説明

発光難燃光拡散性樹脂組成物および樹脂板

【課題】蓄光材を主たる機能の発現要素として適用添加した難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、暗所で長時間発光し、光拡散性に優れ、且つUL−94規格でV−0またはV−1の良好な難燃性を有する性能を持つ発光難燃光拡散性樹脂組成物および樹脂板を提供する。
【解決手段】(A)粘度平均分子量1.8×10〜3.0×10で、分岐率0.5〜1.5mol%の分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート(A成分)100重量部に対して、(B)難燃剤(B成分)として、有機アルカリ(土類)金属塩(B−1成分)0.005〜1.0重量部および芳香族基を有するシリコーン化合物(B−2成分)0.10〜2.0重量部、(C)D50粒径が1〜30μmである蓄光材(C成分)0.50〜10重量部、ならびに(D)平均粒径が1〜20μmである有機微粒子からなる光拡散剤(D成分)0.05〜5.0重量部を含有する発光難燃光拡散性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄光材を主たる機能の発現要素として適用添加した難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる発光難燃光拡散性樹脂組成物および樹脂板に関する。詳しくは、暗所で長時間発光し、光拡散性に優れ、且つUL−94規格でV−0またはV−1の良好な難燃性を有する発光難燃光拡散性樹脂組成物および樹脂板に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄光材は、外部からの光照射を受けて分子エネルギーが励起され、時間をかけてエネルギー順位を下げ元のレベルに戻す際に放つ光を活用するものであるが、実使用可能な程度の一定時間に渡り発光することから、避難誘導標識や表示灯等の夜間表示用途に用いられている。近年、火災や地震といった災害発生時に、屋内照明が消え、避難経路を見失うという問題が顕在化しており国内外を問わず蓄光材を使用した新しい機能設備の導入が進められている。このような用途においては、災害時に炎崩壊せずに避難誘導が可能となる難燃性を有する材質が求められている。
【0003】
一方、芳香族ポリカーボネート樹脂は射出成形、押し出し成形などの簡便で生産性に優れた加工法により、幅広い産業分野で利用されている。とりわけ各種照明カバー、透過型ディスプレイ用の保護カバー等において高い透明性が要求される用途には、芳香族ポリカーボネート樹脂の高光線透過率と極めて低いヘーズ率をもち備えた高度な透明性を活かして幅広く使用されている。これらの用途においては、近年、火災時の難燃性についても注目されており、当該要求特性に加えて高度な難燃性を有する樹脂板が求められている。殊更に機能性フィルムを積層させることにより光路制御、光反射防止等の実用上の機能を付与し、多様な性能要求を満たす技術躍進も広がりを見せつつある。
【0004】
蓄光材を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂に難燃性を付与する方法として、ポリカーボネート樹脂が本来的にもち備える難燃性を利用する方法が提案されている(特許文献1、2)。しかしながら、これらの方法はポリカーボネート樹脂シートの厚みが5.0mm以上である場合には、難燃性が保てる反面、透明性が維持できず、さらに多量の蓄光材あるいは多量のアクリル樹脂を使用することにより、ドリップや燃焼の危険性が生じるため、酸素指数の高さにも関わらず、難燃性V−0やV−1といった高い水準が保持できないことが判明した。また、ポリカーボネート樹脂に蓄光剤、難燃剤としてシリコーン化合物、および光拡散剤からなる樹脂組成物が提案されている(特許文献3)。しかしながら、この組成物は難燃性がV−2レベルであり、高い難燃性能を有する樹脂組成物ではなかった。
【0005】
一方、ポリカーボネート樹脂に難燃剤を添加させて難燃性を発現させる方法として、従来は臭素系化合物やリン系化合物が利用されていたが、成形時における腐蝕ガスの発生の抑制、または製品のリサイクル性の向上などの目的で上記に挙げた難燃剤に替えて、シリコーン化合物などが提案されている。例えばポリカーボネート樹脂にパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ(土類)金属塩とアルコキシ基、ビニル基およびフェニル基を有する有機シロキサンを配合する方法(特許文献4参照)、ポリカーボネート樹脂にパーフルオロアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と2価炭化水素基を介してケイ素原子に結合したオルガノキシシリル基を含有するオルガノポリシロキサンを配合する方法(特許文献5参照)などが提案されている。また、樹脂成分に特定の石油系重質油類またはピッチ類とシリコーン化合物を配合する方法(特許文献6参照)、および芳香環を有する非シリコーン樹脂に式RSiO1.0で示される単位とRSiO1.5で示される単位(Rは炭化水素基)を持ち、重量平均分子量が10,000以上270,000以下であるシリコーン樹脂を配合する方法(特許文献7参照)などが提案されている。また、芳香族ポリカーボネート樹脂に有機アルカリ金属塩、およびポリ(メチル水素シロキサン)からなる樹脂組成物についても具体例が記載されている(特許文献8参照)。
【0006】
しかしながら、上記提案のポリカーボネート樹脂組成物は透明性が低下するため、照明用途としての適正が低下するという問題がある。
これを受けて近年では、芳香族ポリカーボネート樹脂に有機アルカリ金属塩、およびポリ(フェニルメチル水素シロキサン)からなる樹脂組成物(特許文献9参照)、分岐構造を有するポリカーボネートと有機金属塩からなる樹脂組成物(特許文献10参照)、分岐構造を有するポリカーボネートと有機金属塩および特定のシロキサン化合物からなる樹脂組成物(特許文献11、12参照)等の組成が提案されている。しかし、これらの特許文献は、蓄光材との併用を想定した組成ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−080530号公報
【特許文献2】特開平11−012502号公報
【特許文献3】特開2008−074952号公報
【特許文献4】特開平6−306265号公報
【特許文献5】特開平6−336547号公報
【特許文献6】特開平9−169914号公報
【特許文献7】特開平10−139964号公報
【特許文献8】特公昭60−38419号公報
【特許文献9】特開2003−147190号公報
【特許文献10】特許第3129374号公報
【特許文献11】特許第3163596号公報
【特許文献12】特開2007−031583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、蓄光材を主たる機能の発現要素として適用添加した難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、暗所で長時間発光し、光拡散性に優れ、且つUL−94規格でV−0またはV−1の良好な難燃性を有する性能を持つ発光難燃光拡散性樹脂組成物および樹脂板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する手段は、優れた難燃性、光拡散性および剛性を持つ樹脂と蓄光材とを最適な条件下において組み合わせることにより、地震や火災等の非常時に使用可能な避難誘導灯等に好適な発光難燃光拡散性樹脂組成物および樹脂板をもたらすものである。また、難燃組成と蓄光剤を併用する組成に光拡散剤を添加する組成で、光拡散剤を添加しない組成よりも初期輝度及び光放射強度が向上する知見はこれまで得られていない、驚くべき知見である。
【0010】
すなわち、本発明によれば、
1.(A)粘度平均分子量1.8×10〜3.0×10で、分岐率0.5〜1.5mol%の分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート(A成分)100重量部に対して、(B)難燃剤(B成分)として、有機アルカリ(土類)金属塩(B−1成分)0.005〜1.0重量部および芳香族基を有するシリコーン化合物(B−2成分)0.10〜2.0重量部、(C)D50粒径が1〜30μmである蓄光材(C成分)0.50〜10重量部、ならびに(D)平均粒径が1〜20μmである有機微粒子からなる光拡散剤(D成分)0.05〜5.0重量部を含有する発光難燃光拡散性樹脂組成物。
2.蓄光材(C成分)は、発光する光の波長領域において、長波長側の一端が430nm〜680nmとなることを特徴とする前項1記載の発光難燃光拡散性樹脂組成物。
3.光拡散剤(D成分)が、シリコーン系樹脂であることを特徴とする前項1記載の発光難燃光拡散性樹脂組成物。
4.前項1記載の樹脂組成物を用いて成形された、厚み1.0〜5.0mmの発光難燃光拡散性樹脂板。
5.樹脂板から発光される光強度がJIS Z9107試験において、60分後に1mcd/m以上を有し、且つUL−94試験でV−0またはV−1の難燃性を有する前項4記載の発光難燃光拡散性樹脂板。
6.樹脂板正面の光強度に対して、50%の光強度を持つ角度(拡散度)が、10〜60度の範囲にあることを特徴とする前項4記載の発光難燃光拡散性樹脂板。
7.前項4〜6のいずれか1項に記載の発光難燃光拡散性樹脂板を用いてなる照明用カバー。
8.前項4〜6のいずれか1項に記載の発光難燃光拡散性樹脂板を用いてなる透過型ディスプレイ用カバー。
が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の発光難燃光拡散性樹脂組成物は、優れた難燃性、光拡散性および剛性を持つ樹脂と蓄光材を組み合わせることにより、地震や火災等の非常時における避難誘導灯として優れた機能をもたらすため、照明カバーや看板、透過型のディスプレイ等の用途に使用可能である。
【0012】
当該優れた難燃性、光拡散性および剛性を持つ組成物は、分岐核構造を有する分岐状の芳香族ポリカーボネート樹脂に、有機アルカリ(土類)金属塩と芳香族基を含有するシリコーン化合物と、優れた光拡散性を持つ、光拡散剤を配合させた樹脂組成物からなる成形体であり、高度な難燃性と光拡散性をもち備えている。本発明では優れた難燃性をもたらすべく有機アルカリ(土類)金属塩およびシリコーン化合物の配合量を最適な範囲に限定し、使用するポリカーボネート樹脂の種類を選定することにより、顕著な効果を発揮させた。本発明では、環境負荷が高いとされる臭素系難燃剤やリン系難燃剤を使用しておらず、従来の難燃化技術に比肩されない水準を見出すものである。
【0013】
また、本発明の光拡散性樹脂板は、当該組成において光拡散剤を配合しない透明樹脂板と比較し、発光時間及び発光強度が大幅に高まる事が見出された。本発明の光拡散性樹脂板は、上述の性能を有するため、各種工業用途に極めて有用であり、その奏する工業的効果は絶大である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明における分散度の測定方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の詳細を述べる。
(A成分:芳香族ポリカーボネート樹脂)
本発明のA成分として使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、分岐構造を有する分岐率が0.5〜1.5mol%の芳香族ポリカーボネート樹脂である。A成分全体としての分岐率が0.5〜1.5mol%を満たしていれば、分岐構造を有さない直鎖状の芳香族ポリカーボネート樹脂や、分岐率が0.5〜1.5mol%の範囲を外れる分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂との混合物であってもよい。
【0016】
より優れた難燃性を付与する観点からは、A成分は分岐率が0.5〜1.5mol%の芳香族ポリカーボネート樹脂を20〜100重量%含むことが好ましく、70〜100重量%含むことがより好ましく、100重量%含むことがさらに好ましい。
【0017】
A成分全体としての分岐率は0.5〜1.5mol%であり、0.7〜1.2mol%が好ましく、0.75〜1.0molがより好ましい。なお、分岐率は樹脂全体に含まれる製造に用いた二価フェノール由来の構造単位の総モル数に対する分岐剤由来の構造単位のモル数(分岐剤由来の構造単位のモル数/二価フェノール由来の構造単位の総モル数×100(mol%で表す))を意味し、かかる分岐率はH−NMR測定により実測することができる。
【0018】
分岐率が低いと、満足な分岐特性が得られず溶融張力が低すぎて、難燃性、特にドリップ防止性が発現し難くなる。一方、分岐率が高いと、ポリマーが架橋し、ゲルが発生し易く、ポリマーの耐衝撃性が低下する。さらに分岐率が高すぎると成形品表面にくもりが生じやすくなる。
【0019】
A成分の粘度平均分子量は、1.8×10〜3.0×10の範囲であり、1.9×10〜2.8×10の範囲が好ましく、2.0×10〜2.6×10の範囲がより好ましい。粘度平均分子量が3.0×10を越えると溶融張力が高すぎて成形性に劣る場合があり、粘度平均分子量が1.8×10未満であると成形片を燃焼した際のドリップ防止効果が不十分となり、すなわち本発明の優れた難燃性が発揮しにくくなることがある。
【0020】
また、本発明のA成分として使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、分子量が前述の好ましい分子量範囲を満たすように、分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂1種あるいは2種以上を混合しても差し支えない。この場合、粘度平均分子量が前述の好ましい分子量範囲外である分岐構造を有するポリカーボネート樹脂を混合することも当然に可能である。なお、本発明でいう粘度平均分子量はまず次式にて算出される比粘度を塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求めることができる。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0021】
本発明のA成分である分岐構造を有するポリカーボネート樹脂は、その構造粘性指数が1.6〜2.0の範囲が好ましい。より好ましくは、1.65〜1.95の範囲、さらに好ましくは1.8〜1.9の範囲である。構造粘性指数が2.0を超えるPC樹脂は、成形時に成形品(殊にシート)に歪が残り易くなる。また、構造粘性指数が1.6未満の場合、ドリップが起こり易くなり、難燃特性を満足しないことがある。なお、構造粘性指数は、温度が300℃、キャピラリーサイズが10.01×1.0mm、ピストン速度範囲が5〜200mmの範囲で計測される。
【0022】
本発明のA成分である分岐構造を有するポリカーボネート樹脂は、二価フェノール、分岐剤、一価フェノール類およびホスゲンを用いて有機溶媒の存在下で行う界面重合反応法により得ることができる。
【0023】
使用される二価フェノールの代表的な例は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。なかでも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好ましい。
【0024】
本発明で使用される三価以上のフェノール(分岐剤)の代表的な例は、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノ−ル、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリスフェノール、ビス(2,4−ジヒドロキシルフェニル)ケトン、フロログルシン、フロログルシド、イサンチンビスフェノール、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、トリメリト酸、ピロメリト酸、が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。なかでも、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0025】
本発明のA成分である分岐構造を有するポリカーボネート樹脂の製造に使用される一価フェノール(末端停止剤)としてはどのような構造でもよく特に制限はない。例えば、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、4−ヒドロキシベンゾフェノン、フェノール等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。なかでも、p−tert−ブチルフェノールが好ましい。
【0026】
すなわち、本発明のA成分である分岐構造を有するポリカーボネート樹脂は、分岐構造部分が1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンから誘導されてなる構造であり、分岐構造部分を除いた直鎖構造部分がビスフェノールAから誘導されてなる構造であり、末端がp−tert−ブチルフェノールから誘導されて成る構造であることが好ましい。
【0027】
本発明のA成分である分岐状ポリカーボネート樹脂は、好適には下記の方法で製造される。
すなわち、二価フェノール化合物および分岐剤を溶解したアルカリ水溶液に有機溶媒の存在下でホスゲンを吹き込み反応させて、ポリカーボネートオリゴマーを得、これに一価フェノール類を投入し乳化させた後、無攪拌下で重合させることを特徴とする方法である。
【0028】
また、反応促進のために反応触媒として、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を使用することも出来る。反応触媒は二価フェノール化合物に対して0.002mol%以下が好ましく、0.001mol%以下がより好ましい。特に無触媒で上記反応を行うことが好ましい。0.002mol%を越える場合は分岐剤量に対し溶融張力が高くなりすぎたり、ゲルが生成したりする。また触媒がクロロホーメート基と反応して熱的に不安定なウレタン結合が多くなると共に、触媒が残存することにより分岐状ポリカーボネート樹脂中の全N含有量が増大し、耐衝撃性、透明性、耐熱性が低下するので好ましくない。よって上記反応を無触媒で行うことが特に好ましい。その際、反応温度は通常0〜40℃好ましく、さらに15〜38℃が好ましい。反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9.0以上に保つのが好ましく、11.0〜13.8がさらに好ましい。
【0029】
上記の界面重合反応する際に一価フェノール類を投入後に乳化させる方法としては特に制限はないが、撹拌装置で撹拌する方法、またはアルカリ水溶液を添加する方法等が挙げられ、撹拌装置としては、パドル、プロペラ、タービンまたはカイ型翼等の単純な撹拌装置、ホモジナイザー、ミキサー、ホモミキサー等の高速撹拌機、スタティックミキサー、コロイドミル、オリフィスミキサー、フロージェットミキサー、超音波乳化装置等がある。なかでも無触媒で重合する方法においてはホモミキサー、スタティックミキサー等が好ましく用いられる。
【0030】
次いで、該分岐状ポリカーボネート樹脂有機溶媒溶液を洗浄、造粒、乾燥し、本発明の分岐状ポリカーボネート樹脂(パウダー)を得ることができる。さらに該パウダーを溶融押出してペレット化して分岐状ポリカーボネート樹脂(ペレット)が得られる。洗浄、造粒、乾燥などは特に制限はなく公知の方法が採用できる。
【0031】
また、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂中の全Cl含有量を低下させるには、反応時溶媒として使用されるジクロロメタン(塩化メチレン)、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、ジクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの塩素化炭化水素溶媒を除去することが必要である。例えば、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂パウダーやペレットの乾燥処理を十分に行なうことが挙げられる。
【0032】
本発明の分岐構造を有する芳香族ポリカーボネートは実質的にハロゲン原子を含まないものであることが環境影響の面から好ましい。実質的にハロゲン原子を含まないとは、分子中にハロゲン置換二価フェノールなどを含まないことを示し、上記芳香族ポリカーボネートの製造方法において残留する微量の溶媒(ハロゲン化炭化水素)や、カーボネート前駆体までも対象とするものではない。
【0033】
(B−1成分:有機アルカリ(土類)金属塩)
本発明のB−1成分として使用される有機アルカリ(土類)金属塩としては、従来ポリカーボネート樹脂を難燃化するのに使用されている各種の金属塩が使用可能であるが、特に有機スルホン酸のアルカリ(土類)金属塩、芳香族系イミドのアルカリ(土類)金属塩、硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩、およびリン酸部分エステルのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができる。(ここで、アルカリ(土類)金属塩の表記は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩のいずれも含む意味で使用する)これらは単独の使用だけでなく、2種以上を混合して使用することも可能である。なお、有機アルカリ(土類)金属塩を構成する金属は、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属であり、より好適にはアルカリ金属である。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられ、特に好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムである。
【0034】
前記有機スルホン酸のアルカリ(土類)金属塩としては、脂肪族スルホン酸のアルカリ(土類)金属塩、芳香族スルホン酸のアルカリ(土類)金属塩等が挙げられる。
かかる脂肪族スルホン酸のアルカリ(土類)金属塩の好ましい例としては、アルキルスルホン酸アルカリ(土類)金属塩、かかるアルキルスルホン酸アルカリ(土類)金属塩のアルキル基の一部がフッ素原子で置換したスルホン酸アルカリ(土類)金属塩、およびパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。
【0035】
アルキルスルホン酸アルカリ(土類)金属塩の好ましい例としては、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ブタンスルホン酸塩、メチルブタンスルホン酸塩、ヘキサンスルホン酸塩、へプタンスルホン酸塩、オクタンスルホン酸塩等が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。またかかるアルキル基の一部がフッ素原子で置換した金属塩も挙げることができる。
【0036】
一方、パーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ(土類)金属塩の好ましい例としては、パーフルオロメタンスルホン酸塩、パーフルオロエタンスルホン酸塩、パーフルオロプロパンスルホン酸塩、パーフルオロブタンスルホン酸塩、パーフルオロメチルブタンスルホン酸塩、パーフルオロヘキサンスルホン酸塩、パーフルオロヘプタンスルホン酸塩、パーフルオロオクタンスルホン酸塩等が挙げられ、特に炭素数が1〜8のものが好ましい。これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。
【0037】
この中で最も好ましいのはパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩である。かかるアルカリ金属の中でも、難燃性の要求がより高い場合にはルビジウムおよびセシウムが好適である一方、これらは汎用的でなくまた精製もし難いことから、結果的にコストの点で不利となる場合がある。一方、コストの点で有利であるがリチウムおよびナトリウムは逆に難燃性の点で不利な場合がある。これらを勘案してパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩中のアルカリ金属を使い分けることができるが、いずれの点においても特性のバランスに優れたパーフルオロアルキルスルホン酸カリウム塩が最も好適である。かかるカリウム塩と他のアルカリ金属からなるパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩とを併用することもできる。
【0038】
パーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸カリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブタンスルホン酸リチウム、パーフルオロヘプタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸セシウム、パーフルオロブタンスルホン酸セシウム、パーフルオロオクタンスルホン酸セシウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸セシウム、パーフルオロブタンスルホン酸ルビジウム、およびパーフルオロヘキサンスルホン酸ルビジウム等が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。これらの中で特にパーフルオロブタンスルホン酸カリウムが好ましい。
【0039】
芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩に使用する芳香族スルホン酸としては、モノマー状またはポリマー状の芳香族サルファイドのスルホン酸、芳香族カルボン酸およびエステルのスルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族エーテルのスルホン酸、芳香族スルホネートのスルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホンスルホン酸、芳香族ケトンのスルホン酸、複素環式スルホン酸、芳香族スルホキサイドのスルホン酸、芳香族スルホン酸のメチレン型結合による縮合体からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸を挙げることができ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。
【0040】
モノマー状またはポリマー状の芳香族サルファイドのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98539号公報に記載されており、例えば、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジナトリウム、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジカリウムなどを挙げることができる。
【0041】
芳香族カルボン酸およびエステルのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98540号公報に記載されており、例えば5−スルホイソフタル酸カリウム、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、ポリエチレンテレフタル酸ポリスルホン酸ポリナトリウムなどを挙げることができる。
【0042】
モノマー状またはポリマー状の芳香族エーテルのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98542号公報に記載されており、例えば1−メトキシナフタレン−4−スルホン酸カルシウム、4−ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ジナトリウム、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,3−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,4−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(2,6−ジフェニルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリカリウム、ポリ(2−フルオロ−6−ブチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸リチウムなどを挙げることができる。
【0043】
芳香族スルホネートのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98544号公報に記載されており、例えばベンゼンスルホネートのスルホン酸カリウムなどを挙げることができる。
【0044】
モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98546号公報に記載されており、例えばベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ストロンチウム、ベンゼンスルホン酸マグネシウム、p−ベンゼンジスルホン酸ジカリウム、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸ジカリウム、ビフェニル−3,3’−ジスルホン酸カルシウムなどを挙げることができる。
【0045】
モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭52−54746号公報に記載されており、例えばジフェニルスルホン−3−スルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3,4’−ジスルホン酸ジカリウムなどを挙げることができる。
【0046】
芳香族ケトンのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98547号公報に記載されており、例えばα,α,α−トリフルオロアセトフェノン−4−スルホン酸ナトリウム、ベンゾフェノン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウムなどを挙げることができる。
【0047】
複素環式スルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−116542号公報に記載されており、例えばチオフェン−2,5−ジスルホン酸ジナトリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸カルシウム、ベンゾチオフェンスルホン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0048】
芳香族スルホキサイドのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭52−54745号公報に記載されており、例えばジフェニルスルホキサイド−4−スルホン酸カリウムなどを挙げることができる。
【0049】
芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩のメチレン型結合による縮合体としては、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、アントラセンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物などを挙げることができる。
【0050】
前記、硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩としては、特に一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、かかる一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルとしては、メチル硫酸エステル、エチル硫酸エステル、ラウリル硫酸エステル、ヘキサデシル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル、ペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ、テトラ硫酸エステル、ラウリン酸モノグリセライドの硫酸エステル、パルミチン酸モノグリセライドの硫酸エステル、ステアリン酸モノグリセライドの硫酸エステルなどを挙げることができる。これらの硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩として好ましくはラウリル硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができる。
【0051】
前記リン酸部分エステルのアルカリ(土類)金属塩としては、具体的にビス(2,6−ジブロモ−4−クミルフェニル)リン酸、ビス(4−クミルフェニル)リン酸、ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)リン酸ビス(2,4−ジブロモフェニル)リン酸、ビス(4−ブロモフェニル)リン酸、ジフェニルリン酸、ビス(4−tert−ブチルフェニル)リン酸等のアルカリ(土類)金属塩を挙げることができる。
【0052】
前記芳香族系イミドのアルカリ(土類)金属塩としては、例えばサッカリン、N−(p−トリルスルホニル)−p−トルエンスルホンアミド(言い換えるとジ(p−トルエンスルホン)イミド)、N−(N’−ベンジルアミノカルボニル)スルファニルイミド、およびN−(フェニルカルボキシル)スルファニルイミド、ビス(ジフェニルリン酸)イミド等のアルカリ(土類)金属塩などが挙げられる。
【0053】
これらの中で好ましい成分としてパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ(土類)金属塩、芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、および芳香族系イミドのアルカリ(土類)金属塩からなる群より選択される1種以上の化合物が挙げられ、その中でもパーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、式(4)で示されるジフェニルスルホンのスルホン酸塩、ジ(p−トルエンスルホン)イミドのカリウム塩、および、ジ(p−トルエンスルホン)イミドのナトリウム塩からなる群より選択される1種以上の化合物がより好ましい。さらに最も好ましくはパーフルオロブタンスルホン酸カリウムである。
【0054】
【化1】

[式中、nは0〜3を表し、MはKあるいはNaを表す。]
【0055】
本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含有されるB−1成分の量は芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、0.005〜1.0重量部であり、好ましくは0.006〜0.5重量部であり、より好ましくは0.007〜0.3重量部であり、さらに好ましくは0.008〜0.1重量部であり、最も好ましくは0.01〜0.05重量部である。B−1成分の含有量が1.0重量部よりも多いと本発明の特徴である透明性が損なわれるだけでなく、場合によっては成形時に樹脂が分解して逆に難燃性が低下する方向となる。添加量が0.005重量部より少ないと難燃性が不十分となり本発明の目的である難燃性が発揮されない。
【0056】
(B−2成分:シリコーン化合物)
本発明のB−2成分として使用されるシリコーン化合物は本発明の目的である難燃性や透明性を得ることができれば特に限定されないが、芳香族基を有するシリコーン化合物であり、さらに25℃における粘度が300cSt以下となることが好ましい。粘度が高くなると成形品の透明性が低下する。さらにB−2成分のシリコーン化合物が効率的に難燃効果を発揮するためには、燃焼過程における分散状態が重要である。かかる分散状態を決定する重要な因子として粘度が挙げられる。これは、燃焼過程においてシリコーン化合物があまりにも揮発しやすい場合、すなわち、粘度が低すぎるシリコーン化合物の場合には、燃焼時に系内に残っているシリコーンが希薄であるため、燃焼時に均一なシリコーンのストラクチャーを形成することが困難となるためと考えられるかかる観点より、25℃における粘度は10〜300cStがより好ましく、さらに好ましくは15〜200cSt、最も好ましくは20〜170cStである。
【0057】
B−2成分が有する芳香族基はシリコーン原子に結合しているものであり、ポリカーボネート樹脂との相溶性を高めたり透明性維持に寄与しており、燃焼時の炭化皮膜形成にも有利であることから難燃効果の発現にも寄与している。芳香族基を有しない場合は成形品の透明性が得られにくく、高度な難燃性を得ることも困難となる傾向がある。
【0058】
本発明のB−2成分として使用されるシリコーン化合物は好ましくはSi−H基を含有するシリコーン化合物である。特に、分子中にSi−H基および芳香族基を含有するシリコーン化合物であって、
(1)Si−H基が含まれる量(Si−H量)が0.1〜1.2mol/100g
(2)下記式(5)で示される芳香族基が含まれる割合(芳香族基量)が10〜70重量%、かつ
【化2】

(式(5)中、Xはそれぞれ独立にOH基、ヘテロ原子含有官能基を有しても良い炭素数1〜20の炭化水素基を示す。nは0〜5の整数を表わす。さらに式(5)中においてnが2以上の場合はそれぞれ互いに異なる種類のXを取ることができる。)
(3)平均重合度が3〜150
であるシリコーン化合物の中から選択される少なくとも一種以上のシリコーン化合物である。
【0059】
さらに好ましくは、Si−H基含有単位として、下記式(6)および(7)で示される構成単位のうち、少なくとも一種以上の式で示される構成単位を含むシリコーン化合物の中から選択される少なくとも一種以上のシリコーン化合物である。
【0060】
【化3】

【化4】

(式(6)および式(7)中、Z〜Zはそれぞれ独立に水素原子、ヘテロ原子含有官能基を有しても良い炭素数1〜20の炭化水素基、または下記式(8)で示される化合物を示す。α1〜α3はそれぞれ独立に0または1を表わす。m1は0もしくは1以上の整数を表わす。さらに式(8)中においてm1が2以上の場合の繰返し単位はそれぞれ互いに異なる複数の繰返し単位を取ることができる。)
【0061】
【化5】

(式(8)中、Z〜Zはそれぞれ独立に水素原子、ヘテロ原子含有官能基を有しても良い炭素数1〜20の炭化水素基を示す。α4〜α8はそれぞれ独立に0または1を表わす。m2は0もしくは1以上の整数を表わす。さらに式(8)中においてm2が2以上の場合の繰返し単位はそれぞれ互いに異なる複数の繰返し単位を取ることができる。)
【0062】
より好ましくは、Mを1官能性シロキサン単位、Dを2官能性シロキサン単位、Tを3官能性シロキサン単位とするとき、MD単位またはMDT単位からなるシリコーン化合物である。
【0063】
上記式(6)、(7)および(8)で示される構成単位のZ〜Z、および式(5)のXにおけるヘテロ原子含有官能基を有しても良い炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基およびアラルキル基を挙げることができ、さらにこれらの基はエポキシ基、カルボキシル基、無水カルボン酸基、アミノ基、およびメルカプト基などの各種官能基を含むものであってもよい。さらに好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基またはアリール基であり、特にはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、またはフェニル基が好ましい。
【0064】
前記式(6)および(7)で示される構成単位のうち、少なくとも一種以上の式で示される構成単位を含むシリコーン化合物において、複数のシロキサン結合の繰返し単位を有する場合は、それらはランダム共重合、ブロック共重合、テーパード共重合のいずれの形態を取ることも可能である。
【0065】
本発明においては、B−2成分で好ましいSi−H基を含有するシリコーン化合物については、シリコーン化合物中のSi−H量を0.1〜1.2mol/100gの範囲とすることが好ましい。Si−H量が0.1〜1.2mol/100gの範囲にあることで、燃焼時にシリコーンのストラクチャーの形成が容易となる。さらに好ましくはSi−H量が0.1〜1.0mol/100gの範囲、最も好ましくは0.2〜0.6mol/100gの範囲にあるシリコーン化合物である。Si−H量が少ないとシリコーンのストラクチャー形成が困難となり、Si−H量が多いと組成物の熱安定性が低下する。なお、ここでシリコーンのストラクチャーとは、シリコーン化合物相互の反応、または樹脂とシリコーンとの反応により生成する網状構造をさす。
【0066】
また、ここで言うSi−H基量とは、シリコーン化合物100gあたりに含まれるSi−H構造のモル数を言うが、これはアルカリ分解法により、シリコーン化合物の単位重量当たり発生した水素ガスの体積を測定することにより求めることができる。例えば、25℃においてシリコーン化合物1g当たり122mlの水素ガスが発生した場合、下記計算式により、Si−H量は0.5mol/100gとなる。
122×273/(273+25)÷22400×100≒0.5
【0067】
一方、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)にシリコーン化合物を配合した樹脂組成物において、成形品の白濁、あるいは湿熱処理による透明性の低下を抑えるためには、前述したとおり、シリコーン化合物の分散状態が重要である。シリコーン化合物が偏在する場合には、樹脂組成物自体が白濁し、さらには成形品表面で剥離などが生じたり、あるいは湿熱処理時にシリコーン化合物が移行して偏在して透明性が低下するなど、透明性の良好な成形品を得ることが困難となるためである。かかる分散状態を決定する重要な因子としてシリコーン化合物中の芳香族基量、平均重合度が挙げられる。殊に透明性の樹脂組成物において平均重合度は重要である。
【0068】
かかる観点より、本発明で使用するシリコーン化合物としては、シリコーン化合物中の芳香族基量は10〜70重量%であることが好ましい。さらに好ましくは芳香族基量が15〜60重量%の範囲、最も好ましくは25〜55重量%の範囲にあるシリコーン化合物である。シリコーン化合物中の芳香族基量が10重量%より少ないとシリコーン化合物が偏在して分散不良となり、透明性が良好な成形品を得ることが困難となる場合がある。芳香族基量が70重量%より多いとシリコーン化合物自体の分子の剛直性が高くなるためやはり偏在して分散不良となり、透明性が良好な成形品を得ることが困難となる場合がある。
【0069】
なお、ここで芳香族基量とは、シリコーン化合物において、前述した式(5)で示される芳香族基が含まれる割合のことを言い、下記計算式によって求めることができる。
芳香族基量=〔A/M〕×100(重量%)
ここで、上記式におけるA、Mはそれぞれ以下の数値を表す。
A=シリコーン化合物1分子中に含まれる、全ての式(5)で示される芳香族基部分の合計分子量
M=シリコーン化合物の分子量
【0070】
さらに本発明のB−2成分として使用されるシリコーン化合物は、25℃における屈折率が1.40〜1.60の範囲にあることが望ましい。さらに好ましくは屈折率が1.42〜1.59の範囲であり、最も好ましくは、1.44〜1.59の範囲にあるシリコーン化合物である。屈折率が上記範囲内にある場合、芳香族ポリカーボネート中にシリコーン化合物が微分散することで、より白濁の少ない染色性の良好な樹脂組成物が提供される。
【0071】
さらに本発明のB−2成分として使用されるシリコーン化合物は、105℃/3時間における加熱減量法による揮発量が18%以下であることが好適である。さらに好ましくは揮発量が10%以下であるシリコーン化合物である。揮発量が18%より大きいと本発明の樹脂組成物を押出してペレット化を行う際に、樹脂からの揮発物の量が多くなる問題が生じ、さらに、成形品中に生じる気泡が多くなりやすいという問題がある。
【0072】
B−2成分として使用されるシリコーン化合物としては、上記の条件を満たすものであれば直鎖状であっても分岐構造を持つものであっても良く、Si−H基を分子構造中の側鎖、末端、分岐点の何れか、または複数の部位に有する各種の化合物を用いることが可能である。
【0073】
一般的に分子中にSi−H基を含有するシリコーン化合物の構造は、以下に示す4種類のシロキサン単位を任意に組み合わせることによって構成される。
M単位:(CHSiO1/2、H(CHSiO1/2、H(CH)SiO1/2、(CH(CH=CH)SiO1/2、(CH(C)SiO1/2、(CH)(C)(CH=CH)SiO1/2等の1官能性シロキサン単位
D単位:(CHSiO、H(CH)SiO、HSiO、H(C)SiO、(CH)(CH=CH)SiO、(CSiO等の2官能性シロキサン単位
T単位:(CH)SiO3/2、(C)SiO3/2、HSiO3/2、(CH=CH)SiO3/2、(C)SiO3/2等の3官能性シロキサン単位
Q単位:SiOで示される4官能性シロキサン単位
【0074】
本発明において使用されるSi−H基を含有するシリコーン化合物の構造は、具体的には、示性式としてD、T、M、M、M、M、M、M、M、D、D、Dが挙げられる。この中で好ましいシリコーン化合物の構造は、M、M、M、Mであり、さらに好ましい構造は、MまたはMである。
(上記示性式中の係数m、n、p、qは各シロキサン単位の重合度を表す整数である。またm、n、p、qのいずれかが2以上の数値である場合、その係数の付いたシロキサン単位は、結合する水素原子やヘテロ原子含有官能基を有しても良い炭素数1〜20の炭化水素基が異なる2種以上のシロキサン単位とすることができる。)
【0075】
ここで、各示性式における係数の合計がシリコーン化合物の平均重合度となる。本発明においては、この平均重合度を3〜150の範囲とすることが好ましく、より好ましくは4〜80の範囲、さらに好ましくは5〜60の範囲である。重合度が3より小さい場合、シリコーン化合物自体の揮発性が高くなるため、このシリコーン化合物を配合した樹脂組成物の加工時において樹脂からの揮発分が多くなりやすいという問題がある。重合度が150より大きい場合、このシリコーン化合物を配合した樹脂組成物における難燃性や透明性が不十分となりやすい。
なお、上記のシリコーン化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0076】
このようなSi−H結合を有するシリコーン化合物は、それ自体従来公知の方法によって製造することができる。例えば、目的とするシリコーン化合物の構造に従い、相当するオルガノクロロシラン類を共加水分解し、副生する塩酸や低沸分を除去することによって目的物を得ることができる。また、分子中にSi−H結合や式(5)で示される芳香族基、その他のヘテロ原子含有官能基を有しても良い炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリコーンオイル、環状シロキサンやアルコキシシラン類を出発原料とする場合には、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸等の酸触媒を使用し、場合によって加水分解のための水を添加して、重合反応を進行させた後、使用した酸触媒や低沸分を同様に除去することによって、目的とするシリコーン化合物を得ることができる。
【0077】
さらに、Si−H基を含有するシリコーン化合物が下記の構造式で示されるシロキサン単位 M、M、D、D、Dφ2、T、Tφ(ただし、M:(CHSiO1/2:H(CHSiO1/2D:(CHSiOD:H(CH)SiODφ2:(CSiT:(CH)SiO3/2φ:(C)SiO3/2)を有しており、1分子あたりに有する各シロキサン単位の平均数をそれぞれm、m、d、d、dp2、t、tとした場合、下記関係式のすべてを満足することが好ましい。
2 ≦ m+m ≦ 40
0.35 ≦ d+d+dp2 ≦ 148
0 ≦ t+t ≦ 38
0.35 ≦ m+d ≦ 110
【0078】
この範囲を外れると本発明の樹脂組成物において良好な難燃性と優れた透明性を同時に達成することが困難となり、場合によってはSi−H基を含有するシリコーン化合物の製造が困難となる。
【0079】
本発明のB−2成分として使用されるシリコーン化合物の含有量は芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、0.10〜2.0重量部であり、好ましくは0.15〜1.8重量部、さらに好ましくは0.2〜1.5重量部、最も好ましくは0.3〜1.0重量部である。含有量が2.0重量部より多いと樹脂の耐熱性が低下したり、押出加工時にガスが発生しやすくなり、0.10重量部より少ないと難燃性が発揮され難くなる。
【0080】
(C成分;蓄光材)
本発明において、C成分として蓄光材が使用される。本発明に使用される蓄光材(C成分)は合成樹脂の蓄光材として通常用いられる蓄光材であって、CaS:Bi、CaSrS:Bi、ZnCdS:Cuなどの硫化物系蓄光材、ZnS:Cuなどの硫化亜鉛系蓄光材、MaAlbOcで表される化合物で、Mはカルシウム、ストロンチウムおよびバリウムから選ばれる少なくとも1種以上の金属元素からなり、該化合物に賦活剤としてユウロピウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテニウム、マンガン、スズ、ビスマスから選ばれる少なくとも1つ以上の元素からなり、上記Mで表される金属元素に対して通常、10モル%以下で含有するアルミン酸系化合物などが挙げられる。好ましくは、加水分解性、残光特性の観点から、アルミン酸系化合物であり、さらに好ましくは、金属元素としてストロンチウム、賦活剤としてユウロピウム、ジスプロシウムを用いたアルミン酸ストロンチウム系化合物である。
【0081】
さらに、蓄光材は1〜30μmのD50粒径を有することを要件とする。さらに好ましくは、2〜20μmの範囲である。D50粒径とは、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる径を示す。1μm未満のものは製造上困難であるため、実用的でなく入手が困難なため好ましくない。一方30μmを超えるものは光学特性や外観を損なうため、好ましくない。さらに、平均粒子径、粒径分布および種類の異なる2種類以上の蓄光材を併用してもよく、粒径分布が一様ではなく、2つ以上の粒径分布を有するものなどを単独または併用して使用することもできる。
【0082】
蓄光材の配合量としては、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、0.50〜10重量部であり、好ましくは0.6〜5重量部であり、より好ましくは0.7〜3重量部である。配合量が0.50重量部未満であると、発光時間が極端に短くなるため好ましくない。一方、10重量部を越えると、光学特性を損なう上、押し出し性が極端に悪化することから好ましくない。
【0083】
蓄光材の吸収波長としては、吸収極大値が300nm〜500nmの範囲にある事が望ましい。これは、人間の目が捉え易い光の波長は550nm近傍であり、蓄光材の特性として、吸収極大よりも、放射極大は必ず長波長側にシフトする関係上、この範囲を外れると、放射極大が極端に視認しづらい状態となるためである。また、蓄光材(C成分)は、発光する光の波長領域において、長波長側の一端(発光極大値)が430nm〜680nmとなることが好ましい。
【0084】
(D成分;光拡散剤)
本発明において、D成分として光拡散剤が使用される。本発明に使用される光拡散剤(D成分)は合成樹脂の光拡散剤として通常用いられる光拡散剤であって、微粒子状であり、例えばポリスチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン樹脂等からの有機微粒子が挙げられる。
【0085】
かかる有機微粒子としては、架橋した有機微粒子が好ましく、その製造過程において少なくとも部分的に架橋されており、熱可塑性樹脂の加工過程において実用的に変形せず、微粒子状態を維持しているものである。即ち、熱可塑性樹脂の成形温度(例えばポリカーボネート樹脂の成形温度は約350℃)まで加熱しても熱可塑性樹脂中に溶融しない微粒子がより好ましく、具体的には架橋したシリコーン樹脂の有機微粒子である。特に好適な具体例として、架橋シロキサン結合を有するシリコーン樹脂[例えば信越化学工業(株)製KMP−701、KMP−702、X52−1621や東芝シリコーン(株)製トスパール120]が挙げられる。
【0086】
上記微粒子状の光拡散剤の平均粒径は1〜20μmであり、好ましくは1.1〜15μmであり、より好ましくは1.2〜11μmのものである。平均粒径が1.0μm未満であると、十分な光拡散性が得られず面発光性が劣り、20μmを越えると十分な光拡散性が得られず面発光性が劣り、十分な光拡散効果を得るためには配合量が多くなり、光透過性が損なわれ、また輝度ムラが大きくなる、さらには蓄光材の発光輝度を損なう欠点がある。光拡散剤の平均粒径は、コールカウンター法で測定した重量平均粒径である。その測定器としては株式会社日科機の粒子数・粒度分布アナライザーMODEL Zm等を使用することができる。
【0087】
芳香族ポリカーボネート樹脂と光拡散剤との配合割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、0.05〜5.0重量部であり、0.1〜4.5重量部が好ましく、0.2〜4.0重量部がより好ましい。光拡散剤の配合量が0.05重量部より少ないと光拡散性が不足し特徴とする顕著な輝度向上及び発光持続性能が得られない。一方、光拡散剤の配合量が5重量部を越えると押し出し性の低下を招き、目標とする性能が得られない可能性がある。
【0088】
<その他の成分>
一方、本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なうことがない限り、他の樹脂や充填剤を配合しても差し支えないが、他の樹脂や充填剤の多くは難燃性や発光性に支障を来すので、その種類や量の選択は、その点を考慮すべきである。
【0089】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なうことがない限り、成形品の機械的物性、化学的性質または電気的性質の改良のために、A成分以外の他の熱可塑性樹脂を配合することができる。この他の熱可塑性樹脂の配合量は、その種類および目的によって変わるが、通常、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部当たり、1〜30重量部が好ましく、より好ましくは2〜20重量部が適当である。
【0090】
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂などに代表される汎用プラスチックス、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂(非晶性ポリアリレート、液晶性ポリアリレート)等に代表されるエンジニアリングプラスチックス、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイドなどのいわゆるスーパーエンジニアリングプラスチックスと呼ばれるものを挙げることができる。さらにオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーも使用することができる。
【0091】
本発明の樹脂組成物には、成形品に種々の機能の付与や特性改善のために、それ自体知られた添加物を少割合配合することができる。これら添加物は本発明の目的を損なわない限り、通常の配合量である。
【0092】
かかる添加剤としては、ドリップ防止剤(フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーなど)、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、滑剤、摺動剤(PTFE粒子など)、着色剤(カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、染料)、蛍光増白剤、蛍光染料、帯電防止剤、流動改質剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛など)、グラフトゴムに代表される衝撃改質剤、赤外線吸収剤またはフォトクロミック剤が挙げられる。
【0093】
本発明の樹脂組成物の熱安定性、酸化防止性、光安定性(紫外線安定性)および離型性の改良のために、芳香族ポリカーボネート樹脂において、これらの改良に使用されている添加剤が有利に使用される。以下これら添加剤について具体的に説明する。
【0094】
本発明の樹脂組成物は、熱安定剤としてリン含有安定剤を配合することができる。かかるリン含有安定剤としては、ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物、およびホスフェート化合物のいずれも使用可能である。
【0095】
ホスファイト化合物としては、さまざまなものを用いることができる。具体的には例えば下記一般式(9)で表わされるホスファイト化合物、下記一般式(10)で表わされるホスファイト化合物、および下記一般式(11)で表わされるホスファイト化合物を挙げることができる。
【0096】
【化6】

[式中Rは、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基ないしアルカリール基、炭素数7〜30のアラルキル基、またはこれらのハロ、アルキルチオ(アルキル基は炭素数1〜30)またはヒドロキシ置換基を示し、3個のRは互いに同一または互いに異なるのいずれの場合も選択でき、また2価フェノール類から誘導されることにより環状構造も選択できる。]
【0097】
【化7】

[式中R、R10はそれぞれ水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基ないしアルキルアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基、炭素数4〜20のシクロアルキル基、炭素数15〜25の2−(4−オキシフェニル)プロピル置換アリール基を示す。なお、シクロアルキル基およびアリール基は、アルキル基で置換されていないもの、またはアルキル基で置換されているもののいずれも選択できる。]
【0098】
【化8】

[式中R11、R12は炭素数12〜15のアルキル基である。なお、R11およびR12は互いに同一または互いに異なるのいずれの場合も選択できる。]で表わされるホスファイト化合物を挙げることができる。
【0099】
ホスホナイト化合物としては下記一般式(12)で表わされるホスホナイト化合物、および下記一般式(13)で表わされるホスホナイト化合物を挙げることができる。
【0100】
【化9】

【化10】

[式中、Ar、Arは炭素数6〜20のアリール基ないしアルキルアリール基、または炭素数15〜25の2−(4−オキシフェニル)プロピル置換アリール基を示し、4つのArは互いに同一、または互いに異なるいずれも選択できる。または2つのArは互いに同一、または互いに異なるいずれも選択できる。]
【0101】
上記一般式(9)で表されるホスファイト化合物の好ましい具体例としては、ジフェニルイソオクチルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイトが挙げられる。
【0102】
上記一般式(10)で表されるホスファイト化合物の好ましい具体例としては、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられ、好ましくはジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトを挙げることができる。かかるホスファイト化合物は1種、または2種以上を併用することができる。
【0103】
上記一般式(11)で表されるホスファイト化合物の好ましい具体例としては、4,4’−イソプロピリデンジフェノールテトラトリデシルホスファイトを挙げることができる。
【0104】
上記一般式(12)で表されるホスホナイト化合物の好ましい具体例としては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトがより好ましい。このテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトは、2種以上の混合物が好ましく、具体的にはテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト(E2−1成分)、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト(E2−2成分)および、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト(E2−3成分)の1種もしくは2種以上を併用して使用可能であるが、好ましくはかかる3種の混合物である。また、3種の混合物の場合その混合比は、E2−1成分、E2−2成分およびE2−3成分を重量比で100:37〜64:4〜14の範囲が好ましく、100:40〜60:5〜11の範囲がより好ましい。
【0105】
上記一般式(13)で表されるホスホナイト化合物の好ましい具体例としては、ビス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイトビス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられ、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。このビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトは、2種以上の混合物が好ましく、具体的にはビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、およびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイトの1種もしくは2種を併用して使用可能であるが、好ましくはかかる2種の混合物である。また、2種の混合物の場合その混合比は、重量比で5:1〜4の範囲が好ましく、5:2〜3の範囲がより好ましい。
【0106】
一方、ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリメチルホスフェートである。
【0107】
上記のリン含有熱安定剤の中で、さらに好ましい化合物としては、以下の一般式(14)および(15)で表される化合物を挙げることができる。
【0108】
【化11】

(式(14)中、R13およびR14は、それぞれ独立して炭素原子数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示す。)
【0109】
【化12】

(式(15)中、R15、R16、R17、R18、R21、R22、およびR23はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示し、R19は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、およびR20は水素原子またはメチル基を示す。)
【0110】
式(14)中、好ましくはR13およびR14は炭素原子数1〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル基である。式(14)で表される化合物としては具体的に、トリス(ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどが挙げられ、特にトリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。
【0111】
式(15)で表される化合物としては具体的に、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)と2,6−ジ−tert−ブチルフェノールから誘導されるホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)とフェノールから誘導されるホスファイト、が挙げられ、特に2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)とフェノールから誘導されるホスファイトが好ましい。
【0112】
なお、式(15)のリン化合物は公知の方法で製造できる。例えば下記一般式(16)に示されるビスフェノール化合物と三塩化リンとを反応させて相当する塩化リン酸を得て、その後それと下記一般式(17)で示されるフェノールとを反応させる方法などがある。
【0113】
【化13】

(式(16)中、R24、R25、R26、およびR27はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示し、R28は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、およびR29は水素原子またはメチル基を示す。)
【0114】
【化14】

(式(17)中、R30、R31、およびR32はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示す。)
【0115】
上記一般式(16)の化合物の具体例としては、2,2’−メチレンビスフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−エチリデンビスフェノール、2,2’−エチリデンビス(4−メチルフェノール)、2,2’−イソプロピリデンビスフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチルフェニルメタン、2,2’−メチレンビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、および2,2−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)などが挙げられ、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、および2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)が好ましい。
【0116】
一方、一般式(17)の化合物の具体例としては、フェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、および2,6−ジ−tert−ブチル−4−s−ブチルフェノールなどが挙げられ、アルキル置換基を2つ以上有する化合物が好ましい。
【0117】
本発明の樹脂組成物に配合することができる酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤を挙げることができる。フェノール系酸化防止剤により熱暴露時の変色を抑制できると共に、難燃性の向上に対してもある程度の効果を発揮する。かかるフェノール系酸化防止剤としては種々のものを使用することができる。
【0118】
かかるフェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えばビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどを挙げられ、好ましく使用できる。
【0119】
より好ましくは、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンであり、さらにn−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネートが好ましい。
【0120】
また、酸化防止剤としてイオウ含有酸化防止剤を使用することもできる。特に樹脂組成物が回転成形や圧縮成形に使用される場合には好適である。かかるイオウ含有酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(β−ラウリルチオプロピオネート)エステル、ビス[2−メチル−4−(3−ラウリルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1,1’−チオビス(2−ナフトール)などを挙げることができる。より好ましくは、ペンタエリスリトールテトラ(β−ラウリルチオプロピオネート)エステルを挙げることができる。
【0121】
上記に挙げたリン含有熱安定剤、フェノール系酸化防止剤、およびイオウ含有酸化防止剤はそれぞれ単独または2種以上併用することができる。より好ましくはリン含有安定剤であり、特にリン含有熱安定剤として上記一般式(14)の化合物を含んでいることが好ましい。
【0122】
これらの安定剤の組成物中の割合としては、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部当たり、リン含有安定剤、フェノール系酸化防止剤、またはイオウ含有酸化防止剤はそれぞれ0.0001〜1重量部であることが好ましい。より好ましくは0.0005〜0.5重量部であり、さらに好ましくは0.001〜0.2重量部である。
【0123】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて離型剤を配合することができる。本発明においてはB成分を含有することにより難燃性を有するため、通常難燃性に対して悪影響を及ぼしやすい離型剤を配合した場合であっても、良好な難燃性を達成することができる。かかる離型剤としてはそれ自体公知のものが使用できる。例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックスまたは1−アルケン重合体が挙げられる。これらは酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、シリコーン化合物(本発明のB成分以外のもの。例えば直鎖状または環状のポリジメチルシロキサンオイルやポリメチルフェニルシリコーンオイルなどが挙げられる。これらは酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。これらの中でも飽和脂肪酸エステル類、直鎖状または環状のポリジメチルシロキサンオイルやポリメチルフェニルシリコーンオイルなど、およびフッ素オイルを挙げることができる。好ましい離型剤としては飽和脂肪酸エステルが挙げられ、例えばステアリン酸モノグリセライドなどのモノグリセライド類、デカグリセリンデカステアレートおよびデカグリセリンテトラステアレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル類、ステアリン酸ステアレートなどの低級脂肪酸エステル類、セバシン酸ベヘネートなどの高級脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトールテトラステアレートなどのエリスリトールエステル類が使用される。かかる離型剤の含有量は芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して0.01〜0.3重量部が好ましい。
【0124】
本発明の樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有させる事が望まれる場合がある。紫外線吸収剤としては、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタンなどに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0125】
また紫外線吸収剤としては例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニルベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物に代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0126】
さらに紫外線吸収剤としては例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシ−フェノール、2−(4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシ−フェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を挙げることができる。
【0127】
本発明の樹脂組成物には、光安定剤を配合することもできる。かかる光安定剤としては、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2n−ブチルマロネート、1,2,3,4−ブタンカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンジカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、ポリ{[6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンと2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−クロロ−1,3,5−トリアジンとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、ポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンに代表されるヒンダードアミンが挙げられる。
【0128】
紫外線吸収剤および光安定剤の含有量は、それぞれ芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部当たり0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.02〜1重量部である。
【0129】
また、本発明の樹脂組成物には紫外線吸収剤などに基づく黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としては通常ポリカーボネート樹脂に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。具体的なブルーイング剤としては、例えば一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725;商標名 バイエル社製「マクロレックスバイオレットB」、三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーG」、住友化学工業(株)製「スミプラストバイオレットB」]、一般名Solvent Violet31[CA.No68210;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンバイオレットD」]、一般名Solvent Violet33[CA.No60725;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーJ」]、一般名Solvent Blue94[CA.No61500;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーN」]、一般名Solvent Violet36[CA.No68210;商標名 バイエル社製「マクロレックスバイオレット3R」]、一般名Solvent Blue97[商標名 バイエル社製「マクロレックスブルーRR」]および一般名Solvent Blue45[CA.No61110;商標名 サンド社製「テラゾールブルーRLS」]等が挙げられ、特に、マクロレックスブルーRR、マクロレックスバイオレットBやテラゾールブルーRLSが好ましい。ブルーイング剤の含有量は芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部当たり0.000005〜0.0010重量部が好ましく、より好ましくは0.00001〜0.0001重量部である。
【0130】
本発明の樹脂組成物はドリップ防止性に優れるが、かかる性能をさらに補強するため通常のドリップ防止剤を併用することができる。しかしながら本発明の樹脂組成物において、かかる透明性を損なわないためその配合量はA成分100重量部に対し0.2重量部以下が適切であり、0.1重量部以下が好ましく、0.08重量部以下がより好ましく、0.05重量部以下がさらに好ましい。かかるドリップ防止剤としてはフィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーを挙げることができる。特にポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)が好ましい。ここでいう透明性を損なわないとは、例えば、2mm厚みのプレートのHazeが5%を超えない量のPTFEを使用するということである。フィブリル形成能を有するPTFEの分子量は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万〜1,000万、より好ましくは200万〜900万である。かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、さらに良好な難燃性および透明性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。混合形態のPTFEの市販品としては、三菱レイヨン(株)の「メタブレン A3000」(商品名)、「メタブレン A3700」(商品名)、「メタブレン A3750」(商品名)、およびGEスペシャリティーケミカルズ社製「BLENDEX B449」(商品名)などを挙げることができる。
【0131】
<樹脂組成物からなる成形品の製造について>
本発明の樹脂組成物からなる成形品を製造するには、任意の方法が採用される。例えばA〜D成分および任意に他の成分をそれぞれV型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、必要に応じて押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行い、その後射出成形や押出成形等により成形品を製造することができる。別法として、A〜D成分および任意に他の成分をそれぞれ独立にベント式二軸ルーダーに代表される溶融混練機に供給する方法、A成分および他の成分の一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法、B成分を水または有機溶剤で希釈混合した後、溶融混練機に供給、またはかかる希釈混合物を他の成分と予備混合した後、溶融混練機に供給する方法なども挙げられる。なお、配合する成分に液状のものがある場合には、溶融混練機への供給にいわゆる液注装置、または液添装置を使用することができる。
【0132】
本発明においては、該樹脂組成物を用いて成形した樹脂板(シート)として好適に使用される。樹脂板の厚みは、1.0〜5.0mmが好ましく、1.2〜4.0mmがより好ましく、1.5〜3.5mmがさらに好ましい。厚みが上記範囲であると優れた難燃性を有する等本発明の目的を達成し易い。また、樹脂板は樹脂板から発光される光強度がJIS Z9107試験において、60分後に1mcd/m以上を有することが好ましい。さらに、UL−94試験でV−0またはV−1の難燃性を有することが好ましい。
【0133】
本発明の樹脂板は、板正面の光強度に対して、50%の光強度を持つ角度(拡散度)が、10〜60度の範囲が好ましく、20〜57度の範囲がより好ましく、30〜54度の範囲がさらに好ましい。かかる範囲であると十分に光拡散性を有する樹脂拡散板となる。
【0134】
また、樹脂板の表面は賦型することができ、その方法としては、例えば凸形状やV字形状を有する賦型ロールを用いて、溶融押し出ししたシートを製造する方法が挙げられる。賦型の形状については特に制限するものではない。
【0135】
さらに、成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。表面処理としては、加飾塗装、ハードコート、撥水・撥油コート、親水コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、電磁波吸収コート、発熱コート、帯電防止コート、制電コート、導電コート、並びにメタライジング(メッキ、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、溶射など)などの各種の表面処理を行うことができる。殊に樹脂板は必要に応じて、片面または/および両面に、例えばUVカット機能、帯電防止性能、IRカット性能、電磁波カット性能を有する層(透明導電層)を積層させた積層体であってもよい。積層体を得る方法としては、共押出による方法あるいは溶融押出した後に、ラミネートフィルムや転写箔を熱圧着させる方法がある。
これらの樹脂板は、照明用カバーまたは透過型ティスプレイ用カバー用途等に好適に使用される。
【0136】
本発明者らが現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0137】
以下に実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。尚、評価としては以下の項目について実施した。
【0138】
(i)外観
実施例の各組成から得られた樹脂板において50cmの距離より目視による評価を行った。外観が良好なものを○、押出成形時におけるガス等の発生は見受けられないが表面に微小な凹凸が生じているものを△、押出成形時におけるガスにより表面性が悪化したものを×とした。
【0139】
(ii)難燃性
実施例で得られた樹脂板を用いて、UL−94規格の垂直燃焼試験を行いその等級を評価した。なお、判定がV−0、V−1、V−2のいずれの基準も満たすことが出来なかった場合「notV」と示すこととする。
【0140】
(iii)拡散度
実施例の各組成から得られた樹脂板を日本電色工業(株)製の分散度測定計を使用して測定した。測定方法を図1に示した。尚、拡散度とは図1において光線を上方から垂直に試験片面に当てたときγ=0度のときの透過光量を100とした場合、その透過光量が50になるときのγの角度をいう。
【0141】
(iv)光放射時間
実施例の各組成から得られた樹脂板から縦100mm×横100mmのプレートを切り出し、JIS Z9107規格にてその放射光強度を計測、1mcd/m未満になるまでの時間を計測した。この際、放射時間が60分以上である時を○、60分未満の時を×とした。
【0142】
(v)光放射強度
実施例の各組成から得られた樹脂板から縦100mm×横100mmのプレートを切り出し、JIS Z9107規格にてその放射光強度を計測、計測開始から1分後の放射強度の割合を数値で比較した。
【0143】
(vi)分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂中の分岐率
H−NMR(JEOL製JNM−AL400)を用いて芳香族ポリカーボネート樹脂中の分岐率(分岐剤含有率)を測定した。
【0144】
(vii)芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量
芳香族ポリカーボネート樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解し、得られた溶液を20℃でオストワルド粘度計を用いて比粘度を求め、下記式より粘度平均分子量を求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0145】
[実施例1]
分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(分岐率0.9mol%、粘度平均分子量25,000)(A成分)100重量部、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(B−1成分)0.05重量部、Si−H基および芳香族基を含有するシリコーン化合物(B−2成分)0.5重量部、D50粒径が29μmである緑色蓄光材(C成分)(根本特殊化学製 G−300M SrAl:Eu,Dy)1.0重量部、平均粒径が1.9μmである光拡散剤(D成分)(架橋シリコーン樹脂;信越化学工業製 KMP−702)0.5重量部をベント付きTダイ押出機により、押出機温度290〜330℃、ダイス温度290〜330℃で溶融押出しし、幅約1100mm、厚さ3mmの樹脂板(A)を得た。この樹脂板の評価結果を表1〜8に示した。
【0146】
[実施例2]
実施例1において、A成分として分岐率0.6mol%の分岐芳香族ポリカーボネート樹脂を使用し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表1に示した。
【0147】
[実施例3]
実施例1において、A成分として分岐率1.2mol%の分岐芳香族ポリカーボネート樹脂を使用し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表1に示した。
【0148】
[比較例1]
実施例1において、A成分として分岐率0.4mol%の分岐芳香族ポリカーボネート樹脂を使用し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表1に示した。
【0149】
[実施例4]
実施例1において、B−1成分を0.1重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表2に示した。
【0150】
[実施例5]
実施例1において、B−1成分を1.0重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表2に示した。
【0151】
[比較例2]
実施例1において、B−1成分を0.004重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表2に示した。
【0152】
[比較例3]
実施例1において、B−1成分を1.2重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表2に示した。
【0153】
[実施例6]
実施例1において、B−2成分を1.0重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表3に示した。
【0154】
[比較例4]
実施例1において、B−2成分を0.08重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表3に示した。
【0155】
[比較例5]
実施例1において、B−2成分を3.0重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表3に示した。
【0156】
[実施例7]
実施例1において、C成分を0.50重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表4および表8に示した。
【0157】
[実施例8]
実施例1において、C成分を5.0重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表4に示した。
【0158】
[実施例9]
実施例1において、C成分を10.0重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表4に示した。
【0159】
[比較例6]
実施例1において、C成分を0.30重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表4に示した。
【0160】
[比較例7]
実施例1において、C成分を12.0重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表4に示した。
【0161】
[実施例10]
実施例1において、C成分として緑色蓄光材(根本特殊化学製 G−300F SrAl:Eu,Dy、D50粒径17μm)を使用し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表5に示した。
【0162】
[実施例11]
実施例1において、C成分として緑色蓄光材(根本特殊化学製 G−300FFS SrAl:Eu,Dy、D50粒径3μm)を使用し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表5に示した。
【0163】
[実施例12]
実施例1において、D成分を0.10重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表6に示した。
【0164】
[実施例13]
実施例1において、D成分を2.0重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表6に示した。
【0165】
[実施例14]
実施例1において、D成分を5.0重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表6に示した。
【0166】
[比較例8]
実施例1において、D成分を0.04重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表6に示した。
【0167】
[比較例9]
実施例1において、D成分を6.0重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表6に示した。
【0168】
[実施例15]
実施例1において、D成分として、平均粒径20μmの光拡散剤(架橋アクリル系拡散剤 積水化成品工業製 MBX−20)を2.0重量部添加し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表7に示した。
【0169】
[実施例16]
実施例1において、D成分として、平均粒径5μmの光拡散剤(架橋シリコーン樹脂;信越化学工業製 X52−1621)を1.0重量部添加し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表7に示した。
【0170】
[実施例17]
実施例1において、C成分を2.0重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表8に示した。
【0171】
[比較例10]
実施例1において、D成分を0重量部に変更し、他は全て実施例1と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表8に示した。
【0172】
[比較例11]
実施例7において、D成分を0重量部に変更し、他は全て実施例7と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表8に示した。
【0173】
[比較例12]
実施例17において、D成分を0重量部に変更し、他は全て実施例17と同様の条件にて樹脂板を得た。この樹脂板の評価結果を表8に示した。
【0174】
なお、難燃芳香族ポリカーボネート樹脂板(A)の(A成分)、(B−1成分)、(B−2成分)は下記のものを使用した。
【0175】
(A成分)
(1)分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(分岐率0.9mol%、分子量25,000)の製造方法
温度計、攪拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水2340部、25%水酸化ナトリウム水溶液947部、ハイドロサルファイト0.7部を仕込み、攪拌下にビスフェノールA710部を溶解した(ビスフェノールA溶液)後、塩化メチレン2299部と48.5%水酸化ナトリウム水溶液112部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液38.1部(1.00mol%)を加えて、15〜25℃でホスゲン354部を約90分かけて吹き込みホスゲン化反応を行った。
ホスゲン化終了後、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液219部と48.5%水酸化ナトリウム水溶液88部を加えて、攪拌を停止し、10分間静置分離後、攪拌を行い乳化させ5分後、ホモミキサー(特殊機化工業(株))で回転数1200rpm、バス回数35回で処理し高乳化ドープを得た。該高乳化ドープを重合槽(攪拌機付き)で、無攪拌条件下、温度35℃で3時間反応し重合を終了した。
反応終了後、塩化メチレン5728部を加えて希釈した後、反応混合液から塩化メチレン相を分離し、分離した塩化メチレン相にイオン交換水5000部を加え攪拌混合した後、攪拌を停止し、水相と有機相を分離した。次に水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになるまで水洗浄を繰返し精製ポリカーボネート樹脂溶液を得た。次に、該精製ポリカーボネート樹脂溶液をイオン交換水100Lを投入した1000Lニーダーで、液温75℃にて塩化メチレンを蒸発させて粉粒体を得た。該粉粒体25部と水75部を攪拌機付熱水処理槽に投入し、水温95℃で30分間攪拌混合した。
次いで、該粉粒体と水の混合物を遠心分離機で分離して、塩化メチレン0.5重量%、水45重量%を含む粉粒体を得た。次に、この粉粒体を140℃にコントロールされているSUS316L製伝導受熱式溝型2軸攪拌連続乾燥機に50kg/hr(ポリカーボネート樹脂換算)で連続供給して、平均乾燥時間3時間の条件で乾燥して、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂粉粒体を得た。このようにして得られた分岐構造を有するポリカーボネート樹脂は粘度平均分子量25000、分岐率0.9mol%であった。
【0176】
(2)分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(分岐率0.6mol%、分子量25,200)の製造方法
ホスゲンを352部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液26.7部(0.70mol%)、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液206部に変更した以外は、上記の製造方法と同様に行い、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂粉粒体を得た。このようにして得られた分岐構造を有するポリカーボネート樹脂は粘度平均分子量25200、分岐率0.6mol%であった。
【0177】
(3)分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(分岐率1.2mol%、分子量20,200)の製造方法
ホスゲンを358部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液53.3部(1.40mol%)、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液276部に変更した以外は、上記の製造方法と同様に行い、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂粉粒体を得た。このようにして得られた分岐構造を有するポリカーボネート樹脂は粘度平均分子量20,200、分岐率1.2mol%であった。
【0178】
(4)分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(分岐率0.4mol%、分子量25,100)の製造方法
ホスゲンを352部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液17.1部(0.45mol%)、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液206部に変更した以外は、上記の製造方法と同様に行い、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂粉粒体を得た。このようにして得られた分岐構造を有するポリカーボネート樹脂は粘度平均分子量25100、分岐率0.4mol%であった。
【0179】
(B−1成分)
パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(大日本インキ(株)製メガファックF−114P)
【0180】
(B−2成分)
Si−H基および芳香族基を含有するシリコーン化合物の製造方法
攪拌機、冷却装置、温度計を取り付けた1Lフラスコに水301.9gとトルエン150gを仕込み、内温5℃まで冷却した。滴下ロートにトリメチルクロロシラン21.7g、メチルジクロロシラン23.0g、ジメチルジクロロシラン12.9およびジフェニルジクロロシラン76.0の混合物を仕込み、フラスコ内へ攪拌しながら2時間かけて滴下した。この間、内温を20℃以下に維持するよう、冷却を続けた。滴下終了後、さらに内温20℃で攪拌を4時間続けて熟成した後、静置して分離した塩酸水層を除去し、10%炭酸ナトリウム水溶液を添加して5分間攪拌後、静置して分離した水層を除去した。その後、さらにイオン交換水で3回洗浄し、トルエン層が中性になったことを確認した。このトルエン溶液を減圧下内温120℃まで加熱してトルエンと低沸点物を除去した後、濾過により不溶物を取り除いてシリコーン化合物を得た。このシリコーン化合物はSi−H基量が0.21mol/100g、芳香族基量が49重量%、平均重合度が8.0であった。
得られたシリコーン化合物の示性式
φ2
各記号は以下のシロキサン単位を表し、各記号の係数(下付文字)は1分子中における各シロキサン単位の数(重合度)を示す。
M :(CHSiO1/2
: H(CH)SiO
D :(CHSiO
φ2 :(CSiO
【0181】
【表1】

【0182】
【表2】

【0183】
【表3】

【0184】
【表4】

【0185】
【表5】

【0186】
【表6】

【0187】
【表7】

【0188】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明の発光難燃光拡散性樹脂組成物は、照明カバーや看板、透過型のディスプレイ等の用途として有用である。
【符号の説明】
【0190】
A 樹脂板
B 光源
γ 拡散度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)粘度平均分子量1.8×10〜3.0×10で、分岐率0.5〜1.5mol%の分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート(A成分)100重量部に対して、(B)難燃剤(B成分)として、有機アルカリ(土類)金属塩(B−1成分)0.005〜1.0重量部および芳香族基を有するシリコーン化合物(B−2成分)0.10〜2.0重量部、(C)D50粒径が1〜30μmである蓄光材(C成分)0.50〜10重量部、ならびに(D)平均粒径が1〜20μmである有機微粒子からなる光拡散剤(D成分)0.05〜5.0重量部を含有する発光難燃光拡散性樹脂組成物。
【請求項2】
蓄光材(C成分)は、発光する光の波長領域において、長波長側の一端が430nm〜680nmとなることを特徴とする請求項1記載の発光難燃光拡散性樹脂組成物。
【請求項3】
光拡散剤(D成分)が、シリコーン系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の発光難燃光拡散性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1記載の樹脂組成物を用いて成形された、厚み1.0〜5.0mmの発光難燃光拡散性樹脂板。
【請求項5】
樹脂板から発光される光強度がJIS Z9107試験において、60分後に1mcd/m以上を有し、且つUL−94試験でV−0またはV−1の難燃性を有する請求項4記載の発光難燃光拡散性樹脂板。
【請求項6】
樹脂板正面の光強度に対して、50%の光強度を持つ角度(拡散度)が、10〜60度の範囲にあることを特徴とする請求項4記載の発光難燃光拡散性樹脂板。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の発光難燃光拡散性樹脂板を用いてなる照明用カバー。
【請求項8】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の発光難燃光拡散性樹脂板を用いてなる透過型ディスプレイ用カバー。

【図1】
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【公開番号】特開2012−214660(P2012−214660A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81896(P2011−81896)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】