説明

発光装置

【課題】取り出し効率を向上させ、低消費電力で高い輝度を得ることができる発光装置を提供する。
【解決手段】絶縁表面上に設けられた第1の電極と、前記第1の電極上に設けられた電界発光層と、前記第1の電極と重なるように、なおかつ前記電界発光層上に設けられた第2の電極と、前記第2の電極と接するように設けられた絶縁膜とを有し、前記絶縁膜は、珪素及び窒素を含み、前記第2の電極は、透光性酸化物導電材料及び酸化珪素を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各画素に発光素子を有する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子は自ら発光するため視認性が高く、液晶表示装置(LCD)で必要なバックラ
イトが要らず薄型化に最適であると共に、視野角がLCDに比べて広いという特徴を有し
ている。そのため発光素子を用いた発光装置は、CRTやLCDに代わる表示装置として
注目されており、実用化が進められている。発光素子の1つであるOLED(Organ
ic Light Emitting Diode)は、電場を加えることでルミネッセ
ンス(Electroluminescence)が得られる電界発光材料を含む層(以
下、電界発光層と記す)と、陽極と、陰極とを有している。陽極から注入された正孔と、
陰極から注入された電子とが電界発光層で結合することで、発光が得られる。
【0003】
電界発光層への正孔及び電子の注入性は、電極を形成する材料の仕事関数の大小が一つ
の指標とされ、正孔を注入する側の電極(陽極)には仕事関数の高い材料、電子を注入す
る側の電極(陰極)には仕事関数の低い材料を用いることが望まれている。具体的に陽極
には、仕事関数が約5eVである酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin
Oxide)が一般的に用いられている。
【0004】
このような発光素子を応用した発光装置の一形態として、一方向に延びる電極(行電極
)と、それと交差する方向に延びる電極(列電極)との間に、電界発光層を介在させてマ
トリクス状に配列させたものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】C.W.タン(C.W.Tang)、他、ジャーナル オブ アプライド フィジックス(Journal of Applied Physics)、第65巻、p.3610、1989年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで発光装置はバックライトを用いない分、発光装置全体の消費電力が、各画素の
発光素子の性能に依存する傾向が強い。すなわち、発光素子の外部量子効率(外部に取り
出されるフォトンの数/注入されたキャリアの数)が高いほど、低消費電力化を実現させ
ることができる。そして外部量子効率は、取り出し効率(外部に取り出されるフォトンの
数/放出されるフォトンの数)を向上させることで、高めることができる。
【0007】
しかし、画素が高精細化されるにつれ、自ずと発光が得られるエリアの画素部全体に占
める割合(開口率)が低下する。つまり、高精細化と取り出し効率の向上はある程度トレ
ードオフの関係にあると考えられており、結果的に外部量子効率を高めることが困難であ
った。
【0008】
本発明は上述した問題に鑑み、取り出し効率を向上させ、低消費電力で高い輝度を得る
ことができる発光装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、取り出し効率が開口率だけに依存するのではなく、発光素子が有する電
極の材料と、該電極に接している絶縁膜の材料の組み合わせにも依存していることに着目
した。
【0010】
本発明の発光装置は、絶縁膜と、前記絶縁膜に接し、なおかつ前記絶縁膜上に並列する
ように形成された複数の第1電極と、前記複数の第1電極上に形成された電界発光層と、
前記複数の第1電極と交差し、なおかつ前記電界発光層上に並列に形成された複数の第2
電極とを有し、前記絶縁膜は窒素及び珪素を含んでおり、前記第1の電極は、透光性酸化
物導電材料及び酸化珪素を含んでいることを特徴とする。
【0011】
絶縁表面上に並列するように形成された複数の第1電極と、前記複数の第1電極上に形
成された電界発光層と、前記複数の第1電極と交差し、なおかつ前記電界発光層上に並列
に形成された複数の第2電極と、前記複数の第2電極と接するように形成された絶縁膜と
を有し、前記絶縁膜は窒素及び珪素を含んでおり、前記第2の電極は、透光性酸化物導電
材料及び酸化珪素を含んでいることを特徴とする。
【0012】
本発明の発光装置は、第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜に接し、なおかつ前記第1の
絶縁膜上に並列するように形成された複数の第1電極と、前記複数の第1電極上に形成さ
れた電界発光層と、前記複数の第1電極と交差し、なおかつ前記電界発光層上に並列に形
成された複数の第2電極と、前記複数の第2電極と接するように形成された第2の絶縁膜
とを有し、前記第1の絶縁膜及び前記第2の絶縁膜は窒素及び珪素を含んでおり、前記第
2の電極は、透光性酸化物導電材料及び酸化珪素を含んでいることを特徴とする。
【0013】
本発明の発光装置は、層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜上に形成された絶縁膜と、前記絶
縁膜に接し、なおかつ前記絶縁膜上に並列するように形成された複数の第1電極と、前記
複数の第1電極上に形成された電界発光層と、前記複数の第1電極と交差し、なおかつ前
記電界発光層上に並列に形成された複数の第2電極とを有し、前記絶縁膜は窒素及び珪素
を含んでおり、前記第1の電極は、透光性酸化物導電材料及び酸化珪素を含んでいること
を特徴とする。
【0014】
本発明の発光装置は、層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜上に形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜に接し、なおかつ前記第1の絶縁膜上に並列するように形成された複数
の第1電極と、前記複数の第1電極上に形成された電界発光層と、前記複数の第1電極と
交差し、なおかつ前記電界発光層上に並列に形成された複数の第2電極と、前記複数の第
2電極と接するように形成された第2の絶縁膜とを有し、前記第1の絶縁膜及び前記第2
の絶縁膜は窒素及び珪素を含んでおり、前記第2の電極は、透光性酸化物導電材料及び酸
化珪素を含んでいることを特徴とする。
【0015】
層間絶縁膜は、シロキサン系材料を用いて形成されているか、またはアクリルを用いて
形成されていることを特徴とする。
【0016】
なお本発明の発光装置は、上述したようなパッシブマトリクス型に限定されず、アクテ
ィブマトリクス型の発光装置であっても良い。
【0017】
よって本発明の発光装置は、絶縁膜と、前記絶縁膜に接し、なおかつ前記絶縁膜上に形
成された第1電極と、前記第1電極上に形成された電界発光層と、前記第1電極と重なる
ように、なおかつ前記電界発光層上に形成された第2電極とを有し、前記絶縁膜は窒素及
び珪素を含んでおり、前記第1の電極は、透光性酸化物導電材料及び酸化珪素を含んでい
ることを特徴とする。
【0018】
また本発明の発光装置は、絶縁表面上に形成された第1電極と、前記第1電極上に形成
された電界発光層と、前記第1電極と重なるように、なおかつ前記電界発光層上に形成さ
れた第2電極と、前記第2電極に接し、なおかつ前記第2電極と接するように形成された
絶縁膜とを有し、前記絶縁膜は窒素及び珪素を含んでおり、前記第2の電極は、透光性酸
化物導電材料及び酸化珪素を含んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、発光素子が有する一方の電極に透光性酸化物導電材料と酸化珪素とを用い、
なおかつ珪素及び窒素を少なくとも含んでいる絶縁膜を該電極に接するように形成するこ
とで、同じ開口率であっても、従来の発光装置よりも取り出し効率を高めることができ、
結果的に高い外部量子効率を得ることができる。従って、低消費電力で高い輝度を得るこ
とができる発光装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】輝度と電流効率の実測値を示すグラフ。
【図2】本発明に係る発光装置の平面図及び画素の断面図。
【図3】本発明に係る発光装置の作製工程を示す平面図。
【図4】本発明に係る発光装置の作製工程を示す平面図。
【図5】本発明に係る発光装置の作製工程を示す平面図。
【図6】本発明に係る発光装置の断面図。
【図7】本発明に係る発光装置の断面図。
【図8】画素部が形成されたパネルに外部回路が接続されたモジュールを示す平面図。
【図9】本発明に係る発光装置の画素の断面図。
【図10】本発明に係る発光装置の画素の断面図。
【図11】本発明に係る発光装置の、発光素子の構成を示す図。
【図12】本発明に係る発光装置を用いた電子機器の図。
【図13】本発明に係る発光装置の画素の断面図。
【図14】本発明に係る発光装置の画素の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、各図面間で
共通する部位においては、同じ符号を通して用い、重複する説明については省略する。
【0022】
図1(A)に、絶縁膜として窒化酸化珪素を用い、該絶縁膜上に5重量%の酸化珪素を
含むITO(以下、ITSOとする)を用いて陽極を形成した発光素子の、輝度L(cd
/m2)に対する電流効率η(cd/A)の実測値を示す。また比較として図1(A)に
、絶縁膜として同じく窒化酸化珪素を用い、該絶縁膜上にITOを用いて陽極を形成した
発光素子の、輝度L(cd/m2)に対する電流効率η(cd/A)の実測値を示す。
【0023】
なお図1(A)に示す測定で用いたサンプルは、窒化酸化珪素を用いた絶縁膜を、シロ
キサン系材料を出発材料として形成されたSi−O結合とSi−CHX結合手を含む、膜
厚0.8μmの絶縁膜上に形成している。そして、窒化酸化珪素を用いた絶縁膜は、CV
D法で、100nmの膜厚で形成しており、珪素、窒素、酸素、水素の組成比(atom
ic%)は32:34:14:20である。
【0024】
図1(A)に示すように、陽極にITSOを用いたサンプルの方が、陽極にITOを用
いたサンプルよりも、電流効率が高いことが分かった。
【0025】
次に図1(B)に、絶縁膜として窒化珪素を用い、該絶縁膜上に5重量%の酸化珪素を
含むITSOを用いて陽極を形成した発光素子の、輝度L(cd/m2)に対する電流効
率η(cd/A)の実測値を示す。また比較として図1(B)に、絶縁膜として同じく窒
化珪素を用い、該絶縁膜上にITOを用いて陽極を形成した発光素子の、輝度L(cd/
2)に対する電流効率η(cd/A)の実測値を示す。
【0026】
なお図1(B)に示す測定で用いたサンプルは、窒化珪素を用いた絶縁膜を、膜厚0.
8μmのアクリルを含む絶縁膜上に形成している。そして、窒化珪素を用いた絶縁膜は、
スパッタ法で、100nmの膜厚で形成しており、珪素、窒素の組成比は42:58であ
る。
【0027】
図1(B)に示すように、図1(A)と同様に、陽極にITSOを用いたサンプルの方
が、陽極にITOを用いたサンプルよりも、電流効率が高いことが分かった。
【0028】
次に図1(C)に、絶縁膜として酸化珪素を用い、該絶縁膜上に5重量%の酸化珪素を
含むITSOを用いて陽極を形成した発光素子の、輝度L(cd/m2)に対する電流効
率η(cd/A)の実測値を示す。また比較として図1(C)に、絶縁膜として同じく酸
化珪素を用い、該絶縁膜上にITOを用いて陽極を形成した発光素子の、輝度L(cd/
2)に対する電流効率η(cd/A)の実測値を示す。
【0029】
なお図1(C)に示す測定で用いたサンプルは、CVD法で形成した酸化珪素を用いた
絶縁膜を、100nmの膜厚で形成している。なお該酸化珪素を用いた絶縁膜は、作製工
程の都合上、窒素が若干含まれており、珪素、窒素、酸素、水素の組成比は30:3:6
0:7である。
【0030】
図1(A)、図1(B)、図1(C)を比較すると、陽極にITSOを用い、絶縁膜に
窒化酸化珪素または窒化珪素を用いる組み合わせが、他の組み合わせに比べて、高い電流
効率を得られることが分かる。これは、絶縁膜を介して得られる光の取り出し効率が、陽
極にITSOを用い、絶縁膜に窒化酸化珪素または窒化珪素を用いる組み合わせにおいて
最も高くなっているためと考えられる。すなわち、内部量子効率自体は全てのサンプルに
おいて同じであるが、取り出し効率が高まったため、結果的に外部量子効率が高くなった
ものと考えられる。
【0031】
そこで本発明では、図1の測定結果により得られた知見から、発光素子が有する一方の
電極に透光性酸化物導電材料と酸化珪素とを用い、なおかつ珪素及び窒素を少なくとも含
んでいる絶縁膜を該電極に接するように形成する。なお該絶縁膜中において窒素の組成比
は、10atomic%以上、好ましくは25atomic%以上とする。そして、該絶
縁膜中に窒素と酸素を有する場合、窒素の組成比が酸素の組成比よりも高くなるようにす
る。また電極に含まれる酸化珪素は、1〜10重量%、好ましくは2〜5重量%とする。
上記構成により、同じ開口率であっても、従来の発光装置よりも取り出し効率を高めるこ
とができ、結果的に高い外部量子効率を得ることができる。
【0032】
透光性酸化物導電材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化
インジウム亜鉛(IZO)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)などを用いることが
可能である。電極は、透光性酸化物導電材料と酸化珪素を含むターゲットを用い、スパッ
タ法で形成することができる。
【0033】
なお、本発明において電界発光層は複数の層で構成されており、これらの層は、キャリ
ア輸送特性の観点から正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などに
分類することができる。正孔注入層と正孔輸送層との区別は必ずしも厳密なものではなく
、これらは正孔輸送性(正孔移動度)が特に重要な特性である意味において同じである。
便宜上正孔注入層は陽極に接する側の層であり、正孔注入層に接する層を正孔輸送層と呼
んで区別する。電子輸送層、電子注入層についても同様であり、陰極に接する層を電子注
入層と呼び、電子注入層に接する層を電子輸送層と呼んでいる。発光層は電子輸送層を兼
ねる場合もあり、発光性電子輸送層とも呼ばれる。
【0034】
また、電界発光層は有機材料のみならず、有機材料と無機材料とを複合化した材料、有
機材料に金属錯体を添加した材料などを用いても、同様な機能が得られるのであれば、代
用することができる。
【0035】
図2(A)は、本発明の発光装置の一形態を示す断面図であり、図2(B)は図2(A
)に示す発光装置の平面図である。図2(B)のA−Bにおける断面図が図2(A)に相
当する。図2に示す発光装置は、基板10上に、絶縁膜(以下、他の絶縁膜と区別するた
めに敢えて透過膜11と呼ぶ)が形成されている。そして該透過膜11上に、発光素子が
マトリクス状に配列した画素部20、入力端子部18、19が形成されている。各発光素
子100は、一方向に延びる第1電極12と、それと交差する方向に延びる第2電極13
と、第1電極12と第2電極13との間に形成された電界発光層14とを有している。複
数の第1電極12は並列するように形成されており、複数の第2の電極13は並列するよ
うに形成されている。
【0036】
透過膜11は、窒化珪素、窒化酸化珪素などの窒素及び珪素を含む絶縁膜である。そし
て透過膜11は、窒素の組成比が、10atomic%以上、より望ましくは25ato
mic%以上となっており、例えばスパッタ法またはCVD法などを用いて形成すること
ができる。なお透過膜11中に窒素と酸素を有する場合、窒素の組成比が酸素の組成比よ
りも高くなるようにする。また発光素子が有する第1電極12は、透光性酸化物導電材料
と、酸化珪素とを含んでいる。具体的に酸化珪素は、第1電極12中に1〜10重量%含
ませる。そして本実施の形態では、透光性酸化物導電材料としてITOを用い、ITOと
酸化珪素を含むITSOを第1電極12として用いる。なお透光性酸化物導電材料はIT
Oに限定されず、例えば酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、ガリウム
を添加した酸化亜鉛(GZO)などを用いることができる。第1電極12は透過膜11に
接するように形成されている。第1電極12はスパッタ法を用いて形成できるが、勿論、
同様な組成を得ることができれば、真空蒸着法で共蒸着して形成しても良い。
【0037】
なお図2では、基板10と透過膜11が接しているが、本発明はこの構成に限定されな
い。基板10と透過膜11の間に、別の絶縁膜を形成しておいても良い。
【0038】
隣接する発光素子100どうしは、共に絶縁膜で形成された第1隔壁15と、該第1隔
壁15上に形成された第2隔壁16によって電気的に分離されている。第1隔壁15は、
電界発光層14の端部において第1電極12と第2電極13とが短絡しないようにする作
用がある。図2(B)では、第2隔壁16の形状が底部に対して頂部の外端が外側に出て
いる、所謂逆テーパ形状を有している。
【0039】
第1電極12と第2電極13は、一方が陽極、他方が陰極に相当する。図2では、第1
電極12が陽極、第2電極13が陰極の場合を例に挙げて説明するが、第1電極12が陰
極、第2電極13が陽極であっても良い。電界発光層14は、そのキャリア輸送特性から
、陽極側から順に正孔輸送層、発光層、電子輸送層に分類できる。また、陽極と正孔輸送
層との間に正孔注入層を設けても良いし、陰極と電子輸送層との間に電子注入層を設けて
も良い。正孔注入層と正孔輸送層、及び電子注入層と電子輸送層の区別は必ずしも厳密な
ものではなく、これらは正孔輸送性(正孔移動度)及び電子輸送性(電子移動度)が特に
重要な特性である意味において同じである。また、電子輸送層と発光層の間に正孔ブロッ
ク層を設けた構成としても良い。発光層はホスト材料に顔料や金属錯体などのゲスト材料
を添加して、発光色を異ならせても良い。すなわち、発光層は蛍光材料又は燐光材料を含
ませて形成すれば良い。
【0040】
なお図2では、第1の電極と第2の電極のうち、より基板側に近い第1の電極に、透光
性酸化物導電材料と酸化珪素を用い、なおかつ該第1の電極と透過膜が接するように形成
されているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば透光性酸化物導電材料と酸化珪
素を用いて第2の電極を形成した後、該第2の電極に接するように透過膜を形成しても良
い。
【0041】
次に、図2に示す発光装置の作製方法について、図3〜図5を用いて説明する。まず、
基板10の主表面上に、透過膜11を形成する。透過膜11の組成及び作製方法について
は上述したとおりである。なお基板10は、例えばバリウムホウケイ酸ガラスや、アルミ
ノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板等を用いることができる。なお図2では
、第1電極12から光を取り出す発光素子を用いているので、基板10は透光性を有する
が、第2電極13から光を取り出す場合、上記基板に加えて、例えばステンレス基板を含
む金属基板またはシリコン基板の表面に絶縁膜を形成したものや、セラミック基板なども
用いても良い。プラスチック等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板は、一般的に上記
基板と比較して耐熱温度が低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐え得るので
あれば用いることが可能である。
【0042】
次に図3(A)に示すように、透過膜11上に、一方向に延びる第1電極12及び入力
端子部を形成するための端子30を同じ材料で形成する。第1電極12の組成及び作製方
法については、上述したとおりである。
【0043】
次に、図3(B)に示すように、第1電極12の入力端子部形成領域と、第2電極13
の接続部兼入力端子部形成領域に、補助電極31a、31bを形成する。補助電極は、外
部回路と接続する際に、ヒートシール性の良い導電性材料で形成することが好ましく、ク
ロム、ニッケルなどを含む金属材料で形成すれば良い。
【0044】
次に、図4(A)に示すように、第1隔壁15を形成する。この第1隔壁15は、第1
電極12と重なる領域に開口部を有している。この第1隔壁15は、酸化珪素、窒化珪素
、酸化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、その他
の絶縁性を有する無機材料、又はアクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体、ポリイ
ミド(polyimide)、芳香族ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール(polyb
enzimidazole)などの耐熱性を有する高分子材料、又はシロキサン系材料を
出発材料として形成された珪素、酸素、水素からなる化合物のうちSi−O−Si結合を
含む無機シロキサン、または珪素上の水素がメチルやフェニルのような有機基によって置
換された有機シロキサン系の材料で形成することができる。
【0045】
第1隔壁15の開口部は、例えば第1隔壁15に酸化珪素を用いる場合、C48やCH
3などのエッチングガスを用いて形成することができる。また、例えば窒化珪素を用い
る場合、HBrやCl2などのエッチングガスを用いて形成することができる。
【0046】
次に、後の工程で形成する電界発光層14及び第2電極13を、隣接する発光素子間で
分離するために、図4(B)に示すように第2隔壁16を形成する。この第2隔壁16の
形状は、図2(A)に示すように、底部よりも頂部における幅方向の寸法が長い所謂逆テ
ーパ形状としても良いし、頂部よりも底部における幅方向の寸法が長い順テーパ形状とし
ても良いし、T字型の形状としても良い。いずれにしても、第1電極12の一部が露出す
るように、第1電極12に対して交差する方向に延びるように形成し、所定の間隔をもっ
て配置されるように第2隔壁16を形成する。
【0047】
第2隔壁16は、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体、又はポリイミド(p
olyimide)、芳香族ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール(polybenzi
midazole)、その他の高分子を含む感光性の有機樹脂材料、或いはシロキサン系
材料を出発材料として形成された珪素、酸素、水素からなる化合物のうちSi−O−Si
結合を含む無機シロキサン、または珪素上の水素がメチルやフェニルのような有機基によ
って置換された有機シロキサン系の絶縁材料で形成する。
【0048】
その後、図5に示すように、第1隔壁15の開口部から露出している第1電極12上に
電界発光層14を形成する。電界発光層14は、発光層単独かもしくは発光層を含む複数
の層が積層された構成を有している。例えば、正孔注入層としてCuPc、はMoOX
x=2〜3)又はPEDOT/PSS、正孔輸送層としてα−NPD、発光層としてAl
3:DMQd(DMQd:キナクリドン誘導体)、電子輸送層としてAlq3を形成する

【0049】
また、電界発光層14の形成の前に、第1隔壁15の開口部において露出している第1
電極12に対して、酸素プラズマ処理や紫外線照射処理を行うことで、第1電極12の仕
事関数を大きくするようにしても良い。また発光素子の信頼性を高めるために、電界発光
層14を形成する前に、大気雰囲気下または真空雰囲気下(好ましくは10-4〜10-8
a程度)において、基板の温度を200℃〜450℃、好ましくは250℃〜300℃と
し、第1電極12に加熱処理を施しても良い。また清浄化し平坦性を高めるために拭浄処
理や研磨処理を行っても良い。
【0050】
次に図2(B)に示すように、第1電極12上に電界発光層14が形成された領域に、
第1電極12と交差する方向延びる第2電極13を形成する。第2電極13が陰極である
場合、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を含む導電性材料を用いて形成する。陰極
は、電界発光層14に電子を効率良く注入するために、仕事関数の小さい金属、合金、電
気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いる。具体的には、LiやCs等のアル
カリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(M
g:Ag、Al:Liなど)の他、YbやEr等の希土類金属を用いて形成することもで
きる。また、電子注入性の高い材料を含む層を陰極に接するように形成することで、チタ
ン、タンタル、モリブデン、クロム、ニッケル、アルミニウム若しくはアルミニウムを主
成分とする金属、或いは該金属と化学量論的組成比以下の濃度で窒素を含む導電性材料、
または透光性酸化物導電材料等を用いた、通常の導電膜も用いることができる。
【0051】
このように、第1電極12と第2電極13とに電界発光層14が挟まれて形成された領
域が、発光素子100に相当する。また、第2電極13は、入力端子部19の電極31b
が形成されている領域まで延びている。
【0052】
以上の様にして、発光素子が形成された画素部20を有するパネルが形成される。その
後、図6に示すように、水分などの侵入を防ぐ保護膜22を形成し、ガラス、石英、アル
ミナなどのセラミック材料又は合成材料などからなる封止基板23をシール用の接着剤2
4で固着する。また外部入力端子部には外部回路と接続する際に、フレキシブルプリント
配線基板25を用いて接続をとる。また、封止の構成は、図7のように、封止缶26を用
い、その中に乾燥剤27を設けてからシール用の接着剤24で固着しても良い。保護膜2
2は、窒化珪素で形成するものの他、応力を低減しつつガスバリア性を高める構成として
、窒化炭素と窒化珪素の積層体で形成しても良い。
【0053】
図8に、図6に示すパネルに外部回路を接続して形成された、モジュールの様子を示す
。図8(A)では、外部入力端子部18、19にフレキシブルプリント配線基板25を固
着して、電源回路や信号処理回路が形成された外部回路基板29と電気的に接続する。ま
た、外部回路の一つであるドライバIC28の実装方法は、COG法、TAB法のどちら
でも良く、図8(A)ではTAB法の場合を示している。図8(B)に、外部回路の一つ
であるドライバIC28を、COG法を用いて実装している様子を示す。
【0054】
なおパネルとモジュールは、本発明の発光装置の一形態に相当し、共に本発明の範疇に
含まれる。
【実施例1】
【0055】
本実施例では、図2(A)に示した発光装置とは異なる、本発明の発光装置の構成につ
いて説明する。
【0056】
図9(A)を用いて、図2(A)に示した発光装置において、基板10と透過膜11の
間に、絶縁膜で形成された下地膜40を設ける形態について説明する。下地膜40は、シ
ロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O結合とSi−CHX結合手を含む絶
縁膜、またはアクリルを用いて形成されている。下地膜40を設けることで、基板10の
表面に凹凸が存在していても、下地膜40の表面は平坦化することができる。よって、基
板10の表面に凹凸が存在していても、後に形成される発光素子の表示にむらが出たり、
点欠陥が出たりするのを防ぐことができる。
【0057】
次に図9(B)を用いて、図2(A)に示した発光装置において、発光素子100が有
する第2電極13から光を取り出す形態について説明する。図9(B)に示すように、第
2電極13から光を取り出す場合、透過膜は必ずしも第1電極12と基板10との間に形
成する必要はない。その代わり、第2電極13と接するように、透過膜41を形成する。
そして第2電極13は、透光性を有するように、透光性酸化物導電材料及び酸化珪素を用
いる。
【0058】
なお第1電極12と第2電極13の両方から光が取り出されるようにすることで、両面
発光の発光装置を形成することができる。この場合、第1電極12と接する透光膜と、第
2電極13に接する透光膜を両方設けるようにする。
【0059】
次に図10(A)を用いて、図2(A)に示した発光装置において、第2隔壁16を、
頂部よりも底部における幅方向の寸法が長い順テーパ形状とした形態について説明する。
図10(A)では、隣接する発光素子100間の分離を、順テーパ形状の隔壁42で行な
っている。この場合、電界発光層14が隔壁42の側面の傾斜に沿って形成されるが、こ
の隔壁42の傾斜角を30〜65度とすることにより電界発光層にかかる応力を緩和する
ことができる。なお図10(A)では隔壁を1つだけ設けているが、図2(A)と同じよ
うに、隔壁を2つ設けていても良い。
【0060】
図10(A)では、発光素子100からの光が、第1電極12から取り出される形態に
ついて示しているが、図10(B)に示すように、第2電極13から取り出されるように
しても良い。図10(B)では、第2電極13と接するように、透光膜43を設ける。ま
た図10(C)に示すように、発光素子100からの光が、第1電極12と第2電極13
の両方から取り出されるようにしても良い。図10(C)では、第1電極12に接するよ
うに透光膜44を設け、第2電極13と接するように、透光膜45を設ける。
【実施例2】
【0061】
本実施例では、発光素子の具体的な構成について説明する。
【0062】
図11(A)は、第1電極501を透光性の酸化物導電性材料で形成する例であり、光
は第1電極501から取り出される。第1電極501上には電界発光層502、第2電極
503が順に積層されている。電界発光層502は、第1電極501に近い側から、正孔
注入層若しくは正孔輸送層506、発光層504、電子輸送層若しくは電子注入層505
が積層されている。第2電極503は、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物
、およびこれらの混合物などのうち、光を遮ることができる材料で形成する。図11(A
)の場合、透光膜507は第1電極501に接するように形成する。
【0063】
図11(B)は第2電極503から光を取り出す例を示しており、第1電極501は、
光を遮ることができ、なおかつ陽極として用いるのに十分仕事関数が大きい材料で形成す
る。具体的には、例えばTiN、ZrN、Ti、W、Ni、Pt、Cr、Ag等の1つま
たは複数からなる単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒
化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との三層構造等を用いること
ができる。そして第1電極501上に正孔注入層若しくは正孔輸送層506、発光層50
4、電子輸送層若しくは電子注入層505を積層した電界発光層502を設けている。第
2電極503は、透光性酸化物導電材料及び酸化珪素を用いている。図11(B)の場合
、透光膜507は第2電極503に接するように形成する。
【0064】
図11(C)は第1電極501から光を取り出すことができ、なおかつ、第1電極50
1が陰極、第2電極503が陽極の場合について示している。図11(C)では、電界発
光層502が、第1電極501に近い側から、電子輸送層若しくは電子注入層505、発
光層504、正孔注入層若しくは正孔輸送層506が順に積層されている。第1電極50
1は、透光性酸化物導電材料及び酸化珪素を用いている。第2の電極503は、図11(
B)の第1電極501と同じ材料を用いることができる。図11(C)の場合、透光膜5
07は第1電極501に接するように形成する。
【0065】
図11(D)は第2電極503から光を取り出す例を示し、なおかつ、第1電極501
が陰極、第2電極503が陽極の場合について示している。図11(D)では、電界発光
層502が、第1電極501に近い側から、電子輸送層若しくは電子注入層505、発光
層504、正孔注入層若しくは正孔輸送層506の順に積層されている。第1電極501
は、図11(A)の第2電極503と同じ材料を用いることができる。そして第2電極5
03は、透光性酸化物導電材料及び酸化珪素を用いることができる。図11(D)の場合
、透光膜507は第2電極503に接するように形成する。
【0066】
なお、図11(A)〜図11(D)では、光が第1電極501と第2電極503のいず
れか一方から取り出される例について示しているが、本発明はこの構成に限定されない。
第1電極501が陽極、第2電極503が陰極の場合、図11(A)に示す発光素子に、
図11(B)に示す第2電極503を組み合わせることで、第1電極501と第2電極5
03の両方から光を得ることができる。また第1電極501が陰極、第2電極503が陽
極の場合、図11(C)に示す発光素子に、図11(D)に示す第2電極503を組み合
わせることで、第1電極501と第2電極503の両方から光を得ることができる。なお
この場合第1電極501に接する透光膜と、第2電極503に接する透光膜とを設ける。
【実施例3】
【0067】
図12は本発明に係る発光装置の利用形態を示す図である。図12(A)はテレビ受像
機として完成させた形態であり、図11で示すモジュールにより表示画面303が形成さ
れている。すなわち、図11で示すモジュールは、筐体301の中に収納されており、そ
の他付属設備としてスピーカ304、操作スイッチ305などが備えられている。また、
図12(B)は、自動車などに搭載可能なオーディオ機器として完成させた形態であり、
図11で示すようなモジュールにより、この機器の動作状態などを表示する表示画面34
2が形成されている。すなわち、図11で示すモジュールは、筐体341の中に収納され
ており、その他付属設備として操作スイッチ343、344などが備えられている。
【実施例4】
【0068】
本実施例のアクティブマトリクス型の発光装置は、発光素子と、画素へのビデオ信号の
入力を制御するトランジスタ(スイッチング用トランジスタ)と、該発光素子に供給する
電流値を制御するトランジスタ(駆動用トランジスタ)とが各画素に設けられている。
【0069】
図13に、スイッチング用トランジスタ1300がnチャネル型、駆動用トランジスタ
1301がpチャネル型で、発光素子1302から発せられる光を第1の電極1303側
から取り出す場合の、アクティブマトリスク型発光装置の画素部の断面図を示す。スイッ
チング用トランジスタ1300および駆動用トランジスタ1301は、トップゲート型で
ある。
【0070】
スイッチング用トランジスタ1300および駆動用トランジスタ1301は層間絶縁膜
1304で覆われている。層間絶縁膜1304上に透光膜1305が形成されており、透
光膜1305上に発光素子1302が形成されている。発光素子1302には、第1の電
極1303、電界発光層1306、第2の電極1307が順に積層されている。
【0071】
層間絶縁膜1304は、有機樹脂膜、無機絶縁膜またはシロキサン系材料を出発材料と
して形成されたSi−O−Si結合を含む絶縁膜(以下、シロキサン系絶縁膜と呼ぶ)を
用いて形成することができる。シロキサン系絶縁膜は、置換基に水素の他、フッ素、アル
キル基、または芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有していても良い。層間絶縁膜1
304に、低誘電率材料(low−k材料)と呼ばれる材料を用いていても良い。
【0072】
透光膜1305は、窒化珪素、窒化酸化珪素などの窒素及び珪素を含む絶縁膜である。
そして透光膜1305は、窒素の組成比が、10atomic%以上、より望ましくは2
5atomic%以上となっており、例えばスパッタ法またはCVD法などを用いて形成
することができる。なお、透光膜1305中に窒素と酸素を有する場合、窒素の組成比が
酸素の組成比よりも高くなるようにする。
【0073】
第1の電極1303に、透光性酸化物導電材料と酸化珪素とを用いる。透光性酸化物導
電材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(
IZO)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)などを用いることが可能である。
【0074】
また、第2の電極1307は、光を反射もしくは遮蔽する材料及び膜厚で形成し、なお
かつ仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などで形成
することができる。具体的には、LiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr
等のアルカリ土類金属、これらを含む合金(Mg:Ag、Al:Li、Mg:Inなど)
、およびこれらの化合物(CaF2、CaN)の他、YbやEr等の希土類金属を用いる
ことができる。また電子注入層を設ける場合、Alなどの他の導電層を用いることも可能
である。
【0075】
電界発光層1306は、単数または複数の層で構成されている。複数の層で構成されて
いる場合、これらの層は、キャリア輸送特性の観点から正孔注入層、正孔輸送層、発光層
、電子輸送層、電子注入層などに分類することができる。電界発光層1306が発光層の
他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層のいずれかを有している場合、
第1の電極1303から正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順
に積層する。なお各層の境目は必ずしも明確である必要はなく、互いの層を構成している
材料が一部混合し、界面が不明瞭になっている場合もある。各層には、有機系の材料、無
機系の材料を用いることが可能である。有機系の材料として、高分子系、中分子系、低分
子系のいずれの材料も用いることが可能である。なお中分子系の材料とは、構造単位の繰
返しの数(重合度)が2から20程度の低重合体に相当する。正孔注入層と正孔輸送層と
の区別は必ずしも厳密なものではなく、これらは正孔輸送性(正孔移動度)が特に重要な
特性である意味において同じである。
【0076】
図13に示した画素の場合、発光素子1302から発せられる光を、白抜きの点線矢印
で示すように第1の電極1303側から取り出すことができる。
【0077】
上記の構成により、同じ開口率であっても従来の発光装置よりも取り出し効率を高める
ことができ、結果的に高い外部量子効率を得ることができる。
【0078】
なお、本実施例では、スイッチング用トランジスタ1300がnチャネル型の例を示し
ているが、スイッチング用トランジスタ1300はpチャネル型であっても良い。また、
本実施例では駆動用トランジスタ1301がpチャネル型の例を示しているが、駆動用ト
ランジスタは1301はnチャネル型であっても良い。
【実施例5】
【0079】
図14に、スイッチング用トランジスタ1400がnチャネル型、駆動用トランジスタ
1401がpチャネル型で、発光素子1402から発せられる光を第1の電極1403側
から取り出す場合の、アクティブマトリスク型発光装置の画素部の断面図を示す。スイッ
チング用トランジスタ1400および駆動用トランジスタ1401は逆スタガ型(ボトム
ゲート型)である。
【0080】
スイッチング用トランジスタ1400および駆動用トランジスタ1401は層間絶縁膜
1404で覆われている。基板1408上に透光膜1405が形成されており、透光膜1
405上に発光素子1402が形成されている。発光素子1402には、第1の電極14
03、電界発光層1406、第2の電極1407が順に積層されている。
【0081】
層間絶縁膜1404は、有機樹脂膜、無機絶縁膜またはシロキサン系材料を出発材料と
して形成されたSi−O−Si結合を含む絶縁膜(以下、シロキサン系絶縁膜と呼ぶ)を
用いて形成することができる。シロキサン系絶縁膜は、置換基に水素の他、フッ素、アル
キル基、または芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有していても良い。層間絶縁膜1
404に、低誘電率材料(low−k材料)と呼ばれる材料を用いていても良い。
【0082】
透光膜1405は、窒化珪素、窒化酸化珪素などの窒素及び珪素を含む絶縁膜である。
そして透光膜1405は、窒素の組成比が、10atomic%以上、より望ましくは2
5atomic%以上となっており、例えばスパッタ法またはCVD法などを用いて形成
することができる。なお、透光膜1405中に窒素と酸素を有する場合、窒素の組成比が
酸素の組成比よりも高くなるようにする。透光膜1405は、ゲート絶縁膜としても機能
するため、トップゲート型と異なり透光膜およびゲート絶縁膜は同一工程で形成可能であ
る。
【0083】
第1の電極1403に、透光性酸化物導電材料と酸化珪素とを用いる。透光性酸化物導
電材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(
IZO)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)などを用いることが可能である。
【0084】
また、第2の電極1407は、光を反射もしくは遮蔽する材料及び膜厚で形成し、なお
かつ仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などで形成
することができる。具体的には、LiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr
等のアルカリ土類金属、これらを含む合金(Mg:Ag、Al:Li、Mg:Inなど)
、およびこれらの化合物(CaF2、CaN)の他、YbやEr等の希土類金属を用いる
ことができる。また電子注入層を設ける場合、Alなどの他の導電層を用いることも可能
である。
【0085】
電界発光層1406は、単数または複数の層で構成されている。複数の層で構成されて
いる場合、これらの層は、キャリア輸送特性の観点から正孔注入層、正孔輸送層、発光層
、電子輸送層、電子注入層などに分類することができる。電界発光層1406が発光層の
他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層のいずれかを有している場合、
第1の電極1403から正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順
に積層する。なお各層の境目は必ずしも明確である必要はなく、互いの層を構成している
材料が一部混合し、界面が不明瞭になっている場合もある。各層には、有機系の材料、無
機系の材料を用いることが可能である。有機系の材料として、高分子系、中分子系、低分
子系のいずれの材料も用いることが可能である。なお中分子系の材料とは、構造単位の繰
返しの数(重合度)が2から20程度の低重合体に相当する。正孔注入層と正孔輸送層と
の区別は必ずしも厳密なものではなく、これらは正孔輸送性(正孔移動度)が特に重要な
特性である意味において同じである。
【0086】
図14に示した画素の場合、発光素子1402から発せられる光を、白抜きの点線矢印
で示すように第1の電極1403側から取り出すことができる。
【0087】
上記の構成により、同じ開口率であっても従来の発光装置よりも取り出し効率を高める
ことができ、結果的に高い外部量子効率を得ることができる。
【0088】
なお、本実施例では、スイッチング用トランジスタ1400がnチャネル型の例を示し
ているが、スイッチング用トランジスタ1400はpチャネル型であっても良い。また、
本実施例では駆動用トランジスタ1401がpチャネル型の例を示しているが、駆動用ト
ランジスタは1401はnチャネル型であっても良い。
【実施例6】
【0089】
本実施例では、実施例2における具体的な素子構造の一例を示す。
【0090】
図11(A)は、透光膜507の上に透光性酸化物導電材料および酸化珪素からなる第
1電極501、電界発光層502、陰極である第2電極503の順で積層している。
【0091】
透光膜507として窒化珪素、窒化酸化珪素などの窒素及び珪素を含む絶縁膜、第1電
極501としてITSOを用いる。また、電界発光層502には、正孔注入層としてCu
Pc(銅フタロシアニン)、正孔輸送層としてα−NPD、発光層としてAlq3:DM
Qd(DMQd:キナクリドン誘導体)、電子輸送層としてAlq3、電子注入層として
LiFが順に積層されている。
【0092】
図11(D)は、陰極である第1電極501の上に電界発光層502、透光性酸化物導
電材料および酸化珪素からなる第2電極503、透光膜507の順で積層している。
【0093】
電界発光層502には、電子注入層としてLiF、電子輸送層としてAlq3、発光層
としてAlq3:DMQd、正孔輸送層としてα−NPD、正孔注入層としてCuPcが
順に積層されている。また、第2電極503としてITSO、透光膜507として窒化珪
素、窒化酸化珪素などの窒素及び珪素を含む絶縁膜を用いる。
【0094】
陽極に透光性酸化物導電材料および酸化珪素を用い、なおかつ窒化珪素、窒化酸化珪素
などの窒素及び珪素を含む絶縁膜を該電極に接するように形成することで、同じ開口率で
あっても従来の発光装置よりも取り出し効率を高めることができ、結果的に高い外部量子
効率を得ることができる。
【0095】
一方、図11(B)および(C)は、一般的に陽極材料として用いられるITSOを陰
極に用いた例である。
【0096】
図11(B)は、陽極である第1電極501の上に電界発光層502、透光性酸化物導
電材料および酸化珪素からなる第2電極503、透光膜507の順で積層している。
【0097】
電界発光層502には、正孔注入層としてCuPc、正孔輸送層としてα−NPD、発
光層としてAlq3:DMQd、電子輸送層としてAlq3、電子注入層としてBzOS:
Li(BzOS:ベンゾオキサゾール誘導体)が順に積層されている。また、第2電極5
03としてITSO、透光膜507として窒化珪素、窒化酸化珪素などの窒素及び珪素を
含む絶縁膜を用いる。
【0098】
また、図11(C)は、透光膜507の上に透光性酸化物導電材料および酸化珪素から
なる第1電極501、電界発光層502、陽極である第2電極503の順で積層している

【0099】
透光膜507として窒化珪素、窒化酸化珪素などの窒素及び珪素を含む絶縁膜、第1電
極501としてITSOを用いる。また、電界発光層502には、電子注入層としてBz
OS:Li、電子輸送層としてAlq3、発光層としてAlq3:DMQd、正孔輸送層と
してα−NPD、正孔注入層としてCuPcが順に積層されている。
【0100】
一般的にITSOは、陽極材料として用いられている。図11(B)や(C)のように
陽極材料を陰極として機能させる場合には、電子注入層に陰極材料であるLi等を混合す
ればよい。
【0101】
上記の構成により、陰極材料に透光性酸化物導電材料および酸化珪素を用いても、これ
らの材料を陽極として用いた場合と同様に、同じ開口率であっても従来の発光装置よりも
取り出し効率を高めることができ、結果的に高い外部量子効率を得ることができる。
【0102】
なお、発光層の境目は必ずしも明確である必要はなく、互いの層を構成している材料が
一部混合し、界面が不明瞭になっている場合もある。また、電極材料や発光層に用いる材
料は上記化合物に限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面上に設けられた第1の電極と、
前記第1の電極上に設けられた電界発光層と、
前記第1の電極と重なるように、なおかつ前記電界発光層上に設けられた第2の電極と、
前記第2の電極と接するように設けられた絶縁膜とを有し、
前記絶縁膜は、珪素及び窒素を含み、
前記第2の電極は、透光性酸化物導電材料及び酸化珪素を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜に接し、なおかつ前記第1の絶縁膜上に設けられた第1の電極と、
前記第1の電極上に設けられた電界発光層と、
前記第1の電極と重なるように、なおかつ前記電界発光層上に設けられた第2の電極と、
前記第2の電極と接するように設けられた第2の絶縁膜とを有し、
前記第1の絶縁膜及び前記第2の絶縁膜は、それぞれ珪素及び窒素を含み、
前記第1の電極及び前記第2の電極は、それぞれ透光性酸化物導電材料及び酸化珪素を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1において、前記絶縁膜における前記窒素の組成比は10atomic%以上であることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1において、前記絶縁膜における前記窒素の組成比は25atomic%以上であることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項2において、前記第1の絶縁膜及び前記第2の絶縁膜における前記窒素の組成比は、それぞれ10atomic%以上であることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項2において、前記第1の絶縁膜及び前記第2の絶縁膜における前記窒素の組成比は、それぞれ25atomic%以上であることを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項1において、前記第2の電極から光が取り出されることを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項2において、前記第1の電極及び前記第2の電極の双方から光が取り出されることを特徴とする発光装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一において、前記透光性酸化物導電材料は、ガリウムが添加された酸化亜鉛、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛、または酸化インジウム亜鉛であることを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−199093(P2010−199093A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134948(P2010−134948)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【分割の表示】特願2004−295710(P2004−295710)の分割
【原出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】