説明

発光装置及び電子機器

【課題】 発光装置において、複数の画素部で夫々、発光素子の温度制御を精度良く行う。
【解決手段】 基板と、該基板上に、所定パターンで配列され、夫々発光素子を含む複数の画素部と、基板上における発光素子が形成された側に設けられた温度制御部とを備える。温度制御部は、基板上で平面的に見て前記発光素子に夫々少なくとも部分的に重なるように又は発光素子を夫々少なくとも部分的に囲むように配置された発熱体を含み、該発熱体に対する通電を行うことで前記発光素子の温度制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機EL(Electro-Luminescence)装置等の発光装置及びそのような発光装置を備えた各種電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の発光装置では、例えば特許文献1に開示されているように、基板上には、発光素子を夫々含む複数の画素部が所定パターンで配列されて形成されている。そして、発光装置の駆動時、各画素部において、発光素子は、例えば印加電流が印加されることにより発光する。このような発光装置では、画素部における輝度は印加電流によって制御される。
【0003】
ここで、各画素部では、発光素子が発光により発熱することにより、発光素子の温度は上昇する。基板上における画素部の配置や、発光素子の駆動条件によって、発光による発光素子の温度変化も異なる。このような発光素子の温度変化によって、印加電流に基づく輝度が変化してしまう。しかも、複数の画素部間において、発光素子の温度に違い或いは温度ムラが生じる事態を招く。その結果、各画素部で、発光素子の劣化の度合い等、発光素子の特性に相違が生じる。
【0004】
そこで特許文献1では、このような事態を防止するために、基板において、発光素子が形成された側と反対側に温度制御部を設け、この温度制御部によって発光素子の温度制御が行われる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−249375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような技術によれば、基板を介する熱伝導により発光素子の温度制御が行われるため、温度制御部からの熱伝導の効率が低い、という問題点がある。例えば、基板がガラス等のように比較的熱伝導率の低い材料により形成される場合には、温度制御部からの熱伝導の効率は顕著に低くなる。その結果、温度制御部における制御温度と、発光素子の温度との間に温度差が生じる。これにより、表示面内における温度ムラが生じ易くなる。そして、温度ムラにより、表示面内における輝度ムラが引き起こされ、更にこのような温度ムラや輝度ムラによって各発光素子における劣化度合のムラが生じ、これが更なる表示面内における輝度ムラに繋がるという技術的問題点がある。
【0007】
他方で、各画素部に対して、温度制御部を、発光素子の発光を遮らないように、非開口領域に配置させる必要があるため、開口率が低下する、という問題点もある。言い換えれば、各画素部に対して単純に温度制御部を取り付けたのでは、各画素部の本来の機能である発光を著しく害してしまいかねないのである。尚、本明細書では、各画素或いは各画素部において、発光可能な領域を「開口領域」と称すると共に開口領域以外の領域を「非開口領域」と称し、更には、各画素の全領域(即ち、開口領域及びそれ以外の非開口領域)に占める開口領域の面積割合を「開口率」と称して説明する。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み成されたものであり、複数の画素部において、発光素子の温度制御を良好に行うと共に、高品質な表示を行うことが可能な発光装置及びそのような発光装置を備えた各種電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発光装置は上記課題を解決するために、基板と、該基板上に、所定パターンで配列され、発光素子を夫々含む複数の画素部と、前記基板上における前記発光素子が形成された側に設けられ、前記基板上で平面的に見て前記発光素子に夫々少なくとも部分的に重なるように又は前記発光素子を夫々少なくとも部分的に囲むように配置された発熱体を含み、該発熱体に対する通電を行うことで前記発光素子の温度制御を行う温度制御部とを備える。
【0010】
本発明の発光装置によれば、その動作時には、各画素部において、例えば、発光素子に印加電流が印加されることにより、発光素子において発光層が発光する。この場合、印加電流によって、画素部の輝度が制御されると共に、発光により発光素子の温度変化もある程度の範囲内となるように制御される。しかしながら、各画素部において、発光に伴う発光素子の温度変化は、例えば画素部の基板上における位置や、発光素子の駆動条件、表示画像の内容等の諸条件に応じて、互いに相違し、また、発光素子の温度が、印加電流によって規定される範囲外の値となろうとすることもある。従って仮に何らの対策も施さねば、このような温度変化に伴い画素部における輝度も顕著に変化してしまいかねない。
【0011】
しかるに本発明では特に、各画素部間における発光素子の温度の相違、即ち複数の画素部が配列された面内における温度ムラを是正し、各画素部の温度を均一にするために、温度制御部が設けられている。温度制御部は、基板上で平面的に見て発光素子に夫々少なくとも部分的に重なるように又は発光素子を夫々少なくとも部分的に囲むように配置された発熱体を含み、該発熱体に対する通電を行うことで各画素部の温度制御を行う。温度制御部或いは発熱体の基板上での積層位置は、発光素子の下層側でもよいし、上層側でもよいし、同一層であってもよい。温度制御部或いは発熱体は、画素部毎に設けられるか、これに限らず、例えば、基板上の複数の画素部のうち、所定数の画素部毎に、これら所定数に共通に設けられるようにしてもよい。また、発熱体は、例えば、薄膜状の抵抗体からなり、通電により発熱するが、これに限らず例えばバルク状の抵抗体からなってもよいし、厚膜状の抵抗体からなってもよく、更に、多層構造を有する積層体からなってもよい。また、ここでの温度制御は、典型的には、発熱により加熱することによる温度制御であるが、冷却により温度制御する場合も含む。
【0012】
そして、温度制御部における各画素部の発熱体への通電に係る電流量や時間の変化によって、各温度制御部の発熱体の温度(以下適宜「制御温度」と称する)についての制御が行われる。尚、発熱体の抵抗や形成領域は、通電に係る電流量や時間から逆算して各発光素子において適当な温度が得られるように予め選定されている。ここでは全ての画素部で相互に同一の形状や抵抗の発熱体が用いられてもよいし、相互に多少異なる形状や抵抗の発熱体が用いられてもよい。係る制御温度に応じて各発光素子の温度が、制御されることになる。このような温度制御部による温度制御の際には、各発光素子の温度を、常に所定値とするか又は所定値に近付けるように制御してもよい。いずれにせよ、何らの温度制御を行わない場合と比較して、相対的に発光素子の温度が、複数の画素部間で均一に近付くように温度制御が行われる。
【0013】
本発明の発光装置では、既に説明した従来技術の如くに基板を介した熱伝導により温度制御を行う構成と比較して、基板上において、温度制御部による温度制御を、発光素子により接近した位置から、より具体的には、基板上で平面的に見て発光素子に夫々少なくとも部分的に重なる位置で又は発光素子を夫々少なくとも部分的に囲む位置から行っている。尚、本発明において「前記基板上で平面的に見て前記発光素子に夫々少なくとも部分的に重なるように又は前記発光素子を夫々少なくとも部分的に囲むように」とは、平面的に見て発光素子に完全に又は部分的に重なっている場合や、発光素子に全く又は部分的に重なっていないで且つ発光素子を囲んでいる場合の他、発光素子に完全に又は部分的に重なっており且つ発光素子を囲んでいる場合も含む意味である。よって、発光素子に近接配置された温度制御部の発熱体からの発光素子に対する熱伝導の効率を向上させることが可能となる。
【0014】
以上の結果、温度制御部の発熱体における制御温度と、温度制御の対象である発光素子の温度との間の温度差を小さくすることができる。よって、通常動作時には、基板面内における温度ムラ及び輝度ムラを低減するように、或いはこれに加えて又は代えて時間に対する温度ムラ及び輝度ムラを低減するように温度制御を比較的容易に行うことが可能となる。更に、経年劣化に係る、基板面内における劣化ムラ及び該劣化ムラに起因した輝度ムラを低減するように、温度制御を行うことも可能となる。
【0015】
加えて、温度制御部のうち発熱体等を、例えば透明性導電材料により形成すれば、基板上に平面的に見て、開口領域に、その少なくとも一部を重畳させて設置することができる。よって、温度制御部の設置によって、開口率が低下するのを防止することができる。他方、温度制御部のうち発熱体等を、例えば不透明な材料により形成する場合には、これを非開口領域に設置することで、発光素子の本来の機能である発光を邪魔しないで済む。
【0016】
以上詳細に説明したように本発明の発光装置によれば、良好に温度制御を行いつつ、発光装置において高品質な表示を行うことが可能となる。
【0017】
本発明の発光装置の一態様では、前記温度制御部は、前記通電をスイッチング制御するために形成された温度制御用スイッチング素子を更に含む。
【0018】
この態様によれば、例えば薄膜トランジスタ(以下適宜「TFT」と称する)により形成される温度制御用スイッチング素子が、画素部毎に設けられるか、或いは、所定数の画素部毎に、これら画素部に共通に設けられる。そして、温度制御用スイッチング素子によって、発熱体への通電をスイッチング制御することにより、温度制御用スイッチング素子のオン・オフのタイミングに基づいて、温度制御部の動作時間を制御することが可能となる。加えて、温度制御用スイッチング素子によって、発熱体への通電に係る通電量、言い換えれば発熱体に通電する電流量を制御することも可能である。よって、この態様では、温度制御部によって、より精度良く温度制御を行うことが可能となる。
【0019】
本発明の発光装置の他の態様では、前記温度制御部は、前記発光素子の温度が、前記温度制御を行わない場合と比較して前記複数の画素部間で均一に近付くように温度制御を行う。
【0020】
この態様によれば、発光装置の駆動時、温度制御部は、複数の画素部において、発光素子の温度の低い画素部、或いは発光素子の温度の高い画素部を基準として、他の画素部における発光素子の温度を低くするか或いはこれに加えて若しくは代えて高くすることにより温度制御を行う。これにより、各画素部において、発光素子の温度について、画素部の配置や駆動条件に適した温度制御を行うことが可能となる。
【0021】
本発明の発光装置の他の態様では、前記温度制御部は、前記画素部毎に前記温度制御を行う。
【0022】
この態様によれば、温度制御部は画素部毎に形成され、画素部毎に、温度制御部における、発熱体に対する通電に係る電流量や動作時間を変化させることで、温度制御を行う。よって、この態様では、各画素部において、発光素子の温度について、画素部の配置や駆動条件に基づいて生じる温度差を精度良く温度制御部によって是正することが可能となる。従って、各画素部において、発光素子の温度制御をより精度良く行うことが可能となる。
【0023】
本発明の発光装置の他の態様では、前記複数の画素部は、赤、緑、及び青の各々に相当する光を発光する3種類の前記発光素子を含み、前記温度制御部は、前記3種類の発光素子について、相互間の温度差を縮めるように前記温度制御を行う。
【0024】
この態様によれば、複数の画素部は、例えば、R(赤)用、G(緑)用、及びB(青)用の3種類として形成され、各種の画素部では、R、G、及びBの3種類のいずれかに相当する光を発光する発光素子が形成される。ここで、「R、G、及びBの3種類のいずれかに相当する光」とは、R、G、及びBの3種類のいずれかとスペクトル的に同じでなくても、最終的に視角により感知される色が、当該色と殆ど又は実質的に同じであればよく、R、G、及びBの3種類のいずれかに相当する波長の強度が強められた光も含む意味である。
【0025】
また、温度制御部は、画素部毎に形成されるか、或いはR用、G用、及びB用の3種類の画素部毎に、これら3種類の画素部に共通に形成される。或いは、これに限らず、R用の画素部に共通に、B用の画素部に共通に、及びG用の画素部に共通に、夫々温度制御部が形成されるようにしてもよい。
【0026】
よって、この態様では、各画素部において、発光素子の温度について、R、G、及びBの3種類の発光素子の駆動条件の違いに基づいて生じる温度差を縮めるように、温度制御部によって、精度良く温度制御を行うことができる。
【0027】
本発明の発光装置の他の態様では、前記温度制御部は、前記基板上において、前記発光素子より下層側に配置されている。
【0028】
この態様によれば、基板上において、温度制御部は、例えば、発光素子より下層側に、例えば層間絶縁膜を介して発光素子と層間絶縁されて形成されると共に、平面的に見て発光素子と重畳的に配置されて、形成される。この場合、温度制御部から、層間絶縁膜を介する熱伝導により、発光素子の温度制御が行われる。
【0029】
そして、この態様では、基板上に平面的に見て、発光素子において、温度制御部と重畳する領域がより広くなるように、発光素子に対して温度制御部を配置させることにより、効率良く、温度制御部から発光素子への熱伝導を行うことが可能となる。その結果、各画素部における発光素子の温度制御を、より効率良く行うことができる。
【0030】
本発明の発光装置の他の態様では、前記温度制御部は、前記基板上において、前記発光素子と同一の層に配置されている。
【0031】
この態様によれば、発光装置の製造に係る工程数を削減することが可能となり、製造コストを削減することができる。
【0032】
本発明の発光装置の他の態様では、前記温度制御部は、前記通電を行うことで前記発光素子を加熱することにより前記温度制御を行う。
【0033】
この態様によれば、温度制御部を簡易な構成により実現することが可能となり、発光装置の製造に係るコストを削減できる。即ち、発熱する発光素子について冷却により所定温度を実現するのに比べて、過熱或いは通電過熱により所定温度を実現する方が一般に制御及び製造が容易であり、コスト削減が可能となる。
【0034】
この、発光素子を加熱することにより温度制御を行う態様では、前記発熱体は、前記基板上に積層された薄膜状の抵抗体を有するように構成してもよい。
【0035】
このように構成すれば、薄膜状の抵抗体の材質や形状、特に膜厚、膜質や膜の形成領域を変化させることによって、容易に、温度制御部の抵抗値を所定値とすることが可能となる。また、薄膜状の抵抗体は、単一層膜に限らず、多層膜であってもよい。更に、薄膜状の抵抗体は、層間絶縁膜を介して複数存在していてもよい。
【0036】
この、温度制御部が抵抗体により形成される態様では、前記抵抗体は、少なくとも部分的に透明性導電膜により形成されているように構成してもよい。
【0037】
このように構成すれば、温度制御部の少なくとも一部を、基板上に平面的に見て、開口領域に配置することが可能となり、開口率を向上させることができる。
【0038】
上述した、温度制御用スイッチング素子を備える態様では、前記画素部は、前記発光素子への通電をスイッチング制御すると共に、前記温度制御用スイッチング素子を兼ねる画素スイッチング素子を更に含むように構成してもよい。
【0039】
このように構成すれば、発光装置を、アクティブマトリクス駆動方式により駆動させることが可能となる。また、この態様では、温度制御部を含めての画素部における回路素子や配線の数を低減することが可能となる。よって、発光装置の製造プロセスを簡易化し、製造コストを削減することができる。
【0040】
本発明の発光装置の他の態様では、前記画素部は、前記発光素子として有機EL素子を含む。
【0041】
この態様によれば、発光装置を有機EL装置として形成することができる。有機EL装置は特に、発光素子における発熱量が高く且つ温度変化による輝度変化も大きく、経年劣化も相対的に激しいので、本発明は極めて有効である。
【0042】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の発光装置(但し、その各種態様も含む)を具備する。
【0043】
本発明の電子機器は、上述した本発明の発光装置を具備してなるので、高品質な表示を行うことが可能なテレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。更にはプリンタ、コピー、ファクシミリなどの画像形成装置における露光用ヘッド等に適用することができる。
【0044】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下では、本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。以下の実施形態は、本発明の発光装置を、アクティブマトリクス駆動方式の有機EL装置に適用したものである。
【0046】
<1:第1実施形態>
本発明の発光装置に係る第1実施形態について、図1から図4を参照して説明する。
【0047】
<1−1;有機EL装置の全体構成>
先ず、図1を参照して、有機EL装置の全体構成について説明する。図1は、本実施形態に係る有機EL装置の全体構成を示すブロック図である。
【0048】
有機EL装置における画像表示領域110には、縦横に配線されたデータ線114及び走査線112が設けられており、それらの交点に対応して夫々形成された3種の画素部70R、70G、及び70Bはマトリクス状に配列される。
【0049】
本実施形態では、カラー表示を行うために、画像表示領域110には例えば、R用、G用、及びB用の3種の画素部70R、70G、70Bが設けられると共に、これら3種の画素部70R、70G、70Bに対応する3種のデータ線114及び3種の電源供給線117が設けられる。電源供給線117は、画像表示領域110において、各データ線114に対応させて形成されている。
【0050】
また、画像表示領域110の周辺に位置する周辺領域には、走査線駆動回路130及びデータ線駆動回路150が設けられている。走査線駆動回路130は複数の走査線112に走査信号を順次供給する。また、データ線駆動回路150は、画像表示領域110に配線された3種のデータ線114に、R用、G用、及びB用の3種の画像信号を供給する。尚、2種の走査線駆動回路130の動作と、データ線駆動回路150の動作とは、図1中には図示しない外部回路から供給される同期信号160によって相互に同期が図られる。また、電源供給線117には、外部回路から画素駆動用電源が供給される。
【0051】
ここで、図1中、3種の画素部70R、70G、70Bのうち、R用の画素部70Rに着目すれば、R用の画素部70Rには、赤色に相当する光を発光する有機EL素子72Rが設けられる。また、R用の画素部70Rには、例えば夫々TFTを用いて構成され、本発明に係る「画素スイッチング素子」の一例である、スイッチング用トランジスタ76及び駆動用トランジスタ74、並びにこれら以外の回路素子として保持容量78が設けられている。尚、3種の画素部70R、70G、及び70Bは夫々互いに同様の構成を有するものとする。また、G用の画素部70Gには、緑色に相当する光を発光する有機EL素子72Gが設けられると共に、B用の画素部70Bには、青色に相当する光を発光する有機EL素子72Bが設けられる。
【0052】
スイッチング用トランジスタ76のゲート電極には走査線112が電気的に接続されており、スイッチング用トランジスタ76のソース電極にはデータ線114が電気的に接続され、スイッチング用トランジスタ76のドレイン電極には駆動用トランジスタ74のゲート電極が電気的に接続されている。また、駆動用トランジスタ74のソース電極には、電源供給線117が電気的に接続されており、駆動用トランジスタ74のドレイン電極には有機EL素子72Rの陽極が電気的に接続されている。
【0053】
尚、図1に例示した画素回路の構成の他にも、電流プログラム方式の画素回路、電圧プログラム方式の画素回路、電圧比較方式の画素回路、サブフレーム方式の画素回路等の各種方式の画素回路を採用することが可能である。
【0054】
<1−2:画素部の構成>
次に、図2及び図3を参照して、3種の画素部70R、70G、及び70Bの更に詳細な構成について説明する。図2は、任意の画素部の平面図であり、図3は図2に示す画素部のA−A'断面図である。尚、図2及び図3においては、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。また、図2及び図3においては、3種の画素部70R、70G、及び70Bを各々の区別なしに、画素部70として示すと共に、3種の有機EL素子72R、72G、及び72Bの各々についても区別しないで有機EL素子72として示してある。
【0055】
図2に示されるように、例えば透明樹脂やガラス基板等の透明部材により構成される基板10上には、スイッチング用トランジスタ76及び駆動用トランジスタ74の半導体層3が形成されると共に、本発明に係る「温度制御部」が含む「発熱体」の一例に相当する抵抗体80が形成されている。尚、基板10における垂直方向の厚さd0は、例えば数百μm程度として形成されている。
【0056】
抵抗体80には、これと同一又は別材料からなり、抵抗体80に電流を供給するための通電用配線80Sが接続されている。通電用配線80Sは、例えば画素部70R、70G、及び70Bが配列された画素アレイ領域の周囲にまで引き出されて、周辺領域にて電流供給用の電源に接続されている。尚、一の画素部に対応する抵抗体80に接続された通電用配線80Sは、他の画素部に対応する抵抗体80を介して、画素アレイ領域の周囲にまで引き出されてもよいし、単独で引き出されてもよい。更に、画素駆動用の電源を、画素アレイ領域又は周辺領域にて通電用配線80Sに接続すること、即ち抵抗体80と画素部との電源を共用することも可能である。
【0057】
半導体層3は例えば低温ポリシリコン技術を用いて形成される。また、抵抗体80は、画素部70毎に設けられると共に、例えば、基板10上に平面的に見て、有機EL素子72と重畳するように形成されている。抵抗体80は、少なくとも、基板10上に平面的に見て有機EL素子72に重畳する部分が、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明性導電膜により形成されるのが好ましい。
【0058】
このように、本発明に係る「温度制御部」は、抵抗体80として、簡易な構成で形成することが可能であり、これにより有機EL装置の製造に係るコストを削減することができる。また、抵抗体80を構成する透明性導電膜の材質や、形状等を変化させることによって、容易に抵抗値を変化させることが可能である。尚、基板10上に平面的に見た、抵抗体80のパターン形状は、R用、G用、及びB用の画素部70R、70G、及び70Bの各々で、同様の形状としてもよいし、互いに異なる形状とすることも可能である。
【0059】
特に、抵抗体80をITO等の透明性導電膜から形成する場合には、これを画素部70R、70G、及び70Bの開口領域内に平面配置することができるので、抵抗体80による近接位置からの温度制御が可能となると共に、抵抗体80が発光の妨げとなることも殆どない。
【0060】
逆に、抵抗体80を不透明或いは半透明の導電膜から形成する場合には、画素部70R、70G、及び70Bを囲む領域、言い換えれば、非開口領域に、抵抗体80を平面配置すればよい。このように構成しても、抵抗体80による近接位置からの温度制御が可能となると共に、抵抗体80が発光の妨げとなることも殆どない。
【0061】
また、図示はしていないが、トップエミッション構造を用いれば、不透明或いは半透明の導電膜を画素に重畳することができる。この場合は、抵抗値、プロセス簡略性から抵抗体としてポリシリコン膜を使用することが好ましい。
【0062】
また、半導体層3上には、半導体層3及び抵抗体80を埋め込んで、スイッチング用トランジスタ76及び駆動用トランジスタ74のゲート絶縁層2が形成されている。更には、ゲート絶縁層2上に、駆動用トランジスタ74のゲート電極3a及び走査線112が形成されている。走査線112の一部は、スイッチング用トランジスタ76のゲート電極として形成されている。ゲート電極3a及び走査線112は、Al(アルミニウム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、銅(Cu)等のうち少なくとも一つを含む金属材料を用いて形成されている。
【0063】
また、走査線112や駆動用トランジスタ74のゲート電極3aを埋め込んで、ゲート絶縁層2上には層間絶縁層41が形成されている。層間絶縁層41及びゲート絶縁層2は例えばシリコン酸化膜から構成されている。
【0064】
層間絶縁層41上には、例えばアルミニウム(Al)又はITOを含む導電材料から夫々構成される、データ線114及び電源供給線117、更には駆動用トランジスタ74のドレイン電極42が形成されている。
【0065】
層間絶縁層41には、層間絶縁層41の表面から層間絶縁層41及びゲート絶縁層2を貫通して、駆動用トランジスタ74の半導体層3に至るコンタクトホール501及び502が形成されている。図3に示すように、電源供給線117及びドレイン電極42を構成する導電膜は、コンタクトホール501及び502の各々の内壁に沿って半導体層3の表面に至るように連続的に形成されている。
【0066】
ここで、保持容量78の下部容量電極は、走査線112と同一の層に、例えば同様の材料を用いて形成され、電源供給線117の一部が保持容量78の上部容量電極として形成されている。層間絶縁層41は誘電体膜として形成されており、層間絶縁層41の一部分が下部容量電極及び上部容量電極の間に挟持される。
【0067】
層間絶縁層41上には、電源供給線117及びドレイン電極42を埋め込んで、保護層45として例えばシリコン窒化膜(SiN)が形成されている。保護層45上には、例えばシリコン酸化膜よりなる第1バンク層46が形成され、更に第1バンク層46上に第2バンク層47が形成されている。第1バンク層46及び第2バンク層47によって、画素部70における有機EL層50の形成領域である開口領域が規定されている。
【0068】
そして、開口領域に、その表面が露出するように、保護層45上に、陽極34が形成されている。陽極34は、透明性導電材料としてITOを用いて、開口領域から延びてドレイン電極42の一部と重畳するように形成されている。
【0069】
開口領域において、第1及び第2バンク層46及び47より露出した陽極34の表面上には有機EL層50が形成される。有機EL層50は、その具体的な構成については図示を省略するが、例えば、発光層、或いは発光層に加えて正孔注入層又は正孔輸送層等を含む。
【0070】
また、陰極49が、各画素部70において、陽極34との間で有機EL層50を挟持するように、例えばアルミニウム(Al)を含む金属材料等により形成される。より具体的には、陰極49は、陽極34と対向配置され、典型的には、基板10上において、有機EL層50よりも上層側に、画像表示領域110の概ね全体にベタ一面に、即ちベタ状に、形成されるか、これに限らず、ストライプ状或いは島状、セグメント状のパターンとして形成されてもよい。
【0071】
有機EL素子72は、陽極34及び陰極49と、陽極34及び陰極49間に挟持される有機EL層50を含む。尚、図3には、基板10と対向して配置される、封止基板について、図示を省略してある。
【0072】
有機EL装置の駆動時、走査線112を介して走査信号が供給されることにより、スイッチング用トランジスタ76がオン状態になる。スイッチング用トランジスタ76がオン状態となると、データ線114より画像信号が保持容量78に書き込まれる。この保持容量78に書き込まれた画像信号の電流に応じて、駆動用トランジスタ74の電気的な導通状態が決まる。そして、駆動用トランジスタ74のチャネルを介して電源供給線117より、保持容量78に書き込まれた画像信号に応じた電流が有機EL素子72の陽極34に供給されると、供給された電流に応じて有機EL層50における発光層が発光する。本実施形態では、図3中、矢印Xで示すように、有機EL素子72からの発光を基板10側から表示光として出射させるボトムエミッション型として、有機EL装置は構成されている。尚、本実施形態では、有機EL装置を封止基板側から表示光として有機EL素子72の発光を出射させるトップエミッション型として構成してもよい。
【0073】
本実施形態では、上述したように、抵抗体80において、基板10上に平面的に見て有機EL素子72に重畳する一部が透明性導電膜により形成されることにより、このような抵抗体80の一部を開口領域に配置したとしても、有機EL素子72からの発光を遮ることは無い。よって、抵抗体80の設置によって、開口率が低下するのを防止することができる。
【0074】
<1−3:有機EL素子の温度制御>
次に、有機EL装置における温度制御について、図1から図3に加えて、図4を参照して説明する。図4は、有機EL素子の温度制御における抵抗体の動作について説明するための図である。
【0075】
図4における上図に、R用、G用、及びB用の3種の画素部70R、70G、及び70Bにおける、有機EL素子72R、72G、及び72Bと、有機EL素子72R、72G、及び72Bに対して配置されたR用、G用、及びB用抵抗体80R、80G、及び80Bとの配置関係について示してある。尚、図4において、抵抗体へ通電するための通電用配線等については図示を省略してある。
【0076】
図2及び図3を参照して説明したように、R用の画素部70Rにおいては、基板10上に平面的に見て、有機EL素子72Rと重畳するように、R用抵抗体80Rが配置されている。また、G用抵抗体80R及びB用抵抗体80Bについても夫々、R用抵抗体80Rと同様に、G用及びB用の画素部70G及び70Bの各々に配置される。
【0077】
有機EL装置の駆動時、3種の画素部70R、70G、及び70Bでは夫々、有機EL素子72R、72G、及び72Bの各々が発光することにより、印加電流に応じた輝度が得られる。また、有機EL素子72R、72G、及び72Bの各々の発光に伴う温度変化は、印加電流によって所定範囲内となるように制御される。
【0078】
ここで、3種の画素部70R、70G、及び70Bにおいて夫々、有機EL素子72R、72G、及び72Bの各々の駆動条件の相違に基づいて、有機EL素子72R、72G、及び72Bの各々の温度変化も異なり、有機EL素子72R、72G、及び72Bの各々で温度差が生じることがある。また、有機EL素子72R、72G、及び72Bの各々の発光に伴う温度変化は、3種の画素部70R、70G、及び70Bの各々の、基板10上の位置によって異なることがある。例えば、基板10上において、有機EL素子72R、72G、及び72Bの発光により生じた熱が集中する箇所が生じ、該箇所に配置された画素部では顕著に有機EL素子の温度が上昇する。尚、このような有機EL素子72の温度分布のばらつきは、基板10上における画素部の配置密度によって異なるほか、これに加えて、更に基板10のサイズによっても異なってくる。
【0079】
そして、有機EL素子72R、72G、及び72Bの各々の発光に伴い、有機EL素子72R、72G、及び72Bの各々の温度が、印加電流によって規定される範囲外の値となることがあり、このような温度変化に起因して輝度も変化する。
【0080】
本実施形態では、図4における下図に示されるように、例えば、外部回路200によって供給される制御信号CR、CG、及びCBに基づいて、R用、G用、及びB用抵抗体80R、80G、及び80Bを夫々動作させる。そして、R用、G用、及びB用抵抗体80R、80G、及び80Bの各々の抵抗を変化させるのに加えて若しくは代えて、制御信号CR、CG、及びCBに基づいて、R用、G用、及びB用抵抗体80R、80G、及び80Bの各々の電流や動作時間を変化させる。これにより、R用、G用、及びB用抵抗体80R、80G、及び80Bによって、3種の画素部70R、70G、及び70Bにおいて夫々、有機EL素子72R、72G、及び72Bの各々の温度が均一となるように制御する。
【0081】
以下では、3種の画素部70R、70G、及び70Bの各々を区別をしないで単に画素部70とし、有機EL素子72R、72G、及び72Bの各々の区別をしないで有機EL素子72とし、及びR用、G用、及びB用抵抗体80R、80G、及び80Bの各々の区別をしないで単に抵抗体80として、説明する。
【0082】
各画素部70では、抵抗体80は、動作することにより、その抵抗値や電流或いは動作時間によって規定される熱量で発熱する。即ち、抵抗体80における制御温度は、その抵抗値や電流或いは動作時間によって規定される。ここで、例えば、抵抗体80における制御温度は、予め、有機EL装置を実験的に駆動させて、各画素部70における有機EL素子72の温度を測定することにより、決定される。そして、抵抗体80における制御温度について、有機EL装置の実験的な駆動において、良好な再現性が得られれば、特に抵抗体80の制御温度を測定する、例えば温度センサーを設置する必要は無い。
【0083】
図3中、抵抗体80と有機EL素子72とを層間絶縁する3種の絶縁膜2、41、及び45を介する、抵抗体80から有機EL素子72への熱伝導により、有機EL素子72は加熱される。これにより、抵抗体80によって、各画素部70の有機EL素子72の温度を高くすることにより、有機EL素子72の温度制御が行われる。
【0084】
図3において、例えば基板10に対して垂直方向の、有機EL素子72と抵抗体80とを隔てる3種の絶縁膜2、41、及び45の厚さd1は、例えば1μm程度であり、基板10の垂直方向の厚さd0よりも極めて薄い。よって、基板10において、有機EL素子72が形成された側と反対側に抵抗体80を設置して、基板10を介する熱伝導により有機EL素子72の温度制御を行う構成と比較して、基板10上において、有機EL素子72に、抵抗体80をより接近させて配置することができる。
【0085】
通常、有機EL装置の駆動時、各画素部70では、有機EL素子72の温度は70℃程度となる。例えば、基板10を介する熱伝導により有機EL素子72の温度制御を行う場合、特に基板10が、ガラスのように、比較的熱伝導率の低い材料から形成される場合には、抵抗体80における制御温度と、有機EL素子72の温度との温度差は10℃程度となることもある。
【0086】
これに対して本実施形態では、抵抗体80からの有機EL素子72に対する熱伝導の効率を向上させることが可能となり、抵抗体80における制御温度と、有機EL素子72の温度との間の温度差を小さくすることができる。特に、図2及び図3を参照して説明したように、基板10上に平面的に見て、有機EL素子72において、抵抗体80と重畳する領域がより広くなるように、抵抗体80を有機EL素子72に対して配置させることにより、より効率良く、抵抗体80から有機EL素子72への熱伝導を行うことが可能となる。
【0087】
本実施形態では、このような有機EL素子72の温度制御は、例えば、抵抗体80によって、有機EL素子72の温度を、常に所定値とするか、或いはこれに加えて若しくは代えて所定値だけ高くするようにして、行われる。更に、このような絶対的な温度制御に加えて若しくは代えて、各画素部70において、相対的に有機EL素子72の温度が均一となるように温度制御を行うようにしてもよい。この場合、抵抗体80は、複数の画素部70において、有機EL素子72の温度の高い画素部70を基準として、他の画素部70における有機EL素子72の温度を高くすることにより温度制御を行う。これにより、各画素部70において、有機EL素子72の温度について、画素部70の配置や駆動条件に適した温度制御を行うことが可能となる。
【0088】
よって、以上説明したような本実施形態では、有機EL装置の駆動時、各画素部70における有機EL素子72の温度制御を精度良く行うことができる。従って、各画素部70における有機EL素子72の温度を均一にすることが可能となり、各画素部70における有機EL素子72の温度の相違に基づく、有機EL素子72の輝度や劣化等の有機EL素子72の発光特性の相違を是正することができる。従って、各画素部70において、有機EL素子72の発光特性を均一化させることができる。その結果、本実施形態では、有機EL装置において高品質な表示を行うことが可能となる。
【0089】
尚、以上説明した本実施形態では、本発明に係る「温度制御部」として、抵抗体80のような加熱手段に加えて若しくは代えて冷却手段を設けるようにしてもよい。この場合、各画素部70では、温度制御部からの熱伝導により有機EL素子72の温度を低くすることにより、温度制御が行われる。この際、温度制御部は、有機EL素子72の温度が、常に所定値となるように、或いはこれに加えて若しくは代えて所定値だけ低くなるように、温度制御を行う。或いは、温度制御部は、各画素部70で相対的に有機EL素子72の温度が均一となるように、有機EL素子72の温度の低い画素部70を基準として、他の画素部70における有機EL素子72の温度を低くすることにより、温度制御を行う。
【0090】
<1−4:変形例>
次に、以上説明した本実施形態の変形例について、図5及び図6を参照して説明する。
【0091】
先ず、図5(a)及び図5(b)を参照して、本変形例の一の構成について説明する。図5(a)は、本変形例の一の構成について、画素部における、有機EL素子と抵抗体との配置関係について示した図であって、図5(b)は、本変形例の一の構成について、図3に対応する部分における断面の構成を示す断面図である。
【0092】
図5(b)に示されるように、各画素部70において、抵抗体80は、基板10上において、保護層45より上層側に、配置されて形成されてもよい。この場合、図5(a)に示されるように、抵抗体80は、例えば、基板10上に平面的に見て、有機EL素子72の外周に沿うリング状のパターンとして形成されると共に、有機EL素子72と電気的に絶縁されて形成される。このように構成すれば、有機EL装置の製造に係る工程数を削減することが可能となり、製造コストを削減することができる。特に、このような構成を採れば、抵抗体80を透明材料から形成するという制約が外れるので、材料選択の自由度が増大する。
【0093】
尚、図5の変形例では、リング状の抵抗体80を保護層45より上層側に配置したが、リング状の抵抗体を第1実施形態の場合と同様に、有機EL素子72の下層側に配置することも可能である。この場合にも、抵抗体80を透明材料から形成するという制約はなくなる。
【0094】
次に、図6を参照して、本変形例の他の構成について説明する。図6は、本変形例の他の構成について、有機EL素子と抵抗体との配置関係について示した図である。
【0095】
本変形例では、抵抗体80は、基板10上の画像表示領域110に形成された複数の画素部70のうち、所定数の画素部70毎に形成されてもよい。例えば、図6に示すように、抵抗体80は、基板10上に平面的に見て、R用、G用、及びB用の3種の画素部70R、70G、及び70B毎に、これら3種の画素部70R、70G、及び70Bに共通のパターンとして形成されてもよい。或いは、抵抗体80の構成はこれに限らず、例えば、図1において、各走査線112或いは各データ線114に沿って設けられた画素部70毎に、これらの画素部70に共通のパターンとして形成されてもよい。このように構成すれば、より容易に、抵抗体80を形成することが可能となる。
【0096】
<2:第2実施形態>
本発明の発光装置に係る第2実施形態について、図7を参照して説明する。第2実施形態は、第1実施形態と比較して、温度制御用スイッチング素子を備える点が異なっている。よって、第1実施形態と異なる点についてのみ、図7を参照して説明し、第1実施形態と同様の構成については、図1から図6を参照して説明すると共に重複する説明を省略することもある。
【0097】
図7は、第2実施形態における画素部の構成について、図3に対応する部分における断面の構成を示す断面図である。
【0098】
図7において、例えば、基板10上において、駆動用トランジスタ74やスイッチング用トランジスタ76と同一層に配置されて、画素部70毎に、温度制御用スイッチング素子300が例えばTFTにより形成されている。より具体的には、基板10上において、温度制御用スイッチング素子300の半導体層303は、例えば半導体層3と同一の材料により、この半導体層3と同一層に形成されると共に、駆動用トランジスタ74等のゲート絶縁層2が、温度制御用スイッチング素子300の半導体層303上に延在させて形成されている。そして、このゲート絶縁層2上に、温度制御用スイッチング素子300のゲート電極303aが形成される。
【0099】
また、基板10上において、抵抗体80は、画素部70毎に配置され、層間絶縁層41上に形成されている。また、層間絶縁層41上には、抵抗体80に加えて温度制御用スイッチング素子300のソース電極342が形成されている。層間絶縁層41には、該層間絶縁層41及びゲート絶縁層2を貫通して温度制御用スイッチング素子300の半導体層303の表面に至るコンタクトホール511及び512が開孔されている。そして、このコンタクトホール511及び512内において夫々、半導体層303の表面からコンタクトホール511及び512の各々の内壁に連続的に、ソース電極342及び抵抗体80の各々を形成する導電膜が形成されている。尚、ソース電極342及び抵抗体80は夫々同一の導電材料により形成されてもよいし、異なる導電材料により形成されてもよい。
【0100】
そして、第2実施形態では、例えば、外部回路より、温度制御用スイッチング素子300のソース電極342及びゲート電極303aを夫々駆動するための制御信号が供給される。そして、温度制御用スイッチング素子300は、ソース電極342及びゲート電極303aが駆動されることによって、抵抗体80の電流や動作時間を制御する。即ち、抵抗体80は、温度制御用スイッチング素子300によって、その電流が制御されると共に、温度制御用スイッチング素子300がオン状態となるタイミング又はオフ状態となるタイミングに基づいて、その動作時間が制御される。
【0101】
よって、第2実施形態では、有機EL装置の駆動時、各画素部70における有機EL素子72の温度制御をより精度良く行うことが可能となる。
【0102】
尚、以上説明した第2実施形態では、駆動用トランジスタ74及びスイッチング用トランジスタ76のうちいずれか一方若しくは両方が、温度制御用スイッチング素子を兼ねるように構成されてもよい。この場合、抵抗体80は、駆動用トランジスタ74及びスイッチング用トランジスタ76のうちいずれか一方若しくは両方のドレイン側に電気的に接続される。よって、このように構成すれば、画素部70における回路素子や配線の数を低減することが可能となる。従って、有機EL装置の製造プロセスを簡易化し、製造コストを削減することができる。
【0103】
また、温度制御用スイッチング素子300は、基板10上における複数の画素部70のうち、所定数の画素部70毎に、これらの画素部70に共通に形成されてもよい。この場合、例えば、温度制御用スイッチング素子300は、複数の画素部70のうち、所定数の画素部70毎に、これらの画素部70に夫々形成された抵抗体80に、そのドレイン側が電気的に接続される。
【0104】
<4:電子機器>
次に、上述した、第1又は第2実施形態に係る有機EL装置が各種の電子機器に適用される場合について説明する。
【0105】
<4−1:モバイル型コンピュータ>
先ず、この有機EL装置を、モバイル型のパーソナルコンピュータに適用した例について説明する。図8は、このパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。図において、コンピュータ1200は、キーボード1202を備えた本体部1204と、有機EL装置を用いて構成された表示ユニット1206とを備えている。
【0106】
<4−2;携帯電話>
さらに、この有機EL装置を、携帯電話に適用した例について説明する。図9は、この携帯電話の構成を示す斜視図である。図において、携帯電話1300は、複数の操作ボタン1302とともに有機EL装置を備えるものである。
【0107】
この他にも、有機EL装置は、ノート型のパーソナルコンピュータ、PDA、テレビ、ビューファインダ、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、POS端末、タッチパネルなど、更には有機EL装置を露光用ヘッドとして用いたプリンタ、コピー、ファクシミリ等の画像形成装置などの装置等に適用することができる。
【0108】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う発光装置及び該発光装置を備えた各種電子機器もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】第1実施形態に係る有機EL装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】任意の画素部の平面図である。
【図3】図2に示す画素部のA−A'断面図である。
【図4】有機EL素子の温度制御における抵抗体の動作について説明するための図である。
【図5】図5(a)は、変形例の一の構成について、画素部における有機EL素子と抵抗体との配置関係について示した図であって、図5(b)は、本変形例の一の構成について、図3に対応する部分における断面の構成を示す断面図である。
【図6】変形例の他の構成について、有機EL素子と抵抗体との配置関係について示した図である。
【図7】第2実施形態における画素部の構成について、図3に対応する部分における断面の構成を示す断面図である。
【図8】電気光学装置を適用した電子機器の一例たるパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図9】電気光学装置を適用した電子機器の一例たる携帯電話の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0110】
10…基板、70…画素部、72…有機EL素子、80…温度制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に、所定パターンで配列され、発光素子を夫々含む複数の画素部と、
前記基板上における前記発光素子が形成された側に設けられ、前記基板上で平面的に見て前記発光素子に夫々少なくとも部分的に重なるように又は前記発光素子を夫々少なくとも部分的に囲むように配置された発熱体を含み、該発熱体に対する通電を行うことで前記発光素子の温度制御を行う温度制御部と
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記温度制御部は、前記通電をスイッチング制御する温度制御用スイッチング素子を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記温度制御部は、前記発光素子の温度が、前記温度制御を行わない場合と比較して前記複数の画素部間で均一に近付くように温度制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記温度制御部は、前記画素部毎に前記温度制御を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記複数の画素部は、赤、緑、及び青の各々に相当する光を発光する3種類の前記発光素子を含み、
前記温度制御部は、前記3種類の発光素子について、相互間の温度差を縮めるように前記温度制御を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記温度制御部は、前記基板上において、前記発光素子より下層側に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記温度制御部は、前記基板上において、前記発光素子と同一の層に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記温度制御部は、前記通電を行うことで前記発光素子を加熱することにより前記温度制御を行うことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記発熱体は、前記基板上に積層された薄膜状の抵抗体を有することを特徴とする請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記抵抗体は、少なくとも部分的に透明性導電膜により形成されていることを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記画素部は、前記発光素子への通電をスイッチング制御すると共に、前記温度制御用スイッチング素子を兼ねる画素スイッチング素子を更に含むこと
を特徴とする請求項2から10のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記画素部は、前記発光素子として有機EL素子を含むことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の発光装置を具備することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−81094(P2007−81094A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266564(P2005−266564)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】