説明

発光装置及び電子機器

【課題】視角によって生ずる色度ずれを抑制することが可能な発光装置及びその発光装置を備えた電子機器を提供する。
【解決手段】赤用画素DRから出射された光HRに対する最大透過率をTr1、最小透過率をTr2とした場合、(Tr1+Tr2)/2となる波長が580nm以上であって620nm未満となる赤色変換層53Rを赤用画素DRに相対向する位置に設けた。また、緑用画素DGから出射された光HGに対する最大透過率をTg1、最小透過率をTg2とした場合、(Tg1+Tg2)/2となる波長が480nm以上であって520nm未満となる緑色変換層53Gを緑用画素DGに相対向する位置に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発光性有機材料を発光層に用いた有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」という)素子を備えた画素を有した有機エレクトロルミネッセンス発光装置の開発が進められている。一般に、有機EL素子は、2つの電極間に発光層を挟持した構成をしており、発光層から発せられた光をそのまま表示光として利用するようになっている。
【0003】
しかし、有機EL素子からそのまま取り出された光は、スペクトルがブロードであり、発光輝度も低いため、発光装置に適用した場合、十分な色再現性が得られないという問題があった。そこで、各画素に半透明反射層(ハーフミラー層)を設け、発光層から発せられた光を、一方の電極と半透明反射層との間で往復するように反射させて、その光学的距離に対応した共振波長の光のみを増幅させて外部に取り出すようにした共振器構造を備えた発光装置が提案されている。このような共振器構造を備えた発光装置は、光学的距離を適宜変更することで、赤(R)、緑(G)、青(B)に対応した波長の光を取り出すことも可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2797883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記発光装置では、電極及び半透明反射層を、基板に対して垂直方向に順次積層した構成であるので、各画素の光学的距離は、基板に対して垂直方向と斜め方向とで見かけ上の光学的距離が異なる。この結果、基板に対して垂直方向に出射される光と斜め方向に出射される光とでは、その共振波長が異なることにより、見る角度(視角)によって異なった色に見える、所謂色度ずれが生じてしまうという問題が生じてしまう。
【0005】
たとえば、図12(a)に示すように、赤(R)に対応した光は、基板に対して正面(0°)では、そのピーク波長が約600nmであるが、出射角Qが20°,…60°と広角になるに従って徐々にピーク波長が600nmから短波長側にシフトしていくことが分かる。例えば、出射角Qが30°の場合では、基板に対して正面(0°)の場合と比べて短波長側に約10nmシフトした波長の光が、また、出射角Qが60°の場合では、短波長側に約20nmシフトした波長の光が出射する。この結果、基板に対して正面(0°)から画像を見た場合、赤色に見えた光が、基板に対して斜め方向に徐々にその向きを変えていくと徐々に色が変化しオレンジ色の光に見えてしまう。尚、本明細書においては、図12(b)に示すように、基板に対して法線方向(図12(b)において、Y矢印方向)を正面方向とし、その法線と、前記法線から基板の平行方向(図12(b)において、X矢印方向)に向かって斜めに傾いた線との間のなす角を出射角Qと定義する。
【0006】
本発明では、このような事情に鑑みてなされたものであって、視角によって生ずる色度ずれを抑制することが可能な発光装置及びその発光装置を備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発光装置は、基板と、前記基板上に形成される光反射層と、前記光反射層上に形成される光透過性を有する第1の電極と、前記第1の電極と対向して配置される光透過性及び光反射性を有する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれて配
置される、少なくとも発光層を含む機能層と、を具備する画素が形成された発光装置において、前記画素は、青色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された青用画素、緑色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された緑用画素、赤色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された赤用画素を有し、前記赤用画素から出射された光に対して予め定められた範囲の波長を制限する赤色フィルタが前記赤用画素に相対向する位置に設けられている。
【0008】
これによれば、各赤用、緑用及び青用画素から基板に対して斜め方向に出射される光のスペクトルは、基板に対して正面方向に出射される光に比べてそれぞれ短波長側にシフトするが、赤色フィルタによって赤用画素から出射された光は、その波長が所定範囲に限定される。例えば、赤色フィルタを580nm≦Wr<620nmの波長の光を透過させるように制限する。すると、580nm未満の波長に対応した色に見えることはないので、基板に対する見る角度を変化させても、色度ずれすることなく赤色の光として視認される。また、波長が620nm以上の光は、人間の視感度が低下するため、視認されにくくなるが、赤色フィルタを透過した光には、波長が620nm未満の明るい光を含むことから、明るい赤色の光が取り出せる。
【0009】
この発光装置において、前記赤用画素から出射される光は、610nm〜640nmの波長範囲に共振波長を有するものであって、前記赤色フィルタは、前記赤用画素から出射された光に対する最大透過率をTr1、最小透過率をTr2とした場合、(Tr1+Tr2)/2となる波長Wrが580nm≦Wr<620nmの範囲に制限してもよい。
【0010】
これによれば、580nm未満の波長に対応した色に見えることはないので、基板に対する見る角度を変化させても、色度ずれすることなく赤色の光として視認される。また、波長が620nm以上の光は、人間の視感度が低下するため、視認されにくくなるが、赤色フィルタを透過した光には、波長が620nm未満の明るい光を含むことから、明るい赤色の光が取り出せる。
【0011】
尚、より好ましくは、(Tr1+Tr2)/2となる波長を590nmとすることで、基板に対してどの角度からみても、色ずれのない確実な赤色の光として視認させることができる。
【0012】
本発明の発光装置は、基板と、前記基板上に形成される光反射層と、前記光反射層上に形成される光透過性を有する第1の電極と、前記第1の電極と対向して配置される光透過性及び光反射性を有する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれて配置される、少なくとも発光層を含む機能層と、を具備する画素が形成された発光装置において、前記画素は、青色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された青用画素、緑色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された緑用画素、赤色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された赤用画素を有し、前記緑用画素から出射された光に対して予め定められた範囲の波長を制限する緑色フィルタが前記緑用画素に相対向する位置に設けられている。
【0013】
これによれば、各赤用、緑用及び青用画素から基板に対して斜め方向に出射される光のスペクトルは、基板に対して正面方向に出射される光に比べてそれぞれ短波長側にシフトするが、緑色フィルタによって緑用画素から出射された光は、その波長が所定範囲に限定される。例えば、緑色フィルタを480nm〜520nmの波長の光を透過させるように制限する。すると、480nm未満の波長に対応した色に見えることはないので、基板に対する見る角度を変化させても、色度ずれすることなく緑色の光として視認される。また
、波長が520nm以上の光は、人間の視感度が向上するため、視認されやすくなるが、緑色フィルタを透過した光には、波長が520nm以上の明るい光を含むことから、明るい緑色の光が取り出せる。
【0014】
この発光装置において、前記緑用画素から出射される光は、530nm〜560nmの波長範囲に共振波長を有するものであって、前記緑色フィルタは、前記緑用画素から出射された光に対する最大透過率をTg1、最小透過率をTg2とした場合、(Tg1+Tg2)/2となる波長Wgが480nm≦Wg<520nmの範囲に制限してもよい。
【0015】
これによれば、480nm未満の波長に対応した色に見えることはないので、基板に対する見る角度を変化させても、色度ずれすることなく緑色の光として視認される。また、波長が520nm以上の光は、人間の視感度が向上するため、視認されやすくなるが、緑色フィルタを透過した光には、波長が520nm以上の明るい光を含むことから、明るい緑色の光が取り出せる。
【0016】
尚、より好ましくは、(Tg1+Tg2)/2となる波長を510nmとすることで、基板に対してどの角度からみても、色ずれのない確実な緑色の光として視認させることができる。
【0017】
本発明の発光装置は、基板と、前記基板上に形成される光反射層と、前記光反射層上に形成される光透過性を有する第1の電極と、前記第1の電極と対向して配置される光透過性及び光反射性を有する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれて配置される、少なくとも発光層を含む機能層と、を具備する画素が形成された発光装置において、前記画素は、青色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された青用画素、緑色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された緑用画素、赤色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された赤用画素を有し、前記赤用画素から出射された光に対して予め定められた範囲の波長を制限する赤色フィルタを前記赤用画素に相対向する位置に設け、前記緑用画素から出射された光に対して予め定められた範囲の波長を制限する緑色フィルタを前記緑用画素に相対向する位置に設けた。
【0018】
これによれば、例えば、赤色フィルタを580nm≦Wr<620nmの波長の光を透過させるように制限し、且つ、緑色フィルタを480nm〜520nmの波長の光を透過させるように制限する。このようにすることにより、580nmより短い波長の光は出射されないので、基板に対する見る角度を変化させても色度ずれすることなく赤色の光として視認される。また、同様にして、緑色フィルタによって波長が480nm未満の光成分が遮断されることにより、480nmより短い波長の光は出射されないので、基板に対する見る角度を変化させても色度ずれすることなく緑色の光として視認される。この結果、赤用画素及び緑用画素の両画素について、視角によって色度ずれが生ずるのを抑制することができる。また、赤色フィルタを透過した光には、波長が620nm未満の明るい光を含むことから、明るい赤色の光が取り出せる。同様に、緑色フィルタを透過した光には、波長が520nm以上の明るい光を含むことから、明るい緑色の光が取り出せる。
【0019】
この発光装置において、前記赤色フィルタは、前記赤用画素から出射された光に対する最大透過率をTr1、最小透過率をTr2とした場合、(Tr1+Tr2)/2となる波長Wrが580nm≦Wr<620nmの範囲に制限され、前記緑色フィルタは、前記緑用画素から出射された光に対する最大透過率をTg1、最小透過率をTg2とした場合、(Tg1+Tg2)/2となる波長Wgが480nm≦Wg<520nmの範囲に制限されている。
【0020】
このようにすることで、赤色フィルタによってその波長が580nm未満の光が遮断されることにより、580nmより短い波長の光は出射されないので、基板に対する見る角度を変化させても色度ずれすることなく赤色の光として視認される。また、同様にして、緑色フィルタによって波長が480nm未満の光成分が遮断されることにより、480nmより短い波長の光は出射されないので、基板に対する見る角度を変化させても色度ずれすることなく緑色の光として視認される。この結果、赤用画素及び緑用画素の両画素について、視角によって色度ずれが生ずるのを抑制することができる。
【0021】
また、赤色フィルタを透過した光には、波長が620nm未満の明るい光を含むことから、明るい赤色の光が取り出せる。同様に、緑色フィルタを透過した光には、波長が520nm以上の明るい光を含むことから、明るい緑色の光が取り出せる。
【0022】
この発光装置において、前記機能層は、前記発光層以外に正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層及び電子注入層の少なくともいずれか一つを備えていてもよい。
これによれば、正孔輸送層は、各青、緑及び赤用画素の第1の電極から発光層へのキャリアの注入効率を高めるとともに、発光層内を移動する電子をブロッキングする機能を有する。また、電子輸送層は、発光層への電子注入効率を高めるとともに、正孔ブロッキング機能を有する。従って、発光層内でのキャリアとしての電子と正孔との再結合確率が高まる。この結果、各画素での発光効率が向上し、高輝度表示が可能となる。
【0023】
この発光装置において、前記光反射層と前記第1の電極との間には、前記反射層全体を覆う保護層が形成されていてもよい。
これによれば、光反射層は、一般的に、アルミニウム(Al)や銀(Ag)で形成されている。従って、第1の電極を形成する際に使用される公知の現像液や剥離液の溶剤によって光反射層が劣化してしまうが、本発明のように、光反射層上には保護層が形成されているため、劣化しない。この結果、第1の電極は、その光反射率が高い状態となるので、光取り出し効率の高い、即ち、高輝度の発光装置を実現できる。
【0024】
この発光装置において、前記保護層は、前記第1の電極より屈折率が低くてもよい。
これによれば、各画素の光共振波長は、光反射層と半透過反射層との間の光学的距離、つまり、光反射層と半透過反射層との間に配置される第1の電極、機能層、保護層の光学的距離の総和に対応し、また、各層の光学的距離は、その膜厚と屈折率との積によって求められることが知られている。本発明では、保護層の屈折率は第1の電極より低いので、光共振波長は保護層の影響を受けない。保護層の屈折率が大きい場合、光共振器の観点から第1の電極の膜厚を非常に薄く形成する必要が生じるが、これを抑制することができるので、第1の電極の膜厚を製造しやすい厚みで形成することができる。
【0025】
本発明の電子機器は、上記記載の発光装置を備えた。
これによれば、赤用画素及び緑用画素について、視角によって色度ずれが生じない優れた画質を有した画像を表示することが可能な電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した各実施形態について図面に従って説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の発光装置としての有機EL装置の概略構成を示す断面図である。
【0027】
本実施形態の有機EL装置10は、発光層から発光(内部発光)した光(表示光)を基板とは反対側から取り出す、所謂トップエミッション型の有機EL装置である。
図1に示すように、有機EL装置10は、光透過性を有する基板(透明基板)11を備えるとともに、該基板11上には、青用画素形成領域ZB、緑用画素形成領域ZG及び赤
用画素形成領域ZRがマトリクス状に配置されている。各青、緑及び赤用画素形成領域ZB,ZG,ZRは、図1においてX矢印方向に沿って、青用画素形成領域ZB→緑用画素形成領域ZG→赤用画素形成領域ZR→…の順に繰り返して配置されるとともに、Z矢印方向(紙面奥側方向)に沿っては同色の画素形成領域ZB,ZG,ZRが配置されている。
【0028】
また、基板11上には、各同色の画素形成領域ZB,ZG,ZRに沿ってストライプ状に、光反射性の高い材料等で構成された複数の光反射層12が延設されている。本実施形態の光反射層12は、アルミニウム(Al)で構成されている。
【0029】
各光反射層12上には、該光反射層12を被覆するように保護層13が形成されている。この保護層13は、光透過性に優れ、かつ電気絶縁性を有した材料で構成されている。本実施形態では、保護層13は、後記する第1の電極としての青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rより屈折率が低い材料で構成されている。本実施形態では、窒化珪素(SiN)(屈折率1.8)で構成されている。
【0030】
各青、緑及び赤用画素形成領域ZB,ZG,ZR内の保護層13上には、光透過性を有した導電性材料で構成された画素電極としての青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rが区画形成されている。つまり、複数の青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rは、保護層13を介して各光反射層12と相対向するようにマトリクス状に配置されている。本実施形態の画素電極15B,15G,15Rは、インジウム−錫酸化物(ITO)で構成されている。
【0031】
また、基板11上には、各青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rを覆うように機能層20が形成されている。本実施形態の機能層20は、正孔輸送層21、発光層22及び電子輸送層23を備え、基板11側から正孔輸送層21、発光層22及び電子輸送層23の順に積層されている。
【0032】
正孔輸送層21は、青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rから発光層22への電荷の注入効率を高めるとともに、発光層22内を移動する電子をブロッキングする機能を有し、発光層22内でのキャリアとしての電子と正孔との再結合確率を高める作用を奏する。この正孔輸送層21には、青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rからの注入障壁が低く、正孔移動度の高い材料が好適に用いられる。このような材料としては、例えばポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体など、またはそれらのドーピング体などが用いられる。具体的には、3,4−ポリエチレンジオキシオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)[商品名;バイトロン−p(Bytron-p):バイエル社製]の分散液、即ち、分散媒としてポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液などを用いられる。また、本実施形態では、正孔輸送層21は、各青、緑及び赤用画素電極15B,15G,15Rに対して均一な膜厚である。
【0033】
発光層22は、蛍光或いは燐光を発光することが可能な公知の有機高分子発光材料で構成されている。このような材料としては、ポリフルオレン誘導体(PF)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリジアルキルフルオレン(PDAF)、ポリフルオレンベンゾチアジアゾール(PFBT)、ポリアルキルチオレン(PAT)や、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)等のポリシラン系などを好適に用いることができる。また、これらの各発光材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、
キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。本実施形態の発光層22は、青系の色の光を出射する発光材料とオレンジ系の色の光を出射する発光材料とを積層したものである。また、本実施形態では、発光層22は、正孔輸送層21上の全面に渡って均一な膜厚である。
【0034】
図5は、本実施形態の発光層22の発光(内部発光)スペクトルである。図5に示すように、発光層22から出射される光は、短波長側から、480nm、505nm、600nmにて発光ピークを有した光である。
【0035】
電子輸送層23は、発光層22への電子注入効率を高めるとともに、正孔ブロッキング機能を有する。この電子輸送層23は、オキサジアゾール誘導体やAlq3などの有機材料で構成されている。本実施形態では、電子輸送層23は、発光層22上の全面に渡って均一な膜厚である。
【0036】
図1に示すように、機能層20上(電子輸送層23上)の全面には、第2の電極としての共通電極25が形成されている。共通電極25は、光透過性及び光反射性を有する。共通電極25は、本実施形態では、金属薄膜であるマグネシウムと銀の化合物(MgーAg)からなる薄膜(膜厚:10nm)である。共通電極25は、発光層22から発せられた光の一部を透過して、残りの光の一部または全部を光反射層12側に反射するハーフミラーとして機能するとともに各画素電極15R,15G,15Bの対向電極として機能する。
【0037】
尚、青用画素電極15B、共通電極25、及び各青用画素電極15Bと共通電極25とに挟持された機能層20とで青用有機EL素子28Bが構成される。そして、青用画素形成領域ZBには青用有機EL素子28Bを含む青用画素DBが形成される。また、緑用画素電極15G、共通電極25、及び緑用画素電極15Gと共通電極25とに挟持された機能層20とで緑用有機EL素子28Gが構成される。そして、緑用画素形成領域ZGには緑用有機EL素子28Gを含む緑用画素DGが形成される。さらに、赤用画素電極15R、共通電極25、及び各赤用画素電極15Rと共通電極25とに挟持された機能層20とで赤用有機EL素子28Rが構成される。そして、赤用画素形成領域ZRには赤用有機EL素子28Rを含む赤用画素DRが形成される。
【0038】
そして、各画素DB,DG,DRは、各発光層22から発せられた光を各画素電極15B,15G,15Rの直下に配置された光反射層12と共通電極25との間で往復するように反射させて共振させる光共振器構造が形成される。
【0039】
図2、図3及び図4は、それぞれ、青用画素DB、緑用画素DG及び赤用画素DRの拡大断面図である。図2に示すように、青用画素DBにおける光反射層12と共通電極25との間の距離をLBで示し、図3に示すように、緑用画素DGにおける光反射層12と共通電極25との間の距離をLGで示し、図4に示すように、赤用画素DRにおける光反射層12と共通電極25との間の距離をLRで示す。
【0040】
ところで、各画素DB,DG,DRから出射される光HB,HG,HRは、それぞれ、該画素DB,DG,DRに形成された光共振器構造の共振条件に従った共振波長の光となる。この共振波長は、光反射層12と共通電極25との間の光学的距離、つまり、光反射層12と共通電極25との間に配置される各層の光学的距離の総和に対応する。各層の光学的距離は、その膜厚と屈折率との積によって求められる。本実施形態では、各有機EL素子28B,28G,28Rは全て共通の材料で構成されているので、各層の屈折率は等しい。従って、各画素DB,DG,DRの光学的距離は、各層の膜厚の総和である各距離LB,LG,LRによって決定される。尚、共振波長は、光学的距離が長くなるのに伴っ
て(本実施形態では、各距離LB,LG,LRが長くなるのに伴って)長くなる。
【0041】
そして、青用画素DBは、青用画素電極15Bの膜厚d1を調整することで、距離LBに対応した光学的距離を青色の光が生成される光学的距離に、緑用画素DGは、緑用画素電極15Gの膜厚d2を調整することで、距離LGに対応した光学的距離を緑色の光が生成される光学的距離に設定されている。また、赤用画素DRは、赤用画素電極15Rの膜厚d3を調整することで、距離LRに対応した光学的距離を赤色の光が生成される光学的距離に設定されている。因みに、本実施形態では、青用画素電極15Bの膜厚d1は20nmであり、緑用画素電極15Gの膜厚d2は65nmであり、赤用画素電極15Rの膜厚d3は95nmである。 図1に示すように、共通電極25上には、カラーフィルタ51が取り付けられている。カラーフィルタ51は、光透過性を有したカラーフィルタ基板52を備え、そのカラーフィルタ基板52には、青色フィルタとしての青色変換層53B、緑色フィルタとしての緑色変換層53G、及び赤色フィルタとしての赤色変換層53Rが設けられている。各色変換層53B,53G,53Rは、ブラックマトリクスBMによってマトリクス状に区画配置されている。そして、青色変換層53Bは青用画素DBに相対向する位置に配置され青用画素DBから出射される光HBの波長を制限する機能を有する。緑色変換層53Gは緑用画素DGに相対向する位置に配置され緑用画素DGから出射される光HGの波長を制限する機能を有する。赤色変換層53Rは赤用画素DRに相対向する位置に配置され赤用画素DRから出射される光HRの波長を制限する機能を有する。
【0042】
図6は、各青色、緑色及び赤色変換層53B,53G,53Rの光透過分光特性を示している。図6において、赤色変換層53Rの光透過分光特性を曲線Ro(実線)で示し、緑色変換層53Gの光透過分光特性を曲線Go(一点鎖線)で示し、青色変換層53Bの光透過分光特性を曲線Bo(二点鎖線)で示す。
【0043】
図6中曲線Ro(実線)で示すように、赤色変換層53Rは、短波長側の波長成分を遮断する特性を有するとともに、長波長側に対しては高い透過率を維持する特性を有している。赤色変換層53Rは、その最大透過率をTr1、最小透過率をTr2とした場合、(Tr1+Tr2)/2となる波長Wrが580nm以上620nm未満となるようにその光透過分光特性が予め調整されている。本実施形態では、(Tr1+Tr2)/2となる波長Wrが590nmとなるように調整されている。従って、赤用画素DRから出射された光HRのうち590nm未満の波長の光は赤色変換層53Rによって概ね遮断され、590nm以上の波長の光を透過する。
【0044】
緑色変換層53Gは、約100nm程度の範囲の波長の光を透過する特性を有している。緑色変換層53Gは、その最大透過率をTg1、最小透過率をTg2とした場合、(Tg1+Tg2)/2となる短波長側の波長Wgが480nm以上520nm未満となるようにその光透過分光特性が予め調整されている。本実施形態では、(Tg1+Tg2)/2となる波長Wgが505nmとなるように調整されている。従って、緑用画素DGから出射された光HGのうち505nm未満の波長の光及び600nm以上の波長の光は緑色変換層53Gによって概ね遮断され、505nm以上であって、600nm未満の波長の光を透過する。
【0045】
青色変換層53Bは、光HBの共振波長が、青色変換層53Bの光透過分光特性における最大透過率を示す波長と一致するように、その光透過分光特性が予め調整されている。
以上のように、赤用画素DRから出射された光は、カラーフィルタ51の赤色変換層53Rを透過することによって、590nm未満の波長の光は出射されないので、基板11に対して斜め方向に出射される光には、590nm未満の波長成分の光が含まれない。
【0046】
ところで、一般に、580nm未満の光は赤色ではなくオレンジ色に認識されることが
知られている。本実施形態では、前述したように、各赤色変換層53Rから出射される光は、590nm未満の波長成分の光を含まない。この結果、基板11に対して斜め方向から見た場合であっても、各赤色変換層53Rから出射される光がオレンジ色に見えることはない。つまり、赤色の光については色度ずれは生じない。
【0047】
また、人間の視感度、即ち人間が感じる明るさは、図7に示す公知の視感度特性のグラフからわかるように、波長が620nm以上の光に対しては、波長が550nmの光に比べて半分以下となり暗く認識される。本実施形態では、各赤色変換層53Rは、(Tr1+Tr2)/2となる波長Wrは620nm未満であるので、波長が550nmである明るい赤色の光を含むので各赤色変換層53Rから出射される光が暗く見えることはない。
【0048】
また、緑用画素DGから出射された光は、カラーフィルタ51の緑色変換層53Gを透過することによって、505nm未満の波長の光は緑色変換層53Gから出射されないので、基板11に対して斜め方向に出射される光は、505nm未満の波長成分の光を含まない。一般に、480nm未満の光は緑色ではなくシアン(水)色に認識されることが知られている。本実施形態では、前記したように、各緑色変換層53Gから出射される光は、505nm未満の波長成分の光を含まない。この結果、基板11に対して斜め方向から見た場合であっても、各緑色変換層53Gから出射される光がシアン(水)色に見えることはないことはない。つまり、緑色の光については色度ずれは生じない。
【0049】
また、人間の視感度、即ち人間が感じる明るさは、図7に示す公知の視感度特性のグラフからわかるように、波長が520nm以上の光に対しては、波長が505nmの光に比べて非常に高く認識される。本実施形態では、各緑色変換層53Gは、波長が500nm以上であって600nm未満までの光が透過する。従って、波長が520nm以上の明るい緑色の光を含む。この結果、明るい緑色の光が各緑色変換層53Gから出射されることから、各緑色変換層53Gから出射される光が暗く見えることはない。
【0050】
以上のことから、カラーフィルタ51から出射される赤色及び緑色の光については、基板11に対して斜め方向から見ても色度ずれを生じることはない。また、基板11に対して斜め方向から見ても、赤色及び緑色の光が暗くみえたりすることはない。
【0051】
尚、本実施形態の有機EL装置からは、図5に示す発光スペクトルを有する光が取り出されるものであるが、赤用画素DRからは610nm〜640nmの波長範囲の共振波長、緑用画素DGからは530nm〜560nmの波長範囲の共振波長が取り出されるように、共振条件が設定されていることが望ましい。この波長範囲に共振波長を有する光を各画素DB,DG,DRから取り出すことで、視感度特性と、上記カラーフィルタ51の特性に対してバランスの保たれた光の取り出しが可能となる。
【0052】
次に、有機EL装置10の製造方法について、特にその有機EL素子28B,28G,28Rの形成方法について図8〜図10に従って説明する。
まず、ガラス等で構成された光透過性を有する基板(透明基板)11を用意し、公知の方法によって、基板11上に図示しないデータ線、走査線、スイッチングトランジスタ及びドライビングトランジスタ等の駆動用TFTを形成する。そして、図8(a)に示すように、列状に配置形成された青、緑及び赤用画素形成領域ZB,ZG,ZR上にストライプ状の光反射層12を形成する。本実施形態では、基板11上の全面にアルミニウム(Al)をスパッタし、これをパターニングすることによって光反射層12を形成する。
【0053】
続いて、基板11上の全面に対して光反射層12上に渡って窒化珪素(SiN)をスパッタし、これをパターニングすることによって光反射層12上を被覆するように保護層13を形成する。本実施形態では、膜厚50nmの保護層13を形成する。
【0054】
次に、赤用画素電極形成領域SR上に、赤用画素電極15Rの膜厚d3と緑用画素電極15Gの膜厚d2との差分(=d3−d2=30nm)の膜厚を有する光透過性を有した導電性膜をフォトリソグラフィーによって形成する。具体的には、図8(b)に示すように、各保護層13上にて膜厚30nmとなるようにインジウム−錫酸化物(ITO)からなる導電性膜61をスパッタ法にて形成する。その後、導電性膜61上の全面に公知のレジスト膜を塗布し、レジストプリキュア、マスク露光、レジスト現像を順次施すことで赤用画素電極形成領域SR上の導電性膜61上にのみレジスト膜62を形成する。
【0055】
続いて、そのレジスト膜62を介して導電性膜61をエッチングし、さらに、レジスト膜62を剥離除去する。この結果、図8(c)に示すように、赤用画素電極形成領域SR上の保護層13上にのみ膜厚30nmの導電性膜61がパターニング形成される。以下、説明の便宜上、このとき、赤用画素電極形成領域SR上の保護層13上に形成された導電性膜61を第1電極層Q1といい、その膜厚T1は30nmとなる。
【0056】
次に、赤用画素電極形成領域SR上及び緑用画素電極形成領域SG上に、緑用画素電極15Gの膜厚d2と青用画素電極15Bの膜厚dbとの差分(=d2−d1=45nm)の膜厚を有する光透過性を有した導電性膜をフォトリソグラフィーにて形成する。具体的には、図8(d)に示すように、各保護層13上にて膜厚45nmとなるようにインジウム−錫酸化物(ITO)からなる導電性膜63をスパッタ法にて形成する。その後、導電性膜63上の全面に公知のレジスト膜を塗布し、レジストプリキュア、マスク露光、レジスト現像を順次施すことで、赤用画素電極形成領域SR及び緑用画素電極形成領域SG上の導電性膜63上にレジスト膜64を形成する。
【0057】
続いて、そのレジスト膜64を介して導電性膜63をエッチングし、さらに、レジスト膜64を剥離除去する。この結果、図9(a)に示すように、赤用画素電極形成領域SR上の各保護層13上には、先に形成された第1電極層Q1上に膜厚45nmの導電性膜63がパターニング形成される。また、緑用画素電極形成領域SG上の各保護層13上には、膜厚45nmの導電性膜63がパターニング形成される。以下、説明の便宜上、このとき、赤及び緑用画素電極形成領域SR,SG上の各保護層13上に形成される導電性膜63を第2電極層Q2といい、その膜厚T2は45nmである。
【0058】
次に、赤、緑及び青用画素電極形成領域SR,SG,SBに、それぞれ、青用画素電極15Bの膜厚d1(20nm)の膜厚を有する光透過性を有した導電性膜をフォトリソグラフィーにて形成する。具体的には、図9(b)に示すように、各保護層13上にて膜厚25nmとなるようにインジウム−錫酸化物(ITO)からなる導電性膜65をスパッタ法にて形成する。その後、導電性膜65上の全面に公知のレジスト膜を塗布し、レジストプリキュア、マスク露光、レジスト現像を順次施すことで、各赤、緑及び青用画素電極形成領域SR,SG,SB上の導電性膜65上にレジスト膜66を形成する。
【0059】
続いて、そのレジスト膜66を介して導電性膜65をエッチングし、さらに、レジスト膜66を剥離除去する。この結果、図9(c)に示すように、赤、緑及び青用画素電極形成領域SR,SG,SB上の各保護層13上には、先に形成された第2電極層Q2上には膜厚20nmの導電性膜65がパターニング形成される。以下、説明の便宜上、このとき、赤、緑及び青用画素電極形成領域SR,SG,SB上の各保護層13上に形成される導電性膜65を第3電極層Q3といい、その膜厚T3は20nmとなる。
【0060】
以上により、赤用画素電極形成領域SRの保護層13上には第1〜第3電極層Q1,Q2,Q3が積層されて膜厚d3(=T1+T2+T3=95nm)の赤用画素電極15Rが形成される。また、緑用画素電極形成領域SGの保護層13上には第2及び第3電極層
Q2,Q3が積層されて膜厚d2(=T2+T3=65nm)の緑用画素電極15Gが形成される。さらに、青用画素電極形成領域SBの保護層13上には第3電極層Q3が積層されて膜厚d1(=T3=20mn)の青用画素電極15Bが形成される。
【0061】
続いて、図10(a)に示すように、基板11上の全面に、各画素電極15B,15G,15R上に渡って、正孔輸送層21、発光層22及び電子輸送層23を順に形成する。これらの層21,22,23は、それぞれ、蒸着法によって形成する。正孔輸送層21、発光層22及び電子輸送層23により機能層20が形成される。本実施形態では、発光層22は発光性有機材料によって形成されている。
【0062】
その後、図10(b)に示すように、機能層20上に共通電極25を形成する。本実施形態では、膜厚10nmのマグネシウム−銀(MgAg)をスパッタ法によって形成する。このようにして、膜厚10nmのマグネシウム−銀(MgAg)で構成された共通電極25と反射層12とで発光層22から発せられた光を共振させる光共振器構造を形成する。その後、基板11に駆動用ドライバ等(図示略)を実装するとともに、別途公知の方法で作製されたカラーフィルタ50を共通電極25上に接着することにより、有機EL装置10が完成する。
【0063】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、赤用画素DRに相対向する位置に、590nm未満の波長の光を遮断する赤色変換層53Rを配置した。従って、赤色変換層53Rを透過した後の光には、590nm未満の波長成分の光が含まれない。この結果、基板11に対して斜め方向から見た場合であっても、赤色変換層53Rから出射される光がオレンジ色に見えることはないので、赤色の光について見る角度によって色度ずれが生じない。
【0064】
(2)本実施形態によれば、各赤色変換層53Rを(Tr1+Tr2)/2となる波長Wrが590nmとなるように調整した。従って、赤色変換層53Rを透過した光は、明るい赤色に認識される620nm未満の光を含む。この結果、赤色の光が暗く見えることはない。
【0065】
(3)本実施形態によれば、緑用画素DGに相対向する位置に、505nm未満の波長の光を遮断する緑色変換層53Gを配置した。従って、緑色変換層53Gを透過した後の光には、505nm未満の波長成分の光が含まれない。この結果、基板11に対して斜め方向から見た場合であっても、緑色変換層53Gから出射される光がシアン(水)色に見えることはないので、緑色の光について見る角度によって色度ずれが生じない。
【0066】
(4)本実施形態によれば、各緑色変換層53Gを(Tg1+Tg2)/2となる波長Wgが505nmとなるように調整した。従って、明るい緑色に認識される520nm以上の光を含む光を透過する。この結果、明るい緑色の光を出射させることができる。
【0067】
(5)本実施形態によれば、赤用画素電極15Rは、他の緑用画素電極15G及び青用画素電極15Bに比べて膜厚が厚いが、この赤用画素電極15Rを3つのフォトリソグラフィー工程で形成されるように分割しているので、画素電極15B,15G,15Rを形成する際のエッチング時間をそれぞれ概ね同じ時間にすることができる。この結果、膜厚が厚くなるとエッチング時間が長くなるためサイドエッチが生じやすいが、これを抑制することができる。
【0068】
(6)本実施形態によれば、カラーフィルタ51の青色変換層53Bは、光HBの共振波長PBが、青色変換層53Bの光透過率特性における最大透過率を示す波長と一致している。従って、輝度を低下させることなく、青色の光を出射させることができる。
【0069】
(7)本実施形態によれば、光反射層12と各画素電極15B,15G,15Rとの間に、光反射層12全体を覆うように保護層13を形成した。従って、画素電極15B,15G,15Rを形成する際に使用される公知の現像液や剥離液の溶剤が光反射層12に直接接触することはないので、光反射層12が現像液や剥離液の溶剤によって劣化することはない。この結果、各画素電極15B,15G,15Rは、その光反射率が高い状態となるので、光取り出し効率の高い、即ち、高輝度の有機EL装置を実現することができる。
【0070】
(8)本実施形態によれば、保護層13は、各画素電極15B,15G,15Rより屈折率が低い材料で構成した。従って、光HB,HG,HRの各共振波長PB,PG,PRは保護層13の影響を受けない。従って、保護層13の屈折率が大きい場合、光共振器の観点から画素電極15B,15G,15Rの膜厚を非常に薄く形成する必要が生じるが、これを抑制することができる。この結果、画素電極15B,15G,15Rの各膜厚を製造しやすい厚みで形成することができる。
【0071】
(9)本実施形態によれば、保護層13及び機能層20の各層を、各画素DB,DG,DRに対して均一な膜厚とした。従って、発光層22の膜厚を変化させることはないので、各画素DB,DG,DRの発光特性を変化させることなく、各青用画素DBに2以上の異なる共振条件を設けることができる。
(第2実施形態)
次に、上記第1実施形態に係る有機EL装置10を備えた電子機器を一例について説明する。
【0072】
図11は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図11に示す携帯電話80は、複数の操作ボタン81、受話口82、送話口83及び表示部84を備えている。このようなこう性をした携帯電話80は、その表示部84が上記第1実施形態に係る有機EL装置10を備えている。従って、携帯電話80の表示部84には、見る角度によって色度ずれが生じない高画質の画像を表示することができる。
【0073】
尚、本発明は、以下のように変更して具体化することもできる。
・上記第1実施形態では、赤色変換層53Rを、(Tr1+Tr2)/2となる波長Wrが590nmとなるように調整したが、本発明はこれに限定されない。波長Wrが580nm以上であって620nm未満であればよい。
【0074】
・上記第1実施形態では、緑色変換層53Gを、(Tg1+Tg2)/2となる波長Wgが480nmとなるように調整したが、本発明はこれに限定されない。波長Wgが480nm以上であって520nm未満であればよい。
【0075】
・上記第1実施形態では、各赤用画素DRに相対向する位置に(Tr1+Tr2)/2となる波長Wrが590nmとなるように調整した赤色変換層53Rを備えるとともに、各緑用画素DGに相対向する位置に(Tg1+Tg2)/2となる波長Wgが480nmとなるように調整した緑色変換層53Gを備えたが、本発明は、これに限定されない。赤色変換層53R及び緑色変換層53Gのどちらか一方にのみを備えてもよい。このようにすることで、赤色の光及び緑色の光のいずれかの光に対してその色度ずれを抑制された有機EL装置を実現することができる。
【0076】
・上記第1実施形態では、発光層22から発光した光を基板11とは反対側から取り出す、所謂トップエミッション型の有機EL装置10に具体化したが、本発明はこれに限定されない。発光層22から発光した光を基板11側から取り出す、所謂ボトムエミッション型の有機EL装置においても、本発明は適応可能である。
【0077】
・上記第1実施形態では、発光層22に発光性有機材料を用いた有機EL装置10に適用したが、これを発光性有機材料以外の材料を備えた発光素子(例えば、発光ダイオード(LED)素子)を用いた発光装置であっても本発明は適用可能である。
【0078】
・上記第2実施形態では、電子機器として携帯電話80について説明したが、これに限定されるものではなく、モバイル型のパーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等のディスプレイを備えた電子機器に広く適用可能である。
【0079】
・上記第1実施形態では、正孔輸送層21、発光層22及び電子輸送層23で機能層20を構成したが、本発明はこれに限定されない。上記各層21〜23のうち、発光層22以外の他の層(正孔注入層や電子注入層)のいずれかまたは全てが含まれていてもよい。要は、機能層20は、発光層22を含んでいればよい。このようにすることで、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0080】
・上記第1実施形態では、基板11を、ガラス等の光透過性を有した基板(透明基板)としたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、光透過性を有しない基板(不透明基板)も用いることもできる。基板11を、光透過性を有しない基板(不透明基板)とした場合では、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらには、そのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。要は、画素が形成可能であるものであれば、どんなものであってもよい。
【0081】
・上記第1実施形態では、保護層13は窒化珪素(SiN)で構成したが、本発明はこれに限定されない。酸窒化珪素(SiON)、酸化珪素(SiOn)またはアクリル系樹脂で構成されていてもよい。要は、光透過性を有し、且つ、屈折率が画素電極15B,15G,15Bに比べて高い材料であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】第1実施形態に係る有機EL装置の断視図。
【図2】青用画素の拡大断面図。
【図3】緑用画素の拡大断面図。
【図4】赤用画素の拡大断面図。
【図5】有機EL素子の内部発光スペクトル。
【図6】カラーフィルタの光透過率を示すグラフ。
【図7】視感度特性のグラフ。
【図8】(a),(b),(c),(d)は、それぞれ、有機EL装置の製造方法を説明するための図。
【図9】同じく、(a),(b),(c)は、それぞれ、有機EL装置の製造方法を説明するための図。
【図10】同じく、(a),(b)は、それぞれ、有機EL装置の製造方法を説明するための図。
【図11】電子機器としての携帯電話の斜視図。
【図12】(a)は、赤用画素から出射される光の出射角度に対するスペクトルの変化を示す図、(b)は、出射角の定義を示す図。
【符号の説明】
【0083】
DB…青用画素、DG…緑用画素、DR…赤用画素、10…発光装置としての有機EL装置、11…基板、12…光反射層、15B,15G,15R…画素電極としての青用画素電極、緑用画素電極、赤用画素電極、20…機能層、21…正孔輸送層、22…発光層
、23…電子輸送層、25…共通電極、51…カラーフィルタ、53B…青色変換層、53G…緑色変換層、53R…赤色変換層、80…電子機器としての携帯電話。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成される光反射層と、前記光反射層上に形成される光透過性を有する第1の電極と、前記第1の電極と対向して配置される光透過性及び光反射性を有する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれて配置される、少なくとも発光層を含む機能層と、を具備する画素が形成された発光装置において、
前記画素は、青色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された青用画素、緑色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された緑用画素、赤色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された赤用画素を有し、
前記赤用画素から出射された光に対して予め定められた範囲の波長を制限する赤色フィルタが前記赤用画素に相対向する位置に設けられていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記赤用画素から出射される光は、610nm〜640nmの波長範囲に共振波長を有するものであって、
前記赤色フィルタは、前記赤用画素から出射された光に対する最大透過率をTr1、最小透過率をTr2とした場合、(Tr1+Tr2)/2となる波長Wrが580nm≦Wr<620nmの範囲に制限されていることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
基板と、前記基板上に形成される光反射層と、前記光反射層上に形成される光透過性を有する第1の電極と、前記第1の電極と対向して配置される光透過性及び光反射性を有する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれて配置される、少なくとも発光層を含む機能層と、を具備する画素が形成された発光装置において、
前記画素は、青色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された青用画素、緑色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された緑用画素、赤色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された赤用画素を有し、
前記緑用画素から出射された光に対して予め定められた範囲の波長を制限する緑色フィルタが前記緑用画素に相対向する位置に設けられていることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の発光装置において、
前記緑用画素から出射される光は、530nm〜560nmの波長範囲に共振波長を有するものであって、
前記緑色フィルタは、前記緑用画素から出射された光に対する最大透過率をTg1、最小透過率をTg2とした場合、(Tg1+Tg2)/2となる波長Wgが480nm≦Wg<520nmの範囲に制限されていることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
基板と、前記基板上に形成される光反射層と、前記光反射層上に形成される光透過性を有する第1の電極と、前記第1の電極と対向して配置される光透過性及び光反射性を有する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれて配置される、少なくとも発光層を含む機能層と、を具備する画素が形成された発光装置において、
前記画素は、青色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された青用画素、緑色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された緑用画素、赤色の光が出射するように前記光反射層と前記第2の電極との間の光学的距離が設定された赤用画素を有し、
前記赤用画素から出射された光に対して予め定められた範囲の波長を制限する赤色フィルタを前記赤用画素に相対向する位置に設け、
前記緑用画素から出射された光に対して予め定められた範囲の波長を制限する緑色フィルタを前記緑用画素に相対向する位置に設けたことを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発光装置において、
前記赤色フィルタは、前記赤用画素から出射された光に対する最大透過率をTr1、最小透過率をTr2とした場合、(Tr1+Tr2)/2となる波長Wrが580nm≦Wr<620nmの範囲に制限され、
前記緑色フィルタは、前記緑用画素から出射された光に対する最大透過率をTg1、最小透過率をTg2とした場合、(Tg1+Tg2)/2となる波長Wgが480nm≦Wg<520nmの範囲に制限されていることを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記機能層は、前記発光層以外に正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層及び電子注入層の少なくともいずれか一つを備えていることを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記光反射層と前記第1の電極との間には、前記反射層全体を覆う保護層が形成されていることを特徴とする発光装置。
【請求項9】
請求項8に記載の発光装置において、
前記保護層は、前記第1の電極より屈折率が低いことを特徴とする発光装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の発光装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−123137(P2007−123137A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315766(P2005−315766)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】