発光錯塩
イオン性液体に基づく錯塩は、固体相のときに、(a)蛍光、(b)りん光、及び(c)エレクトロルミネセンスから選択される少なくとも1つの発光特性を示し、その融点は、250℃未満である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光錯塩及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の発光特性(例えば、蛍光、りん光、エレクトロルミネセンス等)を有する化合物には、広範な産業用途での有用性が見出される。例として、イメージング及びディスプレイ装置、電気光学装置及びアッセイ手順が挙げられる。例えば、蛍光、りん光及びエレクトロルミネセンス化合物は、陰極線管、蛍光管、X線イメージングスクリーン、放射線検出器、玩具及び他の娯楽装置、標識、発光固体素子装置等の製造において広く応用される。一般に、このような用途には無機りん光体が用いられるが、これらは、複雑な蒸着(deposition)技術が必要であるという欠点がある。
【0003】
他のディスプレイ装置は、別の光源を変調する構成要素を用いるという意味で受動的である。例として、携帯電話、計算機、コンピュータスクリーン及び薄型テレビディスプレイに見られる種類の液晶ディスプレイが挙げられる。陰極線管ディスプレイよりも製造するのがより好都合であるが、このような装置は、別個の光源が必要であり、これが製造される材料は、時間と共に劣化する傾向がある。
【0004】
本発明は、このような問題に取り組もうとするものであり、錯化金属アニオンと選択した有機カチオンとの間に形成される錯塩を含む新しい種類の発光化合物を提供することによりこれを行った。錯化金属アニオン及び有機カチオンを適切に選択することにより、広範囲の望ましい物理的特性を有する化合物を生成することができることが分かっている。例えば、この錯体の基本的な発光特性は、金属及びこれに伴う配位子を適切に選択することにより予め定めることができる。同様に、融点及び有機溶媒中の溶解度のような特性も、有機カチオンを適切に選択することにより決定付けることができる。また、有機カチオンが全体としての錯体のルミネセント特性に影響を及ぼす可能性があることも見出されている。
【0005】
3級アルキルアンモニウム及び3級メチルフェニルホスホニウム化合物を備える比較的融点が高い摩擦ルミネセンスマンガンベース錯体が、Cotton,F.Aら及びHardy,G.Eらにより記載されている。(「Correlation of Structure and Triboluminescence for Tetrahedral Manganese (II) Compounds(四面体マンガン(II)化合物に対する構造及び摩擦ルミネセンスの相関関係)」Cotton F.A.他、Inorg.Chem.2001年第40巻3576〜3578頁;「Triboluminescence and Pressure Dependence of the Photoluminescence of Tetrahedral Manganese (II) Complexes(摩擦ルミネセンス及び四面体マンガン(II)錯体の光ルミネセンスの圧力依存性)」Gordon E.H.ら、Inorg.Chem.第15巻第12号1976年3061頁参照)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、式
([Org]n+)m・([M(Lg)p]m-)n (A)
(式中、
m=1、2、3又は4;
n=1又は2;
p=3、4、5又は6;
Mは金属;
であり、各Lgは、同じでも異なっていてもよく、配位子を表し;
[Org]n+は、ルミネセンスディスプレイ装置の製造、コーティング材料(例えば塗料)の製造、或いはプラスチック組成物へ混合するための有機カチオンを表す)を有する錯塩の利用が提供される。「ルミネセンスディスプレイ装置」とは、使用時に、装置が蛍光、りん光又はエレクトロルミネセンス光の信号を生じる装置を意味する。装置は、視覚ディスプレイ用途に用いることが好ましい。装置は、視覚ディスプレイの用途に用いることが好ましい。コーティング材料の例としては、塗料及びインクがあげられる。
【0007】
(1)固体状態のときに(a)蛍光、(b)りん光、及び(c)エレクトロルミネセンスから選択される少なくとも1つの発光特性を示し、(2)融点が250℃未満、好ましくは200℃未満であり、(3)溶融状態のときにイオン性液体を形成することができる式(A)で表される錯塩は、新規であり、本発明の別の態様を形成する。
【0008】
本発明は、式
([Org]n+)m・([M(Lg)p]m-)n (A)
(式中、
m=1、2、3又は4;
n=1又は2;
p=3、4、5又は6;
Mは金属;
であり、各Lgは、同じでも異なっていてもよく、配位子を表し;
[Org]n+は、有機カチオンを表し、但し、MがMnである場合には、有機カチオン[Org]n+が、(a)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルフェニルホスホニウム及びトリフェニルメチルホスホニウム以外である)を有する錯塩を更に提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
所定のアニオンに対しては、本発明の([M(Lg)p]m-)n錯塩は、融点及び有機溶媒中の溶解度のような所定の各種物理特性を備えるように生成することができる。従って、本発明の錯塩の融点は180℃未満、150℃未満、125℃未満、場合によっては100℃未満とすることができる。
m、n及びpの値は、金属Mの原子価状態及び配位数によって決まる。典型的には、マンガン(II)のような+2酸化状態での4配位数金属イオンに対しては、mは2、nは1、pは4となる。他の金属イオンでは、pは他の値、例えば5又は6とすることができる。
【0010】
金属「M」の例としては、第VII族又は第VIII族の金属、例えばマンガン又はルテニウムがあげられ、配位子Lgの例(各Lgは同じでも異なってもよい)は、ハロゲン、特に塩素又は臭素である。
アニオンの典型的な式([M(Lg)p]m-)には、([M(Cl)p]m-)又は([M(Br)p]m-)、特に([M(Cl)4]2-)又は([M(Br)4]2-)が含まれる。例えば、金属がマンガンの場合には、アニオンは、例えば、式([Mn(Cl)4]2-)又は([Mn(Br)4]2-)とすることができる。
【0011】
金属の他の例としては、セリウム又はユーロピウムのようなランタニドがあげられる。これらの場合、アニオン([M(Lg)p]m-)は、式([M(Lg)6]3-)を有することができる。例えば([M(Lg)p]m-)は、式([M(Cl)6]3-)又は([M(Br)6]3-)とすることができる。更に詳細には、セリウムの場合には、アニオン([M(Lg)p]m-)は、式([Ce(Cl)6]3-)又は([Ce(Br)6]3-)とすることができる。ユーロピウムの場合には、アニオン([M(Lg)p]m-)は、式([Eu(Cl)6]3-)又は([Eu(Br)6]3-)とすることができる。
融点、有機溶媒中の溶解度及び本発明の発光錯塩の発光特性のような物理的特性は、有機カチオン[Org]n+の大きさ、構造、及び疎水性に大きく依存する。
【0012】
一般に、[Org]n+の分子量は、1000未満、好ましくは500未満、最も好ましくは250未満とする必要がある。従って、[Org]n+が以下に定義する式(NR9RhRiRj)+又は(PR9RhRiRj)+の3級アンモニウム又は3級ホスホニウムカチオンである場合には、基R9RhRi及びRjは各々、好ましくは30炭素原子未満、最も好ましくは20炭素原子未満を含むことになる。式(NR9RhRiRj)+又は(PR9RhRiRj)+の本発明の発光錯塩の好ましい実施形態では、R9RhRi及びRjの1つは、1〜20炭素原子を有することになり、残りは、1〜6炭素原子を有することになる。特に好ましい化合物では、R9、Rh、Ri及びRjの1つは、10〜20炭素原子を有することになり、残りは1〜6炭素原子を有することになる。
本発明の好ましい錯塩では、[Org]n+は複素環カチオン、特に、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール及びトリアゾールから選択される複素環核を含むものである。
【0013】
同様に、[Org]n+の分子量は、1000未満、好ましくは500未満、最も好ましくは250未満とすることが必要である。従って、[Org]n+がピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール及びトリアゾールから選択される置換複素環核である場合には、置換基(例えば、以下に定義される置換基Ra、Rb、Rc、Rd、Re及びRf)は、各々、好ましくは30炭素原子未満、最も好ましくは20炭素原子未満を含むことになる。本発明の発光錯塩の好ましい実施形態では、[Org]n+がピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール及びトリアゾールから選択される置換複素環核である場合、置換基の1つ(例えば以下に定義される置換基Ra、Rb、Rc、Rd、Re及びRf)は、1〜20炭素原子を有し、残りは1〜6炭素原子を有することになる。特に好ましい化合物では、Ra、Rb、Rc、Rd、Re及びRfの1つが10〜20炭素原子を有し、残りは1〜6炭素原子を有することになる。
【0014】
本発明の錯塩の大部分は、イオン性液体を形成することができる。
本明細書で用いる「イオン性液体(ionic liquid)」という用語は、固体を溶融することにより生成することができ、このように生成したときに、イオンだけからなる液体をいう。イオン性液体は、有機塩、特に、複素環窒素含有化合物の塩由来とすることができる。従って、本発明においては、Orgは、複素環核を含むことが好ましい。
【0015】
イオン性液体は、1種のカチオン及び1種のアニオンを含む均質な物質で形成することができ、或いは、2種以上のカチオン及び/又はアニオンから構成されてもよい。従って、イオン性液体は、2種以上のカチオン及び1種のアニオンから構成することができる。イオン性液体は、更に、1種のカチオン、及び1種又はそれ以上の種のアニオンから構成することができる。従って、本発明の混合塩は、特定の[Org]n+カチオン及び[M(Lg)p]m-アニオンに加えて、アニオン及びカチオンを含む混合塩を含むことができる。これは、更に、2種以上の特定の[Org]n+カチオン及び[M(Lg)p]m-アニオンが存在する混合塩も含むことができる。
【0016】
従って、要約すると、本明細書で用いる「イオン性液体」という用語は、単塩(1つのカチオン種及び1つのアニオン種)からなる均質組成物を意味することができ、或いは、2種以上のカチオン及び/又は2種以上のアニオンを含む不均質組成物を意味することもできる。
「イオン性液体」という用語は、高溶融温度の化合物及び低融点、例えば室温又はそれ以下(即ち15〜30℃)の化合物の両方を含む。後者は、「室温イオン性液体」と呼ばれることが多い。
通常、錯塩が液体状態のときには発光プロファイルが減少又は消失するため、本発明の錯塩は、一般に、「室温イオン性液体」であることは好ましくない。驚くべきことには、本発明の蛍光錯塩は、以下に記載するように液体状態のときでも蛍光を保持することが分かっている。
【0017】
ここに示すように、本発明の好ましい錯塩は、アルキル化ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール及びトリアゾールのようなアルキル化又はポリアルキル化ヘテロアリール化合物の錯イオンを含む。従って、このようなカチオンの例としては、以下の式を有するものがあげられる。
【化1】
式中、
RaはC1〜C40(好ましくはC1〜C20、更に好ましくはC4〜C12)の直鎖又は分枝アルキル基又はC3〜C8シクロアルキル基であり、アルキル又はシクロアルキル基は、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換することもでき、
Rb、Rc、Rd、Re及びRfは、同じでも異なっていてもよく、各々が、水素、C1〜C40(好ましくはC1〜C20、更に好ましくはC4〜C12)の直鎖又は分枝アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基、又はC6〜C10アリール基から独立に選択され、アルキル、シクロアルキル又はアリール基は無置換であるか、又はC1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C7〜C30アラルキル及びC7〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよく、或いは、隣接する炭素原子に結合しているRb、Rc、Rd、Re及びRfの何れか2つがメチレン鎖−(CH2)q−(式中qは2〜8、特に3、4又は5である)を形成する。
【0018】
好ましくは、Raは、上記で定義するように無置換アルキル又はシクロアルキル基であり、Rb、Rc、Rd、Re及びRfは、水素又はC1〜10アルキルである。このような好ましい化合物の例は、Rb、Rc、Rd、Re及びRfの1つ又は2つがC1〜10アルキルを表し、Rb、Rc、Rd、Re及びRfの他の3つか4つが水素を表すものである。
【0019】
本発明の好ましい錯塩では、カチオンは、1,3−ジアルキルイミダゾリウムである。他の好ましいカチオンには、他の置換ピリジニウム又はアルキル又はポリアルキルピリジニウム、アルキルイミダゾリウム、イミダゾール、アルキル又はポリアルキルイミダゾリウム、アルキル又はポリアルキルピラゾリウム、アンモニウム、アルキル又はポリアルキルアンモニウム、アルキル又はポリアルキルホスホニウムカチオンが含まれる。
【0020】
特に好ましいイオン性液体は、イミダゾリウム、ピリジニウム又はピラゾリウム塩である。従って、イミダゾリウムカチオンに基づくものは、好適には、次式を有することができる。
【化2】
式中、
各Raは、同じで又は異なってもよく、各々が独立に、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C40直鎖又は分枝アルキルから選択され、
Rxは、C1〜C10直鎖又は分枝アルキルを表し、これは、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよく、
yは、0、1、2又は3であり、
M、Lg、m、n及びpは、先に定義した通りである。
【0021】
ピラゾリウムに基づくものは、好適には次式を有することができる。
【化3】
式中、
各Raは、同じで又は異なってもよく、各々が独立に、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C40直鎖又は分枝アルキルから選択され、
Rxは、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C10直鎖又は分枝アルキルを表し、
yは、0、1、2又は3であり、
M、Lg、m、n及びpは、先に定義した通りである。
【0022】
更に、次式を有するピリジニウムカチオンに基づく錯塩も適切である。
【化4】
式中、
Raは、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C40直鎖又は分枝アルキルから選択され、
Rxは、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C10直鎖又は分枝アルキルを表し、
yは、0、1、2又は3であり、
M、Lg、m、n及びpは、先に定義した通りである。
好ましくは、上の化合物では、Raは、独立にC1〜C40、好ましくはC1〜C20、更に好ましくはC4〜C12の直鎖又は分枝アルキル基から選択される。
【0023】
本発明の別の例示的な種類の化合物では、([Org]n+)は、4級アンモニウム又はホスホニウムイオン(R9RhRiRjN)+もしくは(R9RhRiRjP)+とすることができ、式中、R9RhRi及びRjは、同じでも異なっていてもよく、C1〜C40(好ましくはC1〜C20、更に好ましくはC4〜C12)の直鎖又は分枝アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基、又はC6〜C10アリール基を表し、前記アルキル、シクロアルキル又はアリール基は無置換であるか、又は、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C7〜C30アラルキル及びC7〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換することもでき、Re、Rf、Rg、Rhの何れか2つがメチレン鎖−(CH2)q−(式中qは2〜8、特に3、4又は5である)を形成する。
【0024】
好ましくは、R9、Rh、Ri及びRjは、置換又は無置換アルキル又はシクロアルキル又はフェニル基を表す。好ましいアルキル及びシクロアルキル基は、1〜10炭素原子を含むことが好ましい。好ましい化合物の例は、Rb、Rc、Rd、Re及びRfの1つ、2つ又は3つがC1〜10アルキルを表し、Rb、Rc、Rd、Re及びRfの他の1つ、2つ又は3つがアルコキシ置換C1〜10アルキルを表すものである。
次に、添付図面を特に参照しながら本発明を更に詳細に記載する。
【0025】
分析技術及び一般合成手順
分析技術
NMR
マンガン(II)は、常磁性であり、NMR分光計の磁場と干渉する。1H及び13CNMRスペクトルを得ることが可能であるが、ピークが極度に広がり、わずかに常磁性シフトを受ける。
【0026】
元素分析
この技術により、化学式が得られ、本発明のハロゲン化マンガンに基づく錯塩の場合には、最も安定な錯体は、2:1[Org]+対[MnX4]2-錯体である。
紫外線吸収分光法
用いられるこの技術は、2つのスライドグラスの間に固体を挟む段階を含む(ルミネセンスが消光するので溶媒を用いることができない)。
【0027】
ルミネセンス分光分析
この技術により、励起及び発光スペクトル(即ち吸収及びルミネセンススペクトル)の両方を得ることができ、これによりカチオンがどのようにアニオンルミネセンスに影響を及ぼすかに関する情報が得られる。また、予め定めた時間遅延後の発光を測定することにより、りん光が起こるかどうかを求めることも可能である。1ミリ秒オーダーの寿命は、[emim]2[MnBr4]において観察される。
【0028】
示差走査熱量測定法
これにより、化合物の融点及び遷移温度が得られる。ルミネセンスは、有意な温度依存性を示し、特定の遷移をルミネセンスのオン又はオフと関連付けることができる。また、この技術は、錯体の純度に関する間接的な情報も与える。
偏光顕微鏡
偏光顕微鏡は、液晶ルミネセンス錯体の分析に用いることができ、これにより、純度及び遷移温度に関する情報が得られる。
【0029】
一般的な製法
マンガン錯体
有機カチオンのハロゲン化物塩(4ミリモル)は、メタノール(2.5cm3)に入れた対応する無水マンガン(II)ハロゲン化物塩(2ミリモル)と混合する。これは、全てのハロゲン化マンガン(II)が溶解されるまで熱板上で穏やかに加熱しつつ撹拌した。加熱(150℃)してメタノールを沸騰させ、粗[有機カチオン]2[MnX4]を冷却した。沸騰酢酸エチル(長鎖アルキル>C8を含むカチオン)又はイソプロパノール/メタノール混合物(<C8)から固体テトラハロマンガネート(II)塩を再結晶した。次に、結晶固体を真空下(5mmHg)、80〜120℃で加熱し、溶媒の痕跡を除去する。
【0030】
ユーロピウム及びセリウム錯体
有機カチオン(3ミリモル)のハロゲン化物塩を、メタノール(10.0cm3)に入れた対応する無水ユーロピウム又はセリウム(II)ハロゲン化物塩(1ミリモル)と混合した。これは、全てのハロゲン化ランタニド(III)が溶解するまで熱板上で穏やかに加熱しつつ撹拌した。加熱することにより(150℃)メタノールを沸騰させ、粗[有機カチオン+]3[MX6]3-を冷却した。固体ヘキサハロユーロピウム又はセリウム(III)塩は、沸騰酢酸エチル(長鎖アルキル>C8を含むカチオン)又はイソプロパノール/メタノール混合物(<C8)から再結晶した。次に、結晶固体を真空下(5mmHg)80〜120℃で加熱し、溶媒の痕跡を除去した。
【0031】
ハロゲン化マンガン錯塩−バルク外観
2:1モル比の有機臭化物塩と臭化マンガン(II)、又は有機塩化物塩と塩化マンガン(II)をそれぞれ混合して加熱することにより、多数のテトラブロモマンガン(II)及びテトラクロロマンガン(II)塩を作った。化合物のいくつかは、強ルミネセンス性であることが見出された。一般に、臭化物は、塩化物よりも相当ルミネセンス性が高かった。室温のマンガン(II)イオン性液体の例が図1に与えられる。黄色/茶色は、スペクトルの青色部分での弱いd−d吸収遷移によるものである。図2は、図1の非ルミネセンス試料と昼光でのルミネセンス[emim]2[MnBr4]と間の色の差を示す。ここで分かるように、ルミネセンスにより、試料は明るい黄色に見える。図3は、長波長紫外線照射下での色を示す。ここで分かるように、[emim]2[MnBr4]は、可視スペクトルの緑色部分に強いルミネセンスを示している。
モル比1:1でジスルフィニル化合物と反応させることを除いて、上記の通りにスルホニウムハロゲン化マンガン(II)スラットを調製した。
【0032】
個々のハロゲン化マンガン(II)錯体の物理特性
一連のマンガン錯体が作られ、その特性を個々に説明し列記する。塩化マンガン及び臭化マンガン塩の全てに対して同様の合成技術を用いた。
以下の特定の実施例は本発明を例証する。
【0033】
実施例
上記の一般的手順で記載した手順を用いて、以下の錯体を調製した。
【実施例1】
【0034】
−[Emim]2[MnBr4]
【化5】
外観:昼光で黄色/緑色結晶固体であり、約65℃で黄色/茶色に変化する。
元素分析:C 24.03%、H 3.66%、N 9.48%。(理論的にはC 24.15%、H 3.72%、N 9.39%)。
DSC:mp=163.6℃(4.7Jg-1);固体−固体遷移117.4℃(0.2Jg-1)及び64.7℃(34.3Jg-1)。
ルミネセンス:強い緑色りん光。λmax=510nm発光;363、376及び455nm励起(紫外線吸収スペクトルと同じ)。
【実施例2】
【0035】
−[Edmim]2[MnBr4]
【化6】
外観:昼光で黄色/緑色結晶固体であり、約117℃を超えると黄茶色に変化する。
元素分析:C 27.09%、H 4.18%、N 9.25%。(理論的にはC 26.91%、H 4.19%、N 8.97%)。
DSC:mp=189.8℃(3.4Jg-1);固体−固体遷移116.5℃(35.0Jg-1)。また、ゆっくりと形成する87.0℃で遷移する別の形も存在する。
ルミネセンス:強い黄緑色りん光。λmax=527nm発光;363、376及び456nm励起(紫外線吸収スペクトルと同じ)。
【実施例3】
【0036】
−[Emim]2[MnCl4]
【化7】
外観:オフホワイト結晶固体。
元素分析:
DSC:mp=129.8℃(2.8Jg-1);固体−固体遷移78.8℃(49.2Jg-1)又は48.0℃(46.7Jg-1)。凍結すると形成される結晶多形体により、加熱するとこれらの固体−固体遷移の1つのみが起こる。
ルミネセンス:中程度の青色−緑色発光。λmax=528及び416(弱い)nm発光;328、360、450及び482nm励起。固体−固体遷移温度を超えるとルミネセンスは消える。
【実施例4】
【0037】
−[C3mim]2[MnBr4]
【化8】
外観:融点未満では昼光で黄色/緑色結晶固体。溶融すると淡黄色/茶色油。
元素分析:
DSC:mp=49.6℃(33.5Jg-1)。
ルミネセンス:溶融すると消失する強い緑色ルミネセンス。
【実施例5】
【0038】
−[C4mim]2[MnBr4]
【化9】
外観:室温で淡黄色/茶色油。−20℃まで下がってもイオン性液体のままである。
元素分析:
DSC:mp<−20℃
ルミネセンス:ルミネセンス無し
【実施例6】
【0039】
−[C12mim]2[MnBr4]
【化10】
外観:淡黄色/茶色の軟練り固体。
元素分析:
DSC:
ルミネセンス:弱い緑色ルミネセンス。
【実施例7】
【0040】
−[C14mim]2[MnCl4]
【化11】
外観:オフホワイト蝋状固体。
元素分析:
DSC:mp=62.2℃(93Jg-1)。液晶相の徴候はない。
ルミネセンス:弱い緑色ルミネセンス。
【実施例8】
【0041】
−[C16mim]2[MnCl4]
【化12】
外観:オフホワイト蝋状固体
元素分析:
DSC:mp=71.2℃(99Jg-1)。液晶相の徴候はない。
ルミネセンス:弱い緑色ルミネセンス
【実施例9】
【0042】
−[C18mim]2[MnCl4]
【化13】
外観:オフホワイト蝋状固体
元素分析:
DSC:
ルミネセンス:弱い緑色ルミネセンス
【実施例10】
【0043】
−[C2ピリジニウム]2[MnBr4]
【化14】
外観:昼光で黄色/緑色結晶固体であり、108℃を超えると黄色/茶色に変化する。
元素分析:
DSC:mp=155.8℃(1.2Jg-1);固体−固体遷移131.0℃(2.7Jg-1)及び107.7℃(47.9Jg-1)。
ルミネセンス:強い緑色りん光。108℃を超えると、ルミネセンスは観察されない。λmax=512nm発光;363、375及び456nm励起。
【実施例11】
【0044】
−[C2ルチジニウム]2[MnBr4]
【化15】
外観:昼光で明るい黄色結晶固体であり、108℃を超えると黄色/茶色に変化する。
元素分析:
DSC:mp=193.0℃(6.1Jg-1);固体−固体遷移181.4℃(25.7Jg-1)及び166.4℃(6.4Jg-1)。
ルミネセンス:強い黄色−緑色ルミネセンス。
【実施例12】
【0045】
−[C4ピリジニウム]2[MnBr4]
【化16】
外観:昼光での明るい黄色結晶固体であり、108℃を超えると淡黄色に変化する。
元素分析:
DSC:mp=100.2℃(53.9Jg-1)
ルミネセンス 100℃まで強い緑色ルミネセンス。
【実施例13】
【0046】
−[C2ピラゾリウム]2[MnBr4]
【化17】
外観:昼光で黄色結晶固体であり、108℃を超えると黄色/茶色に変化する。
元素分析:C 24.26%、H 3.64%、N 9.57%。(理論的には、C 24.15%、H 3.72%、N 9.39%)。
DSC:mp=195.5℃(9.4Jg-1);固体−固体遷移86.9℃(2.9Jg-1)及び44.5℃(13.2Jg-1)。205℃を超えると分解する。
ルミネセンス:強い緑色りん光。108℃を超えると、ルミネセンスは観察されない。λmax=512nm発光;363、375及び456nm励起。
【実施例14】
【0047】
−[C4DBU]2[MnBr4]
【化18】
外観:黄色/緑色固体。
元素分析:
DSC:mp=54.5℃(30.5Jg-1)。
ルミネセンス:固体相で強い緑色ルミネセンス
【実施例15】
【0048】
−[C18DBU]2[MnBr4]
【化19】
外観:白色蝋状粉末。
元素分析:
DSC:mp=79.1℃(42.9Jg-1)。凍結すると、結晶化して固体A相になる(30℃未満)。加熱すると、固体Aは、35.2℃(40.6Jg-1)で溶融し、直ちに再凍結して(−41.5Jg-1)固体Bになる。長く放置すると、DSCに第1の温度勾配が現れ、他の多形体の存在を示す。
ルミネセンス:両方の固体相で中程度の緑色ルミネセンス。
【実施例16】
【0049】
[C6mim]3[CeCl6]
【化20】
外観:白色結晶固体。
DSC:mp=165〜170℃であり、300℃を超えると分解する。
ルミネセンス:固体相で弱い紫色ルミネセンス。
【実施例17】
【0050】
−[Bu4N]3[CeCl6]
【0051】
【化21】
外観:白色結晶固体。
DSC:mp=271℃であり、350℃を超えると分解する。
ルミネセンス:固体相で強い青色ルミネセンス。空中の水蒸気を吸収して弱い紫色のルミネセンスを有する水和物を形成する。
【実施例18】
【0052】
−[C6,6,6,10P]3[CeCl6]
【化22】
外観:淡黄色の室温イオン性液体。
DSC:未定。mp=<20℃。
ルミネセンス:液体相で強い青色ルミネセンス。空中の水蒸気を吸収して弱い紫色のルミネセンスを有する水和物を形成する。311及び350mnで励起最大、502nmで発光最大。励起及び発光が重なるため、この発光ピークは、わずかに赤方シフトする。
ルミネセンスの種類は、半減期が10マイクロ秒の超短寿命りん光又は蛍光の何れかであると決定された。
【実施例19】
【0053】
−[C6mim]3[EuCl6]
【化23】
外観:白色結晶固体。
DSC:mp=169.5℃(26jg-1)であり、300℃を超えると分解する。
ルミネセンス:固体相で弱い赤色ルミネセンス。
【実施例20】
【0054】
−[C6,6,6,10P]3[EuCl6]
【化24】
外観:無色の室温イオン性液体。
DSC:未定。mp=<20℃。
ルミネセンス:液体相で赤色ルミネセンス。空中の水蒸気を吸収して水和物を形成する。これは依然として幾分ルミネセンスを示す。530、460及び400nmで励起最大、590、610、650及び700nmで発光最大。
ルミネセンスの種類は、半減期が1.77マイクロ秒のりん光であると決定された。
【0055】
本発明の化合物は、その発光特性を利用する広範な工業的用途に用いることができる。例として、イメージング及びディスプレイ装置、電気光学装置及びアッセイ手順が挙げられる。従って、陰極線管、蛍光管、X線イメージングスクリーン、放射線検出器、玩具及び他の娯楽装置、標識、発光固体素子装置等を製造するのに、蛍光、りん光及びエレクトロルミネセンス化合物を用いることができる。特定の実施例には、携帯電話のディスプレイ、計算機、コンピュータスクリーン及び薄型テレビディスプレイがある。
【0056】
更に詳細な用途には、本発明の錯塩を個別の層又はドーパントとして組み込むことができる有機発光ダイオード(OLEDS)がある。他の用途には、
生物学的マーカ及び試薬(例えばタグ付き試薬を形成するためのもの);
趣味、例えばフィッシングのルアーに有用なルミネセンス装置;
爆発物(例えばTNT)又は放射線に対する検出器の用途;
安全装置;
プラスチック、インク及び塗料に対する添加剤として;
防護装置;
眼用レンズに対するコーティング
が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】臭化マンガン(II)室温イオン性液体の試料の写真である。
【図2】[emim]2[MnBr4]の試料と図1に示す試料の写真である。
【図3】2つのテトラブロモマンガン酸塩の写真であり、紫外線照射下での非ルミネセンス化合物とルミネセンス化合物との間の差を示す。色は、4T1g−6A1gMn3d遷移(6A1gは基底状態である)によると考えられる。
【図4】マンガン(II)ルミネセンスに関わる主な遷移を示す線図である。
【図5】[emim]2[MnBr4]及び1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラブロモマンガネート(II)、[edmim]2[MnBr4]の紫外線吸収スペクトルを示す図である。
【図6】[emim]2[MnBr4]、[C4py]2[MnBr4]及び[edmim]2[MnBr4](左から右へ)のりん光色を示す写真である。 図5の2つの化合物は、蛍光光度計で求めたときに510及び527nmでりん光(ほぼ1ミリ秒)を示している。450及び370nm領域での吸収は、d−d遷移であり、<325nmでの強い吸収は、Mn−Br電荷遷移過程によるものである。図6に示すように、カチオンの構造は、りん光色に影響を及ぼす可能性がある。
【図7】[C18DBU]2[MnBr4]の結晶構造の変化を示す写真である。
【図8】実施例16及び実施例19の2つのルミネセンス錯体を示す写真である。(Eu−赤色、Ce−紫色)
【図9】紫外線ランプ下での[Cnピリジニウム]2[MnBr4]塩(左から右にn=18、4、2)及び[C2ルチジニウム]2[MnBr4](一番右)のルミネセンスを示す写真である。
【図10】昼光での[Cnピリジニウム]2[MnBr4]塩(左から右にn=18、4、2)及び[C2ルチジニウム]2[MnBr4](一番右)のルミネセンスを示す写真である。
【図11】[emim]2[MnCl4](左)と[emim]2[MnBr4](右)との間の光度の差を示す写真である。
【図12】130℃の液晶相(例えばSmectic A)での[C14mim]2[MnCl4](上部)及び64℃の液晶相(例えばSmectic A)での[C14mim]2[MnCl4]を示す写真である。[C14mim]2[MnCl4]のひし形結晶は、液晶相から成長する。
【図13】液晶相からゆっくりと結晶化させる間の100°の液晶相(例えばSmectic A)での[C18mim]2[MnBr4](左)及び相からゆっくり結晶化させる間の74℃の[C18mim]2[MnBr4]固体(右)相を示す写真である。
【図14】前部[C6,6,6,10P]3[CeCl6]、左[C6,6,6,10P]3[EuCl6]、右[C4,4,4,16P]2[MnBr4]の光色を示す写真である。
【図15】[C6,6,6,10P]3[CeCl6]に対する紫外−可視吸収スペクトルを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光錯塩及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の発光特性(例えば、蛍光、りん光、エレクトロルミネセンス等)を有する化合物には、広範な産業用途での有用性が見出される。例として、イメージング及びディスプレイ装置、電気光学装置及びアッセイ手順が挙げられる。例えば、蛍光、りん光及びエレクトロルミネセンス化合物は、陰極線管、蛍光管、X線イメージングスクリーン、放射線検出器、玩具及び他の娯楽装置、標識、発光固体素子装置等の製造において広く応用される。一般に、このような用途には無機りん光体が用いられるが、これらは、複雑な蒸着(deposition)技術が必要であるという欠点がある。
【0003】
他のディスプレイ装置は、別の光源を変調する構成要素を用いるという意味で受動的である。例として、携帯電話、計算機、コンピュータスクリーン及び薄型テレビディスプレイに見られる種類の液晶ディスプレイが挙げられる。陰極線管ディスプレイよりも製造するのがより好都合であるが、このような装置は、別個の光源が必要であり、これが製造される材料は、時間と共に劣化する傾向がある。
【0004】
本発明は、このような問題に取り組もうとするものであり、錯化金属アニオンと選択した有機カチオンとの間に形成される錯塩を含む新しい種類の発光化合物を提供することによりこれを行った。錯化金属アニオン及び有機カチオンを適切に選択することにより、広範囲の望ましい物理的特性を有する化合物を生成することができることが分かっている。例えば、この錯体の基本的な発光特性は、金属及びこれに伴う配位子を適切に選択することにより予め定めることができる。同様に、融点及び有機溶媒中の溶解度のような特性も、有機カチオンを適切に選択することにより決定付けることができる。また、有機カチオンが全体としての錯体のルミネセント特性に影響を及ぼす可能性があることも見出されている。
【0005】
3級アルキルアンモニウム及び3級メチルフェニルホスホニウム化合物を備える比較的融点が高い摩擦ルミネセンスマンガンベース錯体が、Cotton,F.Aら及びHardy,G.Eらにより記載されている。(「Correlation of Structure and Triboluminescence for Tetrahedral Manganese (II) Compounds(四面体マンガン(II)化合物に対する構造及び摩擦ルミネセンスの相関関係)」Cotton F.A.他、Inorg.Chem.2001年第40巻3576〜3578頁;「Triboluminescence and Pressure Dependence of the Photoluminescence of Tetrahedral Manganese (II) Complexes(摩擦ルミネセンス及び四面体マンガン(II)錯体の光ルミネセンスの圧力依存性)」Gordon E.H.ら、Inorg.Chem.第15巻第12号1976年3061頁参照)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、式
([Org]n+)m・([M(Lg)p]m-)n (A)
(式中、
m=1、2、3又は4;
n=1又は2;
p=3、4、5又は6;
Mは金属;
であり、各Lgは、同じでも異なっていてもよく、配位子を表し;
[Org]n+は、ルミネセンスディスプレイ装置の製造、コーティング材料(例えば塗料)の製造、或いはプラスチック組成物へ混合するための有機カチオンを表す)を有する錯塩の利用が提供される。「ルミネセンスディスプレイ装置」とは、使用時に、装置が蛍光、りん光又はエレクトロルミネセンス光の信号を生じる装置を意味する。装置は、視覚ディスプレイ用途に用いることが好ましい。装置は、視覚ディスプレイの用途に用いることが好ましい。コーティング材料の例としては、塗料及びインクがあげられる。
【0007】
(1)固体状態のときに(a)蛍光、(b)りん光、及び(c)エレクトロルミネセンスから選択される少なくとも1つの発光特性を示し、(2)融点が250℃未満、好ましくは200℃未満であり、(3)溶融状態のときにイオン性液体を形成することができる式(A)で表される錯塩は、新規であり、本発明の別の態様を形成する。
【0008】
本発明は、式
([Org]n+)m・([M(Lg)p]m-)n (A)
(式中、
m=1、2、3又は4;
n=1又は2;
p=3、4、5又は6;
Mは金属;
であり、各Lgは、同じでも異なっていてもよく、配位子を表し;
[Org]n+は、有機カチオンを表し、但し、MがMnである場合には、有機カチオン[Org]n+が、(a)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルフェニルホスホニウム及びトリフェニルメチルホスホニウム以外である)を有する錯塩を更に提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
所定のアニオンに対しては、本発明の([M(Lg)p]m-)n錯塩は、融点及び有機溶媒中の溶解度のような所定の各種物理特性を備えるように生成することができる。従って、本発明の錯塩の融点は180℃未満、150℃未満、125℃未満、場合によっては100℃未満とすることができる。
m、n及びpの値は、金属Mの原子価状態及び配位数によって決まる。典型的には、マンガン(II)のような+2酸化状態での4配位数金属イオンに対しては、mは2、nは1、pは4となる。他の金属イオンでは、pは他の値、例えば5又は6とすることができる。
【0010】
金属「M」の例としては、第VII族又は第VIII族の金属、例えばマンガン又はルテニウムがあげられ、配位子Lgの例(各Lgは同じでも異なってもよい)は、ハロゲン、特に塩素又は臭素である。
アニオンの典型的な式([M(Lg)p]m-)には、([M(Cl)p]m-)又は([M(Br)p]m-)、特に([M(Cl)4]2-)又は([M(Br)4]2-)が含まれる。例えば、金属がマンガンの場合には、アニオンは、例えば、式([Mn(Cl)4]2-)又は([Mn(Br)4]2-)とすることができる。
【0011】
金属の他の例としては、セリウム又はユーロピウムのようなランタニドがあげられる。これらの場合、アニオン([M(Lg)p]m-)は、式([M(Lg)6]3-)を有することができる。例えば([M(Lg)p]m-)は、式([M(Cl)6]3-)又は([M(Br)6]3-)とすることができる。更に詳細には、セリウムの場合には、アニオン([M(Lg)p]m-)は、式([Ce(Cl)6]3-)又は([Ce(Br)6]3-)とすることができる。ユーロピウムの場合には、アニオン([M(Lg)p]m-)は、式([Eu(Cl)6]3-)又は([Eu(Br)6]3-)とすることができる。
融点、有機溶媒中の溶解度及び本発明の発光錯塩の発光特性のような物理的特性は、有機カチオン[Org]n+の大きさ、構造、及び疎水性に大きく依存する。
【0012】
一般に、[Org]n+の分子量は、1000未満、好ましくは500未満、最も好ましくは250未満とする必要がある。従って、[Org]n+が以下に定義する式(NR9RhRiRj)+又は(PR9RhRiRj)+の3級アンモニウム又は3級ホスホニウムカチオンである場合には、基R9RhRi及びRjは各々、好ましくは30炭素原子未満、最も好ましくは20炭素原子未満を含むことになる。式(NR9RhRiRj)+又は(PR9RhRiRj)+の本発明の発光錯塩の好ましい実施形態では、R9RhRi及びRjの1つは、1〜20炭素原子を有することになり、残りは、1〜6炭素原子を有することになる。特に好ましい化合物では、R9、Rh、Ri及びRjの1つは、10〜20炭素原子を有することになり、残りは1〜6炭素原子を有することになる。
本発明の好ましい錯塩では、[Org]n+は複素環カチオン、特に、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール及びトリアゾールから選択される複素環核を含むものである。
【0013】
同様に、[Org]n+の分子量は、1000未満、好ましくは500未満、最も好ましくは250未満とすることが必要である。従って、[Org]n+がピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール及びトリアゾールから選択される置換複素環核である場合には、置換基(例えば、以下に定義される置換基Ra、Rb、Rc、Rd、Re及びRf)は、各々、好ましくは30炭素原子未満、最も好ましくは20炭素原子未満を含むことになる。本発明の発光錯塩の好ましい実施形態では、[Org]n+がピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール及びトリアゾールから選択される置換複素環核である場合、置換基の1つ(例えば以下に定義される置換基Ra、Rb、Rc、Rd、Re及びRf)は、1〜20炭素原子を有し、残りは1〜6炭素原子を有することになる。特に好ましい化合物では、Ra、Rb、Rc、Rd、Re及びRfの1つが10〜20炭素原子を有し、残りは1〜6炭素原子を有することになる。
【0014】
本発明の錯塩の大部分は、イオン性液体を形成することができる。
本明細書で用いる「イオン性液体(ionic liquid)」という用語は、固体を溶融することにより生成することができ、このように生成したときに、イオンだけからなる液体をいう。イオン性液体は、有機塩、特に、複素環窒素含有化合物の塩由来とすることができる。従って、本発明においては、Orgは、複素環核を含むことが好ましい。
【0015】
イオン性液体は、1種のカチオン及び1種のアニオンを含む均質な物質で形成することができ、或いは、2種以上のカチオン及び/又はアニオンから構成されてもよい。従って、イオン性液体は、2種以上のカチオン及び1種のアニオンから構成することができる。イオン性液体は、更に、1種のカチオン、及び1種又はそれ以上の種のアニオンから構成することができる。従って、本発明の混合塩は、特定の[Org]n+カチオン及び[M(Lg)p]m-アニオンに加えて、アニオン及びカチオンを含む混合塩を含むことができる。これは、更に、2種以上の特定の[Org]n+カチオン及び[M(Lg)p]m-アニオンが存在する混合塩も含むことができる。
【0016】
従って、要約すると、本明細書で用いる「イオン性液体」という用語は、単塩(1つのカチオン種及び1つのアニオン種)からなる均質組成物を意味することができ、或いは、2種以上のカチオン及び/又は2種以上のアニオンを含む不均質組成物を意味することもできる。
「イオン性液体」という用語は、高溶融温度の化合物及び低融点、例えば室温又はそれ以下(即ち15〜30℃)の化合物の両方を含む。後者は、「室温イオン性液体」と呼ばれることが多い。
通常、錯塩が液体状態のときには発光プロファイルが減少又は消失するため、本発明の錯塩は、一般に、「室温イオン性液体」であることは好ましくない。驚くべきことには、本発明の蛍光錯塩は、以下に記載するように液体状態のときでも蛍光を保持することが分かっている。
【0017】
ここに示すように、本発明の好ましい錯塩は、アルキル化ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール及びトリアゾールのようなアルキル化又はポリアルキル化ヘテロアリール化合物の錯イオンを含む。従って、このようなカチオンの例としては、以下の式を有するものがあげられる。
【化1】
式中、
RaはC1〜C40(好ましくはC1〜C20、更に好ましくはC4〜C12)の直鎖又は分枝アルキル基又はC3〜C8シクロアルキル基であり、アルキル又はシクロアルキル基は、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換することもでき、
Rb、Rc、Rd、Re及びRfは、同じでも異なっていてもよく、各々が、水素、C1〜C40(好ましくはC1〜C20、更に好ましくはC4〜C12)の直鎖又は分枝アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基、又はC6〜C10アリール基から独立に選択され、アルキル、シクロアルキル又はアリール基は無置換であるか、又はC1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C7〜C30アラルキル及びC7〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよく、或いは、隣接する炭素原子に結合しているRb、Rc、Rd、Re及びRfの何れか2つがメチレン鎖−(CH2)q−(式中qは2〜8、特に3、4又は5である)を形成する。
【0018】
好ましくは、Raは、上記で定義するように無置換アルキル又はシクロアルキル基であり、Rb、Rc、Rd、Re及びRfは、水素又はC1〜10アルキルである。このような好ましい化合物の例は、Rb、Rc、Rd、Re及びRfの1つ又は2つがC1〜10アルキルを表し、Rb、Rc、Rd、Re及びRfの他の3つか4つが水素を表すものである。
【0019】
本発明の好ましい錯塩では、カチオンは、1,3−ジアルキルイミダゾリウムである。他の好ましいカチオンには、他の置換ピリジニウム又はアルキル又はポリアルキルピリジニウム、アルキルイミダゾリウム、イミダゾール、アルキル又はポリアルキルイミダゾリウム、アルキル又はポリアルキルピラゾリウム、アンモニウム、アルキル又はポリアルキルアンモニウム、アルキル又はポリアルキルホスホニウムカチオンが含まれる。
【0020】
特に好ましいイオン性液体は、イミダゾリウム、ピリジニウム又はピラゾリウム塩である。従って、イミダゾリウムカチオンに基づくものは、好適には、次式を有することができる。
【化2】
式中、
各Raは、同じで又は異なってもよく、各々が独立に、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C40直鎖又は分枝アルキルから選択され、
Rxは、C1〜C10直鎖又は分枝アルキルを表し、これは、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよく、
yは、0、1、2又は3であり、
M、Lg、m、n及びpは、先に定義した通りである。
【0021】
ピラゾリウムに基づくものは、好適には次式を有することができる。
【化3】
式中、
各Raは、同じで又は異なってもよく、各々が独立に、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C40直鎖又は分枝アルキルから選択され、
Rxは、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C10直鎖又は分枝アルキルを表し、
yは、0、1、2又は3であり、
M、Lg、m、n及びpは、先に定義した通りである。
【0022】
更に、次式を有するピリジニウムカチオンに基づく錯塩も適切である。
【化4】
式中、
Raは、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C40直鎖又は分枝アルキルから選択され、
Rxは、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C10直鎖又は分枝アルキルを表し、
yは、0、1、2又は3であり、
M、Lg、m、n及びpは、先に定義した通りである。
好ましくは、上の化合物では、Raは、独立にC1〜C40、好ましくはC1〜C20、更に好ましくはC4〜C12の直鎖又は分枝アルキル基から選択される。
【0023】
本発明の別の例示的な種類の化合物では、([Org]n+)は、4級アンモニウム又はホスホニウムイオン(R9RhRiRjN)+もしくは(R9RhRiRjP)+とすることができ、式中、R9RhRi及びRjは、同じでも異なっていてもよく、C1〜C40(好ましくはC1〜C20、更に好ましくはC4〜C12)の直鎖又は分枝アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基、又はC6〜C10アリール基を表し、前記アルキル、シクロアルキル又はアリール基は無置換であるか、又は、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C7〜C30アラルキル及びC7〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換することもでき、Re、Rf、Rg、Rhの何れか2つがメチレン鎖−(CH2)q−(式中qは2〜8、特に3、4又は5である)を形成する。
【0024】
好ましくは、R9、Rh、Ri及びRjは、置換又は無置換アルキル又はシクロアルキル又はフェニル基を表す。好ましいアルキル及びシクロアルキル基は、1〜10炭素原子を含むことが好ましい。好ましい化合物の例は、Rb、Rc、Rd、Re及びRfの1つ、2つ又は3つがC1〜10アルキルを表し、Rb、Rc、Rd、Re及びRfの他の1つ、2つ又は3つがアルコキシ置換C1〜10アルキルを表すものである。
次に、添付図面を特に参照しながら本発明を更に詳細に記載する。
【0025】
分析技術及び一般合成手順
分析技術
NMR
マンガン(II)は、常磁性であり、NMR分光計の磁場と干渉する。1H及び13CNMRスペクトルを得ることが可能であるが、ピークが極度に広がり、わずかに常磁性シフトを受ける。
【0026】
元素分析
この技術により、化学式が得られ、本発明のハロゲン化マンガンに基づく錯塩の場合には、最も安定な錯体は、2:1[Org]+対[MnX4]2-錯体である。
紫外線吸収分光法
用いられるこの技術は、2つのスライドグラスの間に固体を挟む段階を含む(ルミネセンスが消光するので溶媒を用いることができない)。
【0027】
ルミネセンス分光分析
この技術により、励起及び発光スペクトル(即ち吸収及びルミネセンススペクトル)の両方を得ることができ、これによりカチオンがどのようにアニオンルミネセンスに影響を及ぼすかに関する情報が得られる。また、予め定めた時間遅延後の発光を測定することにより、りん光が起こるかどうかを求めることも可能である。1ミリ秒オーダーの寿命は、[emim]2[MnBr4]において観察される。
【0028】
示差走査熱量測定法
これにより、化合物の融点及び遷移温度が得られる。ルミネセンスは、有意な温度依存性を示し、特定の遷移をルミネセンスのオン又はオフと関連付けることができる。また、この技術は、錯体の純度に関する間接的な情報も与える。
偏光顕微鏡
偏光顕微鏡は、液晶ルミネセンス錯体の分析に用いることができ、これにより、純度及び遷移温度に関する情報が得られる。
【0029】
一般的な製法
マンガン錯体
有機カチオンのハロゲン化物塩(4ミリモル)は、メタノール(2.5cm3)に入れた対応する無水マンガン(II)ハロゲン化物塩(2ミリモル)と混合する。これは、全てのハロゲン化マンガン(II)が溶解されるまで熱板上で穏やかに加熱しつつ撹拌した。加熱(150℃)してメタノールを沸騰させ、粗[有機カチオン]2[MnX4]を冷却した。沸騰酢酸エチル(長鎖アルキル>C8を含むカチオン)又はイソプロパノール/メタノール混合物(<C8)から固体テトラハロマンガネート(II)塩を再結晶した。次に、結晶固体を真空下(5mmHg)、80〜120℃で加熱し、溶媒の痕跡を除去する。
【0030】
ユーロピウム及びセリウム錯体
有機カチオン(3ミリモル)のハロゲン化物塩を、メタノール(10.0cm3)に入れた対応する無水ユーロピウム又はセリウム(II)ハロゲン化物塩(1ミリモル)と混合した。これは、全てのハロゲン化ランタニド(III)が溶解するまで熱板上で穏やかに加熱しつつ撹拌した。加熱することにより(150℃)メタノールを沸騰させ、粗[有機カチオン+]3[MX6]3-を冷却した。固体ヘキサハロユーロピウム又はセリウム(III)塩は、沸騰酢酸エチル(長鎖アルキル>C8を含むカチオン)又はイソプロパノール/メタノール混合物(<C8)から再結晶した。次に、結晶固体を真空下(5mmHg)80〜120℃で加熱し、溶媒の痕跡を除去した。
【0031】
ハロゲン化マンガン錯塩−バルク外観
2:1モル比の有機臭化物塩と臭化マンガン(II)、又は有機塩化物塩と塩化マンガン(II)をそれぞれ混合して加熱することにより、多数のテトラブロモマンガン(II)及びテトラクロロマンガン(II)塩を作った。化合物のいくつかは、強ルミネセンス性であることが見出された。一般に、臭化物は、塩化物よりも相当ルミネセンス性が高かった。室温のマンガン(II)イオン性液体の例が図1に与えられる。黄色/茶色は、スペクトルの青色部分での弱いd−d吸収遷移によるものである。図2は、図1の非ルミネセンス試料と昼光でのルミネセンス[emim]2[MnBr4]と間の色の差を示す。ここで分かるように、ルミネセンスにより、試料は明るい黄色に見える。図3は、長波長紫外線照射下での色を示す。ここで分かるように、[emim]2[MnBr4]は、可視スペクトルの緑色部分に強いルミネセンスを示している。
モル比1:1でジスルフィニル化合物と反応させることを除いて、上記の通りにスルホニウムハロゲン化マンガン(II)スラットを調製した。
【0032】
個々のハロゲン化マンガン(II)錯体の物理特性
一連のマンガン錯体が作られ、その特性を個々に説明し列記する。塩化マンガン及び臭化マンガン塩の全てに対して同様の合成技術を用いた。
以下の特定の実施例は本発明を例証する。
【0033】
実施例
上記の一般的手順で記載した手順を用いて、以下の錯体を調製した。
【実施例1】
【0034】
−[Emim]2[MnBr4]
【化5】
外観:昼光で黄色/緑色結晶固体であり、約65℃で黄色/茶色に変化する。
元素分析:C 24.03%、H 3.66%、N 9.48%。(理論的にはC 24.15%、H 3.72%、N 9.39%)。
DSC:mp=163.6℃(4.7Jg-1);固体−固体遷移117.4℃(0.2Jg-1)及び64.7℃(34.3Jg-1)。
ルミネセンス:強い緑色りん光。λmax=510nm発光;363、376及び455nm励起(紫外線吸収スペクトルと同じ)。
【実施例2】
【0035】
−[Edmim]2[MnBr4]
【化6】
外観:昼光で黄色/緑色結晶固体であり、約117℃を超えると黄茶色に変化する。
元素分析:C 27.09%、H 4.18%、N 9.25%。(理論的にはC 26.91%、H 4.19%、N 8.97%)。
DSC:mp=189.8℃(3.4Jg-1);固体−固体遷移116.5℃(35.0Jg-1)。また、ゆっくりと形成する87.0℃で遷移する別の形も存在する。
ルミネセンス:強い黄緑色りん光。λmax=527nm発光;363、376及び456nm励起(紫外線吸収スペクトルと同じ)。
【実施例3】
【0036】
−[Emim]2[MnCl4]
【化7】
外観:オフホワイト結晶固体。
元素分析:
DSC:mp=129.8℃(2.8Jg-1);固体−固体遷移78.8℃(49.2Jg-1)又は48.0℃(46.7Jg-1)。凍結すると形成される結晶多形体により、加熱するとこれらの固体−固体遷移の1つのみが起こる。
ルミネセンス:中程度の青色−緑色発光。λmax=528及び416(弱い)nm発光;328、360、450及び482nm励起。固体−固体遷移温度を超えるとルミネセンスは消える。
【実施例4】
【0037】
−[C3mim]2[MnBr4]
【化8】
外観:融点未満では昼光で黄色/緑色結晶固体。溶融すると淡黄色/茶色油。
元素分析:
DSC:mp=49.6℃(33.5Jg-1)。
ルミネセンス:溶融すると消失する強い緑色ルミネセンス。
【実施例5】
【0038】
−[C4mim]2[MnBr4]
【化9】
外観:室温で淡黄色/茶色油。−20℃まで下がってもイオン性液体のままである。
元素分析:
DSC:mp<−20℃
ルミネセンス:ルミネセンス無し
【実施例6】
【0039】
−[C12mim]2[MnBr4]
【化10】
外観:淡黄色/茶色の軟練り固体。
元素分析:
DSC:
ルミネセンス:弱い緑色ルミネセンス。
【実施例7】
【0040】
−[C14mim]2[MnCl4]
【化11】
外観:オフホワイト蝋状固体。
元素分析:
DSC:mp=62.2℃(93Jg-1)。液晶相の徴候はない。
ルミネセンス:弱い緑色ルミネセンス。
【実施例8】
【0041】
−[C16mim]2[MnCl4]
【化12】
外観:オフホワイト蝋状固体
元素分析:
DSC:mp=71.2℃(99Jg-1)。液晶相の徴候はない。
ルミネセンス:弱い緑色ルミネセンス
【実施例9】
【0042】
−[C18mim]2[MnCl4]
【化13】
外観:オフホワイト蝋状固体
元素分析:
DSC:
ルミネセンス:弱い緑色ルミネセンス
【実施例10】
【0043】
−[C2ピリジニウム]2[MnBr4]
【化14】
外観:昼光で黄色/緑色結晶固体であり、108℃を超えると黄色/茶色に変化する。
元素分析:
DSC:mp=155.8℃(1.2Jg-1);固体−固体遷移131.0℃(2.7Jg-1)及び107.7℃(47.9Jg-1)。
ルミネセンス:強い緑色りん光。108℃を超えると、ルミネセンスは観察されない。λmax=512nm発光;363、375及び456nm励起。
【実施例11】
【0044】
−[C2ルチジニウム]2[MnBr4]
【化15】
外観:昼光で明るい黄色結晶固体であり、108℃を超えると黄色/茶色に変化する。
元素分析:
DSC:mp=193.0℃(6.1Jg-1);固体−固体遷移181.4℃(25.7Jg-1)及び166.4℃(6.4Jg-1)。
ルミネセンス:強い黄色−緑色ルミネセンス。
【実施例12】
【0045】
−[C4ピリジニウム]2[MnBr4]
【化16】
外観:昼光での明るい黄色結晶固体であり、108℃を超えると淡黄色に変化する。
元素分析:
DSC:mp=100.2℃(53.9Jg-1)
ルミネセンス 100℃まで強い緑色ルミネセンス。
【実施例13】
【0046】
−[C2ピラゾリウム]2[MnBr4]
【化17】
外観:昼光で黄色結晶固体であり、108℃を超えると黄色/茶色に変化する。
元素分析:C 24.26%、H 3.64%、N 9.57%。(理論的には、C 24.15%、H 3.72%、N 9.39%)。
DSC:mp=195.5℃(9.4Jg-1);固体−固体遷移86.9℃(2.9Jg-1)及び44.5℃(13.2Jg-1)。205℃を超えると分解する。
ルミネセンス:強い緑色りん光。108℃を超えると、ルミネセンスは観察されない。λmax=512nm発光;363、375及び456nm励起。
【実施例14】
【0047】
−[C4DBU]2[MnBr4]
【化18】
外観:黄色/緑色固体。
元素分析:
DSC:mp=54.5℃(30.5Jg-1)。
ルミネセンス:固体相で強い緑色ルミネセンス
【実施例15】
【0048】
−[C18DBU]2[MnBr4]
【化19】
外観:白色蝋状粉末。
元素分析:
DSC:mp=79.1℃(42.9Jg-1)。凍結すると、結晶化して固体A相になる(30℃未満)。加熱すると、固体Aは、35.2℃(40.6Jg-1)で溶融し、直ちに再凍結して(−41.5Jg-1)固体Bになる。長く放置すると、DSCに第1の温度勾配が現れ、他の多形体の存在を示す。
ルミネセンス:両方の固体相で中程度の緑色ルミネセンス。
【実施例16】
【0049】
[C6mim]3[CeCl6]
【化20】
外観:白色結晶固体。
DSC:mp=165〜170℃であり、300℃を超えると分解する。
ルミネセンス:固体相で弱い紫色ルミネセンス。
【実施例17】
【0050】
−[Bu4N]3[CeCl6]
【0051】
【化21】
外観:白色結晶固体。
DSC:mp=271℃であり、350℃を超えると分解する。
ルミネセンス:固体相で強い青色ルミネセンス。空中の水蒸気を吸収して弱い紫色のルミネセンスを有する水和物を形成する。
【実施例18】
【0052】
−[C6,6,6,10P]3[CeCl6]
【化22】
外観:淡黄色の室温イオン性液体。
DSC:未定。mp=<20℃。
ルミネセンス:液体相で強い青色ルミネセンス。空中の水蒸気を吸収して弱い紫色のルミネセンスを有する水和物を形成する。311及び350mnで励起最大、502nmで発光最大。励起及び発光が重なるため、この発光ピークは、わずかに赤方シフトする。
ルミネセンスの種類は、半減期が10マイクロ秒の超短寿命りん光又は蛍光の何れかであると決定された。
【実施例19】
【0053】
−[C6mim]3[EuCl6]
【化23】
外観:白色結晶固体。
DSC:mp=169.5℃(26jg-1)であり、300℃を超えると分解する。
ルミネセンス:固体相で弱い赤色ルミネセンス。
【実施例20】
【0054】
−[C6,6,6,10P]3[EuCl6]
【化24】
外観:無色の室温イオン性液体。
DSC:未定。mp=<20℃。
ルミネセンス:液体相で赤色ルミネセンス。空中の水蒸気を吸収して水和物を形成する。これは依然として幾分ルミネセンスを示す。530、460及び400nmで励起最大、590、610、650及び700nmで発光最大。
ルミネセンスの種類は、半減期が1.77マイクロ秒のりん光であると決定された。
【0055】
本発明の化合物は、その発光特性を利用する広範な工業的用途に用いることができる。例として、イメージング及びディスプレイ装置、電気光学装置及びアッセイ手順が挙げられる。従って、陰極線管、蛍光管、X線イメージングスクリーン、放射線検出器、玩具及び他の娯楽装置、標識、発光固体素子装置等を製造するのに、蛍光、りん光及びエレクトロルミネセンス化合物を用いることができる。特定の実施例には、携帯電話のディスプレイ、計算機、コンピュータスクリーン及び薄型テレビディスプレイがある。
【0056】
更に詳細な用途には、本発明の錯塩を個別の層又はドーパントとして組み込むことができる有機発光ダイオード(OLEDS)がある。他の用途には、
生物学的マーカ及び試薬(例えばタグ付き試薬を形成するためのもの);
趣味、例えばフィッシングのルアーに有用なルミネセンス装置;
爆発物(例えばTNT)又は放射線に対する検出器の用途;
安全装置;
プラスチック、インク及び塗料に対する添加剤として;
防護装置;
眼用レンズに対するコーティング
が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】臭化マンガン(II)室温イオン性液体の試料の写真である。
【図2】[emim]2[MnBr4]の試料と図1に示す試料の写真である。
【図3】2つのテトラブロモマンガン酸塩の写真であり、紫外線照射下での非ルミネセンス化合物とルミネセンス化合物との間の差を示す。色は、4T1g−6A1gMn3d遷移(6A1gは基底状態である)によると考えられる。
【図4】マンガン(II)ルミネセンスに関わる主な遷移を示す線図である。
【図5】[emim]2[MnBr4]及び1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラブロモマンガネート(II)、[edmim]2[MnBr4]の紫外線吸収スペクトルを示す図である。
【図6】[emim]2[MnBr4]、[C4py]2[MnBr4]及び[edmim]2[MnBr4](左から右へ)のりん光色を示す写真である。 図5の2つの化合物は、蛍光光度計で求めたときに510及び527nmでりん光(ほぼ1ミリ秒)を示している。450及び370nm領域での吸収は、d−d遷移であり、<325nmでの強い吸収は、Mn−Br電荷遷移過程によるものである。図6に示すように、カチオンの構造は、りん光色に影響を及ぼす可能性がある。
【図7】[C18DBU]2[MnBr4]の結晶構造の変化を示す写真である。
【図8】実施例16及び実施例19の2つのルミネセンス錯体を示す写真である。(Eu−赤色、Ce−紫色)
【図9】紫外線ランプ下での[Cnピリジニウム]2[MnBr4]塩(左から右にn=18、4、2)及び[C2ルチジニウム]2[MnBr4](一番右)のルミネセンスを示す写真である。
【図10】昼光での[Cnピリジニウム]2[MnBr4]塩(左から右にn=18、4、2)及び[C2ルチジニウム]2[MnBr4](一番右)のルミネセンスを示す写真である。
【図11】[emim]2[MnCl4](左)と[emim]2[MnBr4](右)との間の光度の差を示す写真である。
【図12】130℃の液晶相(例えばSmectic A)での[C14mim]2[MnCl4](上部)及び64℃の液晶相(例えばSmectic A)での[C14mim]2[MnCl4]を示す写真である。[C14mim]2[MnCl4]のひし形結晶は、液晶相から成長する。
【図13】液晶相からゆっくりと結晶化させる間の100°の液晶相(例えばSmectic A)での[C18mim]2[MnBr4](左)及び相からゆっくり結晶化させる間の74℃の[C18mim]2[MnBr4]固体(右)相を示す写真である。
【図14】前部[C6,6,6,10P]3[CeCl6]、左[C6,6,6,10P]3[EuCl6]、右[C4,4,4,16P]2[MnBr4]の光色を示す写真である。
【図15】[C6,6,6,10P]3[CeCl6]に対する紫外−可視吸収スペクトルを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:
([Org]n+)m・([M(Lg)p]m-)n
(式中、
m=1、2、3又は4;
n=1又は2;
p=3、4、5又は6;
Mは金属;
各Lgは同じでも異なっていてもよく、配位子を表し;
[Org]n+は、有機カチオンを表す。)
で表される錯塩であって、前記錯塩が、(1)固体状態のときに(a)蛍光、(b)りん光、及び(c)エレクトロルミネセンスから選択される少なくとも1つの発光特性を示し、(2)融点が250℃未満であり、(3)溶融状態のときイオン性液体を形成することができる前記錯塩。
【請求項2】
融点が200℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の錯塩。
【請求項3】
融点が180℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の錯塩。
【請求項4】
融点が150℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の錯塩。
【請求項5】
融点が125℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の錯塩。
【請求項6】
融点が100℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の錯塩。
【請求項7】
mが2であることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の錯体。
【請求項8】
mが1であることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の錯体。
【請求項9】
nが1であることを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の錯体。
【請求項10】
pが、4、5又は6であることを特徴とする請求項1から9の何れかに記載の錯体。
【請求項11】
pが4であることを特徴とする請求項1から10の何れかに記載の錯体。
【請求項12】
Mが、第VII族又は第VIII族の金属であることを特徴とする前記請求項の何れかに記載の錯塩。
【請求項13】
Mが、マンガン又はルテニウムであることを特徴とする前記請求項の何れかに記載の錯塩。
【請求項14】
同じでも異なっていてもよい各Lgが、ハロゲンであることを特徴とする前記請求項の何れかに記載の錯塩。
【請求項15】
同じでも異なっていてもよい各Lgが、Cl又はBrであることを特徴とする請求項14に記載の錯塩。
【請求項16】
前記アニオン([M(Lg)p]m-)が、式([M(Cl)p]m-)又は([M(Br)p]m-)を有することを特徴とする請求項15に記載の錯塩。
【請求項17】
前記アニオン([M(Lg)p]m-)が、式([M(Cl)4]2-)又は([M(Br)4]2-)で表されることを特徴とする請求項16に記載の錯塩。
【請求項18】
前記アニオン([M(Lg)p]m-)が、式([Mn(Cl)4]2-)又は([Mn(Br)4]2-)で表されることを特徴とする請求項17に記載の錯塩。
【請求項19】
Mが、ランタニドであることを特徴とする請求項1から11の何れかに記載の錯塩。
【請求項20】
Mが、セリウム又はユーロピウムであることを特徴とする請求項19に記載の錯塩。
【請求項21】
前記アニオン([M(Lg)p]m-)が、式([M(Lg)6]3-)で表されることを特徴とする請求項19又は請求項20に記載の錯塩。
【請求項22】
前記アニオン([M(Lg)p]m-)が、式([M(Cl)6]3-)又は([M(Br)6]3-)で表されることを特徴とする請求項21に記載の錯塩。
【請求項23】
前記アニオン([M(Lg)p]m-)が、式([Ce(Cl)6]3-)又は([Ce(Br)6]3-)で表されることを特徴とする請求項22に記載の錯塩。
【請求項24】
前記アニオン([M(Lg)p]m-)が、式([Eu(Cl)6]3-)又は([Eu(Br)6]3-)を有することを特徴とする請求項22に記載の錯塩。
【請求項25】
[Org]n+が、複素環であることを特徴とする前記請求項の何れかに記載の錯塩。
【請求項26】
[Org]n+が、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール及びトリアゾールから選択される複素環核を含むことを特徴とする請求項25に記載の錯塩。
【請求項27】
[Org]n+が、次式から選択された構造を有することを特徴とする請求項25に記載の錯塩。
【化1】
(式中、
RaはC1〜C40の直鎖又は分枝アルキル基又はC3〜C8シクロアルキル基、前記アルキル又はシクロアルキル基が、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換することもでき、
Rb、Rc、Rd、Re及びRfは、同じでも異なっていてもよく、各々が水素、C1〜C40の直鎖又は分枝アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基、又はC6〜C10アリール基から独立に選択され、前記アルキル、シクロアルキル又はアリール基は無置換であるか又は、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C7〜C30アラルキル及びC7〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよく、又は、
隣接する炭素原子に結合しているRb、Rc、Rd、Re及びRfの何れか2つがメチレン鎖−(CH2)q−(式中qは8〜20)を形成する。)
【請求項28】
[Org]n+が、次式から選択される構造を有することを特徴とする請求項25に記載の錯塩。
【化2】
(式中、
各Raは、同じで又は異なってもよく、各々が独立に、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C40直鎖又は分枝アルキルから選択され、
Rxは、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C10アラルキル及びC1〜C10アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C10直鎖又は分枝アルキルを表し、
yは、0、1、2又は3であり、
m及びnは、請求項1、7、8又は9の何れかで定義された通りである)
【請求項29】
[Org]n+が、次式から選択される構造を有することを特徴とする請求項25に記載の錯塩。
【化3】
(式中、
Raは、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C40直鎖又は分枝アルキルから選択され、
Rxは、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C10アラルキル及びC1〜C10アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C10直鎖又は分枝アルキルを表し、
yは、0、1、2又は3であり、
m及びnは、請求項1、7、8又は9の何れかにおいて定義された通りである)
【請求項30】
[Org]n+が、ホスホニウムカチオン(R9RhRiRjP)+(式中、R9、Rh、Ri及びRjは同じでも異なっていてもよく、各々が独立に、C1〜C40の直鎖又は分枝アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基又はC6〜C10アリール基から選択され、前記アルキル、シクロアルキル又はアリール基が、無置換であるか、又はC1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C7〜C30アラルキル及びC7〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよい)であることを特徴とする請求項1〜24の何れかに記載の錯塩。
【請求項31】
[Org]n+が、4級アンモニウムカチオン(R9RhRiRjN)+(式中、R9、Rh、Ri及びRjは、請求項31で定義した通りである)であることを特徴とする請求項1〜24の何れかに記載の錯塩。
【請求項32】
[Org]n+が、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリエチルフェニルホスホニウム及び/又はトリフェニルメチルホスホニウム以外である請求項12、13、19又は20に記載の錯塩。
【請求項33】
次式を有する錯塩。
([Org]n+)m・([M(Lg)p]m-)n (A)
(式中、
m=1、2、3又は4;
n=1又は2;
p=3、4、5又は6;
Mは金属;
各Lgは、同じでも異なっていてもよく、配位子を表し;
[Org]n+は、有機カチオンを表し、
但し、MがMnである場合には、有機カチオン[Org]n+は、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルフェニルホスホニウム及びトリフェニル(phethyl)メチルホスホニウム以外である)
【請求項34】
Mがランタニドであることを特徴とする請求項33に記載の錯塩。
【請求項35】
Mが、セリウム又はユーロピウムであることを特徴とする請求項34に記載の錯塩。
【請求項36】
[Org}n+が、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム、アセトニトリル及び/又は塩化アルミニウム−1−メチル−3−エチルイミダゾリウム以外であることを特徴とする請求項34又は35に記載の錯塩。
【請求項37】
Mが、第VII族又は第VIII族金属であることを特徴とする請求項33に記載の錯塩。
【請求項38】
[Org]n+が、1−メチル−3エチルイミダゾリウム及び/又はピリジニウム以外であることを特徴とする請求項33〜35及び37の何れかに記載の錯塩。
【請求項39】
Mがルテニウムであることを特徴とする請求項37に記載の錯塩。
【請求項40】
Mがマンガンであることを特徴とする請求項37に記載の錯塩。
【請求項41】
[Org]n+が、1−メチル−3−エチルイミダゾリウム以外であることを特徴とする請求項39に記載の錯塩。
【請求項42】
[Org}n+が、1−メチル−3−エチルイミダゾリウム以外であることを特徴とする請求項40に記載の錯塩。
【請求項43】
ルミネセンスディスプレイ装置の製造、コーティング材料の製造、又はプラスチック組成物へ混合するための次式で表される錯塩の利用。
([Org]n+)m・([M(Lg)p]m-)n (A)
(式中、
m=1、2、3又は4;
n=1又は2;
p=3、4、5又は6;
Mは金属;
各Lgは、同じでも異なっていてもよく、配位子を表し;
[Org]n+は、有機カチオンを表す)
【請求項44】
請求項1〜32の何れかに記載の錯塩から構成される発光素子を含むルミネセンスディスプレイ装置。
【請求項45】
各りん光体が、異なる選択波長でりん光を発することを特徴とする請求項1〜32の何れかに記載の複数の異なるりん光体を含むセット。
【請求項46】
1つの化合物が、青色に対応する波長でりん光を発し、第2の化合物が赤色に対応する波長でリン光を発し、第3の化合物が緑色に対応する波長でりん光を発することを特徴とする請求項45に記載の3つのりん光体のセット。
【請求項1】
次式:
([Org]n+)m・([M(Lg)p]m-)n
(式中、
m=1、2、3又は4;
n=1又は2;
p=3、4、5又は6;
Mは金属;
各Lgは同じでも異なっていてもよく、配位子を表し;
[Org]n+は、有機カチオンを表す。)
で表される錯塩であって、前記錯塩が、(1)固体状態のときに(a)蛍光、(b)りん光、及び(c)エレクトロルミネセンスから選択される少なくとも1つの発光特性を示し、(2)融点が250℃未満であり、(3)溶融状態のときイオン性液体を形成することができる前記錯塩。
【請求項2】
融点が200℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の錯塩。
【請求項3】
融点が180℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の錯塩。
【請求項4】
融点が150℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の錯塩。
【請求項5】
融点が125℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の錯塩。
【請求項6】
融点が100℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の錯塩。
【請求項7】
mが2であることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の錯体。
【請求項8】
mが1であることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の錯体。
【請求項9】
nが1であることを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の錯体。
【請求項10】
pが、4、5又は6であることを特徴とする請求項1から9の何れかに記載の錯体。
【請求項11】
pが4であることを特徴とする請求項1から10の何れかに記載の錯体。
【請求項12】
Mが、第VII族又は第VIII族の金属であることを特徴とする前記請求項の何れかに記載の錯塩。
【請求項13】
Mが、マンガン又はルテニウムであることを特徴とする前記請求項の何れかに記載の錯塩。
【請求項14】
同じでも異なっていてもよい各Lgが、ハロゲンであることを特徴とする前記請求項の何れかに記載の錯塩。
【請求項15】
同じでも異なっていてもよい各Lgが、Cl又はBrであることを特徴とする請求項14に記載の錯塩。
【請求項16】
前記アニオン([M(Lg)p]m-)が、式([M(Cl)p]m-)又は([M(Br)p]m-)を有することを特徴とする請求項15に記載の錯塩。
【請求項17】
前記アニオン([M(Lg)p]m-)が、式([M(Cl)4]2-)又は([M(Br)4]2-)で表されることを特徴とする請求項16に記載の錯塩。
【請求項18】
前記アニオン([M(Lg)p]m-)が、式([Mn(Cl)4]2-)又は([Mn(Br)4]2-)で表されることを特徴とする請求項17に記載の錯塩。
【請求項19】
Mが、ランタニドであることを特徴とする請求項1から11の何れかに記載の錯塩。
【請求項20】
Mが、セリウム又はユーロピウムであることを特徴とする請求項19に記載の錯塩。
【請求項21】
前記アニオン([M(Lg)p]m-)が、式([M(Lg)6]3-)で表されることを特徴とする請求項19又は請求項20に記載の錯塩。
【請求項22】
前記アニオン([M(Lg)p]m-)が、式([M(Cl)6]3-)又は([M(Br)6]3-)で表されることを特徴とする請求項21に記載の錯塩。
【請求項23】
前記アニオン([M(Lg)p]m-)が、式([Ce(Cl)6]3-)又は([Ce(Br)6]3-)で表されることを特徴とする請求項22に記載の錯塩。
【請求項24】
前記アニオン([M(Lg)p]m-)が、式([Eu(Cl)6]3-)又は([Eu(Br)6]3-)を有することを特徴とする請求項22に記載の錯塩。
【請求項25】
[Org]n+が、複素環であることを特徴とする前記請求項の何れかに記載の錯塩。
【請求項26】
[Org]n+が、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール及びトリアゾールから選択される複素環核を含むことを特徴とする請求項25に記載の錯塩。
【請求項27】
[Org]n+が、次式から選択された構造を有することを特徴とする請求項25に記載の錯塩。
【化1】
(式中、
RaはC1〜C40の直鎖又は分枝アルキル基又はC3〜C8シクロアルキル基、前記アルキル又はシクロアルキル基が、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換することもでき、
Rb、Rc、Rd、Re及びRfは、同じでも異なっていてもよく、各々が水素、C1〜C40の直鎖又は分枝アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基、又はC6〜C10アリール基から独立に選択され、前記アルキル、シクロアルキル又はアリール基は無置換であるか又は、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C7〜C30アラルキル及びC7〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよく、又は、
隣接する炭素原子に結合しているRb、Rc、Rd、Re及びRfの何れか2つがメチレン鎖−(CH2)q−(式中qは8〜20)を形成する。)
【請求項28】
[Org]n+が、次式から選択される構造を有することを特徴とする請求項25に記載の錯塩。
【化2】
(式中、
各Raは、同じで又は異なってもよく、各々が独立に、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C40直鎖又は分枝アルキルから選択され、
Rxは、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C10アラルキル及びC1〜C10アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C10直鎖又は分枝アルキルを表し、
yは、0、1、2又は3であり、
m及びnは、請求項1、7、8又は9の何れかで定義された通りである)
【請求項29】
[Org]n+が、次式から選択される構造を有することを特徴とする請求項25に記載の錯塩。
【化3】
(式中、
Raは、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C30アラルキル及びC1〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C40直鎖又は分枝アルキルから選択され、
Rxは、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C1〜C10アラルキル及びC1〜C10アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよいC1〜C10直鎖又は分枝アルキルを表し、
yは、0、1、2又は3であり、
m及びnは、請求項1、7、8又は9の何れかにおいて定義された通りである)
【請求項30】
[Org]n+が、ホスホニウムカチオン(R9RhRiRjP)+(式中、R9、Rh、Ri及びRjは同じでも異なっていてもよく、各々が独立に、C1〜C40の直鎖又は分枝アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基又はC6〜C10アリール基から選択され、前記アルキル、シクロアルキル又はアリール基が、無置換であるか、又はC1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C7〜C30アラルキル及びC7〜C30アルカリールから選択される1〜3の基で置換されていてもよい)であることを特徴とする請求項1〜24の何れかに記載の錯塩。
【請求項31】
[Org]n+が、4級アンモニウムカチオン(R9RhRiRjN)+(式中、R9、Rh、Ri及びRjは、請求項31で定義した通りである)であることを特徴とする請求項1〜24の何れかに記載の錯塩。
【請求項32】
[Org]n+が、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリエチルフェニルホスホニウム及び/又はトリフェニルメチルホスホニウム以外である請求項12、13、19又は20に記載の錯塩。
【請求項33】
次式を有する錯塩。
([Org]n+)m・([M(Lg)p]m-)n (A)
(式中、
m=1、2、3又は4;
n=1又は2;
p=3、4、5又は6;
Mは金属;
各Lgは、同じでも異なっていてもよく、配位子を表し;
[Org]n+は、有機カチオンを表し、
但し、MがMnである場合には、有機カチオン[Org]n+は、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルフェニルホスホニウム及びトリフェニル(phethyl)メチルホスホニウム以外である)
【請求項34】
Mがランタニドであることを特徴とする請求項33に記載の錯塩。
【請求項35】
Mが、セリウム又はユーロピウムであることを特徴とする請求項34に記載の錯塩。
【請求項36】
[Org}n+が、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム、アセトニトリル及び/又は塩化アルミニウム−1−メチル−3−エチルイミダゾリウム以外であることを特徴とする請求項34又は35に記載の錯塩。
【請求項37】
Mが、第VII族又は第VIII族金属であることを特徴とする請求項33に記載の錯塩。
【請求項38】
[Org]n+が、1−メチル−3エチルイミダゾリウム及び/又はピリジニウム以外であることを特徴とする請求項33〜35及び37の何れかに記載の錯塩。
【請求項39】
Mがルテニウムであることを特徴とする請求項37に記載の錯塩。
【請求項40】
Mがマンガンであることを特徴とする請求項37に記載の錯塩。
【請求項41】
[Org]n+が、1−メチル−3−エチルイミダゾリウム以外であることを特徴とする請求項39に記載の錯塩。
【請求項42】
[Org}n+が、1−メチル−3−エチルイミダゾリウム以外であることを特徴とする請求項40に記載の錯塩。
【請求項43】
ルミネセンスディスプレイ装置の製造、コーティング材料の製造、又はプラスチック組成物へ混合するための次式で表される錯塩の利用。
([Org]n+)m・([M(Lg)p]m-)n (A)
(式中、
m=1、2、3又は4;
n=1又は2;
p=3、4、5又は6;
Mは金属;
各Lgは、同じでも異なっていてもよく、配位子を表し;
[Org]n+は、有機カチオンを表す)
【請求項44】
請求項1〜32の何れかに記載の錯塩から構成される発光素子を含むルミネセンスディスプレイ装置。
【請求項45】
各りん光体が、異なる選択波長でりん光を発することを特徴とする請求項1〜32の何れかに記載の複数の異なるりん光体を含むセット。
【請求項46】
1つの化合物が、青色に対応する波長でりん光を発し、第2の化合物が赤色に対応する波長でリン光を発し、第3の化合物が緑色に対応する波長でりん光を発することを特徴とする請求項45に記載の3つのりん光体のセット。
【図4】
【図5】
【図15】
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図5】
【図15】
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−517891(P2008−517891A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537397(P2007−537397)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004121
【国際公開番号】WO2006/043110
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(507134356)ザ クィーンズ ユニヴァーシティー オブ ベルファスト (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004121
【国際公開番号】WO2006/043110
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(507134356)ザ クィーンズ ユニヴァーシティー オブ ベルファスト (4)
【Fターム(参考)】
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