説明

発光装置及び有機EL素子の駆動方法

【課題】安定性の高い色可変制御を行うことが可能な発光装置及び有機EL素子の駆動方法を提供する。
【解決手段】印加する電流値に応じて発光色が変化する有機EL素子10Aと、有機EL素子10Aに駆動波形を供給する駆動回路20と、所望の発光色に応じて駆動回路20における前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を可変させ、また、有機EL素子10Aの温度変化に伴う発光色のドリフトに応じて印加する前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を補正する補正機能を有する制御手段30と、を備えてなることを特徴とする発光装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electro Luminescence)素子を用いた発光装置及び有機EL素子の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機材料によって形成される自発光素子として知られる有機EL素子は、例えば、陽極となるITO(Indium Tin Oxide)等からなる第一電極と、少なくとも発光層を有する有機層と、陰極となるアルミニウム(Al)等からなる非透光性の第二電極と、を順次積層してなるものである(特許文献1参照)。
【0003】
かかる有機EL素子は、第一電極から正孔を注入し、また、第二電極から電子を注入して正孔及び電子が前記発光層にて再結合することによって光を発するものである。有機EL素子はディスプレイへの採用のほか、近年では有機EL素子を光源とした照明装置も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−194393号公報
【特許文献2】特開平5−94875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、有機EL素子としては印加電圧を変化させることにより発光色を可変するものが知られている(例えば特許文献2参照)。かかる有機EL素子を光源に適用すれば照明色を任意に変更可能な照明装置を得ることができる。
【0006】
しかしながら、有機EL素子は温度変化や連続駆動による経時劣化などに起因して発光特性が変動する特性を有しており、同様の駆動電流、駆動電圧を印加した場合でも前述の状況変化によって得られる発光色が異なる場合があり、色可変の有機EL素子を照明装置などに用いる場合には発光色の安定性の点でなお改善の余地があった。
【0007】
そこで本発明は、この問題に鑑みてなされたものであり、安定性の高い色可変制御を行うことが可能な発光装置及び有機EL素子の駆動方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発光装置は、前記課題を解決するために、印加する電流値に応じて発光色が変化する有機EL素子と、
前記有機EL素子に駆動波形を供給する駆動回路と、
所望の発光色に応じて前記駆動回路における前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を可変させ、また、前記有機EL素子の温度変化に伴う発光色のドリフトに応じて印加する前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を補正する補正機能を有する制御手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0009】
前記有機EL素子の温度変化に伴う発光色のドリフトと連関性のある連関情報を取得する連関情報取得手段を備え、前記制御手段は、前記連関情報取得手段からの前記連関情報に基づいて前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方の補正を行うことを特徴とする。
【0010】
前記連関情報取得手段は、前記連関情報として前記有機EL素子の駆動電圧、前記有機EL素子または前記有機EL素子と構造が同様である他の有機EL素子の光量もしくは周囲温度の少なくともいずれかを取得することを特徴とする。
【0011】
前記有機EL素子は、発光色の異なる複数の発光層を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の発光装置は、前記課題を解決するために、印加する電流値に応じて発光色が変化する有機EL素子と、
前記有機EL素子に駆動波形を供給する駆動回路と、
所望の発光色に応じて前記駆動回路における前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を可変させ、また、前記有機EL素子の経時劣化に伴う発光色のドリフトに応じて印加する前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を補正する補正機能を有する制御手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0013】
前記有機EL素子の経時劣化に伴う発光色のドリフトと連関性のある連関情報を取得する連関情報取得手段を備え、前記制御手段は、前記連関情報取得手段からの連関情報に基づいて前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方の補正を行うことを特徴とする。
【0014】
前記連関情報取得手段は、前記連関情報として前記有機EL素子の駆動電圧、前記有機EL素子または前記有機EL素子と構造が同様である他の有機EL素子の光量もしくは発光積算時間の少なくともいずれかを取得する。
【0015】
前記有機EL素子は、発光色の異なる複数の発光層を有することを特徴とする。
【0016】
本発明は、前記課題を解決するために、印加する電流値に応じて発光色が変化する有機EL素子の駆動方法であって、
所望の発光色に応じて前記有機EL素子に印加する駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を可変させ、また、前記有機EL素子の温度変化に伴う発光色のドリフトに応じて印加する前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を補正することを特徴とする。
【0017】
前記有機EL素子の温度変化に伴う発光色のドリフトと連関性のある連関情報を取得し、前記連関情報に基づいて前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方の補正を行うことを特徴とする。
【0018】
前記連関情報として前記有機EL素子の駆動電圧、前記有機EL素子または前記有機EL素子と構造が同様である他の有機EL素子の光量もしくは周囲温度の少なくともいずれかを取得することを特徴とする。
【0019】
本発明は、前記課題を解決するために、印加する電流値に応じて発光色が変化する有機EL素子の駆動方法であって、
所望の発光色に応じて前記有機EL素子に印加する駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を可変させ、また、前記有機EL素子の経時劣化に伴う発光色のドリフトに応じて印加する前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を補正することを特徴とする。
【0020】
前記有機EL素子の経時劣化に伴う発光色のドリフトと連関性のある連関情報を取得し、前記連関情報に基づいて前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方の補正を行うことを特徴とする。
【0021】
前記連関情報として前記有機EL素子の駆動電圧、前記有機EL素子または前記有機EL素子と構造が同様である他の有機EL素子の光量もしくは発光積算時間の少なくともいずれかを取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、安定性の高い色可変制御を行うことが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態である照明装置の電気的構成を示す図。
【図2】同上照明装置に用いられる有機EL素子を示す模式図。
【図3】同上有機EL素子に印加される駆動波形を示す図。
【図4】実施例1における色温度と駆動電圧との関係を示す図。
【図5】実施例1における色温度と電流値との関係を示す図。
【図6】実施例1における光束の変化量と駆動電圧の変化量との関係を示す図。
【図7】実施例1における光束と点灯率100%時の電流値との関係を示す図。
【図8】実施例1における初期光束値となる電流値と点灯率との関係を示す図。
【図9】実施例2における色温度の経時劣化を示す図。
【図10】実施例2における光束の経時劣化を示す図。
【図11】同上照明装置に用いられる有機EL素子の色温度と素子ジャンクション温度との関係を示す図。
【図12】実施例5における駆動電圧の変化量と素子ジャンクション温度との関係を示す図。
【図13】実施例6における光束と素子ジャンクション温度との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に基づいて本発明の発光装置及び有機EL素子の駆動方法を照明装置に適用した一実施形態について説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態である照明装置100の電気的構成を示す図である。照明装置100は、後述する有機EL素子を発光部とする有機ELパネル10と、有機ELパネル10に駆動波形を印加するための駆動回路20と、を備える。また、照明装置100は、駆動回路20を制御する制御手段30と、制御手段30への入力操作を行うための操作手段40及び後述する連関情報を取得して制御手段30に入力する連関情報取得手段50と、を備える。
【0026】
図2は、有機ELパネル10に備えられる有機EL素子10Aを示す図である。有機EL素子10Aは、支持基板11上に陽極となる第一電極12と、有機層13と、陰極となる第二電極14と、を積層形成してなるものである。なお、有機EL素子10Aは、吸湿剤が塗布される封止基板を支持基板11上に配設して封止されるものであるが、図2ではこの封止基板を省略している。
【0027】
支持基板11は、例えば透光性の無アルカリガラスからなる矩形状の基板である。なお、アルカリガラス等のその他のガラス基板を用いてもよく、ガラス厚についても特に限定されない。支持基板11上には、第一電極12、有機層13及び第二電極14が順に積層形成される。
【0028】
第一電極12は、正孔を注入する陽極となるものであり、支持基板11上にITOあるいはAZO等の透明導電材料をスパッタリング法あるいは真空蒸着法等の手段によって50〜500nmの膜厚で層状に形成し、フォトエッチング等の手段によって所定の形状にパターニングされてなる。また、第一電極12は、表面がUV/O処理やプラズマ処理等の表面処理を施されてなる。なお、第一電極12のエッジを含む支持基板11の周辺領域は例えばポリイミド系統の絶縁材料からなる絶縁膜(図示しない)で覆われ、発光部の形状を画定し、短絡などを防止する。
【0029】
有機層13は、少なくとも有機材料からなる発光層を含む多層からなり、第一電極12上に形成されるものである。本実施形態においては、第一電極12側から順に正孔注入層13a、正孔輸送層13b、第一の発光層13c、第二の発光層13d及び電子輸送層13eが順に積層形成されてなる。
【0030】
正孔注入層13aは、第一電極12から正孔を取り込む機能を有し、例えばアミン系化合物等の正孔輸送性有機材料を蒸着法等の手段によって膜厚20〜120nm程度の層状に形成してなる。
【0031】
正孔輸送層13bは、正孔を第一の発光層13cへ伝達する機能を有し、例えばアミン系化合物等の正孔輸送性材料を蒸着法等の手段によって膜厚20〜40nm程度の層状に形成してなる。
【0032】
第一の発光層13cは、電子輸送性の第一のホスト材料と正孔輸送性材料と発光を呈する第一の発光ドーパントとを共蒸着等の手段によって混合した膜厚20〜60nmの混合層からなる。
前記第一のホスト材料は、正孔及び電子の輸送が可能であり、その分子内で正孔及び電子が再結合することで前記第一の発光ドーパントを発光させる機能を有する。ここで、電子輸送性のホスト材料とは電子輸送能力の比較的高い有機材料であり、具体的には電子移動度μeが高く正孔移動度μhが低い材料を言う。具体的には例えばアントラセン誘導体を用いる。前記正孔輸送性材料としては例えば正孔輸送層13bと同様の材料を用いるが異なる材料でもよい。
前記第一の発光ドーパントは、正孔と電子との再結合に反応して発光する機能を有し、所定の発光色を示す有機材料からなる。本実施形態では例えば青緑色発光を示すスチリルアミン、アミン置換スチリルアミン化合物からなる蛍光材料で濃度消光を起こさない程度のドーピング量で用いる。
【0033】
第二の発光層13dは、電子輸送性の第二のホスト材料と正孔輸送性材料と発光を呈する第二の発光ドーパントとを共蒸着等の手段によって混合した膜厚20〜60nmの混合層からなる。
前記第二のホスト材料は、正孔及び電子の輸送が可能であり、その分子内で正孔及び電子が再結合することで前記第二の発光ドーパントを発光させる機能を有する。ここで、電子輸送性のホスト材料とは電子輸送能力の比較的高い有機材料であり、具体的には電子移動度μeが高く正孔移動度μhが低い材料を言う。具体的には例えばアントラセン誘導体からなる。前記正孔輸送性材料としては例えば正孔輸送層13bと同様の材料を用いるが異なる材料でもよい。
前記第二の発光ドーパントは、正孔と電子との再結合に反応して発光する機能を有し、前述の前記第一の発光ドーパントとは異なる所定の発光色を示す有機材料からなる。本実施形態では例えば橙色発光を示すフルオランテン骨格又はペンタセン骨格を有する蛍光材料で濃度消光を起こさない程度のドーピング量で用いる。なお、前記第一,第二の発光ドーパントとしては、蛍光材料のほか燐光材料あるいは熱遅延蛍光材料を用いてもよい。また、第一の発光層13cと第二の発光層13dとの発光色を逆にしてもよい。
【0034】
電子輸送層13eは、電子を第二の発光層13dへ伝達する機能を有し、例えばトリアジン誘導体とアルカリ金属錯体とを共蒸着等の手段によって混合した膜厚20〜60nmの混合層からなる。
【0035】
第二電極14は、電子を注入する陰極となるものであり、電子輸送層13e上に例えばAl,マグネシウム(Mg),コバルト(Co),Li,金(Au),銅(Cu),亜鉛(Zn)等の低抵抗導電材料をスパッタリング法や真空蒸着法等の手段によって膜厚20〜300nmの層状に形成した導電膜からなるものである。
【0036】
以上のように、第一電極12と第二電極14との間に電圧を印加すると所定の発光色で発光する有機EL素子10Aが構成されている。なお、第一電極12あるいは第二電極14と接続される引き回し配線や端子等の周知の内容については説明を簡略化にするために適宜省略した。
【0037】
駆動回路20は、電源Vccに接続され有機EL素子10Aに供給される駆動波形Pの電流波高値Iを可変する可変電流回路21と、可変電流回路21と有機EL素子10Aとの間に配置され有機EL素子10Aへの電流供給のオン・オフを切り換えるスイッチ素子22と、スイッチ素子22のオン・オフを制御するドライブ回路23と、を有する。また、駆動回路20は、図3に示す矩形波を駆動波形Pとして生成する。
【0038】
制御手段30は、主にマイコン(マイクロコンピュータ)から構成され、操作手段40及びその他外部からの入力に応じてスイッチ素子22のオン・オフを切り換え、有機EL素子10Aの発光を制御するものである。また、制御手段30は、連関情報取得手段50から入力される連関情報に応じてEPROMやフラッシュメモリなどの記憶素子からなる記憶部31から電流波高値Iの補正データを取得し、有機EL素子10Aに供給する電流波高値Iを補正する後述する補正機能を有する。
【0039】
操作手段40は、押しボタンスイッチやボリュームスイッチからなり、有機EL素子10Aの発光のオン、オフや発光輝度、さらには発光色を任意に選択するための手段である。
【0040】
連関情報取得手段50は、有機EL素子10Aの温度変化に伴う発光色のドリフト(ズレ)、すなわち、可変させた場合の所望の発光色に対する色ズレと連関性のある、あるいは、有機EL素子10Aの経時劣化に伴う発光色のドリフトと連関性のある連関情報を取得する手段であり、本実施形態においては、有機EL素子10Aの温度変化に伴う発光色のドリフトと連関性のある連関情報としては有機EL素子10Aの駆動電圧、有機EL素子10Aまたは有機EL素子10Aと構造が同様である他の有機EL素子の光束(光量)もしくは周囲温度の少なくともいずれかを取得し、有機EL素子10Aの経時劣化に伴う発光色のドリフトと連関性のある連関情報としては有機EL素子10Aの駆動電圧、有機EL素子10Aまたは有機EL素子10Aと構造が同様である他の有機EL素子の光束(光量)もしくは発光積算時間の少なくともいずれかを取得する。
【0041】
以上の各部によって照明装置100が構成されている。
【0042】
次に、有機EL素子10Aの駆動方法における色可変制御方法について説明する。
【0043】
本実施形態における有機EL素子10Aは、主に第一電極12側の第一の発光層13cにおける前記正孔輸送性材料の濃度と第二電極14側の第二の発光層13dにおける前記正孔輸送性材料の濃度とを等しくすることで正孔注入輸送と電子注入輸送のキャリアバランスによって正孔と電子との再結合領域、すなわち発光領域が移動しやすい素子構成となっており、両電極12、14間に注入する電流密度に応じて発光領域が移動することで混色のバランスが変化し発光色を意図的に変化させることができる。青緑発光を呈する第一の発光層13cと橙色発光を呈する第二の発光層13dとを有する本実施形態の有機EL素子10Aにあっては、電流密度が比較的低い場合には正孔と電子の再結合領域が正孔輸送層13b側に移動して色温度が約6000Kの青みがかった寒色系の白色発光が得られ、電流密度を上昇させると正孔と電子との再結合領域は電子輸送層13e側に移動し、色温度が約3500Kの橙色がかった暖色系の白色となる。なお、色温度が約6000Kの光は業務や勉強など作業に集中して取り組むのに好適な光であり、色温度が約3500Kの光は寒色系の光に比べて安らぎ感のある落ち着いた光である。なお、この色温度は一例を示したものに過ぎず、本実施形態における色可変の有機EL素子10Aによって得られる色温度の変化幅は、素子構造や電流密度によって青緑から橙色までの色温度感であれが広く任意に選択可能である。
【0044】
したがって、操作手段40の操作入力に応じて、有機EL素子10Aに印加される駆動波形Pの電流波高値Iを可変することによって、発光色が可変される。なお、電流波高値Iのみを可変するとこれによって光束(明るさ)も変化するため、光束を一定とするためには電流波高値Iに応じて点灯率(所定のフレーム時間における発光時間すなわち電流波高値Iの印加時間の比率)Tを合わせて調整する必要がある。
【0045】
次に、本実施形態における補正方法のうち、経時劣化に伴う発光色のドリフトを補正する補正方法について説明する。
【0046】
一般に、有機EL素子は連続駆動することで構成材料が劣化する。そのため色可変の有機EL素子10Aにおいてはこの連続駆動による経時劣化に伴って発光色の色温度にドリフトが生じることとなる。また、同様に有機EL素子10Aは、経時劣化に伴って光束が減少し、反比例して駆動電圧は上昇する(すなわち電圧降下が生ずる)。本願発明者らは鋭意検討の結果、この経時劣化に伴う発光色のドリフトと相関する連関情報に着目し、この連関情報に基づいて有機EL素子10Aに供給する駆動波形Pの電流波高値Iと点灯率Tを適宜補正する方法を見いだした。
【0047】
・実施例1
(連関情報として駆動電圧を取得する補正方法)
以下、駆動電圧をモニタする事で色温度を補正する方法について説明する。
駆動方法にて色温度と光束を補正するにあたっては、あらかじめ有機EL素子10Aの連続駆動に伴う劣化特性を補う電流補正値を記憶部31に書き込んでおき、駆動電圧をモニタすることで、色温度のドリフト量の試算ならびに補正を可能とした。
本実施例では駆動電圧のモニタは、有機ELパネル10の短絡や接続不良などの時に動作を停止するための保護機能の一部として制御手段30に備えられ、駆動回路20の電源を投入した直後からフレーム周波数毎にモニタし、正常状態である事を確認してから発光に必要な電流を印加するように作成している。そのため、本実施例のように駆動電圧をモニタして色温度を補正する事は容易に達成された。
【0048】
制御手段30は、電源投入後の駆動電圧を計測した結果から、初期電圧値、すなわち所望の色温度のときの駆動電圧値からの差分を算出する。
次に該差分から導き出される色温度変化量を補正するに必要な電流補正値を試算する。
ここで、電流値と出力設定されている点灯率から光束が決定されるが、電流値を変化させた際に、電流値に対する発光効率の違いにより上昇または下降する光束の変化分を試算し、該変化分から点灯率差分を試算する。
そして前記電流補正値に基づいて電流波高値Iを補正することで色温度を補正し、また点灯率差分を適用して点灯率Tを補正する事で光束のドリフト(ズレ)も補正できるようにした。したがって、本実施例を適用することで点灯による連続駆動でドリフトした色温度を補正する事が可能となり、色温度のドリフトが視認されない。
【0049】
本実施例では、外形サイズ150mm×25mm、発光面積が31cmで初期光束を30lmとし、色温度の可変幅を3500Kから6000Kまで変化する色温度可変型の有機ELパネル10とした。
図4は、初期状態及び連続駆動により色温度の変化幅が3700Kから6300Kに変化した場合の色温度と駆動電圧の関係を示すものである。また図5は初期状態及び連続駆動により色温度の変化幅が3700Kから6300Kに変化した場合の色温度と電流値の関係を示すものである。図4に示すように例えば初期状態で色温度4000Kでの駆動電圧は連続駆動により8.2Vから8.5Vへシフトし、これに連関して図5のように色温度4000Kの発光を得るための電流値が1.9Aから2.7Aへ変化してしまう。これは電流値を初期値のままであると得られる色温度がドリフトすることを示している。したがって、色温度4000Kを得る設定においては本実施例の補正方法により駆動波形Pの電流波高値Iを2.7Aへ変更することで色温度のドリフトを補正した。
また図6に示す光束の変化量と駆動電圧の変化量との関係から、図7に示すように駆動電圧のシフトから予想される光束の変化量があらかじめわかっているため、電流波高値Iを変更した際に得られる点灯率100%時の光束がわかり、さらに同図から試算される初期光束値(30lm)となる電流波高値Iと点灯率Tの関係を光束のドリフトを考慮して図8のように試算しておくことで、点灯率Tを補正することで光束値のドリフトも補正した。本実施例では色温度4000K時の初期点灯率21%に対し光束が75%まで低下した場合点灯率Tを16%に補正して初期光束値を得た。
また確認として、点灯率100%時の光束値と色温度の関係を図5、図7から求めると、色温度4000Kでの点灯率100%時の光束値の値は、初期状態での148lmから電流波高値Iの補正後は162lmとなり、点灯率を初期点灯率21%から16%にする事で、初期光束値である30lmが得られることがわかる。
かかる補正は光束値と点灯率の関係を記憶部31に登録しておくことで容易に実施される。なお、図6は光束の変化量と駆動電圧の変化量との関係を示す。図7は初期状態、光束が初期状態の90%に劣化した状態、光束が初期状態の75%に劣化した状態の光束と点灯率100%の電流値との関係を示す。図8は、初期状態、光束が初期状態の90%に劣化した状態、光束が初期状態の75%に劣化した状態の初期光束値となる電流値と点灯率の関係を示す。
なお、以上の説明は色温度4000Kでの発光駆動を例に挙げたが、色温度が可変域のどの位置であっても同様の補正を行う事で色温度のドリフトを補正できることは明らかである。
【0050】
本実施例では暖色系の色温度となる高電流密度側では発光に伴う駆動電圧は高い値となり、また寒色系の色温度となる低電流密度側では駆動電圧が低い値となるため、色温度の補正領域における電圧差が大きい場合には、色温度のドリフトの補正をどの程度の分解能で実施するかによっては、高い駆動電圧の差分の分解能が必要であり、記憶するデータ量が増大するため、注意が必要である。
また本実施例は色温度可変幅の一つの色温度設定値に対する補正を示したに過ぎないが、他の色温度、例えば色温度可変する場合には、スイッチングボリュームなどで色温度を変更するように照明装置100を形成し、色温度の設定を例えば10段階や128段階などと決定しておくが、その色温度の変化段階数に応じて、それら補正データを保有、試算する必要がある。そのため、段階数が多い場合には、多数のデータを保有する事が可能な駆動回路20及び制御手段30とする必要がある。
またこれら試算は制御手段30たるマイコンで容易に試算でき、本発明では駆動回路20の電源投入直後からフレーム周波数毎にこれらを試算しているため、常に色温度のフィードバックがかかる照明装置100とした。
また色温度の変化量や電流補正値の試算方法及び手順は本実施例に限定されるものではない。特に色温度可変の有機EL素子10Aの特性データと駆動回路20及び制御手段30の性能、試算分解能などにより適宜変えていくべきものである。
【0051】
・実施例2
(連関情報として光束を取得する補正方法)
次に実施例2として、光束をモニタすることで色温度のドリフトを補正する方法について説明する。
実施例1と同様の方法で作成した色温度可変型の有機ELパネル10を使用し、さらに同様の方法で作成した1mm×1mmのテストエレメントなる有機EL素子(他の有機EL素子)を駆動回路20を構成する回路基板に配置し、同テストエレメントから発する光の光束を直接モニタできるようフォトダイオードを配置した。なお、本実施例では回路基板に光束をモニタする手段を配置したが、回路基板の外側に同手段たるテストエレメント及びフォトダイオードを配置してもよいし、または有機ELパネル10の表示額縁の外側にさらなる有機EL素子をテストエレメントとして例えば1mm×1mm程度で形成し、同素子の光を直接モニタできるようフォトダイオードを設置してもよい。その場合、有機ELパネル10はモジュールの形態をとり、有機ELパネル10の額縁を隠すような形状にし、さらにはフォトダイオードと光束検出用のテストエレメントが見えないような構造にするのが望ましい。また本実施例では別途設けられるテストエレメントをフォトダイオードで光束計測する構成としたが、有機EL素子10Aの発光部の一部をモニタするようにフォトダイオードを設置してもよいし、また支持基板11の切断面の端部から出射した発光部でない光をモニタするように設置してもよい。さらには有機ELパネル10の裏面に同じ特性を有するもう一枚の色温度可変型有機ELパネル、またはそれより小さく作成したもう一枚の色温度可変型有機ELパネルを設置し、同パネルの光束をモニタしてもよい。
【0052】
次に上述のようにモニタした光束に基づいて色温度を補正する方法を説明する。
実施例1と同様に有機EL素子10Aの劣化特性に伴う電流補正値を記憶部31に書き込んでおき、発光開始時からの光束をモニタし、制御手段30に入力する。
次に制御手段30は、有機ELパネル10へ出力する設定電流値と点灯率からドリフトが発生する以前の光束値を計算、またはあらかじめ記憶部31に書き込んでおき、検出した光束との差分を試算する。
次に該差分から駆動電圧の変化量を試算する。図6に示すように、一般に有機EL素子は光束の劣化特性と駆動電圧の変化量とは直線の関係にあり、本発明の色可変の有機EL素子10Aにおいても同様の傾向を示している。
駆動電圧の変化量が試算されたら、実施例1と同様にして色温度の変化量を算出する。
次に色温度の変化量を補正するための補正電流値を試算する。補正電流値を試算すると、同補正電流値を印加する事を前提に、設定されている点灯率から光束値の差分を補正するための点灯率Tを試算する。
試算された電流波高値Iと点灯率Tを有機EL素子10Aに印加することで、実施例1と同様にドリフトした色温度が補正された駆動となり、色温度変化が視認されない。
なお、色温度補正後に光束を測定し、光束値が所望の値から逸脱する場合には、点灯率Tを再補正することで、フィードバックをかけてもよい。
本実施例では光束の測定にフォトダイオードを使用したが、CCDやCMOS、フォトマルなどを使用してもかまわない。またこれを使用して分光を行い、発光スペクトルから色温度の変化量を計測し、上記と同様の手法にて、有機EL素子10Aに印加する電流波高値Iと点灯率Tを補正してもかまわない。ただし、この場合、制御手段30たるマイコンに負担がかかるため、試算がおそくなったり、フィードバックするための遅延が発生し、補正に伴う色温度の変化が視認される場合がある。またサイズが大きくなるため、本方法は大きい有機ELパネル10を使用する場合には好適だが、小さい有機ELパネル10においては額縁が大きくなりすぎてしまったりするため、有機ELパネル10とは離れた場所にてテストエレメントや異なるもう一つの色温度可変型有機ELパネルを用意し、色温度の変化量を計測し、制御手段30へ転送し、駆動を補正するように照明装置100を構成する事が望ましい。
本実施例でも同様に色温度可変型有機ELパネル10の連続駆動に伴ってドリフトする色温度を補正することが可能であることは明らかである。
また他の補正例として、光束を測定し、連続駆動に伴う光束の変化量を試算する。次に光束の変化量と色温度の関係から色温度の変化量を算出し、色温度の変化量を補正するべき電流補正値を試算し、電流値を補正した際の点灯率100%時の光束値の試算より点灯率を試算し、色温度と光束値の補正を行っても良い。
また、有機EL素子10Aの特性により、色温度のドリフトと光束のドリフトが直線の関係をもつ場合には、光束の測定より光束を初期値と同様の値にする電流値を試算し、点灯率を補正する事で色温度の補正が補われることもあり、色温度の変化量や電流補正値の試算方法は他方法があるが、試算方法、手順は本実施例に限定されるものではない。特に色温度可変の有機EL素子10Aの特性や実験データと駆動回路20及び制御手段30の性能、試算分解能などにより変えていくべきものである。
また、実施例1と同様だが、色温度可変幅における色温度変化の段階数に応じてこれらを試算、データを保有する事が望ましい。
【0053】
・実施例3
(連関情報として発光積算時間を取得する補正方法)
次に実施例3として、発光積算時間をモニタすることで色温度のドリフトを補正した実施例について説明する。
まず、あらかじめ連続駆動に伴う有機EL素子10Aの劣化特性に伴う電流補正値を記憶部31に書き込んでおく。
発光積算時間は、一定の周期であるフレーム周波数内に設定している点灯率との積算で試算でき、本手法にて試算した発光積算時間を記憶部31に記憶させる。なお、外部にアナログカウンター等を用意し、それらを使用して発光積算時間を記録させてもかまわない。
制御手段30は、まず発光積算時間を試算し、該発光積算時間でドリフトする色温度の変化量を試算する。また同様に該発光積算時間でドリフトする光束の変化量を試算する。これは図9、図10に示すようにあらかじめ実施している寿命試験から得られた色温度と連続駆動時間との関係、光束と連続駆動時間との関係から求められるもので、同試験から求めた変化量とこれに応じた電流補正値を記憶部31に記録しており、発光積算時間に基づいて導出するものである。なお、図9は初期の発光色の色温度3500Kで駆動電流値が4.7Aである場合と、初期の発光色の色温度が6000Kで駆動電流値が0.5Aである場合の色温度の変化量と連続駆動時間との関係を示している。図10は、光束の変化量と連続駆動時間との関係を示している。
次に、色温度の変化量を補正する電流波高値Iを導出し、また、電流波高値Iから得られる光束と光束の変化量との差分を点灯率Tを変更して補正した。
本実施例でも他の実施例と同様に連続駆動に伴ってドリフトする色温度を補正することを可能としていることは明らかである。
なお、本実施例ではあらかじめ補正電流値を記憶部31内に取り込んでいるが、電源投入時に駆動電圧の初期値を読み込み、例えば、実施例1で示した方法を併用し、発光積算時間と駆動電圧の変化から、色温度を補正する電流値を試算してもよい。図6及び図10からわかるように発光積算時間と駆動電圧の変化量はほぼ直線の結果を示すため、導出は容易である。
さらには実施例2で示した光束を計測し、かつ本実施例で示す発光積算時間をモニタし、光束の減少率と発光積算時間の関係から色温度の変化量を予測試算し、補正する電流値を決定してもよい。
特に色温度可変有機EL素子10Aの特性次第では、試算方法は本手法に限られるものではなく、実施例1と実施例2ならびに実施例3で示す色温度の変化量を検出し、かつ補正する方法を併用して実施してもかまわない。
【0054】
・実施例4
(緑色発光を呈する発光層の追加)
次に前述の実施形態で示した有機EL素子10Aに緑色の第三の発光層をさらに配設した実施例を説明する。実施例1〜3では青緑と橙に発光する第一、第二の発光層13c、13dを積層し、色温度を3500Kから6000Kに変化する色温度可変の有機EL素子10Aを作成したが、照明用途における光源としては、演色性評価指数が80以上ある事が望ましく、さらには可視光領域の全域に渡る発光スペクトルを有する発光が望ましい。そのため、本実施例では第二の発光層13dと電子輸送層13eとの間に500〜600nm程度の波長域で緑に発光する第三の発光層を追加することで、可視光域全域にわたる発光スペクトルを有する色温度可変の有機EL素子10Aを形成した。
第三の発光層は、電子輸送性の第三のホスト材料と正孔輸送性材料と発光を呈する第三の発光ドーパントとを共蒸着法等の手法により混合し、膜厚が10〜40nmの層状に形成してなる。
前記第三のホスト材料は、正孔及び電子が輸送されて再結合し励起子を形成し、発光ドーパントへエネルギー移動することで発光ドーパントに発光を生じさせるものである。前記第三のホスト材料は、例えばアントラセン誘導体からなる。前記正孔輸送性材料としては例えば正孔輸送層13bと同様の材料を用いるが異なる材料でもよい。
第三の発光ドーパントは、例えばクマリン誘導体からなる蛍光材料で緑色の発光を示す。また、第三の発光ドーパントのドーピング量は、濃度消光を起こさない程度としている。なお、第三の発光ドーパントは、燐光材料、熱遅延蛍光材料でもよい。
また、本実施例では、青色の第一の発光層13c、橙色の第二の発光層13d、緑色の第三の発光層を順に形成したが、橙色発光層、青色発光層、緑色発光層の配置位置を変えて形成してもよい。
本実施例の色温度可変の有機EL素子10Aにおいても、駆動時に印加する電流波高値Iを変えることで、色温度が3000Kから5000K程度に変化することができた。さらに演色性評価指数は82となった。
なお、本実施例の有機EL素子10Aに実施例1〜3に従う色温度補正方法を適用すれば色温度を補正し、かつ点灯率を補正することで、光束を同様に補正することができるのは明らかである。
【0055】
次に、本実施形態における補正方法のうち、温度変化に伴う発光色のドリフトを補正する補正方法について説明する。
【0056】
一般に有機EL素子は温度特性を有しており、温度上昇に伴い、例えば発光効率や色温度が変わることが知られている。本実施形態の色温度可変の有機EL素子10Aにおいても図11に示すとおり、環境温度や自己発熱による有機EL素子10Aのジャンクション温度(接合部温度)Tjが変わる事で、発光効率ならびに色温度が変わり、温度上昇に伴い色温度が低下し、また光束が上昇するという特性を有している。なお、図11は、ジャンクション温度Tjが25℃で発光色の色温度が6000Kである場合の色温度とジャンクション温度Tjとの関係を示している。本願発明者らは鋭意検討の結果、この温度変化に伴う発光色のドリフトと相関する連関情報に着目し、この連関情報に基づいて有機EL素子10Aに印加する駆動波形Pの電流波高値Iと点灯率Tを適宜補正する方法を見いだした。
【0057】
・実施例5
(連関情報として駆動電圧を取得する補正方法)
以下、駆動電圧をモニタすることで色温度を補正する方法について説明する。
次に本実施例で使用した温度測定について説明する。
一般に有機EL素子の特性として、素子の耐熱限界温度であるガラス転移温度以下で飽和することなく、素子のジャンクション温度Tjの上昇に伴い、素子の駆動電圧が低下する傾向がある。本実施形態の色温度可変の有機EL素子10Aにおいても同様で、図12に示すようにジャンクション温度Tjの増減に応じ、駆動電圧が変化する。なお、図12は駆動電圧の変化量とジャンクション温度Tjとの関係を示している。
本実施例では、実施例1で説明した方法と同様の手法を使用し、環境温度ならびに自己発熱に伴うジャンクション温度Tjの増減を駆動電圧をモニタすることで実施した。
制御手段30は、駆動電圧の温度変化に伴う変化量をモニタし、図12に示す関係からこれに伴うジャンクション温度Tjの変化量を試算する。次に図11に示す関係から、ジャンクション温度Tjの変化量に伴う色温度の変化量を試算する。
後は、前述の実施例1に示したように、色温度の変化量を補正するべき電流補正値を試算し、これに伴う光束の変化量を試算する。このとき、有機EL素子10Aの発光効率が変化する場合には、それを乗じた光束試算値を用意すればよい。
本実施例からわかるように、環境温度や自己発熱に伴う温度変化による色温度のドリフトについて、本補正方法を用いることで駆動方法にて容易に色温度のドリフトを補正することができる事は明らかである。
【0058】
・実施例6
(連関情報として光束を取得する補正方法)
次に実施例6として、光束をモニタすることにより色温度のドリフトを補正する方法について説明する。
光束の検出は、実施例2で説明したように、1mm×1mmのテストエレメントを有機ELパネル10の最外周に作成し、同テストエレメントにフォトダイオードを設置することでモニタするようにした。
またテストエレメントとフォトダイオードとが発光部から隠れるようモジュール化し、かつ外部から光が入らないようにした。本実施例で作成した光束検出する有機ELパネル10は、パネルの温度変化による光束を直接モニタするため、回路基板に設置する方法に比べ、環境温度の変化に敏感に対応する事が可能である。
また環境温度の変化が大きく変わらない、または駆動回路20を有機ELパネル10に近い部位に配置する場合には、テストエレメントとフォトダイオードとを回路基板に具備する方が好適である。また実施例2で説明したように、光束を検出するテストエレメントとフォトダイオードとを有機ELパネル10の背面に接続してもよい。
図13に示すように、温度変化によって発光効率が変化する有機EL素子10Aでは、光束の変化量から温度変化量が算出できる。なお、図13は、ジャンクション温度Tjが25℃で発光色の色温度が6000Kである場合の光束とジャンクション温度Tjとの関係を示している。
制御手段30は、実施例5に示したのと同様に、図11に示す関係から温度変化に伴う色温度の変化量を試算し、同様に印加する電流波高値Iと点灯率Tを補正することで、温度変化に伴う色温度のドリフトを補正することができる。
また、有機EL素子10Aによっては、温度により発光効率の変化がピーク値を有する逆U字型の特性を成す場合がある。その場合、どちらか側を決定するべく、駆動電圧をモニタしてどちら側かを決定してもよい。図12のように、駆動電圧は温度変化に対して逆U字型の特性を示さないため、温度を決定することまた温度変化による色温度の変化量を試算することが容易となる。
また色温度補正後に光束を再度測定し、光束値が所望の値から逸脱する場合には、点灯率Tを再補正することで、更なるフィードバックをかけてもよい。
本実施例ではフォトダイオードを使用したが、CCDやCMOS、フォトマルなどを使用してもかまわない。またこれを使用して分光を行い、特定の波長の発光スペクトルが温度特性を有しているなら、該発光スペクトルを測定し、直接色温度の変化量を計測し、上記と同様の手法にて、有機EL素子10Aに印加する電流波高値Iと点灯率Tを補正してもかまわない。ただし、この場合、制御手段30たるマイコンに負担がかかるため、試算がおそくなったり、しいてはフィードバックするための遅延が発生し、補正に伴う色温度の変化が視認される場合がある。またサイズが大きくなるため、本方法は大きい有機ELパネル10を使用する場合には好適だが、小さい有機ELパネル10おいては額縁が大きくなりすぎてしまったりするため、有機ELパネル10とは離れた場所にてテストエレメントや異なるもう一つの色温度可変型有機ELパネルを用意し、CCDやCMOS、フォトマルなどで色温度の変化量を計測し、制御手段30へ転送し、駆動を補正するように照明装置100を構成する事が望ましい。
【0059】
・実施例7
(連関情報として周囲温度を取得する補正方法)
次に実施例7として、周囲温度(有機EL素子10A自体の温度を含む、以下同じ)をモニタすることで色温度のドリフトを補正した実施例について説明する。
周囲温度の検出は実施例1、5で説明した駆動電圧で測定する方法、また実施例2、6で説明した光束を測定する方法がある。その場合、色温度を補正する事は上述の説明で明らかである。
その他、サーミスタや熱起電力をモニタできる例えば熱電対を有機ELパネル10に貼り付けて温度を計測することで、温度の変化量を試算し、実施例6と同様の手法にて、色温度の変化量を試算し、次に該色温度の変化量を補正するための電流補正値を試算する。電流補正値による電流波高値Iの補正が決定したら、光束を所望の値にするために点灯率Tを補正することで、温度変化による色温度の補正が可能となる。
またサーミスタや熱電対にて温度を計測する場合、例えば駆動回路20の回路基板内または外に設置することで周囲温度をモニタしてもよく、または有機ELパネル10の設置位置が回路基板から離れ、特に環境温度が変化しやすい場所などに設置する場合には、有機EL素子10Aのジャンクション温度Tjを直接測定するべく有機ELパネル10の裏面に接続してモニタしてもよい。
また抵抗熱測定のように熱により抵抗がかわる材料を有機ELパネル10内に内装し、温度をモニタしてもよい。またその場合、駆動電圧に余裕があれば、有機EL素子10Aのカソード(第二電極14)ラインとアノード(第一電極12)ラインに並列に実装することで、有機ELパネル10から駆動回路20までの配線の追加なしに温度変化をモニタすることができる。
【0060】
以上の説明は本発明を例示するものであって、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更、変形が可能でことが言うまでもない。また、経時劣化に伴う発光色のドリフトの補正方法と温度変化に伴う発光色のドリフトの補正方法とを別個に説明したが、例えば経時劣化に伴う発光色のドリフト補正を第一の補正とし、温度変化に伴う発光色のドリフト補正を第二の補正として併用して実行するものであってもよい。また、本発明の発光装置に用いられる有機EL素子は複数の発光層を有する構成に限られず、電流値による色可変制御ができるものであれば単一発光層に2種以上の発光ドーパントをドープしたものであってもよい。また、本実施形態では発光装置として照明装置100を挙げたが、他には表示装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、色可変の有機EL素子を用いた発光装置及び色可変の有機EL素子の駆動方法に好適である。
【符号の説明】
【0062】
100 照明装置
10 有機ELパネル
10A 有機EL素子
11 支持基板
12 第一電極
13 有機層
13a 正孔注入層
13b 正孔輸送層
13c 第一の発光層
13d 第二の発光層
13e 電子輸送層
14 第二電極
20 駆動回路
21 可変電流回路
22 スイッチ素子
23 ドライブ回路
30 制御手段
31 記憶部
40 操作手段
50 連関情報取得手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加する電流値に応じて発光色が変化する有機EL素子と、
前記有機EL素子に駆動波形を供給する駆動回路と、
所望の発光色に応じて前記駆動回路における前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を可変させ、また、前記有機EL素子の温度変化に伴う発光色のドリフトに応じて印加する前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を補正する補正機能を有する制御手段と、を備えてなることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記有機EL素子の温度変化に伴う発光色のドリフトと連関性のある連関情報を取得する連関情報取得手段を備え、前記制御手段は、前記連関情報取得手段からの前記連関情報に基づいて前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方の補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記連関情報取得手段は、前記連関情報として前記有機EL素子の駆動電圧、前記有機EL素子または前記有機EL素子と構造が同様である他の有機EL素子の光量もしくは周囲温度の少なくともいずれかを取得することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記有機EL素子は、発光色の異なる複数の発光層を有することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
印加する電流値に応じて発光色が変化する有機EL素子と、
前記有機EL素子に駆動波形を供給する駆動回路と、
所望の発光色に応じて前記駆動回路における前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を可変させ、また、前記有機EL素子の経時劣化に伴う発光色のドリフトに応じて印加する前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を補正する補正機能を有する制御手段と、を備えてなることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
前記有機EL素子の経時劣化に伴う発光色のドリフトと連関性のある連関情報を取得する連関情報取得手段を備え、前記制御手段は、前記連関情報取得手段からの連関情報に基づいて前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方の補正を行うことを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記連関情報取得手段は、前記連関情報として前記有機EL素子の駆動電圧、前記有機EL素子または前記有機EL素子と構造が同様である他の有機EL素子の光量もしくは発光積算時間の少なくともいずれかを取得することを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項8】
前記有機EL素子は、発光色の異なる複数の発光層を有することを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項9】
印加する電流値に応じて発光色が変化する有機EL素子の駆動方法であって、
所望の発光色に応じて前記有機EL素子に印加する駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を可変させ、また、前記有機EL素子の温度変化に伴う発光色のドリフトに応じて印加する前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を補正することを特徴とする有機EL素子の駆動方法。
【請求項10】
前記有機EL素子の温度変化に伴う発光色のドリフトと連関性のある連関情報を取得し、前記連関情報に基づいて前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方の補正を行うことを特徴とする請求項9に記載の有機EL素子の駆動方法。
【請求項11】
前記連関情報として前記有機EL素子の駆動電圧、前記有機EL素子または前記有機EL素子と構造が同様である他の有機EL素子の光量もしくは周囲温度の少なくともいずれかを取得することを特徴とする請求項9に記載の有機EL素子の駆動方法。
【請求項12】
印加する電流値に応じて発光色が変化する有機EL素子の駆動方法であって、
所望の発光色に応じて前記有機EL素子に印加する駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を可変させ、また、前記有機EL素子の経時劣化に伴う発光色のドリフトに応じて印加する前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方を補正することを特徴とする有機EL素子の駆動方法。
【請求項13】
前記有機EL素子の経時劣化に伴う発光色のドリフトと連関性のある連関情報を取得し、前記連関情報に基づいて前記駆動波形の電流値及び点灯率の少なくとも一方の補正を行うことを特徴とする請求項12に記載の有機EL素子の駆動方法。
【請求項14】
前記連関情報として前記有機EL素子の駆動電圧、前記有機EL素子または前記有機EL素子と構造が同様である他の有機EL素子の光量もしくは発光積算時間の少なくともいずれかを取得することを特徴とする請求項12に記載の有機EL素子の駆動方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate