説明

発光装置

【課題】高演色性以外のさらなる特性を取得できる発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置10は、発光波長が420nm〜480nmにピーク波長を有する青色光を放射するLED光源12と、LED光源12の発光により励起して波長変換した光を放射する複数の蛍光体13,14とから構成され、蛍光体13,14のうちの一方に、MSi(O,X):Eu(Sr,Ba,Ca、X=Cl,Br)からの青緑光が含まれており、得られる白色光のスペクトルが、480nm〜520nmにピーク波長を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードを有する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発光ダイオードと、発光ダイオードからの光の少なくとも一部を波長変換する第1蛍光体および第2蛍光体とを少なくとも有する発光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1は、第1蛍光体が、酸窒化物蛍光体を有し、酸窒化物蛍光体と共に用いられる第2蛍光体が含有されており、第2蛍光体は、励起光源からの光および酸窒化物蛍光体からの光の少なくとも一部を波長変換し、可視光領域に発光ピーク波長を有する。
【0003】
特許文献1は、第2蛍光体が、青色系領域から、緑色系、黄色系、赤色系領域までに少なくとも1以上の発光ピーク波長を有する。
特許文献1は、励起光源の有する発光ピーク波長から、酸窒化物蛍光体の有する発光ピーク波長若しくは第2蛍光体の有する発光ピーク波長までの中間の発光色を有する。
【0004】
また、従来より、光源として400nmのピーク発光波長をもつInGaNタイプの発光ダイオードを用いた発光装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2は、LEDの1次UV放射が約400nmであり、2次放射は約500nmで発光するBaSi:Euを用いた第1蛍光体と、オレンジレッドを発する窒化珪酸塩を用いた第2蛍光体により発せられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4442101号公報(図1、段落0042)
【特許文献2】特許第3851331号公報(図1、段落0015、0016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、紫外から可視光領域の励起光源により励起され、波長変換される青緑色系から黄色系に発光色を有する蛍光体を用いることができる。
特許文献2は、新しい発光材料を提供できる。
【0007】
ところで、青色LED光源と、青色LED光源の発光により励起発光する黄色蛍光体(もしくは、緑色蛍光体+赤色蛍光体)を用いることにより、白色LED照明を生成する発光装置が提案されている。
このような従来の発光装置は、青色LED光源と、黄色蛍光体との組み合わせが演色性に乏しいことを改善するために提案された。
【0008】
図4に示すように、このような従来の発光装置は、青色LED光源と、緑色蛍光体と、赤色蛍光体の組合せを適用している。
このような従来の発光装置は、青色LED光源からの青色光である原励起スペクトルA10が450nm付近で最大の100%の発光効率となる。
これに対して、このような従来の発光装置は、緑色蛍光体により励起される緑色光である励起スペクトルA11が550nm付近で60%の発光効率となる。
【0009】
さらに、このような従来の発光装置は、赤色蛍光体により励起される赤色光である励起スペクトルA12が650nm付近で60%の発光効率となる。
そのため、このような従来の発光装置は、450nm付近で最大の100%の発光効率となっている青色光が強くなって、目への刺激が多い。
従って、このような従来の発光装置は、演色性の向上に加えてさらなる特性を得ることが望まれている。
【0010】
本発明は、前述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高演色性に加えてさらなる特性を取得できる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る発光装置は、発光波長が420nm〜480nmにピーク波長を有する青色光を放射するLED光源と、前記LED光源の発光により励起して波長変換した光を放射する複数の蛍光体とから構成され、前記蛍光体に、MSi(O,X):Eu(Sr,Ba,Ca、X=Cl,Br)からの青緑光が含まれており、得られる白色光のスペクトルが、480nm〜520nmにピーク波長を有する。
【0012】
本発明に係る発光装置は、前記蛍光体のうちの一方は、前記LED光源に対して他方の前記蛍光体よりも離れて配置される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る発光装置によれば、高演色性に加えてさらなる特性を取得できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る一実施形態の発光装置の積層時の垂直断面図
【図2】本発明に係る一実施形態の発光装置の封止後の垂直断面図
【図3】本発明に係る一実施形態の発光装置のスペクトル特性図
【図4】従来の発光装置のスペクトル特性図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る一実施形態の発光装置について図面を参照して説明する。
本発明者は、MSi(O,X):Eu(Sr,Ba,Ca、X=Cl,Br)がカチオンMに応じて青緑色光から橙色光を放射することが可能であり、高い発光効率が得られることに着目した。
そして、この蛍光体を含めた白色LED照明を作製したところ、得られる白色光のスペクトルには、この蛍光体からの発光によるピークが含まれ、その特徴により、高演色性に加えてさらなる特性が現れることを見出した。
【0016】
以下、本発明に係る一実施形態の発光装置について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本発明に係る一実施形態の発光装置10は、基板11と、LEDチップ12と、一方の蛍光体である第1蛍光体13と、他方の蛍光体である第2蛍光体14とから構成される。
第1蛍光体13は、MSi(O,X):Eu(Sr,Ba,Ca、X=Cl,Br)からの青緑光が含まれている。
第2蛍光体14は、緑色蛍光体、黄色蛍光体および赤色蛍光体である。
【0017】
発光装置10は、積層時に、基板11上にLEDチップ12が載置され、このLEDチップ12上に、第2蛍光体14がシリコーン樹脂である透明樹脂等のバインダーにより保持される。
次に、第2蛍光体14上に、第1蛍光体13がシリコーン樹脂である透明樹脂等のバインダーにより保持される。
【0018】
図2に示すように、発光装置10は、封止時に、基板11上にLEDチップ12が載置され、このLEDチップ12を囲んで第2蛍光体14が封止され、第2蛍光体14を囲んで第1蛍光体13が封止される。
第1蛍光体13は、LEDチップ12に対して第2蛍光体14よりも離れた位置に封止されている。
従って、第2蛍光体14による光成分の再吸収を抑制できる。
【0019】
次に、発光装置10のスペクトル特性について説明する。
図3に示すように、発光装置10のスペクトル特性は、LEDチップ12からの青色光である原励起スペクトルA1が450nm付近において最大の100%の発光効率となる。
このとき、第1蛍光体13により励起される緑色光である励起スペクトルA2が520nm付近において最大の100%の発光効率となる。
そして、第2蛍光体14により励起される赤色光である励起スペクトルA3は、650nm付近において90%の発光効率である。
【0020】
つまり、発光装置10は、520nm付近において最大の100%の発光効率を有する緑色光が、450nm付近において最大の100%の発光効率を有する青色光にシフトされている。
従って、発光装置10は、得られる白色光のスペクトルが、480nm〜520nmにピーク波長を有するものとなる。
【0021】
通常、白色光を得るために、LEDチップ12からの青色光の一部は外部に取り出される。このLEDチップ12から放射される短波長光は、光子エネルギーが大きいために、目に入ると損傷を及ぼすことが懸念される。
そこで、発光装置10は、MSi(O,X):Euの第1蛍光体13を適用することにより、光子エネルギーの大きい青色光の一部をシフトさせて青緑蛍光体からの発光に変換している。
従って、発光装置10は、得られる白色光が目への影響を低減できるものとなる。
【0022】
以上、説明した本発明に係る一実施形態の発光装置10によれば、MSi(O,X):Euの第1蛍光体13により、光子エネルギーの大きい青色光の一部をシフトさせて青緑蛍光体からの発光に変換している。
従って、発光装置10によれば、高演色性に加えて得られる白色光が目への影響を低減できる。
【0023】
また、一実施形態の発光装置10によれば、第1蛍光体13がLEDチップ12に対して第2蛍光体14よりも離れた位置に封止されているために、第2蛍光体14による光成分の再吸収を抑制できる。
【0024】
なお、本発明の発光装置において基板等は、前述した一実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形や改良等が可能である。
【符号の説明】
【0025】
10 発光装置
12 LEDチップ(LED光源)(発光ダイオード)
13 第1蛍光体13(一方の蛍光体)
14 第2蛍光体14(他方の蛍光体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光波長が420nm〜480nmにピーク波長を有する青色光を放射するLED光源と、
前記LED光源の発光により励起して波長変換した光を放射する複数の蛍光体とから構成され、
前記蛍光体のうちの一方に、MSi(O,X):Eu(Sr,Ba,Ca、X=Cl,Br)からの青緑光が含まれており、得られる白色光のスペクトルが、480nm〜520nmにピーク波長を有する発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記蛍光体のうちの一方は、前記LED光源に対して他方の前記蛍光体よりも離れて配置される発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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