説明

発光装置

【課題】従来よりも駆動電圧が低く、なおかつ寿命の長い発光装置である。
【解決手段】陽極と、陰極と、陽極及び陰極の間に設けられた第1の混合領域と、第1の混合領域と接する第2の混合領域とを有し、第1の混合領域及び第2の混合領域はホスト材料を有し、ホスト材料は、第1の混合領域と第2の混合領域との境界領域において濃度が高くなるような濃度勾配を有する発光装置である。ホスト材料の濃度が高い領域に発光材料を添加することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極と、陰極と、電界を加えることで発光が得られる有機化合物を含む膜(
以下、「有機化合物層」と記す)と、を有する有機発光素子を用いた発光装置に関する。
本発明では特に、従来よりも駆動電圧が低く、なおかつ素子の寿命が長い有機発光素子を
用いた発光装置に関する。なお、本明細書中における発光装置とは、発光素子として有機
発光素子を用いた画像表示デバイスもしくは発光デバイスを指す。また、有機発光素子に
コネクター、例えば異方導電性フィルム(FPC:Flexible printed circuit)もしくはTAB
(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けら
れたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または
有機発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュ
ールも全て発光装置に含むものとする。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、電界を加えることにより発光する素子である。その発光機構は、電極
間に有機化合物層を挟んで電圧を印加することにより、陰極から注入された電子および陽
極から注入された正孔が有機化合物層中の発光中心で再結合して励起状態の分子(以下、
「分子励起子」と記す)を形成し、その分子励起子が基底状態に戻る際にエネルギーを放
出して発光すると言われている。
【0003】
なお、有機化合物が形成する分子励起子の種類としては、一重項励起状態と三重項励起
状態が可能であるが、本明細書中ではどちらの励起状態が発光に寄与する場合も含むこと
とする。
【0004】
このような有機発光素子において、通常、有機化合物層は1μmを下回るほどの薄膜で形
成される。また、有機発光素子は、有機化合物層そのものが光を放出する自発光型の素子
であるため、従来の液晶ディスプレイに用いられているようなバックライトも必要ない。
したがって、有機発光素子は極めて薄型軽量に作製できることが大きな利点である。
【0005】
また、例えば100〜200nm程度の有機化合物層において、キャリアを注入してから再結合
に至るまでの時間は、有機化合物層のキャリア移動度を考えると数十ナノ秒程度であり、
キャリアの再結合から発光までの過程を含めてもマイクロ秒以内のオーダーで発光に至る
。したがって、非常に応答速度が速いことも特長の一つである。
【0006】
さらに、有機発光素子はキャリア注入型の発光素子であるため、直流電圧での駆動が可
能であり、ノイズが生じにくい。駆動電圧に関しては、まず有機化合物層の厚みを100nm
程度の均一な超薄膜とし、また、有機化合物層に対するキャリア注入障壁を小さくするよ
うな電極材料を選択し、さらにはシングルヘテロ構造(二層構造)を導入することによっ
て、5.5Vで100cd/m2の十分な輝度が達成された(文献1:C. W. Tang and S. A. VanSlyk
e, "Organic electroluminescent diodes", Applied Physics Letters, vol. 51, No.12,
913-915 (1987))。
【0007】
こういった薄型軽量・高速応答性・直流低電圧駆動などの特性から、有機発光素子は次
世代のフラットパネルディスプレイ素子として注目されている。また、自発光型であり視
野角が広いことから、視認性も比較的良好であり、携帯機器の表示画面に用いる素子とし
て有効と考えられている。
【0008】
ところで、文献1において示された有機発光素子の構成であるが、まず、有機化合物層
に対するキャリア注入障壁を小さくする方法として、仕事関数が低い上に比較的安定なMg
:Ag合金を陰極に用い、電子の注入性を高めている。このことにより、有機化合物層に大
量のキャリアを注入することを可能としている。
【0009】
さらに有機化合物層として、ジアミン化合物からなる正孔輸送層とトリス(8−キノリ
ノラト)アルミニウム(略称;Alq3)からなる電子輸送性発光層とを積層するという、シ
ングルヘテロ構造を適用することにより、キャリアの再結合効率を飛躍的に向上させてい
る。このことは、以下のように説明される。
【0010】
例えば、Alq3単層のみを有する有機発光素子の場合では、Alq3が電子輸送性であるため
、陰極から注入された電子のほとんどは正孔と再結合せずに陽極に達してしまい、発光の
効率は極めて悪い。すなわち、単層の有機発光素子を効率よく発光させる(あるいは低電
圧で駆動する)ためには、電子および正孔の両方をバランスよく輸送できる材料(以下、
「バイポーラー材料」と記す)を用いる必要があり、Alq3はその条件を満たしていない。
【0011】
しかし、文献1のようなシングルへテロ構造を適用すれば、陰極から注入された電子は
正孔輸送層と電子輸送性発光層との界面でブロックされ、電子輸送性発光層中へ閉じこめ
られる。したがって、キャリアの再結合が効率よく電子輸送性発光層で行われ、効率のよ
い発光に至るのである。
【0012】
このようなキャリアのブロッキング機能の概念を発展させると、キャリアの再結合領域
を制御することも可能となる。その例として、正孔をブロックできる層(正孔ブロッキン
グ層)を正孔輸送層と電子輸送層との間に挿入することにより、正孔を正孔輸送層内に閉
じこめ、正孔輸送層の方を発光させることに成功した報告がある。(文献2:Yasunori K
IJIMA, Nobutoshi ASAI and Shin-ichiro TAMURA, "A Blue Organic Light Emitting Dio
de", Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 38, 5274-5277(1999))。
【0013】
また、文献1における有機発光素子は、いわば正孔の輸送は正孔輸送層が行い、電子の
輸送および発光は電子輸送性発光層が行うという、機能分離の発想であるとも言える。こ
の機能分離の概念はさらに、正孔輸送層と電子輸送層の間に発光層を挟むというダブルへ
テロ構造(三層構造)の構想へと発展した(文献3:Chihaya ADACHI, Shizuo TOKITO, T
etsuo TSUTSUI and Shogo SAITO, "Electroluminescence in Organic Films with Three-
Layered Structure", Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 27, No. 2, L269-L2
71(1988))。
【0014】
こういった機能分離の利点としては、機能分離することによって一種類の有機材料に様
々な機能(発光性、キャリア輸送性、電極からのキャリア注入性など)
を同時に持たせる必要がなくなり、分子設計等に幅広い自由度を持たせることができる点
にある(例えば、無理にバイポーラー材料を探索する必要がなくなる)
。つまり、発光特性のいい材料、キャリア輸送性が優れる材料などを、各々組み合わせる
ことで、容易に高発光効率が達成できるということである。
【0015】
これらの利点から、文献1で述べられた積層構造の概念(キャリアブロッキング機能あ
るいは機能分離)自体は、現在に至るまで広く利用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、以上で述べたような積層構造は異種物質間の(特に絶縁体同士の)接合
であるため、その界面には必ずエネルギー障壁が生じることになる。エネルギー障壁が存
在すれば、その界面においてキャリアの移動は妨げられるため、以下に述べるような二つ
の問題点が提起される。
【0017】
まず一つは、駆動電圧のさらなる低減へ向けての障害になるという点である。
実際、現在の有機発光素子において、駆動電圧に関しては共役ポリマーを用いた単層構造
の素子の方が優れており、パワー効率(単位:[lm/W])でのトップデータ(ただし、一重
項励起状態からの発光を比較)を保持していると報告されている(文献4:筒井哲夫、「
応用物理学会有機分子・バイオエレクトロニクス分科会会誌」、Vol. 11、No. 1、P.8(2
000))。
【0018】
なお、文献4で述べられている共役ポリマーはバイポーラー材料であり、キャリアの再
結合効率に関しては積層構造と同等なレベルが達成できる。したがって、バイポーラー材
料を用いるなどの方法で、積層構造を用いることなくキャリアの再結合効率さえ同等にで
きるのであれば、界面の少ない単層構造の方が実際は駆動電圧が低くなることを示してい
る。
【0019】
このことは、有機化合物層内における各層間の界面(例えば正孔輸送層と発光層との間
のことであり、以下、「有機界面」と記す)においてキャリアの移動が妨げられ、より高
い駆動電圧が必要になってしまったと説明できる。
【0020】
例えば電極と有機化合物層との界面においては、エネルギー障壁を緩和するような材料
を挿入し、キャリアの注入性を高めて駆動電圧を低減する方法がある(文献5:Takeo Wa
kimoto, Yoshinori Fukuda, Kenichi Nagayama, Akira Yokoi, Hitoshi Nakada, and Mas
ami Tsuchida, "Organic EL Cells Using Alkaline Metal Compounds as Electron Injec
tion Materials", IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES, VOL. 44, NO. 8, 1245-124
8(1997))。文献5では、電子注入層としてLi2Oを用いることにより、駆動電圧の低減に
成功している。
【0021】
しかしながら、有機界面のキャリア移動性に関してはいまだ未解決の分野であり、バイ
ポーラー材料を用いた単層構造の低駆動電圧に追いつくための重要なポイントであると考
えられる。
【0022】
さらに、エネルギー障壁に起因するもう一つの問題点として、有機発光素子の素子寿命
に対する影響が考えられる。すなわち、キャリアの移動が妨げられ、チャージが蓄積する
ことによる輝度の低下である。
【0023】
この劣化機構に関してははっきりした理論は確立されていないが、陽極と正孔輸送層と
の間に正孔注入層を挿入し、さらにdc駆動ではなく矩形波のac駆動にすることによって、
輝度の低下を抑えることができるという報告がある(文献6:S. A. VanSlyke, C. H. Ch
en, and C. W. Tang, "Organic electroluminescent devices with improved stability"
, Applied Physics Letters, Vol. 69, No. 15, 2160-2162(1996))。このことは、正孔
注入層の挿入およびac駆動によって、チャージの蓄積を排除することにより、輝度の低下
を抑えることができたという実験的な裏付けと言える。
【0024】
以上のことから、積層構造は容易にキャリアの再結合効率を高めることができ、なおか
つ機能分離の観点から材料の選択幅を広くできるというメリットを持つ一方で、有機界面
を多数作り出すことによって(特にキャリアをブロックしてキャリアを再結合させるため
の有機界面を作り出すことによって)キャリアの移動を妨げ、駆動電圧や輝度の低下に影
響を及ぼしていると言える。
【0025】
そこで本発明では、従来用いられている積層構造の利点(機能分離)を活かしつつ、な
おかつ有機化合物層中に存在するエネルギー障壁を緩和することによってキャリアの移動
性を高め、従来よりも駆動電圧が低い上に素子の寿命が長い有機発光素子を提供すること
を課題とする。
【0026】
特に、発光層においてキャリアをブロックしてキャリアを再結合させるという従来用い
られている積層構造とは、異なる概念の素子を作製することにより、有機化合物層中に存
在する有機界面を削除してキャリアの移動性を高めると同時に、なおかつ積層構造の機能
分離と同様に各種複数の材料の機能を発現させる(以下、「機能発現」と記す)ことを課
題とする。それにより、従来よりも駆動電圧が低い上に素子の寿命が長い有機発光素子を
提供することを課題とする。
【0027】
さらに、このような有機発光素子を用いることにより、従来よりも駆動電圧が低く、な
おかつ寿命の長い発光装置を提供することを課題とする。さらに、前記発光装置を用いて
電気器具を作製することにより、従来よりも低消費電力で、なおかつ長保ちする電気器具
を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
積層構造におけるエネルギー障壁の緩和に関しては、文献5に見られるようなキャリア
注入層の挿入という技術に顕著に見られる。正孔注入層を例として、エネルギーバンドダ
イアグラムを用いた説明を図1に示す。
【0029】
図1(a)では陽極101と正孔輸送層102を直接接合しているが、この場合、陽極101と正孔
輸送層102のエネルギー障壁104は大きい。しかしながら、陽極のイオン化ポテンシャル(
金属の場合、仕事関数と同義である)と正孔輸送層の最高被占分子軌道(以下、「HOMO」
と記す)準位との中間に位置するHOMO準位を有する材料を、正孔注入層103として挿入す
ることにより、エネルギー障壁を階段状に設計することができる(図1(b))。
【0030】
図1(b)のような階段状のエネルギー障壁を設計することにより、電極からのキャリア
注入性を高め、確かに駆動電圧をある程度までは下げることができる。
しかしながら問題点は、層の数を増やすことによって、有機界面の数は逆に増加すること
である。このことが、文献4で示されているように、単層構造の方が駆動電圧・パワー効
率のトップデータを保持している原因であると考えられる。
【0031】
逆に言えば、この点を克服することにより、積層構造のメリット(様々な材料を組み合
わせることができ、複雑な分子設計が必要ない)を活かしつつ、なおかつ単層構造の駆動
電圧・パワー効率に追いつくことができる。
【0032】
その根本的な構想としては、有機界面の数を増やすことなく、有機化合物層中のエネル
ギー障壁を緩和し、キャリアの移動を妨げないようにすることができればよい。本発明者
は、以下に示すような方法でこの構想を実現できる素子構造を考案した。
【0033】
まず、正孔に対するエネルギー障壁を緩和する手法であるが、HOMO準位の高い(イオン
化ポテンシャルの小さい)正孔注入材料と、正孔移動度の高い正孔輸送材料とを混合した
層(以下、「正孔輸送性混合層」と記す)を設ければよい。この手法によって、陽極側か
らの正孔の受け取りを正孔注入材料が、正孔の輸送を正孔輸送材料が、それぞれ正孔輸送
性混合層内で役割を果たし、従来の正孔注入層と正孔輸送層という二層の機能を一層で実
現できる。
【0034】
また、上で述べた正孔輸送性混合層に、濃度勾配を形成することが好ましい。
すなわち、図2に示すように、陽極に近い側は正孔注入材料の割合が多く、陽極から離れ
るにしたがって正孔輸送材料の割合が多くなっていくものである。このような濃度勾配を
形成することによって、陽極側からの正孔の受け取りから輸送までが、大きなエネルギー
障壁を形成することなく潤滑に行われ、駆動電圧の低下および長寿命化に貢献する。
【0035】
なお、図2における濃度勾配は、便宜上直線を用いて図示したが、必ずしも直線となる
必要はなく、増加ないしは減少の勾配が形成されていればよいものとする。実際、制御す
る際には曲線となる場合が多いと考えられる。本明細書で述べる他の濃度勾配についても
、同様とする。
【0036】
次に、電子に対するエネルギー障壁を緩和する手法であるが、最低空分子軌道(以下、
「LUMO」と記す)準位の低い(電子親和力の大きい)電子注入材料と、電子移動度の高い
電子輸送材料とを混合した層(以下、「電子輸送性混合層」と記す)を設ければよい。こ
の手法によって、陰極側からの電子の受け取りを電子注入材料が、電子の輸送を電子輸送
材料が、それぞれ電子輸送性混合層内で役割を果たし、従来の電子注入層と電子輸送層と
いう二層の機能を一層で実現できる。
【0037】
また、上で述べた電子輸送性混合層に、濃度勾配を形成することが好ましい。
すなわち、図3に示すように、陰極に近い側は電子注入材料の割合が多く、陰極から離れ
るにしたがって電子輸送材料の割合が多くなっていくものである。このような濃度勾配を
形成することによって、陰極側からの電子の受け取りから輸送までが、大きなエネルギー
障壁を形成することなく潤滑に行われ、駆動電圧の低下および長寿命化に貢献する。
【0038】
さらに、発光層におけるエネルギー障壁を緩和する手法もある。すなわち、正孔移動度
の高い正孔輸送材料と、電子移動度の高い電子輸送材料とを混合してバイポーラー性とし
た層(以下、「バイポーラー性混合層」と記す)を、発光層として設ければよい。この場
合、発光層の両端の界面におけるキャリアブロッキング機能は小さくなるが、電子輸送層
−バイポーラ性混合層間のキャリア移動度差、および正孔輸送層−バイポーラ性混合層間
のキャリア移動度差によって、キャリアはバイポーラ性混合層で再結合しやすくなる。
【0039】
また、上で述べたバイポーラー性混合層に、濃度勾配を形成することが好ましい。すな
わち、図4に示すように、陽極に近い側は正孔輸送材料の割合が多く、陰極に近づくにし
たがって電子輸送材料の割合が多くなっていくものである。このような濃度勾配を形成す
ることによって、正孔および電子の輸送から再結合に到るまでが、大きなエネルギー障壁
を形成することなく潤滑に行われ、駆動電圧の低下および長寿命化に貢献する。
【0040】
なお、バイポーラー性混合層は、励起エネルギーの低い材料の方が発光すると考えられ
る。本明細書中における励起エネルギーとは、HOMOとLUMOとのエネルギー差のことを指す
。HOMOに関しては、光電子分光法により測定可能であり、イオン化ポテンシャルと同義と
考えてよい。また、励起エネルギーを便宜的に吸収スペクトル末端と定義することで、そ
の励起エネルギーとHOMO準位の値からLUMOを算出できる。
【0041】
さらに、上で述べたバイポーラー性混合層に、発光材料をドープして発光させる手法も
ある。この場合ドーパントである発光材料は、バイポーラー性混合層に含まれる正孔輸送
材料および電子輸送材料よりも、低い励起エネルギーを有する必要がある。特に、キャリ
アトラップ型のドーパント(例;ルブレン)を用いると、キャリアの再結合効率がさらに
高まるため好ましい。
【0042】
また、文献2では正孔ブロッキング層が示されたが、このような層は一般にブロッキン
グ材料で構成される。ブロッキング材料とは、発光層の材料よりも大きな励起エネルギー
を有するものが一般的であり(すなわち、分子励起子の拡散を防ぐことができ)、さらに
キャリアもブロックできる材料のことである。主に正孔をブロックする場合が多い。
【0043】
本発明者は、ブロッキング材料と、発光層の材料(あるいは発光層のホスト材料)とを
混合した層(以下、「ブロッキング性混合層」と記す)を形成する手法についても考案し
た。この場合、ブロッキング性混合層は発光層としても機能することもでき、層内部で効
率よくキャリアおよび分子励起子をブロックできる発光層という見方もできる。
【0044】
ブロッキング性混合層に関しては、特に濃度勾配を形成することが好ましい。
なぜならば、発光層から離れるに従い徐々にブロッキング材料の濃度を高くすることによ
り、ブロッキングしない方のキャリア(正孔ブロッキング材料であれば電子)の移動を潤
滑にできるからである。
【0045】
ところで近年、三重項励起状態から基底状態に戻る際に放出されるエネルギー(以下、
「三重項励起エネルギー」と記す)を発光に変換できる有機発光素子が相次いで発表され
、その発光効率の高さが注目されている(文献7:D. F. O'Brien, M. A. Baldo, M. E.
Thompson and S. R. Forrest, "Improved energy transfer in electrophosphorescent d
evices", Applied Physics Letters, vol. 74, No. 3, 442-444 (1999))(文献8:Tets
uo TSUTSUI, Moon-Jae YANG, Masayuki YAHIRO, Kenji NAKAMURA, Teruichi WATANABE, T
aishi TSUJI, Yoshinori FUKUDA, Takeo WAKIMOTO and Satoshi MIYAGUCHI, "High Quant
um Efficiency in Organic Light-Emitting Devices with Iridium-Complex as a Triple
t Emissive Center", Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 38, L1502-L1504 (1
999))。
【0046】
文献7では白金を中心金属とする金属錯体を、文献8ではイリジウムを中心金属とする
金属錯体を用いている。これらの三重項励起エネルギーを発光に変換できる有機発光素子
(以下、「三重項発光素子」と記す)は、従来よりも高輝度発光・高発光効率を達成する
ことができる。
【0047】
しかしながら、文献8の報告例によると、初期輝度を500cd/m2に設定した場合の輝度の
半減期は170時間程度であり、素子寿命に問題がある。そこで、本発明を三重項発光素子
に適用することにより、三重項励起状態からの発光による高輝度発光・高発光効率に加え
、素子の寿命も長いという非常に高機能な発光素子が可能となる。
【0048】
したがって、以上に述べたように、キャリア輸送層や発光層を混合層とすることによっ
て界面の数を減少させ(あるいはエネルギー障壁を緩和させ)、キャリアの移動を潤滑に
するという本発明の概念を、三重項発光素子に適用したものも本発明に含めるものとする

【0049】
ところで、有機界面の形成によりキャリアの移動が妨げられるモデルとして、本発明者
は以下に述べるような二つの機構を考えている。
【0050】
まず一つの機構として、有機界面のモルフォロジーから生じるものが考えられる。有機
発光素子における有機化合物層は通常、アモルファス状態の膜であり、これは有機化合物
の分子同士が、双極子相互作用を主とした分子間力で凝集することにより形成されている
。ところが、このような分子の凝集体を用いてヘテロ構造(積層構造)を形成すると、分
子のサイズや形状の違いがヘテロ構造の界面(すなわち有機界面)に大きな影響を及ぼす
可能性がある。
【0051】
特に、分子のサイズが大きく異なる材料を用いてヘテロ構造を形成した場合、その有機
界面における接合の整合性が悪くなると考えられる。その概念図を図21に示す。図21
では、小さい分子2101からなる第一の層2111と、大きい分子2102からなる第二の層2112を
積層している。この場合、形成される有機界面2113において、整合性の悪い領域2114が発
生してしまう。
【0052】
図21で示した整合性の悪い領域2114は、キャリアの移動を妨げるバリア(あるいはエ
ネルギー障壁)となる可能性があるため、駆動電圧のさらなる低減へ向けての障害になる
ことが示唆される。また、エネルギー障壁を越えられないキャリアはチャージとして蓄積
してしまい、先に述べたような輝度の低下を誘起してしまう可能性がある。
【0053】
もう一つの機構として、積層構造を形成する(すなわち有機界面を形成する)
工程から生じるものが考えられる。積層構造の有機発光素子は、キャリアのブロッキング
および機能分離の観点から、各層を形成する際のコンタミネーションを避けるため、通常
、図22に示すようなマルチチャンバー方式(インライン方式)の蒸着装置を用いて作製
する。
【0054】
図22に示した例は、正孔輸送層・発光層・電子輸送層の三層構造(ダブルへテロ構造
)を形成するための蒸着装置の概念図である。まず、搬入室に陽極(インジウム錫酸化物
(以下、「ITO」と記す)など)を有する基板を搬入し、まず紫外線照射室において真空
雰囲気中で紫外線を照射することにより、陽極表面をクリーニングする。特に陽極がITO
のような酸化物である場合、前処理室にて酸化処理を行う。さらに、積層構造の各層を形
成するため、蒸着室2201で正孔輸送層を、蒸着室2202〜2204で発光層(図22では、赤、
緑、青の三色)を、蒸着室2205で電子輸送層を成膜し、蒸着室2206で陰極を蒸着する。最
後に、封止室にて封止を行い、搬出室から取り出して有機発光素子を得る。
【0055】
このようなインライン方式の蒸着装置の特色としては、各層の蒸着を、それぞれ異なる
蒸着室2201〜2205において蒸着していることである。つまり、各層の材料がほとんど互い
に混入しないような装置構成となっている。
【0056】
ところが、蒸着装置の内部は通常10-4〜10-5パスカル程度に減圧されているものの
、極微量の気体成分(酸素や水など)は存在している。そして、この程度の真空度の場合
、それら極微量の気体成分でも、数秒もあれば容易に単分子レイヤー程度の吸着層を形成
してしまうと言われている。
【0057】
したがって、図22のような装置を用いて積層構造の有機発光素子を作製する場合、各
層を形成する間に大きなインターバルが生じてしまうことが問題なのである。つまり、各
層を形成する間のインターバル、特に第二搬送室を経由して搬送する際などに、極微量の
気体成分による吸着層(以下、「不純物層」と記す)
を形成してしまう懸念がある。
【0058】
その概念図を図23に示す。図23は、第一の有機化合物2301からなる第一の層2311と
、第二の有機化合物2302からなる第二の層2312とを積層する際に、その層間に微量の不純
物2303(水や酸素など)からなる不純物層2313が形成されている様子である。
【0059】
このようにして各層間(すなわち有機界面)に形成されてしまう不純物層は、有機発光
素子の完成後、キャリアをトラップする不純物領域となってキャリアの移動を妨げるため
、やはり駆動電圧を上昇させてしまう。さらに、キャリアをトラップする不純物領域が存
在すると、そこにはチャージが蓄積することになるため、先に述べたような輝度の低下を
誘起してしまう可能性がある。
【0060】
このような機構から考えると、以上で述べたような有機界面で生じる問題点(有機界面
のモルフォロジー悪化および不純物層の形成)を克服するためには、素子構造・作製工程
共に、従来の積層構造素子から脱する必要がある。例えば、有機界面を完全に排除した有
機発光素子の例として、正孔輸送材料と電子輸送材料とを混合しただけの単層(以下、「
混合単層」と記す)のみを、両電極間に設けた有機発光素子の報告がある(文献9:Shig
eki NAKA, Kazuhisa SHINNO, Hiroyuki OKADA, Hiroshi ONNAGAWA and Kazuo MIYASHITA,
"Organic Electroluminescent Devices Using a Mixed Single Layer", Japanese Journ
al of Applied Physics, Vol. 33, No. 12B, L1772-L1774(1994))。
【0061】
文献9では、正孔輸送性である4,4'−ビス[N−(3−メチルフェニル)
−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(以下、「TPD」と記す)と、電子輸送性であるAl
q3とを、1:4の割合で混合することによって単層構造を形成している。しかしながら、
積層構造(すなわち、TPDおよびAlq3からなる有機界面を形成するヘテロ構造)との比較
をすると、発光効率の点では積層構造に比べて劣っていることが示されている。
【0062】
その原因として、混合単層の場合、陽極から注入された正孔および陰極から注入された
電子が、再結合することなくそのまま対極へ抜けてしまうことが多くなるためと考えられ
る。積層構造はキャリアのブロッキング機能があるので、そのような問題は生じていない
のである。
【0063】
このことは、文献9の混合単層においては、機能発現が行われていないことが原因と言
い換えることができる。すなわち、有機化合物層内において、陽極に近い領域は正孔輸送
という機能を示し、陰極に近い領域は電子輸送という機能を示し、両電極から離れた部分
に発光領域(すなわちキャリアが再結合する領域)を設けるという、各機能を発現できる
領域を設けなければ、たとえ有機界面をなくしたとしても効率のよい発光には至らないの
である。また、有機化合物層内が全て発光層として機能するので、実際はキャリアの再結
合が電極の近くで行われる可能性があり、電極材料にエネルギー移動して消光することが
ある。
【0064】
このように混合単層では十分な性能を発揮できないことを考慮し、本発明者は特に、図
4におけるバイポーラー性混合層を発光領域として形成する際に、有機界面を排除し、な
おかつ文献7とは異なり機能発現が可能な有機発光素子を実現する手法を考案した。その
概念図を図24に示す。
【0065】
図24では、正孔輸送材料および電子輸送材料の2種類からなる有機化合物層2403にお
いて、正孔輸送材料からなる正孔輸送領域2405、電子輸送材料からなる電子輸送領域2406
、および正孔輸送材料と電子輸送材料とが混合された混合領域2407を設けてある。ここで
は基板2401上に陽極2402を設けてあるが、陰極2404の方を基板上に設ける逆の構造をとっ
てもよい。なお、このような素子の場合、正孔輸送層などの明確な層構造は形成していな
いので、各機能を示す「領域」という表現を用いている。
【0066】
このような素子を形成した場合、陽極側では正孔輸送材料が正孔を受け取り輸送し、一
方陰極側では電子輸送材料が電子を受け取り輸送することができる。さらに、混合領域24
07はバイポーラー性であるため、正孔および電子は双方とも混合領域2407を移動すること
ができ、この混合領域2407においてキャリアは再結合し発光に至る。すなわち、文献9の
混合単層とは異なり、各機能を発現できる領域が有機化合物層2403内に存在していること
になる。
【0067】
さらに、図24のような素子の場合、機能発現を可能にしながら、なおかつ従来の積層
構造のような有機界面は存在しない。したがって、上述の有機界面で生じる問題点(有機
界面のモルフォロジー悪化および不純物層の形成)を解決することができる。なお、発光
に至る混合領域が両電極から離れることにより、電極にエネルギー移動することによる消
光を防ぐこともできる。
【0068】
まず、有機界面のモルフォロジー悪化の解決について、図25を用いて説明する。図2
5は、小さい分子2501からなる領域2511と、大きい分子2502からなる領域2512と、小さい
分子2501および大きい分子2502の両方を含む混合領域2513と、からなる、図24に代表さ
れる有機発光素子である。図25から明らかなように、図21で存在していたような有機
界面2113は存在せず、整合性の悪い領域2114も存在しない。
【0069】
また、不純物層の形成の解決であるが、これは単純明快である。図24のような有機発
光素子を作製する場合、陽極上に正孔輸送材料を蒸着し、途中からそれに加えて電子輸送
材料を共蒸着の形で蒸着することで混合領域を形成し、混合領域を形成後は正孔輸送材料
の蒸着を止めることで電子輸送材料を蒸着すればよい。したがって、図22のような蒸着
装置を用いて有機発光素子を作製する際に生じる、インターバルが存在しない。つまり、
不純物層を形成する隙を与えることがないのである。
【0070】
このように、本発明の有機発光素子は、有機界面を形成することがないためキャリアの
移動が潤滑であり、駆動電圧および素子の寿命に悪影響を及ぼすことがなくなる。さらに
、積層構造と同様に機能分離されているため、発光効率の点でも問題はない。
【0071】
また、従来の積層構造が異種物質間の単なる接合(hetero-junction)であるのに対し
、本発明の構造はいわば混合接合(mixed-junction)であり、新しい概念に基づく有機発
光素子であると言える。
【0072】
したがって本発明では、陽極と、陰極と、前記陽極および前記陰極の間に設けられた有
機化合物層と、からなる有機発光素子を含む発光装置において、前記有機化合物層は、電
子移動度よりも正孔移動度の高い正孔輸送材料からなる正孔輸送領域と、正孔移動度より
も電子移動度の高い電子輸送材料からなる電子輸送領域と、を含み、かつ、前記正孔輸送
領域は前記電子輸送領域よりも前記陽極側に位置し、なおかつ、前記正孔輸送領域と前記
電子輸送領域との間に、前記正孔輸送材料および前記電子輸送材料の両方を含む混合領域
が設けられていることを特徴とする。
【0073】
なお、図24において、陽極と有機化合物層との間に、正孔の注入性を高める材料(以
下、「正孔注入材料」と記す)からなる正孔注入領域を挿入してもよい。また、陰極と有
機化合物層との間に、電子の注入性を高める材料(以下、「電子注入材料」と記す)から
なる電子注入領域を挿入してもよい。さらに、正孔注入領域と電子注入領域の両方を組み
込んでもよい。
【0074】
この場合、正孔注入材料または電子注入材料は、電極から有機化合物層へのキャリア注
入障壁を小さくするための材料であるため、電極から有機化合物層へのキャリアの移動を
潤滑にし、チャージの蓄積を排除できる効果がある。ただし、先に述べたような不純物層
の形成を避ける観点から、各注入材料と有機化合物層との間は、インターバルをおかずに
成膜することが好ましい。
【0075】
ところで、正孔輸送材料および電子輸送材料の両方を含む混合領域内において、陽極か
ら陰極への方向に対し、正孔輸送材料の濃度は徐々に減少し、かつ、電子輸送材料の濃度
は徐々に増加するような濃度勾配を形成することが、キャリアバランス制御の観点から好
ましい。また、本発明において、混合領域はキャリアの再結合領域でもあるため、10nm以
上の厚みがあることが望ましい。
【0076】
また、図26(a)に示すように、有機化合物層2603において、正孔輸送材料からなる正
孔輸送領域2605、電子輸送材料からなる電子輸送領域2606、および正孔輸送材料と電子輸
送材料とが混合された混合領域2607を設け、さらに混合領域2607に対し、ドーパントとし
て発光を呈する発光材料2608を添加する構造も本発明に含むこととする。なお、ここでは
基板2601上に陽極2602を設けてあるが、陰極2604の方を基板上に設ける逆の構造をとって
もよい。また、正孔注入領域や電子注入領域を、電極と有機化合物層との間に設けていて
もよい。
【0077】
発光材料2608を混合領域2607にドープすると、発光材料2608がキャリアをトラップする
ため再結合率が向上し、高い発光効率が期待できる。発光色を発光材料2608により制御で
きることも利点の一つと言える。ただしこの場合、発光材料2608における励起エネルギー
は、混合領域2607に含まれる化合物の中で最も小さいことが好ましい。
【0078】
また、発光領域は両電極からなるべく離すことで、電極材料にエネルギー移動すること
による消光(以下、「クエンチ」と記す)を防ぐことができる。したがって、発光材料を
ドープする領域は、混合領域内の全域ではなく、一部(特に中央部)であってもよい。
【0079】
さらに、図26(b)に示すように、有機化合物層2603において、正孔輸送材料からなる
正孔輸送領域2605、電子輸送材料からなる電子輸送領域2606、および正孔輸送材料と電子
輸送材料とが混合された混合領域2607を設け、さらに混合領域2607に対し、ブロッキング
材料2609を添加する構造も本発明に含むこととする。
なお、ここでは基板2601上に陽極2602を設けてあるが、陰極2604の方を基板上に設ける逆
の構造をとってもよい。また、正孔注入領域や電子注入領域を、電極と有機化合物層との
間に設けていてもよい。
【0080】
ブロッキング材料2609を混合領域2607にドープすると、混合領域2607におけるキャリア
の再結合率が向上し、分子励起子の拡散も防げるため、高い発光効率が期待できる。ただ
しこの場合、ブロッキング材料における励起エネルギーレベルは、混合領域2607に含まれ
る材料の中で最も大きいことが好ましい。
【0081】
また、ブロッキング材料は、正孔ないしは電子の片方をブロックする機能を有する場合
が多いため、混合領域内全域にドープしてしまうと、混合領域内のキャリアバランスを崩
すこともある。したがって、ブロッキング材料をドープする領域は、混合領域内の全域で
はなく、一部(特に端部)であってもよい。
【0082】
なお、図26(b)においては、さらに好ましい例として、発光材料2608も添加している
。すなわち、図26(a)と併合した形態である。ブロッキング材料2609が正孔ブロッキン
グ性を有する場合は、図26(b)のように、発光材料2608を添加している領域よりも陰極
側に正孔ブロッキング材料を添加すれば、発光材料が効率よく発光することになる。
【0083】
また、本発明を三重項発光素子に適用することにより、三重項励起状態からの発光によ
る高輝度発光・高発光効率に加え、文献8に比べて素子の寿命も長いという非常に高機能
な発光素子が可能となる。
【0084】
なお、三重項の分子励起子は、拡散長が一重項の分子励起子に比べて大きいため、ブロ
ッキング材料が混合領域に含まれていることが好ましい。すなわち、図26(b)を用いて
説明すると、発光材料2608として三重項励起エネルギーを発光に変換できる材料(以下、
「三重項発光材料」と記す)を用い、ブロッキング材料2609も同時に添加することが望ま
しい。
【0085】
以下ではさらに、図26で示したような発光材料を添加する形態において、より作製に
適したな例を述べる。その素子構造を図27に示す。
【0086】
図27の素子では、正孔輸送材料および電子輸送材料を含む有機化合物層2703において
、正孔輸送材料からなる正孔輸送領域2705、電子輸送材料からなる電子輸送領域2706、お
よび正孔輸送材料と電子輸送材料とが一定の割合にて混合された混合領域2707を設けてお
り、さらに混合領域2707には、発光を呈する発光材料2708を添加することにより発光領域
を形成してある。ここでは基板2701上に陽極2702を設けてあるが、陰極2704の方を基板上
に設ける逆の構造をとってもよい。
【0087】
なお、混合領域における正孔輸送材料と電子輸送材料との濃度比をx:yとした場合の
濃度プロファイルは、図28のようになる。
【0088】
このような素子を形成した場合、陽極側では正孔輸送材料が正孔を受け取り輸送し、一
方陰極側では電子輸送材料が電子を受け取り輸送することができる。さらに、混合領域27
07はバイポーラー性であるため、正孔および電子は双方とも混合領域2707を移動すること
ができる。また、混合領域2707は一定の割合x:yとしているため、作製が容易である。
【0089】
ここで重要なことは、混合領域2707において、発光材料を含む発光領域が形成されてい
ることである。つまり、発光材料を混合領域2707に添加することで、混合領域内をキャリ
アが再結合せずに素通りしてしまうことを防ぐと同時に、発光領域を電極から遠ざけ、電
極による消光(以下、「クエンチ」と記す)をも防止しているのである。
【0090】
したがって本発明では、陽極と、陰極と、前記陽極および前記陰極の間に設けられた有
機化合物層と、からなる有機発光素子を含む発光装置において、前記有機化合物層は、正
孔輸送材料からなる正孔輸送領域と、電子輸送材料からなる電子輸送領域と、を含み、か
つ、前記正孔輸送領域と前記電子輸送領域との間に、前記正孔輸送材料および前記電子輸
送材料を一定の割合にて含む混合領域が形成されており、なおかつ、前記混合領域内に、
発光を呈する発光材料が添加された発光領域を設けたことを特徴とする。
【0091】
なお、発光材料は、正孔輸送材料および電子輸送材料に比べて、励起エネルギーが小さ
いことが好ましい。これは、分子励起子のエネルギー移動を防ぐためである。
【0092】
また、図27において、陽極と有機化合物層との間に、正孔の注入性を高める材料(以
下、「正孔注入材料」と記す)からなる正孔注入領域を挿入してもよい。また、陰極と有
機化合物層との間に、電子の注入性を高める材料(以下、「電子注入材料」と記す)から
なる電子注入領域を挿入してもよい。さらに、正孔注入領域と電子注入領域の両方を組み
込んでもよい。
【0093】
この場合、正孔注入材料または電子注入材料は、電極から有機化合物層へのキャリア注
入障壁を小さくするための材料であるため、電極から有機化合物層へのキャリアの移動を
潤滑にし、チャージの蓄積を排除できる効果がある。ただし、先に述べたような不純物層
の形成を避ける観点から、各注入材料と有機化合物層との間は、インターバルをおかずに
成膜することが好ましい。
【0094】
また、混合領域においては、その混合比によってキャリアの再結合部はほぼ決まってく
る(バイポーラー性になればなるほど、ほぼ中央になる)。したがって、発光材料を混合
領域内の全域に添加してもよい(図29(a))が、一部に添加してもよい(図29(b))。
なお、図29では、図27の符号を引用している。
【0095】
さらに、図30(a)に示すように、有機化合物層2703において、正孔輸送材料からなる
正孔輸送領域2705、電子輸送材料からなる電子輸送領域2706、および正孔輸送材料と電子
輸送材料とが混合され、発光材料も添加された混合領域2707を設け、さらに混合領域2707
に対し、ブロッキング材料2709を添加する構造も本発明に含むこととする。なお、ここで
は基板2701上に陽極2702を設けてあるが、陰極2704の方を基板上に設ける逆の構造をとっ
てもよい。また、正孔注入領域や電子注入領域を、電極と有機化合物層との間に設けてい
てもよい。
【0096】
なお、この場合のブロッキング材料とは、励起エネルギーレベルが混合領域2707に含ま
れる材料の中で最も大きく、キャリアをブロックする機能ないしは分子励起子の拡散を防
ぐ機能を有する材料が好ましい。ブロッキング材料2709を混合領域2707に添加すると、混
合領域2707におけるキャリアの再結合率が向上し、分子励起子の拡散も防げるため、高い
発光効率が期待できる。ただし、ブロッキング材料は、正孔ないしは電子の片方をブロッ
クする機能を有する場合が多いため、混合領域内全域に添加してしまうと、混合領域内の
キャリアバランスを崩すこともある。したがって、ブロッキング材料を添加する領域は、
混合領域内の全域ではなく、一部とする。
【0097】
また、ブロッキング材料は通常、HOMO準位が低い、すなわち正孔をブロッキングできる
材料が有効である。したがって図30(b)に示すように、発光材料2708を添加している領
域よりも陰極側にブロッキング材料を添加する手法が有用である。
【0098】
さらに、このような素子構造に添加する発光材料としてを三重項発光材料を適用するこ
とにより、三重項励起状態からの発光による高輝度発光・高発光効率に加え、素子の寿命
も長いという非常に高機能な発光素子が可能となる。なお、三重項の分子励起子は、拡散
長が一重項の分子励起子に比べて大きいため、ブロッキング材料が混合領域に含まれてい
ることが好ましい。
【0099】
ところで、以上で述べたような正孔輸送材料および電子輸送材料からなる混合領域は、
バイポーラー性である必要があるため、混合領域において、正孔輸送材料と電子輸送材料
との合計質量に対する正孔輸送材料の質量の百分率は、10パーセント以上90パーセン
ト以下であることが好ましい。ただし、この比率は材料の組み合わせによって大きく変動
すると考えられる。
【0100】
また、正孔輸送材料および電子輸送材料からなる混合領域は発光領域、すなわちキャリ
アの再結合領域を含んでいるため、キャリアが素通りしないようある程度の厚みが必要と
なる。したがって前記混合領域は、10nm以上の厚みがあることが望ましい。また、バイポ
ーラーになる領域の抵抗が高いことを考えると、100nm以下が望ましい。
【0101】
以上のような発明を実施することにより、従来よりも駆動電圧が低く、なおかつ寿命の
長い発光装置を提供することができる。さらに、前記発光装置を用いて電気器具を作製す
ることにより、従来よりも低消費電力で、なおかつ長保ちする電気器具を提供することが
できる。
【発明の効果】
【0102】
本発明を実施することで、消費電力が少ない上に、寿命も優れた発光装置を得ることが
できる。さらに、そのような発光装置を光源もしくは表示部に用いることで、明るく消費
電力が少ない上に、長保ちする電気器具を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】正孔注入層の役割を示す図。
【図2】濃度勾配を示す図。
【図3】濃度勾配を示す図。
【図4】濃度勾配を示す図。
【図5】有機発光素子の構造を示す図。
【図6】有機発光素子の構造を示す図。
【図7】有機発光素子の構造を示す図。
【図8】有機発光素子の構造を示す図。
【図9】有機発光素子の構造を示す図。
【図10】有機発光素子の構造を示す図。
【図11】蒸着装置を示す図。
【図12】発光装置の断面構造を示す図。
【図13】発光装置の上面構造および断面構造を示す図。
【図14】発光装置の上面構造および断面構造を示す図。
【図15】発光装置の構成を示す図。
【図16】発光装置の構成を示す図。
【図17】電気器具の具体例を示す図。
【図18】電気器具の具体例を示す図。
【図19】エネルギーバンドダイアグラムを示す図。
【図20】エネルギーバンドダイアグラムを示す図。
【図21】有機化合物層の状態を表す図。
【図22】蒸着装置を示す図。
【図23】不純物層の形成を示す図。
【図24】有機発光素子の構造を示す図。
【図25】有機化合物層の状態を表す図。
【図26】有機発光素子の構造を示す図。
【図27】有機発光素子の構造を示す図。
【図28】濃度プロファイルを示す図。
【図29】有機発光素子の構造を示す図。
【図30】有機発光素子の構造を示す図。
【図31】蒸着装置を示す図。
【図32】蒸着装置を示す図。
【図33】有機発光素子の構造を示す図。
【図34】発光装置の断面構造を示す図。
【図35】発光装置の断面構造を示す図。
【図36】発光装置の構成を示す図。
【図37】発光装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0104】
以下では、本発明を実施する際の形態について述べる。なお、有機発光素子は、発光を
取り出すために少なくとも陽極または陰極の一方が透明であればよいが、本実施の形態で
は、基板上に透明な陽極を形成し、陽極から光を取り出す素子構造で記述する。実際は、
陰極から光を取り出す構造や、基板とは逆側から光を取り出す構造も適用可能である。
【0105】
まず、正孔輸送性混合層を形成した有機発光素子の実施の形態を、図5を用いて説明す
る。図5では、陽極502を有する基板501上に、正孔輸送性混合層503、発光層504、電子輸
送層505、陰極506を積層した構造を示した。なお、発光層504を挿入せず、正孔輸送性混
合層503ないしは電子輸送層505に発光を担わせることも可能である。正孔輸送性混合層50
3は、正孔注入材料および正孔輸送材料の両方が混合されて形成されている。
【0106】
なお、正孔輸送性混合層503は、図2に示したように、正孔注入材料と正孔輸送材料か
らなる濃度勾配が形成されていてもよい。この場合、正孔注入材料として酸化アルミニウ
ムのような絶縁性が高い材料を用いる時は、正孔注入材料の濃度勾配は急峻である(陽極
から離れるにつれてすぐに減衰する)ことが好ましい。
【0107】
次に、電子輸送性混合層を形成した有機発光素子の実施の形態を、図6を用いて説明す
る。図6では、陽極602を有する基板601上に、正孔輸送層603、発光層604、電子輸送性混
合層605、陰極606を積層した構造を示した。なお、発光層604を挿入せず、電子輸送性混
合層605ないしは正孔輸送層603に発光を担わせることも可能である。電子輸送性混合層60
5は、電子注入材料および電子輸送材料の両方が混合されて形成されている。
【0108】
なお、電子輸送性混合層605は、図3に示したように、電子注入材料と電子輸送材料か
らなる濃度勾配が形成されていてもよい。この場合、電子注入材料としてフッ化リチウム
のような絶縁性が高い材料を用いる時は、電子注入材料の濃度勾配は急峻である(すぐに
減衰する)ことが好ましい。
【0109】
次に、バイポーラー性混合層を形成した有機発光素子の実施の形態を、図7を用いて説
明する。図7では、陽極702を有する基板701上に、正孔注入層703、バイポーラー性混合
層704、電子注入層705、陰極706を積層した構造を示した。バイポーラー性混合層704は、
正孔輸送材料および電子輸送材料の両方が混合されて形成されている。
【0110】
なお、バイポーラー性混合層704は、図4に示したように、正孔輸送材料と電子輸送材
料とからなる濃度勾配が形成されていてもよい。
【0111】
また、図24に示すように、混合領域2407に含まれる正孔輸送材料として正孔輸送領域
2405の構成材料を用い、混合領域2407に含まれる電子輸送材料として電子輸送領域2406の
構成材料を用いることによって、混合領域2407と、正孔輸送領域2405および電子輸送領域
2406とを、連続的に接合してもよい。この場合、2種類の化合物(正孔輸送材料および電
子輸送材料)で、正孔輸送領域、発光領域、電子輸送領域という、従来であれば3層の役
割を果たすことができる利点がある。なお、図24では示していないが、陽極2402と正孔
輸送領域2405との間に正孔注入層を、陰極2404と電子輸送領域2406との間に電子注入層を
挿入してもよい。
【0112】
このような素子構造を実施することによって、不純物層の形成を防ぐことができるが、
この場合、有機発光素子を作製する製造工程が重要になる。そこで、このような素子構造
の製造方法について適した例を述べる。
【0113】
蒸着装置の概念図を、図31に示す。図31(a)はその上面図であるが、蒸着室として
一つの真空槽3110を設置し、その真空槽内に複数の蒸着源を設けてある、シングルチャン
バー方式である。そして、正孔注入材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子注入材料、
ブロッキング材料、発光材料、陰極の構成材料など、各種機能の異なる材料が、それぞれ
前記複数の蒸着源に別々に収納されている。
【0114】
このような蒸着室を有する蒸着装置においては、まず、搬入室に陽極(ITOなど)を有
する基板を搬入し、陽極がITOのような酸化物である場合、前処理室にて酸化処理を行う
(なお、図31(a)では図示していないが、陽極表面をクリーニングするために紫外線照
射室を設置することも可能である)。さらに、有機発光素子を形成する全ての材料は、真
空槽3110内において蒸着される。ただし陰極は、この真空槽3110内で形成してもよいし、
別に蒸着室を設けてそこで陰極を形成してもよい。要は、陰極を形成するまでの間を、一
つの真空槽3110内で蒸着すればよい。最後に、封止室にて封止を行い、搬送室を経由して
搬出室から取り出して有機発光素子を得る。
【0115】
このようなシングルチャンバー方式の蒸着装置を用いて本発明の有機発光素子を作製す
る手順を、図31(b)(真空槽3110の断面図)を用いて説明する。図31(b)では、図面簡
略化のため、二つの蒸着源(有機化合物蒸着源a3118および有機化合物蒸着源b3119)を有
する真空槽3110を用い、正孔輸送材料3116および電子輸送材料3117からなる有機化合物層
を形成する過程を示す。
【0116】
まず、真空槽3110内に、陽極3102を有する基板3101を搬入し、固定台3111にて固定する
(蒸着時には通常、基板は回転させる)。次に、真空槽3110内を減圧(10-4パスカル以
下が好ましい)した後、容器a3112を加熱し、正孔輸送材料3116を蒸発させ、所定の蒸着
レート(単位:[Å/s])に達してからシャッターa3114を開け、蒸着を開始する。この時
、シャッターb3115を閉じたまま、容器b3113も加熱しておく。
【0117】
その後、シャッターa3114を開いたまま、シャッターb3115を開けることによって、電子
輸送材料3117を共蒸着し(図31(b)で示した状態)、正孔輸送領域3103の後に混合領域3
104を形成する。この操作により、正孔輸送領域3103と混合領域3104との間には、不純物
層が混入しない。
【0118】
さらに電子輸送領域を形成するため、シャッターb3115を開けたままシャッターa3114を
閉じ、容器a3112の加熱を終了する。この操作により、混合領域3104と電子輸送領域との
間には、不純物層が形成されない。
【0119】
さらに、図26(a)に示した混合領域2607に、発光材料をドープして発光させる手法も
ある。この場合ドーパントである発光材料は、混合領域2607に含まれる正孔輸送材料およ
び電子輸送材料よりも、低い励起エネルギーを有する必要がある。
【0120】
このように発光材料をドープする場合も、不純物層の形成を防ぐため、有機発光素子を
作製する製造工程が重要になる。以下では、その製造方法について述べる。
【0121】
図32(a)は、蒸着装置の上面図であるが、蒸着室として一つの真空槽3210を設置し、
その真空槽内に複数の蒸着源を設けてある、シングルチャンバー方式である。そして、正
孔注入材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子注入材料、ブロッキング材料、発光材料
、陰極の構成材料など、各種機能の異なる材料が、それぞれ前記複数の蒸着源に別々に収
納されている。
【0122】
このような蒸着室を有する蒸着装置においては、まず、搬入室に陽極(ITOなど)を有
する基板を搬入し、陽極がITOのような酸化物である場合、前処理室にて酸化処理を行う
(なお、図32(a)では図示していないが、陽極表面をクリーニングするために紫外線照
射室を設置することも可能である)。さらに、有機発光素子を形成する全ての材料は、真
空槽3210内において蒸着される。ただし陰極は、この真空槽3210内で形成してもよいし、
別に蒸着室を設けてそこで陰極を形成してもよい。要は、陰極を形成するまでの間を、一
つの真空槽3210内で蒸着すればよい。最後に、封止室にて封止を行い、搬送室を経由して
搬出室から取り出して有機発光素子を得る。
【0123】
このようなシングルチャンバー方式の蒸着装置を用いて本発明の有機発光素子を作製す
る手順を、図32(b)(真空槽3210の断面図)を用いて説明する。図32(b)では、最も簡
単な例として、三つの蒸着源(有機化合物蒸着源a3216、有機化合物蒸着源b3217および有
機化合物蒸着源c3218)を有する真空槽3210を用い、正孔輸送材料3221、電子輸送材料322
2および発光材料3223を含む有機化合物層を形成する過程を示す。
【0124】
まず、真空槽3210内に、陽極3202を有する基板3201を搬入し、固定台3211にて固定する
(蒸着時には通常、基板は回転させる)。次に、真空槽3210内を減圧(10-4パスカル以
下が好ましい)した後、容器a3212を加熱し、正孔輸送材料3221を蒸発させ、所定の蒸着
レート(単位:[nm/s])に達してからシャッターa3214を開け、蒸着を開始する。この時
、シャッターb3215を閉じたまま、容器b3213も加熱しておく。
【0125】
その後、シャッターa3214を開いたまま、シャッターb3215を開けることによって、電子
輸送材料3222を共蒸着し、正孔輸送領域3203の後に混合領域3204を形成する。この操作に
より、正孔輸送領域3203と混合領域3204との間には、不純物層が混入しない。ここで、こ
の混合領域904形成の際、微量の発光材料3223も途中で添加しておく(図32(b)で示した
状態)。
【0126】
さらに電子輸送領域を形成するため、シャッターb3215を開けたままシャッターa3214を
閉じ、容器a3212の加熱を終了する。この操作により、混合領域3204と電子輸送領域との
間には、不純物層が形成されない。
【0127】
この方法を応用すれば、課題を解決するための手段で述べた有機発光素子は、全て作製
可能である。例えば、混合領域3204にブロッキング材料を添加する場合は、図32(b)に
そのブロッキング材料を蒸着するための蒸着源を設置し、混合領域の形成中に蒸発させれ
ばよい。
【0128】
また、正孔注入領域または電子注入領域を形成する場合でも、各注入材料の蒸着源を同
一の真空槽3210内に設置すればよい。例えば図32(b)において、陽極3202と正孔輸送領
域3203との間に正孔注入領域を蒸着にて設ける場合は、陽極3202上に正孔注入材料を蒸着
した後、インターバルをおかずにすぐ正孔輸送材料3221を蒸発させることで、不純物層の
形成を避けることができる。
【0129】
なお、以上で述べた混合領域には濃度勾配を形成することもできるので、ここで濃度勾
配の形成手法の例について言及しておく。ここでは、抵抗加熱による真空蒸着で成膜でき
る場合について述べる。濃度勾配の形成手法に関しては、材料の蒸発温度と蒸着レート(
通常、単位はnm/s)との相関がとれている場合、温度制御により蒸着レートを制御する
ことも可能である。しかしながら、特に通常粉末形状で用いる有機材料の熱伝導性は悪く
、温度による制御はむらを生じやすい。したがって、濃度勾配を形成する2種類の材料を
それぞれ別の蒸着源に用意し、シャッターを利用した蒸着レート制御(膜厚は水晶振動子
によってモニターする)で行うことが好ましい。その形態を図11に示す。
【0130】
図11では、図24で示した素子構造を例に、濃度勾配の形成手法を説明する。したが
って、図11中では図24で用いた符号を引用する。まず、成膜室1110内に、陽極1102を
有する基板1101を搬入し、固定台1111にて固定する(蒸着時には通常、基板は回転させる
)。
【0131】
次に、正孔輸送材料1116を設置した試料室a1112を加熱し、シャッターa1114を開けるこ
とにより、正孔輸送材料1116からなる正孔輸送領域2405を成膜する。この時、電子輸送材
料1117を設置した試料室b1113も同時に加熱しておくが、シャッターb1115は閉じておく。
【0132】
正孔輸送領域2405が所定の膜厚に達したあと、シャッターa1114を徐々に閉じると同時
に、シャッターb1115を徐々に開いていく。この時の開閉速度により、混合領域2407の濃
度勾配を形成する。その開閉速度は、シャッターa1114が完全に閉じる頃に、混合領域240
7が所定の膜厚に達するように、かつ、電子輸送材料1117が所定の蒸着レート(電子輸送
領域2406を蒸着する際のレート)に達するように、設定すればよい。その後は、シャッタ
ーb1115を開けたまま電子輸送領域2406を形成して、図24の素子構造において濃度勾配
を形成した素子が可能になる。
【0133】
なお、この方法は図24以外の素子構造において、濃度勾配を形成する場合も全て適用
可能である。また、バイポーラー性混合層あるいは混合領域に発光材料をドープするよう
な場合は、図11の蒸着源をさらに一つ増やし、ドープする時間帯のみドーパントの蒸着
源のシャッターを開ければよい。
【0134】
ただし、濃度勾配を形成する手段は、この手法のみに限らない。
【0135】
ところで、上で述べたようないくつかの実施の形態は、複合して用いることも可能であ
る。例えば、正孔輸送性混合層、電子輸送性混合層、バイポーラー性混合層を組み合わせ
て適用する手法である。その一例を図8に示す。
【0136】
図8に示す素子構造は、陽極802を有する基板801上に、正孔注入材料811および正孔輸
送材料812からなる正孔輸送性混合層803、正孔輸送材料812および電子輸送材料813からな
るバイポーラー性混合層804、電子輸送材料813および電子注入材料814からなる電子輸送
性混合層805、そして陰極806を積層したものである。
【0137】
なお、本実施の形態においては、バイポーラー性混合層804内部に、発光材料815を少量
ドープした発光領域807が設けてある。また、各層においては、グラフ810に示したような
濃度勾配を形成した。なお、このような濃度勾配を形成した場合の、予想されるバンドダ
イアグラムの模式図を図19に示す。
【0138】
本素子構造によって、従来ならば正孔注入層・正孔輸送層・電子輸送層・電子注入層と
いう四層構造(図19(a))が、三層構造(図19(b))に収まることになる。しかも、図
19(b)に示されるとおり、各混合層内はなだらかなエネルギー障壁しかなく、また、各
混合層間は正孔輸送材料812および電子輸送材料813によって連続的に接合されており、キ
ャリアの移動に有利である。
【0139】
次に、上記のように各混合層を組み合わせるという素子を、三重項発光素子に適用した
場合の実施の形態を説明する。通常、三重項発光素子の基本構造は、文献8に示されると
おり図9のような素子構造である。すなわち、基板901、陽極902、正孔輸送層903、ホス
ト材料に三重項発光材料をドープして形成される発光層904、ブロッキング層905、電子輸
送層906、そして陰極907である。ブロッキング層905はブロッキング材料からなり、正孔
をブロックして発光層904におけるキャリアの再結合効率を高めると同時に、発光層904に
おいて発生した分子励起子の拡散を防ぐ役割も果たす。また、電子輸送性の材料でもある

【0140】
図9の素子構造に対し、正孔注入層や電子注入層を設けることにより、さらに発光効率
を高めることができる。しかしながら、ただでさえ図9に示すような5層構造である上に
、さらに層を増やすことによって、界面の数はさらに増加してしまう。そこで、本発明を
適用する。
【0141】
すなわち、図9において、正孔輸送層903を正孔注入材料と正孔輸送材料とからなる正
孔輸送性混合層とする、発光層904を正孔輸送材料と発光層のホスト材料とからなるバイ
ポーラー性混合層とする、電子輸送層906を電子輸送材料と電子注入材料とからなる電子
輸送性混合層とする、などの手法である。三重項発光材料は、発光層のホスト材料が存在
する部分にドープすればよい。また、図2〜図4に示したように、各混合層に濃度勾配を
形成することも有効である。
【0142】
なお、図9においては、ブロッキング層905は単独の層として用いているが、本発明を
実施する場合、発光層のホスト材料と混合してもよい(すなわち、ブロッキング性混合層
を形成してもよい)。ただし、分子励起子の拡散を防ぐ観点から、陰極側においてブロッ
キング材料が高濃度となるように、濃度勾配を形成することが好ましい。
【0143】
以上をふまえ、各混合層を組み合わせるという素子を三重項発光素子に適用した実施の
形態の一例を図10に示す。すなわち、陽極1002を有する基板1001上に、正孔注入材料10
11および正孔輸送材料1012からなる正孔輸送性混合層1003、正孔輸送材料1012およびホス
ト材料1013からなるバイポーラー性混合層1004、ホスト材料1013およびブロッキング材料
1014からなるブロッキング性混合層1005、ブロッキング材料1014(この場合、電子輸送材
料も兼ねている)および電子注入材料1015からなる電子輸送性混合層1006、そして陰極10
07を積層したものである。
各層には、グラフ1010に示すような濃度勾配を形成した。
【0144】
なお、本実施の形態は三重項発光素子であるため、三重項発光材料1016を少量ドープし
た発光領域1008が設けてある。発光領域1008は、図10で示されているようにホスト材料
1013の濃度が高い領域に設置することが好ましい。また、グラフ1010に示したような濃度
勾配を形成した場合の、予想されるバンドダイアグラムの模式図を図20(b)に示す。
【0145】
本素子構造によって、従来ならば正孔注入層・正孔輸送層・発光層・ブロッキング層(
電子輸送層を兼ねる)・電子注入層という五層構造(図20(a))が、四層構造(図20(
b))に収まることになる。しかも、図20(b)に示されるとおり、各混合層内はなだらか
なエネルギー障壁しかなく、また、各混合層間は正孔輸送材料1012、ホスト材料1013、お
よびブロッキング材料1014(電子輸送材料を兼ねている)によって連続的に接合されてお
り、キャリアの移動に有利である。
【0146】
最後に、正孔注入材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子注入材料、ブロッキング材
料、発光材料、陰極の構成材料などに好適な材料を以下に列挙する。ただし、本発明の有
機発光素子に用いる材料は、これらに限定されない。
【0147】
正孔注入材料としては、有機化合物であればポルフィリン系の化合物が有効であり、フ
タロシアニン(略称;H2Pc)、銅フタロシアニン(略称;CuPc)などがある。導電性高分
子化合物に化学ドーピングを施した材料もあり、ポリスチレンスルホン酸(略称;PSS)
をドープしたポリエチレンジオキシチオフェン(略称;PEDOT)や、ポリアニリン(略称
;PAni)、ポリビニルカルバゾール(略称;PVK)などが挙げられる。また、絶縁体の高
分子化合物も陽極の平坦化の点で有効であり、ポリイミド(略称;PI)がよく用いられる
。さらに、無機化合物も用いられ、金や白金などの金属薄膜の他、酸化アルミニウム(ア
ルミナ)の超薄膜などがある。
【0148】
正孔輸送材料として最も広く用いられているのは、芳香族アミン系(すなわち、ベンゼ
ン環−窒素の結合を有するもの)の化合物である。広く用いられている材料として、先に
述べたTPDの他、その誘導体である4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル
−アミノ]−ビフェニル(略称;α−NPD)や、4,4',4''−トリス(N,N−ジフェ
ニル−アミノ)−トリフェニルアミン(略称;TDATA)、4,4',4''−トリス[N−(
3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(略称;MTDATA)
などのスターバースト型芳香族アミン化合物が挙げられる。
【0149】
電子輸送材料としては、金属錯体がよく用いられ、先に述べたAlq3の他、トリス(4−
メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称;Al(mq3))、ビス(10−ヒドロキシ
ベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称;Be(Bq)2)などのキノリン骨格またはベン
ゾキノリン骨格を有する金属錯体や、混合配位子錯体であるビス(2−メチル−8−キノ
リノラト)−(4−フェニルフェノラト)−アルミニウム(略称;BAlq)などがある。ま
た、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称;Zn(BOX
)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称;Zn(BTZ
)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体もある。さらに、金属
錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3
,4−オキサジアゾール(略称;PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル
)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称;OXD−7)などのオキサ
ジアゾール誘導体、5−(4−ビフェニリル)−3−(4−tert−ブチルフェニル)−4
−フェニル−1,2,4−トリアゾール(略称;TAZ)、5−(4−ビフェニリル)−3
−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−1,2,4−トリアゾ
ール(略称;p-EtTAZ)などのトリアゾール誘導体、バソフェナントロリン(略称;BPhen
)・バソキュプロイン(略称;BCP」と記す)などのフェナントロリン誘導体が電子輸送
性を有する。
【0150】
電子注入材料としては、上で述べた電子輸送材料を用いることができる。その他に、フ
ッ化リチウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物や、酸化リチウムなどのアルカリ金属酸化
物のような絶縁体の、超薄膜がよく用いられる。また、リチウムアセチルアセトネート(
略称;Li(acac))や8−キノリノラト−リチウム(略称;Liq)などのアルカリ金属錯体
も有効である。
【0151】
ブロッキング材料としては、上で述べたBAlq、OXD−7、TAZ、p-EtTAZ、BPhen、BCPなど
が、励起エネルギーレベルが高いため有効である。
【0152】
発光材料(ドーパントとして用いるものも含む)としては、先に述べたAlq3、Al(mq)3
、Be(Bq)2、BAlq、Zn(BOX)2、Zn(BTZ)2などの金属錯体の他、各種蛍光色素が有効である
。また、三重項発光材料も可能であり、白金ないしはイリジウムを中心金属とする錯体が
主体である。三重項発光材料としては、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(略
称;Ir(ppy)3)、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,2
3H−ポルフィリン−白金(略称;PtOEP)などが知られている。
【0153】
以上で述べたような各機能を有する材料を、各々組み合わせ、本発明の有機発光素子に
適用することにより、従来よりも駆動電圧が低い上に素子の寿命が長い有機発光素子を作
製することができる。
【実施例1】
【0154】
本実施例では、発明の実施の形態において図5で示したような、正孔輸送性混合層を適
用した素子を具体的に例示する。
【0155】
まず、ガラス基板501上にインジウム錫酸化物(以下、「ITO」と記す)をスパッタリン
グによって100nm程度成膜し、陽極502とする。次に、正孔注入材料であるCuPcと正孔輸送
材料であるα−NPDを1:1の蒸着レート比で共蒸着することにより、正孔輸送性混合層5
03を形成する。膜厚は50nmとする。
【0156】
さらに発光層504として、Alq3にルブレンを5wt%ドープした層を10nm積層する。最後に
、電子輸送層505としてAlq3を40nm、陰極506としてAl:Li合金(Liは質量比で0.5wt%)を1
50nm程度成膜することにより、ルブレンに由来する黄色発光の有機発光素子を作製できる

【実施例2】
【0157】
本実施例では、発明の実施の形態において図6で示したような、電子輸送性混合層を適
用した素子を具体的に例示する。
【0158】
まず、ガラス基板601上にITOをスパッタリングによって100nm程度成膜し、陽極602とす
る。次に、正孔輸送材料であるα−NPDを50nm成膜することにより、正孔輸送層603を形成
する。
【0159】
さらに、発光層604としてペリレンを10nm積層したあと、電子輸送材料であるBPhenと電
子注入材料であるAlq3を1:1の蒸着レート比で共蒸着することにより、電子輸送性混合
層605を形成する。膜厚は40nmとする。最後に、陰極606としてAl:Li合金(Liは重量比で0
.5wt%)を150nm程度成膜することにより、ペリレンに由来する青色発光の有機発光素子を
作製できる。
【実施例3】
【0160】
本実施例では、図24で示した有機発光素子において、陽極2402と有機化合物層2403と
の間に正孔注入材料からなる正孔注入領域を挿入した有機発光素子を、具体的に例示する

【0161】
まず、ITOをスパッタリングによって100nm程度成膜し、陽極2402を形成したガラス基板
2401を用意する。この陽極2402を有するガラス基板2401を、図31において示したような
真空槽内に搬入する。本実施例では、4種類の材料(3種類は有機化合物であり、1種類
は陰極となる金属)を蒸着するため、4つの蒸着源が必要となる。
【0162】
まず、正孔注入材料であるCuPcを20nm蒸着するが、20nmに達してCuPcの蒸着を終えると
同時に、インターバルをおかずに、正孔輸送材料であるα−NPDの蒸着を0.3nm/sの蒸着レ
ートで開始する。インターバルをおかない理由は、先に述べたように、不純物層の形成を
防ぐためである。
【0163】
α−NPDのみからなる正孔輸送領域2405を30nm形成した後、α−NPDの蒸着レートは0.3n
m/sに固定したまま、電子輸送材料であるAlq3の蒸着も0.3nm/sにて開始する。すなわち、
α−NPDと Alq3のレート比率が1:1となるような混合領域2407を、共蒸着にて形成する
ことになる。
【0164】
混合領域2407が30nmに達した後、α−NPDの方は蒸着を終了し、Alq3のみ引き続き蒸着
し続けることで、電子輸送領域2406を形成する。厚さは40nmとする。最後に、陰極として
Al:Li合金を150nm程度蒸着することにより、Alq3に由来する緑色発光の有機発光素子を得
る。
【実施例4】
【0165】
本実施例では、図29(a)で示した有機発光素子において、陽極2702と有機化合物層270
3との間に正孔注入材料からなる正孔注入領域を挿入した有機発光素子を、具体的に例示
する。
【0166】
まず、ITOをスパッタリングによって100nm程度成膜し、陽極2702を形成したガラス基板
2701を用意する。この陽極2702を有するガラス基板2701を、図32において示したような
真空槽内に搬入する。本実施例では、5種類の材料(4種類は有機化合物であり、1種類
は陰極となる金属)を蒸着するため、5つの蒸着源が必要となる。
【0167】
まず、正孔注入材料であるCuPcを20nm蒸着するが、20nmに達してCuPcの蒸着を終えると
同時に、インターバルをおかずに、正孔輸送材料であるα−NPDの蒸着を0.3nm/sの蒸着レ
ートで開始する。インターバルをおかない理由は、先に述べたように、不純物層の形成を
防ぐためである。
【0168】
α−NPDのみからなる正孔輸送領域2705を30nm形成した後、α−NPDの蒸着レートは0.3n
m/sに固定したまま、電子輸送材料であるAlq3の蒸着も0.3nm/sにて開始する。すなわち、
α−NPDと Alq3のレート比率が1:1となるような混合領域2707を、共蒸着にて形成する
ことになる。同時に、蛍光色素である4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p
−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(略称;DCM)を、発光材料2708として添加
しておく。割合は、重量比率にして、Alq3:DCM=50:1となるように蒸着レートを制
御する。
【0169】
混合領域2707が30nmに達した後、α−NPDおよびDCMは蒸着を終了し、Alq3のみ引き続き
蒸着し続けることで、電子輸送領域2706を形成する。厚さは40nmとする。最後に、陰極と
してAl:Li合金を150nm程度蒸着することにより、DCMに由来する赤色発光の有機発光素子
を得る。
【実施例5】
【0170】
本実施例では、図29(b)で示した有機発光素子を、具体的に例示する。
【0171】
まず、ITOをスパッタリングによって100nm程度成膜し、陽極2702を形成したガラス基板
2701を用意する。この陽極2702を有するガラス基板2701を、図32において示したような
真空槽内に搬入する。本実施例では、4種類の材料(3種類は有機化合物であり、1種類
は陰極となる金属)を蒸着するため、4つの蒸着源が必要となる。
【0172】
まず、正孔輸送材料であるα−NPDのみからなる正孔輸送領域2705を40nm形成した後、
α−NPDの蒸着レートは0.3nm/sに固定したまま、電子輸送材料であるAlq3の蒸着も0.3nm/
sにて開始する。すなわち、α−NPDと Alq3のレート比率が1:1となるような混合領域2
707を、共蒸着にて形成することになる。
【0173】
混合領域2707は30nm形成するが、この時、混合領域2707における中間の10nm(つまり、
混合領域30nmのうち、10nm〜20nmの間)は、蛍光色素である4−(ジシアノメチレン)−
2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(以下、「DCM」と記す
)を、発光材料2708として約1wt%程度の割合でドープしておく。
【0174】
混合領域が30nmに達した後、α−NPDの方は蒸着を終了し、Alq3のみ引き続き蒸着し続
けることで、電子輸送領域2706を形成する。厚さは40nmとする。最後に、陰極としてAl:L
i合金を150nm程度蒸着することにより、DCMに由来する赤色発光の有機発光素子を得る。
【実施例6】
【0175】
本実施例では、発明の実施の形態において図26(a)で示したような混合領域を適用し
た素子に対し、濃度勾配を施したものを具体的に例示する。なお、濃度勾配を形成するた
め、図11で示したような装置を用いて素子を作製する。本実施例の場合は、正孔輸送材
料、電子輸送材料、および発光材料の3種類の蒸着源を必要とする。
【0176】
まず、ガラス基板2601上にITOをスパッタリングによって100nm程度成膜し、陽極2602と
する。次に、正孔輸送材料であるα−NPDを40nm成膜することにより、正孔輸送領域2605
を形成する。
【0177】
さらに、発明の実施の形態において説明したように、正孔輸送材料(α−NPD)の蒸着
源のシャッターを徐々に閉じると同時に、電子輸送材料(本実施例ではAlq3を用いる)の
蒸着源のシャッターを徐々に開けていくことにより、α−NPD とAlq3とからなる濃度勾配
を有する混合領域2607を20nm成膜する。この時、混合領域2607の厚み20nmの中間に位置す
る10nmの領域に、発光材料2608としてルブレンを約5wt%程度の割合でドープする。
【0178】
混合領域が20nmに達したあと、電子輸送材料(Alq3)の蒸着源のシャッターのみを開けた
状態で、Alq3で構成される電子輸送領域2606を形成する。最後に、陰極2604としてAl:Li
合金(Liは重量比で0.5wt%)を150nm程度成膜することにより、ルブレンに由来する黄色
発光の有機発光素子を作製できる。

【実施例7】
【0179】
本実施例では、図26(b)で示した有機発光素子において、陽極2602と有機化合物層260
3との間に正孔注入材料からなる正孔注入領域を挿入し、陰極2604と有機化合物層2603と
の間に電子注入材料からなる電子注入領域を挿入した有機発光素子を、具体的に例示する

【0180】
まず、ITOをスパッタリングによって100nm程度成膜し、陽極2602を形成したガラス基板
2601を用意する。この陽極2602を有するガラス基板2601を、図31において示したような
真空槽内に搬入する。本実施例では、7種類の材料(6種類は有機化合物であり、1種類
は陰極となる金属)を蒸着するため、7つの蒸着源が必要となる。
【0181】
まず、正孔注入材料であるCuPcを20nm蒸着するが、20nmに達してCuPcの蒸着を終えると
同時に、インターバルをおかずに、正孔輸送材料であるTPDの蒸着を0.2nm/sの蒸着レート
で開始する。インターバルをおかない理由は、先に述べたように、不純物層の形成を防ぐ
ためである。
【0182】
TPDのみからなる正孔輸送領域2605を30nm形成した後、TPDの蒸着レートは0.2nm/sに固
定したまま、電子輸送材料であるBeBq2の蒸着も0.8nm/sにて開始する。
すなわち、TPDとBeBq2のレート比率が1:4となるような混合領域2607を、共蒸着にて形
成することになる。
【0183】
混合領域2607は30nm形成するが、この時、混合領域2607における中間の10nm(つまり、
混合領域30nmのうち、10nm〜20nmの間)は、蛍光色素であるルブレンを、発光材料2608と
して約5wt%の割合でドープしておく。また、混合領域2607における最後の10nm(つまり、
混合領域30nmのうち、20nm〜30nmの間)は、ブロッキング材料2609として、BCPをドープ
しておく。BCPドープ時の各材料の蒸着レート比は、TPD:BeBq2:BCP=1:4:3とする

【0184】
混合領域2607が30nmに達した後、TPDおよびBCPの方は蒸着を終了し、BeBq2のみ引き続
き蒸着し続けることで、電子輸送領域2606を形成する。厚さは40nmとする。BeBq2の蒸着
を終了すると同時に、インターバルをおかずに、電子注入材料であるLi(acac)の蒸着を開
始して2nm程度蒸着する。インターバルをおかない理由は、先に述べたように、不純物層
の形成を防ぐためである。
【0185】
最後に、陰極としてアルミニウムを150nm程度蒸着することにより、ルブレンに由来す
る黄色発光の有機発光素子を得る。
【実施例8】
【0186】
本実施例では、図30(b)で示した有機発光素子を、具体的に例示する。
【0187】
まず、ITOをスパッタリングによって100nm程度成膜し、陽極2702を形成したガラス基板
2701を用意する。この陽極2702を有するガラス基板2701を、図32において示したような
真空槽内に搬入する。本実施例では、5種類の材料(4種類は有機化合物であり、1種類
は陰極となる金属)を蒸着するため、5つの蒸着源が必要となる。
【0188】
まず、正孔輸送材料であるMTDATAのみからなる正孔輸送領域2705を40nm形成した後、MT
DATAの蒸着レートは0.3nm/sに固定したまま、電子輸送材料であるPBDの蒸着も0.3nm/sに
て開始する。すなわち、MTDATAと PBDの比率が1:1となるような混合領域2707を、共蒸
着にて形成することになる。
【0189】
混合領域2707は30nm形成するが、この時、混合領域2707における中間の10nm(つまり、
混合領域30nmのうち、10nm〜20nmの間)は、蛍光色素であるペリレンを発光材料2708とし
て添加するが、その割合は、MTDATA:PBD:ペリレン=4:16:1となるように蒸着レ
ートを制御する。また、混合領域2707における最後の10nm(つまり、混合領域30nmのうち
、20nm〜30nmの間)は、ブロッキング材料2709としてBCPを添加するが、そのレート比率
は、MTDATA:PBD:BCP=1:4:5とする。
【0190】
混合領域が30nmに達した後、MTDATAおよびBCPの方は蒸着を終了し、PBDのみ引き続き蒸
着し続けることで、電子輸送領域2706を形成する。厚さは40nmとする。
最後に、陰極としてAl:Li合金を150nm程度蒸着することにより、ペリレンに由来する青色
発光の有機発光素子を得る。
【実施例9】
【0191】
本実施例では、発明の実施の形態において図8で示したような、正孔輸送性混合層・バ
イポーラー性混合層・電子輸送性混合層を複合して適用した素子を具体的に例示する。な
お、本実施例では濃度勾配(図8中のグラフ810)を形成するため、実施例3と同様、図
11にて示したようなシャッター付きの蒸着源を用いる。
【0192】
まず、ガラス基板801上にITOをスパッタリングによって100nm程度成膜し、陽極802とす
る。次に、正孔注入材料811であるCuPcと正孔輸送材料812であるα−NPDとからなる正孔
輸送性混合層803を、40nm成膜する。この時、シャッターの開閉によりグラフ810のような
濃度勾配を形成する。
【0193】
今度は、α−NPDの蒸着源のシャッターを徐々に閉じると同時に、電子輸送材料813であ
るAlq3の蒸着源のシャッターを徐々に開けていくことにより、濃度勾配を有するバイポー
ラー性混合層804を20nm成膜する。この時、バイポーラー性混合層804の厚み20nmの中間に
位置する10nmの領域807は、発光材料815である4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6
−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(以下、「DCM」と記す)を1wt%の割合で
ドープする。
【0194】
バイポーラー性混合層804が20nmに達したあと、Alq3のシャッターのみを開けた状態でA
lq3を35nm蒸着する。最後の5nmの領域において、Alq3の蒸着源のシャッターを徐々に閉じ
ると同時に、電子注入材料814であるLi(acac)の蒸着源のシャッターを徐々に開けていく
ことにより、合計40nmの電子輸送性混合層805を形成する。すなわち、Li(acac)の濃度勾
配を急峻に設定することになる(グラフ810では電子注入材料814の傾きが一定であるよう
な図示であるが、本実施例では最後の方だけ急激に立ち上がることになる)。
【0195】
最後に、陰極806としてAlを150nm程度成膜することにより、DCMに由来する赤色発光の
有機発光素子を作製できる。
【実施例10】
【0196】
本実施例では、図29(b)で示した有機発光素子において、陽極2702と有機化合物層270
3との間に正孔注入材料からなる正孔注入領域を、陰極2704と有機化合物層との間に電子
注入材料からなる電子注入領域を、それぞれ挿入し、かつ、発光材料として三重項発光材
料を適用した有機発光素子の例を、具体的に例示する。その素子構造を図33に示す。
【0197】
まず、ITOをスパッタリングによって100nm程度成膜し、ITO(陽極)を形成したガラス
基板を用意する。このITOを有するガラス基板を、図32において示したような真空槽内
に搬入する。本実施例では、7種類の材料(5種類は有機化合物であり、2種類は陰極と
なる無機材料)を蒸着するため、7つの蒸着源が必要となる。
【0198】
まず、正孔注入材料であるCuPcを20nm蒸着するが、20nmに達してCuPcの蒸着を終えると
同時に、インターバルをおかずに、正孔輸送材料であるα−NPDの蒸着を0.3nm/sの蒸着レ
ートで開始する。インターバルをおかない理由は、先に述べたように、不純物層の形成を
防ぐためである。
【0199】
α−NPDのみからなる正孔輸送領域を30nm形成した後、α−NPDの蒸着レートは0.3nm/s
に固定したまま、電子輸送材料であるBAlqの蒸着も0.3nm/sにて開始する。すなわち、α
−NPDとBAlqのレート比率が1:1となるような混合領域(α−NPD+BAlq)を、共蒸着に
て形成することになる。
【0200】
混合領域は20nm形成するが、この時、混合領域における中間の10nm(つまり、混合領域
20nmのうち、5nm〜15nmの間)は、三重項発光材料であるIr(ppy)3を、発光材料として添
加しておく。その割合は、重量比率にして、BAlq:Ir(ppy)3=50:7とする。
【0201】
混合領域が20nmに達した後、α−NPDおよびIr(ppy)3の方は蒸着を終了し、BAlqのみ引
き続き蒸着し続けることで、電子輸送領域を形成する。厚さは20nmとする。BAlqの蒸着を
終了すると同時に、インターバルをおかずに、電子注入材料であるAlq3の蒸着を開始して
30nm程度蒸着する。インターバルをおかない理由は、先に述べたように、不純物層の形成
を防ぐためである。
【0202】
最後に、LiFを1nm程度、アルミニウムを150nm程度蒸着することにより、陰極を形成し
、Ir(ppy)3に由来する緑色発光の三重項発光素子を得る。
【実施例11】
【0203】
本実施例では、発明の実施の形態において図9で示したような三重項発光素子に、本発
明を適用した素子を具体的に例示する。その素子構造を図10に示す。
なお、本実施例では濃度勾配(図10中のグラフ1010)を形成するため、図11にて示し
たようなシャッター付きの蒸着源を用いる。
【0204】
まず、ガラス基板1001上にITOをスパッタリングによって100nm程度成膜し、陽極1002と
する。次に、正孔注入材料1011であるCuPcと正孔輸送材料1012であるα−NPDとからなる
正孔輸送性混合層1003を、40nm成膜する。この時、シャッターの開閉によりグラフ1010の
ような濃度勾配を形成する。
【0205】
引き続き、α−NPDの蒸着レートを徐々に減少しつつ、三重項発光材料のホスト材料101
3である4, 4'−N, N'−ジカルバゾール−ビフェニル(以下、「CBP」と記す)の蒸着レー
トを上げていくことにより、α−NPDとCBPとからなる濃度勾配を有するバイポーラー性混
合層1004を20nm形成する。今度は、CBPの蒸着レートを減少させつつ、ブロッキング材料1
014であるBCPの蒸着レートを上げていくことにより、CBPとBCPとからなる濃度勾配を有す
るブロッキング性混合層1005を形成する。膜厚は10nmとする。
【0206】
本実施例は三重項発光素子であるため、バイポーラー性混合層1004およびブロッキング
性混合層1005を形成する間に、三重項発光材料1016であるトリス(2−フェニルピリジン
)イリジウム(以下、「Ir(ppy)3」と記す)をドープする。そのドープ領域1008は、ホス
ト材料であるCBPの濃度が高い領域、すなわち、バイポーラー性混合層1004とブロッキン
グ性混合層1005との境界付近が最も適している。本実施例では、前記境界の±5nm、合計1
0nmをドープ領域1008とし、6wt%ドープする。
【0207】
さらに、電子輸送性混合層1006は、電子輸送能力の高いBCPおよびAlq3から構成する。B
CPの濃度は陽極から離れるに従い小さくなり、Alq3の濃度は逆に大きくなるように濃度勾
配を形成する。すなわちこの場合、BCPはブロッキング材料かつ電子輸送材料、Alq3は電
子注入材料1015の役割を果たしている。電子輸送性混合層1006の膜厚は40nmとする。
【0208】
最後に、陰極1007としてAl:Li合金(Liは重量比で0.5wt%)を150nm程度成膜することに
より、Ir(ppy)3に由来する緑色の三重項発光を呈する有機発光素子を作製できる。
【実施例12】
【0209】
本実施例では、本発明で開示した有機発光素子を含む発光装置について説明する。図1
2(a)は本発明の有機発光素子を用いたアクティブマトリクス型発光装置の断面図である
。なお、能動素子としてここでは薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す)を用いてい
るが、MOSトランジスタを用いてもよい。
【0210】
また、TFTとしてトップゲート型TFT(具体的にはプレーナ型TFT)を例示するが、ボト
ムゲート型TFT(典型的には逆スタガ型TFT)を用いることもできる。
【0211】
図12(a)において、1201は基板であり、ここでは可視光を透過する基板を用いる。具
体的には、ガラス基板、石英基板、結晶化ガラス基板もしくはプラスチック基板(プラス
チックフィルムを含む)を用いればよい。なお、基板1201とは、表面に設けた絶縁膜も含
めるものとする。
【0212】
基板1201の上には画素部1211および駆動回路1212が設けられている。まず、画素部1211
について説明する。
【0213】
画素部1211は画像表示を行う領域である。基板上には複数の画素が存在し、各画素には
有機発光素子に流れる電流を制御するためのTFT(以下、「電流制御TFT」と記す)1202、
画素電極(陽極)1203、有機化合物層1204および陰極1205が設けられている。なお、図1
2(a)では電流制御TFTしか図示していないが、電流制御TFTのゲートに加わる電圧を制御
するためのTFT(以下、「スイッチングTFT」と記す)を設けている。
【0214】
電流制御TFT1202は、ここではpチャネル型TFTを用いることが好ましい。nチャネル型TF
Tとすることも可能であるが、図12(a)のように有機発光素子の陽極に電流制御TFTを接
続する場合は、pチャネル型TFTの方が消費電力を押さえることができる。ただし、スイッ
チングTFTはnチャネル型TFTでもpチャネル型TFTでもよい。
【0215】
また、電流制御TFT1202のドレインには画素電極1203が電気的に接続されている。本実
施例では、画素電極1203の材料として仕事関数が4.5〜5.5eVの導電性材料を用いるため、
画素電極1203は有機発光素子の陽極として機能する。画素電極1203として代表的には、酸
化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛もしくはこれらの化合物(ITOなど)を用いればよい。
画素電極1203の上には有機化合物層1204が設けられている。
【0216】
さらに、有機化合物層1204の上には陰極1205が設けられている。陰極1205の材料として
は、仕事関数が2.5〜3.5eVの導電性材料を用いることが望ましい。陰極1205として代表的
には、アルカリ金属元素もしくはアルカリ度類金属元素を含む導電膜、アルミニウムを含
む導電膜、あるいはその導電膜にアルミニウムや銀などを積層したもの、を用いればよい

【0217】
また、画素電極1203、有機化合物層1204、および陰極1205からなる層は、保護膜1206で
覆われている。保護膜1206は、有機発光素子を酸素および水から保護するために設けられ
ている。保護膜1206の材料としては、窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化
タンタル、もしくは炭素(具体的にはダイヤモンドライクカーボン)を用いる。
【0218】
次に、駆動回路1212について説明する。駆動回路1212は画素部1211に伝送される信号(
ゲート信号およびデータ信号)のタイミングを制御する領域であり、シフトレジスタ、バ
ッファ、ラッチ、アナログスイッチ(トランスファゲート)もしくはレベルシフタが設け
られている。図12(a)では、これらの回路の基本単位としてnチャネル型TFT1207およびp
チャネル型TFT1208からなるCMOS回路を示している。
【0219】
なお、シフトレジスタ、バッファ、ラッチ、アナログスイッチ(トランスファゲート)
もしくはレベルシフタの回路構成は、公知のものでよい。また図12(a)では、同一の基
板上に画素部1211および駆動回路1212を設けているが、駆動回路1212を設けずにICやLSI
を電気的に接続することもできる。
【0220】
また、図12(a)では電流制御TFT1202に画素電極(陽極)1203が電気的に接続されてい
るが、陰極が電流制御TFTに接続された構造をとることもできる。その場合、画素電極を
陰極1205と同様の材料で形成し、陰極を画素電極(陽極)1203と同様の材料で形成すれば
よい。その場合、電流制御TFTはnチャネル型TFTとすることが好ましい。
【0221】
ところで、図12(a)に示した発光装置は、画素電極1203を形成した後に配線1209を形
成する工程で作製されたものを示してあるが、この場合、画素電極1203が表面荒れを起こ
す可能性がある。有機発光素子は電流駆動型の素子であるため、画素電極1203の表面荒れ
により、特性が悪くなることも考えられる。
【0222】
そこで、図12(b)に示すように、配線1209を形成した後に画素電極1203を形成する発
光装置も考えられる。この場合、図12(a)の構造に比べて、画素電極1203からの電流の
注入性が向上すると考えられる。
【0223】
また、図12においては、正テーパー型の土手状構造1210によって、画素部1211に設置
されている各画素を分離している。この土手状構造を、例えば逆テーパー型のような構造
にすることにより、土手状構造が画素電極に接しない構造をとることもできる。その一例
を図34に示す。
【0224】
図34では、配線を利用して分離部を兼ねた、配線および分離部3410を設けた。図34
で示されるような配線および分離部3410の形状(ひさしのある構造)は、配線を構成する
金属と、前記金属よりもエッチレートの低い材料(例えば金属窒化物)とを積層し、エッ
チングすることにより形成することができる。この形状により、画素電極3403や配線と、
陰極3405とが、ショートすることを防ぐことができる。なお、図34においては、通常の
アクティブマトリクス型の発光装置と異なり、画素上の陰極3405をストライプ状(パッシ
ブマトリクスの陰極と同様)にする構造になる。
【0225】
ここで、図12(b)に示したアクティブマトリクス型発光装置の外観を図13に示す。
なお、図13(a)には上面図を示し、図13(b)には図13(a)をP−P'で切断した時の断面
図を示す。また、図12の符号を引用する。
【0226】
図13(a)において、1301は画素部、1302はゲート信号側駆動回路、1303はデータ信号
側駆動回路である。また、ゲート信号側駆動回路1302およびデータ信号側駆動回路1303に
伝送される信号は、入力配線1304を介してTAB(Tape Automated Bonding)テープ1305か
ら入力される。なお、図示しないが、TABテープ1305の代わりに、TABテープにIC(集積回
路)を設けたTCP(Tape Carrier Package)を接続してもよい。
【0227】
このとき、1306は図12(b)に示した有機発光素子の上方に設けられるカバー材であり
、樹脂からなるシール材1307により接着されている。カバー材1306は酸素および水を透過
しない材質であれば、いかなるものを用いてもよい。本実施例では、カバー材1306は図1
3(b)に示すように、プラスチック材1306aと、前記プラスチック材1306aの表面および裏
面に設けられた炭素膜(具体的にはダイヤモンドライクカーボン膜)1306b、1306cからな
る。
【0228】
さらに、図13(b)に示すように、シール材1307は樹脂からなる封止材1308で覆われ、
有機発光素子を完全に密閉空間1309に封入するようになっている。密閉空間1309は不活性
ガス(代表的には窒素ガスや希ガス)、樹脂または不活性液体(例えばパーフルオロアル
カンに代表される液状のフッ素化炭素)を充填しておけばよい。さらに、吸湿剤や脱酸素
剤を設けることも有効である。
【0229】
また、本実施例に示した発光装置の表示面(画像を観測する面)に偏光板をもうけても
よい。この偏光板は、外部から入射した光の反射を押さえ、観測者が表示面に映り込むこ
とを防ぐ効果がある。一般的には、円偏光板が用いられている。ただし、有機化合物層か
ら発した光が偏光板により反射されて内部に戻ることを防ぐため、屈折率を調節して内部
反射の少ない構造とすることが好ましい。
【0230】
なお、本実施例の発光装置に含まれる有機発光素子には、本発明で開示した有機発光素
子のいずれを用いてもよい。
【実施例13】
【0231】
本実施例では、本発明で開示した有機発光素子を含む発光装置の例として、アクティブ
マトリクス型発光装置を例示するが、実施例12とは異なり、能動素子が形成されている
基板とは反対側から光を取り出す構造(以下、「上方出射」と記す)の発光装置を示す。
図35にその断面図を示す。
【0232】
なお、能動素子としてここでは薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す)を用いてい
るが、MOSトランジスタを用いてもよい。また、TFTとしてトップゲート型TFT(具体的に
はプレーナ型TFT)を例示するが、ボトムゲート型TFT(典型的には逆スタガ型TFT)を用
いることもできる。
【0233】
本実施例において、基板3501、画素部に形成された電流制御TFT3502、および駆動回路3
512に関しては、実施例12と同様の構成でよい。
【0234】
電流制御TFT3502のドレインに接続されている第一電極3503であるが、本実施例では陽
極として用いるため、仕事関数がより大きい導電性材料を用いることが好ましい。その代
表例として、ニッケル、パラジウム、タングステン、金、銀などの金属が挙げられる。本
実施例では、第一電極3503は光を透過しないことが好ましいが、それに加えて、光の反射
性の高い材料を用いることがさらに好ましい。
【0235】
第一電極3503の上には有機化合物層3504が設けられている。さらに、有機化合物層3504
の上には第二電極3505が設けられており、本実施例では陰極とする。その場合、第二電極
3505の材料としては、仕事関数が2.5〜3.5eVの導電性材料を用いることが望ましい。代表
的には、アルカリ金属元素もしくはアルカリ度類金属元素を含む導電膜、アルミニウムを
含む導電膜、あるいはその導電膜にアルミニウムや銀などを積層したもの、を用いればよ
い。ただし、本実施例は上方出射であるため、第二電極3505が光透過性であることが大前
提である。したがって、これらの金属を用いる場合は、20nm程度の超薄膜であることが好
ましい。
【0236】
また、第一電極3503、有機化合物層3504、および第二電極3505からなる層は、保護膜35
06で覆われている。保護膜3506は、有機発光素子を酸素および水から保護するために設け
られている。本実施例では、光を透過するものであればいかなるものを用いてもよい。
【0237】
なお、図35では電流制御TFT3502に第一電極(陽極)3503が電気的に接続されている
が、陰極が電流制御TFTに接続された構造をとることもできる。その場合、第一電極を陰
極の材料で形成し、第二電極を陽極の材料で形成すればよい。
このとき、電流制御TFTはnチャネル型TFTとすることが好ましい。
【0238】
さらに、3507はカバー材であり、樹脂からなるシール材3508により接着されている。カ
バー材3507は酸素および水を透過しない材質で、かつ、光を透過する材質であればいかな
るものを用いてもよい。本実施例ではガラスを用いる。密閉空間3509は不活性ガス(代表
的には窒素ガスや希ガス)、樹脂または不活性液体(例えばパーフルオロアルカンに代表
される液状のフッ素化炭素)を充填しておけばよい。さらに、吸湿剤や脱酸素剤を設ける
ことも有効である。
【0239】
なお、ゲート信号側駆動回路およびデータ信号側駆動回路に伝送される信号は、入力配
線3513を介してTAB(Tape Automated Bonding)テープ3514から入力される。なお、図示
しないが、TABテープ3514の代わりに、TABテープにIC(集積回路)を設けたTCP(Tape Ca
rrier Package)を接続してもよい。
【0240】
また、本実施例に示した発光装置の表示面(画像を観測する面)に偏光板をもうけても
よい。この偏光板は、外部から入射した光の反射を押さえ、観測者が表示面に映り込むこ
とを防ぐ効果がある。一般的には、円偏光板が用いられている。ただし、有機化合物層か
ら発した光が偏光板により反射されて内部に戻ることを防ぐため、屈折率を調節して内部
反射の少ない構造とすることが好ましい。
【0241】
なお、本実施例の発光装置に含まれる有機発光素子には、本発明で開示した有機発光素
子のいずれを用いてもよい。
【実施例14】
【0242】
本実施例では、本発明で開示した有機発光素子を含む発光装置の例として、パッシブマ
トリクス型発光装置を例示する。図14(a)にはその上面図を示し、図14(b)には図14
(a)をP−P'で切断した時の断面図を示す。
【0243】
図14(a)において、1401は基板であり、ここではプラスチック材を用いる。
プラスチック材としては、ポリイミド、ポリアミド、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、PES
(ポリエチレンサルファイル)、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタ
レート)もしくはPEN(ポリエチレンナフタレート)を板状、もしくはフィルム上にした
ものが使用できる。
【0244】
1402は酸化導電膜からなる走査線(陽極)であり、本実施例では酸化亜鉛に酸化ガリウ
ムを添加した酸化物導電膜を用いる。また、1403は金属膜からなるデータ線(陰極)であ
り、本実施例ではビスマス膜を用いる。また、1404はアクリル樹脂からなるバンクであり
、データ線1403を分断するための隔壁として機能する。走査線1402とデータ線1403は両方
とも、ストライプ状に複数形成されており、互いに直交するように設けられている。なお
、図14(a)では図示していないが、走査線1402とデータ線1403の間には有機化合物層が
挟まれており、交差部1405が画素となる。
【0245】
そして、走査線1402およびデータ線1403はTABテープ1407を介して外部の駆動回路に接
続される。なお、1408は走査線1402が集合してなる配線群を表しており、1409はデータ線
1403に接続された接続配線1406の集合からなる配線群を表す。
また、図示していないが、TABテープ1407の代わりに、TABテープにICを設けたTCPを接続
してもよい。
【0246】
また、図14(b)において、1410はシール材、1411はシール材1410によりプラスチック
材1401に貼り合わされたカバー材である。シール材1410としては光硬化樹脂を用いていれ
ばよく、脱ガスが少なく、吸湿性の低い材料が望ましい。カバー材としては基板1401と同
一の材料が好ましく、ガラス(石英ガラスを含む)もしくはプラスチックを用いることが
できる。ここではプラスチック材を用いる。
【0247】
次に、画素領域の構造の拡大図を図14(c)に示す。1413は有機化合物層である。なお
、図14(c)に示すように、バンク1404は下層の幅が上層の幅よりも狭い形状になってお
り、データ線1403を物理的に分断できる。また、シール材1410で囲まれた画素部1414は、
樹脂からなる封止材1415により外気から遮断され、有機化合物層の劣化を防ぐ構造となっ
ている。
【0248】
以上のような構成からなる本発明の発光装置は、画素部1414が走査線1402、データ線14
03、バンク1404および有機化合物層1413で形成されるため、非常に簡単なプロセスで作製
することができる。
【0249】
また、本実施例に示した発光装置の表示面(画像を観測する面)に偏光板をもうけても
よい。この偏光板は、外部から入射した光の反射を押さえ、観測者が表示面に映り込むこ
とを防ぐ効果がある。一般的には、円偏光板が用いられている。ただし、有機化合物層か
ら発した光が偏光板により反射されて内部に戻ることを防ぐため、屈折率を調節して内部
反射の少ない構造とすることが好ましい。
【0250】
なお、本実施例の発光装置に含まれる有機発光素子には、本発明で開示した有機発光素
子のいずれを用いてもよい。
【実施例15】
【0251】
本実施例では、実施例14で示した発光装置にプリント配線板を設けてモジュール化し
た例を示す。
【0252】
図15(a)に示すモジュールは、基板1501(ここでは、画素部1502、配線1503a、 1503b
を含む)にTABテープ1504が取り付けられ、前記TABテープ1504を介してプリント配線板15
05が取り付けられている。
【0253】
ここで、プリント配線板1505の機能ブロック図を図15(b)に示す。プリント配線板150
5の内部には少なくともI/Oポート(入力もしくは出力部)1506、 1509、データ信号側駆
動回路1507およびゲート信号側回路1508として機能するICが設けられている。
【0254】
このように、基板面に画素部が形成された基板にTABテープが取り付けられ、そのTABテ
ープを介して駆動回路としての機能を有するプリント配線版が取り付けられた構成のモジ
ュールを、本明細書では特に駆動回路外付け型モジュールと呼ぶことにする。
【0255】
なお、本実施例の発光装置に含まれる有機発光素子には、本発明で開示した有機発光素
子のいずれを用いてもよい。
【実施例16】
【0256】
本実施例では、実施例12もしくは実施例13もしくは実施例14に示した発光装置に
プリント配線板を設けてモジュール化した例を示す。
【0257】
図16(a)に示すモジュールは、基板1601(ここでは、画素部1602、データ信号側駆動
回路1603、ゲート信号側駆動回路1604、配線1603a、 1604aを含む)にTABテープ1605が取
り付けられ、そのTABテープ1605を介してプリント配線板1606が取り付けられている。プ
リント配線板1606の機能ブロック図を図16(b)に示す。
【0258】
図16(b)に示すように、プリント配線板1606の内部には少なくともI/Oポート1607、 1
610、コントロール部1608として機能するICが設けられている。なお、ここではメモリ部1
609を設けてあるが、必ずしも必要ではない。またコントロール部1608は、駆動回路の制
御、映像データの補正などをコントロールするための機能を有した部位である。
【0259】
このように、有機発光素子の形成された基板にコントローラーとしての機能を有するプ
リント配線板が取り付けられた構成のモジュールを、本明細書では特にコントローラー外
付け型モジュールと呼ぶことにする。
【0260】
なお、本実施例の発光装置に含まれる有機発光素子には、本発明で開示した有機発光素
子のいずれを用いてもよい。
【実施例17】
【0261】
本実施例では、実施例10および11で示したような三重項発光素子を、デジタル時間
階調表示により駆動する発光装置の例を示す。本実施例の発光装置は、三重項励起状態か
らの発光を利用することによって高い発光効率を達成できると同時に、デジタル時間階調
表示により均一な像を得ることができ、非常に有用である。
【0262】
有機発光素子を用いた画素の、回路構成を図36(a)に示す。Trはトランジスタ、Csは
ストレージキャパシタを表す。図36(a)中の回路構成では、ソース線はトランジスタTr1
のソース側に、ゲート線はトランジスタTr1のゲートに接続されている。また、電源供給
線はストレージキャパシタCs、およびトランジスタTr2のソース側に接続されている。ト
ランジスタTr2のドレイン側には本発明の有機発光素子の陽極が接続されているため、有
機発光素子を挟んでトランジスタTr2の反対側は、陰極となっている。
【0263】
この回路においては、ゲート線が選択されると、電流がソース線からTr1に流れ、その
信号に対応する電圧がCsに蓄積される。そして、Tr2のゲートおよびソース間の電圧(Vgs
)により制御される電流が、Tr2および有機発光素子に流れることになる。
【0264】
Tr1が選択されたあとは、Tr1はオフ状態となり、Csの電圧(Vgs)が保持される。した
がって、Vgsに依存するだけの電流を流し続けることができる。
【0265】
このような回路を、デジタル時間階調表示により駆動するチャートを図36(b)に示す
。すなわち、1フレームを複数のサブフレームに分割するわけだが、図36(b)では、1
フレームを6つのサブフレーム(SF1〜SF6)に分割する6ビット階調とした。TAは書き込
み時間である。この場合、それぞれのサブフレーム発光期間の割合は、図に示したように
32:16:8:4:2:1となる。
【0266】
本実施例におけるTFT基板の駆動回路の概要を図36(c)に示す。図36(c)中の基板構
成では、本発明の有機発光素子を各画素とした画素部に対し、図36(a)で示したような
電源供給線および陰極が接続されている。また、シフトレジスタは、シフトレジスタ→ラ
ッチ1→ラッチ2→画素部の順で、画素部に接続されている。ラッチ1にはデジタル信号
が入力され、ラッチ2に入力されるラッチパルスによって画像データを画素部に送り込む
ことができる。
【0267】
ゲートドライバおよびソースドライバは同じ基板上に設けられている。本実施例では、
画素回路およびドライバは、デジタル駆動するように設計されているため、TFT特性のば
らつきの影響を受けることなく、均一な像を得ることができる。
【実施例18】
【0268】
本実施例では、本発明で開示した有機発光素子に一定の電流を流すことにより駆動する
、アクティブマトリクス型の定電流駆動回路の例を示す。その回路構成を図37に示す。
【0269】
図37に示す画素3710は、信号線Si、第1走査線Gj、第2走査線Pjおよび電
源線Viを有している。また画素3710は、Tr1、Tr2、Tr3、Tr4、混合接
合型の有機発光素子3711、および保持容量3712を有している。
【0270】
Tr3とTr4のゲートは、共に第1走査線Gjに接続されている。Tr3のソースと
ドレインは、一方は信号線Siに、もう一方はTr2のソースに接続されている。またT
r4のソースとドレインは、一方はTr2のソースに、もう一方はTr1のゲートに接続
されている。つまり、Tr3のソースとドレインのいずれか一方と、Tr4のソースとド
レインのいずれか一方とは、接続されている。
【0271】
Tr1のソースは電源線Viに、ドレインはTr2のソースに接続されている。Tr2
のゲートは第2走査線Pjに接続されている。そしてTr2のドレインは有機発光素子3
711が有する画素電極に接続されている。有機発光素子3711は、画素電極と、対向
電極と、画素電極と対向電極の間に設けられた有機化合物層とを有している。有機発光素
子3711の対向電極は発光パネルの外部に設けられた電源によって一定の電圧が与えら
れている。
【0272】
なお、Tr3とTr4は、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTのどちらでも良い
。ただし、Tr3とTr4の極性は同じである。また、Tr1はnチャネル型TFTとp
チャネル型TFTのどちらでも良い。Tr2は、nチャネル型TFTとpチャネル型TF
Tのどちらでも良い。有機発光素子の画素電極と対向電極は、一方が陽極であり、他方が
陰極である。Tr2がpチャネル型TFTの場合、陽極を画素電極として用い、陰極を対
向電極として用いるのが望ましい。
逆に、Tr2がnチャネル型TFTの場合、陰極を画素電極として用い、陽極を対向電極
として用いるのが望ましい。
【0273】
保持容量3712はTr1のゲートとソースとの間に形成されている。保持容量371
2はTr1のゲートとソースの間の電圧(Vgs)をより確実に維持するために設けられて
いるが、必ずしも設ける必要はない。
【0274】
図37に示した画素では、信号線Siに供給される電流を信号線駆動回路が有する電流
源において制御されている。
【0275】
以上のような回路構成を適用することにより、有機発光素子に一定の電流を流して輝度
を一定に保とうとする定電流駆動が可能となる。本発明で開示した混合領域を有する有機
発光素子は従来の有機発光素子に比べて寿命が長いが、上記のような定電流駆動を実施す
ることでさらに長寿命化を図ることができるため、有効である。
【実施例19】
【0276】
上記実施例で述べた本発明の発光装置は、低消費電力で寿命が長いという利点を有する
。したがって、前記発光装置が表示部等として含まれる電気器具は、従来よりも低い消費
電力で動作可能であり、なおかつ長保ちする電気器具となる。
特に電源としてバッテリーを使用する携帯機器のような電気器具に関しては、低消費電力
化が便利さに直結する(電池切れが起こりにくい)ため、極めて有用である。
【0277】
また、前記発光装置は、自発光型であることから液晶表示装置のようなバックライトは
必要なく、有機化合物層の厚みも1μmに満たないため、薄型軽量化が可能である。した
がって、前記発光装置が表示部等として含まれる電気器具は、従来よりも薄型軽量な電気
器具となる。このことも、特に携帯機器のような電気器具に関して、便利さ(持ち運びの
際の軽さやコンパクトさ)に直結するため、極めて有用である。さらに、電気器具全般に
おいても、薄型である(かさばらない)ことは運送面(大量輸送が可能)、設置面(部屋
などのスペース確保)からみても有用であることは疑いない。
【0278】
なお、前記発光装置は自発光型であるために、液晶表示装置に比べて明るい場所での視
認性に優れ、しかも視野角が広いという特徴を持つ。したがって、前記発光装置を表示部
として有する電気器具は、表示の見やすさの点でも大きなメリットがある。
【0279】
すなわち、本発明の発光装置を用いた電気器具は、薄型軽量・高視認性といった従来の
有機発光素子の長所に加え、低消費電力・長寿命という特長も保有しており、極めて有用
である。
【0280】
本実施例では、本発明の発光装置を表示部として含む電気器具を例示する。その具体例
を図17および図18に示す。なお、本実施例の電気器具に含まれる有機発光素子には、
本発明で開示した金属錯体のいずれを用いても良い。また、本実施例の電気器具に含まれ
る発光装置の形態は、図12〜図16および図34〜図37のいずれの形態を用いても良
い。
【0281】
図17(a)は有機発光素子を用いたディスプレイ装置であり、筐体1701a、支持台1702a
、表示部1703aを含む。本発明の発光装置を表示部1703aとして用いたディスプレイを作製
することにより、薄く軽量で、長保ちするディスプレイを実現できる。よって、輸送が簡
便になり、設置の際の省スペースが可能となる上に、寿命も長い。
【0282】
図17(b)はビデオカメラであり、本体1701b、表示部1702b、音声入力部1703b、操作ス
イッチ1704b、バッテリー1705b、受像部1706bを含む。本発明の発光装置を表示部1702bと
して用いたビデオカメラを作製することにより、消費電力が少なく、軽量なビデオカメラ
を実現できる。よって、電池の消費量が少なくなり、持ち運びも簡便になる。
【0283】
図17(c)はデジタルカメラであり、本体1701c、表示部1702c、接眼部1703c、操作スイ
ッチ1704cを含む。本発明の発光装置を表示部1702cとして用いたデジタルカメラを作製す
ることにより、消費電力が少なく、軽量なデジタルカメラを実現できる。よって、電池の
消費量が少なくなり、持ち運びも簡便になる。
【0284】
図17(d)は記録媒体を備えた画像再生装置であり、本体1701d、記録媒体(CD、LD、ま
たはDVDなど)1702d、操作スイッチ1703d、表示部(A)1704d、表示部(B)1705dを含む。表
示部(A)1704dは主として画像情報を表示し、表示部(B)1705dは主として文字情報を表示す
る。本発明の発光装置をこれら表示部(A)1704dや表示部(B)1705dとして用いた前記画像再
生装置を作製することにより、消費電力が少なく軽量な上に、長保ちする前記画像再生装
置を実現できる。なお、この記録媒体を備えた画像再生装置には、CD再生装置、ゲーム機
器なども含む。
【0285】
図17(e)は携帯型(モバイル)コンピュータであり、本体1701e、表示部1702e、受像
部1703e、操作スイッチ1704e、メモリスロット1705eを含む。本発明の発光装置を表示部1
702eとして用いた携帯型コンピュータを作製することにより、消費電力が少なく、薄型軽
量な携帯型コンピュータを実現できる。よって、電池の消費量が少なくなり、持ち運びも
簡便になる。なお、この携帯型コンピュータはフラッシュメモリや不揮発性メモリを集積
化した記録媒体に情報を記録したり、それを再生したりすることができる。
【0286】
図17(f)はパーソナルコンピュータであり、本体1701f、筐体1702f、表示部1703f、キ
ーボード1704fを含む。本発明の発光装置を表示部1703fとして用いたパーソナルコンピュ
ータを作製することにより、消費電力が少なく、薄型軽量なパーソナルコンピュータを実
現できる。特に、ノートパソコンのように持ち歩く用途が必要な場合、電池の消費量や軽
さの点で大きなメリットとなる。
【0287】
なお、上記電気器具はインターネットなどの電子通信回線や電波などの無線通信を通じ
て配信される情報を表示することが多くなってきており、特に動画情報を表示する機会が
増えている。有機発光素子の応答速度は非常に速く、そのような動画表示に好適である。
【0288】
次に、図18(a)は携帯電話であり、本体1801a、音声出力部1802a、音声入力部1803a、
表示部1804a、操作スイッチ1805a、アンテナ1806aを含む。本発明の発光装置を表示部180
4aとして用いた携帯電話を作製することにより、消費電力が少なく、薄型軽量な携帯電話
を実現できる。よって、電池の消費量が少なくなり、持ち運びも楽になる上にコンパクト
な本体にできる。
【0289】
図18(b)は音響機器(具体的には車載用オーディオ)であり、本体1801b、表示部1802
b、操作スイッチ1803b、1804bを含む。本発明の発光装置を表示部1802bとして用いた音響
機器を作製することにより、消費電力が少なく、軽量な音響機器を実現できる。また、本
実施例では車載用オーディオを例として示すが、家庭用オーディオに用いても良い。
【0290】
なお、図17〜図18で示したような電気器具において、さらに光センサを内蔵させ、
使用環境の明るさを検知する手段を設けることで、使用環境の明るさに応じて発光輝度を
変調させるような機能を持たせることは有効である。使用者は、使用環境の明るさに比べ
てコントラスト比で100〜150の明るさを確保できれば、問題なく画像もしくは文字情報を
認識できる。すなわち、使用環境が明るい場合は画像の輝度を上げて見やすくし、使用環
境が暗い場合は画像の輝度を抑えて消費電力を抑えるといったことが可能となる。
【0291】
また、本発明の発光装置を光源として用いた様々な電気器具も、低消費電力での動作や
薄型軽量化が可能であるため、非常に有用と言える。代表的には、液晶表示装置のバック
ライトもしくはフロントライトといった光源、または照明機器の光源として本発明の発光
装置を含む電気器具は、低消費電力の実現や薄型軽量化が可能である。
【0292】
したがって、本実施例に示した図17〜図18の電気器具の表示部を、全て液晶ディス
プレイにする場合においても、その液晶ディスプレイのバックライトもしくはフロントラ
イトとして本発明の発光装置を用いた電気器具を作製することにより、消費電力が少なく
、薄くて軽量な電気器具が達成できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に設けられた第1の混合領域と、前記第1の混合領域と接する第2の混合領域とを有し、
前記第1の混合領域及び前記第2の混合領域はホスト材料を有し、
前記ホスト材料は、前記第1の混合領域と前記第2の混合領域との境界領域において濃度が高くなるような濃度勾配を有する
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に設けられた第1の混合領域と、前記第1の混合領域と接する第2の混合領域とを有し、
前記第1の混合領域及び前記第2の混合領域はホスト材料を有し、
前記ホスト材料は前記第1の混合領域では前記陽極側から前記陰極側へ濃度が増加し、前記第2の混合領域では前記陽極側から前記陰極側へ濃度が減少している
ことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記ホスト材料の濃度が高い領域に発光材料が添加されていることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記発光材料は、三重項励起状態からの発光を呈することを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4において、
前記発光材料は、イリジウムを中心金属とする錯体であることを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2012−238896(P2012−238896A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−176220(P2012−176220)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【分割の表示】特願2011−51260(P2011−51260)の分割
【原出願日】平成13年12月28日(2001.12.28)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】