説明

発光装置

【課題】 製品寿命を良好に維持することが可能な発光装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 発光装置1であって、基板2と、基板2上に設けられた発光素子3と、基板2上に設けられた、発光素子3を取り囲む多孔質材料からなる枠体4と、枠体4の内周面4aから上面を経て枠体4の外周面4bにかけて連続して設けられた透光性の封止層5と、枠体4の下面であって内周面4aと外周面4bの間に設けられた接合部材6と、枠体4の内部には、封止層5と接合部材6で囲まれる領域に閉じ込められるように設けられた空隙部7とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を含む発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発光素子を有する発光装置の開発が進められている。当該発光装置は、消費電力または製品寿命に関して注目されている。なお、発光装置として、発光素子から発せられる光を効率よく反射する多孔質の枠体を用いた技術が開示されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−227868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多孔質の枠体を用いた発光装置は、外部から多孔質な枠体を介して発光装置内に大気中の酸素や水分が進入し、製品寿命が短くなる虞がある。
【0005】
本発明は、製品寿命を良好に維持することが可能な発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る発光装置は、基板と、前記基板上に設けられた発光素子と、前記基板上に設けられた、前記発光素子を取り囲む多孔質材料からなる枠体と、前記枠体の内周面から上面を経て前記枠体の外周面にかけて連続して設けられた透光性の封止層と、前記枠体の下面であって前記内周面と前記外周面の間に設けられた接合部材と、前記枠体の内部には、前記封止層と前記接合部材で囲まれる領域に閉じ込められるように設けられた空隙部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製品寿命を良好に維持することが可能な発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る発光装置の概観を示す断面斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る発光装置の断面図である。
【図3】図2に示す発光装置の一部Aを拡大した拡大断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る枠体の一部Bを拡大した断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る発光装置の透過平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る発光装置の断面図であって、発光装置の製造工程の一工程を示している。
【図7】本発明の一実施形態に係る発光装置の断面図であって、発光装置の製造工程の一工程を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る発光装置の一実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されないものである。
【0010】
<発光装置の概略構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る発光装置1の概観斜視図であって、その一部を断面視している。図2は、図1に示す発光装置の断面図である。図3は、図2に示す発光装置の一部Aを拡大した拡大断面図である。図4は、枠体4の一部Bを拡大した拡大断面図である。図5は、発光装置の透過平面図であって、波長変換部材、接着部材および封止部材を除いた状態を示している。
【0011】
発光装置1は、基板2と、基板2上に設けられた発光素子3と、基板2上に設けられた、発光素子3を取り囲む多孔質材料からなる枠体4と、枠体4の内周面4aから上面を経て枠体の外周面4bにかけて連続して設けられた透光性の封止層5と、枠体4の下面であって内周面4aと外周面4bの間に設けられた接合部材6と、枠体4の内部には、封止層5と接合部材6で囲まれる領域に閉じ込められるように設けられた空隙部7とを備えている。
【0012】
さらに、発光装置1は、基板2上であって枠体4で囲まれる領域には、発光素子3を覆う封止部材8と、枠体4上に支持されるとともに発光素子3と間を空けて設けられた波長変換部材9と、枠体4と波長変換部材9を接続する接着部材11とを備えている。なお、発光素子3は、例えば、発光ダイオードであって、半導体を用いたpn接合中の電子と正孔が再結合することによって、外部に向かって光を放出する。
【0013】
基板2は、絶縁性の基板であって、例えば、アルミナまたはムライト等のセラミック材料、ガラスセラミック材料、あるいは樹脂材料等から成る。または、これらの材料のうち複数の材料を混合した複合系材料から成る。また、基板2は、基板2の熱膨張を調整することが可能な金属酸化物微粒子を分散させた高分子樹脂を用いることができる。
【0014】
基板2は、基板2の内外を電気的に導通する配線導体が形成されている。配線導体は、例えば、タングステン、モリブデン、マンガンまたは銅等の導電材料からなる。配線導体は、例えば、タングステン等の粉末に有機溶剤を添加して得た金属ペーストを、基板2となるセラミックグリーンシートに所定パターンで印刷し、複数のセラミックグリーンシートを積層して、焼成することにより得られる。なお、配線導体の表面には、酸化防止のために、例えば、ニッケルまたは金等の鍍金層が形成されている。また、基板2が樹脂材料からなる場合は、シート状に加工した有機基板に対して鍍金処理等を施したり、リードフレームを金型に配置してトランスファ成形プロセスでモールド樹脂を金型に流し込むとともに加熱加圧し硬化したりすることで作製することができる。
【0015】
また、基板2の上面には、基板2上方に効率良く光を反射させるために、配線導体および鍍金層と間を空けて、例えば、アルミニウム、銀、金、銅またはプラチナ等の金属反射層を形成する。
【0016】
発光素子3は、基板2上に実装される。発光素子3は、基板2上に形成される配線導体の表面に被着する鍍金層上に、例えば、ろう材または半田を介して電気的に接続されたり、ワイヤボンディングによって電気的に接続されたりする。
【0017】
発光素子3は、透光性基体と、透光性基体上に形成される光半導体層とを有している。透光性基体は、有機金属気相成長法または分子線エピタキシャル成長法等の化学気相成長法を用いて、光半導体層を成長させることが可能なものであればよい。透光性基体に用いられる材料としては、例えば、サファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、シリコンカーバイド、シリコンまたは二ホウ化ジルコニウム等を用いることができる。なお、透光性基体の厚みは、例えば50μm以上1000μm以下である

【0018】
光半導体層は、透光性基体上に形成される第1半導体層と、第1半導体層上に形成される発光層と、発光層上に形成される第2半導体層とから構成されている。第1半導体層、発光層および第2半導体層は、例えば、III族窒化物半導体、ガリウム燐またはガリウムヒ素等のIII−V族半導体、あるいは、窒化ガリウム、窒化アルミニウムまたは窒化インジウム等のIII族窒化物半導体などを用いることができる。なお、第1半導体層の厚みは、例えば1μm以上5μm以下であって、発光層の厚みは、例えば25nm以上150nm以下であって、第2半導体層の厚みは、例えば50nm以上600nm以下である。また、このように構成された発光素子3では、例えば370nm以上420nm以下の波長範囲の励起光を発する素子を用いることができる。
【0019】
枠体4は、基板2上の発光素子3を取り囲むように設けられている。また、枠体4は、平面視して内周面4aおよび外周面4bの形状が円形状であって、発光素子3が発光する光を上方向に反射させて外部に放出することができる。枠体4は平面視したときに、外径が例えば3mm以上30mm以下であって、内径が例えば1mm以上28mm以下に設定されている。
【0020】
また、枠体4は、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムまたは酸化イットリウム等のセラミック材料を所望の形状に形成して焼結された多孔質材料から構成されている。枠体4を多孔質材料から構成することで、枠体4は、発光素子3から発せられる光を多孔質材料の内部まで入射させず、多孔質材料の表面で反射させることができ、さらに、多孔質材料の内部に多数の空隙が形成されることによって枠体4の熱伝導率が低下するとともに熱吸収が抑制されることにより、熱エネルギーによる反射率の低下や、機械的な強度劣化が抑制される。さらに、発光素子3からの光が、セラミック材料からなる結晶粒の一部が焼結されて形成された多孔質材料から成る枠体4の表面で波長変換部材9の方向へ拡散して反射される。よって、発光素子3から発せられる光は、波長変換部材9の一部に集中することなく、波長変換部材9に入射される。その結果、波長変換部材9は、発光素子3からの光が波長変換される際に生じる熱が一部に集中しないことから、波長変換部材9の一部が温度上昇することによる波長変換効率の低下や、波長変換部材9の一部が温度上昇することによる透過率や機械的強度の劣化が抑制される。
【0021】
また、枠体4で囲まれる領域は、下部から上部に向かって幅広に傾斜するとともに、枠体4の上端内側には段差4cが設けられている。なお、枠体4の傾斜する内壁面には、例えば、タングステン、モリブデン、銅または銀等から成る金属層と、金属層を被覆するニッケルまたは金等から成る鍍金金属層が形成されてもよい。この鍍金金属層は、発光素子3の発する光を反射させる機能を有する。なお、枠体4の内壁面の傾斜角度は、基板2の上面に対して例えば55度以上70度以下の角度に設定されている。
【0022】
枠体4の段差4cは、波長変換部材9を支持する機能を有している。段差4cは、枠体4の上部の一部を内側に向けて切欠いたものであって、枠体4の内周面を一周するように連続して設けられており、波長変換部材9の端部を支持することができる。
【0023】
枠体4を多孔質材料から構成されているので、図4に示すように、枠体4は枠体4の表面を含めて多数の気孔bが設けられているので、封止層5の一部が枠体4の表面から内部の気孔bに浸入して固定される。そして、封止層5の一部が枠体4の表面に固着することで、アンカー効果によって、封止層5と枠体4とが強固に接合される。
【0024】
封止層5の一部が枠体4の内壁面から枠体4の内部に浸入している領域は、枠体4の表面にわたって連続して設けられている。封止層5の浸入している領域は、枠体4の内壁面
から枠体4の内部に向かって、断面視して例えば0.1mm以上1mm以下に設定されている。
【0025】
枠体4の内周面4aから枠体の外周面4bにかけて連続して封止層5が設けられている。封止層5は、発光素子3の発する光を透過する透光性の材料からなる。封止層5は、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂等の透光性の絶縁樹脂、または透光性のガラスからなる。
【0026】
封止層5は、枠体4の内周面4a、枠体4の外周面4bおよび枠体4の段差4cの表面に設けられている。また、封止層5は、枠体4の下面であって、内周面4aと外周面4bの間には設けられていない。つまり、封止層5は、接合部材6が設けられる個所には設けられていない。
【0027】
封止層5は、大気中の酸素や水分が、外部から発光装置1内に進入しようとするのを抑制したり、枠体4で囲まれる領域に充填される封止部材8が、多孔質材料からなる枠体4の内部に浸透するのを抑制したりするものである。封止層5は、枠体4を例えば150℃以上に熱した状態で、枠体4の表面に対して、封止層5を構成するシリコーン樹脂からなる未硬化の材料を吹き付けたり、塗布したりすることで形成することができる。なお、枠体4は、多孔質材料からなるため、単に常温で封止層5を構成する未硬化の材料を吹き付けたり、塗布したりすると、枠体4内に材料が浸み込んで、枠体4の表面に封止層5を形成することができない。
【0028】
また、封止層5は、屈折率が封止部材8より小さい場合には、封止部材8と封止層5との界面で発光素子3からの光の一部は全反射するとともに、封止層5に入射して内周面4aで反射される光は、封止部材8と封止層5との界面で全反射せずに封止部材8に入射されて波長変換部材9に入射することから、発光装置1の光出力が向上する。また、封止層5は、屈折率が封止部材8と同じ場合には、封止部材8と封止層5との屈折率差に起因した光損失を生じないことから、発光装置1の光出力の低下が抑制される。
【0029】
枠体4の表面に封止層5を形成することで、封止層5で囲まれる領域に、気孔bからなる空隙部7を形成することができる。封止層5を枠体4の表面に設けることで、外部から発光装置1内に大気中の酸素や水分が進入するのを抑制することができる。また、枠体4の表面に封止層5を設けることで、封止層5で囲まれる領域に気孔bのままの個所を多く残すことができ、その個所を空隙部7とすることができる。即ち、枠体4の表面に封止層5を設けることで、枠体4で囲まれる領域に充填される封止部材8が空隙部7に充填されず、発光素子3からの光が封止部材8を介して枠体4内に入射することが抑制されることから、発光素子3からの光は封止部材8を介して枠体4内で吸収されることなく、内周面4aで効率よく反射される。
【0030】
空隙部7は、気孔率を10%以上50%以下にすることが好ましく、内周面4aの反射率を高くすることができるとともに空隙部7に封止層5を含浸させ難くすることができる。気孔率を10%以上にすることにより、内周面4aから枠体4の内部や外部に透過する発光素子3からの光を低下させることができ、50%以下にすることにより、空隙部7を介して封止層5が枠体4の内部に浸透することが抑制されるとともに、機械的な強度を維持することができる。また、空隙部7は、中央細孔径を0.1μm以上1μm以下にすることが好ましく、内周面4aの反射率を高くすることができるとともに空隙部7に封止層5を含浸させ難くすることができる。中央細孔径を0.1μm以上にすることにより、内周面4aから枠体4の内部や外部に透過する発光素子3からの光を低下させることができ、1μm以下にすることにより、空隙部7を介して封止層5が枠体4の内部に浸透することが抑制されるとともに、機械的な強度を維持することができる。なお、気孔率および中
央細孔径は、マイクロメリティクス社製ポアサイザー9310型を使用した水銀圧入法による細孔分布測定にて測定することができる。
【0031】
枠体4で囲まれる領域に、光透過性の封止部材8が充填されている。封止部材8は、発光素子3を封止するとともに、発光素子3から発せられる光が透過する機能を備えている。封止部材8は、枠体4の内方に発光素子3を収容した状態で、枠体4で囲まれる領域であって、波長変換部材9が封止部材8によって枠体4に傾いて接合されないよう、段差4cの高さ位置よりも低い位置まで充填される。なお、封止部材8は、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂等の透光性の絶縁樹脂が用いられる。なお、封止部材8の熱伝導率は、例えば、0.14W/(m・K)以上0.21W/(m・K)以下に設定されている。
【0032】
波長変換部材9は、発光素子3の発する光の波長を変換する機能を有している。波長変換部材9は、発光素子3から発せられる光が内部に入射して、内部に含有される蛍光体10が励起されて、光を発するものである。
【0033】
波長変換部材9は、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂等の透光性の絶縁樹脂、透光性のガラスからなり、その絶縁樹脂、ガラス中に、例えば430nm以上490nm以下の蛍光を発する青色蛍光体、例えば500nm以上560nm以下の蛍光を発する緑色蛍光体、例えば540nm以上600nm以下の蛍光を発する黄色蛍光体、例えば590nm以上700nm以下の蛍光を発する赤色蛍光体が含有されている。波長変換部材9として透光性ガラスが用いられる場合には、発光装置1の気密性を向上させることができる。
【0034】
また、蛍光体10は、波長変換部材9中に均一に分散するようにしている。なお、波長変換部材9の熱伝導率は、例えば0.1W/(m・K)以上0.8W/(m・K)以下に設定されている。波長変換部材9の熱膨張率は、例えば0.8×10−5/K以上8×10−5/K以下に設定されている。波長変換部材9の屈折率は、例えば、1.3以上1.6以下に設定されている。例えば、波長変換部材9の材料の組成比を調整することで、波長変換部材9の屈折率を調整することができる。
【0035】
波長変換部材9は、枠体4上に支持されるとともに、発光素子3と間を空けて設けられている。また、波長変換部材9の端部は、枠体4の段差4cが設けられている箇所と当接するようにして取り囲まれている。
【0036】
また、波長変換部材9の全体の厚みは、例えば、0.3mm以上3mm以下に設定されており、且つ厚みが一定に設定されている。ここで、厚みが一定とは、厚みの誤差が0.5μm以下のものを含む。波長変換部材9の厚みを一定にすることにより、波長変換部材9内で励起される光の量を一様になるように調整することができ、波長変換部材9における輝度ムラを抑制することができる。
【0037】
枠体4の段差4c上に位置する封止層5の表面に、波長変換部材9の端部が接着部材11を介して固定されている。接着部材11は、波長変換部材9を枠体4に固着するものである。接着部材11は、波長変換部材9の端部上から枠体4の段差4c個所にかけて設けられている。また、接着部材11は、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂等の透光性の絶縁樹脂、透光性のガラスが用いられる。なお、接着部材11の熱伝導率は、例えば0.1W/(m・K)以上0.8W/(m・K)以下に設定されている。接着部材11の熱膨張率は、例えば0.8×10−5/K以上8×10−5/K以下に設定されている。
【0038】
また、接着部材11の熱伝導率は、波長変換部材9の熱伝導率よりも大きく設定した場合は、波長変換部材9から封止層5に伝わる熱を接着部材11を介して伝達しやすくすることができる。波長変換部材9には、発光素子3が発する光を蛍光体10によって波長変換する際の変換損失に起因した熱が発生し、この熱によって波長変換部材9の温度が上昇する。その熱を波長変換部材9から接着部材11に吸収しやすくすることで、波長変換部材9が高温になるのを抑制することができ、波長変換部材9の熱膨張やそれに起因して生じる応力によって波長変換部材9が封止層5から剥離しようとすることや、熱によって波長変換部材5の透過率が低下するのを抑制することができる。また、波長変換部材9が高温になると、発光素子3の発する励起光によって励起される光の色温度が変化し、所望する色温度の光色になりにくくなるが、波長変換部材9の温度が高温になるのを抑制することで、所望する光色を取り出すことができる。そして、波長変換部材9を接続個所に対して良好に固着し続けることが可能な発光装置1を提供することができる。
【0039】
また、接着部材11の熱膨張率が、波長変換部材9の熱膨張率よりも小さく設定されている場合は、波長変換部材9が熱膨張を起こそうとするが、波長変換部材9の側面に熱膨張しにくい接着部材11が形成されているため、接着部材11が波長変換部材9の熱膨張を抑えるように応力を加えることができる。そして、波長変換部材9が必要以上に膨張するのを効果的に抑制することができるとともに、熱膨張に起因して生じる、接着部材11から波長変換部材9に作用する力、即ち、接着部材11から波長変換部材9に加わる応力が小さくなり、それらの応力に起因して生じる波長変換部材9の封止層5からの剥がれを抑制できる。
【0040】
また、接着部材11は、屈折率が波長変換部材9より大きくてもよい。この場合、波長変換部材9の側面の上端や側面から接着部材11に無反射で光が入射されることにより、波長変換部材9に充填された蛍光体からの光が無反射で接着部材11に入射されるとともに、広げられた接着部材11の表面から外部に放射される光の割合が増加し、発光装置1の光出力を向上させることができる。また、接着部材11の屈折率が波長変換部材9より小さい場合は、波長変換部材9から屈折率が1である大気までの屈折率を段階的に小さくすることができ、それぞれの接合界面における屈折率差に起因して生じる光吸収損失を小さくし、発光装置1の光出力を向上させることができる。
【0041】
接着部材11は、平面視して波長変換部材9の端部の外周に沿って連続して形成されている。そして、接着部材11は、断面視して、波長変換部材9の側面の上部から枠体4の段差4c上に位置する封止層5にかけて被着することで、接着部材11が被着する面積を大きくし、接着部材11を介して波長変換部材9と封止層5とを強固に接続することができる。その結果、波長変換部材9と封止層5の接続強度を向上させることができ、波長変換部材9の撓みが抑制される。そして、発光素子3と波長変換部材9との間の光学距離が変動するのを効果的に抑制することができる。
【0042】
また、接着部材11は、波長変換部材9の側面から波長変換部材9の上面にかけて設けられている。そして、接着部材11は、波長変換部材9の側面の上端を被覆している。さらに、波長変換部材9の上面に被着している接着部材11は、上方に突出して膨らむ樹脂だまりを設け、周囲よりも厚みを大きくすることで、波長変換部材9と接着部材11との熱膨張差に起因にして生じる応力が接着部材11による樹脂だまりで吸収、緩和されるとともに、波長変換部材9の上面に被着している接着部材11による樹脂だまりによって接着部材11の表面積が増加することにより、波長変換部材9から接着部材11の表面を介して発光装置1の外部に取り出される光が増加し、発光装置1の光出力を向上させることができる。
【0043】
本実施形態に係る発光装置1は、枠体4の表面に封止層5を設けることで、外部から多
孔質な枠体を介して発光素子3や封止部材8に大気中の水分や酸素が進入するのを抑制することができる。仮に、枠体4の表面に封止層5が設けられていない場合は、大気中の酸素や水分が枠体4内の気孔bを通って、発光素子3や封止部材8にまで到達しやすい。そして、封止部材8の劣化具合によっては、発光素子3が大気中に晒され易く、また、封止部材8の透過率が劣化し発光素子3の輝度が低下する虞が大きい。一方、本実施形態に係る発光装置1は、枠体4の内周面4aから外周面4bにかけて封止層5を形成することで、大気中の酸素や水分が枠体4内に進入しにくくすることができる。その結果、発光素子3や封止部材8が大気中にふれる機会を効果的に低減することができ、発光素子3の輝度を良好に維持することができ、発光装置1の製品寿命を長くすることができる。
【0044】
また、封止層5によって多孔質の枠体4の表面を覆うことで、枠体4内に空隙部7を設けることができる。空隙部7は、断熱構造として機能し、発光素子3の発光時に発する熱を枠体4に伝わりにくくすることができる。その結果、発光素子3の発する熱は、封止層5を介して外部に伝わりやすくすることができ、枠体4の温度が上昇するのを抑制することができるとともに、枠体4全体に伝わる熱エネルギーを小さくできることにより、枠体4の熱による特性変化に起因した反射率の低下や機械的強度の劣化を抑制することができる。
【0045】
また、封止層5によって多孔質の枠体4の表面を覆うことで、枠体4の内側に充填される封止部材8は枠体4の内部には含浸されず、発光素子3からの光が封止部材8を介して枠体4の内部まで到達しないことから、枠体4の内部で生じる光吸収損失が抑制される。結果、発光素子3からの光は、内周面4aで効率よく反射されるとともに波長変換部材9に入射され、蛍光体によって波長変換される光が増加することにより、発光装置1の光出力を向上させることができる。
【0046】
なお、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0047】
<発光装置の製造方法>
ここで、図1に示す発光装置1の製造方法を説明する。まず、基板2を準備する。基板2が、例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムおよび酸化カルシウム等の原料粉末に、有機バインダー、可塑剤または溶剤等を添加混合して混合物を得る。そして、混合物から複数のグリーンシートを作製する。
【0048】
また、タングステンまたはモリブデン等の高融点金属粉末を準備し、この粉末に有機バインダー、可塑剤または溶剤等を添加混合して金属ペーストを得る。そして、基板2となるセラミックグリーンシートに配線導体となるメタライズパターンおよび必要に応じて枠体4を接合するためのメタライズパターンをそれぞれ所定パターンで印刷し、複数のセラミックグリーンシートを積層した状態で焼成することで、基板2を準備することができる。
【0049】
枠体4を準備する。枠体4は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムまたは酸化イットリウム等の多孔質のセラミック材料を準備する。そして、枠体4の型枠内に、セラミック材料の原料粉末に有機バインダー、可塑剤または溶剤等を添加混合した混合物を充填して乾燥させた後に、焼成することで多孔質の枠体4を準備することができる。
【0050】
次に、枠体4の下面を下にして外部の作業基板上に置いた状態で、枠体4の温度を100度以上に上昇させる。そして、枠体4の露出した表面に対して、例えばスプレー法を用いて、例えばシリコーン樹脂を吹き付けて、枠体4の露出していた表面に封止層5を形成
することができる。
【0051】
そして、基板2の上面の所定個所に発光素子3を実装する。さらに、図6に示すように、枠体4の下面であって、枠体4の内周面4aと外周面4bの間に、例えばシリコーン樹脂から成る接合部材6を浸み込ませる。そして、接合部材6が下面に浸み込んだ枠体4を、基板2の上面の所定個所に位置合わせして接続する。このとき、接合部材6は、枠体4に封止層5を設けていることで、枠体4内から枠体4の内周面4aまたは外周面4bを介して外部に漏洩せずに、枠体4の下面に留まった状態で、基板2と枠体4とを接続することができる。
【0052】
枠体4の表面に封止層5を設けていることで、接合部材6が基板2の上面や側面、下面に漏れ出さず、基板2の上面や側面や下面に形成されたメタライズパターンが接合部材6によって被覆されることによって生じる電気的な接続不良を抑制できる。また、接合部材6が基板2の上面や内周面4aに被覆されることによって生じる接合部材6の光吸収を抑制することができる。
【0053】
そして、基板2上の枠体4の内周面4aに被着した封止層5によって囲まれた領域に、例えば封止部材8としてのシリコーン樹脂を充填する。このときは、封止層5で囲まれる枠体4内には、封止部材8が浸入していない。その後、例えば150℃以上の温度にシリコーン樹脂を熱して、シリコーン樹脂を硬化させることで、発光素子3を封止部材8で封止することができる。
【0054】
次に、波長変換部材9を準備する。波長変換部材9は、未硬化の樹脂に蛍光体を混合して、例えばドクターブレード法、ダイコーター法、押し出し法、スピンコート法またはディップ法等のシート成形技術を用いて作製することができる。また、波長変換部材9は、未硬化の波長変換部材9を型枠に充填し、硬化して取り出すことによっても得ることができる。
【0055】
そして、準備した波長変換部材9を枠体4の段差4c上に位置合わせして、接着部材11としてのシリコーン樹脂を介して接着する。そして、例えば150℃以上であって封止部材8が破壊されない360℃以下の温度にシリコーン樹脂を熱して、シリコーン樹脂を硬化させる。このようにして、発光装置1を製造することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 発光装置
2 基板
3 発光素子
4 枠体
4a 内周面
4b 外周面
4c 段差
5 封止層
6 接合部材
7 空隙部
8 封止部材
9 波長変換部材
10 蛍光体
11 接着部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた発光素子と、
前記基板上に設けられた、前記発光素子を取り囲む多孔質材料からなる枠体と、
前記枠体の内周面から上面を経て前記枠体の外周面にかけて連続して設けられた透光性の封止層と、
前記枠体の下面であって前記内周面と前記外周面の間に設けられた接合部材と、
前記枠体の内部には、前記封止層と前記接合部材で囲まれる領域に閉じ込められるように設けられた空隙部とを備えたことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記接合部材は、前記枠体の内部の一部に浸透していることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の発光装置であって、
前記封止層の屈折率は、前記接合部材の屈折率よりも大きいことを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発光装置であって、
前記基板上であって前記枠体で囲まれる領域には、前記発光素子を覆う封止部材が設けられており、前記封止部材の屈折率は前記封止層の屈折率よりも小さいことを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−105801(P2013−105801A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247128(P2011−247128)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】