説明

発光装置

【課題】光取り出し効率を向上させることができる、あるいはより容易に表面を加工することができる発光装置を提供する。
【解決手段】発光素子と、前記発光素子から放出された光が入射される光入射面と、前記入射面から入射された光を出射させる光出射面と、を有する透明基板と、を備え、前記光出射面は、凹凸を有し、前記凹凸の側壁面は、粗面化されてなり、前記凹凸の上面は、前記側壁面よりも平滑であることを特徴とする発光装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば表示機器用のバックライト光源や液晶ディスプレイ等のバックライト用光源などの発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス:Electro Luminescence)素子などの発光素子が用いられた発光装置において、ガラスなどの透明基板を介して光を取り出す構造のものがある。ところが、このような構造の発光装置の場合、透明基板の屈折率が空気の屈折率よりも高い場合には、発光素子から放出された光は、透明基板と空気との界面において全反射することがある。全反射した光の一部は、透明基板の内部などを伝搬し多重散乱等を経て最終的に熱として消滅したり、透明基板の端部から外部に出射する。そのため、全反射光により、光取り出し効率が低下するという問題がある。
【0003】
これに対して、透明基板の光出射側の面に加工を施して、光取り出し効率の向上を図った発光装置がある。加工形状としては、ピラミッドアレイ構造やマイクロレンズアレイ構造などが挙げられる。また、透明基板の光出射側の面に凹凸部が形成された発光装置がある(特許文献1)。
【0004】
しかし、特許文献1に記載された発光装置のように、光出射側の面に単純な凹凸部が形成された場合には、透明基板の光出射面の法線方向(正面方向)に取り出される光の強度すなわち正面輝度をさらに向上させるという点においては改善の余地がある。また、透明基板の光出射面にピラミッドアレイ構造やマイクロレンズアレイ構造を形成することは、容易ではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−10245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、光取り出し効率を向上させることができる、あるいはより容易に表面を加工することができる発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、発光素子と、前記発光素子から放出された光が入射される光入射面と、前記入射面から入射された光を出射させる光出射面と、を有する透明基板と、を備え、前記光出射面は、凹凸を有し、前記凹凸の側壁面は、粗面化されてなり、前記凹凸の上面は、前記側壁面よりも平滑であることを特徴とする発光装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光取り出し効率を向上させることができる、あるいはより容易に表面を加工することができる発光装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態にかかる発光装置を表す断面模式図である。
【図2】本実施形態の透明基板を光出射面側から眺めた平面模式図である。
【図3】本実施形態の透明基板を表す断面模式図である。
【図4】本実施形態の比較例の透明基板を表す断面模式図である。
【図5】本実施形態の比較例の透明基板を表す断面模式図である。
【図6】本実施形態の変形例の透明基板を例示する断面模式図である。
【図7】本実施形態の他の変形例の透明基板を例示する断面模式図である。
【図8】本実施形態のさらに他の変形例の透明基板を例示する断面模式図である。
【図9】本実施形態に係る透明基板の試作例の顕微鏡写真である。
【図10】本実施形態に係る透明基板の試作例の顕微鏡写真である。
【図11】発光装置から得られた発光の光度を例示するグラフ図である。
【図12】発光装置から得られた発光の光度を例示するデータ表である。
【図13】発光装置から得られた発光の光度の測定方法を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる発光装置を表す断面模式図である。
【0011】
本実施形態にかかる発光装置10は、ガラスなどの非透湿性材料により形成された透明基板20と、発光素子としての有機EL素子60と、有機EL素子60を覆う封止缶70と、を備える。
透明基板20は、有機EL素子60から放出される光に対して透光性を有する。そのため、有機EL素子60から発光した光は、透明基板20の光入射面21から入射し、透明基板20のなかを伝搬して光出射面22から外部へ出射する。なお、透明基板20の透過率は、必ずしも100パーセントである必要はない。すなわち、有機EL素子60から放出された光の少なくとも一部が、透明基板20を透過するものであればよい。また、透明基板20の材料は、ガラスや石英をはじめとする各種の無機材料でもよく、あるいは樹脂などの各種の有機材料であってもよい。
【0012】
有機EL素子60は、ITO(インジウム錫酸化物:Indium Tin Oxide)などの透光性導電体により形成された第1の電極層30と、有機EL層40と、アルミニウム(Al)などの非透光性伝導体により形成された第2の電極層50と、を有する。第1の電極層30と、有機EL層40と、第2の電極層50と、はこの順に透明基板20の上に積層されている。有機EL層40は、例えばα−NPDやAlq3などの有機層と、リチウム金属などの電子注入層と、が例えば真空蒸着法などにより積層された構造を有する。第2の電極層50は、有機EL素子60から発光した光を透明基板20側へ反射する機能を有する。図1においては図示しないが、第1の電極層30および第2の電極層50は、層抵抗の低い電極取り出し配線を通して外部に取り出され、それぞれ電源につながっている。
【0013】
封止缶70は、例えばガラスやステンレスなどにより形成され、UV硬化樹脂により第1の電極層30および第2の電極層50に接合されている。その結果、封止缶70は、有機EL素子60を覆い、全体を気密封止している。封止缶70は、非透湿性保護板としての機能を有する。つまり、封止缶70は、外気の水分や酸素に対して脆弱である有機EL素子60を保護している。
【0014】
図2は、本実施形態の透明基板を光出射面側から眺めた平面模式図である。
図3は、本実施形態の透明基板を表す断面模式図である。
なお、図3(a)は、図2に表した切断面A−A’およびB−B’における断面模式図であり、図3(b)は、本実施形態の透明基板の光出射面を拡大して眺めた拡大模式図である。また、図2および図3(a)は、凸部23が形成された場合と凹部24が形成された場合とをそれぞれ1つの図面に表している。
【0015】
本実施形態の透明基板20の光出射面22には、光出射面22の法線方向に略平行な垂直面と、光出射面22に略平行な水平面と、を有する凹凸が形成されている。そして、垂直面は、粗面化されている。すなわち、垂直面には、光出射面22に形成された凹凸よりも微細な凹凸状の加工が施されている。
【0016】
より具体的に説明すると、図2に表した具体例においては、透明基板20の光出射面22に、複数の柱状の凸部23が配列されている。この場合には、図3(a)に表したように、凸部23の側壁面23aが垂直面であり、凸部23の上面(第1の水平面)23bおよび間隙面(第2の水平面)23cが水平面である。間隙面23cとは、隣り合う凸部23同士の間に形成された面である。なお、本実施形態においては、側壁面23aは、光出射面22に対して垂直である必要はなく、光出射面22に対して傾斜した面であってもよい。
【0017】
そして、凸部23の側壁面23aは、粗面化されている。すなわち、側壁面23aには、凸部23により形成された凹凸構造よりも微細な凹凸状の加工が施されている。そして、凸部23の側壁23aに形成された凹凸は、例えば、凸部が規則的または不規則的に配列した構造や、凹部が規則的または不規則的に配列した構造とすることができる。あるいは、凸部23の側壁面23aに形成された凹凸は、摺り状の凹凸であってもよい。ここで、「摺り状の凹凸」とは、透明基板20に対して、加工治具などを接触させながら移動させた場合などに形成される凹凸をいう。
【0018】
一方、凸部23の上面23bは、側壁面23aよりも平滑な面(あるいは、滑らかな面)とすることができる。つまり、上面23bは、凹凸が形成されていたとしても、側壁面23aに形成された凹凸よりも微細な凹凸とすることができる。
【0019】
図2に表した凸部23は、四角柱である。側壁面23aは、4つの矩形面により形成されている。図2に表した具体例においては、上面23bは、四角形である。つまり、凸部23は、四角柱である。ただし、本発明はこの具体例には限定されず、上面23bは、正方形でもよいし長方形でもよく、あるいは、六角形やその他の多角形、円形、楕円形、その他、不定形状を含む各種の形状とすることができる。
凸部23は、例えばエッチング加工やダイシングソーを用いた加工などを透明基板20の光出射面22に施すことで形成することができる。このとき、エッチング加工やダイシングの条件を適宜調整することで、側壁面23aを粗面化することも可能である。あるいは、凸部23を形成した後に、化学的あるいは物理的な各種の方法により、側壁面23aを粗面化することも可能である。化学的な方法としては、例えば、エッチングを挙げることができる。物理的な方法としては、例えば、加工治具を接触させながら移動させる方法や、あるいは、サンドブラストなどを挙げることができる。
凹凸は、複数の凸部23を透明基板20の主面に付加することにより形成してもよい。いずれの場合も、上面23bは、光出射面22の一部を構成する主面となる。
【0020】
透明基板20の光出射面22には、凸部23の代わりに複数の凹部24が配列されていてもよい。この場合には、図3(a)に表したように、凹部24の側壁面24aが垂直面であり、凹部24の底面(第1の水平面)24bおよび間隙面(第2の水平面)24cが水平面である。この場合の間隙面24cとは、隣り合う凹部24同士の間に形成された面である。そして、凹部24の側壁面24aには、凹部24により形成された凹凸よりも微細な凹凸状の加工が施されている。
【0021】
図2に表した凹部24は、四角柱がくり抜かれた構造を有する。側壁面24aは、4つの矩形面により形成されている。底面24bは、四角形である。凸部23の場合と同様に、底面24bは、正方形でもよいし長方形でもよく、あるいは、六角形やその他の多角形、円形、楕円形、その他、不定形状を含む各種の形状とすることができる。
凹部24は、例えばエッチング加工などを透明基板20の光出射面22に行うことで形成される。あるいは、凹凸は、複数の凹部24を配列した形成された部材を透明基板20の主面に付加することにより形成してもよい。いずれの場合も、間隙面24cは、光出射面22の一部を構成する主面となる。
【0022】
次に、本実施形態の比較例について、図面を参照しつつ説明する。
図4および図5は、本実施形態の比較例の透明基板を表す断面模式図である。
なお、図4は、光出射面に凹凸が形成されていない透明基板を表す断面模式図であり、図5(a)は、光出斜面に単純凹凸が形成された透明基板を表す断面模式図であり、図5(b)は、光出射面にピラミッドアレイ構造が形成された透明基板を表す断面模式図であり、図5(c)は、光出射面にマイクロレンズアレイ構造が形成された透明基板を表す断面模式図である。
【0023】
図4に表した透明基板200aでは、光出射面210には凹凸は形成されていない。本比較例の透明基板200aの光出射面210は、平面構造を有する。図4に表した透明基板200aの屈折率が空気の屈折率よりも高い場合には、図示しない発光素子から光出射面210に臨界角θc以上の入射角で入射する傾斜入射光141は、いわゆるスネルの法則により全反射光143となる。全反射光143の一部は、背面の発光素子側に伝搬し多重散乱等を経て最終的に熱として消滅したり、透明基板200aの端部から外部に出射する。そのため、図4に表した比較例では、全反射光143により、透明基板200aの光出射面210の側への光取り出し効率が低下する。
【0024】
図5(a)に表した透明基板200bでは、光出射面に凸部230が形成されている。本比較例では、凸部230の側壁面230aには、微細な凹凸状の加工は施されていない。つまり、凸部230の側壁面230aは、図3(a)および図3(b)に表した側壁面23aよりも高い平坦性および平滑性を有する。その他の構造は、図2および図3に関して前述した透明基板20の構造と同様である。
【0025】
本比較例において、側壁面230aに臨界角θcで入射する臨界入射光110は、垂直出射光120として透明基板200bの光出射面の側へ出射する。
一方で、臨界角θcよりも小さい入射角度で側壁面230aに入射する傾斜入射光113は、屈折出射光113aとして透明基板200bの外部に取り出される。また、臨界角θcよりも大きい入射角度で側壁面230aに入射する傾斜入射光115は、側壁面230aにおいて全反射し、上面230bから屈折出射光115aとして透明基板200bの外部に取り出される。つまり、臨界角θcから外れた入射角で側壁面230aに入射する傾斜入射光113、115は、正面方向に出射する垂直出射光120に加算されない。
そのため、正面方向の光取り出し効率および正面輝度を向上させるという点においては改善の余地がある。
【0026】
図5(b)に表した透明基板200cでは、光出射面にピラミッドアレイ構造が形成されている。また、図5(c)に表した透明基板200dでは、光出射面にマイクロレンズアレイ構造が形成されている。しかしながら、透明基板の光出射面にピラミッドアレイ構造やマイクロレンズアレイ構造を形成することは、容易ではない。
【0027】
図5(b)に表した透明基板200cでは、傾斜入射光145は、光出射面から一定角度に傾斜したピラミッドの傾斜面で屈折し、いわゆる散乱出射光145aとなって空気中に取り出される。また、図5(c)に表した透明基板200dでは、傾斜入射光147は、レンズのいわゆる集光作用によって、図5(b)に表した比較例と同様に散乱出射光147aとなって空気中に取り出される。
【0028】
しかしながら、図5(b)および図5(c)に表した透明基板200c、200dでは、垂直入射光130は、ピラミッドの傾斜面あるいはマイクロレンズ表面で屈折し、それぞれの面法線の方向から傾斜した拡散出射光130aとなる。つまり、垂直入射光130のほとんどが垂直出射光120として透明基板200c、200dの外部に取り出されるというわけではない。
そのため、正面方向の光取り出し効率および正面輝度を向上させるという点においては改善の余地がある。
【0029】
これに対して、本実施形態によれば、光取り出し効率を向上させることができる。 以下、この点について、図3を参照しつつ説明する。
ここでは、透明基板20の光出射面22に凸部23が配列された場合を例に挙げて説明する。なお、透明基板20の光出射面22に凹部24が配列された場合でも、凸部23が配列された場合と同様の作用および効果が得られる。
【0030】
光出射面22に形成された凹凸(凸部23または凹部24により形成された凹凸)の側壁面23aが粗面化されているため、側壁面23aに臨界角θcで入射する臨界入射光110は、図3(b)に表したように側壁面23aにおいて散乱する。これにより、臨界入射光110の少なくとも一部は、正面方向(光出射面22の法線方向)に出射する垂直出射光120に加算される。また、垂直出射光120に対して完全に平行ではないが、垂直出射光120の方向に進む成分を有する光を光出射面22から外部に取り出すこともできる。
【0031】
一方、臨界角θcよりも小さい入射角度で側壁面23aに入射する傾斜入射光113、および臨界角θcよりも大きい入射角度で側壁面23aに入射する傾斜入射光115も、臨界入射光110と同様に側壁面23aにおいて散乱する。これにより、傾斜入射光113、115の少なくとも一部も、正面方向に出射する垂直出射光120に加算される。また、この場合も、垂直出射光120に対して完全に平行ではないが、垂直出射光120の方向に進む成分を有する光を光出射面22から取り出すこともできる。
側壁面23aが平坦面であると、臨界入射光110や傾斜入射光115は、側壁面23aで全反射されてしまう。全反射された光は、凸部23の内部を進行し、その一部は凸部23から外部に取り出されるが、凸部23や透明基板20の中で反射を繰り返して減衰してしまい外部に取り出すことができない成分も生ずる。
【0032】
これに対して、本実施形態によれば、側壁面23aが粗面化されている。すなわち、側壁面23aには、光出射面22に形成された凹凸よりも微細な凹凸状の加工が施されているため、臨界入射光110も、傾斜入射光113、115も、側壁面23aにおける散乱によって正面方向の成分を有する光を発生させる。これにより、正面方向の光取り出し効率を向上させ、正面方向の光の強度すなわち正面輝度を向上させることができる。
【0033】
本実施形態においては、上面23bは、側壁面23aよりも平滑であることが望ましい。これは、凸部23の中を伝搬し上面23bに入射する光の入射角度は、凸部23の中を伝搬し側壁面23aに入射する光の入射角度よりも、より垂直に近い傾向があるからである。つまり、上面23bにおいては、側壁面23aよりも全反射が生じにくい。このため、上面23bを側壁面23aよりも平滑な面としても、光を取り出すことができる。
【0034】
これに対して、全反射がより生じやすい側壁面23aを粗面化することで、光の散乱を生じさせ、外部への光の取り出しを向上させることができる。
【0035】
次に、凸部23の寸法関係について説明する。
側壁面23aの寸法をA 、上面23bの寸法をB、臨界角をθcとした場合に、A/B=tan(θc)の式をほぼ満たすことがより好ましい。このようにすると、側壁面23aへ向かって臨界角θcで進行する臨界入射光110のほとんど全ては、側壁面23aに入射し、側壁面23aにおいて散乱する。これにより、光取り出し効率を向上させることができる。また、正面輝度を向上させることができる。
【0036】
また、間隙面23cの寸法をCとした場合に、B:C=1:0.3〜0.7の式をほぼ満たすことがより好ましい。これは、光出射面22に形成された凹凸の凹凸の間隔がより狭いと、透明基板20から空気へ出射した光が、隣接する透明基板20(例えば凸部23)に再度入射し減衰するおそれがあるためである。一方、光出射面22に形成された凹凸の凹凸の間隔がより広いと、凹凸の密度が低くなることにより、光取り出し効率および正面輝度を向上させることがより困難となるためである。
【0037】
次に、本実施形態の変形例について、図面を参照しつつ説明する。
図6は、本実施形態の変形例の透明基板を例示する模式断面図である。
本変形例においては、凸部23の側壁面23aだけでなく、間隙面23cも粗面化されている。すなわち、間隙面23cにも、凹凸状の加工が施されている。こうすることにより、透明基板20の中を伝搬して間隙面23cに入射する光を、より効率的に外部に取り出すことが可能となる。
【0038】
すなわち、凸部23の上面23bと、凸部23どうしのあいだの間隙面23cと、を比較すると、以下のちがいがある。すなわち、凸部23の中を伝搬して上面23bに入射した光が全反射した場合には、その反射光は側壁面23aに入射し、側壁面23aに形成された凹凸状の加工により散乱されて外部に取り出されやすくなる。
【0039】
一方、透明基板20の中を伝搬して間隙面23cに入射した光が全反射した場合には、その反射光は、有機EL素子60の方向に戻る。このようにして有機EL素子60の方向に戻る光は、吸収や減衰などの損失を受けやすくなる。
【0040】
これに対して、本変形例においては、間隙面23cも粗面化することで、図6(b)に表したように、臨界入射光110や、傾斜入射光113、115を散乱させ、外部に向けて取り出しやすくすることができる。つまり、間隙面23cにおいて反射され、吸収や減衰などにより損失となる成分を低下させ、光出射面22からの取り出し効率を向上させることができる。
【0041】
図7は、本実施形態の他の変形例の透明基板を例示する断面模式図である。
図7に表した切断面A−A’およびB−B’における断面模式図は、図3あるいは図6に表した如くである。
【0042】
本変形例の透明基板20aの光出射面22には、図2に関して前述した透明基板20と同様に、複数の柱状の凸部23が配列されている。本変形例の凸部23は、円柱である。側壁面23aは、円柱面により形成されている。上面23bは、円形である。上面23bは、楕円のように閉曲面で囲まれた平面であってもよい。
図2および図3に関して前述したように、透明基板20aの光出射面22には、凸部23の代わりに複数の凹部24が配列されていてもよい。
【0043】
図8は、本実施形態のさらに他の変形例の透明基板を例示する断面模式図である。
図8に表した切断面A−A’、B−B’、C−C’における断面模式図は、図3あるいは図6に表した如くである。
【0044】
本変形例の透明基板20aの光出射面22には、図2に関して前述した透明基板20と同様に、複数の柱状の凸部23が配列されている。本変形例の凸部23は、六角柱であり、ハニカム構造に配列されている。側壁面23aは、6つの矩形面により形成されている。上面23bは、六角形である。ハニカム構造は、透明基板20bに多数の凹凸が形成されても、機械的な強度を高く保つことができる。上面23bは、三角形あるいはその他の多角形であってもよい。
図2および図3に関して前述したように、透明基板20bの光出射面22には、凸部23の代わりに複数の凹部24が配列されていてもよい。
【0045】
図9及び図10は、本実施形態に係る透明基板の試作例の顕微鏡写真である。すなわち、図9(a)及び(b)は、ガラスを用いた透明基板の光出射面に形成した凸部の側壁面23aのSEM(Scanning Electron Microcope)写真である。
【0046】
また、図10は、この透明基板の凸部どうしのあいだの間隙面23cのSEM写真である。なお、図9は、側壁面23aを斜め方向から観察した写真であり、図10は、間隙面23cをほぼ垂直方向から観察した写真である。
【0047】
本試作例においては、透明基板20の光出射面22にダイシングにより溝を縦横に形成することにより、図2及び図6に例示したような凸部23を形成した。すなわち、ダイシングにより形成した溝の側面が、凸部の側壁面23aとなる。また、ダイシングにより形成した溝の底面が、凸部どうしのあいだの間隙面23cとなる。
なお、本試作例において用いたダイシングは、いわゆる鏡面ダイシングではなく、切断面に微細な凹凸が形成されるダイシングである。
【0048】
図9(a)及び(b)から、凸部23の側壁面23aには、マイクロメータのオーダーの微細な凹凸が形成されていることが分かる。すなわち、側壁面23aの表面荒さRaは、マイクロメータのオーダーである。
また、図10(a)及び(b)から、凸部どうしのあいだの間隙面23cにも、マイクロメータのオーダーの凹凸が形成されていることが分かる。つまり、間隙面23cの表面荒さRaも、マイクロメータのオーダーである。
【0049】
なお、上面23b(図6参照)は、SEMによる同様の観察では、側壁面23cよりもはるかに平滑であり、その表面荒さRaは側壁面23cよりも数桁小さい。
【0050】
図11は、本試作例の透明基板を用いた発光装置から得られた発光の光度を例示するグラフ図である。
また、図12は、本試作例の透明基板を用いた発光装置から得られた発光の光度を例示するデータ表である。
また、図13は、発光装置から得られた発光の光度の測定方法を表す模式図である。
【0051】
本試作例では、側壁面23aの寸法Aおよび上面23bの寸法Bは、200μm(ミクロン)である。また、間隙面23cの寸法Cを50μmと、100μmと、150μmと、に変化させた。
【0052】
ここでは、比較例として、凸部23の側壁面23aが粗面化されていないものを用いた。この比較例は、ガラスの透明基板の光出射面に、鏡面ダイシングにより縦横に溝を形成して凸部を形成したものである。
【0053】
本実施形態及び比較例の発光装置について、図13に表したように、透明基板20の光出射面22の正面方向に出射する垂直出射光120、および光出射面22から傾斜した出射角度θで出射する傾斜出射光の光度を0°〜90°の間において10°毎に測定した。その結果の一例は、図11および図12に表した如くである。
【0054】
図11および図12から、凹凸状の加工が側壁面23aに施された場合の正面輝度は、凹凸状の加工が側壁面23aに施されていない比較例の正面輝度よりも高いことが分かる。つまり、凹凸状の加工を側壁面23aに施すことにより、正面方向の光取り出し効率を向上できることが分かる。また、凹凸状の加工が側壁面23aに施された場合の正面輝度は、間隙面23cの寸法Cが100μm、50μm、150μmの順に高いことが分かる。さらに、正面輝度だけではなく、光出射面22から傾斜した出射角度θで出射する傾斜出射光の光度は、凹凸状の加工が側壁面23aに施された場合の方が高いことが分かる。これにより、正面方向だけではなく全方向の光取り出し効率を向上させることができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、光出射面22に形成された凹凸の側壁面23aを粗面化することにより、側壁面23aに臨界角θcで入射する臨界入射光110、および臨界角θcから外れた入射角で側壁面23aに入射する傾斜入射光113、115は、側壁面23aにおいて散乱する。これにより、臨界入射光110および傾斜入射光113、115は、正面方向に出射する垂直出射光120に加算される。そのため、正面方向の光取り出し効率を向上させ、正面方向の光の強度すなわち正面輝度を向上させることができる。また、臨界角θcで側壁面23aに入射する臨界入射光110、および臨界角θcから外れた入射角で側壁面23aに入射する傾斜入射光113、115は、側壁面23aにおいて散乱する。そのため、正面方向だけではなく全方向の光取り出し効率を向上させることができる。
【0056】
さらに、光出射面22には、四角柱や円柱や六角柱の凸部23あるいは凹部24を有する凹凸が形成されており、凹凸の側壁面23a、24aは、粗面化されている。そのため、光出射面をより容易に加工することができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、発光素子は、有機EL素子には限定されず、無機EL素子でもよく、あるいは、EL素子の他にも、例えば、発光ダイオードやレーザ、蛍光灯、放電管、陰極線管など、各種の発光素子を用いることができる。また、発光装置10や有機EL素子60などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや有機EL素子60や透明基板20や封止缶70の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0058】
10 発光装置、 20、20a、20b 透明基板、 21 光入射面、22 光出射面、 23 凸部、 23a 側壁面、 23b 上面、 23c 間隙面、 24 凹部、 24a 側壁面、 24b 底面、 24c 間隙面、 30 第1の電極層、 40 有機EL層、 50 第2の電極層、 60 有機EL素子、 70 封止缶、 110 臨界入射光、 113 傾斜入射光、 113a 屈折出射光、 115 傾斜入射光、 115a 屈折出射光、 120 垂直出射光、 130 垂直入射光、 130a 拡散出射光、 141 傾斜入射光、 143 全反射光、 145 傾斜入射光、 145a 散乱出射光、 147 傾斜入射光、 147a 散乱出射光、 200a、200b、200c、200d 透明基板、 210 光出射面、 230 凸部、 230a 側壁面、 230b 上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子から放出された光が入射される光入射面と、前記入射面から入射された光を出射させる光出射面と、を有する透明基板と、
を備え、
前記光出射面は、凹凸を有し、
前記凹凸の側壁面は、粗面化されてなり、
前記凹凸の上面は、前記側壁面よりも平滑であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記透明基板は、前記側壁面の寸法をAとし、前記上面の寸法をBとし、臨界角をθcとした場合に、A/B=tan(θc)の式を満たし、隣り合う前記凸部同士の間に形成された間隙面の寸法をCとした場合に、B:C=1:0.3〜0.7の式を満たすことを特徴とする請求項1記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−79524(P2012−79524A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222961(P2010−222961)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】