン酸化物とが混在した層を95nm、αNPDを10nm、t−BuDNAを40nm、Alqを20nm、BzOSとリチウム(Li)とを有する層を20nm、第2の電極としてアルミニウム(Al)を15nm、と順に積層したものであり、有機化合物としてαNPD及びルブレンを用い、それらとモリブデン酸化物とが混在した層の膜厚が、上記赤色及び青色の素子と異なっている。なおチタンの膜厚は、光を透過しない程度であればよく、40nm以上とする。
【0139】
曲線(A)は、第1の電極における反射率の計算値であり、本発光素子からの発光のペクトルとなる450nm辺りで、もっとも反射率が低くなることがわかる。曲線(B)は、青色用のカラーフィルターの透過率の実測値である。カラーフィルターの膜厚は1.5μmとした。曲線(B)をみると、本発光素子からの発光のスペクトルとなる450nm辺りで、もっとも透過率が高くなっていることがわかる。曲線(C)は、曲線(A)の反射率に、曲線(B)の透過率の2乗をかけたものである。(C)をみると、本発光素子からの発光のスペクトルとなる450nm辺りで、十分反射率が小さくなっていることがわかる。具体的には、発光素子からの発光波長のスペクトルのピーク(450nm付近)の反射率は10%以下であることがわかる。
【0140】
このような発光素子により、第1の電極による所望の発光波長の反射率を低減することができ、発光装置における当該発光波長の反射を低くすることができる。そしてカラーフィルターは、該発光素子からの発光波長の透過率を高くしり、その他の光の波長を吸収することができる。その結果、発光素子からの光のみを考慮することができ、コントラスト制御を簡便なものとすることができる。また本発明により、偏光板等を必要としない上面出射型の発光装置を提供することができる。
【0141】
なお本実施例において、第1の電極の反射率について検討しているが、第2の電極の反射率も同様に検討することができうる。第2の電極の反射率を検討し、発光素子の膜厚を決定することにより、下面出射型の発光装置において、コントラスト制御を簡便にし、偏光板等を不要とすることができる。
【0142】
このようなシミュレーション結果に基づき、第1の電極又は第2の電極に対する、電界発光層の膜厚を決定することができる。すなわち、第1の電極又は第2の電極における、発光素子からの発光波長の反射率を測定し、該反射率が低くなるように電界発光層の膜厚を決定し、所望のカラーフィルターの透過率を測定し、当該発光素子からの発光波長の透過率が高くなるようにして、発光装置を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の発光装置の発光素子の拡大図である
【図2】本発明の発光装置の発光素子の拡大図である
【図3】本発明の発光素子を示した断面図である
【図4】本発明の発光素子を示した断面図である
【図5】本発明の発光装置を示した断面図である
【図6】本発明の発光装置を示した断面図である
【図7】本発明の発光装置の画素回路図である
【図8】本発明の発光装置を適用した電子機器を示した図である
【図9】赤色の発光素子における電極反射率の結果である
【図10】緑色の発光素子における電極反射率の結果である
【図11】青色の発光素子における電極反射率の結果である
【図12】本発明の発光装置を示した断面図である
【図13】本発明の発光装置を示した断面図である

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
前記第1の電極に対向して設けられた第2の電極と、
前記第1の電極、及び前記第2の電極を有する発光素子と、
前記発光素子からの光を透過するカラーフィルターと、を有し、
前記第1の電極における前記発光素子からの発光波長の反射が低減され、且つ前記カラーフィルターにより前記発光素子からの発光波長が選択的に透過されたことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
第1の電極と、
前記第1の電極に対向して設けられた第2の電極と、
前記第1の電極、及び前記第2の電極を有する発光素子と、
前記発光素子からの光を透過するカラーフィルターと、を有し、
前記第1の電極における前記発光素子からの発光波長の反射率が10%以下であり、且つ前記カラーフィルターにより前記発光素子からの発光波長が選択的に透過されたことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
発光波長のスペクトルのピークが可視光帯域にあり、特定の光を発光する電界発光層と、
前記電界発光層の一方の側に隣接し、前記特定の光の反射が低減された第1の電極と、
前記電界発光層の他方の側に隣接し、前記スペクトルの可視光帯域の光を透過する第2の電極と、
前記第2の電極の側に設けられ、前記特定の光を透過するカラーフィルターとを有することを特徴とする発光装置。
【請求項4】
発光波長のスペクトルのピークが可視光帯域にあり、特定の光を発光する電界発光層と、
前記電界発光層の一方の側に隣接し、前記特定の光の反射率が10%以下に低減された第1の電極と、
前記電界発光層の他方の側に隣接し、前記スペクトルの可視光帯域の光を透過する第2の電極と、
前記第2の電極の側に設けられ、前記特定の光を透過するカラーフィルターとを有することを特徴とする発光装置。
【請求項5】
発光波長のスペクトルのピークが可視光帯域にある光を発光する電界発光層と、
前記電界発光層の一方の側に隣接し、前記ピーク波長の光の反射が低減された第1の電極と、
前記電界発光層の他方の側に隣接し、前記スペクトルの可視光帯域の光を透過する第2の電極と、を有する発光素子と、
前記第2の電極の側に設けられ、少なくとも前記ピーク波長を含む可視光帯域の光を選択的に透過するカラーフィルターと
を有することを特徴とする発光装置。
【請求項6】
発光波長のスペクトルのピークが可視光帯域にある光を発光する電界発光層と、
前記電界発光層の一方の側に隣接し、前記ピーク波長の光の反射率が10%以下に低減された第1の電極と、
前記電界発光層の他方の側に隣接し、前記スペクトルの可視光帯域の光を透過する第2の電極と、を有する発光素子と、
前記第2の電極の側に設けられ、少なくとも前記ピーク波長を含む可視光帯域の光を選択的に透過するカラーフィルターと
を有する
ことを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一において、
前記発光素子のいずれかの層は、前記第1の電極による前記発光素子からの発光波長の反射を低減する厚みを有する
ことを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一において、
前記カラーフィルターは、前記発光素子からの発光波長の透過率が高い材料からなることを特徴とする発光装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一において、
前記発光素子により単色発光表示を行うことを特徴とする発光装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一において、
前記発光素子によりフルカラー表示を行うことを特徴とする発光装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記発光素子のいずれかの層は、前記発光波長毎に異なることを特徴とする発光装置。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれか一において、
前記発光波長の反射を低減する厚みを有する層は、バナジウム酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、レニウム酸化物、タングステン酸化物、ルテニウム酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物のいずれかから選択された金属酸化物を有する層を有することを特徴とする発光装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一において、
前記発光素子が設けられた基板と対向する基板とは、ARコートされていることを特徴とする発光装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一において、
前記カラーフィルターは、前記発光素子が設けられた基板と対向する基板側に設けられていることを特徴とする発光装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一において、
前記第1の電極は反射性材料からなることを特徴とする発光装置。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一において、
前記第2の電極は透光性材料からなることを特徴とする発光装置。
【請求項17】
第1の電極上に電界発光層を形成し、
前記電界発光層上に第2の電極を形成し、
前記第2の電極側にカラーフィルターを配置し、
前記電界発光層のいずれかの層は、前記第1の電極による前記発光素子からの発光波長の反射を低減する厚みで形成し、前記カラーフィルターは、前記発光素子からの発光波長を選択的に透過するように形成する
ことを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項18】
第1の電極上に電界発光層を形成し、
前記電界発光層上に第2の電極を形成し、
前記第2の電極側にカラーフィルターを配置し、
前記電界発光層のいずれかの層は、前記第1の電極による前記発光素子からの発光波長の反射率が10%以下となる厚みで形成し、前記カラーフィルターは、前記発光素子からの発光波長を選択的に透過するように形成する
ことを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項19】
第1の電極上に、発光波長のスペクトルのピークが可視光帯域にある光を発光する電界発光層を形成し、
前記電界発光層上に、前記スペクトルの可視光帯域の光を透過する第2の電極を形成し、
前記第2の電極側にカラーフィルターを配置し、
前記電界発光層のいずれかの層は、前記第1の電極による前記ピーク波長の光の反射を低減する厚みで形成し、前記カラーフィルターは、前記発光素子からの発光波長を選択的に透過するように形成する
ことを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項20】
第1の電極上に、発光波長のスペクトルのピークが可視光帯域にある光を発光する電界発光層を形成し、
前記電界発光層上に、前記スペクトルの可視光帯域の光を透過する第2の電極を形成し、
前記第2の電極側にカラーフィルターを配置し、
前記電界発光層のいずれかの層は、前記第1の電極による前記ピーク波長の光の反射率が10%以下となる厚みで形成し、前記カラーフィルターは、前記発光素子からの発光波長を選択的に透過するように形成する
ことを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項21】
請求項17乃至20のいずれか一において、
前記カラーフィルターを、前記発光素子が設けられた基板と対向する基板に配置することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項22】
請求項17乃至21のいずれか一において、
前記電界発光層のいずれかの層は、バナジウム酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、レニウム酸化物、タングステン酸化物、ルテニウム酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物のいずれかから選択された金属酸化物を有する層から形成することを特徴とする発光装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−210330(P2006−210330A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368014(P2005−368014)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】