説明

発光装置

【課題】 有機EL素子を用いる発光装置の開発が進められているが、有機発光素子を内蔵するためのガラス基板及び保護板をUV型接着剤を用いて封止しているので、ガスや水分等の侵入を防止するのが難しいが、これを陽極接合によって封止することで、水分等の侵入を防止する抑止力を向上させた発光装置を提供する。
【解決手段】 透明なガラス基板11表面上に、有機発光層14を挟持した第1及び第2の電極層13,15を配置し、これらを保護板17で覆うとともに、保護板17とガラス基板11間に接合用金属層16を介在させ、この金属層16とガラス基板11及び保護板17とを陽極接合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた発光装置に係わり、特に、有機エレクトロルミネッセンス層をガラス基板と保護板とで確実に封止した発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、競馬場や野球場等の広い場所において、多数の観客に出場選手の紹介やオッズ、スコア等を知らせる画像データの表示には、多数の電球を平面状に配置した大型の表示スクリーンが使用されている。また、このような大型の表示スクリーンではなく、駅や空港等での行先表示や出発時間、到着時間等を知らせる表示スクリーンにおいては、電球表示に代えて、最近では液晶表示装置が多用されるようになってきている。
【0003】
この液晶表示装置を使用する利点としては、電球表示のものに比較して消費電力が少なく、また小型化に優れている点等が挙げられる。その反面、液晶表示装置としては液晶表示パネル、及びこの表示パネルを照射するためのバックライト、そしてこれらを構成するための構成部品が多数に上り、構成部品数の多さから表示装置としては高価なものとなってしまうとともに、その装置自体の厚さも大きくなるという問題点がある。
【0004】
しかしながら、この液晶表示装置の最大の問題点は、何と言っても視野角が狭いことであり、このため正面からの視認性には優れていても、表示装置の側面方向からの視認性が極めて悪い。この問題点を改善すべく現在も改良が進められているが、まだ十分な視認性を持った表示装置としては実現されていない。
【0005】
一方、この液晶表示装置の問題点を改善するものとして、最近では有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子の開発が進められており、このような表示装置への採用が検討されている。この有機EL素子は、それ自身で発光する発光素子であるために、液晶表示装置のようにバックライト等の光源を必要としないので、部品点数の削減にもなるばかりでなく、装置としての厚さも薄く構成でき、また軽量化も可能となり、しかも視野角も広く採ることができるので、表示装置に使用するには好適な条件を兼ね備えているものである。
【0006】
この有機EL素子を備えた発光装置は、図10に示すように、透明なガラス基板81上にITO(Indium Tin Oxide)からなる透明導電膜製の第1の電極層82を成膜し、この電極層82上に、例えばα−NPD、Alq3等の有機発光層83が積層配置され、更にこの有機発光層83の上にフッ化リチウム、アルミニウム等の第2の電極層84が成膜されたもので、この第1及び第2の電極層82,84の一端部は、ガラス基板81面に沿って、ガラス基板81の端部に導出されている。
【0007】
これらの電極層82,84や有機発光層83は、外気の水分や酸素に対して脆弱であるために、これらの第1及び第2の電極層82,84並びに有機発光層83を、ガラスやステンレス等の保護板85を用いて封止している。この封止には、保護板85の周囲縁部にUV硬化型の接着剤86を塗布し、有機発光層83を覆うようにガラス基板81面と付き合わせ、この付き合わされたこのUV硬化型接着剤86に対して、内部の有機発光層83にUVが照射されないように遮光した状態にてUV露光を行い、接着剤86を硬化させて気密に封止している。
【0008】
しかしながら、このようなUV硬化型接着剤86を使用した封止構成では、ガスや水分を完全に遮断することが難しいものとなっており、このため、この封止された封止材85内部空間には、内部で放出されるガスや水分、あるいは接着剤86等の封止部分を透過して容器の内部空間内に侵入してくるガスや水分を吸着させるために、乾燥剤(図示せず)を内蔵している。
【0009】
また、第1及び第2の電極層82,84を外部接続用の端子としても利用しているが、この端子部分でも気密性の劣化が発生し、点灯中に侵入してくる酸素や水分のために発光効率の低下やダークスポットの発生や、このダークスポットが拡大していくという問題がある。
【0010】
更に、封止用にUV型接着剤を使用しているので、接着剤の硬化作業時に有機発光層にまでUV光が漏洩して到達してしまい、有機発光層を劣化させるばかりでなく、接着剤使用により高コスト化となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような従来の問題点に鑑みてなされたもので、第1及び第2の電極層によって挟持されている有機発光層をガラス基板と保護板とで、間に接合用金属層を介在させて陽極接合によって封止することで、気密性を十分に向上させた発光装置を提供するもので、解決しようとする問題点は、確実な気密封止構成にすることを可能とする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、非透湿性材料によって形成されたガラス基板と、このガラス基板上に形成された第1の電極層と、この電極層上に配設される有機発光層と、この有機発光層を前記第1の電極層とで挟持するように積層された第2の電極層と、前記ガラス基板の周辺部に配置された接合用金属層と、この金属層に当接され前記ガラス基板と対向配置された非透湿性材料によって形成された保護板とを具備し、前記ガラス基板及び保護板とを接合用金属層を介して陽極接合させて封止したことを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、前記接合用金属層を前記第1または第2の電極層と同じ材料を用いて前記第1または第2の電極層形成時に同時に形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、前記ガラス基板を貫通するように設けられ前記第1及び第2の電極層のいずれかに接続される少なくとも1個の接続端子を設け、この接続端子に接続されない他方の電極層をガラス基板周辺部にまで延在させて接合用金属層としたことを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、前記ガラス基板と少なくとも第1の電極層間に半導体膜を介在させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガラス基板の一平面上に形成される第1及び第2の電極層と有機発光層を保護する非透湿性材料からなる保護板を接合用金属層を介して陽極接合させて封止させることにより、金属層とガラス基板及び金属層と保護板とをより一層強固に固着することができるので、外部からのガスや水分等の防御性能を向上させ、発光効率の低下やダークスポットの発生等を抑制することができ、接着剤を使用しないので廉価に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
まず、本発明に係る発光装置は、図1に示すように、非透湿性で透明な長方形状のアルカリ金属イオンを含むガラス基板11に、このガラス基板11を貫通して形成された2個の外部接続端子12,12´を設ける。この一方の接続端子12の上に、ITO等の透明導電膜からなる第1の電極層(陽電極層)13を成膜し、この電極層13上に、例えばα−NPD、Alq3等の有機発光層14が積層配置される。
【0019】
この有機発光層14は、第1の電極層13の端部を覆うようにその一端が第1の電極層13側面に沿ってガラス基板11面上に延在されている。
【0020】
そして、更にこの有機発光層14の上に、その一端部分がガラス基板11面まで延在されるように有機発光層14の延在されている同一方向に、フッ化リチウム、アルミニウム等の導電膜からなる第2の電極層(陰電極層)15が成膜して構成されており、この第2の電極層15は、ガラス基板16を貫通する他の接続端子12´と接続されている。
【0021】
このようにして、各電極層13,15と有機発光層14が形成されたガラス基板11の周辺部分には、接合用金属層16が形成され、この金属層16上に内部を凹状に形成されたガラス材からなる保護板17がガラス基板11と対向するように配置される。このガラス基板11と保護板17とは接合用金属層16を利用して陽極接合により接合される。この陽極接合は、アルカリ金属イオンを含むガラス基板11と接合用金属層16、あるいはこの金属層16と保護板17との平滑面を当接し、アルカリ金属イオンの熱拡散が生じる温度のもとでガラス基板11及び保護板17と接合用金属層16との間に直流電圧を印加させ、ガラス基板11及び保護板17と金属層16との間に静電引力を発生させ、ガラス基板11及び保護板17と金属層16との界面で化学結合を生じさせて、両者を強固に固定させるものである。
【0022】
例えば、接合用金属層16にプラスの電圧を、ガラス基板11及び保護板17側にマイナスもしくは接地電圧となるように直流電圧を印加して、界面で化学結合を生じさせ強固に固着するものである。この保護板17としてはガラス基板11と熱膨張係数が略一致したものが好ましく、接合面の表面粗さも0.2μm以下に抑制しておく必要がある。
【0023】
このように構成された発光装置によれば、ガラス基板11と保護板17とを接合用金属層16を介して陽極接合によって強固に固定するようにしているので、外部と内部とを遮断する効果が格段に向上し、点灯中の発光効率の低下やダークスポットの発生や拡大を抑制することができる。
【0024】
この発光装置の製造方法について、図2を参照して詳細に説明する。
【0025】
即ち、図2(a)に示すように、1A族のナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ成分を2%以上含有する透明ガラス材からなるガラス基板11に、図2(b)に示すように、互いに離間して配置されガラス基板11を貫通する2個の接続端子12,12´を気密に封止形成する。次いで図2(c)に示すように、ガラス基板11の周辺部分に接合用金属層16を形成し、この接合用金属層16の内側ガラス基板11面上で一方の接続端子12端面を覆って、図2(d)に示すように、ITOからなる第1の電極層13がスパッタリング法にて形成される。
【0026】
この第1の電極層13の上には、図2(e)に示すように、α―NPD、Alq3等の有機発光層14が真空蒸着法によって形成される。この有機発光層14の更に上層には、図2(f)に示すように、LiF、Al等の第2の電極層15が形成されるとともに、この電極層15はガラス基板11に形成された他の接続端子12´に接続されている。
【0027】
そして、これら第1及び第2の電極層13,15及び有機発光層14を覆うようにした凹部18を有する保護板17が接合用金属層16にその端面を当接させてガラス基板11上に配置される。この状態において接合用金属層16にプラス電圧を、ガラス基板11及び保護板17側をマイナスもしくは接地電圧とすることによって陽極接合にて封止し、発光装置を形成している。
【0028】
このように構成することで、接合用金属層16は独立にガラス基板11上に形成することができるため、封止用に好適する材料を自由に選択して使用することが可能である。
【0029】
また、この接合用金属層16は、第1の電極層13を形成する際に第1の電極層13と同じ材料を用いて同時に形成することも可能である。
【0030】
なお、図2において説明した部分については同じ符号を付すことにより、その詳細な説明は省略する。
【0031】
即ち、図3(a)〜(b)に図示している工程は、図2(a)〜(b)にかけての工程と同じであるが、図3(c)に示すように、例えばAl材からなる第1の電極層13を形成すると同時に、ガラス基板11の周辺部にも第1の電極層13と同じ材質で接合用金属層16を形成しているものである。
【0032】
なお、その後の図3(d)〜(f)にかけての工程は前述の図2(e)〜(g)の工程と同じなので、その詳細な説明は省略するが、第2の電極層15に透明導電材が使用されている。
【0033】
このような工程にて発光装置を形成することにより、接合用金属層16を別個に形成するよりも製造工程の減少を図ることができ、製造効率の向上が図られる。この場合の発光方向は、第1の電極層13にAl材を使用しているので封止材方向となる。
【0034】
また、接合用金属層16は、第2の電極層15を形成する場合に併せて形成するように製造することも可能である。
【0035】
即ち、図4(a)〜(b)にかけての工程は、図2(a)〜(b)にかけての工程と同じであるが、その後に図4(c)に示すように、一方の接続端子12側のガラス基板11面上に第1の電極層13を形成し、次いで図4(d)に示すように、第1の電極層13上に有機発光層14を形成する。その後に図4(e)に示すように、この有機発光層14の上にAl材の第2の電極層15を形成するが、その際にガラス基板11の周辺部にも、第2の電極層15と同じ材質で接合用金属層16を同時に形成している。
【0036】
そして、これら第1及び第2の電極層13,15及び有機発光層14を覆うようにした凹部18を有する保護板17が、接合用金属層16にその端面を当接させてガラス基板11と対向して配置される。この状態において接合用金属層16にプラス電圧を、ガラス基板11及び保護板17側にマイナスもしくは接地電圧を印加することにより、第1及び第2の電極層13,15と接合用金属層16相互間を陽極接合にて封止し、発光装置を製造している。
【0037】
このように構成すると、第2の電極層15と同じ材質を利用してそのまま接合用金属層16を形成することが可能なので、製造工程の簡略化を図ることができる。この場合の発光方向は、Al材を使用した第2の電極層15と反対側のガラス基板11側となる。
【0038】
上記の説明では、ガラス基板11の周辺部に接合用金属層16を形成して、凹部18を有する保護板17の端面を当接するようにして陽極接合を行っている場合について説明しているが、図5に示すように、ガラス基板11の周辺部に第1及び第2の電極層13,15及び有機発光層14を封入するに十分な高さを有する接合用金属層(壁)16を配置し、この金属層16の他端側に凹部18を設けることなく平坦に形成された保護板17を当接させて、これらを陽極接合によって形成することも可能である。
【0039】
このように構成すれば、保護板17は単純な平坦なガラス材等によって形成することが可能となるので、凹部18を設ける等の手間や加工を省略することが可能となる。
【0040】
また、図6には、第1と第2の電極層13,15を反転させて構成した場合を示す。このとき第1の電極層13の材料として、LiF、Alの層をガラス基板11面上に真空蒸着法によって設け、この上にα―NPD、Alq3を有機発光層14として積層形成する。この有機発光層14の上には、スパッタリング法によって形成されたITO等の透明導電膜からなる第2の電極層15を設けた構成としたものである。このように第1の電極層13としてAl等の材料を使用した場合には、保護板17側方向が発光面側として構成されるために、ガラス基板11の裏面側に導出された接続端子12,12´は、何等発光面に対して影響を与えることがなく、接続端子12,12´が遮光してしまうような虞もないので、配線の引きまわしが自由に行える効果がある。
【0041】
また、図7に示すように、ガラス基板11を貫通して設けた接続端子12を単一構成とし、この接続端子12に第1の電極層13が接続されるように、第1の電極層13をガラス基板11上に形成し、有機発光層14の上側に形成された第2の電極層15をガラス基板11面にまで延在させるだけではなく、ガラス基板11面上にそってガラス基板11の周辺部にまで形成させた構成としてもよい。
【0042】
このように、第2の電極層15を外部接続用と接合用金属層16として兼用させる構成とすることによって、接続端子12,12´の使用本数を減少させることができ、それに伴う工数の削減が可能で作業時間の短縮等にも貢献する。
【0043】
また、図8に示すように、ガラス基板11面上にSiO2層(半導体層)19を成膜し、この半導体層19を介して接続端子12,12´をガラス基板11を貫通するように形成し、この半導体膜19上に第1の電極層13と第2の電極層15及びこれら電極層13,15に挟持された有機発光層14を形成したものである。
【0044】
この半導体層19を有する発光装置は、図9(a)に示すようなガラス基板11の表面上に、図9(b)に示すように、ガラス基板11の周辺部を除く平面部分に半導体層19を形成する。この半導体層19を形成したガラス基板11に、図9(c)に示すように接続端子12,12´を形成し、図9(d)〜同(g)に示すように前述の製造方法と同じ工程にて製造するもので、同じ部分については同じ符号を付すことで、その詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る発光装置の第1の実施形態を示す断面図。
【図2】同じく発光装置の製造工程を説明するための工程説明図。
【図3】同じく他の方法による製造工程を説明するために工程説明図。
【図4】同じく更に異なる方法による製造工程を説明するための工程説明図。
【図5】同じく第2の実施形態を示す断面図。
【図6】同じく本発明に係る発光装置の第3の実施形態を示す斜視図。
【図7】同じく第4の実施形態を示す断面図。
【図8】同じく第5の実施形態を示す断面図。
【図9】同じく第5の実施形態に係る発光装置の製造工程を説明するための工程説明図。
【図10】従来の発光装置を示す断面図。
【符号の説明】
【0046】
11:ガラス基板
12,12´:接続端子
13:第1の電極層
14:有機発光層
15:第2の電極層
16:接合用金属層
17:保護板
19:半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非透湿性材料によって形成されたガラス基板と、
このガラス基板上に形成された第1の電極層と、
この電極層上に配設される有機発光層と、
この有機発光層を前記第1の電極層とで挟持するように積層された第2の電極層と、
前記ガラス基板の周辺部に配置された接合用金属層と、
この金属層に当接され前記ガラス基板と対向配置された非透湿性材料によって形成された保護板とを具備し、
前記ガラス基板及び保護板とを接合用金属層を介して陽極接合させて封止したことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記接合用金属層を前記第1または第2の電極層と同じ材料を用いて前記第1または第2の電極層形成時に同時に形成されていることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記ガラス基板を貫通するように設けられ前記第1及び第2の電極層のいずれかに接続される少なくとも1個の接続端子を設け、この接続端子に接続されない他方の電極層を前記ガラス基板周辺部にまで延在させて接合用金属層としたことを特徴とする請求項1または2記載の発光装置。
【請求項4】
前記ガラス基板と少なくとも第1の電極層間に半導体膜を介在させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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