説明

発光装置

【課題】基板側面からの出力光の変動による色度ばらつき及び信頼性の低下を抑制できる発光装置を提供する。
【解決手段】発光素子10と、発光素子10を搭載し、入射された発光素子10の出射光を吸収することでその出射光を側面から出力させない基板20と、発光素子10及び基板20を格納する凹部を有するパッケージ30と、パッケージ30の凹部の底面において基板20をパッケージ30に固定するダイマウント剤40と、凹部に充填された、発光素子10の出射光によって励起されて励起光を放射する蛍光体51を含有する蛍光体層50とを備え、発光素子10の出射光と励起光との混色光を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体を用いて光を出力する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)などの発光素子を光源に用いた発光装置が実用化されている。白色光を出力する発光装置を実現するために、赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ出射する複数のLEDが使用されたり、青色LEDと各種の青色励起蛍光体(黄色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体)とを組み合わせた擬似白色LEDが使用されたりしている。
【0003】
発光素子は、明るさや発光効率を向上させるために、一般的にサファイア基板や炭化シリコン(SiC)基板などの透光性を有する基板上に搭載される(例えば特許文献1参照。)。同様に、パッケージに基板を固定するダイマウント剤にも光透過率の高いものや光反射率の高い白色のものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−207519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
透光性を有する基板上に発光素子が配置された場合、発光素子からの出射光が等方に広がる。そのため、基板に入射した出射光が基板を透過した後に基板側面からも出力される。基板をパッケージに実装するためのダイマウント剤の塗布量の変動により、基板側面に付着するダイマウント剤の膜厚や底面からの這い上がり量(高さ)が変化する。これによる基板側面における遮光量の変化によって、基板側面から出力される光の光量がばらつく。その結果、発光素子の出射光と蛍光体からの励起光との混色による白色出力光の色度ばらつきが発生するという問題が生じる。
【0006】
更に、パッケージが光反射部分を有する場合、光反射部分の反射率が光エネルギーによって経時劣化する。このため、発光装置の信頼性が著しく低下し、特に色度変化が大きい。
【0007】
上記問題点に鑑み、本発明は、基板側面からの出力光の変動による色度ばらつき及び信頼性の低下を抑制できる発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、(イ)発光素子と、(ロ)発光素子を搭載し、入射された発光素子の出射光を吸収することでその出射光を側面から出力させない基板と、(ハ)発光素子及び基板を格納する凹部を有するパッケージと、(ニ)パッケージの凹部の底面において基板をパッケージに固定するダイマウント剤と、(ホ)凹部に充填された、発光素子の出射光によって励起されて励起光を放射する蛍光体を含有する蛍光体層とを備え、発光素子の出射光と励起光との混色光を出力する発光装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板側面からの出力光の変動による色度ばらつき及び信頼性の低下を抑制できる発光装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る発光装置の構成を示す模式図である。
【図2】比較例の発光装置の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る発光装置の構成を示す模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る発光装置の構成を示す模式図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る発光装置の構成を示す模式図である。
【図6】図6(a)は本発明の第2の実施形態に係る発光装置の出力光のxy色度図であり、図6(b)は図2に示した比較例の発光装置の出力光のxy色度図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。又、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る発光装置1は、図1に示すように、発光素子10と、発光素子10を搭載し、入射された発光素子10の出射光を吸収することでその出射光を側面から出力させない基板20と、発光素子10及び基板20を格納する凹部を有し、その凹部の内壁面31が光反射面であるパッケージ30と、パッケージ30の凹部の底面において基板20をパッケージ30に固定するダイマウント剤40と、凹部に充填された、発光素子10の出射光によって励起されて励起光を放射する蛍光体51を含有する蛍光体層50とを備える。発光装置1は、発光素子10の出射光と励起光とが混色された出力光Lを出力する。
【0013】
図1に示した発光装置1では、上部よりも底部が狭い凹部を有するパッケージ30の凹部底面に、発光素子10が配置されている。発光素子10には、LEDやレーザダイオードなどの半導体発光素子が採用可能である。
【0014】
図1に示した発光素子10は、n型クラッド層11、活性層12及びp型クラッド層13が積層された構造である。n型クラッド層11にはn側電極110が接続されており、図示を省略した外部の負電源からボンディングワイヤなどを介して電子がn側電極110に供給される。これにより、n型クラッド層11から活性層12に電子が供給される。
【0015】
p型クラッド層13にはp側電極130が接続されており、図示を省略した外部の正電源からボンディングワイヤなどを介して正孔(ホール)がp側電極130に供給される。これにより、p型クラッド層13から活性層12に正孔が供給される。
【0016】
活性層12は、例えばInGaN膜とGaN膜を交互に積層した多重量子井戸(MQW)構造を有する。n型クラッド層11から供給された電子とp型クラッド層13から供給された正孔とが活性層12で再結合して光を発生する。
【0017】
蛍光体層50には、蛍光体51を含有するシリコン樹脂などが採用可能である。蛍光体層50に含まれる蛍光体51は、発光素子10の出射光に応じて決定される。例えば、発光素子10が青色光を出射する場合には、青色光に励起されて黄色光を放射するイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)などが蛍光体51として用いられる。このとき、発光素子10から出射された青色光の一部が蛍光体51を励起することにより、黄色光に波長変換される。蛍光体51から放射された黄色光と発光素子10から出射された青色光とが混合されることにより、白色の出力光Lが発光装置1から出力される。発光素子10をパッケージ30の凹部底面に配置することにより、出力光Lの指向性が向上する。
【0018】
なお、パッケージ30の内壁面31を光反射面とすることにより、パッケージ30内部で光が散乱し、発光装置1の明るさや発光効率を向上させることができる。例えば、内壁面31に銀(Ag)膜や白色の樹脂を塗布することにより、内壁面31を光反射面にする。
【0019】
図1に示した基板20は、透光性基板21の側面に、光反射層22と光吸収層23を積層して配置された構造である。発光素子10から透光性基板21に入射された光は光反射層22によって反射される。更に、透光性基板21の側面から外部に向かう光は光吸収層23に吸収される。このため、基板20を透過した発光素子10の出射光が基板20の側面から出力されることが防止される。
【0020】
透光性基板21は、サファイア基板やSiC基板などである。光反射層22には、例えばアルミニウム(Al)やAu(金)などの金属膜を採用可能である。光吸収層23は、例えばカーボンコートや、酸化シリコン(SiO2)膜とジルコニア(ZrO2)膜を交互に積層した干渉層などである。光吸収層23は、発光素子10の出射光、蛍光体51の励起光、それらの混色光などの光を吸収する。
【0021】
基板20とパッケージ30を接着するダイマウント剤40の塗布量の変動により、基板20の側面に付着するダイマウント剤40の厚みや底面からの這い上がり量(高さ)が変化する。その結果、図2に示すように光反射層22や光吸収層23が透光性基板21の側面に配置されていない比較例1Aでは、ダイマウント剤40の付着量の多寡に応じて基板20側面における遮光量が変化し、基板20の側面から出力される光の光量がばらつく。このため、出力光Lの光量が発光装置毎に異なることになり、製品の歩留まりが低下する。
【0022】
しかしながら、図1に示した発光装置1では、光吸収層23によって基板20の側面から光が出力されることが防止される。このため、発光装置毎の出力光Lの光量のばらつきが発生せず、歩留まりを向上させることができる。
【0023】
なお、光吸収層23は、透光性基板21の側面から光を外部に出力させない機能と共に、パッケージ30内で反射して基板20の側面に外側から到達した発光素子10の出射光の一部を吸収する機能を有する。このため、基板20を透過して側面から出力された光及び基板20の側面で反射した光が、パッケージ30の光反射面に入射することを抑制できる。
【0024】
蛍光体層50を構成する樹脂や外部から浸入する水分と反応することにより、パッケージ30の凹部の内壁面31の光反射率が劣化する。この劣化は光エネルギーによって促進される。このため、凹部の内壁面31の、特に発光素子10及び基板20の側面と対向する部分において、光反射率が経時劣化する。
【0025】
しかし、図1に示した発光装置1では、上記のように基板20の側面に入射する光が吸収される。更に、基板20の側面から光が出力されることが防止される。このため、基板20の側面とパッケージ30の内壁面31間における光量が減少する。その結果、内壁面31の光反射率の劣化を抑制することができる。
【0026】
なお、基板20の側面から出力される光や基板20の側面において反射される光の量を減らすために、基板20の側面の高さ、即ち基板20の厚みは薄いことが好ましい。このため、例えば基板20の厚さを150μm以下にする。これにより、内壁面31の光反射率の劣化を更に抑制することができる。
【0027】
発光素子10の上面から出射された光の一部は、パッケージ30内で反射して基板20の側面に達する。このため、発光素子10の出射光、蛍光体51の励起光、それらの混色光などの光を吸収する光吸収特性を有する材料をダイマウント剤40に使用することで、基板20側面の光量を更に減少できる。このためには、ダイマウント剤40を透明ではないものや白色でないものにする。例えば、ダイマウント剤40に灰色の銀ペーストを使用する。また、同様の理由で、パッケージ30に光吸収特性を有する材料(透明ではないものや白色でないもの)を使用してもよい。例えば、カーボンを混入させた樹脂からなるパッケージ30を採用可能である。
【0028】
以上に説明したように、本発明の第1の実施形態に係る発光装置1では、基板20の側面からの光の出力、及び側面からの基板20への光の入射や側面での光の反射が防止される。その結果、発光装置1においては、出力光Lの光量のばらつきやパッケージ30の光反射面の経時劣化が抑制される。したがって、図1に示した発光装置1によれば、出力光Lの変動による色度ばらつき及び信頼性の低下を抑制される。また、歩留まりの向上により、低価格の発光装置1を提供できる。
【0029】
<第1の変形例>
図3に、本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る発光装置1を示す。図3に示した発光装置1では、基板20の側面に光反射層22が配置されず、光吸収層23のみが配置されている。
【0030】
光反射層22がなくても、光吸収層23のみによって基板20の側面からの光の出力及び基板20の側面での光の反射を防止することができる。基板20の側面に光吸収層23のみを配置することにより、発光装置1の製造工程の短縮や製造コストの低減を実現できる。
【0031】
<第2の変形例>
図4に、本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る発光装置1を示す。図4に示した発光装置1では、基板20が配置されたパッケージ30のパッケージベース部分から、少なくともダイマウント剤40が這い上がった高さまで、基板20の側面に光反射層22と光吸収層23が配置されている。
【0032】
基板20の側面から出力される光のうち、ダイマウント剤40を透過しない光の光量は、発光装置1毎のばらつきが少ない。ダイマウント剤40での反射光の光量のばらつきも少ない。このため、ダイマウント剤40が基板20の底面から側面の下部にかけて形成されている場合に、基板20の側面のダイマウント剤40が付着した領域のみに光反射層22と光吸収層23を配置することにより、出力光Lの光量の変動を抑制できる。なお、図3と同様に基板20の側面に光反射層22を配置せず、光吸収層23のみを配置してもよい。
【0033】
(第2の実施形態)
図5に示す本発明の第2の実施形態に係る発光装置1は、光吸収特性を有する基板20を備えることが図1に示した発光装置1と異なる点である。その他の構成については、第1の実施形態と同様である。図5に示した基板20には、透明でない基板及び白色でない基板などが使用される。例えば、シリコン基板やゲルマニウム(Ge)基板などを基板20に採用可能である。
【0034】
光吸収材料からなる基板20を使用することにより、発光素子10の出射光が基板20を透過して側面から出力することを防止できる。このため、基板20の側面におけるダイマウント剤40の塗布量が変動しても、基板20の側面から出力される光の光量がばらつくことに起因する、発光装置毎の出力光Lの光量のばらつきは発生しない。
【0035】
また、パッケージ30内で反射して基板20の側面に外側から到達した光は、基板20に吸収される。このため、基板20の側面とパッケージ30の内壁面31間における光量が減少する。その結果、内壁面31の光反射率の劣化を抑制することができる。
【0036】
図6(a)と図6(b)に、図5に示した発光装置1と図2に示した比較例1Aの色度ばらつきをそれぞれ示す。図6(a)と図6(b)とを比較して明らかなように、図5に示した発光装置1は比較例1Aに比べて色度ばらつきが小さい。
【0037】
以上に説明したように、本発明の第2の実施形態に係る発光装置1によれば、出力光Lの変動による色度ばらつき及び信頼性の低下が抑制され、更に、歩留まりの向上によって低価格の発光装置を提供できる。
【0038】
他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。例えば、光吸収特性を有する材料をダイマウント剤40やパッケージ30に採用してもよい。
【0039】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0040】
既に述べた実施形態の説明においては、パッケージ30に格納された発光素子10が1つである例を示したが、発光装置1が複数の発光素子10を備えてもよい。また、発光素子10の出射光が青色光であり、蛍光体層50に含まれる蛍光体の励起光が黄色である場合を示したが、発光素子10の出射光と蛍光体の組み合わせはこれに限られるものではない。例えば、近紫外光を出射する発光素子10と、近紫外光によって励起されて赤色光、緑色光、及び青色光を放射する蛍光体を蛍光体層50に含有させてもよい。また、発光装置1の出力光Lが白色光以外であってもよい。
【0041】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0042】
1…発光装置
10…発光素子
11…n型クラッド層
12…活性層
13…p型クラッド層
20…基板
21…透光性基板
22…光反射層
23…光吸収層
30…パッケージ
31…内壁面
40…ダイマウント剤
50…蛍光体層
51…蛍光体
110…n側電極
130…p側電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子を搭載し、入射された前記発光素子の出射光を吸収することで該出射光を側面から出力させない基板と、
前記発光素子及び前記基板を格納する凹部を有するパッケージと、
前記パッケージの前記凹部の底面において前記基板を前記パッケージに固定するダイマウント剤と、
前記凹部に充填された、前記発光素子の前記出射光によって励起されて励起光を放射する蛍光体を含有する蛍光体層と
を備え、前記出射光と前記励起光との混色光を出力する発光装置。
【請求項2】
前記基板の側面に光吸収材料からなる光吸収層が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記基板の側面と前記光吸収層との間に光反射層が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記ダイマウント剤が前記基板の底面から前記側面の下部にかけて配置されている場合に、前記底面から前記側面の前記ダイマウント剤が配置された高さまで前記光吸収層が配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記基板が、光吸収材料からなることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記ダイマウント剤が、光吸収材料からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記パッケージが、光吸収材料からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記発光素子の前記出射光が青色光であり、前記励起光が黄色光であることを特徴とす請求項1乃至7のいずれか1項に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−110154(P2013−110154A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251629(P2011−251629)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】