説明

発光装置

【課題】 白色発光素子から出射された光の利用効率を向上可能な発光装置を提供すること。
【解決手段】 有機EL装置1において、各画素100(R)、(G)、(B)は、白色発光素子10と各色のカラーフィルタ19(R)、(G)、(B)とを備えており、白色発光素子10は、発光スペクトルにおいて500nm±5nmの波長域内に第1の極小値B1をもち、400nmから500nmの波長域内、および500nmから600nmの波長域内に第2の発光ピークA2をもつ光を出射する。このようなスペクトルは、色度測定に用いられるXYZフィルタの透過特性を加算したときのスペクトルに沿っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色発光素子と各色のカラーフィルタとを組み合わせた発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、パーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistants)などの電子機器に使用される表示装置や、デジタル複写機やプリンタなどの画像形成装置における露光用ヘッドとして、有機エレクトロルミネッセンス(EL/Electroluminescence)装置などの発光装置が注目されている。
【0003】
この種の発光装置を構成するにあたって、複数の画素の各々に各色に対応する光を出射する発光素子を構成したものの他、近年、白色発光素子と各色のカラーフィルタとを組み合わせた発光装置が提案されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【特許文献1】特開平8−162269号公報
【特許文献2】特開2004−220871号公報
【特許文献3】特開2004−227854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献のいずれにおいても、白色発光素子から出射される光の発光スペクトルや、カラーフィルタを透過した後のスペクトルに関して色純度の向上などを図ることについては検討がなされているが、白色発光素子から出射された光の利用効率に関しての配慮がなされていないため、カラーフィルタでカットされる光量が大きく、光の利用効率が低いという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、白色発光素子から出射された光の利用効率を向上可能な発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、白色発光素子と赤色用カラーフィルタとを備えた赤色の画素、白色発光素子と緑色用カラーフィルタとを備えた緑色の画素、および白色発光素子と青色用カラーフィルタとを備えた青色の画素を備えた発光装置において、前記白色発光素子は、発光スペクトルにおいて500nm±5nmの波長域内に第1の極小値をもつ光を出射することを特徴とする。
【0007】
本発明において、白色発光素子は、発光スペクトルにおいて500nm±5nmの波長域内に第1の極小値をもっており、このような波長域の極小値は、色度測定に用いられるXYZフィルタの透過特性を加算したときのスペクトルやカラーフィルタの透過特性からみて、3原色による表色に寄与しない光である。従って、無駄な発光を抑えた分、白色発光素子から出射された光の利用効率を高めることができる。また、発光スペクトルにおいて500nm±5nmの波長域内に第1の極小値をもっているため、青色光の長波長側における裾引きが少ない分、色度y値が小さく、色度の向上を図ることができる。
【0008】
本発明の別の形態では、白色発光素子と赤色用カラーフィルタとを備えた赤色の画素、白色発光素子と緑色用カラーフィルタとを備えた緑色の画素、および白色発光素子と青色用カラーフィルタとを備えた青色の画素を備えた発光装置において、前記白色発光素子は、発光スペクトルにおいて580nm±5nmの波長域内に第2の極小値をもつ光を出射することを特徴とする。
【0009】
本発明において、白色発光素子は、発光スペクトルにおいて580nm±5nmの波長域内に第2の極小値をもっており、このような波長域の極小値は、カラーフィルタの透過特性からみて、3原色による表色に寄与しない光である。従って、無駄な発光を抑えた分、白色発光素子から出射された光の利用効率を高めることができる。
【0010】
本発明では、前記白色発光素子は、発光スペクトルにおいて500nm±5nmの波長域内に第1の極小値をもち、かつ、580nm±5nmの波長域内に第2の極小値をもつ光を出射することが好ましい。
【0011】
本発明において、前記白色発光素子は、発光スペクトルにおいて400nmから500nmの波長域内に第1の発光ピークをもつ光を出射することが好ましい。
【0012】
本発明において、前記白色発光素子は、発光スペクトルにおいて400nmから500nmの波長域内に第2の発光ピークをもつ光を出射することが好ましい。
【0013】
本発明において、前記白色発光素子は、発光スペクトルにおいて400nmから500nmの波長域内、500nmから600nmの波長域内、および600nm以上の波長域の各々に第1の発光ピーク、第2の発光ピークおよび第3の発光ピークをもつ光を出射し、前記第2の発光ピークの波長と前記緑色用カラーフィルタの透過極大波長との差が±5nm以内である構成を採用してもよい。
【0014】
本発明を適用した発光装置は、携帯電話機、パーソナルコンピュータやPDAなどの電子機器において表示装置として用いられる。また、本発明を適用した発光装置は、デジタル複写機やプリンタなどの画像形成装置における露光用ヘッドとして用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明に用いた各図では、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を相違させてある。
【0016】
[実施の形態1]
(画素構成)
図1(a)、(b)は、本発明を適用した有機EL装置(発光装置)の各画素の構成を模式的に示す説明図である。
【0017】
図1(a)に示す有機EL装置1は、基板11側に向けて表示光を出射するボトムエミッション型であり、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれの画素100(R)、(G)、(B)にも白色有機EL素子10が形成されているとともに、白色有機EL素子10からみて光の出射側、例えば、基板11と白色有機EL素子10との間には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色に対応するカラーフィルタ19(R)、(G)、(B)が形成されている。白色有機EL素子10は、ITOなどからなる光透過性の第1の電極12(陽極)、正孔注入層13、発光層14、アルミニウムなどといった光反射性を備えた第2の電極15(陰極)がこの順に積層されている。
【0018】
このような有機EL表示装置1において、有機EL素子10では、正孔注入層13および発光層14を通じて第2の電極15に電流が流れると、そのときの電流量に応じて発光層14が発光する。そして、発光層14から出射された光は、第1の電極12および基板11を透過して、観測者側に出射される一方、発光層14から第2の電極15に向けて出射された光は、第2の電極15によって反射され、第1の電極12、カラーフィルタ、基板11を透過して観測者側に出射される。その際、発光層14から出射された光は白色光であるが、カラーフィルタ19(R)、(G)、(B)によって着色されるので、各画素100(R)、(G)、(B)からは所定の色光を出射することができる。なお、カラーフィルタ19(R)、(G)、(B)は、基板11からみて白色有機EL素子10とは反対側に形成してもよい。
【0019】
図1(b)に示す有機EL装置1は、基板11側とは反対側に向けて表示光を出射するトップエミッション型であり、図1(a)に示す有機EL装置1と同様、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれの画素100(R)、(G)、(B)にも白色有機EL素子10が形成されている。但し、本形態では、白色有機EL素子10からみて光の出射側、例えば、白色有機EL素子10からみて基板11とは反対側に、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色に対応するカラーフィルタ19(R)、(G)、(B)が形成されている。白色有機EL素子10は、基板11の上層側に、銀やアルミニウムなどといった光反射層16、ITOなどからなる透明な第1の電極12(陽極)、正孔注入層13、発光層14、薄いアルミニウムなどといった電極層が形成された光透過性の第2の電極17(陰極)がこの順に積層された構成を有する。ここで、基板11は、光透過性あるいは光透過性のいずれの基板を用いることもできる。このように構成した有機EL表示装置1では、第1の電極12から正孔注入層13および発光層14を通じて第2の電極15に電流が流れると、そのときの電流量に応じて発光層14が発光する。そして、発光層14が出射された光は第2の電極17を透過して、観測者側に出射される一方、発光層14から基板20に向けて出射された光は、第1の電極12の下層に形成された光反射層16によって反射され、第2の電極17を透過して観測者側に出射される。その際、発光層14から出射された光は白色光であるが、カラーフィルタ19(R)、(G)、(B)によって着色されるので、各画素100(R)、(G)、(B)からは所定の色光を出射することができる。
【0020】
このように構成した有機EL装置1において、正孔注入層13や発光層14については、蒸着法、スピンコート法や印刷法、インクジェット法(液体吐出法)などにより形成できる。ホワイト発光層はRGB夫々の画素にも共通して製膜できるため、必ずしも各画素毎にパターニングする必要が無いため、発光領域全面に正孔注入層、発光層、電子注入層を形成しても問題無い。
【0021】
この場合、正孔注入層13は、例えば、m−MTDATA、TPD,銅フタロシアニンなどの低分子系正孔注入材料を蒸着法で製膜してもよいし、ポリオレフィン誘導体である3、4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)を正孔注入材料として用い、これを水/アルコールを主溶媒として分散させてなる分散液を所定領域に吐出した後、乾燥させることにより形成できる。また、正孔注入層13を形成するための材料としては、前記のものに限定されることなく、低分子系で良く知られるものや、トリフェニルアミンの重合体等を用いることもできる。
【0022】
また、発光層14を形成する材料についても、低分子系では、通常良く知られた材料、例えば出光興産(株)製DPVBi(青発光材料)、Alq3(緑発光材料)、黄色を発光させる場合にはキナクリドン、クマリン6などをドーピングして用いることができ、赤を発光させる場合にはナイルレッドを蒸着時にドーピングすればよい。印刷法やインクジェット法を用いる場合には高分子材料、例えば分子量が1000以上の高分子材料が用いることができる。具体的には、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、またはこれらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、例えばルブレン、ペリレン、9、10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープしたものが用いられる。なお、このような高分子材料としては、二重結合のπ電子がポリマー鎖上で非極在化しているπ共役系高分子材料が、導電性高分子でもあることから発光性能に優れるため、好適に用いられる。特に、その分子内にフルオレン骨格を有する化合物、すなわちポリフルオレン系化合物がより好適に用いられる。また、このような材料以外にも、例えば特開平11−40358号公報に示される有機EL素子用組成物、すなわち共役系高分子有機化合物の前駆体と、発光特性を変化させるための少なくとも1種の蛍光色素とを含んでなる有機EL素子用組成物も、発光層形成材料として使用可能である。低分子材料を用いる場合、電子注入層を挿入した方が良く、Alq3などが好適に用いられる。
【0023】
なお、白色有機EL素子10を構成するにあたっては、正孔輸送層や電子注入層、電子輸送層などが形成される場合もある。
【0024】
(白色有機EL素子10の構成)
本形態の白色有機EL素子10の構成を説明する前に、図2(a)、(b)、(c)、(d)を参照して白色有機EL素子10に求められる特性を説明する。
【0025】
図2(a)、(b)、(c)、(d)は、色度測定に用いられるXフィルタの透過特性を示す説明図、色度測定に用いられるYフィルタの透過特性を示す説明図、色度測定に用いられるZフィルタの透過特性を示す説明図、およびこれらのカラーフィルタのスペクトルを加算したときのスペクトル図である。図3は、本発明の実施の形態1に係る発光装置に用いた白色有機EL素子から出射される光のスペクトル図、および各カラーフィルタ19(R)、(G)、(B)を透過した後のスペクトル図である。
【0026】
色度測定に用いられるXYZフィルタは各々、図2(a)、(b)、(c)に示す感度特性を有していることから、図2(d)に示す感度特性を有する光を白色有機EL素子10が出射すれば、人間の目には十分な画質が得られることになる。ここで、図2(d)に示す感度特性では、500nm±5nmの波長域内に第1の極小値B1がある。また、400nmから500nmの波長域内に第1の発光ピークA1が存在し、500nmから600nmの波長域内に第2の発光ピークA2が存在している。
【0027】
そこで、本形態では、白色有機EL素子10については、図3に実線Lで示す発光スペクトルを有するように構成してある。すなわち、図2(d)に示すスペクトルと同様、白色発光素子10は、発光スペクトルにおいて500nm±5nmの波長域内に第1の極小値B1をもつ光を出射する。また、白色発光素子10は、発光スペクトルにおいて400nmから500nmの波長域内に第1の発光ピークA1をもち、500nmから600nmの波長域内に第2の発光ピークA2をもつ光を出射する。
【0028】
なお、図3には、白色発光素子10から出射された光が赤色(R)のカラーフィルタ19(R)を透過した後のスペクトルを点線LRで示し、白色発光素子10から出射された光が緑色(G)のカラーフィルタ19(G)を透過した後のスペクトルを一点鎖線LGで示し、白色発光素子10から出射された光が青色(B)のカラーフィルタ19(B)を透過した後のスペクトルを二点鎖LBで示してある。
【0029】
(本形態の効果)
以上説明したように、本形態では、白色有機EL素子10は、色度測定に用いられるXYZフィルタの各スペクトルを加算したときのスペクトルと同様な発光スペクトルの光を出射するため、人間の視覚を考慮した場合には、白色光を出射するとみなすことができる。それ故、波長分散をもたないフラット光源を用いた場合との比較結果を表1に示すように、取り出し効率については、フラット光源を用いた方が高いが、本形態の有機EL装置でも十分に高い取り出し効率を得ることができる。なお、表1には、白色有機EL素子10から出射された光のスペクトルに各カラーフィルタ19(R)、(G)、(B)の透過特性を乗じて、各色の光を取り出した場合の色度、輝度比、NTSC比(National Television Standard Committeeで定めた色再現範囲を面積の比率で示した値)を示してある。
【0030】
【表1】

【0031】
また、本形態の有機EL装置では、500nm±5nmの波長域内に第1の極小値B1をもつ光を出射するため、青色光の長波長側における裾引きが少ない分、色度y値が小さく、色度の向上を図ることができている。
【0032】
また、本形態では、人間の視覚を考慮した場合に必要としない500nm±5nmの波長域内に第1の極小値B1をもつ光を出射するため、発光が無駄にならず、白色発光素子から出射された光の利用効率が高い。
【0033】
なお、短波長側(例えば450nm)と、長波長側(例えば580nm)のピークの波高値については、白色有機EL素子10から出射されるスペクトルと、各カラーフィルタ19(R)、(G)、(B)の透過率とを乗じた値(各色における取出しスペクトル)から計算される色度および輝度においてホワイトバランスがとれるように調整すればよい。あるいは、白色有機EL素子10に対する駆動条件を各画素100(R)、(G)、(B)において最適化することにより、ホワイトバランスを確保してもよい。また、図示したELスペクトルを実現するためには、青色発光材料に、適量の赤色発光のドーパントを添加する方法や、青発光層と黄色発光層を積層しても良い。低分子蒸着法では、青色材料蒸着時に、別の蒸着源からドーパントを蒸着する方法や青発光層と黄色発光層を積層する方法でも良いし、高分子材料を用いる場合には、青色発光材料と赤色発光材料、または青色発光材料+赤色ドーパントのインクを作成して、印刷法やスピンコート法、またはインクジェット法で形成できる。
【0034】
[実施の形態2]
図4は、本発明の実施の形態2に係る発光装置に用いた白色有機EL素子から出射される光のスペクトル図、および各カラーフィルタ19(R)、(G)、(B)を透過した後のスペクトル図である。なお、本形態の発光装置の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する機能を有する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0035】
本形態の有機EL装置も、図1(a)、(b)を参照して説明したように、白色発光素子10と赤色用のカラーフィルタ19(R)とを備えた赤色の画素100(R)、白色発光素子10と緑色用カラーフィルタ19(G)とを備えた緑色の画素100(G)、および白色発光素子10と青色用カラーフィルタ19(B)とを備えた青色の画素100(B)を備えている。
【0036】
本形態の白色有機EL素子10については、図4に実線Lで示す発光スペクトルを有するように構成してあり、図2(d)に示すスペクトルと同様、白色発光素子10は、発光スペクトルにおいて500nm±5nmの波長域内に第1の極小値B1をもつ光を出射する。また、白色発光素子10は、発光スペクトルにおいて400nmから500nmの波長域内に第1の発光ピークA1をもち、500nmから600nmの波長域内に第2の発光ピークA2をもつ光を出射する。
【0037】
さらに、白色発光素子10から出射される光の発光スペクトルにおいては、580nm±5nmの波長域内に第2の極小値B2が存在し、600nm以上の波長域に第3の発光ピークA3が存在する。
【0038】
ここで、図4には、白色発光素子10から出射された光が赤色(R)のカラーフィルタ19(R)を透過した後のスペクトルを点線LRで示し、白色発光素子10から出射された光が緑色(G)のカラーフィルタ19(G)を透過した後のスペクトルを一点鎖線LGで示し、白色発光素子10から出射された光が青色(B)のカラーフィルタ19(B)を透過した後のスペクトルを二点鎖LBで示してあり、第2の発光ピークA2の波長と緑色用のカラーフィルタ19(G)の透過極大波長との差が±5nm以内である。
【0039】
このように構成した有機EL装置1では、波長分散をもたないフラット光源を用いた場合との比較結果を表2に示すように、取り出し効率については、フラット光源を用いた方が高いが、本形態の有機EL装置1でも十分に高い取り出し効率を得ることができる。
【0040】
【表2】

【0041】
また、本形態の有機EL装置では、500nm±5nmの波長域内に第1の極小値B1をもつ光を出射するため、青色光の長波長側における裾引きが少ない分、色度y値が小さく、色度の向上を図ることができている。
【0042】
さらに、本形態では、人間の視覚を考慮した場合に必要としない500nm±5nmの波長域内に第1の極小値B1をもつ光を出射するため、発光が無駄にならず、白色発光素子10から出射された光の利用効率が高い。
【0043】
さらにまた、本形態では、赤色用のカラーフィルタ19(R)と緑色用カラーフィルタ19(G)の透過特性からみて無駄になる580nm±5nmの波長域内に第2の極小値B2が存在するため、その分、白色発光素子10から出射された光の利用効率が高い。
【0044】
図示したELスペクトルを実現するためには、青色発光材料に、適量の緑色および赤色発光のドーパントを添加するか、低分子の蒸着法による場合は、青と緑と赤の発光層を積み重ねる、またはドーピング法と積層法の組み合わせでも良い。低分子蒸着法では、青色材料蒸着時に、別の蒸着源から緑発光と赤発光のドーパントを蒸着する方法や、青、緑、赤発光材料からなる層を夫々蒸着して積層すればよいし、高分子材料を用いる場合には、青色発光材料と緑色発光材料と赤色発光材料、または青色発光材料+緑色ドーパント+赤色ドーパント、或いはこれらの組み合わせのインクを作成して、印刷法やスピンコート法、またはインクジェット法で形成できる。
【0045】
(表示装置への適用例)
本発明を適用した有機EL装置1は、パッシブマトリクス型表示装置あるいはアクティブマトリクス型表示装置として用いることができる。これらの表示装置のうち、アクティブマトリクス型表示装置は、図5に示す電気的構成をもつように構成される。
【0046】
図5は、有機EL表示装置の電気的構成を示すブロック図である。図1において、有機EL装置1では、複数の走査線63と、この走査線63の延設方向に対して交差する方向に延設された複数のデータ線64と、これらのデータ線64に並列する複数の共通給電線65と、データ線64と走査線63との交差点に対応する画素100(発光領域)とが構成され、画素100は、画像表示領域にマトリクス状に配置されている。データ線64に対しては、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、アナログスイッチを備えるデータ線駆動回路51が構成されている。走査線63に対しては、シフトレジスタおよびレベルシフタを備える走査線駆動回路54が構成されている。また、画素100の各々には、走査線63を介して走査信号がゲート電極に供給される画素スイチング用の薄膜トランジスタ6と、この薄膜トランジスタ6を介してデータ線64から供給される画像信号を保持する保持容量33と、この保持容量33によって保持された画像信号がゲート電極43に供給される電流制御用の薄膜トランジスタ7と、薄膜トランジスタ7を介して共通給電線65に電気的に接続したときに共通給電線65から駆動電流が流れ込む白色有機EL素子10が構成されている。また、有機EL表示装置1では、各画素100にいずれのカラーフィルタ19(R)、(G)、(B)を構成するかによって、各画素100が赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれかに対応することになる。
【0047】
[その他の実施の形態]
上記形態では、発光素子として有機EL素子を用いたが、その他の発光素子を用いた発光装置に本発明を適用してもよい。いずれの場合も、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0048】
[電子機器への搭載例]
本発明を適用した発光装置は、携帯電話機、パーソナルコンピュータやPDAなど、様々な電子機器において表示装置として用いることができる。また、本発明を適用した発光装置は、デジタル複写機やプリンタなどの画像形成装置における露光用ヘッドとして用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】(a)、(b)は、本発明を適用した有機EL装置(発光装置)の各画素の構成を模式的に示す説明図である。
【図2】(a)、(b)、(c)、(d)は、色度測定に用いられるXフィルタの透過特性を示す説明図、色度測定に用いられるYフィルタの透過特性を示す説明図、色度測定に用いられるZフィルタの透過特性を示す説明図、およびこれらのカラーフィルタのスペクトルを加算したときのスペクトル図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る発光装置に用いた白色有機EL素子から出射される光のスペクトル図、および各カラーフィルタを透過した後のスペクトル図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る発光装置に用いた白色有機EL素子から出射される光のスペクトル図、および各カラーフィルタを透過した後のスペクトル図である。
【図5】有機EL表示装置(発光装置)の電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
1・・有機EL表示装置(発光装置)、10・・白色有機EL素子(白色発光素子)、11・・基板、12・・第1の電極、13・・正孔注入層、14・・発光層、15、17・・第2の電極、16・・光反射層、19(R)、(G)、(B)・・カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色発光素子と赤色用カラーフィルタとを備えた赤色の画素、白色発光素子と緑色用カラーフィルタとを備えた緑色の画素、および白色発光素子と青色用カラーフィルタとを備えた青色の画素を備えた発光装置において、
前記白色発光素子は、発光スペクトルにおいて500nm±5nmの波長域内に第1の極小値をもつ光を出射することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
白色発光素子と赤色用カラーフィルタとを備えた赤色の画素、白色発光素子と緑色用カラーフィルタとを備えた緑色の画素、および白色発光素子と青色用カラーフィルタとを備えた青色の画素を備えた発光装置において、
前記白色発光素子は、発光スペクトルにおいて580nm±5nmの波長域内に第2の極小値をもつ光を出射することを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1において、前記白色発光素子は、発光スペクトルにおいて580nm±5nmの波長域内に第2の極小値をもつ光を出射することを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記白色発光素子は、発光スペクトルにおいて400nmから500nmの波長域内に第1の発光ピークをもつ光を出射することを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記白色発光素子は、発光スペクトルにおいて500nmから600nmの波長域内に第2の発光ピークをもつ光を出射することを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項2または3において、前記白色発光素子は、発光スペクトルにおいて400nmから500nmの波長域内、500nmから600nmの波長域内、および600nm以上の波長域の各々に第1の発光ピーク、第2の発光ピークおよび第3の発光ピークをもつ光を出射し、
前記第2の発光ピークの波長と前記緑色用カラーフィルタの透過極大波長との差が±5nm以内であることを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−269252(P2006−269252A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85689(P2005−85689)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】