説明

発光装置及び電子機器

【課題】視角によって生ずる色度ずれを抑制することが可能な発光装置及びその発光装置を備えた電子機器を提供する。
【解決手段】青用画素DBの光学的距離を、発光層22から出射される3つの発光ピークのうち、450nm〜485nmの波長範囲であってそのうち最も短波長側に位置する発光ピークで光共振が生じるように設定するようにした。このとき、青用画素DBの光学的距離は、青用画素電極15Bの膜厚を調整することによって設定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発光性有機材料を発光層に用いた有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」という)素子を備えた画素を有した有機エレクトロルミネッセンス発光装置の開発が進められている。一般に、有機EL素子は、2つの電極間に発光層を挟持した構成をしており、発光層から発せられた光をそのまま表示光として利用するようになっている。
【0003】
しかし、有機EL素子からそのまま取り出された光は、スペクトルがブロードであり、発光輝度も低いため、発光装置に適用した場合、十分な色再現性が得られないという問題があった。そこで、各画素に半透明反射層(ハーフミラー層)を設け、発光層から発せられた光を、一方の電極と半透明反射層との間で往復するように反射させて、その光学的距離に対応した共振波長の光のみを増幅させて外部に取り出すようにした共振器構造を備えた発光装置が提案されている。このような共振器構造を備えた発光装置は、光学的距離を適宜変更することで、赤(R)、緑(G)、青(B)に対応した波長の各色の光を取り出すことも可能となる。また、各画素に対向した位置にカラーフィルタを設け、各画素から出射される赤、緑及び青色の光の再現性を向上させたものもある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2797883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記発光装置では、電極及び半透明反射層を、基板に対して垂直方向に順次積層した構成であるので、各画素の光学的距離は、基板に対して垂直方向と斜め方向とで見かけ上の光学的距離が異なる。この結果、基板に対して斜め方向に出射される光は垂直方向に出射される光に比べてピーク波長が短波長にずれることにより、見る角度(視角)によって異なった色に見える、所謂色度ずれが生じてしまう。その結果、視野角が狭いという問題があった。特に、カラーフィルタを備えた上記発光装置では、赤用画素と緑用画素は視角によってピーク波長が短波長側にシフトしてもカラーフィルタによって色度ずれが補正される。しかし、青用画素については、カラーフィルタの特性上、短波長側に対しては概ね高い透過率を維持するため、短波長側にシフトする光については色度ずれを補正することが困難であった。この結果、青色の光については、斜め方向からみると色相がずれてしまう。
【0005】
本発明では、このような事情に鑑みてなされたものであって、視角によって生ずる色度ずれを抑制することが可能な発光装置及びその発光装置を備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発光装置は、基板と、前記基板上に形成される光反射層と、前記光反射層上に形成される光透過性を有する第1の電極と、前記第1の電極と対向して配置される光透過性及び光反射性を有する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれて配置され、少なくとも1以上の発光ピークを有する光を出射する発光層を含む機能層と、を具備する画素が複数形成された発光装置であって、前記画素は、赤色の光が取り出されるように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された赤用画素と、緑色の光が取り出されるように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定され
た緑用画素と、青色の光が取り出されるように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された青用画素と、から構成され、前記青用画素の光学的距離が、前記1以上の発光ピークのうち、450nm〜485nmの波長範囲にある最も短波長側の発光ピークで設定されている。
【0007】
これによれば、青用画素の光共振は、発光層から出射される光のうち、450nm〜485nmの波長範囲にある最も短波長側にある発光ピークの波長で生じる。従って、例えば、最も短波長側にある発光ピークの波長が450nm以上である発光スペクトルを有している場合では、その発光ピークの波長よりも短波長側の波長領域の発光強度は、発光ピークを有さず単調に小さくなる。従って、その最も短波長側にある発光ピークの波長で光学的距離を設定することによって、基板に対して斜め方向に観測される光は、その短波長側にシフトするためその発光強度が小さくなるが、その共振波長は変化しない。この結果、青用画素から出射される光について、視角による色度ずれを抑制することができる。
【0008】
また、450nm未満の波長の光は、人間の視感度が低く、例えば、一般に青色の光と認識される450nmの波長における視感度の半分以下となる。従って、450nm未満の波長の光は、非常に暗い光として認識される。また、公知の色度座標から485nm以上の光は、青色としてではなく、シアン(水)色の光として認識される。従って、本発明のように、450nm〜485nmにある最も短波長側の発光ピークを共振波長とすることで、明るく且つ色度ずれの生じない青色の光を生成することができる。
【0009】
この発光装置において、前記青用画素の前記光学的距離は、前記青用画素の第1の電極の膜厚を調整することで設定されていてもよい。
これによれば、共振波長を決定する光学的距離は、反射層と第2の電極との間に配置される機能層及び第1の電極の各膜厚と、その機能層を構成する各層及び第1の電極の各屈折率とによって決定されるが、本発明では、第1の電極の膜厚を調整することで光学的距離を設定するようにする。従って、青用画素以外の緑用画素及び赤用画素に対してもその機能層の膜厚を同じにすることができるので、各青用画素、緑用画素及び赤用画素毎に機能層の膜厚を異ならせる必要はない。この結果、機能層を各青用画素、緑用画素及び赤用画素毎に形成する必要はないので、各青用画素、緑用画素及び赤用画素の形成が容易となる。
【0010】
この発光装置において、前記赤用画素に相対向する位置に赤色の光を限定する赤用フィルタ、前記緑用画素に相対向する位置に緑色の光を限定する緑用フィルタ、及び前記青用画素に相対向する位置に青色の光を限定する青用フィルタを更に有するカラーフィルタを備えてもよい。
【0011】
これによれば、カラーフィルタが設けられているので、青、緑及び赤用画素の視角特性はカラーフィルタで補正される。この結果、より色再現性の良好な発光装置を実現できる。
【0012】
この発光装置において、前記機能層は、前記発光層以外に正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層及び電子注入層の少なくともいずれか一つを備えていてもよい。
これによれば、正孔輸送層は、各青、緑及び赤用画素の第1の電極から発光層へのキャリアの注入効率を高めるとともに、発光層内を移動する電子をブロッキングする機能を有する。また、電子輸送層は、発光層への電子注入効率を高めるとともに、正孔ブロッキング機能を有する。従って、発光層内でのキャリアとしての電子と正孔との再結合確率が高まる。この結果、各画素での発光効率が向上し、高輝度表示が可能となる。
【0013】
この発光装置において、前記光反射層と前記第1の電極との間には、前記反射層全体を
覆う保護層が形成されていてもよい。
これによれば、光反射層は、一般的に、アルミニウム(Al)や銀(Ag)で形成されている。従って、第1の電極を形成する際に使用される公知の現像液や剥離液の溶剤によって光反射層が劣化してしまうが、本発明のように、光反射層上には保護層が形成されているため、劣化しない。この結果、第1の電極は、その光反射率が高い状態となるので、光取り出し効率の高い、即ち、高輝度の発光装置を実現できる。
【0014】
この発光装置において、前記保護層は、前記第1の電極より屈折率が低くてもよい。
これによれば、各画素の光共振波長は、光反射層と光半透過反射層との間の光学的距離、つまり、光反射層と光半透過反射層との間に配置される第1の電極、機能層、保護層の光学的距離の総和に対応し、また、各層の光学的距離は、その膜厚と屈折率との積によって求められることが知られている。本発明では、保護層の屈折率は第1の電極より低いので、光共振波長は保護層の影響を受けない。保護層の屈折率が大きい場合、光共振器の観点から第1の電極の膜厚を非常に薄く形成する必要が生じるが、これを抑制することができるので、第1の電極の膜厚を製造しやすい厚みで形成することができる。
【0015】
本発明の電子機器は、上記記載の発光装置を備えている。
これによれば、青色の光について色度ずれが生ずるのが抑制されることにより、視角が広い画像を表示することが可能な電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した各実施形態について図面に従って説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の発光装置としての有機EL装置の概略構成を示す断面図である。
【0017】
本実施形態の有機EL装置10は、発光層から発光(内部発光)した光(表示光)を基板とは反対側から取り出す、所謂トップエミッション型の有機EL装置である。
図1に示すように、有機EL装置10は、光透過性を有する基板(透明基板)11を備えるとともに、該基板11上には、青用画素形成領域ZB、緑用画素形成領域ZG及び赤用画素形成領域ZRがマトリクス状に配置されている。各青、緑及び赤用画素形成領域ZB,ZG,ZRは、図1においてX矢印方向に沿って、青用画素形成領域ZB→緑用画素形成領域ZG→赤用画素形成領域ZR→…の順に繰り返して配置されるとともに、Z矢印方向(紙面奥側方向)に沿っては同色の画素形成領域ZB,ZG,ZRが配置されている。
【0018】
また、基板11上には、各同色の画素形成領域ZB,ZG,ZRに沿ってストライプ状に、光反射性の高い材料等で構成された複数の光反射層12が延設されている。本実施形態の光反射層12は、アルミニウム(Al)で構成されている。
【0019】
各光反射層12上には、該光反射層12を被覆するように保護層13が形成されている。この保護層13は、光透過性に優れ、かつ電気絶縁性を有した材料で構成されている。本実施形態では、保護層13は、後記する青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rより屈折率が低い材料で構成されている。本実施形態では、窒化珪素(SiN)(屈折率1.8)で構成されている。
【0020】
各青、緑及び赤用画素形成領域ZB,ZG,ZR内の保護層13上には、光透過性を有した導電性材料で構成された第1の電極としての青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rが区画形成されている。つまり、複数の青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rは、保護層13を介して各光反射層12と相対向するようにマトリクス状に配置されている。本実施形態の画素電極15B,15G,15Rは、インジウム−錫酸化物(
ITO)で構成されている。
【0021】
また、基板11上には、各青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rを覆うように機能層20が形成されている。本実施形態の機能層20は、正孔輸送層21、発光層22及び電子輸送層23を備え、基板11側から正孔輸送層21、発光層22及び電子輸送層23の順に積層されている。
【0022】
正孔輸送層21は、青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rから発光層22への電荷の注入効率を高めるとともに、発光層22内を移動する電子をブロッキングする機能を有し、発光層22内でのキャリアとしての電子と正孔との再結合確率を高める作用を奏する。この正孔輸送層21には、青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rからの注入障壁が低く、正孔移動度の高い材料が好適に用いられる。このような材料としては、例えばポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体など、またはそれらのドーピング体などが用いられる。具体的には、3,4−ポリエチレンジオキシオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)[商品名;バイトロン−p(Bytron-p):バイエル社製]の分散液、即ち、分散媒としてポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液などを用いられる。また、本実施形態では、正孔輸送層21は、各青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rに対して均一な膜厚である。
【0023】
発光層22は、蛍光或いは燐光を発光することが可能な公知の有機高分子発光材料で構成されている。このような材料としては、ポリフルオレン誘導体(PF)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリジアルキルフルオレン(PDAF)、ポリフルオレンベンゾチアジアゾール(PFBT)、ポリアルキルチオレン(PAT)や、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)等のポリシラン系などを好適に用いることができる。また、これらの各発光材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。本実施形態の発光層22は、青系の色の光を出射する発光材料とオレンジ系の色の光を出射する発光材料とを積層したものである。また、本実施形態では、発光層22は、正孔輸送層21上の全面に渡って均一な膜厚である。
【0024】
図5は、本実施形態の発光層22の発光(内部発光)スペクトルである。図5に示すように、発光層22から出射される光は、430nm〜700nmの波長範囲に発光スペクトルを有しており、3つの発光ピークP1,P2,P3を備えている。各発光ピークP1〜P3のうち、第1の発光ピークP1は、450nm〜485nmの波長範囲内にある最も短波長側の発光ピークであって、480nmに現れる。第2の発光ピークP2は第1の発光ピークP1よりも長波長側にあって、505nmに現れる。第3の発光ピークP3は最も長波長側にある発光ピークであって、600nmに現れる。
【0025】
電子輸送層23は、発光層22への電子注入効率を高めるとともに、正孔ブロッキング機能を有する。この電子輸送層23は、オキサジアゾール誘導体やAlq3などの有機材料で構成されている。本実施形態では、電子輸送層23は、発光層22上の全面に渡って均一な膜厚である。
【0026】
図1に示すように、機能層20上(電子輸送層23上)の全面には、第2の電極としての共通電極25が形成されている。共通電極25は、本実施形態では、金属薄膜であるマグネシウムと銀の化合物(Mg−Ag)からなる薄膜(膜厚:10nm)である。共通電
極25は、光透過性及び光反射性を有し、発光層22から発せられた光の一部を透過して、残りの光の一部または全部を光反射層12側に反射するハーフミラーとして機能するとともに各画素電極15R,15G,15Bの対向電極として機能する。
【0027】
尚、青用画素電極15B、共通電極25、及び各青用画素電極15Bと共通電極25とに挟持された機能層20とで青用有機EL素子28Bが構成される。そして、青用画素形成領域ZBには青用有機EL素子28Bを含む青用画素DBが形成される。また、緑用画素電極15G、共通電極25、及び緑用画素電極15Gと共通電極25とに挟持された機能層20とで緑用有機EL素子28Gが構成される。そして、緑用画素形成領域ZGには緑用有機EL素子28Gを含む緑用画素DGが形成される。さらに、赤用画素電極15R、共通電極25、及び各赤用画素電極15Rと共通電極25とに挟持された機能層20とで赤用有機EL素子28Rが構成される。そして、赤用画素形成領域ZRには赤用有機EL素子28Rを含む赤用画素DRが形成される。
【0028】
そして、各画素DB,DG,DRは、各発光層22から発せられた光を各画素電極15B,15G,15Rの直下に配置された光反射層12と共通電極25との間で往復するように反射させて共振させる光共振器構造が形成される。
【0029】
図2、図3及び図4は、それぞれ、青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRの拡大断面図である。図2に示すように、青用画素DBにおける光反射層12と共通電極25との間の距離をLBで示し、図3に示すように、緑用画素DGにおける光反射層12と共通電極25との間の距離をLGで示し、図4に示すように、赤用画素DRにおける光反射層12と共通電極25との間の距離をLRで示す。
【0030】
ところで、各画素DB,DG,DRから出射される光HB,HG,HRは、それぞれ、該画素DB,DG,DRに形成された光共振器構造の共振条件に従った共振波長の光となる。この共振波長は、光反射層12と共通電極25との間の光学的距離、つまり、光反射層12と共通電極25との間に配置される各層の光学的距離の総和に対応する。各層の光学的距離は、その膜厚と屈折率との積によって求められる。本実施形態では、各有機EL素子28B,28G,28Rは全て共通の材料で構成されているので、各層の屈折率は等しい。従って、各画素DB,DG,DRの光学的距離は、各層の膜厚の総和である各距離LB,LG,LRによって決定される。尚、共振波長は、光学的距離が長くなるのに伴って(本実施形態では、各距離LB,LG,LRが長くなるのに伴って)長くなる。
【0031】
そして、青用画素DBでは、発光層22の内部発光スペクトルにおける第1の発光ピークP1、即ち、最も短波長側にある発光ピークが現れる波長で光共振が生じるように、青用画素電極15Bの膜厚d1が調整されている。本実施形態では、第1の発光ピークP1は480nmである。従って、青用画素電極15Bの膜厚d1を20nmに調整されている。このようにすることで、青用画素DBでは、480nmで光共振が生じるように設定される。
【0032】
緑用画素DGは、緑用画素電極15Gの膜厚d2を調整することで、距離LGに対応した光学的距離を緑色の光が生成される光学的距離に設定されている。本実施形態では、緑用画素電極15Gの膜厚d2は65nmに調整されている。また、赤用画素DRは、赤用画素電極15Rの膜厚d3を調整することで、距離LRに対応した光学的距離を赤色の光が生成される光学的距離に設定されている。本実施形態では、赤用画素電極15Rの膜厚d3は95nmに調整されている。
【0033】
図1に示すように、共通電極25上には、カラーフィルタ51が取り付けられている。カラーフィルタ51は、光透過性を有したカラーフィルタ基板52を備え、そのカラーフ
ィルタ基板52には、青用フィルタとしての青色変換層53B、緑用フィルタとしての緑色変換層53G、及び赤用フィルタとしての赤色変換層53Rが設けられている。青色変換層53Bは青用画素DBに相対向する位置に配置され青用画素DBから出射される光HBの波長を制限する機能を有する。緑色変換層53Gは緑用画素DGに相対向する位置に配置され緑用画素DGから出射される光HGの波長を制限する機能を有する。赤色変換層53Rは赤用画素DRに相対向する位置に配置され赤用画素DRから出射される光HRの波長を制限する機能を有する。各色変換層53B,53G,53Rは、ブラックマトリクスBMによってマトリクス状に区画配置されている。
【0034】
図6は、各青色、緑色及び赤色変換層53B,53G,53Rの光透過分光特性を示している。図6において、赤色変換層53Rの光透過分光特性を曲線Ro(実線)で示し、緑色変換層53Gの光透過分光特性を曲線Go(一点鎖線)で示し、青色変換層53Bの光透過分光特性を曲線Bo(二点鎖線)で示す。
【0035】
図6において曲線Ro(実線)で示すように、赤色変換層53Rは、短波長側に対しては特定の波長成分を遮断する特性を有するとともに、長波長側に対しては高い透過率を維持する特性を有している。赤色変換層53Rは、赤用画素DRから出射された光HRのうち590nm未満の波長の光を遮断し、590nm以上の波長の光を透過するようになっている。
【0036】
緑色変換層53Gは、約100nm程度の範囲の波長の光を透過する特性を有している。緑色変換層53Gは、緑用画素DGから出射された光HGのうち505nm未満の波長の光及び600nm以上の波長の光を遮断し、505nm〜600nmの範囲にある波長の光を透過する。
【0037】
青色変換層53Bは、長波長側に対しては特定の波長成分を遮断する特性を有するとともに、短波長側に対しては概ね高い透過率を維持する特性を有している。
図2に示すように、基板11に対して法線方向(図2において、Y矢印方向)を正面方向とする。そして、その法線と、前記法線から基板11の平行方向(図2において、X矢印方向)に向かって斜めに傾いた線との間のなす角を出射角Qと定義する。例えば、図2〜図4において、基板11に対して法線方向は出射角Q=0°であり、基板11に対して平行な方向は出射角Q=90°となる。
【0038】
次に、前記のように構成された青用画素DBの作用について、図7及び図8に従って説明する。青用画素DBでは、前記したように、青用画素電極15Bの膜厚d1を調整することで、発光層22の内部発光スペクトルにおける第1の発光ピークP1の波長(480nm)で光共振が生じるように設定されている。
【0039】
図7(a)は、カラーフィルタ51の青色変換層53Bを透過した青色の光の発光スペクトルである。図7(a)において、実線で示す曲線Loaは、出射角Q=0°(つまり、基板11に対して正面)の向きに観測された光の発光スペクトルであり、破線で示す曲線L1aは、出射角Q=30°の向きに観測された光の発光スペクトルである。また、一点鎖線で示す曲線L2aは、出射角Q=60°の向きに観測された光の発光スペクトルである。
【0040】
図7(a)に示すように、青色変換層53Bを透過した青色の光は、その出射角が正面(出射角Q=0°)からQ=30°、60°と広角になるのに従ってその発光強度が小さくなるだけであって、その発光ピークの波長(図7(a)中矢印で示した波長)は変化しないことが分かった。尚、出射角Q=0°の向きに観測された光と出射角Q=60°の向きに観測された光との色度ずれ量は、0.02であった。
【0041】
図7(b)は、本実施形態と異なり、発光層22の内部発光スペクトルにおける第2の発光ピークP2の波長(505nm)で光共振が生じるように設定された青色変換層53Bを透過した光の発光スペクトルである。図7(b)において、実線で示す曲線Lobは、出射角Q=0°(つまり、基板11に対して正面)の向きに観測された光の発光スペクトルであり、破線で示す曲線L1bは、出射角Q=30°の向きに観測された光の発光スペクトルである。また、一点鎖線で示す曲線L2bは、出射角Q=60°の向きに観測された光の発光スペクトルである。
【0042】
図7(b)に示すように、第2の発光ピークP2の波長(505nm)で光共振が生じるように設定された光は、基板11に対して出射角Q=0°、30°、60°と広角になるのに従って、その発光強度が小さくなるとともに、その発光ピークの波長(図7(b)中矢印で示した波長)が短波長側にシフトすることが分かった。尚、出射角Q=0°の向きに観測された光と出射角Q=60°の向きに観測された光との色度ずれ量は、0.15であった。
【0043】
以上の結果から、本実施形態のように、発光層22の内部発光スペクトルにおける最も短波長側にある第1の発光ピークP1の波長で光共振が生じるように青用画素DBの光学的距離を設定することで、青色変換層53Bを透過した光は、視角による色度ずれが生じないことが示された。
【0044】
また、図8に示す公知の視感度特性のグラフからわかるように、人間の視感度、即ち人間が感じる明るさは、概ね450nm〜650nmの範囲の波長の光に対して非常に高く視認され、450nm未満の波長の光は、非常に暗い光として視認される。また、公知の色度座標から485nm以上の光は、青色としてではなく、シアン(水)色の光として認識されることが知られている。本実施形態では、第1の発光ピークP1が現れる波長は、480nmであるので、青用画素DBから出射される光HBは、明るく且つ色度ずれの生じない青色の光となる。
【0045】
次に、有機EL装置10の製造方法について、特にその有機EL素子28B,28G,28Rの形成方法について図9〜図11に従って説明する。
まず、ガラス等で構成された光透過性を有する基板(透明基板)11を用意し、公知の方法によって、基板11上に図示しないデータ線、走査線、スイッチングトランジスタ及びドライビングトランジスタ等の駆動用TFTを形成する。そして、図9(a)に示すように、列状に配置形成された青、緑及び赤用画素形成領域ZB,ZG,ZR上にストライプ状の光反射層12を形成する。本実施形態では、基板11上の全面にアルミニウム(Al)をスパッタし、これをパターニングすることによって光反射層12を形成する。
【0046】
続いて、基板11上の全面に対して光反射層12上に渡って窒化珪素(SiN)をスパッタし、これをパターニングすることによって光反射層12上を被覆するように保護層13を形成する。本実施形態では、膜厚50nmの保護層13を形成する。
【0047】
次に、赤用画素電極形成領域SR上に、赤用画素電極15Rの膜厚d3と緑用画素電極15Gの膜厚d2との差分(=d3−d2=30nm)の膜厚を有する光透過性を有した導電性膜をフォトリソグラフィー法によって形成する。具体的には、図9(b)に示すように、各保護層13上にて膜厚30nmとなるようにインジウム−錫酸化物(ITO)からなる導電性膜61をスパッタ法にて形成する。その後、導電性膜61上の全面に公知のレジスト膜を塗布し、レジストプリキュア、マスク露光、レジスト現像を順次施すことで赤用画素電極形成領域SR上の導電性膜61上にのみレジスト膜62を形成する。
【0048】
続いて、そのレジスト膜62を介して導電性膜61をエッチングし、さらに、レジスト膜62を剥離除去する。この結果、図9(c)に示すように、赤用画素電極形成領域SR上の保護層13上にのみ膜厚30nmの導電性膜61がパターニング形成される。以下、説明の便宜上、このとき、赤用画素電極形成領域SR上の保護層13上に形成された導電性膜61を第1電極層Q1といい、その膜厚T1は30nmとなる。
【0049】
次に、赤用画素電極形成領域SR上及び緑用画素電極形成領域SG上に、緑用画素電極15Gの膜厚d2と青用画素電極15Bの膜厚dbとの差分(=d2−d1=45nm)の膜厚を有する光透過性を有した導電性膜をフォトリソグラフィーにて形成する。具体的には、図9(d)に示すように、各保護層13上にて膜厚45nmとなるようにインジウム−錫酸化物(ITO)からなる導電性膜63をスパッタ法にて形成する。その後、導電性膜63上の全面に公知のレジスト膜を塗布し、レジストプリキュア、マスク露光、レジスト現像を順次施すことで、赤用画素電極形成領域SR及び緑用画素電極形成領域SG上の導電性膜63上にレジスト膜64を形成する。
【0050】
続いて、そのレジスト膜64を介して導電性膜63をエッチングし、さらに、レジスト膜64を剥離除去する。この結果、図10(a)に示すように、赤用画素電極形成領域SR上の各保護層13上には、先に形成された第1電極層Q1上に膜厚45nmの導電性膜63がパターニング形成される。また、緑用画素電極形成領域SG上の各保護層13上には、膜厚45nmの導電性膜63がパターニング形成される。以下、説明の便宜上、このとき、赤及び緑用画素電極形成領域SR,SG上の各保護層13上に形成される導電性膜63を第2電極層Q2といい、その膜厚T2は45nmである。
【0051】
次に、赤、緑及び青用画素電極形成領域SR,SG,SBに、それぞれ、青用画素電極15Bの膜厚d1(20nm)の膜厚を有する光透過性を有した導電性膜をフォトリソグラフィー法にて形成する。具体的には、図10(b)に示すように、各保護層13上にて膜厚25nmとなるようにインジウム−錫酸化物(ITO)からなる導電性膜65をスパッタ法にて形成する。その後、導電性膜65上の全面に公知のレジスト膜を塗布し、レジストプリキュア、マスク露光、レジスト現像を順次施すことで、各赤、緑及び青用画素電極形成領域SR,SG,SB上の導電性膜65上にレジスト膜66を形成する。
【0052】
続いて、そのレジスト膜66を介して導電性膜65をエッチングし、さらに、レジスト膜66を剥離除去する。この結果、図10(c)に示すように、赤、緑及び青用画素電極形成領域SR,SG,SB上の各保護層13上には、先に形成された第2電極層Q2上には膜厚20nmの導電性膜65がパターニング形成される。以下、説明の便宜上、このとき、赤、緑及び青用画素電極形成領域SR,SG,SB上の各保護層13上に形成される導電性膜65を第3電極層Q3といい、その膜厚T3は20nmとなる。
【0053】
以上により、赤用画素電極形成領域SRの保護層13上には第1〜第3電極層Q1,Q2,Q3が積層されて膜厚d3(=T1+T2+T3=95nm)の赤用画素電極15Rが形成される。また、緑用画素電極形成領域SGの保護層13上には第2及び第3電極層Q2,Q3が積層されて膜厚d2(=T2+T3=65nm)の緑用画素電極15Gが形成される。さらに、青用画素電極形成領域SBの保護層13上には第3電極層Q3が積層されて膜厚d1(=T3=20mn)の青用画素電極15Bが形成される。
【0054】
続いて、図11(a)に示すように、基板11上の全面に、各画素電極15B,15G,15R上に渡って、正孔輸送層21、発光層22及び電子輸送層23を順に形成する。これらの層21,22,23は、それぞれ、蒸着法によって形成する。正孔輸送層21、発光層22及び電子輸送層23により機能層20が形成される。本実施形態では、発光層22は発光性有機材料によって形成されている。
【0055】
その後、図11(b)に示すように、機能層20上に共通電極25を形成する。本実施形態では、膜厚10nmのマグネシウム−銀(MgAg)をスパッタ法によって形成する。このようにして、膜厚10nmのマグネシウム−銀(MgAg)で構成された共通電極25と光反射層12とで発光層22から発せられた光を共振させる光共振器構造を形成する。その後、基板11に駆動用ドライバ等(図示略)を実装するとともに、別途公知の方法で作製されたカラーフィルタ50を共通電極25上に接着することにより、有機EL装置10が完成する。
【0056】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、青用画素DBの光学的距離を、発光層22から出射される3つの発光ピークP1,P2,P3のうちの最も短波長側にある第1の発光ピークP1の波長で光共振が生じるように設定した。従って、青色変換層53Bは、短波長側に対しては概ね高い透過率を維持するため、短波長側にシフトする光についてはその色度ずれを補正することが困難であるが、本実施形態のように青用画素DBの光学的距離を設定することで、基板11に対して斜め方向に観測される青色の光の発光ピークの波長は変化しない。この結果、青用画素DBから出射される青色の光HBについて、視角による色度ずれを抑制することができる。
【0057】
(2)本実施形態によれば、青用画素電極15Bの膜厚d1を調整することによって青用画素DBの光学的距離を、第1の発光ピークP1の波長で光共振が生じるように設定した。従って、青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRを形成する際、各正孔輸送層21、発光層22及び電子輸送層23をそれぞれ各画素DB,DG,DRに渡って同じ条件で作ることができる。この結果、青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRの形成を容易にすることができる。
【0058】
(3)本実施形態によれば、発光層22として、第1の発光ピークP1が480nmである内部発光スペクトルを有した発光材料で構成された発光層を使用した。従って、第1の発光ピークP1の光は、視感度が高く、且つ確実に青色の光として視認される波長450nm〜485nmの光であることから、明るく且つ色度ずれの生じない青色の光を生成することができる。
【0059】
(4)本実施形態によれば、赤用画素DRに相対向する位置に赤色変換層53Rを、緑用画素DGに相対向する位置に緑色変換層53Gを、また青用画素DBに相対向する位置に青色変換層53Bをそれぞれ有するカラーフィルタ51を備えた。従って、各青、緑及び赤用画素DB,DG,DRから出射される光HB,HG,HRは、青色変換層53B、緑色変換層53G、赤色変換層53Rを透過するので、カラーフィルタ51を介して表示される画像の視角特性は補正されたものとなる。この結果、より色再現性の良好な画像を表示することができる。
【0060】
(5)本実施形態によれば、機能層20は、発光層22以外に正孔輸送層21及び電子輸送層23を備えている。従って、発光層22内での電子と正孔との再結合確率が高まることから、各画素DB,DG,DRでの発光効率が向上する。この結果、高輝度表示が可能となる。
【0061】
(6)本実施形態によれば、赤用画素電極15Rは、他の緑用画素電極15G及び青用画素電極15Bに比べて膜厚が厚いが、この赤用画素電極15Rを3つのフォトリソグラフィー工程で形成されるように分割しているので、画素電極15B,15G,15Rを形成する際のエッチング時間をそれぞれ概ね同じ時間にすることができる。この結果、膜厚が厚くなるとエッチング時間が長くなるためサイドエッチが生じやすいが、これを抑制す
ることができる。
【0062】
(7)本実施形態によれば、光反射層12と各画素電極15B,15G,15Rとの間に、光反射層12全体を覆うように保護層13を形成した。従って、画素電極15B,15G,15Rを形成する際に使用される公知の現像液や剥離液の溶剤が光反射層12に直接接触することはないので、光反射層12が現像液や剥離液の溶剤によって劣化することはない。この結果、各画素電極15B,15G,15Rは、その光反射率が高い状態となるので、光取り出し効率の高い、即ち、高輝度の有機EL装置を実現することができる。
【0063】
(8)本実施形態によれば、保護層13は、各画素電極15B,15G,15Rより屈折率が低い材料で構成した。従って、光HB,HG,HRの各共振波長PB,PG,PRは保護層13の影響を受けない。従って、保護層13の屈折率が大きい場合、光共振器の観点から画素電極15B,15G,15Rの膜厚を非常に薄く形成する必要が生じるが、これを抑制することができる。この結果、画素電極15B,15G,15Rの各膜厚を製造しやすい厚みで形成することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、各図を用いて説明する。
【0064】
第2実施形態に係る有機EL装置は、青用画素電極15Bの膜厚及び発光層22の内部発光スペクトルが異なっている他は上記第1実施形態に係る有機EL装置と全て同じ構成である。従って、同じ部材については、その詳細な説明を省略する。
【0065】
詳しくは、本実施形態に係る発光層22は、深青系の色の光を出射する発光材料と黄色系の光を出射する発光材料とを積層したものであって、正孔輸送層21上の全面に渡って均一な膜厚である。
【0066】
図12は、本実施形態の発光層22の発光(内部発光)スペクトルである。図12に示すように、発光層22から出射される光は、400nm〜700nmの波長範囲に発光スペクトルを有しており、上記第1実施形態と同様に3つの発光ピークP1,P2,P3を備えている。本実施形態の第1の発光ピークP1は430nmに現れ、第2の発光ピークP2は455nmに現れ、第3の発光ピークP3は575nmに現れる。
【0067】
本実施形態の青用画素DBでは、第1の発光ピークP1は、最も短波長側の発光ピークに位置するが450nm〜485nmの範囲内には存在していない。従って、青用画素DBの光学的距離を第1の発光ピークP1で設定しないようにする。450nm〜485nmの範囲内にあってそのうち最も短波長側に位置する発光ピークは、第2の発光ピークP2(波長:455nm)である。従って、第2の発光ピークP2にて青用画素DBの光学的距離を設定する。第2の発光ピークP2の波長は、455nmであるので、青用画素電極15Bの膜厚d1を18nmに調整する。
【0068】
このようにすることで、発光層22の発光(内部発光)スペクトルにおいて、第1の発光ピークP1(波長:430nm)で光共振が生じるように設定した場合に比べて、視角による色度ずれ量は大きくなる。因みに、第1の発光ピークP1で光共振が生じるように設定された有機EL装置では、出射角が0°の向きに観測された光と出射角が60°の向きに観測された光との色度ずれ量は、0.02である。一方、本実施形態のように第2の発光ピークP2で光共振が生じるように設定された有機EL装置では、出射角が0°の向きに観測された光と出射角が60°の向きに観測された光との色度ずれ量は、0.12となった。
【0069】
しかし、図8に示す人間の視感度特性を考慮すると、一般に青色の光とよばれる波長4
50nmの光における視感度に比べて、波長430nmの光における視感度は半分以下となる。従って、第1の発光ピークP1(波長:430nm)で光共振が生じるように設定された有機EL装置では、視角は広くなるものの非常に暗い光になってしまう。一方、波長が485nm以上の光は、青色としてではなく、シアン(水)色の光として視認されることが一般に知られている。
【0070】
そこで、本実施形態のように、第2の発光ピークP2(波長:455nm)で光共振が生じるように、青用画素電極15Bの膜厚d1を調整することで、430nm未満にある第1の発光ピークP1(波長:430nm)で光共振が生じるように設定した場合に比べて、明るい青色の光が観測されることとなる。尚、本実施形態に係る有機EL装置の製造方法については、第1電極層Q1の膜厚T1が25nmとなるように導電性膜61の膜厚を25nmにし、第2電極層Q2の膜厚T2が47nmとなるように導電性膜63の膜厚を47nmにし、さらに第3電極層Q3の膜厚T3が18nmとなるように導電性膜65の膜厚を18nmにする。そして、それら以外は全て上記第1実施形態と同様である。従って、その詳細な説明を省略する。
【0071】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態では、450nm〜485nmの波長範囲内であってそのうち最も短波長側に位置する第2の発光ピークP2(波長:455nm)で光共振が生じるように、青用画素電極15Bの膜厚d1を調整した。従って、430nm未満にある発光ピークP1(波長:430nm)で光共振が生じるように設定した場合に比べて明るい青色の光が観測される。この結果、第1の発光ピークP1で光共振が生じるように設定した場合に比べて色度ずれ量は大きくなるものの、その色度ずれは小さく、且つ、明るい青色の光を出射することができる有機EL装置を実現できる。
(第3実施形態)
次に、上記第1実施形態に係る有機EL装置10を備えた電子機器を一例について説明する。
【0072】
図13は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図13に示す携帯電話80は、複数の操作ボタン81、受話口82、送話口83及び表示部84を備えている。このような構成をした携帯電話80は、その表示部84が上記第1又は第2実施形態に係る有機EL装置10を備えている。従って、携帯電話80の表示部84には、見る角度によって色度ずれが生じない高画質の画像を表示することができる。
【0073】
尚、本発明は、以下のように変更して具体化することもできる。
・上記各実施形態では、カラーフィルタ51を備えていたが、本発明はこれに限定されない。このようにカラーフィルタ51を備えていなくても、青用画素DBから出射される光HBは、その光学的距離が450nm〜485nmの波長領域であってそのうち最も短波長側に位置する発光ピークで設定されているので、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
・上記各実施形態では、発光層22から発光した光を基板11とは反対側から取り出す、所謂トップエミッション型の有機EL装置10に具体化したが、本発明はこれに限定されない。発光層22から発光した光を基板11側から取り出す、所謂ボトムエミッション型の有機EL装置においても、本発明は適応可能である。
【0075】
・上記各実施形態では、発光層22に発光性有機材料を用いた有機EL装置10に適用したが、これを発光性有機材料以外の材料を備えた発光素子(例えば、発光ダイオード(LED)素子)を用いた発光装置であっても本発明は適用可能である。
【0076】
・上記第3実施形態では、電子機器として携帯電話80について説明したが、これに限定されるものではなく、モバイル型のパーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等のディスプレイを備えた電子機器に広く適用可能である。
【0077】
・上記各実施形態では、正孔輸送層21、発光層22及び電子輸送層23で機能層20を構成したが、本発明はこれに限定されない。上記各層21〜23のうち、発光層22以外の他の層(正孔注入層や電子注入層)のいずれかまたは全てが含まれていてもよい。要は、機能層20は、発光層22を含んでいればよい。このようにすることで、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
・上記各実施形態では、基板11を、ガラス等の光透過性を有した基板(透明基板)としたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、光透過性を有しない基板(不透明基板)も用いることもできる。基板11を、光透過性を有しない基板(不透明基板)とした場合では、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらには、そのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。要は、画素が形成可能であるものであれば、どんなものであってもよい。
【0079】
・上記各実施形態では、保護層13は窒化珪素(SiN)で構成したが、本発明はこれに限定されない。酸窒化珪素(SiON)、酸化珪素(SiOn)またはアクリル系樹脂で構成されていてもよい。要は、光透過性を有し、且つ、屈折率が画素電極15B,15G,15Bに比べて高い材料であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】第1実施形態に係る有機EL装置の断視図。
【図2】青用画素の拡大断面図。
【図3】緑用画素の拡大断面図。
【図4】赤用画素の拡大断面図。
【図5】第1実施形態に係る有機EL素子の内部発光スペクトル。
【図6】カラーフィルタの光透過率を示すグラフ。
【図7】(a),(b)は、それぞれ本実施形態の有機EL装置10の作用を説明するための図。
【図8】視感度特性のグラフ。
【図9】(a),(b),(c),(d)は、それぞれ、有機EL装置の製造方法を説明するための図。
【図10】同じく、(a),(b),(c)は、それぞれ、有機EL装置の製造方法を説明するための図。
【図11】同じく、(a),(b)は、それぞれ、有機EL装置の製造方法を説明するための図。
【図12】第2実施形態に係る有機EL素子の内部発光スペクトル。
【図13】電子機器としての携帯電話の斜視図。
【符号の説明】
【0081】
DB…青用画素、DG…緑用画素、DR…赤用画素、10…発光装置としての有機EL装置、11…基板、12…光反射層、15B…画素電極としての青用画素電極、15G…画素電極としての緑用画素電極、15R…画素電極としての赤用画素電極、20…機能層、21…正孔輸送層、22…発光層、23…電子輸送層、25…共通電極、51…カラーフィルタ、53B…青色変換層、53G…緑色変換層、53R…赤色変換層、80…電子機器としての携帯電話。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成される光反射層と、前記光反射層上に形成される光透過性を有する第1の電極と、前記第1の電極と対向して配置される光透過性及び光反射性を有する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれて配置され、少なくとも1以上の発光ピークを有する光を出射する発光層を含む機能層と、を具備する画素が複数形成された発光装置であって、
前記画素は、赤色の光が取り出されるように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された赤用画素と、緑色の光が取り出されるように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された緑用画素と、青色の光が取り出されるように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された青用画素と、から構成され、
前記青用画素の光学的距離が、前記1以上の発光ピークのうち、450nm〜485nmの波長範囲にある最も短波長側の発光ピークで設定されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記青用画素の前記光学的距離は、前記青用画素の第1の電極の膜厚を調整することで設定されていることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光装置において、
前記赤用画素に相対向する位置に赤色の光を限定する赤用フィルタ、前記緑用画素に相対向する位置に緑色の光を限定する緑用フィルタ、及び前記青用画素に相対向する位置に青色の光を限定する青用フィルタを有するカラーフィルタを更に備えたことを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記機能層は、前記発光層以外に正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層及び電子注入層の少なくともいずれか一つを備えていることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記光反射層と前記第1の電極との間には、前記反射層全体を覆う保護層が形成されていることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発光装置において、
前記保護層は、前記第1の電極より屈折率が低いことを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の発光装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−123136(P2007−123136A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315765(P2005−315765)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】