説明

発光装置及びその製造方法

【課題】発する光の色調ムラを、光拡散材を一切使わないで低減することによって発光効率を従来よりも格段に向上させ、設備空間及び設備費用の軽減された発光装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】主発光波長が410nm以下である発光素子5の発光面を覆うように、この発光素子5からの光を吸収し、波長変換して発光する蛍光体20(25、27)を含有する蛍光体層10(11、12)をこの発光素子5の発光面上に1層以上積層した構成にする。さらに、この蛍光体層10(11、12)を、最大厚さ及び最小厚さの差が蛍光体20(25、27)の平均粒径以下であり、且つ前記蛍光体層10(11、12)中の前記蛍光体20(25、27)の占有率を50%以上にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば照明用光源、液晶のバックライト光源等に用いられる白色光を発する発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、紫外線光又は青色光を発する発光素子と、この発光素子からの光を吸収し、波長変換して長波長の光を発光する蛍光体とを組み合わせることにより、広い発光波長幅を有する白色光を発する発光装置が開発されてきた。このような発光装置は、例えば照明用光源、液晶のバックライト光源等の用途に用いられる。この照明用光源、液晶のバックライト光源としては、低い色度ムラと高い演色性を有する白色光が求められている。
【0003】
特許文献1には、青色光を発する発光素子上に異なる波長変換を行う2種類以上の蛍光体を配置し、発光素子からの光及び各蛍光体が波長変換した光を混色させることで演色性を向上させた発光装置が開示されている。
【0004】
図14は、上記特許文献1に記載の発光装置100を用いた自動車内の地図灯101の構成を示す図である。一般に、自動車内で用いられる地図灯101では、発光装置100から例えば60cm程度離れた位置にある被照射体としての地図等の紙面上に形成される直径30〜40cmの光の円内での明るさを、照度30ルックス以上にすることが求められる。このように、発光装置100が地図灯101等に用いられる場合には、発光装置100からの光を光学レンズ102で集光し、所定の範囲を特に明るくするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−127346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発光装置100を用いた場合には、発光素子を、蛍光体を透明樹脂内に混合させて覆うため、混合液の表面張力により発光素子周辺に薄く均一に蛍光体を配置できないことと、樹脂が硬化される間に起きる混合液内での蛍光体の沈降の影響により、色調ムラが十分解決されていないため、光学レンズ102によって集光された光の色調ムラが増大されてしまう。さらに、発光素子が発した青色光が指向性を持っているため、レンズ等の光学素子を光の集光、散乱させる場合には、光学素子を介した光の色調ムラが大きくなってしまう。そのため図14に示すように、光学レンズ102と被照射物105との間に光拡散材103を設け、集光した光を拡散させ、色調ムラ及び指向性を低減化させる必要がある。このように、光拡散材103を用いた場合には、光が光拡散材103を通過する際に減衰するため、発光装置100の発光効率が非常に(1/3程度)低下してしまう。このため、例えば地図灯101等、種々の用途に用いる場合には、図14に示すように、複数の発光装置100を用いて輝度を向上させる必要があり、設備空間及び設備費用がかさんでしまい、さらに光拡散材の分布ムラにより集光させた光の色ムラも生じてしまい、均一な色温度の発光素子を作成することが困難であった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、光拡散材を用いなくとも発する光の色調ムラを低減することによって発光効率を従来よりも向上させ、設備空間及び設備費用の軽減された発光装置及びその製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記発光装置において、前記蛍光体層の厚さは、前記蛍光体の平均粒径の5倍以下であってもよい。
【0009】
上記発光装置において、前記蛍光体層を形成する際には、前記発光素子上に接着剤を前記蛍光体の平均粒径よりも薄く塗布した後、前記塗布された接着剤に前記蛍光体を固着して蛍光体構成層を形成する形成工程を行い、前記蛍光体層について所望の色温度が得られるまで前記蛍光体構成層を積層してもよい。
【0010】
上記発光装置において、前記接着剤を塗布する際には、塗布面上をヒータで加熱した状態で行ってもよい。
【0011】
上記発光装置において、前記発光素子の発光面上に前記蛍光体層が2層以上積層されており、前記発光素子に近い側の前記蛍光体層に含有される蛍光体の主発光波長と、前記発光素子から遠い側の前記蛍光体層に含有される蛍光体の主吸収波長とが異なっていてもよい。
【0012】
また、本発明によれば、主発光波長が410nm以下である発光素子と、前記発光素子からの光を吸収し、波長変換して発光する蛍光体を含有する蛍光体層と、を備え、最大厚さ及び最小厚さの差が前記蛍光体の平均粒径の2倍以下である前記蛍光体層が、前記発光素子の発光面を覆うように、前記発光素子の発光面上に直接形成された発光装置の製造方法であって、前記蛍光体層は複数層の蛍光体構成層からなり、前記発光素子から最も遠くにある蛍光体構成層における前記蛍光体の占有率が50%以下であり、それ以外の蛍光体構成層における前記蛍光体の占有率は60%以上であるように前記蛍光体構成層は形成されることを特徴とする、発光装置の製造方法が提供される。
【0013】
上記発光装置の製造方法において、前記蛍光体層の厚さを、前記蛍光体の平均粒径の5倍以下に形成してもよい。
【0014】
上記発光装置の製造方法において、前記蛍光体層を形成する際には、前記発光素子上に接着剤を前記蛍光体の平均粒径よりも薄く塗布した後、前記塗布された接着剤に前記蛍光体を配置して蛍光体構成層を形成する形成工程を、1回又は繰返し複数回行うことにより前記蛍光体層を形成するようにしてもよい。
【0015】
上記発光装置の製造方法において、前記接着剤を塗布する際には、前記接着剤の粘度を低下させた状態で行うようにしてもよい。
【0016】
上記発光装置の製造方法において、前記1層以上の蛍光体層を積層する際には、前記発光素子に近い側の蛍光体層に含有される蛍光体の主発光波長が、前記発光素子から遠い側の蛍光体層に含有される蛍光体の主吸収波長と異なるように積層するようにしてもよい。
【0017】
上記発光装置の製造方法において、前記複数層の蛍光体構成層を積層する場合、前記接着剤の塗布と、前記蛍光体の固着と、前記接着剤の仮硬化と、色温度の測定とその測定結果の検証と、を繰り返すことにより、所望の色温度を得ることとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、主発光波長が可視光領域から外れた410nm以下である発光素子を用いることで、発光装置が発する可視光の指向性を低下させると共に、蛍光体層を厚さが蛍光体の平均粒径以下である接着剤に固着することで、蛍光体を蛍光体層内で均一に分布させることができ、色調ムラをさらに低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る発光装置1の全体構成図である。
【図2】図1に示す発光装置1が有する発光素子5を拡大して示した拡大図である。
【図3】図2に示す発光素子5上に形成された蛍光体層10〜12を拡大して示した拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る製造方法の手順を示す全体フロー図である。
【図5】図4のステップ3の手順を説明するフロー図である。
【図6】図5のステップ11において、接着剤21を発光素子5上に塗布する際の手順を示す説明図である。
【図7】図5のステップ11において、接着剤21を発光素子5上に塗布した後の状態を示す手順を示す説明図である。
【図8】塗布した接着剤21に蛍光体20を吹付ける際の一例として、圧縮ガスを用いた場合の手順を示す説明図である。
【図9】発光装置の色調ムラを測定する色調ムラ測定装置70の構成図である。
【図10】蛍光体構成層10aの上に蛍光体構成層10bを積層する手順を示す説明図である。
【図11】蛍光体構成層10aの上に蛍光体構成層10bを積層する手順を示す説明図である。
【図12】蛍光体構成層10aの上に蛍光体構成層10bを積層する手順を示す説明図である。
【図13】塗布した接着剤21に蛍光体20を配置する際の一例として、静電吸着を用いた場合の手順を示す説明図である。
【図14】従来公知の発光装置100を用いた地図灯101の構成図である。
【図15】図2に示す発光装置1の輝度比及び相関色温度の測定結果(レンズなし)を、横軸が発光装置1の角度(°)であり、縦軸が相関色温度(K)である座標にプロットして示した図である。
【図16】図2に示す発光装置1の輝度比及び相関色温度の測定結果(レンズ有り)を、横軸が発光装置1の角度(°)であり、縦軸が相関色温度(K)である座標にプロットして示した図である。
【図17】図15の各々の測定結果(レンズなし)を示している。
【図18】図16の各々の測定結果(レンズ有り)を示している。
【図19】比較例1である発光装置200の構成図である。
【図20】図19に示す比較例1である発光装置200の輝度比及び相関色温度の測定結果(レンズなし)を、横軸が発光装置1の角度(°)であり、縦軸が相関色温度(K)である座標にプロットして示した図である。
【図21】図19に示す比較例1である発光装置200の輝度比及び相関色温度の測定結果(レンズ有り)を、横軸が発光装置1の角度(°)であり、縦軸が相関色温度(K)である座標にプロットして示した図である。
【図22】図20の各々の測定結果(レンズなし)を示している。
【図23】図21の各々の測定結果(レンズ有り)を示している。
【図24】比較例2である発光装置201の構成図である。
【図25】図24に示す比較例2である発光装置201の輝度比及び相関色温度の測定結果(レンズなし)を、横軸が発光装置1の角度(°)であり、縦軸が相関色温度(K)である座標にプロットして示した図である。
【図26】図24に示す比較例2である発光装置201の輝度比及び相関色温度の測定結果(レンズ有り)を、横軸が発光装置1の角度(°)であり、縦軸が相関色温度(K)である座標にプロットして示した図である。
【図27】図25の各々の測定結果(レンズなし)を示している。
【図28】図26の各々の測定結果(レンズ有り)を示している。
【図29】比較例3である発光装置202の構成図である。
【図30】図29に示す比較例3である発光装置202の輝度比及び相関色温度の測定結果(レンズなし)を、横軸が発光装置1の角度(°)であり、縦軸が相関色温度(K)である座標にプロットして示した図である。
【図31】図29に示す比較例3である発光装置202の輝度比及び相関色温度の測定結果(レンズ有り)を、横軸が発光装置1の角度(°)であり、縦軸が相関色温度(K)である座標にプロットして示した図である。
【図32】図30の各々の測定結果(レンズなし)を示している。
【図33】図31の各々の測定結果(レンズ有り)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明をする。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置1の全体構成図である。図2は、図1に示す発光装置1が有する発光素子5を拡大して示した拡大図である。図3は、図2に示す発光素子5上に形成された蛍光体層10、蛍光体層11及び蛍光体層12を拡大して示した拡大図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る発光装置1は、例えば平板形状の基板2上に主発光波長が410nm以下である紫外線光を発するLEDを発光素子5として載置した構成を有する。発光素子5は、1mm角で高さが150μmのダイス形状に形成されている。基板2上には、発光素子5の周囲を取囲むように環状配置された側壁3が設けられている。基板2には、外部電源(図示せず)から電力が供給される外部電極6が設けられており、この外部電極6は、導電線ワイヤ7によって発光素子5に接続されている。本実施の形態では、発光素子5は、外部電極6から直流350mAの電力が供給されると、主発光波長400〜405nmであり、且つ光出力が300〜350mWである光を発するように構成されている。
【0023】
図1及び図2に示すように、発光素子5上には、その発光面である上面及び側面を覆うように、3種類の蛍光体層10、11、12が各々例えば20μm以上、50μm以下の厚さで順に設けられている。なお、用語「発光面」は、発光装置1の周囲に光を発する光源となる発光素子5の光出射面を意味し、図1に示す発光素子5の場合には、発光素子5が基板2上に配置されているため、底面を除く上面及び側面が発光面となる。また、蛍光層10等を用いて発光素子5の「発光面を覆う」という表現は、発光素子5が発する光の光路を遮るという意味で用いられており、この場合には、発光素子5が基板2上に設けられているため、発光素子5の底面を除く上面及び側面が発光面になっている。本実施の形態では、発光素子5の発光面上に直接的に1層以上の蛍光体層10、11、12を積層することによって発光素子5の発光面を覆っている。
【0024】
環状配置された側壁3と基板2とで形成される凹部内には、例えば透明樹脂等の封止部材15が蛍光体層10、11、12の上から充填されて発光素子5が封止されている。図3に示すように、蛍光体層10は、発光素子5上に3つの蛍光体構成層10a〜10cを下から順に積層させた構成を有する。また、蛍光体層11は、蛍光体層10(即ち、蛍光体構成層10c)上に3つの蛍光体構成層11a〜11cを下から順に積層させた構成を有する。さらに、蛍光体層12は、蛍光体層11(即ち、蛍光体構成層11c)上に3つの蛍光体構成層12a〜12cを下から順に積層させた構成を有する。
【0025】
このとき、蛍光体層10の最大厚さ及び最小厚さの差が、蛍光体層10に含有されている蛍光体20の平均粒径の2倍以下になるように設定されている。同様に、蛍光体11の最大厚さ及び最小厚さの差が、蛍光体11に含有されている蛍光体25の平均粒径の2倍以下になるように設定されており、蛍光体12の最大厚さ及び最小厚さの差が、蛍光体12に含有されている蛍光体27の平均粒径の2倍以下になるように設定されている。なお、本明細書中においては、蛍光体20、25、27の平均粒径を測定する際には、発光装置1の蛍光体層を切断し、その切断面を走査電子顕微鏡(SEM)により撮影して得られたSEM写真から蛍光体20、25、27の1粒子の径の最長値を測定し、そのうち、粒子径の最長値が1μm以上となる粒子の平均値を出すことによって算出している。
【0026】
蛍光体構成層10aは、平均粒径が例えば7μmの蛍光体20を、この蛍光体20の平均粒径よりも薄い例えば5μmの厚さに塗布した接着剤21により固着されて形成されている。蛍光体構成層10a中の蛍光体20の占有率は60%以上になるように設定されている。ここで、用語「占有率」について説明する。本明細書中で用いられる用語「占有率」とは、発光装置1の蛍光体層又は蛍光体構成層を切断して得られる切断面全体の面積に対して、この切断面に含まれる蛍光体が占める面積の割合を意味している。なお、蛍光体層又は蛍光体構成層中における蛍光体の占有率を測定する場合についても、上述したように蛍光体の平均粒径測定する場合と同様に、発光装置1を切断した写真に基づいて算出している。このようにして算出した蛍光体層の占有率は、蛍光体層の全体積中に占める蛍光体の体積が占める割合(即ち、充填率)が高くなるにつれて向上する。
【0027】
蛍光体構成層10b、10cについても蛍光体構成層10aと同様に構成されている。各蛍光体構成層10a〜10cの中に含有される蛍光体20の充填率が高くなっている、即ち、各蛍光体構成層断面中で蛍光体が占める占有率はいずれも60%以上に設定されているため、蛍光体層10中の蛍光体20の占有率は60%以上になっている。また、蛍光体構成層11aは、蛍光体構成層10aと同様にして、蛍光体20とは別の種類の平均粒径が例えば10μmの蛍光体25を、この蛍光体25の平均粒径よりも薄い例えば5μmの厚さに塗布した接着剤26により固着されて形成されている。蛍光体構成層11b、11cについても蛍光体構成層11aと同様に構成されている。各蛍光体構成層11a〜11cの中に含有される蛍光体25の占有率がいずれも60%以上に設定されているため、蛍光体11中の蛍光体25の占有率は60%以上になっている。さらに、蛍光体構成層12aは、蛍光体構成層10a、11aと同様にして、蛍光体20、25とは別の種類の平均粒径が例えば18μmの蛍光体27を、この蛍光体27の平均粒径よりも薄い例えば5μmの厚さに塗布した接着剤28により固着されて形成されている。蛍光体構成層12b、12cについても蛍光体構成層12aと同様に構成されている。各蛍光体構成層12a〜12cの中に含有される蛍光体27の占有率がいずれも60%以上に設定されているため、蛍光体12中の蛍光体27の占有率は60%以上になっている。
【0028】
本実施の形態では、蛍光体20としては、発光素子5が発する紫外線光を吸収し、波長変換して主発光波長が659nmである赤色光を発する平均粒径が7μmのCaAlSiN:Euで示される蛍光体が用いられている。また、蛍光体25としては、発光素子5が発する紫外線光を吸収し、波長変換して主発光波長が557nmである緑色光を発する平均粒径が10μmのSrAl1+xSi4−x7−x:Ceで示される蛍光体が用いられている。また、蛍光体27としては、発光素子5が発する紫外線光を吸収し、波長変換して主発光波長が451nmである青色光を発する平均粒径が18μmのSrAlSi6−x1+x8−x:Euで示される蛍光体が用いられている。
【0029】
本実施の形態では、このように2種類以上の蛍光体(本実施の形態では3種類の蛍光体20、25、27)を配置する際に、発光素子5に近い側(即ち、内側)の蛍光体層に含有される蛍光体の主発光波長は、発光素子5から遠い側(即ち、外側)の蛍光体層に含有される蛍光体の主吸収波長よりも長波長側になるように設定している。なお、本明細書中では、蛍光体が波長変換する際に吸収する光の波長の主たる波長を「主吸収波長」と呼び、蛍光体が吸収した光を波長変換して発する光の主たる波長を「主発光波長」と呼ぶ。
【0030】
具体的に説明すると、蛍光体層11、12よりも発光素子5に近い側に配置された蛍光体層10については、この蛍光体層10に含有される蛍光体20の主発光波長が、蛍光体層10よりも発光素子5から遠い側に配置された蛍光体層11、12に各々含有される蛍光体25、27の各主吸収波長と異なっている。また、蛍光体層11と蛍光体層12との関係についても、蛍光体層12よりも発光素子5に近い側に配置された蛍光体層11に含有される蛍光体25の主発光波長は、蛍光体層11よりも発光素子5から遠い側に配置された蛍光体層12に含有される蛍光体27の主吸収波長と異なっている。
【0031】
以上のような蛍光体層10〜12の配置構成において、発光素子5に相対的に近い蛍光体層10の蛍光体20が発する赤色光は、発光素子5から相対的に遠い蛍光体層11、12の各蛍光体25、27が緑色、青色を各々発光するために吸収する主たる波長領域(エネルギー領域)と異なるので、下層にある蛍光体20からの赤色光は、上層にある蛍光体25、27に吸収されて波長変換される恐れがない。同様にして、発光素子5に対してより近くにある蛍光体層11に配置された蛍光体25が発する緑色光は、発光素子5に対してより遠くにある蛍光体層12に配置された蛍光体27が青色を発光するために吸収する主たる波長領域(エネルギー領域)と異なるので、下層にある蛍光体25からの緑色光は、上層にある蛍光体27に吸収されて波長変換される恐れがない。このようにして、発光素子5に近い側(即ち、内側)により長い波長の光を発する蛍光体を配置し、発光素子5から遠い側(即ち、外側)により短い波長の光を吸収する蛍光体を配置することによって、2種類以上の蛍光体20、25、27によって複数回の波長変換により生じる発光出力の低下を防止し、かつ複数層の蛍光体層を作成する際に、発光装置が発する光の色温度を容易に調整できる。
【0032】
次に、以上のように構成された発光装置1を製造する本発明の実施の形態に係る製造方法を、図1〜図3を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る製造方法の手順を示す全体フロー図である。
【0033】
図4に示すように、発光装置1の製造を開始する(ステップ0)にあたって、まず、基板2上に発光素子5を、例えば半田や導電ペーストを用いて配置する(ステップ1)。次に、例えば超音波接着及び圧着等の方法を用いて、導電線ワイヤ7を発光素子5及び外部電極6に接続する(ステップ2)。その後、発光素子5上の発光面を覆うように、蛍光体層10、11、12を含む各層を所定の順序で発光素子5上に形成する(ステップ3)。本実施の形態では、図1に示すように、発光素子5上に3つの異なる蛍光体層10、11、12が順に積層されて形成されている。蛍光体層10、11、12の形成が終了した後に、環状配置された側壁3と基板2とで形成される凹部内に、例えば透明樹脂等の封止部材15を蛍光体層12の上から充填し、発光素子5を蛍光体層10、11、12と共に封止する(ステップ4)。以上のステップ0〜ステップ4により、発光装置1の製造が完了する(ステップ5)。
【0034】
次に、上記ステップ3において、各層を形成する際に蛍光体層10、11、12を形成する場合の手順を詳細に説明する。本実施の形態では、発光素子5の発光面上に3層の蛍光体層10、11、12を順に形成している。図5は、上記ステップ3において、蛍光体層10、11、12を形成する場合の手順を説明するフロー図である。以下では、発光素子5上に直接的に形成される蛍光体層10を例にして説明する。
【0035】
蛍光体層10の形成が開始される(ステップ10)と、被積層面である発光素子5上に、例えばシリコン、エポキシ等の接着剤21が、例えばディスペンス、スプレー等の方法によって塗布される(ステップ11)。図6及び図7は、上記ステップ10において、接着剤21をディスペンス方法によって発光素子5上に塗布する際の手順を示す説明図である。
【0036】
接着剤21を塗布する際には、図6に示すように、発光素子5及び基板2の下側に配置されたヒータ30によって、接着剤21が塗布される発光素子5の発光面である上面及び側面が加熱される。ニードル形状の排出口31から排出された接着剤21は、このようにして加熱された発光面上において加熱され、その粘度が低下した状態になり、図7に示すように、表面張力の影響が低減化し、発光素子5の発光面上に均一の厚さで分布する。これにより、接着剤21が発光素子5の発光面上で表面張力によって盛り上がって不均一な厚さになってしまうことが防止できる。こうすることで、被積層面上に塗布する接着剤21の厚さは、後述のステップ12で接着剤21に吹付ける蛍光体20の平均粒径以下になる。
【0037】
上記ステップ11において、発光素子5の発光面上に塗布した接着剤21が粘着性を保っている状態で、塗布した接着剤21に蛍光体20を吹付け(ステップ12)、発光素子5の発光面上全体に蛍光体20を配置する。図8は、塗布した接着剤21に蛍光体20を吹付ける際の一例として、圧縮ガスを用いた場合の手順を示す説明図である。
【0038】
図8に示すように、発光素子5の発光面上に対向する上側の位置に、蛍光体20を吹付けるノズル35が配置されている。ノズル35には、吹付ける蛍光体20を供給するカートリッジ36が配管37を介して接続されている。また、ノズル35には、圧縮ガスとして例えば空気、窒素又はアルゴン等が貯留された貯留部40に配管41を介して接続されている。配管41には、貯留部40からの圧縮ガスの流量等を調整する圧力調整装置42及び開閉弁43が設けられている。これにより、カートリッジ36から供給される蛍光体20は、圧力調整装置42及び開閉弁43によって噴射量が調整された圧縮ガスによってノズル35から噴出し、発光素子5の発光面上に塗布された接着剤21に吹付けられるようになっている。
【0039】
本実施の形態では、ノズル35には篩(図示せず)が設けられており、このノズル35から粒径が所定値以下である蛍光体20だけが噴出できるようになっている。これにより、ノズル35から塗布された接着剤21に吹付けられる蛍光体20の粒径の調整が行われている。
【0040】
蛍光体20を配置した接着剤21を例えば200℃で1分加熱し、仮硬化させる(ステップ13)。上記ステップ11〜13の手順により、発光素子5の発光面上に蛍光体構成層10aが形成される。
【0041】
発光素子5の発光面上に形成された蛍光体構成層10aによって所望の発光が得られているか判定するために、発光装置1の色温度を測定する(ステップ14)。図9は、発光装置1の色温度を測定する方法の一例を示す、色調ムラ測定装置70の説明図である。図9に示すように、発光装置1と対向する位置には、光を検出する検出器46が配置されている。本実施の形態では、発光装置1と検出器46との距離は1.5mに設定されている。検出器46は光ファイバー47によって分光器48に接続されている。測定対象である発光装置1の外部電極6には、電源50の正負の電極から各々配線49が接続されて電力が供給され、発光装置1を発光させた状態で測定が行われる。
【0042】
色温度の測定は、測定対象である発光装置1を、図9に示す位置から同一鉛直平面(図9の紙面)内にて左右に回転させながら行う。図9に示すように、基板2の上面と垂直な方向に照射された光を測定可能である発光装置1の位置を角度90°とすると、発光装置1を右に90度回転させた場合の位置が0°になり、左に90度回転させた場合の位置が180°になる。なお、一般的には、発光装置の輝度は、0°の位置では小さく、0°から90°に近付くにつれて大きくなり、90°から180°に近付くにつれてまた小さくなっている。
【0043】
検出器46によって検出された光は、光ファイバー47から分光器48に送られるようになっている。分光器48では、検出器46が検出した光のスペクトル解析がされ、その解析結果により発光装置1の輝度及び相関色温度が測定される。
【0044】
上記ステップ14の測定結果により蛍光体層10が形成された発光装置1について、所望の発光が得られた場合(ステップ15のYes)には、蛍光体層10の形成が完了する(ステップ16)。一方、所望の発光が得られない場合(ステップ15のNo)には、上記ステップ11に戻り、上記ステップ11〜13を繰返し、新たな蛍光体構成層10bを積層する。図10〜図12は、新たな蛍光体構成層10bを積層する手順を示す説明図である。具体的に説明すると、発光素子5の発光面上に形成された図10に示す蛍光体構成層10aを被積層面として、図11に示すように、この蛍光体構成層10a上に接着剤21を塗布する。そして、図12に示すように、蛍光体構成層10a上に塗布した接着剤21上に蛍光体20を吹付けて配置し、その後、接着剤21を仮硬化させることによって、新たな蛍光体構成層10bを形成する。
【0045】
上記ステップ11〜13を繰返すことによって積層された蛍光体構成層10a、10bにより、発光装置1について所望の発光が得られているか判定するために、発光装置1の色温度を測定する(ステップ14)、測定結果により所望の発光が得られた場合(ステップ15のYes)には、蛍光体層10の形成が完了する(ステップ16)。これに対して、所望の発光が得られない場合(ステップ15のNo)には、上記ステップ11に戻り、上記ステップ11〜13を繰返す。以上のようにして、発光装置1に対して所望の発光が得られるまで、蛍光体構成層を形成する形成工程としての上記ステップ11〜15を繰返して蛍光体構成層10a、10b、・・・を積層し、蛍光体層10の形成を完了させる(ステップ16)。本実施の形態では、図3に示すように、3つの蛍光体構成層10a〜10cが積層された蛍光体層10を形成したことによって、蛍光体層10について所望の発光が得られている。このように蛍光体構成層10a〜10cを積層させることにより、蛍光体層10を非常に薄く形成することができ、蛍光体層10の最大厚さ及び最小厚さの差を蛍光体20の平均粒径の2倍以下とすることが可能になる。このとき蛍光体層10の平均厚さは、含有する蛍光体20の平均粒径の5倍以下になるようにするのが好ましい。
【0046】
本実施の形態では、各蛍光体構成層(10a、10b、・・・)中における蛍光体20の占有率を全て60%以上に設定することによって、各蛍光体構成層(10a、10b、・・・)で構成される蛍光体層10中における蛍光体20の占有率を60%以上に設定している。なお、発光装置1の色温度を調整する場合には、発光素子5から最も遠くにあり、最後に形成する蛍光体構成層中における蛍光体20の占有率を50%以下に調整することにより、色温度の微調整が可能である。例えば、4層の蛍光体構成層10a〜10d(10dは図示せず)で形成される蛍光体層10の場合について説明すると、発光素子5のより近くに積層される3層の蛍光体構成層10a〜10c中における蛍光体20の占有率を60%以上に設定し、これら3層(10a〜10c)の上に最後に形成される蛍光体構成層10d中における蛍光体20の占有率を5%に設定することによって、色温度を100K単位で変化させることが可能になる。このとき、蛍光体層10中の蛍光体20の占有率は約50%となる。
【0047】
上述のように、蛍光体の充填率が高い、占有率が50%以上の蛍光体層が作成可能となり、蛍光体層を非常に薄く形成することができるようになる。具体的には、蛍光体層の厚みを平均粒径の5倍以下としても目的の色温度に設定にすることが可能となる。これにより、蛍光体層の最大厚さと最小厚さの差(厚さムラ)を小さく抑えることが可能となる。さらに、蛍光体層10内での蛍光体20の分布もより均一化することができる。特に、蛍光体層10における最大厚さ及び最小厚さの差を蛍光体20の平均粒径の2倍以下に抑えるとより効果的である。蛍光体層の厚さムラを抑え、蛍光体の分布を均一にしたことによって、発光素子5から蛍光体層10に照射された発光素子5からの光を、各発光方向で均等に波長変換させることができ、色調ムラを低減化し、演色性を向上させた光を発する発光装置1及びその製造方法を提供することが可能になる。
【0048】
なお、上述の説明では、発光素子5の発光面上に直接的に積層されて形成される蛍光体層10の場合について説明したが、蛍光体層10を形成した後に、この蛍光体層10を被積層面として蛍光体層11、12を蛍光体層10上に順に積層して形成する場合にも同様の手順で形成される。また、本実施の形態では、蛍光体層11を形成する際に用いる接着剤26と、蛍光体層12を形成する際に用いる接着剤28は、蛍光体層10を形成する際に用いる接着剤21と同一の接着剤を用いているが、異なる接着剤を用いてもよい。
【0049】
以上の実施の形態によれば、主発光波長が可視光領域から外れた410nm以下である発光素子5を用いたことによって、発光装置1が発する光のうち、ヒトの肉眼で色調ムラが判断される可視光については、蛍光体層10、11、12中の蛍光体が発光素子5からの光を吸収して波長変換した低指向性の発光だけから構成されるため、発光装置から発光される可視光の指向性を低下させることができる。以上の利点により、従来公知の発光装置のように光拡散材を用いて光の色調ムラ及び指向性を調整する必要がなく、光拡散材による光の減衰を発生させずに済む。特に、発光装置1からの光をレンズで集光させて用いることにより色調ムラが顕著になる場合であっても、光拡散材を用いずに済む。これにより、発光装置の発光効率を従来よりも格段に向上させ、所望の照度を従来よりも少ない数の発光装置1で達成することができ、設備空間及び設備費用を軽減することが可能になる。
【0050】
また、発光素子5の発光面上に積層される蛍光体層10(蛍光体層11、12等についても同様)を、蛍光体20の平均粒径以下の接着剤21に蛍光体20を配置した蛍光体構成層10a、10b、10cが1層以上積層された構成にしたことによって、蛍光体20を蛍光体層10内で均一に分布させ、かつ、蛍光体層10内の蛍光体20を高密度で充填することができ、色調ムラを効果的に低減できる。
【0051】
さらに、本発明者らは発光素子5の発光面上に直接的に1層以上の蛍光体層10、11、12を積層したことにより、発光素子5からの紫外線光が樹脂を通過する距離を小さくすることで樹脂による光の吸収を低減し、光の減衰を抑制することで発光強度を高めることができることを見出した。特に発光素子と蛍光体との間に樹脂層が厚く存在しない構造とすることで、樹脂の厚さムラに起因して紫外線光の各発光方向の減衰差から発生してしまう色調ムラを防止できる。
【0052】
たとえば、従来の様に蛍光体を樹脂等に混合分散させた場合に発生していた樹脂の厚さムラに起因した紫外線光の各発光方向の減衰差による色調ムラを防止できる。すなわち、紫外線の樹脂内を通過する距離を短くし、樹脂による光吸収の小さい可視光にいち早く変換して樹脂内を通過させることにより、発光装置から発光する光の色調ムラを小さくし、発光出力も向上させることができる。このため、光学素子を用いて光を集光する際、従来公知の発光装置のように光拡散材を用いて光の色調ムラ及び指向性を調整する必要がなく、光拡散材による光の減衰を発生させずに済む。具体的には、半値角40°の場合には色度で表現した色調ムラを従来の800Kから約100Kにまで、半値角30°の場合には色調ムラを従来の1000Kから約150Kにまで、さらに、半値角20°の場合には色調ムラを従来の1500Kから約200Kにまで低減できる効果がある。
【0053】
さらに、発光素子5の発光面上に2層以上積層された蛍光体層10、11、12の配置構成において、発光素子5に近い側(即ち、内側)の蛍光体層に含有される蛍光体の主発光波長が、発光素子5から遠い側(即ち、外側)の蛍光体層に含有される蛍光体の主吸収波長と異なるように構成したことによって、各蛍光体層は、他の蛍光体層の光を吸収せず、発光素子5が発した光だけを吸収して光を発するため、各蛍光体層の色温度の調整を非常に容易に行うことができる。
【0054】
さらに、蛍光体層10を形成する際に、蛍光体層10を構成する蛍光体構成層10a〜10cを1層形成する度に、発光装置1の色温度を測定し、所望の発光が得られているか確認したことによって、蛍光体層10による発光装置1の色温度を100K単位で微調整することができる。これにより、従来よりも所望する発光により近い発光をする蛍光体層10を備えた発光装置1を製造することが可能になる。
【0055】
さらに、蛍光体構成層10が含有する蛍光体20の粒径を調整し、例えば、所定の粒径以下になるようにしたことによって、蛍光体層20を構成する各蛍光体構成層10a〜10cをより均一の厚さに形成することができ、その蛍光体構成層を積層させた蛍光体層の厚みムラを、含有する蛍光体の平均粒径の2倍以下と小さくすることが可能となり、色調ムラをより低減化し、且つ演色性を向上させることが可能になる。
【0056】
本発明の第1の他の実施形態として、蛍光体20を接着剤21が塗布された発光素子5の発光面に配置する際に、図13に示すように、静電吸着を利用して配置するようにしてもよい。図13では、基板2と、ノズル35に蛍光体20を供給するカートリッジ36とに、高電圧が印加可能な電源55の両極が接続されている。電源55により基板2及びカートリッジ36に印加される電圧パターンは、電源55に接続された電圧制御装置56によって制御されるようになっている。このような構成により、カートリッジ36内の蛍光体20を負に帯電させ、正に帯電した基板2側の接着剤21にノズル35を介して静電吸着させることができる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0058】
上述した実施形態においては、紫外線光を発するLEDを発光素子5として用いる場合について説明したが、発光素子5としては、主発光波長が410nm以下である光を発するLED以外を用いてもよい。
【0059】
上述した実施形態においては、蛍光体層10を構成する蛍光体構成層の数が3層である場合について説明したが、蛍光体層10を構成する蛍光体構成層の数は任意であってもよい。
【0060】
上述した実施形態においては、蛍光体層10に1種類の蛍光体20が含有されている場合について説明したが、蛍光体層10に2種類以上の蛍光体が含有されていてもよい。
【0061】
上述した実施形態においては、発光素子5の発光面上に積層される蛍光体層10、11、12の数が3である場合について説明したが、蛍光体層の数は任意であってもよい。また、蛍光体層10、11、12の上から封止部材15を充填して発光素子5が封止されている場合について説明したが、蛍光体層の上に従来公知の蛍光体層を配置してもよい。このとき、従来公知の蛍光体層が含有する蛍光体を、粒径が10μm以下の微粒子とすることで、蛍光体の沈降による影響が極めて小さくなり、本発明と同様の効果を有する。または、従来公知の蛍光体層が含有する蛍光体の量を極微量とすることでも、同様の効果を有することができる。
【0062】
上述した実施形態においては、ヒータ30を用いて塗布する接着剤21を加熱し、粘度を低下させる場合について説明したが、ヒータ30以外の加熱装置を用いて、接着剤21を加熱して粘度を低下させるようにしてもよい。また、接着剤21を溶媒で薄めることによって、粘度を低下させてもよい。さらに、接着剤21を溶媒で薄めることと、加熱することとを同時に実施してもよい。
【0063】
上述した実施形態においては、ノズル35に設けた篩(図示せず)を用いて、塗布された接着剤21に配置する蛍光体20の粒径を調整する場合について説明したが、篩以外の方法が用いられてもよい。例えば、蛍光体20をボールミルによって粉砕、洗浄、分離、乾燥し、その後、シャトルに入れ、シャトル先端に取付けたノズルの内径を調整することによって、篩以外の手段によって、吹付ける蛍光体20の粒径を調整するようにしてもよい。
【実施例】
【0064】
本発明を実施例と比較例を用いて説明する。
【0065】
以下に示す実施例1は、本発明の実施の形態に係る発光装置1の色調ムラを測定した結果であり、比較例1〜3は、それぞれ、発光装置200、201、202の色調ムラを測定した結果である。なお、色調ムラの測定は、図9に示す色調ムラ測定装置70を用いて測定対象である発光装置からの発光を検出器で検出し、スペクトル解析することにより行い、図9に示すように、発光装置1と検出器46との間に光学レンズ51を設けない場合の測定と、光学レンズ51を介して光を集光させた場合の測定の両方を行った。
【0066】
測定対象である発光装置が発する光の指向特性を示す「半値角(2θ(1/2))」は、分光器48で得られた輝度の解析結果から、以下のようにして算出した。
2θ(1/2)=|θ−θ
ここでθ、θは、最も大きな輝度の値を100%とし、そのときの角度を基準角度としたとき、その基準角度から0°の位置側に回転させて輝度が50%になる角度をθとし、基準角度から180°の位置側に回転させて輝度が50%になる角度をθとする。
【0067】
測定対象である発光装置の色調ムラの度合いを示す「色温度差(ΔCCT)」は、分光器48で得られたスペクトル解析結果から、上記半値角(2θ(1/2))内で測定される色温度CCT(Correlated Color Temperature)の最大値と最小値の差として求めた。なお、単位はK(ケルビン)である。
【0068】
測定対象である発光装置が発する光の演色性については、JISで規定される基準光をどれだけ忠実に再現できているかという度合いを示す「平均演色評価数(Ra)」を分光器48で得られたスペクトル解析結果から算出した。
【0069】
<実施例1>
主発光波長が405nmの紫外線光を発する発光素子5上に直接的に3つの異なる蛍光体層10、11、12が積層された図2に示す発光装置1を作成した。実施例1では、蛍光体層10に含有される蛍光体20としてCaAlSiN:Eu、蛍光体層11に含有される蛍光体25としてSrAl1+xSi4−x7−x:Ce、蛍光体層12に含有される蛍光体27としてSrAlSi6−x1+x8−x:Euを用いた。蛍光体20の粒子径は、10μm以下、蛍光体25の粒子径は、13μm以下、蛍光体27の粒子径は、20μm以下に調整されている。
【0070】
上記の試料の断面を観察したところ、蛍光体層10、蛍光体層11、蛍光体層12における蛍光体20、蛍光体25、蛍光体27の占有率はともに60%となり50%以上であった。蛍光体層10、蛍光体層11、蛍光体層17のそれぞれの層の厚みムラ(最大厚み及び最小厚みの差)は、それぞれの層に含有されている蛍光体20、蛍光体25、蛍光体27の平均粒径の2倍以下であった。なお、各蛍光体層10、11、12が含有する蛍光体20、25、27の平均粒径はそれぞれ、7μm、10μm、18μmであった。
【0071】
上記の発光装置1の輝度比及び相関色温度の値を、図9に示す色調ムラ測定装置70を用い、発光装置1の位置が0〜180°で測定を行った。図15は、光学レンズ51を用いずに測定した測定結果を示し、図16は、光学レンズ51を介して光を集光させて測定した測定結果を示している。なお、図15及び図16では、横軸が発光装置1の角度(°)であり、縦軸が相関色温度(K)である座標に測定結果をプロットして示した。また、図17は、図15における各々の測定結果を示し、図18は、図16における各々の測定結果を示している。
【0072】
図15及び図17より、レンズを介さない場合、半値角(2θ(1/2))は115°、色温度差はΔCCT=33Kであり、輝度が最大となる基準角度(90°)おける平均演色評価数(Ra)は94で、半値角領域で平均演色評価数(Ra)は90以上であった。また、図16及び図18に示すように、レンズを介して集光した場合、半値角(2θ(1/2))は19°、色温度差はΔCCT=219Kであり、輝度が最大となる基準角度(90°)おける平均演色評価数(Ra)は93で、半値角領域で平均演色評価数(Ra)は90以上であった。上記の結果より、本発明の発光装置1によれば、光学素子を用いて光を集光させた場合においても、色温度差が小さく、かつ平均演色評価数(Ra)も90以上と良好な白色光が得られた。
【0073】
<比較例1>
比較例1として、図19に示す発光装置200を作成した。発光装置200は、基板2上に配置された青色光を発する発光素子5の発光面上に、赤色光を発する蛍光体20を含有する蛍光体層210と緑色光を発する蛍光体25を含有する蛍光体層211とを順に積層し、さらに、その周囲に樹脂15を厚く配置した構成になっている。
【0074】
上記の試料の断面を観察したところ、蛍光体層210、蛍光体層211における蛍光体20、蛍光体25の占有率はともに60%となり、50%以上であった。蛍光体層210、蛍光体層211のそれぞれの層の厚みムラ(最大厚み及び最小厚みの差)は、それぞれの層に含有されている蛍光体20、蛍光体25の平均粒径の2倍以下であった。なお、各蛍光体層210、211が含有する蛍光体20、25の平均粒径はそれぞれ、7μm、10μmであった。
【0075】
上記の発光装置200の輝度比及び相関色温度の値を、図9に示す色調ムラ測定装置70を用い、発光装置200の位置が0〜180°で測定を行った。図20は、光学レンズ51を用いずに測定した測定結果を示し、図21は、光学レンズ51を介して光を集光させて測定した測定結果を示している。なお、図20及び図21では、横軸が発光装置200の角度(°)であり、縦軸が相関色温度(K)である座標に測定結果をプロットして示した。また、図22は、図20における各々の測定結果を示し、図23は、図21における各々の測定結果を示している。
【0076】
図20及び図22より、レンズを介さない場合、半値角(2θ(1/2))は126°、色温度差はΔCCT=155Kであり、輝度が最大となる基準角度(90°)おける平均演色評価数(Ra)は92で、半値角領域で平均演色評価数(Ra)は90以上であった。しかしながら、図21及び図23に示すように、レンズを介して集光した場合には、半値角(2θ(1/2))は14°、色温度差がΔCCT=1036Kとなり、色温度差の値が著しく大きくなっていた。このことから発光装置200からの発光にレンズを用いた場合には、色調ムラが増幅されてしまうことが判明した。
【0077】
<比較例2>
比較例2として、図24に示す発光装置201を作成した。発光装置201は、基板2上に配置された紫外線光を発する発光素子5の発光面上に中間層12として樹脂を配置し、この中間層12を介して発光素子5から離間した位置に、赤色光を発する蛍光体20を含有する蛍光体層210、緑色光を発する蛍光体25を含有する蛍光体層211及び青色光を発する蛍光体27を含有する蛍光体層212を混合して薄い層状にして配置した構成になっている。
【0078】
上記の試料の断面を観察したところ、蛍光体層210、蛍光体層211、蛍光体層212における蛍光体20、蛍光体25、蛍光体27の占有率はすべて60%となり、50%以上であった。蛍光体層210、蛍光体層211、蛍光体212のそれぞれの層の厚みムラ(最大厚み及び最小厚みの差)は、それぞれの層に含有されている蛍光体20、蛍光体25、蛍光体27の平均粒径の2倍以下であった。なお、各蛍光体層210、211、212が含有する蛍光体20、25、27の平均粒径はそれぞれ、7μm、10μm、18μmであった。
【0079】
上記の発光装置201の輝度比及び相関色温度の値を、図9に示す色調ムラ測定装置70を用い、発光装置201の位置が0〜180°で測定を行った。図25は、光学レンズ51を用いずに測定した測定結果を示し、図26は、光学レンズ51を介して光を集光させて測定した測定結果を示している。なお、図25及び図26では、横軸が発光装置200の角度(°)であり、縦軸が相関色温度(K)である座標に測定結果をプロットして示した。また、図27は、図25における各々の測定結果を示し、図28は、図26における各々の測定結果を示している。
【0080】
図25及び図27より、レンズを介さない場合、半値角(2θ(1/2))は115°、色温度差はΔCCT=86Kであり、輝度が最大となる基準角度(90°)おける平均演色評価数(Ra)は92で、半値角領域で平均演色評価数(Ra)は90以上であった。しかしながら、図26及び図28に示すように、レンズを介して集光した場合には、半値角(2θ(1/2))は16°、色温度差がΔCCT=381Kとなり、色温度差の値が大きくなっていた。このことから発光装置201からの発光にレンズを用いた場合には、色調ムラが増幅されてしまうことが判明した。
【0081】
<比較例3>
比較例3として、図29に示す発光装置202を作成した。発光装置202は、基板2上に配置された紫外線光を発する発光素子5の周囲に、赤色光を発する蛍光体20、緑色光を発する蛍光体25及び青色光を発する蛍光体27を混合させた樹脂を厚く配置した構成を有する。蛍光体20、25、27の粒子径は調整されていない。
【0082】
上記の試料の断面を観察したところ、樹脂15内において蛍光体20、25、27の占有率は合計5%となり、50%以下であった。また、樹脂15の層の厚みムラ(最大厚み及び最小厚みの差)は、含有されている蛍光体20、25、27の平均粒径の2倍を超えていた。なお、蛍光体20、25、27の平均粒径はそれぞれ、7μm、10μm、18μmであった。
【0083】
上記の発光装置202の輝度比及び相関色温度の値を、図9に示す色調ムラ測定装置70を用い、発光装置202の位置が0〜180°で測定を行った。図30は、光学レンズ51を用いずに測定した測定結果を示し、図31は、光学レンズ51を介して光を集光させて測定した測定結果を示している。なお、図30及び図31では、横軸が発光装置200の角度(°)であり、縦軸が相関色温度(K)である座標に測定結果をプロットして示した。また、図32は、図30における各々の測定結果を示し、図33は、図31における各々の測定結果を示している。
【0084】
図30及び図32より、レンズを介さない場合、半値角(2θ(1/2))は133°、色温度差はΔCCT=494Kであり、輝度が最大となる基準角度(90°)おける平均演色評価数(Ra)は91で、半値角領域で平均演色評価数(Ra)は90以上であった。また、図31及び図33に示すように、レンズを介して集光した場合には、半値角(2θ(1/2))は28°、色温度差がΔCCT=829Kであった。このことから発光装置202の発光は、レンズの有無に関わらず色温度差が大きくて著しい色調ムラが発生していることが判明した。
【0085】
以上の実施例1及び比較例1〜3から、本発明の発光装置1(実施例1)では、半値角が19°に対して色調ムラの度合いを示す色温度差ΔCCTの値が219Kであり、発光装置200〜202(比較例1〜3)の場合の半値角が14°〜28°に対する色温度差ΔCCTの値381〜1036Kと比較して、発光装置が発する光の色調ムラが非常に低減されていることが分かる。また、本発明の発光装置1についての実施例1の平均演色評価数Raの値は93になっている。これは、本発明の発光装置1が発する白色光は、基準光により近い光が再現できていることを意味している。この白色光は、各蛍光体層10、11、12が無指向性の蛍光体20、25、27を各々含有するため、それらを合成した光は、指向性が効果的に低減されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、例えば照明用光源、液晶のバックライト光源等に用いられる、低い色調ムラと高い演色性が必要な、白色光を発する発光装置に特に有用である。
【符号の説明】
【0087】
1 発光装置
2 基板
3 側壁
5 発光素子
6 外部電極
7 導電線ワイヤ
10、11、12 蛍光体層
10a〜10c、11a〜11c、12a〜12c 蛍光体構成層
15 封止部材
20、25、27 蛍光体
21、26、28 接着剤
30 ヒータ
31 排出口
35 ノズル
36 カートリッジ
37 配管
40 貯留部
41 配管
42 圧力調整装置
43 開閉弁
46 検出器
47 光ファイバー
48 分光器
49 配線
50 電源
51 光学レンズ
55 高圧電源
56 電圧制御装置
100、200〜202 比較例としての発光装置
101 地図灯
102 光学レンズ
103 光拡散材
210〜212 比較例としての蛍光体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主発光波長が410nm以下である発光素子の発光面に、前記発光素子からの光を吸収し、波長変換して発光する蛍光体を含有する蛍光体層を1層以上積層した構成を有し、
前記蛍光体層は、蛍光体構成層が複数層積層された構成であり、
前記蛍光体層は、最大厚さ及び最小厚さの差が前記蛍光体の平均粒径の2倍以下であり、
前記発光素子から最も遠くにある蛍光体構成層における前記蛍光体の占有率が50%以下であり、それ以外の蛍光体構成層における前記蛍光体の占有率は60%以上であることを特徴とする、発光装置。
【請求項2】
前記蛍光体層の厚さは、前記蛍光体の平均粒径の5倍以下であることを特徴とする、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記蛍光体構成層は、前記発光素子の発光面上に接着剤を塗布し、塗布された接着剤に前記蛍光体を固着させることにより形成され、前記接着剤は、前記蛍光体の平均粒径以下の厚さに塗布されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
含有する蛍光体が異なる複数の蛍光体層を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光素子の発光面上に前記蛍光体層が2層以上積層されており、
前記発光素子に近い側の前記蛍光体層に含有される蛍光体の主発光波長と、前記発光素子から遠い側の前記蛍光体層に含有される蛍光体の主吸収波長とが異なることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の発光装置。
【請求項6】
主発光波長が410nm以下である発光素子と、前記発光素子からの光を吸収し、波長変換して発光する蛍光体を含有する蛍光体層と、を備え、最大厚さ及び最小厚さの差が前記蛍光体の平均粒径の2倍以下である前記蛍光体層が、前記発光素子の発光面を覆うように、前記発光素子の発光面上に直接形成された発光装置の製造方法であって、
前記蛍光体層は複数層の蛍光体構成層からなり、
前記発光素子から最も遠くにある蛍光体構成層における前記蛍光体の占有率が50%以下であり、それ以外の蛍光体構成層における前記蛍光体の占有率は60%以上であるように前記蛍光体構成層は形成されることを特徴とする、発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記蛍光体層の厚さを、前記蛍光体の平均粒径の5倍以下に形成することを特徴とする、請求項6に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記蛍光体層を形成する際には、前記発光素子上に接着剤を前記蛍光体の平均粒径よりも薄く塗布した後、前記塗布された接着剤に前記蛍光体を固着して蛍光体構成層を形成する形成工程を行い、前記蛍光体層について所望の色温度が得られるまで前記蛍光体構成層を積層することを特徴とする、請求項6又は7に記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記接着剤を塗布する際には、塗布面上をヒータで加熱した状態で行うことを特徴とする、請求項10に記載の発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記1層以上の蛍光体層を積層する際には、前記発光素子に近い側の蛍光体層に含有される蛍光体の主発光波長が、前記発光素子から遠い側の蛍光体層に含有される蛍光体の主吸収波長と異なるように積層することを特徴とする、請求項6〜9のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記複数層の蛍光体構成層を積層する場合、前記接着剤の塗布と、前記蛍光体の固着と、前記接着剤の仮硬化と、色温度の測定とその測定結果の検証と、を繰り返すことにより、所望の色温度を得ることを特徴とする、請求項6〜10のいずれかに記載の発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2010−245576(P2010−245576A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177884(P2010−177884)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2006−320129(P2006−320129)の分割
【原出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【Fターム(参考)】