発光装置及び発光型ディスプレイパネル
【課題】素子内部の電極における外光の反射による視認性低下を抑えること。
【解決手段】ELディスプレイパネル1の各画素には、画素電極3,正孔輸送層4,発光層5,対向電極6の順に積層された有機EL素子Lが設けられている。画素電極3及び対向電極6は透光性を有する。対向電極3は全ての画素に共通した電極であり、一面に成膜され、その対向電極3に再帰反射体7が積層されている。再帰反射体7は、発光層5側から入射した光を再帰反射させる性質を有する。
【解決手段】ELディスプレイパネル1の各画素には、画素電極3,正孔輸送層4,発光層5,対向電極6の順に積層された有機EL素子Lが設けられている。画素電極3及び対向電極6は透光性を有する。対向電極3は全ての画素に共通した電極であり、一面に成膜され、その対向電極3に再帰反射体7が積層されている。再帰反射体7は、発光層5側から入射した光を再帰反射させる性質を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス現象を用いた発光装置及び発光ディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス素子は基板上に下部電極、発光層、上部電極の順に積層したものであり、特に有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光層が有機化合物で構成され、発光層内で電子及び正孔が再結合して発光する。
【0003】
また、エレクトロルミネッセンス素子を画素として用いた発光型ディスプレイパネルの研究・開発が盛んに行われている。ここで視認者の背面からディスプレイパネルの方向に進行する外光は視認者によって遮られるためディスプレイパネルに入射されることはないが、視認者によって遮られない角度でディスプレイパネルに入射した外光はその一部が視認者に向かって反射することになるので、表示が視認者にとって視認しづらくなってしまっていた。このため、特許文献1に示すように、ディスプレイパネル内に入射した外光をディスプレイパネルの裏面に配置した太陽電池パネルが吸収することによってコントラストの低下を防止することになっている。
【特許文献1】特開2004−271963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような構造では外光による反射を抑えることができるが、発光素子の光までも吸収してしまって発光素子の出射効率が低くなってしまい、結果として視認性を十分に向上することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点を解決しようとしてなされたものであり、素子内部の光の指向を制御して視認性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の発光装置は、互いに対向する2つの透光性電極の間に発光層が挟持され、前記2つの透光性電極のうち一方の透光性電極に関して前記発光層の反対側に再帰反射体が設けられていることを特徴とする。
【0007】
好ましくは、前記再帰反射体が前記発光層の発光色と同じ色の光を再帰反射する特性を有する。
【0008】
本発明によれば、発光装置の周囲からの外光のうち、視認者の背面から発光装置の方向に進行する外光は視認者の背面によって遮られるため発光装置に入射されることはなく、また視認者によって遮られない角度で発光装置に入射した外光は再帰反射体によって反転して戻っていくので、視認者に向かって反射することがない。このため、視認者の目には、発光装置での外光による反射光が到達しないため、視認性を向上することができる。そして、発光層にて発した光が再帰反射体にて再帰反射するので、発光層にて発した光が効率よく出射することができる。
【0009】
本発明の発光型ディスプレイパネルは、画素ごとに透光性の画素電極が設けられ、該画素電極に対向した透光性の対向電極と前記画素電極との間に発光層が挟持され、前記対向電極と前記画素電極のうちの一方の電極に関して前記発光層の反対側に再帰反射体が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、前記再帰反射体が前記発光層の発光色と同じ色の光を再帰反射する特性を有することが好ましい。
また、前記再帰反射体が前記発光層の発光波長域の半値幅よりも狭い半値幅の着色層を有することが好ましい。
【0011】
本発明によれば、ディスプレイパネルの周囲からの外光のうち、視認者の背面からディスプレイパネルの方向に進行する外光は視認者の背面によって遮られるためディスプレイパネルに入射されることはなく、また視認者によって遮られない角度でディスプレイパネルに入射した外光は再帰反射体によって反転して戻っていくので、視認者に向かって反射することがない。このため、視認者の目には、ディスプレイパネルでの外光による反射光が到達しないため、視認性を向上することができる。そして、発光層にて発した光が再帰反射体にて再帰反射するので、発光層にて発した光が効率よく出射することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外部から内部に入射した外光が再帰反射体にて視認者を避けるように再帰反射して出射し、発光層が発光した光は再帰反射体にて再帰反射して効率的に出射されるので、視認性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0014】
〔第1の実施の形態〕
図1は、発光装置101の概略断面図である。
この発光装置101は、絶縁性の透明基板102と、透明基板102の一方の面に成膜された下部電極103と、下部電極103に積層された正孔輸送層104と、正孔輸送層104に積層された発光層105と、発光層105に積層されるとともに正孔輸送層104及び発光層105を挟んで下部電極103に対向した上部電極106と、上部電極106に積層された再帰反射体107と、下部電極103、正孔輸送層104、発光層105及び上部電極106の積層体を被覆した封止膜108とを備える。
【0015】
透明基板102は、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、その他のガラス、PMMA(ポリメタクリ酸メチル)、ポリカーボネート、その他の樹脂等の透明な材料で板状又はシート状に形成されたものである。
【0016】
下部電極103がアノードとして機能し、上部電極106がカソードとして機能し、下部電極103の仕事関数は上部電極106の仕事関数よりも高い。また、どちらの電極103,106も可視光を透過する性質を有する透明電極である。
【0017】
例えば、下部電極103が、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)等の透明導電体を有する。上部電極106は、上述した下部電極103の透明導電体の層と、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金の電子注入層と、を備えている。電子注入層は、可視光を透過する程度の1nm〜15nmの厚さで成膜され、透明導電体の層は、50nm〜100nmの厚さに成膜されている。
【0018】
正孔輸送層104は、導電性高分子であるPEDOT(ポリチオフェン)及びドーパントであるPSS(ポリスチレンスルホン酸)を有する。
発光層105は、ポリパラフェニレンビニレン系発光材料やポリフルオレン系発光材料を有している。
【0019】
なお、下部電極103と上部電極106との間の層は、上記のようなものに限定されない。例えば、下部電極103から正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されていても良いし、下部電極103から発光層、電子輸送層の順に積層されていても良いし、下部電極103と上部電極106との間に発光層の一層のみが介在していても良い。
【0020】
下部電極103がカソードであり且つ上部電極106がアノードである場合には、下部電極103と上部電極106との間の層の積層順が上述の場合の逆になる。例えば、下部電極103がカソードであり且つ上部電極106がアノードである場合には、下部電極103から発光層105、正孔輸送層104の積層順になる。
【0021】
再帰反射体107は、発光層105側から入射した光を再帰反射させる性質を有する。ここで、再帰反射とは、出射角のほぼ全体にわたって入射光の光路に沿った方向に反射光が戻る反射をいう。
【0022】
再帰反射体107において再帰反射する光の波長域は、可視光波長域全域、つまり発光層105で発する光の波長域を含むことが望ましい。例えば、発光層105が赤色に発光するのであれば、再帰反射体107ではこの赤の波長の光を略180゜反転した方向に沿うように反射するようにし、発光層105が緑色に発光するのであれば、再帰反射体107ではこの緑の波長の光を略180゜反転した方向に沿うように反射するようにし、発光層105が青色に発光するのであれば、再帰反射体107ではこの青の波長の光を略180゜反転した方向に沿うように反射するようにする。同様に再帰反射体107に入射された外光のうちの可視光は、進行方向を略180゜反転した方向に沿うように反射されることになる。
【0023】
再帰反射体107は、図2〜図12のいずれかのように構成されている。
【0024】
図2の場合には、再帰反射体107は、透明な樹脂からなるフィルム111と、支持層113及びその支持層113からフィルム111に向けて突出してフィルム111に連結した連結壁114からなる樹脂のバインダ層115と、バインダ層115に埋設された複数の透明ビーズ112と、透明ビーズ112の上半球に成膜された反射層116とを有する。反射層116は内表面が光反射性で略半球形状になっている。連結壁114の厚みによってフィルム111と支持層113との間に密封室117が形成され、この密封室117には空気といった気体や透明液体等の透明部材が封入されている。透明ビーズ112の下半球が密封室117内にて露出し、透明ビーズ112の上半球が支持層113に埋設されている。透明ビーズ112の屈折率が密封室117内の透明部材の屈折率以上であり、透明ビーズ112がレンズとして機能する。ここで、発光層105で発する光のうち、上部電極106に向かう成分は、例えば矢印方向Aのよう進行して反射層116で反射されて、矢印方向Aを略180゜反転した矢印方向Bに進行する光となり、元来た光路をたどって上部電極106,発光層105,正孔輸送層104,下部電極103,透明基板102を透過して、外部に出射する。この光は、発光層105で発する光のうち、矢印方向Cに沿って出射する光と相まって出射されるため、視野角に限らず出射される光量が増大する。同様に外光のうち、上部電極106に向かう成分は、例えば矢印方向A’に進行して透明基板102,下部電極103,正孔輸送層104,発光層105,上部電極106を経由して反射層116で反射されて、矢印方向A’を略180゜反転した矢印方向B’に進行する光となり、元来た光路をたどって上部電極106,発光層105,正孔輸送層104,下部電極103,透明基板102を透過して、外部に出射する。
【0025】
図3の場合には、再帰反射体107は、樹脂等の透明な材料からなるバインダ層121と、下半球がバインダ層121に埋設されるとともにガラス等からなる微小な複数の透明ビーズ122と、透明ビーズ122を被覆して透明ビーズ122に沿った形状となした焦点層123と、焦点層123を被覆した反射層124と、反射層124を被覆した接着剤層125とを有する。反射層124は内表面が光反射性で略半球形状になっている。バインダ層121の屈折率が透明ビーズ122の屈折率以上であり、透明ビーズ122がレンズとして機能する。焦点層123の厚みによって透明ビーズ112によるレンズの焦点位置が反射層124になる。反射層124は、内表面がアルミニウムといった反射率の高い金属を気相成長法(スパッタリング法、CVD法、PVD法)により成長させることにより成膜したものである。図2と同様に、発光層105で発する光のうち、上部電極106に向かう成分は、例えば矢印方向Aのように進行して再帰反射体107で反射して矢印方向Bに進行し、外光のうち、上部電極106に向かう成分は、例えば矢印方向A’のように進行して再帰反射体107で反射して矢印方向B’に進行する。
【0026】
図4の場合には、再帰反射体107は、透明な樹脂からなるフィルム131と、フィルム131に積層された内部全反射型プリズムフィルム132と、支持層133及びその支持層133から内部全反射型プリズムフィルム132に向けて突出して内部全反射型プリズムフィルム132に連結した連結壁134からなる樹脂のバインダ層135とを有する。連結壁134の厚みによって内部全反射型プリズムフィルム132と支持層133との間に密封室137が形成され、この密封室137には空気といった気体が封入されている。内部全反射型プリズムフィルム132のバインダ層135側の面には、複数のプリズム138が形成されている。プリズム138は円錐、三角錐、四角錐といった錐体状である。プリズムフィルム132の屈折率は密封室137内の気体の屈折率よりも十分高く、プリズムフィルム132内部からプリズム138の表面に入射した光が全反射する。このとき、プリズム138と密封室137との界面では、図2と同様に、発光層105で発する光のうち例えば矢印方向Aのように上部電極106に向かう成分が反射して矢印方向Bに進行し、外光のうち例えば矢印方向A’のように上部電極106に向かう成分が反射して矢印方向B’に進行する。
【0027】
図5の場合には、再帰反射体107は、上部電極106上に配列された複数のプリズム141と、これらプリズム141を被覆した透明な樹脂のバインダ層142とを有する。プリズム141は円錐、三角錐、四角錐といった錐体状であり、底面が上部電極106側となる。プリズム141の屈折率はバインダ層142の屈折率よりも高く、プリズム141内部からプリズム141の表面に入射した光が全反射する。このとき、プリズム141とバインダ層142との界面では、図2と同様に、発光層105で発する光のうち例えば矢印方向Aのように上部電極106に向かう成分が反射して矢印方向Bに進行し、外光のうち例えば矢印方向A’のように上部電極106に向かう成分が反射して矢印方向B’に進行する。
【0028】
図6の場合には、再帰反射体107は、樹脂等の透明な材料からなるバインダ層151と、下半球がバインダ層151に埋設されるとともにガラス等からなる微小な複数の透明ビーズ152と、透明ビーズ152の上半球を被覆した反射層153と、反射層153を介して透明ビーズ152を被覆した接着剤層154とを有している。バインダ層151の屈折率が透明ビーズ152の屈折率よりも高く、透明ビーズ152がレンズとして機能する。反射層153は内表面が光反射性で略半球形状になっている。反射層153は、透明ビーズ152の表面にアルミニウムといった反射率の高い金属を気相成長法(スパッタリング法、CVD法、PVD法)により成長させることにより成膜したものである。
図2と同様に、発光層105で発する光のうち、上部電極106に向かう成分は、例えば矢印方向Aのように進行して反射層153で反射して矢印方向Bに進行し、外光のうち、上部電極106に向かう成分は、例えば矢印方向A’のように進行して反射層153で反射して矢印方向B’に進行する。
【0029】
図7の場合には、再帰反射体107は、入射された可視光のうち例えば、赤色、緑色、青色の波長域の光のみを透過する着色層165と、上部電極106と着色層165との間で着色層165を保護する保護膜166と、着色層165上に設けられた樹脂等の透明な材料からなるバインダ層161と、下半球がバインダ層161に埋設されるとともにガラス等からなる微小な複数の透明ビーズ162と、透明ビーズ162の形状に合わせて透明ビーズ162の上半球を被覆した反射層163と、反射層163を被覆したバインダ層164と、を有している。バインダ層161の屈折率が透明ビーズ162の屈折率よりも高く、透明ビーズ162がレンズとして機能する。着色層165は、カラーフィルタとして機能し、発光層105で発した色の光の波長域が広範囲であっても、例えば発光ピーク波長が緑色であるが青色や赤色の波長域も一部含んでいても、青色や赤色の波長域の光を吸収して緑色の波長域の光のみ透過する。このため、発光層105で発した色の光は、一度着色層165を透過して色純度が高くなってから反射層163で反射し再び着色層165を透過して、透明基板102から出射する。このように着色層165は、発光層105の発光色と同じ色に着色された層であり、色純度を向上するために、図7の再帰反射体107の着色層165を透過する光の波長半値幅(当該光のピーク強度(輝度)の半分以上の強度(輝度)の波長域の上限波長と下限波長の差)は発光層105の波長半値幅よりも狭いことが好ましい。
【0030】
図8の場合には、再帰反射体107は、樹脂等の透明な材料からなるバインダ層171と、下半球がバインダ層171に埋設されるとともにガラス等からなる微小な複数の透明ビーズ172と、透明ビーズ172の上半球を被覆し、一部の光を反射し残りの光を透過する半透過反射層174と、半透過反射層174を被覆し、半透過反射層174を透過した可視光のうち例えば、赤色、緑色、青色の波長域の光のみを透過する着色層175と、着色層175からの光を反射する反射層176と、を備えている。このような再帰反射体107も図2と同様の効果を示す。
【0031】
図9の場合には、再帰反射体107は、樹脂等の透明な材料からなるバインダ層181と、下半球がバインダ層181に埋設されるとともにガラス等からなる微小な複数の透明ビーズ182と、透明ビーズ182の上半球を被覆し例えば、赤色、緑色、青色の波長域の光のみを透過する着色層183と、着色層183からの光を反射する反射層184と、反射層184を覆うバインダ層185と、を備えている。このような再帰反射体107も図2と同様の効果を示す。なお着色層183は、入射された光を着色層183と同様に着色するとともに反射する着色反射層でもよい。
【0032】
図10の場合には、再帰反射体107は、樹脂等の透明な材料からなるバインダ層191と、下半球がバインダ層191に埋設されるとともにガラス等からなる微小な複数の透明ビーズ192と、透明ビーズ192の上半球を被覆し例えば、赤色、緑色、青色の波長域の光のみを透過する着色層193と、着色層193からの光の一部を反射し残りの光を透過する半透過反射層194と、半透過反射層194からの光を着色層183と同様に着色するとともに反射する着色反射層195と、着色反射層195で反射しきれなかった光を反射する反射層196と、反射層196を覆うバインダ層197と、を備えている。このような再帰反射体107も図2と同様の効果を示す。なお着色層193は、入射された光を着色層193と同様に着色するとともに反射する着色反射層でもよい。
【0033】
図11の場合には、再帰反射体107は、例えば、赤色、緑色、青色の波長域の光のみを透過する着色層201と、下半球が着色層201に埋設されるとともにガラス等からなる微小な複数の透明ビーズ202と、透明ビーズ202の上半球を被覆し、透明ビーズ202からの光を反射する反射層203と、反射層203を覆うバインダ層204と、を備えている。このような再帰反射体107も図2と同様の効果を示す。なお着色層201は、入射された光を着色層201と同様に着色するとともに反射する着色反射層でもよい。
【0034】
図12の場合には、再帰反射体107は、例えば、赤色、緑色、青色の波長域の光のみを透過する着色層211と、下半球が着色層211に埋設されるとともにガラス等からなる微小な複数の透明ビーズ212と、透明ビーズ212の上半球を被覆し例えば、赤色、緑色、青色の波長域の光のみを透過する着色層213と、着色層213を被覆し着色層213からの光の一部を反射し残りの光を透過する半透過反射層214と、半透過反射層214からの光を着色層213と同様に着色するとともに反射する着色反射層215と、着色反射層215で反射しきれなかった光を反射する反射層216と、反射層216を覆うバインダ層217と、を備えている。このような再帰反射体107も図2と同様の効果を示す。なお着色層211は、入射された光を着色層211と同様に着色するとともに反射する着色反射層でもよく、着色層213は、入射された光を着色層213と同様に着色するとともに反射する着色反射層でもよい。
【0035】
なお、上部電極106の上に図2〜図12のような再帰反射体107を2層以上積層しても良い。
【0036】
この発光装置101は下部電極103と上部電極106との間に電圧が印加されると発光層105において発光する。発光層105にて発した光のうち、前方に放射した光は正孔輸送層104、下部電極103、透明基板102を透過して、外部に出射する。また、発光層105から後方、つまり上部電極106に向かった光は再帰反射体107において再帰反射し、再帰反射した光は上部電極106、発光層105、正孔輸送層104、下部電極103、透明基板102を透過して、外部に出射する。発光層105から発した光が再帰反射することによって、発光装置101の輝度を高めることができる。
【0037】
発光装置101の周囲からの外光のうち、視認者の背面から発光装置101の方向に進行する外光は視認者の背面によって遮られるため発光装置101に入射されることはなく、また視認者によって遮られない角度で発光装置101に入射した外光は再帰反射体107によって略180゜反転して戻っていくので、視認者に向かって反射することがない。このため、視認者の目には、発光装置101での外光による反射光が到達しないため、発光していない場合或いは低い輝度で発光している場合も外光の反射防止によって視認でき、発光層105が発光した時と発光していない時のコントラスト比が高くなる。特に、発光装置101を屋外等の外光が強い環境下で用いたとき、視認性が著しく向上する。
【0038】
〔変形例〕
図13は変形例の発光装置101Aの断面図である。図2に示された発光装置101と発光装置101Aとの間で互いに対応する部分は同一に設けられ、互いに対応する部分に同一の符号を付す。
【0039】
この発光装置101Aにおいては、透明基板102の出射面に集光層109が積層されている。この集光層109は、透明基板102から集光層109に入射した光を法線方向に集光するよう出射する集光性をもつ。図14は集光層109の断面図であるが、集光層109は、透明基板102上に配列された複数のプリズム371と、これらプリズム371を被覆した透明な樹脂のバインダ層372とからなる。プリズム371は円錐、三角錐、四角錐といった錐体状であり、底面が透明基板102側となる。このような集光層109を設けることで、出射する光の正面指向性が高まり、発光装置101Aを正面から見た場合、発光層105が発光した時と発光していない時のコントラスト比が高くなる。また再帰反射体107の代わりに、図14に示す集光層109を上下反転させた構造を代用してもよい。
【0040】
また、発光装置101、発光装置101Aでは再帰反射体107を上部電極106に積層することによってボトムエミッション型の発光装置としたが、発光層の光が上部電極106を透過して表示するトップエミッションの場合、上部電極106に再帰反射体107を積層せずに、下部電極103と透明基板102との間に再帰反射体を積層すれば同様の効果を得ることができる。この場合、封止膜108を透明な材料とする。
【0041】
〔第2の実施の形態〕
本発明をディスプレイパネルに適用した実施形態について説明する。図15は、アクティブマトリクス型のエレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:EL)ディスプレイパネル1の断面図であり、図16は、ELディスプレイパネル1の透過回路図である。
【0042】
図16に示すように、ELディスプレイパネル1においては、複数の走査線X及び複数の供給線Zが互いに平行となって水平方向に延在し、複数の信号線Yが互いに平行となって垂直方向に延在している。走査線Xと信号線Yが互いに絶縁され、走査線Xと信号線Yが平面視して互いに直交している。同様に、供給線Zと信号線Yが互いに絶縁され、供給線Zと信号線Yが平面視して互いに直交している。また、1ドットにつき1ユニットの画素回路Pが設けられている。これら画素回路Pがマトリクス状に配列され、各画素回路Pが走査線Xと信号線Yとの交差部において走査線X、信号線Y及び供給線Zに接続されている。また、1ドットにつき1つのエレクトロルミネッセンス素子Lが設けられ、エレクトロルミネッセンス素子Lが画素回路Pに接続されている。
【0043】
画素回路Pは信号線Yの階調信号及び走査線Xの走査信号に基づき、供給線Zからエレクトロルミネッセンス素子Lに電流を流すものであり、これによりエレクトロルミネッセンス素子Lが走査信号に応じたタイミングで、また階調信号に応じた強度で発光する。画素回路Pは、複数の薄膜トランジスタと、キャパシタとから構成されている。
【0044】
図15は、このELディスプレイパネル1の3ドットの断面図である。図15においては、1ドットの画素回路Pのうち1つの薄膜トランジスタ21がチャネル長方向に平行な断面で破断された状態で示されている。他の薄膜トランジスタも薄膜トランジスタ21と同一の積層構造を有し、薄膜トランジスタ21と他の薄膜トランジスタは何れも気相成長法(スパッタリング、CVD法、PVD法等)、フォトリソグラフィー法、エッチング法によって同時にパターニングされるので、薄膜トランジスタ21について特に説明し、他の薄膜トランジスタについての説明は省略する。
【0045】
薄膜トランジスタ21は絶縁性の透明基板2上に設けられている。具体的には、薄膜トランジスタ21は、透明基板2上に形成されたゲート21gと、ゲート絶縁膜31を挟んでゲート21gに対向した半導体膜21cと、半導体膜21cの中央部上に形成されたチャネル保護膜21pと、半導体膜21cの両端部上において互いに離間するよう形成され、チャネル保護膜21pに一部重なった不純物半導体膜21a,21bと、不純物半導体膜21a上に形成されたドレイン21dと、不純物半導体膜21b上に形成されたソース21sとを具備する。
【0046】
透明基板2は、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、その他のガラス、PMMA(ポリメタクリ酸メチル)、ポリカーボネート、その他の樹脂等の透明な材料で板状又はシート状に形成されたものである。
【0047】
ゲート絶縁膜31は、SiO2又はSiNからなり、光を透過するよう透明である。走査線X及び供給線Zは図15の断面に対して平行に設けられているので、図15には示されていないが走査線X及び供給線Zはゲート絶縁膜31によって被覆されている。
【0048】
信号線Yはゲート絶縁膜31上に形成され、画素電極3もゲート絶縁膜31上に形成されている。画素電極3は画素ごとに設けられ、これら画素電極3がマトリクス状に配列されている。各画素において画素電極3が薄膜トランジスタ21のソース21sに接続されている。
【0049】
信号線Y及び薄膜トランジスタ21は保護絶縁膜32によって被覆されている。保護絶縁膜32は信号線Y及び走査線Xに沿うように網目状にパターニングされ、保護絶縁膜32の開口部において画素電極3が露出している。
【0050】
画素電極3には正孔輸送層4が積層され、正孔輸送層4には発光層5が積層され、発光層5には対向電極6が積層され、対向電極6には再帰反射体7が積層され、再帰反射体7を覆うように全面に封止膜8が積層されている。ここで、図16における有機EL素子Lは、図15の画素電極3,制孔輸送層4,発光層5,対向電極6の順に積層された積層体である。
【0051】
画素電極3がアノードとして機能し、画素電極3に対向する対向電極6がカソードとして機能し、画素電極3の仕事関数は対向電極6の仕事関数よりも高い。また、どちらの電極3,6も可視光を透過する性質を有する透明電極である。
【0052】
例えば、画素電極3が、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)等の透明導電体を有する。対向電極6は、上述した画素電極3の透明導電体の層と、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金の電子注入層と、を備えている。電子注入層は、可視光を透過する程度の1nm〜15nmの厚さで成膜され、透明導電体の層は、50nm〜100nmの厚さに成膜されている。
【0053】
正孔輸送層4は、導電性高分子であるPEDOT(ポリチオフェン)及びドーパントであるPSS(ポリスチレンスルホン酸)を有している。
発光層5は、ポリパラフェニレンビニレン系発光材料やポリフルオレン系発光材料を有している。図15の中で左の画素の発光層5が赤であり、中央の画素の発光層5が緑であり、右の画素の発光層5が青である。このような赤、緑、青の配列が繰り返されるよう多数あることによって、ELディスプレイパネル1がカラーディスプレイパネルとなる。なお、ELディスプレイパネル1が単色のディスプレイパネルである場合、どの画素の発光層5も同じ色に発光する。
【0054】
画素電極3と対向電極6との間の層は、上記のようなものに限定されない。例えば、画素電極3から正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されていても良いし、画素電極3から発光層、電子輸送層の順に積層されていても良いし、画素電極3と対向電極6との間に発光層の一層のみが介在していても良い。画素電極3がカソードであり且つ対向電極6がアノードである場合には、画素電極3と対向電極6との間の層の積層順が上述の場合の逆になる。例えば、画素電極3がカソードであり且つ上部電極106がアノードである場合には、画素電極3から発光層5,正孔輸送層4の順に積層される。
【0055】
画素電極3、正孔輸送層4及び発光層5は画素ごとに独立して形成されているが、対向電極6は全ての画素に共通するようべた一面に成膜され、保護絶縁膜32も対向電極6によって被覆されている。
【0056】
対向電極6には、発光層5側から入射した光を再帰反射させる再帰反射体7が積層されている。再帰反射体7は、図2〜図12のいずれかの再帰反射体107と同様に構成されている。
【0057】
再帰反射体7は、赤の発光層5の上の部分は赤の波長をピークに光を略180゜反転した方向に沿うよう反射し、緑の発光層5の上では緑の波長をピークに光を略180゜反転した方向に沿うよう反射し、青の発光層5の上では青の波長をピークに光を略180゜反転した方向に沿うよう反射すると、ELディスプレイパネル1から出射する光の色純度がより高くなる。例えば、再帰反射体7が図7のように構成されている場合、着色層165を発光層5の発光色に適合させれば良い。なお、再帰反射体7の波長半値幅は対向する発光層5の波長半値幅よりも狭いことが好ましい。
【0058】
なお、再帰反射体7は、どの部分でも分光反射特性がほぼ均一であっても良い。つまり、再帰反射体7は、赤の発光層5の上の部分でも、緑の発光層5の上の部分でも、青の発光層5の上の部分でも、同じ分光反射特性を有していても良い。この場合、再帰反射体7は、可視光のどの波長でもほぼ等しい反射率を有していることが好ましい。このように設定すれば、再帰反射体7に入射された外光のうちの可視光が、進行方向を略180゜反転した方向に沿うように反射されることになって、視認者にはほとんど視認されず、各発光層5の光の再帰反射によって視認者に色純度よく視認することができる。
【0059】
なお、対向電極6の上に再帰反射体7を2層以上積層しても良い。
【0060】
このELディスプレイパネル1においては、所走査線X、信号線Y、供給線Zの信号によって画素回路Pが動作し、画素回路Pの動作により有機EL素子Lが発光層105にて発光する。また、発光層105からの発光のうち、例えば矢印方向Aのように対向電極6に向かった光は、再帰反射体7において再帰反射し、再帰反射した光は矢印方向Aを180゜反転した矢印方向Bに沿って進行し、対向電極6,発光層5,正孔輸送層4,画素電極3,ゲート絶縁膜31,透明基板2を透過して、外部に出射する。発光層5から発した光が再帰反射することによって、画素の発光輝度を高めることができる。発光層105からの発光のうち対向電極6に向かった光は視認者の位置にかかわらず放射状の光束となるので、その光束がほぼ180゜反転して反射されることになる。
【0061】
例えば矢印方向A’のように視認者によって遮られることなく、透明基板2に入射した外光が再帰反射体7によって矢印方向A’を180゜反転した矢印方向B’に沿うように再帰反射するので、その外光が視認者に向かって反射することはない。そのため、視認者がELディスプレイパネル1を見た場合、視認者には、再帰反射体7で反射された発光層105の発光が視認可能となり、外光の反射がほとんど視認されない。したがって発光層5が発光した時と発光していない時のコントラスト比が高くなる。そのため、ELディスプレイパネル1を屋外で用いたとき、ELディスプレイパネル1の視認性が向上する。
【0062】
また、再帰反射体7は、赤の発光層5の上の部分は赤の波長をピークに光を反射し、緑の発光層5の上では緑の波長をピークに光を反射し、青の発光層5の上では青の波長をピークに光を反射すれば、出射する光の色純度が高まる。
【0063】
〔変形例〕
図17は変形例のELディスプレイパネル1Aの断面図である。図15に示されたELディスプレイパネル1とELディスプレイパネル1Aとの間で互いに対応する部分は同一に設けられ、互いに対応する部分に同一の符号を付す。
【0064】
ELディスプレイパネル1Aにおいては、透明基板2の出射面に集光層9が積層されている。この集光層9は、透明基板2から集光層9に入射した光を法線方向に集光するよう出射する集光性をもつ。この集光層9は、図14に示された集光層109と同様に構成されている。
【0065】
図18は変形例のELディスプレイパネル1Bの断面図である。図15に示されたELディスプレイパネル1とELディスプレイパネル1Aとの間で互いに対応する部分は同一に設けられ、互いに対応する部分に同一の符号を付す。
【0066】
ELディスプレイパネル1Bにおいては、透明基板2の出射面にカラーフィルタ20が積層されている。カラーフィルタ20の赤色部20R,緑色部20G,青色部20Bはそれぞれ同じ色の発光色の画素に対向している。例えば、図17の中で左の画素の発光層5が赤であり、中央の画素の発光層5が緑であり、右の画素の発光層5が青である場合、左の画素の発光層5に赤色部20Rが対向し、中央の画素の発光層5に緑色部20Gが対向し、右の画素の発光層5に青色部20Bが対向している。
【0067】
また、ELディスプレイパネル1では再帰反射体7を対向電極6に積層することによってボトムエミッション型のディスプレイパネルとしたが、対向電極6側に再帰反射体7を積層せずに、画素電極3とゲート絶縁膜31との間に再帰反射体を積層することによってトップエミッション型のディスプレイパネルとしても良い。この場合、封止膜8を透明な材料とする。
【0068】
また、上記実施形態では、アクティブマトリクス方式のELディスプレイパネル1について主に説明したが、パッシブ方式のELディスプレイパネルに本発明を適用しても良い。例えば、互いに平行なライン状の複数の第一透光性電極を透明基板上に配列し、複数の第二透光性電極を平面視して第一透光性電極に対して直交するよう第一透光性電極の上に配列し、第一透光性電極と第二透光性電極との各交差部に発光層を含む有機EL層を形成し、これら第二透光性電極を全体を被覆するよう再帰反射体又は黒色層を積層する。従って、各交差部で第一透光性電極の一部が画素電極となり、第二透光性電極の一部が対向電極となり、画素電極と対向電極との間に発光層が挟持され、対向電極に再帰反射体又は黒色層が積層されている。そして、再帰反射体の場合には、発光層側から第二透光性電極(対向電極)を透過して再帰反射体に入射した光(発光層にて発した光に限らず、外光も)が再帰反射し、黒色層の場合には、発光層側から第二透光性電極を透過して黒色層に入射した光(発光層にて発した光に限らず、外光も)が吸収される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】発光装置101の断面図である。
【図2】再帰反射体107の一例を示した断面図である。
【図3】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図4】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図5】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図6】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図7】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図8】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図9】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図10】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図11】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図12】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図13】発光装置101Aの断面図である。
【図14】集光層109の一例を示した断面図である。
【図15】ELディスプレイパネル1の断面図である。
【図16】ELディスプレイパネル1の等価回路図である。
【図17】ELディスプレイパネル1Aの断面図である。
【図18】ELディスプレイパネル1Bの断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1,1B,1a ELディスプレイパネル
3 画素電極
4,104 正孔輸送層
5,105 発光層
6 透光性電極
7,107 再帰反射体
101,101A 発光装置
103 下部電極
106 上部電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス現象を用いた発光装置及び発光ディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス素子は基板上に下部電極、発光層、上部電極の順に積層したものであり、特に有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光層が有機化合物で構成され、発光層内で電子及び正孔が再結合して発光する。
【0003】
また、エレクトロルミネッセンス素子を画素として用いた発光型ディスプレイパネルの研究・開発が盛んに行われている。ここで視認者の背面からディスプレイパネルの方向に進行する外光は視認者によって遮られるためディスプレイパネルに入射されることはないが、視認者によって遮られない角度でディスプレイパネルに入射した外光はその一部が視認者に向かって反射することになるので、表示が視認者にとって視認しづらくなってしまっていた。このため、特許文献1に示すように、ディスプレイパネル内に入射した外光をディスプレイパネルの裏面に配置した太陽電池パネルが吸収することによってコントラストの低下を防止することになっている。
【特許文献1】特開2004−271963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような構造では外光による反射を抑えることができるが、発光素子の光までも吸収してしまって発光素子の出射効率が低くなってしまい、結果として視認性を十分に向上することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点を解決しようとしてなされたものであり、素子内部の光の指向を制御して視認性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の発光装置は、互いに対向する2つの透光性電極の間に発光層が挟持され、前記2つの透光性電極のうち一方の透光性電極に関して前記発光層の反対側に再帰反射体が設けられていることを特徴とする。
【0007】
好ましくは、前記再帰反射体が前記発光層の発光色と同じ色の光を再帰反射する特性を有する。
【0008】
本発明によれば、発光装置の周囲からの外光のうち、視認者の背面から発光装置の方向に進行する外光は視認者の背面によって遮られるため発光装置に入射されることはなく、また視認者によって遮られない角度で発光装置に入射した外光は再帰反射体によって反転して戻っていくので、視認者に向かって反射することがない。このため、視認者の目には、発光装置での外光による反射光が到達しないため、視認性を向上することができる。そして、発光層にて発した光が再帰反射体にて再帰反射するので、発光層にて発した光が効率よく出射することができる。
【0009】
本発明の発光型ディスプレイパネルは、画素ごとに透光性の画素電極が設けられ、該画素電極に対向した透光性の対向電極と前記画素電極との間に発光層が挟持され、前記対向電極と前記画素電極のうちの一方の電極に関して前記発光層の反対側に再帰反射体が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、前記再帰反射体が前記発光層の発光色と同じ色の光を再帰反射する特性を有することが好ましい。
また、前記再帰反射体が前記発光層の発光波長域の半値幅よりも狭い半値幅の着色層を有することが好ましい。
【0011】
本発明によれば、ディスプレイパネルの周囲からの外光のうち、視認者の背面からディスプレイパネルの方向に進行する外光は視認者の背面によって遮られるためディスプレイパネルに入射されることはなく、また視認者によって遮られない角度でディスプレイパネルに入射した外光は再帰反射体によって反転して戻っていくので、視認者に向かって反射することがない。このため、視認者の目には、ディスプレイパネルでの外光による反射光が到達しないため、視認性を向上することができる。そして、発光層にて発した光が再帰反射体にて再帰反射するので、発光層にて発した光が効率よく出射することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外部から内部に入射した外光が再帰反射体にて視認者を避けるように再帰反射して出射し、発光層が発光した光は再帰反射体にて再帰反射して効率的に出射されるので、視認性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0014】
〔第1の実施の形態〕
図1は、発光装置101の概略断面図である。
この発光装置101は、絶縁性の透明基板102と、透明基板102の一方の面に成膜された下部電極103と、下部電極103に積層された正孔輸送層104と、正孔輸送層104に積層された発光層105と、発光層105に積層されるとともに正孔輸送層104及び発光層105を挟んで下部電極103に対向した上部電極106と、上部電極106に積層された再帰反射体107と、下部電極103、正孔輸送層104、発光層105及び上部電極106の積層体を被覆した封止膜108とを備える。
【0015】
透明基板102は、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、その他のガラス、PMMA(ポリメタクリ酸メチル)、ポリカーボネート、その他の樹脂等の透明な材料で板状又はシート状に形成されたものである。
【0016】
下部電極103がアノードとして機能し、上部電極106がカソードとして機能し、下部電極103の仕事関数は上部電極106の仕事関数よりも高い。また、どちらの電極103,106も可視光を透過する性質を有する透明電極である。
【0017】
例えば、下部電極103が、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)等の透明導電体を有する。上部電極106は、上述した下部電極103の透明導電体の層と、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金の電子注入層と、を備えている。電子注入層は、可視光を透過する程度の1nm〜15nmの厚さで成膜され、透明導電体の層は、50nm〜100nmの厚さに成膜されている。
【0018】
正孔輸送層104は、導電性高分子であるPEDOT(ポリチオフェン)及びドーパントであるPSS(ポリスチレンスルホン酸)を有する。
発光層105は、ポリパラフェニレンビニレン系発光材料やポリフルオレン系発光材料を有している。
【0019】
なお、下部電極103と上部電極106との間の層は、上記のようなものに限定されない。例えば、下部電極103から正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されていても良いし、下部電極103から発光層、電子輸送層の順に積層されていても良いし、下部電極103と上部電極106との間に発光層の一層のみが介在していても良い。
【0020】
下部電極103がカソードであり且つ上部電極106がアノードである場合には、下部電極103と上部電極106との間の層の積層順が上述の場合の逆になる。例えば、下部電極103がカソードであり且つ上部電極106がアノードである場合には、下部電極103から発光層105、正孔輸送層104の積層順になる。
【0021】
再帰反射体107は、発光層105側から入射した光を再帰反射させる性質を有する。ここで、再帰反射とは、出射角のほぼ全体にわたって入射光の光路に沿った方向に反射光が戻る反射をいう。
【0022】
再帰反射体107において再帰反射する光の波長域は、可視光波長域全域、つまり発光層105で発する光の波長域を含むことが望ましい。例えば、発光層105が赤色に発光するのであれば、再帰反射体107ではこの赤の波長の光を略180゜反転した方向に沿うように反射するようにし、発光層105が緑色に発光するのであれば、再帰反射体107ではこの緑の波長の光を略180゜反転した方向に沿うように反射するようにし、発光層105が青色に発光するのであれば、再帰反射体107ではこの青の波長の光を略180゜反転した方向に沿うように反射するようにする。同様に再帰反射体107に入射された外光のうちの可視光は、進行方向を略180゜反転した方向に沿うように反射されることになる。
【0023】
再帰反射体107は、図2〜図12のいずれかのように構成されている。
【0024】
図2の場合には、再帰反射体107は、透明な樹脂からなるフィルム111と、支持層113及びその支持層113からフィルム111に向けて突出してフィルム111に連結した連結壁114からなる樹脂のバインダ層115と、バインダ層115に埋設された複数の透明ビーズ112と、透明ビーズ112の上半球に成膜された反射層116とを有する。反射層116は内表面が光反射性で略半球形状になっている。連結壁114の厚みによってフィルム111と支持層113との間に密封室117が形成され、この密封室117には空気といった気体や透明液体等の透明部材が封入されている。透明ビーズ112の下半球が密封室117内にて露出し、透明ビーズ112の上半球が支持層113に埋設されている。透明ビーズ112の屈折率が密封室117内の透明部材の屈折率以上であり、透明ビーズ112がレンズとして機能する。ここで、発光層105で発する光のうち、上部電極106に向かう成分は、例えば矢印方向Aのよう進行して反射層116で反射されて、矢印方向Aを略180゜反転した矢印方向Bに進行する光となり、元来た光路をたどって上部電極106,発光層105,正孔輸送層104,下部電極103,透明基板102を透過して、外部に出射する。この光は、発光層105で発する光のうち、矢印方向Cに沿って出射する光と相まって出射されるため、視野角に限らず出射される光量が増大する。同様に外光のうち、上部電極106に向かう成分は、例えば矢印方向A’に進行して透明基板102,下部電極103,正孔輸送層104,発光層105,上部電極106を経由して反射層116で反射されて、矢印方向A’を略180゜反転した矢印方向B’に進行する光となり、元来た光路をたどって上部電極106,発光層105,正孔輸送層104,下部電極103,透明基板102を透過して、外部に出射する。
【0025】
図3の場合には、再帰反射体107は、樹脂等の透明な材料からなるバインダ層121と、下半球がバインダ層121に埋設されるとともにガラス等からなる微小な複数の透明ビーズ122と、透明ビーズ122を被覆して透明ビーズ122に沿った形状となした焦点層123と、焦点層123を被覆した反射層124と、反射層124を被覆した接着剤層125とを有する。反射層124は内表面が光反射性で略半球形状になっている。バインダ層121の屈折率が透明ビーズ122の屈折率以上であり、透明ビーズ122がレンズとして機能する。焦点層123の厚みによって透明ビーズ112によるレンズの焦点位置が反射層124になる。反射層124は、内表面がアルミニウムといった反射率の高い金属を気相成長法(スパッタリング法、CVD法、PVD法)により成長させることにより成膜したものである。図2と同様に、発光層105で発する光のうち、上部電極106に向かう成分は、例えば矢印方向Aのように進行して再帰反射体107で反射して矢印方向Bに進行し、外光のうち、上部電極106に向かう成分は、例えば矢印方向A’のように進行して再帰反射体107で反射して矢印方向B’に進行する。
【0026】
図4の場合には、再帰反射体107は、透明な樹脂からなるフィルム131と、フィルム131に積層された内部全反射型プリズムフィルム132と、支持層133及びその支持層133から内部全反射型プリズムフィルム132に向けて突出して内部全反射型プリズムフィルム132に連結した連結壁134からなる樹脂のバインダ層135とを有する。連結壁134の厚みによって内部全反射型プリズムフィルム132と支持層133との間に密封室137が形成され、この密封室137には空気といった気体が封入されている。内部全反射型プリズムフィルム132のバインダ層135側の面には、複数のプリズム138が形成されている。プリズム138は円錐、三角錐、四角錐といった錐体状である。プリズムフィルム132の屈折率は密封室137内の気体の屈折率よりも十分高く、プリズムフィルム132内部からプリズム138の表面に入射した光が全反射する。このとき、プリズム138と密封室137との界面では、図2と同様に、発光層105で発する光のうち例えば矢印方向Aのように上部電極106に向かう成分が反射して矢印方向Bに進行し、外光のうち例えば矢印方向A’のように上部電極106に向かう成分が反射して矢印方向B’に進行する。
【0027】
図5の場合には、再帰反射体107は、上部電極106上に配列された複数のプリズム141と、これらプリズム141を被覆した透明な樹脂のバインダ層142とを有する。プリズム141は円錐、三角錐、四角錐といった錐体状であり、底面が上部電極106側となる。プリズム141の屈折率はバインダ層142の屈折率よりも高く、プリズム141内部からプリズム141の表面に入射した光が全反射する。このとき、プリズム141とバインダ層142との界面では、図2と同様に、発光層105で発する光のうち例えば矢印方向Aのように上部電極106に向かう成分が反射して矢印方向Bに進行し、外光のうち例えば矢印方向A’のように上部電極106に向かう成分が反射して矢印方向B’に進行する。
【0028】
図6の場合には、再帰反射体107は、樹脂等の透明な材料からなるバインダ層151と、下半球がバインダ層151に埋設されるとともにガラス等からなる微小な複数の透明ビーズ152と、透明ビーズ152の上半球を被覆した反射層153と、反射層153を介して透明ビーズ152を被覆した接着剤層154とを有している。バインダ層151の屈折率が透明ビーズ152の屈折率よりも高く、透明ビーズ152がレンズとして機能する。反射層153は内表面が光反射性で略半球形状になっている。反射層153は、透明ビーズ152の表面にアルミニウムといった反射率の高い金属を気相成長法(スパッタリング法、CVD法、PVD法)により成長させることにより成膜したものである。
図2と同様に、発光層105で発する光のうち、上部電極106に向かう成分は、例えば矢印方向Aのように進行して反射層153で反射して矢印方向Bに進行し、外光のうち、上部電極106に向かう成分は、例えば矢印方向A’のように進行して反射層153で反射して矢印方向B’に進行する。
【0029】
図7の場合には、再帰反射体107は、入射された可視光のうち例えば、赤色、緑色、青色の波長域の光のみを透過する着色層165と、上部電極106と着色層165との間で着色層165を保護する保護膜166と、着色層165上に設けられた樹脂等の透明な材料からなるバインダ層161と、下半球がバインダ層161に埋設されるとともにガラス等からなる微小な複数の透明ビーズ162と、透明ビーズ162の形状に合わせて透明ビーズ162の上半球を被覆した反射層163と、反射層163を被覆したバインダ層164と、を有している。バインダ層161の屈折率が透明ビーズ162の屈折率よりも高く、透明ビーズ162がレンズとして機能する。着色層165は、カラーフィルタとして機能し、発光層105で発した色の光の波長域が広範囲であっても、例えば発光ピーク波長が緑色であるが青色や赤色の波長域も一部含んでいても、青色や赤色の波長域の光を吸収して緑色の波長域の光のみ透過する。このため、発光層105で発した色の光は、一度着色層165を透過して色純度が高くなってから反射層163で反射し再び着色層165を透過して、透明基板102から出射する。このように着色層165は、発光層105の発光色と同じ色に着色された層であり、色純度を向上するために、図7の再帰反射体107の着色層165を透過する光の波長半値幅(当該光のピーク強度(輝度)の半分以上の強度(輝度)の波長域の上限波長と下限波長の差)は発光層105の波長半値幅よりも狭いことが好ましい。
【0030】
図8の場合には、再帰反射体107は、樹脂等の透明な材料からなるバインダ層171と、下半球がバインダ層171に埋設されるとともにガラス等からなる微小な複数の透明ビーズ172と、透明ビーズ172の上半球を被覆し、一部の光を反射し残りの光を透過する半透過反射層174と、半透過反射層174を被覆し、半透過反射層174を透過した可視光のうち例えば、赤色、緑色、青色の波長域の光のみを透過する着色層175と、着色層175からの光を反射する反射層176と、を備えている。このような再帰反射体107も図2と同様の効果を示す。
【0031】
図9の場合には、再帰反射体107は、樹脂等の透明な材料からなるバインダ層181と、下半球がバインダ層181に埋設されるとともにガラス等からなる微小な複数の透明ビーズ182と、透明ビーズ182の上半球を被覆し例えば、赤色、緑色、青色の波長域の光のみを透過する着色層183と、着色層183からの光を反射する反射層184と、反射層184を覆うバインダ層185と、を備えている。このような再帰反射体107も図2と同様の効果を示す。なお着色層183は、入射された光を着色層183と同様に着色するとともに反射する着色反射層でもよい。
【0032】
図10の場合には、再帰反射体107は、樹脂等の透明な材料からなるバインダ層191と、下半球がバインダ層191に埋設されるとともにガラス等からなる微小な複数の透明ビーズ192と、透明ビーズ192の上半球を被覆し例えば、赤色、緑色、青色の波長域の光のみを透過する着色層193と、着色層193からの光の一部を反射し残りの光を透過する半透過反射層194と、半透過反射層194からの光を着色層183と同様に着色するとともに反射する着色反射層195と、着色反射層195で反射しきれなかった光を反射する反射層196と、反射層196を覆うバインダ層197と、を備えている。このような再帰反射体107も図2と同様の効果を示す。なお着色層193は、入射された光を着色層193と同様に着色するとともに反射する着色反射層でもよい。
【0033】
図11の場合には、再帰反射体107は、例えば、赤色、緑色、青色の波長域の光のみを透過する着色層201と、下半球が着色層201に埋設されるとともにガラス等からなる微小な複数の透明ビーズ202と、透明ビーズ202の上半球を被覆し、透明ビーズ202からの光を反射する反射層203と、反射層203を覆うバインダ層204と、を備えている。このような再帰反射体107も図2と同様の効果を示す。なお着色層201は、入射された光を着色層201と同様に着色するとともに反射する着色反射層でもよい。
【0034】
図12の場合には、再帰反射体107は、例えば、赤色、緑色、青色の波長域の光のみを透過する着色層211と、下半球が着色層211に埋設されるとともにガラス等からなる微小な複数の透明ビーズ212と、透明ビーズ212の上半球を被覆し例えば、赤色、緑色、青色の波長域の光のみを透過する着色層213と、着色層213を被覆し着色層213からの光の一部を反射し残りの光を透過する半透過反射層214と、半透過反射層214からの光を着色層213と同様に着色するとともに反射する着色反射層215と、着色反射層215で反射しきれなかった光を反射する反射層216と、反射層216を覆うバインダ層217と、を備えている。このような再帰反射体107も図2と同様の効果を示す。なお着色層211は、入射された光を着色層211と同様に着色するとともに反射する着色反射層でもよく、着色層213は、入射された光を着色層213と同様に着色するとともに反射する着色反射層でもよい。
【0035】
なお、上部電極106の上に図2〜図12のような再帰反射体107を2層以上積層しても良い。
【0036】
この発光装置101は下部電極103と上部電極106との間に電圧が印加されると発光層105において発光する。発光層105にて発した光のうち、前方に放射した光は正孔輸送層104、下部電極103、透明基板102を透過して、外部に出射する。また、発光層105から後方、つまり上部電極106に向かった光は再帰反射体107において再帰反射し、再帰反射した光は上部電極106、発光層105、正孔輸送層104、下部電極103、透明基板102を透過して、外部に出射する。発光層105から発した光が再帰反射することによって、発光装置101の輝度を高めることができる。
【0037】
発光装置101の周囲からの外光のうち、視認者の背面から発光装置101の方向に進行する外光は視認者の背面によって遮られるため発光装置101に入射されることはなく、また視認者によって遮られない角度で発光装置101に入射した外光は再帰反射体107によって略180゜反転して戻っていくので、視認者に向かって反射することがない。このため、視認者の目には、発光装置101での外光による反射光が到達しないため、発光していない場合或いは低い輝度で発光している場合も外光の反射防止によって視認でき、発光層105が発光した時と発光していない時のコントラスト比が高くなる。特に、発光装置101を屋外等の外光が強い環境下で用いたとき、視認性が著しく向上する。
【0038】
〔変形例〕
図13は変形例の発光装置101Aの断面図である。図2に示された発光装置101と発光装置101Aとの間で互いに対応する部分は同一に設けられ、互いに対応する部分に同一の符号を付す。
【0039】
この発光装置101Aにおいては、透明基板102の出射面に集光層109が積層されている。この集光層109は、透明基板102から集光層109に入射した光を法線方向に集光するよう出射する集光性をもつ。図14は集光層109の断面図であるが、集光層109は、透明基板102上に配列された複数のプリズム371と、これらプリズム371を被覆した透明な樹脂のバインダ層372とからなる。プリズム371は円錐、三角錐、四角錐といった錐体状であり、底面が透明基板102側となる。このような集光層109を設けることで、出射する光の正面指向性が高まり、発光装置101Aを正面から見た場合、発光層105が発光した時と発光していない時のコントラスト比が高くなる。また再帰反射体107の代わりに、図14に示す集光層109を上下反転させた構造を代用してもよい。
【0040】
また、発光装置101、発光装置101Aでは再帰反射体107を上部電極106に積層することによってボトムエミッション型の発光装置としたが、発光層の光が上部電極106を透過して表示するトップエミッションの場合、上部電極106に再帰反射体107を積層せずに、下部電極103と透明基板102との間に再帰反射体を積層すれば同様の効果を得ることができる。この場合、封止膜108を透明な材料とする。
【0041】
〔第2の実施の形態〕
本発明をディスプレイパネルに適用した実施形態について説明する。図15は、アクティブマトリクス型のエレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:EL)ディスプレイパネル1の断面図であり、図16は、ELディスプレイパネル1の透過回路図である。
【0042】
図16に示すように、ELディスプレイパネル1においては、複数の走査線X及び複数の供給線Zが互いに平行となって水平方向に延在し、複数の信号線Yが互いに平行となって垂直方向に延在している。走査線Xと信号線Yが互いに絶縁され、走査線Xと信号線Yが平面視して互いに直交している。同様に、供給線Zと信号線Yが互いに絶縁され、供給線Zと信号線Yが平面視して互いに直交している。また、1ドットにつき1ユニットの画素回路Pが設けられている。これら画素回路Pがマトリクス状に配列され、各画素回路Pが走査線Xと信号線Yとの交差部において走査線X、信号線Y及び供給線Zに接続されている。また、1ドットにつき1つのエレクトロルミネッセンス素子Lが設けられ、エレクトロルミネッセンス素子Lが画素回路Pに接続されている。
【0043】
画素回路Pは信号線Yの階調信号及び走査線Xの走査信号に基づき、供給線Zからエレクトロルミネッセンス素子Lに電流を流すものであり、これによりエレクトロルミネッセンス素子Lが走査信号に応じたタイミングで、また階調信号に応じた強度で発光する。画素回路Pは、複数の薄膜トランジスタと、キャパシタとから構成されている。
【0044】
図15は、このELディスプレイパネル1の3ドットの断面図である。図15においては、1ドットの画素回路Pのうち1つの薄膜トランジスタ21がチャネル長方向に平行な断面で破断された状態で示されている。他の薄膜トランジスタも薄膜トランジスタ21と同一の積層構造を有し、薄膜トランジスタ21と他の薄膜トランジスタは何れも気相成長法(スパッタリング、CVD法、PVD法等)、フォトリソグラフィー法、エッチング法によって同時にパターニングされるので、薄膜トランジスタ21について特に説明し、他の薄膜トランジスタについての説明は省略する。
【0045】
薄膜トランジスタ21は絶縁性の透明基板2上に設けられている。具体的には、薄膜トランジスタ21は、透明基板2上に形成されたゲート21gと、ゲート絶縁膜31を挟んでゲート21gに対向した半導体膜21cと、半導体膜21cの中央部上に形成されたチャネル保護膜21pと、半導体膜21cの両端部上において互いに離間するよう形成され、チャネル保護膜21pに一部重なった不純物半導体膜21a,21bと、不純物半導体膜21a上に形成されたドレイン21dと、不純物半導体膜21b上に形成されたソース21sとを具備する。
【0046】
透明基板2は、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、その他のガラス、PMMA(ポリメタクリ酸メチル)、ポリカーボネート、その他の樹脂等の透明な材料で板状又はシート状に形成されたものである。
【0047】
ゲート絶縁膜31は、SiO2又はSiNからなり、光を透過するよう透明である。走査線X及び供給線Zは図15の断面に対して平行に設けられているので、図15には示されていないが走査線X及び供給線Zはゲート絶縁膜31によって被覆されている。
【0048】
信号線Yはゲート絶縁膜31上に形成され、画素電極3もゲート絶縁膜31上に形成されている。画素電極3は画素ごとに設けられ、これら画素電極3がマトリクス状に配列されている。各画素において画素電極3が薄膜トランジスタ21のソース21sに接続されている。
【0049】
信号線Y及び薄膜トランジスタ21は保護絶縁膜32によって被覆されている。保護絶縁膜32は信号線Y及び走査線Xに沿うように網目状にパターニングされ、保護絶縁膜32の開口部において画素電極3が露出している。
【0050】
画素電極3には正孔輸送層4が積層され、正孔輸送層4には発光層5が積層され、発光層5には対向電極6が積層され、対向電極6には再帰反射体7が積層され、再帰反射体7を覆うように全面に封止膜8が積層されている。ここで、図16における有機EL素子Lは、図15の画素電極3,制孔輸送層4,発光層5,対向電極6の順に積層された積層体である。
【0051】
画素電極3がアノードとして機能し、画素電極3に対向する対向電極6がカソードとして機能し、画素電極3の仕事関数は対向電極6の仕事関数よりも高い。また、どちらの電極3,6も可視光を透過する性質を有する透明電極である。
【0052】
例えば、画素電極3が、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)等の透明導電体を有する。対向電極6は、上述した画素電極3の透明導電体の層と、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金の電子注入層と、を備えている。電子注入層は、可視光を透過する程度の1nm〜15nmの厚さで成膜され、透明導電体の層は、50nm〜100nmの厚さに成膜されている。
【0053】
正孔輸送層4は、導電性高分子であるPEDOT(ポリチオフェン)及びドーパントであるPSS(ポリスチレンスルホン酸)を有している。
発光層5は、ポリパラフェニレンビニレン系発光材料やポリフルオレン系発光材料を有している。図15の中で左の画素の発光層5が赤であり、中央の画素の発光層5が緑であり、右の画素の発光層5が青である。このような赤、緑、青の配列が繰り返されるよう多数あることによって、ELディスプレイパネル1がカラーディスプレイパネルとなる。なお、ELディスプレイパネル1が単色のディスプレイパネルである場合、どの画素の発光層5も同じ色に発光する。
【0054】
画素電極3と対向電極6との間の層は、上記のようなものに限定されない。例えば、画素電極3から正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されていても良いし、画素電極3から発光層、電子輸送層の順に積層されていても良いし、画素電極3と対向電極6との間に発光層の一層のみが介在していても良い。画素電極3がカソードであり且つ対向電極6がアノードである場合には、画素電極3と対向電極6との間の層の積層順が上述の場合の逆になる。例えば、画素電極3がカソードであり且つ上部電極106がアノードである場合には、画素電極3から発光層5,正孔輸送層4の順に積層される。
【0055】
画素電極3、正孔輸送層4及び発光層5は画素ごとに独立して形成されているが、対向電極6は全ての画素に共通するようべた一面に成膜され、保護絶縁膜32も対向電極6によって被覆されている。
【0056】
対向電極6には、発光層5側から入射した光を再帰反射させる再帰反射体7が積層されている。再帰反射体7は、図2〜図12のいずれかの再帰反射体107と同様に構成されている。
【0057】
再帰反射体7は、赤の発光層5の上の部分は赤の波長をピークに光を略180゜反転した方向に沿うよう反射し、緑の発光層5の上では緑の波長をピークに光を略180゜反転した方向に沿うよう反射し、青の発光層5の上では青の波長をピークに光を略180゜反転した方向に沿うよう反射すると、ELディスプレイパネル1から出射する光の色純度がより高くなる。例えば、再帰反射体7が図7のように構成されている場合、着色層165を発光層5の発光色に適合させれば良い。なお、再帰反射体7の波長半値幅は対向する発光層5の波長半値幅よりも狭いことが好ましい。
【0058】
なお、再帰反射体7は、どの部分でも分光反射特性がほぼ均一であっても良い。つまり、再帰反射体7は、赤の発光層5の上の部分でも、緑の発光層5の上の部分でも、青の発光層5の上の部分でも、同じ分光反射特性を有していても良い。この場合、再帰反射体7は、可視光のどの波長でもほぼ等しい反射率を有していることが好ましい。このように設定すれば、再帰反射体7に入射された外光のうちの可視光が、進行方向を略180゜反転した方向に沿うように反射されることになって、視認者にはほとんど視認されず、各発光層5の光の再帰反射によって視認者に色純度よく視認することができる。
【0059】
なお、対向電極6の上に再帰反射体7を2層以上積層しても良い。
【0060】
このELディスプレイパネル1においては、所走査線X、信号線Y、供給線Zの信号によって画素回路Pが動作し、画素回路Pの動作により有機EL素子Lが発光層105にて発光する。また、発光層105からの発光のうち、例えば矢印方向Aのように対向電極6に向かった光は、再帰反射体7において再帰反射し、再帰反射した光は矢印方向Aを180゜反転した矢印方向Bに沿って進行し、対向電極6,発光層5,正孔輸送層4,画素電極3,ゲート絶縁膜31,透明基板2を透過して、外部に出射する。発光層5から発した光が再帰反射することによって、画素の発光輝度を高めることができる。発光層105からの発光のうち対向電極6に向かった光は視認者の位置にかかわらず放射状の光束となるので、その光束がほぼ180゜反転して反射されることになる。
【0061】
例えば矢印方向A’のように視認者によって遮られることなく、透明基板2に入射した外光が再帰反射体7によって矢印方向A’を180゜反転した矢印方向B’に沿うように再帰反射するので、その外光が視認者に向かって反射することはない。そのため、視認者がELディスプレイパネル1を見た場合、視認者には、再帰反射体7で反射された発光層105の発光が視認可能となり、外光の反射がほとんど視認されない。したがって発光層5が発光した時と発光していない時のコントラスト比が高くなる。そのため、ELディスプレイパネル1を屋外で用いたとき、ELディスプレイパネル1の視認性が向上する。
【0062】
また、再帰反射体7は、赤の発光層5の上の部分は赤の波長をピークに光を反射し、緑の発光層5の上では緑の波長をピークに光を反射し、青の発光層5の上では青の波長をピークに光を反射すれば、出射する光の色純度が高まる。
【0063】
〔変形例〕
図17は変形例のELディスプレイパネル1Aの断面図である。図15に示されたELディスプレイパネル1とELディスプレイパネル1Aとの間で互いに対応する部分は同一に設けられ、互いに対応する部分に同一の符号を付す。
【0064】
ELディスプレイパネル1Aにおいては、透明基板2の出射面に集光層9が積層されている。この集光層9は、透明基板2から集光層9に入射した光を法線方向に集光するよう出射する集光性をもつ。この集光層9は、図14に示された集光層109と同様に構成されている。
【0065】
図18は変形例のELディスプレイパネル1Bの断面図である。図15に示されたELディスプレイパネル1とELディスプレイパネル1Aとの間で互いに対応する部分は同一に設けられ、互いに対応する部分に同一の符号を付す。
【0066】
ELディスプレイパネル1Bにおいては、透明基板2の出射面にカラーフィルタ20が積層されている。カラーフィルタ20の赤色部20R,緑色部20G,青色部20Bはそれぞれ同じ色の発光色の画素に対向している。例えば、図17の中で左の画素の発光層5が赤であり、中央の画素の発光層5が緑であり、右の画素の発光層5が青である場合、左の画素の発光層5に赤色部20Rが対向し、中央の画素の発光層5に緑色部20Gが対向し、右の画素の発光層5に青色部20Bが対向している。
【0067】
また、ELディスプレイパネル1では再帰反射体7を対向電極6に積層することによってボトムエミッション型のディスプレイパネルとしたが、対向電極6側に再帰反射体7を積層せずに、画素電極3とゲート絶縁膜31との間に再帰反射体を積層することによってトップエミッション型のディスプレイパネルとしても良い。この場合、封止膜8を透明な材料とする。
【0068】
また、上記実施形態では、アクティブマトリクス方式のELディスプレイパネル1について主に説明したが、パッシブ方式のELディスプレイパネルに本発明を適用しても良い。例えば、互いに平行なライン状の複数の第一透光性電極を透明基板上に配列し、複数の第二透光性電極を平面視して第一透光性電極に対して直交するよう第一透光性電極の上に配列し、第一透光性電極と第二透光性電極との各交差部に発光層を含む有機EL層を形成し、これら第二透光性電極を全体を被覆するよう再帰反射体又は黒色層を積層する。従って、各交差部で第一透光性電極の一部が画素電極となり、第二透光性電極の一部が対向電極となり、画素電極と対向電極との間に発光層が挟持され、対向電極に再帰反射体又は黒色層が積層されている。そして、再帰反射体の場合には、発光層側から第二透光性電極(対向電極)を透過して再帰反射体に入射した光(発光層にて発した光に限らず、外光も)が再帰反射し、黒色層の場合には、発光層側から第二透光性電極を透過して黒色層に入射した光(発光層にて発した光に限らず、外光も)が吸収される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】発光装置101の断面図である。
【図2】再帰反射体107の一例を示した断面図である。
【図3】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図4】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図5】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図6】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図7】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図8】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図9】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図10】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図11】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図12】再帰反射体107の別の一例を示した断面図である。
【図13】発光装置101Aの断面図である。
【図14】集光層109の一例を示した断面図である。
【図15】ELディスプレイパネル1の断面図である。
【図16】ELディスプレイパネル1の等価回路図である。
【図17】ELディスプレイパネル1Aの断面図である。
【図18】ELディスプレイパネル1Bの断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1,1B,1a ELディスプレイパネル
3 画素電極
4,104 正孔輸送層
5,105 発光層
6 透光性電極
7,107 再帰反射体
101,101A 発光装置
103 下部電極
106 上部電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する2つの透光性電極の間に発光層が挟持され、前記2つの透光性電極のうち一方の透光性電極に関して前記発光層の反対側に再帰反射体が設けられていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記再帰反射体が前記発光層の発光色と同じ色の光を再帰反射する特性を有することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
画素ごとに透光性の画素電極が設けられ、該画素電極に対向した透光性の対向電極と前記画素電極との間に発光層が挟持され、前記対向電極と前記画素電極のうちの一方の電極に関して前記発光層の反対側に再帰反射体が設けられていることを特徴とする発光型ディスプレイパネル。
【請求項4】
前記再帰反射体が前記発光層の発光色と同じ色の光を再帰反射する特性を有することを特徴とする請求項3に記載の発光型ディスプレイパネル。
【請求項5】
前記再帰反射体が前記発光層の発光波長域の半値幅よりも狭い半値幅の着色層を有することを特徴とする請求項3または4に記載の発光型ディスプレイパネル。
【請求項1】
互いに対向する2つの透光性電極の間に発光層が挟持され、前記2つの透光性電極のうち一方の透光性電極に関して前記発光層の反対側に再帰反射体が設けられていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記再帰反射体が前記発光層の発光色と同じ色の光を再帰反射する特性を有することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
画素ごとに透光性の画素電極が設けられ、該画素電極に対向した透光性の対向電極と前記画素電極との間に発光層が挟持され、前記対向電極と前記画素電極のうちの一方の電極に関して前記発光層の反対側に再帰反射体が設けられていることを特徴とする発光型ディスプレイパネル。
【請求項4】
前記再帰反射体が前記発光層の発光色と同じ色の光を再帰反射する特性を有することを特徴とする請求項3に記載の発光型ディスプレイパネル。
【請求項5】
前記再帰反射体が前記発光層の発光波長域の半値幅よりも狭い半値幅の着色層を有することを特徴とする請求項3または4に記載の発光型ディスプレイパネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−318842(P2006−318842A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142437(P2005−142437)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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