説明

発光装置及び電子機器

【課題】視角によって色度ずれを抑制することが可能な発光装置及びその発光素子を備えた電子機器を提供する。
【解決手段】各青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRに光共振器構造を有した有機EL装置10において、各青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRの画素電極15B,15G,15Rを第1画素電極部と、該第1画素電極部とは膜厚の異なる第2画素電極部とから構成することで、各青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRに2つの共振条件を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発光性有機材料を発光層に用いた有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」という)素子を備えた画素を有した有機エレクトロルミネッセンス発光装置の開発が進められている。一般に、有機EL素子は、2つの電極間に少なくとも発光層を含んだ機能層を挟持した構成をしており、発光層から発せられた光をそのまま表示光として利用するようになっている。
【0003】
しかし、有機EL素子からそのまま取り出された光は、スペクトルがブロードであり、発光輝度も低いため、発光装置に適用した場合、十分な色再現性が得られないという問題があった。そこで、各画素に誘電体ミラー層(半透明反射層)を設け、発光層から発せられた光を、一方の電極と誘電体ミラー層との間で往復するように反射させて、その光学的距離に対応した共振波長の光のみを増幅させて外部に取り出すようにした共振器構造を備えた発光装置が提案されている。このような共振器構造を備えた発光装置は、光学的距離を適宜変更することで、赤(R)、緑(G)、青(B)に対応した波長の光を取り出すことも可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2797883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記発光装置では、各電極及び誘電体ミラーは基板に対して垂直方向に順次積層された構成であるので、各画素の光学的距離は、基板に対して垂直方向と斜め方向とでは、見かけ上の光学的距離が異なる。
【0005】
図10(a),(b)に、それぞれ示すように、基板に対して斜め方向へ出射した青(B)及び赤(R)に対応した各波長の光は、ともに、出射角Qが0°,20°,…60°と広角になるに従って徐々にピーク波長が短波長側にシフトしていくことが分かる。例えば、青(B)や赤(R)に対応した波長の光では、それぞれ、出射角Qが0°、即ち、基板に対して正面(0°)へ出射する光と、基板に対して30°ずれて出射する光とでは約10nmずれた波長の光が、また、基板に対して60°ずれて出射する光とでは約50nmずれた波長の光が出射する。
【0006】
従って、基板に対して垂直方向に出射される光と斜め方向に出射される光とでは、波長が異なることにより、見る角度(視角)によって異なった色に見える、所謂色度ずれが生じてしまうという問題が生じてしまう。
【0007】
本発明では、このような事情に鑑みてなされたものであって、視角によって色度ずれを抑制することが可能な発光装置及びその発光素子を備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発光装置は、基板上に、光反射層と、該光反射層上に形成される光透過性を有する第1の電極と、該第1の電極と対向して配置される光透過性及び光反射性を有する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれて配置される、少なくとも発光層を含んで構成される機能層と、を備える単位画素を複数備えた発光装置であって、前記
単位画素は、各々、2以上の共振条件を含んで構成されてなる。
【0009】
これによれば、1つの単位画素からは、2以上の異なった波長の光が出射される。従って、単位画素から基板に対して斜め方向から取り出される光のピーク波長が、単位画素を基板に対して垂直方向から取り出される光のピーク波長と等しくなるように、単位画素を基板に対して垂直方向に観測される光の共振波長とは別に、基板に対して斜め方向に観測される共振波長を設定する。この結果、基板に対して垂直方向から取り出される光と、斜め方向から取り出される光とは、波長が同じになることにより、見る角度(視角)によって、色度ずれが生じることが抑制される。
【0010】
この発光装置において、前記単位画素は、各々、前記光反射層と前記第2の電極との間の距離であって、1の共振条件を構成する第1の光学的距離と、前記光反射層と前記第2の電極との間の距離であって、他の共振条件を構成する第2の光学的距離とを有するように、前記機能層、前記第1の電極、及び第2の電極のうちの少なくともいずれか一つの膜厚が調整されてもよい。
【0011】
これによれば、基板に対して垂直向に出射される光の波長と、斜め方向に出射される光の波長とが同じである。従って、見る角度(視角)によって、色度ずれが生じることがない。
【0012】
この発光装置において、前記光反射層と前記第1の電極との間には、前記第1の電極より屈折率が低い保護層が形成されていてもよい。
これによれば、光反射層は、一般的に、アルミニウム(Al)や銀(Ag)で形成されている。従って、画素電極を形成する際に使用される公知の現像液や剥離液の溶剤によって光反射層が劣化してしまうが、本発明のように、光反射層上には保護層が形成されているため、劣化しない。この結果、画素電極は、その光反射率が高い状態となるので、光取り出し効率の高い、即ち、高輝度の発光装置を製造することができる。また、各画素の光共振波長は、光反射層と半透過反射層との間の光学的距離、つまり、光反射層と半透過反射層との間に配置される画素電極、機能層、保護層の光学的距離の総和に対応し、また、各層の光学的距離は、その膜厚と屈折率との積によって求められることが知られている。本発明では、保護層の屈折率は画素電極より低いので、光共振波長は保護層の影響を受けない。保護層の屈折率が大きい場合、光共振器の観点から画素電極の膜厚を非常に薄く形成する必要が生じるが、これを抑制することができるので、画素電極の膜厚を製造しやすい厚みで形成することができる。
【0013】
この発光装置において、前記共振条件は、前記単位画素毎に前記第1の電極の膜厚を異ならせることによって前記第1の光学的距離と前記第2の光学的距離とを設定されるようにしてもよい。
【0014】
これによれば、第1の電極を、膜厚の異なる2以上の領域を有した、例えば階段状の形状にすることで、各単位画素内の光学的距離を2以上に設定する。そして、発光層の膜厚を変化させることはないので、各単位画素の発光特性を変化させることなく、各単位画素に2以上の異なる共振条件を設けることができる。
【0015】
この発光装置において、前記機能層は、前記発光層以外に正孔輸送層及び電子輸送層の少なくともいずれか一方を備え、前記共振条件は、前記単位画素毎に、前記正孔輸送層及び前記電子輸送層のうちの少なくともいずれか一方の膜厚を異ならせることによって前記第1の光学的距離と前記第2の光学的距離とが設定されてもよい。
【0016】
これによれば、第1の電極は、膜厚の異なる2以上の領域を有した、例えば階段状の形
状にすることで、各単位画素内の光学的距離を2以上に設定することができる。そして、発光層の膜厚を変化させることはないので、各単位画素の発光特性を変化させることなく、各単位画素に2以上の異なる共振条件を設けることができる。
【0017】
この発光装置において、前記単位画素は、赤色系の光を発光する赤用画素、緑色系の光を発光する緑用画素及び青色系の光を発光する青用画素を含み、前記共振条件は、前記赤用画素、前記緑用画素及び前記青用画素のうち、前記各青用画素のみに設定されていてもよい。
【0018】
これによれば、赤、緑及び青色の光を発光するフルカラー表示可能な発光装置において、青色系の光を発光する青用画素は、赤用画素、緑用画素及び青用画素のうち、最も視角による色度ずれが大きい。従って、青用画素に対して共振条件を2以上設定することでも視角による色度ずれを効果的に抑制させることができる。
【0019】
この発光装置において、前記赤用画素に相対向する位置に赤色変換層、前記緑用画素に相対向する位置に緑色変換層及び前記青用画素に相対向する位置に青色変換層を備えたカラーフィルタをさらに有してもよい。
【0020】
これによれば、カラーフィルタが設けられているので、より色再現性の良好な発光装置を実現することができる。
この発光装置において、前記共振条件を構成する一方の共振波長は、前記カラーフィルタの透過率特性における最大透過率を示す波長と一致してもよい。
【0021】
これによれば、輝度を低下させることなく、赤、緑及び青色の光の色ずれが抑制された発光装置を実現することができる。
この発光装置において、前記共振条件を構成する一方の共振波長λ2は、他方の共振波長λ1に対して、
(λ1+10nm)≦λ2≦(λ1+50nm)
を満たす波長範囲に設定されていてもよい。 これによれば、視角が60°程度であっても、赤、緑及び青色の光の色ずれが抑制される。従って、広視野角であっても、色度ずれの起きない発光装置を実現することができる。
【0022】
本発明の電子機器は、上記記載の発光装置を備えている。
これによれば、広視野角であっても、色度ずれを抑制した画像を表示することの可能な電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した各実施形態について図面に従って説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の発光装置としての有機EL装置の概略構成を示す断面図である。
【0024】
本実施形態の有機EL装置10は、発光層から発光(内部発光)した光(表示光)を基板とは反対側から取り出す、所謂トップエミッション型の有機EL装置である。
図1に示すように、有機EL装置10は、ガラス等の光透過性を有する基板(透明基板)11を備えるとともに、該基板11上には、青用画素形成領域ZB、緑用画素形成領域ZG及び赤用画素形成領域ZRがマトリクス状に配置されている。各青、緑及び赤用画素形成領域ZB,ZG,ZRは、図1においてX矢印方向に沿って、青用画素形成領域ZB→緑用画素形成領域ZG→赤用画素形成領域ZR→…の順に繰り返して配置されるとともに、Z矢印方向(紙面奥側方向)に沿っては同色の画素形成領域ZB,ZG,ZRが配置
されている。
【0025】
また、基板11上には、各同色の画素形成領域ZB,ZG,ZRに沿ってストライプ状に、光反射性の高い材料等で構成された複数の光反射層12が延設されている。本実施形態の光反射層12は、アルミニウム(Al)で構成されている。
【0026】
各光反射層12上には、該光反射層12を被覆するように保護層13が形成されている。この保護層13は、光透過性が高く、かつ電気絶縁性を有した材料で構成されている。また、本実施形態では、保護層13は、後記する青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rより屈折率が低い材料で構成されている。保護層13は、例えば、光反射層12の表面を陽極酸化することによって形成されている。
【0027】
各青、緑及び赤用画素形成領域ZB,ZG,ZR内の保護層13上には、光透過性を有した導電性材料で構成された第1電極としての青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rが区画形成されている。つまり、保護層13を介して各光反射層12と相対向するように、複数の青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rがマトリクス状に配置されている。尚、本実施形態の画素電極15B,15G,15Rは、インジウムー錫化合物(ITO)で構成されている。
【0028】
図2〜図4に示すように、青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rは、それぞれ、第1青、緑及び赤用画素電極部18B,18G,18Rと、該第1青、緑及び赤用画素電極部18B,18G,18Rとは膜厚が異なる第2青、緑及び赤用画素電極部19B,19G,19Rとを備えている。
【0029】
図2に示すように、第1青用画素電極部18Bは、その膜厚Tb1が、第2青用画素電極部19Bの膜厚Tb2に比べて膜厚が薄くなっている。同様に、図3に示すように、第1緑用画素電極部18Gは、その膜厚Tg1が、第2緑用画素電極部19Gの膜厚Tg2に比べて膜厚が薄くなっている。また同様に、図4に示すように、第1赤用画素電極部18Rは、その膜厚Tr1が、第2赤用画素電極部19Rの膜厚Tr2に比べて膜厚が薄くなっている。つまり、各画素電極15B,15G,15Rは、階段状の形状をしている。
【0030】
また、第1青用画素電極部18Bの膜厚Tb1は、第1緑用画素電極部18Gの膜厚Tg1に比べて薄く、第1緑用画素電極部18Gの膜厚Tg1は、第1赤用画素電極部18Rの膜厚Tr1に比べて薄くなっている。
【0031】
図1に示すように、基板11上には、各青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rを覆うように機能層20が形成されている。本実施形態の機能層20は、正孔輸送層21、発光層22及び電子輸送層23が基板11側から順次積層されている。また、機能層20上(電子輸送層23上)の全面には、第2電極としての共通電極25が形成されている。
【0032】
正孔輸送層21は、青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rから発光層22への電荷の注入効率を高めるとともに、発光層22内を移動する電子をブロッキングする機能を有し、発光層22内での電子と正孔との再結合確率を高める作用を奏する。この正孔輸送層21には、各画素電極15B,15G,15Rからの注入障壁が低く、正孔移動度の高い材料が好適に用いられる。このような材料としては、例えばポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体など、またはそれらのドーピング体などが用いられる。具体的には、3,4−ポリエチレンジオキシオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)[商品名;バイトロン−p(Bytron-p):バイエル社製]の分散液、即ち、分散媒としてポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ
、さらにこれを水に分散させた分散液などを用いられる。本実施形態では、正孔輸送層21は、各青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rに対して均一な膜厚である。
【0033】
発光層22は、蛍光或いは燐光を発光することが可能な公知の高分子発光材料で構成されている。このような材料としては、ポリフルオレン誘導体(PF)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリジアルキルフルオレン(PDAF)、ポリフルオレンベンゾチアジアゾール(PFBT)、ポリアルキルチオレン(PAT)や、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)等のポリシラン系などを好適に用いることができる。また、これらの各発光材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。尚、本実施形態の発光層22では、白色の光を発光する公知の高分子発光材料で構成されている。また、本実施形態では、発光層22は、正孔輸送層21上の全面に渡って均一な膜厚である。
【0034】
電子輸送層23は、共通電極25から発光層22への電子注入効率を高めるとともに、正孔ブロッキング機能を有する。この電子輸送層23は、オキサジアゾール誘導体やAlq3などの有機材料で構成されている。本実施形態では、電子輸送層23は、発光層22上の全面に渡って均一な膜厚である。
【0035】
共通電極25は、発光層22から発せられた光の一部を透過して、残りの光の一部または全部を光反射層12側に反射する光半透過反射膜として機能する電極である。従って、機能層20は、共通電極25と各青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rとの間に挟持されている。そして、発光層22から発せられた光を各画素電極15B,15G,15Rの直下に配置された光反射層12と共通電極25との間で往復するように反射させて共振させる光共振器構造が形成される。
【0036】
そして、青、緑及び赤用画素形成領域ZB,ZG,ZRには、それぞれ、単位画素としての青、緑及び赤用画素DB,DG,DRが割り当てられており、このうち、同色の画素DB,DG,DRが同一の光反射層12上に整列配置されている。つまり、各画素DB,DG,DRのうち、青用画素DBには、各青用画素電極15B(18B,19B)、共通電極25、及び各青用画素電極15B(18B,19B)と共通電極25とに挟持された機能層20とで構成された青用有機EL素子28Bが設けられている。また、緑用画素DGには、各緑用画素電極15G(18G,19G)、共通電極25、及び各緑用画素電極15G(18G,19G)と共通電極25とに挟持された機能層20とで構成された緑用有機EL素子28Rが設けられている。同様に、赤用画素DRには、各赤用画素電極15R(18R,19R)、共通電極25、及び各赤用画素電極15R(18R,19R)と共通電極25とに挟持された機能層20とで構成された赤用有機EL素子28Rが設けられている。尚、基板11には、図示しない複数のデータ線や複数の走査線が形成され、これら各データ線と走査線との交差に対応した位置に各画素DB,DG,DRが形成される。また、各画素DB,DG,DRに対応した基板11上には各有機EL素子28B,28G,28Rの発光を制御する図示しないスイッチングトランジスタやドライビングトランジスタ等の駆動用TFTが形成されている。
【0037】
次に、各青、緑及び赤用画素DB,DG,DRについてその詳細を説明する。
図2に示すように、第1青用画素電極部18Bの上下方向(図2においてY矢印方向)に対応した光反射層12と共通電極25との間の距離(これを「第1距離」という)をLB1で示し、第2青用画素電極部19Bの上下方向に対応した光反射層12と共通電極25との間の距離(これを「第2距離」という)をLB2で示す。すると、各正孔輸送層2
1、発光層22及び電子輸送層23は画素電極15Bに対して均一な膜厚であるので、第2距離LB2は、第1距離LB1に比べて第1青用画素電極部18Bの膜厚Tb1と第2青用画素電極部19Bの膜厚Tb2との差分(Tb2−Tb1)だけ長くなっている。同様に、図3に示すように、第1緑用画素電極部18Gの上下方向(図3においてY矢印方向)に対応した光反射層12と共通電極25との間の第1距離をLG1とし、第2緑用画素電極部19Gの上下方向に対応した光反射層12と共通電極25との間の第2距離をLG2とする。すると、第2距離LG2は、第1距離LG1に比べて第1緑用画素電極部18Gの膜厚Tg1と第2緑用画素電極部19Gの膜厚Tg2の膜厚との差分(Tg2−Tg1)だけ長い。
【0038】
また同様に、図4に示すように、第1赤用画素電極部18Rの上下方向(図4においてY矢印方向)に対応した光反射層12と共通電極25との間の第1距離をLR1とし、第2赤用画素電極部19Rの上下方向に光反射層12と共通電極25との間の第2距離をLR2とする。すると、第2距離LR2は、第1距離LR1に比べて第1赤用画素電極部18Rの膜厚Tr1と第2赤用画素電極部19Rの膜厚Tr2の膜厚との差分(Tr2−Tr1)だけ長い。
【0039】
各画素DB,DG,DRから出射される光は、該画素DB,DG,DRに形成された光共振器構造の共振条件に従った共振波長の光となる。この共振波長は、光反射層12と共通電極25との間の光学的距離、つまり、光反射層12と共通電極25との間に配置される各層の光学的距離の総和に対応する。各層の光学的距離は、その膜厚と屈折率との積によって求められる。本実施形態では、各有機EL素子28B,28G,28Rは全て共通の材料で構成されているので、各層の屈折率は等しい。従って、各層の光学的距離は、各層の膜厚の総和である第1距離LB1,LG1,LR1及び第2距離LB2,LG2,LR2によって決定される。尚、光の共振波長は、光学的距離が長くなるのに伴って(本実施形態では、第1距離LB1,LG1,LR1及び第2距離LB2,LG2,LR2が長くなるのに伴って)長くなる。
【0040】
従って、本実施形態では、前記したように、各青、緑及び赤用画素DB,DG,DRは、第1距離LB1,LG1,LR1と第2距離LB2,LG2,LR2とからなる2種類の距離を備えているので、第1距離LB1,LG1,LR1に対応した第1の光学的距離と、第2距離LB2,LG2,LR2に対応した第2の光学的距離とを備えている。換言すると、各青、緑及び赤用画素DB,DG,DRは、異なる2つの共振条件を備えている。
(青用画素DBについて)
青用画素DBの第1及び第2距離LB1,LB2は、ともに、青色系の光に対応した波長の光が共振して得られるように、第1及び第2青用画素電極部18B,19Bの各膜厚Tb1,Tb2が設定されている。第1距離LB1は、基板11に対して垂直方向(図2においてY矢印方向)に沿って出射する青色の光HB1の共振波長PB1が予め設定された所望の青色の光になるように、第1青用画素電極部18Bの膜厚Tb1を予め設定することで調整されている。また、第2距離LB2は、第1距離LB1に比べて長いので、それに伴って光学的距離が長くなることから、共振波長PB1に比べて長波長の青色の光HB2が出射されるが、その光HB2の共振波長PB2は、以下の式(1)を満足するように第2青用画素電極部19Bの膜厚Tb2を予め設定することで調整されている。
【0041】
(PB1+10nm)≦PB2≦(PB1+50nm) ・・・(1)
この上式(1)を満足する光HB2の共振波長PB2は、基板11に対して出射角が60°に斜め方向に出射された場合、基板11に対して垂直方向に出射された光の共振波長PB1とほぼ等しい波長である。つまり、青用画素DBから出射して、垂直方向に観測される青色の光の波長と斜め方向に観測される青色の光の波長はほぼ等しくなる。ここで、
出射角とは、基板11に対して垂直方向(図1において、Y矢印方向)に対する平行方向(図1において、X矢印方向)のなす角をいう。例えば、基板11に対して垂直方向(図1において、Y矢印方向)は出射角が0°であり、その垂直方向から基板11に対して平行方向(図1において、X矢印方向)は出射角が90°である。
(緑用画素DGについて)
緑用画素DGの第1及び第2距離LG1,LG2は、ともに、緑色系の光に対応した波長の光が共振して得られるように、第1及び第2緑用画素電極部18G,19Gの各膜厚Tg1,Tg2が設定されている。詳しくは、第1距離LG1は、基板11に対して垂直方向(図3においてY矢印方向)に沿って出射する緑色の光HG1の共振波長PG1が予め設定された所望の緑色の光になるように、第1緑用画素電極部18Gの膜厚Tg1を予め設定することで調整されている。また、第2距離LG2は、第1距離LG1に比べて長いので、共振波長PG1に比べて長波長の緑色の光HG2が出射されるが、その光HG2の共振波長PG2は、以下の式(2)を満足するように第2緑用画素電極部19Gの膜厚Tg2を予め設定することで調整されている。
【0042】
(PG1+10nm)≦PG2≦(PG1+50nm) ・・・(2)
この上式(2)を満足する光HG2の共振波長PG2は、基板11に対して出射角が60°に斜め方向に出射された場合、基板11に対して垂直方向に出射された光の共振波長PG1とほぼ等しい。つまり、緑用画素DGから出射して、垂直方向に観測される緑色の光の波長と斜め方向に観測される緑色の光の波長はほぼ等しくなる。
(赤用画素DRについて)
赤用画素DRの第1及び第2距離LR1,LR2は、ともに、赤色系の光に対応した波長の光が共振して得られるように、第1及び第2赤用画素電極部18R,19Rの各膜厚Tr1,Tr2が設定されている。詳しくは、第1距離LR1は、基板11に対して垂直方向(図4においてY矢印方向)に沿って出射する赤色の光HR1の共振波長PR1が予め設定された所望の赤色の光になるように、第1赤用画素電極部18Rの膜厚Tr1を予め設定することで調整されている。また、第2距離LR2は、第1距離LR1に比べて長いので、共振波長PR1に比べて長波長の赤色の光HR2が出射されるが、その光HR2の共振波長PR2は、以下の式(3)を満足するように第2赤用画素電極部19Rの膜厚Tr2を予め設定することで調整されている。
【0043】
(PR1+10nm)≦PR2≦(PR1+50nm) ・・・(3)
この上式(3)を満足する光HR2の共振波長PR2は、基板11に対して出射角が60°に斜め方向に出射された場合、基板11に対して垂直方向に出射された光の共振波長PR1とほぼ等しい。つまり、赤用画素DRから出射して、垂直方向に観測される赤色の光の波長と斜め方向に観測される赤色の光の波長はほぼ等しくなる。
【0044】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、各青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRは、それぞれ、2つの共振条件を備えた。従って、各青用画素DBからは共振波長PB1を有した青色の光HB1と、該共振波長PB1に比べて長波長の共振波長PB2を有した青色の光HB2とが出射される。また、各緑用画素DGからは共振波長PG1を有した緑色の光HG1と、該共振波長PG1に比べて長波長の共振波長PG2を有した緑色の光HG2とが出射される。さらに、各赤用画素DRからは共振波長PR1を有した赤色の光HR1と、該共振波長PR1に比べて長波長の共振波長PR2を有した赤色の光HR2とが出射される。
【0045】
この結果、基板11に対して斜め方向から取り出される光は、基板11に対して垂直方向から取り出された光に比べて波長が短くなるが、各共振波長PB2,PG2,PR2は、予め長波長であるので、基板11に対して斜め方向から観測されることによって基板1
1に対して垂直方向から観測される光の波長とほぼ等しくなる。従って、基板11に対して見る角度(視角)によって異なった色に見える、所謂色度ずれは起こらない画像を表示することができる。
【0046】
(2)本実施形態によれば、保護層13及び機能層20の各層を、各画素DB,DG,DRに対して均一な膜厚とした。また、各画素電極15B,15G,15Rを膜厚が異なる2つの電極部18B,18G,18R及び19B,19G,19Rから構成されるようにした。従って、発光層22の膜厚を変化させることはないので、各画素DB,DG,DRの発光特性を変化させることなく、各画素DB,DG,DRに2以上の異なる共振条件を容易に設定することができる。
【0047】
(3)本実施形態によれば、各青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRから出射される光HB2,HG2,HR2の各共振波長PB2,PG2,PR2を、上式(1),(2),(3)を満足するように決定した。従って、各青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRから基板11に対して出射角が60°に出射された光の波長を、基板11に対して垂直方向に出射された光の共振波長PB1,PG1,PR1とほぼ等しくすることができる。この結果、視角が60°程度であっても、赤、緑及び青色の光の色ずれが抑制される。その結果、広視野角であっても、色度ずれの起きない有機EL装置10を実現することができる。
【0048】
(4)本実施形態によれば、光反射層12と各画素電極15B,15G,15Rとの間に、光反射層12全体を覆うように保護層13を形成した。従って、画素電極15B,15G,15Rを形成する際に使用される公知の現像液や剥離液の溶剤が光反射層12に直接接触することはないので、光反射層12が現像液や剥離液の溶剤によって劣化することはない。この結果、各画素電極15B,15G,15Rは、その光反射率が高い状態となるので、光取り出し効率の高い、即ち、高輝度の有機EL装置を実現することができる。
【0049】
(5)本実施形態によれば、保護層13は、各画素電極15B,15G,15Rより屈折率が低い材料で構成した。従って、各光HB1,HB2,HG1,HG2,HR1,HR2の各共振波長は保護層13の影響を受けない。従って、保護層13の屈折率が大きい場合、光共振器の観点から画素電極15B,15G,15Rの膜厚を非常に薄く形成する必要が生じるが、これを抑制することができる。この結果、画素電極15B,15G,15Rの各膜厚を製造しやすい厚みで形成することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る有機EL装置を図5及び図6に従って説明する。
【0050】
本実施形態の有機EL装置50は、上記第1実施形態に係る有機EL装置10に、カラーフィルタ51が取り付けられている他は同じ構成である。従って、上記第1実施形態と同じ部材については、同じ符号を付しその説明を省略する。
【0051】
図5に示すように、カラーフィルタ51は、光透過性を有したカラーフィルタ基板52を備え、そのカラーフィルタ基板52には、各画素DB,DG,DRの共振波長に対応した波長の光を透過する青色、緑色及び赤色変換層53B,53G,53Rが設けられている。各色変換層53B,53G,53Rは、ブラックマトリクスBMによってマトリクス上に区画配置されている。
【0052】
そして、カラーフィルタ51は、青色変換層53Bが青用画素DBに相対向する位置に、緑色変換層53Gが緑用画素DGに相対向する位置に、赤色変換層53Rが赤用画素DRに相対向する位置に配置されるように、共通電極25上に取り付けられている。
【0053】
図6は、各青色、緑色及び赤色変換層53B,53G,53Rの波長に対する光透過率を示すグラフである。図6中、曲線55Bは青色変換層53Bの光透過率を示す曲線であって、曲線55Gは緑色変換層53Gの光透過率を示す曲線であって、曲線55Rは赤色変換層53Rの光透過率を示す曲線である。また、図6中、曲線Lb1,Lb2は、それぞれ、共振波長PB1の光HB1及び共振波長PB2の光HB2の各発光スペクトルである。同様に、図6中、曲線Lg1,Lg2は、それぞれ、共振波長PG1の光HG1及び共振波長PG2の光HG2の各発光スペクトルである。また、同様に、図6中、曲線Lr1,Lr2は、それぞれ、共振波長PR1の光HR1及び共振波長PR2の光HR2の各発光スペクトルである。
【0054】
図6に示すように、本実施形態では、各青用画素DBから出射される光HB1の共振波長PB1が、青色変換層53Bの光透過率特性における最大透過率を示す波長と一致するように、第1距離LB1及び第2距離LB2が適宜調整されている。同様に、本実施形態では、各緑用画素DG及び赤用画素DRから出射される光HG1,HR1の各共振波長PG1,PR1が、緑色及び赤色変換層53G,53Rの各光透過率特性における最大透過率を示す波長と一致するように、第1距離LG1,LR1及び第2距離LG2,LR2が適宜調整されている。
【0055】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、光共振構造を有した各画素DB,DG,DRから出射された光のうち、カラーフィルタ51を透過した光のみ外部に取り出されるので、より色再現性の良好な有機EL装置を実現することができる。
【0056】
(2)本実施形態によれば、光HB1,HG1,HR1の各共振波長PB1,PG1,PR1が、青色、緑色及び赤色変換層53B,53G,53Rの各光透過率特性における最大透過率を示す波長と一致している。従って、輝度を低下させることなく、赤、緑及び青色の光の色ずれが抑制された有機EL装置を実現することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る有機EL装置を図7に従って説明する。
【0057】
本実施形態の有機EL装置60は、緑用画素DG及び赤用画素DRの各画素電極の構成が異なっている他は、上記第1実施形態に係る有機EL装置10と同じ構成である。従って、上記第1実施形態と同じ部材については、同じ符号を付しその説明を省略する。
【0058】
図7に示すように、本実施形態の有機EL装置60における緑用画素電極61Gは、膜厚Tg1である第1緑用画素電極部18Gからのみ構成され、第1実施形態に係る有機EL装置10のような階段状の形状を成していない。また、同様に、本実施形態の有機EL装置60における赤用画素電極61Rは、膜厚Tr1である第1赤用画素電極部18Rからのみ構成され、第1実施形態に係る有機EL装置10のような階段状の形状を成していない。従って、緑用画素DGからは共振波長PG1を有した緑色系の光HG1のみが、また、赤用画素DRからは共振波長PR1を有した赤色系の光HR1のみが出射する。
【0059】
ここで、青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRのうち、青用画素DBから出射される青色系の光HBが最も視角による色度ずれが大きいことが知られている。そこで、本実施形態では、青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRのうち、最も視角による色度ずれが大きい青色系の光HBを出射する青用画素DBに対してのみ2つの共振条件を備えている。
【0060】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRのうち、最
も視角による色度ずれが大きい青色系の光HBを出射する青用画素DBに対してのみ2つの共振条件を備えた。従って、全ての画素DB,DG,DRに対して共振条件を2つ設定するのではないので、上記第1実施形態に係る有機EL装置10に比べて製造が容易となる。従って、製造が容易で、且つ視角による色度ずれを抑制させることができる有機EL装置を提供することができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る有機EL装置を図8に従って説明する。
【0061】
本実施形態の有機EL装置70における青用画素電極71Bは、膜厚Tb1である第1青用画素電極部18Bからのみ構成され、また、緑用画素電極15Gは、膜厚Tg1である第1緑用画素電極部18Gからのみ構成され、さらに、赤用画素電極15Rは、膜厚Tr1である第1赤用画素電極部18Rからのみ構成されている。つまり、各画素電極15B,15G,15Rは、第1実施形態に係る有機EL装置10のような階段状の形状を成していない。
【0062】
また、各青用画素DBの機能層20を構成する正孔輸送層21は、上記第1実施形態に係る有機EL装置10のように、青用画素電極15Bに対して均一の膜厚ではなく、その一部の領域S(例えば、有機EL装置10における第2青用画素電極部19Bが形成された領域)上の正孔輸送層21の膜厚が厚くなっている。そして、その正孔輸送層21上に、発光層22及び電子輸送層23がそれぞれ均一の膜厚で積層されている。従って、青用画素DB内の正孔輸送層21は、他の緑及び赤用画素DG,DRと同じ膜厚と、他の緑及び赤用画素DG,DRの膜厚よりも厚い膜厚とを有している。この結果、青用画素DBは、2つの光学的距離を備えている。
【0063】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、共振条件を、青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rの形状を変えることで設定するのではなく、正孔輸送層21の膜厚を適宜変えることで設定するようにしている。この結果、上記第3実施形態と同様に、青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRのうち、最も視角による色度ずれが大きい青色系の光HBを出射する青用画素DBに対してのみ2つの共振条件を設定することができる。
(第5実施形態)
次に、上記各実施形態に係る有機EL装置を備えた電子機器を一例について説明する。
【0064】
図9は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図9に示す携帯電話80は、複数の操作ボタン81、受話口82、送話口83及び表示部84を備えている。このようなこう性をした携帯電話80は、その表示部84が上記第1〜第4実施形態に係る有機EL装置10,50,60,70の何れかを備えている。従って、携帯電話80の表示部84には、広視野角であっても、色度ずれの起きない画像が表示される。
【0065】
尚、この発明は、以下のように変更して具体化することもできる。
・上記第4実施形態では、青用画素電極15B上の正孔輸送層21の一部の膜厚を変えることで、青用画素電極15Bの共振条件を2つに設定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、電子輸送層23の一部の膜厚を変えることで、青用画素電極15Bの共振条件を2つに設定してもよい。または、発光層22の一部の膜厚を変えることで青用画素電極15Bの共振条件を2つに設定してもよい。さらに、保護層13の一部の膜厚を変えたり、光反射層12自体の一部の膜厚を変えたりすることで青用画素電極15Bの共振条件を2つに設定してもよい。要は、青用画素電極15Bの各層の何れかの膜厚を変えることで、光学的距離を変化させていればよい。
【0066】
・上記各実施形態では、正孔輸送層21、発光層22及び電子輸送層23で機能層20
を構成したが、本発明はこれに限定されない。上記各層21〜23のうち、発光層22以外の他の層(正孔注入層や電子注入層)のいずれかまたは全てが含まれていてもよい。要は、機能層20は、発光層22を含んでいればよい。このようにすることで、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
・上記各実施形態では、各青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRから出射される光HB2,HG2,HR2の各共振波長PB2,PG2,PR2を、上式(1),(2),(3)を満足するように決定したが、本発明はこれに限定されない。要は、各青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRからは、2種類の共振波長の光が出射されればよい。
【0068】
・上記各実施形態では、各青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRの光学的距離は、各青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRを構成する各層21,22,23を共通の同じ材料で構成することで、各層21,22,23の屈折率を同じにし、膜厚を適宜変えることで適宜設定した。これを、各青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRで各層21,22,23の膜厚を均一にし、各青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DR毎で画素電極15B,15G,15Rの材質及び各層21,22,23の材質を変更することで屈折率を調整して光学的距離を適宜設定するようにしてもよい。このようにすることで、機能層20の表面を平坦にすることができるので、機能層20と共通電極25との密着性が向上する。この結果、機能層20と共通電極25との電気的接続が良好となるので、光共振構造を有した有機EL装置10,50,60,70の歩留まりを向上させることができる。
【0069】
・上記各実施形態では、発光層22に発光性有機材料を用いた有機EL装置10,50,60,70に適用したが、これを発光性有機材料以外の材料を備えた発光素子(例えば、発光ダイオード(LED)素子)を用いた発光装置であっても本発明は適用可能である。
【0070】
・上記第5実施形態では、電子機器として携帯電話80について説明したが、これに限定されるものではなく、モバイル型のパーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等のディスプレイを備えた電子機器に広く適用可能である。
【0071】
・上記各実施形態では、基板11を、ガラス等の光透過性を有した基板(透明基板)としたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、光透過性を有しない基板(不透明基板)も用いることもできる。基板11を、光透過性を有しない基板(不透明基板)とした場合では、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらには、そのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。要は、画素が形成可能であるものであれば、どんなものであってもよい。
【0072】
・上記各実施形態では、光反射層12をアルミニウム(Al)で構成したが、これに限定されるものではなく、光反射性に優れたものであればどんな材料で構成されていてもよい。例えば、銀(Ag)で構成されていてもよい。
【0073】
・上記各実施形態では、単位画素として青、緑及び赤用画素DB,DG,DRに具体化したが、これを、青、緑及び赤用画素DB,DG,DR以外の画素に具体化してもよい。たとえば、青、緑及び赤系以外の色の光を出射する色の画素に具体化してもよい。
【0074】
・上記各実施形態では、第1の電極を画素電極15B,15G,15Rとし、第2の電極を共通電極25とし、発光層22から発光した光を基板11とは反対側から取り出す、
所謂トップエミッション型の有機EL装置10に具体化したが、本発明はこれに限定されない。発光層22から発光した光を基板11側から取り出す、所謂ボトムエミッション型の有機EL装置10に具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1実施形態に係る有機ELディスプレイの断視図。
【図2】青用画素の拡大断面図。
【図3】緑用画素の拡大断面図。
【図4】赤用画素の拡大断面図。
【図5】第2実施形態に係る有機ELディスプレイの断視図。
【図6】カラーフィルタの光透過率を示すグラフ。
【図7】第3実施形態に係る有機ELディスプレイの断視図。
【図8】第4実施形態に係る有機ELディスプレイの断視図。
【図9】電子機器としての携帯電話の斜視図。
【図10】(a)は、様々な出射角度で出射された青色の光の発光強度であり、(b)は、様々な出射角度で出射された赤色の光の発光強度である。
【符号の説明】
【0076】
11…基板、12…光反射層、15B…第1の電極としての青用画素電極、15G…第1の電極としての緑用画素電極、15R…第1の電極としての赤用画素電極、25…第2の電極としての共通電極、22…発光層、20…機能層、DB…単位画素としての青用画素、DG…単位画素としての緑用画素、DR…単位画素としての赤用画素、PB2…一方の共振波長(λ1)としての青用画素の光の共振波長、PG2…一方の共振波長(λ1)としての緑用画素の光の共振波長、PR2…一方の共振波長(λ1)としての赤用画素の光の共振波長、PB1…他方の共振波長(λ2)としての青用画素の光の共振波長、PG1…他方の共振波長(λ2)としての緑用画素の光の共振波長、PR1…他方の共振波長(λ2)としての赤用画素の光の共振波長、10,50,60,70…発光装置としての有機EL装置、21…正孔輸送層、23…電子輸送層、51…カラーフィルタ、53B…青色変換層、53G…緑色変換層、53R…赤色変換層
80…電子機器としての携帯電話。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、光反射層と、該光反射層
上に形成される光透過性を有する第1の電極と、該第1の電極と対向して配置される光透過性及び光反射性を有する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれて配置される、少なくとも発光層を含んで構成される機能層と、を備える単位画素
を複数備えた発光装置であって、
前記単位画素は、各々、2以上の共振条件を含んで構成されてなることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記単位画素は、各々、前記光反射層と前記第2の電極との間の距離であって、1の共振条件を構成する第1の光学的距離と、前記光反射層と前記第2の電極との間の距離であって、他の共振条件を構成する第2の光学的距離とを有するように、前記機能層、前記第1の電極、及び第2の電極のうちの少なくともいずれか一つの膜厚が調整されることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光装置において、
前記光反射層と前記第1の電極との間には、前記第1の電極より屈折率が低い保護層が形成されていることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の発光装置において、
前記共振条件は、前記単位画素毎に前記第1の電極の膜厚を異ならせることによって前記第1の光学的距離と前記第2の光学的距離とを設定されるようにしたことを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記機能層は、前記発光層以外に正孔輸送層及び電子輸送層の少なくともいずれか一方を備え、
前記共振条件は、前記単位画素毎に、前記正孔輸送層及び前記電子輸送層のうちの少なくともいずれか一方の膜厚を異ならせることによって前記第1の光学的距離と前記第2の光学的距離とが設定されることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記単位画素は、赤色系の光を発光する赤用画素、緑色系の光を発光する緑用画素及び青色系の光を発光する青用画素を含み、
前記共振条件は、前記赤用画素、前記緑用画素及び前記青用画素のうち、前記青用画素のみに設定されていることを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項6に記載の発光装置において、
前記赤用画素に相対向する位置に赤色変換層、前記緑用画素に相対向する位置に緑色変換層及び前記青用画素に相対向する位置に青色変換層を備えたカラーフィルタをさらに有することを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項7に記載の発光装置において、
前記共振条件を構成する一方の共振波長は、前記カラーフィルタの透過率特性における最大透過率を示す波長と一致していることを特徴とする発光装置。
【請求項9】
請求項8に記載の発光装置において、
前記共振条件を構成する一方の共振波長λ2は、他方の共振波長λ1に対して、
(λ1+10nm)≦λ2≦(λ1+50nm)
を満たす波長範囲に設定されていることを特徴とする発光装置。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の発光装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−122969(P2007−122969A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311457(P2005−311457)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】