説明

発光部材の製造方法

【課題】屈折率の異なる内層と外層を備える発光部材の製造方法を提供する。
【解決手段】発光部材1は、非晶性プラスチックからなる長手部材4の表面の少なくとも一部にレーザーを照射し、長手部材4の表層を結晶化させることにより製造される。結晶化した表層を外層3とし、結晶化していない残りの部分を内層2とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置等を構成する発光部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス製部品(例えば、真空放電ガラス管)を含む蛍光灯の照明装置に替わる照明装置として、プラスチック製部品からなる照明装置が提供されている。プラスチック製部品からなる照明装置は、従来の照明装置に比べ振動に強く、また複雑形状に成形し易い等の利点を有している為、注目されている。
【0003】
上記プラスチック製部品として、例えば、光伝送性プラスチック材料から形成された可撓性ロッド部材と、該ロッド部材の外周面に光拡散反射膜を有する光照射ロッドが提供されている(特許文献1参照)。該光照射ロッドは、蛍光管等の真空放電ガラス管と比較して割れ難いという利点を有する。
【0004】
【特許文献1】特開平10−142428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の光照射ロッドは、光拡散反射膜を光伝送性プラスチックの外周面全体に形成することは考慮されているが、例えば、光伝送性プラスチックの外周面において、所定形状の光拡散反射膜を部分的に形成することは考慮されていない。また特許文献1の光照射ロッドは、光伝送性プラスチックの外周面上に、粘着性ポリマーを含有する光拡散反射膜を被覆して製造されるが、常に、光伝送性プラスチックと光拡散反射膜との接着性に配慮(例えば、光拡散反射膜における粘着性ポリマーの含有量の制御)しなければならないという問題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は上記課題を解決するための手段として、非晶性プラスチックからなる内層と、結晶性プラスチックからなる外層を備える発光部材の製造方法であって、非晶性プラスチックからなる長手部材の表面の少なくとも一部にレーザーを照射して、長手部材の表層を結晶化させて外層を形成することを特徴とする発光部材の製造方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、非晶性ポリ乳酸プラスチックからなる内層と、結晶性ポリ乳酸プラスチックからなる外層を備える発光部材の製造方法であって、非晶性ポリ乳酸プラスチックからなる長手部材の表面の少なくとも一部にレーザーを照射して、長手部材の表層を結晶化させて外層を形成することを特徴とする発光部材の製造方法を提供する。
【0008】
また更に本発明は、非結晶性プラスチックからなる内層と、結晶性プラスチックからなる外層を備える発光部材の製造方法であって、非結晶性プラスチックからなる長手部材を内層とし、該内層の表面に非結晶性プラスチックと相溶性を有するプラスチックを被覆して外層を形成し、該外層の表面の少なくとも一部にレーザーを照射して、プラスチックを結晶化させることを特徴とする発光部材の製造方法を提供する。
【0009】
また更に本発明は、ポリメチルメタクリレートからなる内層と、結晶性ポリ乳酸プラスチックからなる外層を備える発光部材の製造方法であって、ポリメチルメタクリレートからなる長手部材を内層とし、該内層の表面にポリ乳酸プラスチックを被覆して外層を形成し、該外層の表面の少なくとも一部にレーザーを照射して、ポリ乳酸プラスチックを結晶化させることを特徴とする発光部材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所望の形状の外層3,13を有する発光部材1,11の製造方法を提供することができる。また本発明によれは、内層2と外層3の接着工程が不要である発光部材1の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の本実施形態について説明する。
【0012】
図1に示される発光部材1は、非晶性プラスチックからなる内層2と、結晶性プラスチックからなる外層3を備える。該発光部材1は、非晶性プラスチックからなる長手部材4の表面にレーザーを照射して、該長手部材4の表層を結晶化させて外層3が形成される。
【0013】
本実施形態で使用される非晶性プラスチックとは、非晶状態にあるプラスチックであって、かつレーザー照射、加熱等によって結晶化し、結晶状態のプラスチック(結晶性プラスチック)になるものである。
【0014】
非晶性プラスチックとして、例えば、ポリエチレン(超高分子量ポリエチレンを含む)、ポリプロピレン、ポリアミド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフロロエチレン、ポリエーテルニトリル、フッ素樹脂、ポリ乳酸プラスチックなどがある。
【0015】
本発明の発光部材1、11には、本発明の効果を損なわない限り、所望の添加剤、例えば、顔料、染料等の着色材、紫外線吸収剤、熱安定剤、可塑剤、酸化防止剤等が配合されてもよい。
【0016】
以下、本実施形態の発光部材1の製造方法を、手順を追って説明する。まず、図2に示されるような、非晶性プラスチックからなる円柱状の長手部材4を用意する。該長手部材4は、例えば、押出成形等の公知のプラスチック成形方法によって製造することが出来る。
【0017】
本実施形態の長手部材4は、非晶性ポリ乳酸プラスチックからなる長手部材4Aである。ポリ乳酸プラスチックは、レーザー照射、加熱等の処理によって結晶化し易いという特徴を有し、好ましい材料である。またポリ乳酸プラスチックは生分解性プラスチックでもあり、廃棄時地中に埋めてれば、地中において分解されるので環境に優しい材料でもある。
【0018】
図3に示すように、長手部材4の表面に所定のレーザー装置5よりレーザーを照射し、該長手部材4の表層を結晶化する。照射するレーザーの波長は、長手部材4に使用される非晶性プラスチックの種類により、適宜選択されるものである。例えば、本実施形態のように、非晶性ポリ乳酸プラスチックの長手部材4Aを使用する場合、800nm〜1100nmの波長のレーザーが使用される。レーザー照射の際、レーザー照射時間、レーザー強度等を適宜、調節して外層の結晶化度が調節される。
【0019】
長手部材4の表面の所定箇所にレーザーを照射するには、例えば、まず長手部材4の一端を所定の固定手段6で固定する。該固定手段6は、所定の回転装置(図示せず)と接続しており、回転装置の動きに連動して、該固定手段6も回転する。固定手段6により固定された長手部材4は、図中矢印A方向へ、回転しながら前進する。このようにレーザーが照射された長手部材4の表層部分を結晶化して、発光部材1の外層3を形成する。
【0020】
なお、長手部材4の表層を結晶化させる方法としては、長手部材4を静止させ、レーザー装置5を、該長手部材4の表面を周回させる等、移動させてレーザーを照射し長手部材4の表面を結晶化させてもよい。
【0021】
上記のようにして製造される発光部材1は、その一端から光源より光を照射すると、その光は発光部材1の内層2の中を、適度な散乱光を発しつつ反射を繰り返しながら他端へ到達する。発光部材1の外層3と内層2は、同一材料(例えば上記の場合は、ポリ乳酸プラスチック)からなるがそれぞれの結晶状態が異なる。外層3は結晶状態にあり、一方、内層2は非晶状態にある。その為、外層3と内層2の屈折率に差が生じ、外層3と内層2との間に生じる界面で光が反射されるようになる。
【0022】
上記のようにして製造された発光部材1は、例えば図4に示すように、その一端にリード端子キャップ7、その他端にエンドキャップ8が取り付けられ、照明装置に使用される。リード端子キャップ7は、光源(図示せず)を内包し、エンドキャップ8は反射鏡(図示せず)を内包する。
【0023】
なお発光部材1に光源を備え付ける際、発光部材1の一端のみに備え付けても良いし、発光部材1の両端に光源を備え付けても良い。なお光源としては、キセノンランプ、ハロゲンランプ、フラッシュランプ等の高輝度ランプや、発光ダイオード等の公知の光源を用いることができる。
【0024】
本実施形態の発光部材1は、内層と外層を別々に製造し、それらを接着させるという接着工程が不要であるという利点を有する。
【0025】
本実施形態の発光部材1は、その表面の少なくとも一部が結晶化したプラスチック材料からなる外層3を有するものである。したがって、本実施形態の発光部材1は、その表面を全面的に結晶化したプラスチックからなる外層3を有するものであっても良いし、例えば、図5に示されるような、表面を部分的に結晶化したプラスチックからなる外層3a、3b、3c、3dを有するものであってもよい。なお図5中に示されるそれぞれの発光部材1は、円柱状の長手部材4の表層を部分的に結晶化させたものである。
【0026】
上記実施形態において、レーザー照射にかえて、所定の加熱装置により長手部材4を加熱処理して、該長手部材4の表面を結晶化させてもよい。
【0027】
上記実施形態では、長手部材4として円柱状のものを使用したが、これに限定されるものではなく、例えば、角柱状、三角柱状のものでもよく、また断面が楕円形状の長手部材であってもよい。
【0028】
また上記実施形態において、予め所定の長さに設定された長手部材を結晶化してそのまま発光部材としてもよく、あるいは所定の長さの長手部材を部分的に結晶化させて、その長手部材を所定の長さに切断したものを、発光部材として用いてもよい。例えば直径5mm、長さ3mの長手部材を使用して、該長手部材の表面にレーザーを照射して外層を形成し、得られたものを50cm毎に切断し、長さ50cmの発光部材を調製してもよい。
【0029】
また更に他の実施形態の発光部材11として、非結晶性プラスチックからなる内層12と、結晶性プラスチックからなる外層13を備える発光部材11がある。
【0030】
該発光部材11は、非結晶性プラスチックからなる長手部材14の表面に、他のプラスチックを被覆し、被覆したプラスチックの表面にレーザーを照射して、該プラスチックを結晶化させることによって製造される。なお、非結晶性プラスチックからなる長手部材14の表面に被覆するプラスチックとしては、非結晶性プラスチックと相溶性を有するプラスチックであることが好ましい。
【0031】
ここで、本実施形態の発光部材11の内層12に使用される非結晶性プラスチックとは、レーザー照射、加熱処理等によっても結晶化しないプラスチックのことである。非結晶性プラスチックとは、レーザー照射、熱処理によっても結晶化しないプラスチックのことである。本実施形態の内層12に使用される非結晶性プラスチックとしては、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等がある。
【0032】
また、本実施形態の発光部材11の外層13に使用される結晶性プラスチックとは、上記実施形態の発光部材1において使用した結晶性プラスチックを使用することができる。
【0033】
本実施形態の発光部材11は、例えば、内層12Aがポリメチルメタクリレートからなり、外層13Aが結晶性ポリ乳酸プラスチックからなる場合、以下のようにして製造される。まずポリメチルメタクリレートからなる長手部材14Aを用意し、その長手部材の表面にポリ乳酸プラスチックを被覆する。なお長手部材14Aとしては、押出成形等の公知の製造方法によって製造されるものを使用することができる。なおポリ乳酸プラスチックとポリメチルメタクリレートとは相溶性を有するため、特別な接着処理を施すことなく、直接ポリメチルメタクリレートにポリ乳酸プラスチックを密着させることができる。次に、長手部材14Aを被覆したポリ乳酸プラスチックにレーザーを照射して、該ポリ乳酸プラスチックを結晶化させる。結晶化したポリ乳酸プラスチックの個所が、得られる発光部材の外層13Aとなる。該発光部材11は、外層13Aと内層12Aとの間の界面で光が反射され、かつ適度な散乱光を放つので、照明部材として利用することができる。
【0034】
なお本実施形態においても、上記実施形態と同様、部分的に外層を形成した発光部材11を製造することができる。また上記実施形態と同様、レーザー照射に換えて、加熱処理により外層を形成しても良い。
【0035】
本発明の発光部材1、11は、照明装置の発光部材や、装飾用の照明器具の発光部材として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態の発光部材の斜視図を示す。
【図2】長手部材の斜視図を示す。
【図3】長手部材の表層にレーザーを照射して結晶化させる工程の概略図を示す。
【図4】発光部材に光源等を取り付けた状態の説明図を示す。
【図5】様々な態様の外層を有する発光部材の説明図を示す。
【図6】他の実施形態の発光部材の斜視図を示す。
【図7】他の実施形態の発光部材の内層として使用される長手部材の斜視図を示す。
【符号の説明】
【0037】
1,1A 発光部材、2,2A 内層、3,3A 外層、4,4A 長手部材、5 レーザー装置、6 固定手段、11,11A 発光部材、12,12A 内層、13,13A 外層、14,14A 長手部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶性プラスチックからなる内層と、結晶性プラスチックからなる外層を備える発光部材の製造方法であって、非晶性プラスチックからなる長手部材の表面の少なくとも一部にレーザーを照射して、長手部材の表層を結晶化させて外層を形成することを特徴とする発光部材の製造方法。
【請求項2】
非晶性ポリ乳酸プラスチックからなる内層と、結晶性ポリ乳酸プラスチックからなる外層を備える発光部材の製造方法であって、非晶性ポリ乳酸プラスチックからなる長手部材の表面の少なくとも一部にレーザーを照射して、長手部材の表層を結晶化させて外層を形成することを特徴とする発光部材の製造方法。
【請求項3】
非結晶性プラスチックからなる内層と、結晶性プラスチックからなる外層を備える発光部材の製造方法であって、非結晶性プラスチックからなる長手部材を内層とし、該内層の表面に非結晶性プラスチックと相溶性を有するプラスチックを被覆して外層を形成し、該外層の表面の少なくとも一部にレーザーを照射して、プラスチックを結晶化させることを特徴とする発光部材の製造方法。
【請求項4】
ポリメチルメタクリレートからなる内層と、結晶性ポリ乳酸プラスチックからなる外層を備える発光部材の製造方法であって、ポリメチルメタクリレートからなる長手部材を内層とし、該内層の表面にポリ乳酸プラスチックを被覆して外層を形成し、該外層の表面の少なくとも一部にレーザーを照射して、ポリ乳酸プラスチックを結晶化させることを特徴とする発光部材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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