説明

発声改善剤

【課題】発声機能の維持または向上を促進することができる手段を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、発声改善剤であって、アスタキサンチンと、トコトリエノールと、ビタミンB12とを含有してなることを特徴とする発声改善剤である。本発明の発声改善剤を服用することにより、発声可能な音域の維持または拡大を促進することができる。また、発声持続時間(1回の吸気で声を発することのできる時間)の維持または拡大についても、促進することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発声機能を維持または向上するための発声改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
発声機能が様々な要因によって変化することが公知となっている。例えば、加齢、喫煙、疲労等の要因によって、発声可能な音域が狭小化することが知られている。また、1回の吸気で声を発することのできる持続時間(本明細書においては当該時間を発声持続時間という)等もまた、加齢等の要因によって変化する。
【0003】
そのため、声楽家などは、発することのできる音域や発声持続時間の長さを維持するために、訓練等のほか、十分な体調管理を行っている。
【0004】
しかしながら、訓練等を行わない者にとっては、例えば以前発することのできた音域の声を発することができなくなる結果、以前歌うことのできた歌を満足に歌うことができない、若しくは曲の音調を変更(曲のキーを下げる、または上げる)しなければならないという問題が生じる。
【0005】
また、声楽家等が、自らの体調に日々十分な注意を払っている場合であっても、発声機能の調子を維持し続けることは容易ではない。さらに、当該調子を本番に合わせて好調な状態とすることは、困難な場合が多い。
【0006】
そのため、発声機能の維持または向上を可能とするための手段が切望されている。
【特許文献1】特開2007−204436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、発声機能の維持または向上を行うことができる発声改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、発声改善剤であって、アスタキサンチンと、トコトリエノールと、ビタミンB12とを含有してなることを特徴とする。
【0009】
ここで、アスタキサンチンが、0.5質量%以上含有されるようにしてもよい。また、トコトリエノールが、3.7質量%以上含有されるようにしてもよい。さらに、ビタミンB12が、0.005質量%以上含有されるようにしてもよい。
【0010】
さらにまた、本発明の他の態様として、本発明は、請求項1から9のいずれか1つの発声改善剤を投与することを特徴とする発声改善方法である。
【発明の効果】
【0011】
アスタキサンチンと、トコトリエノールと、ビタミンB12とを含有してなる本発明の発声改善剤を服用することにより、発声機能の維持または向上を促進させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の発声改善剤は、アスタキサンチンと、トコトリエノールと、ビタミンB12とを発声改善のための有効成分として含有してなる。
【0013】
ヒトは声帯を使用して発声を行うことが公知となっている。本発明の発明者は、喫煙、空気汚染、乾燥、声帯粘膜の炎症等が発声可能な音域の狭小化に影響を及ぼしている可能性に着眼した。そして、声帯の機能を向上させるための構成について鋭意研究を行った結果、アスタキサンチンと、トコトリエノールと、ビタミンB12とを組み合わせて投与することにより、発声可能な音域の維持または拡張が可能となることを見出し、これらを含有する本発明の発声改善剤を成すに至った。これらの成分は、声帯粘膜の炎症抑制等に作用していることが考えられ、発声の改善に係るこれらの物質の知見は過去に得られていない。
【0014】
したがって、本発明によれば、発声機能の維持または向上を行うことができる。具体的には、発声可能な音域の維持または拡張を行うことができるほか、発声持続時間もまた、服用前と比較して向上させることができる。さらに、本発明の発声改善剤は、個人差はあるが早い場合で、服用後30分程度でその効果が現れる。すなわち、具体的に説明すれば、カラオケなどの予定が急に決定した場合でも、本発明の発声改善剤の作用効果を享受することが可能となる。
【0015】
以下、本実施形態の発声改善剤の構成について詳しく説明する。
【0016】
アスタキサンチンはサケやイクラなどに含まれる赤色のカロテノイド色素の一種であり、ビタミンEの500〜1000倍の強力な抗酸化作用を有する。本発明において用いられるアスタキサンチンとしては、例えば、アスタキサンチンを多く含むヘマトコッカス藻色素を使用することができる。ここで、アスタキサンチンは、抗炎症作用、筋肉疲労抑制作用などが向上することにより、発声機能の維持または向上をより促進させることが可能となるため、本実施形態の発声改善剤あたり0.5質量%以上含有されることが好ましい。なお、本実施形態の発声改善剤に用いられるアスタキサンチンは、遊離体のほか、モノエステル体やジエステル体であってもよい。ジエステル体は2つの水酸基がエステル結合により保護されているため化学的及び物理的に遊離体やモノエステル体よりも安定性が高く本発明の組成物中で酸化分解されにくい。しかし、生体中に取り込まれると生体内酵素により速やかにアスタキサンチンに加水分解され、効果を示すものと考えられている。
【0017】
トコトリエノールは、ビタミンE(トコフェロール)同族体であり、トコフェロールの直鎖アルキル基に3つの不飽和結合部分を有する化合物であって、ビタミンEの数十倍程度の強い抗酸化作用を有する。また、高脂血症改善作用を有する成分としても知られている。ここで、トコトリエノールは、微小循環改善作用(血行促進)により、発声機能の維持または向上をより促進させることが可能となるため、本実施形態の発声改善剤あたり3.7質量%以上含有されることが好ましい。トコトリエノールは、植物等の天然物の圧搾、抽出、または合成などの方法で得ることができ、一般的にはヤシ科植物の果皮および/または種子から抽出される。本実施形態の発声改善剤においては、天然物由来、合成物のいずれであっても用いることができる。また、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノールのいずれを使用することも可能であり、これらを組み合わせて使用してもよい。
【0018】
ビタミンB12は、ビタミンB群に属するビタミンであり、貧血防止作用のほか、高い神経保護作用を有する。ビタミンB12としては、例えばシアノコバラミン、メチルコバラミン、アデノシルコバラミンおよびヒドロキシルコバラミンとすることができる。ここで、ビタミンB12は、特に葉酸との併用による造血作用、口腔粘膜の炎症・潰瘍防御、神経系統機能維持により、発声機能の維持または向上をより促進させることが可能となるため、本実施形態の発声改善剤あたり0.005質量%以上含有されることが好ましい。
【0019】
また、本実施形態の発声改善剤は、以下の成分をさらに含有することが好ましい。これらの成分は、活性酸素消去、血管の強化、抗アレルギーなどの作用を有しているものと考えられる。
【0020】
葉酸は、ビタミンB群に属するビタミンであり、ビタミンB12と協働する赤血球の産生、保護や、タンパク質の代謝あるいは核酸(DNAやRNA)の産生、体細胞の分化・増殖、また糖やアミノ酸消費に重要な役割を有する。葉酸は、本実施形態の発声改善剤あたり0.019質量%以上含有されることが好ましい。
【0021】
プロポリスエキスは、蜜蜂が木の樹液や花の花粉から集めた膠状物質(プロポリス)から抽出された抽出物(エキス)であって、フラボノイドなどのポリフェノールを多く含み、抗菌作用、各種薬理作用を有する。プロポリスエキスは、本実施形態の発声改善剤あたり0.6質量%以上含有されることが好ましい。
【0022】
α−リポ酸(チオクト酸)は、高い抗酸化作用を有するほか、一度作用して抗酸化作用を失った物質の抗酸化作用を再生するはたらきがあり、より抗酸化力を高めることができると考えられている。また、活性酸素消去作用、体内の有害な金属に配位し、肝臓を守る作用(キレート作用)や、抗肥満作用も知られている。α−リポ酸は、本実施形態の発声改善剤あたり1.0質量%以上含有されることが好ましい。
【0023】
りんごポリフェノールは、りんごから抽出されたポリフェノール群(エピカテキン、カフェ酸、プロアントシアニジン等)であって、抗酸化作用、脂質代謝向上作用、血圧上昇抑制作用、抗アレルギー作用、抗炎症作用を有する。りんごポリフェノールは、本実施形態の発声改善剤あたり2.7質量%以上含有されることが好ましい。
【0024】
クランベリーシードオイルは、クランベリーシードから抽出されたオイル群であって、α−リノレン酸を多く含み、抗炎症作用を有する。
【0025】
このほか、本実施形態の発声改善剤は、質量比で100とする量のこれら各成分の担体等を含む。担体は、各成分を溶解または分散させて保持する。担体は特に限定されないが、胃腸経路からの各成分の吸収を助けるものであるのが好ましい。適当な担体の例は、食用油(例えばオリーブ油)、動物産物に基づく担体(例えばゼラチン)、アラビアガム、スクロース、脂質、モノおよびジグリセリド、ならびにマルトデキストリンである。また、水も担体として使用することができるが、通常、適当な乳化剤(例えば、レシチン、ソルビタン モノラウレート)とともに使用される。なお、各成分の混合方法は、各成分ができるだけ均一に分散するように混合すればよく、特に限定されない。また、担体のほか、硬度調整剤や吸収改良剤を含むようにしてもよい。
【0026】
本実施形態の発声改善剤は、例えば、溶液、オイル、エマルジョン、懸濁液または分散液として、経口投与することができる。適当な担体形態は、例えば、カプセルまたは錠剤である。本実施形態の発声改善剤は、通常、軟ゼラチンカプセルの形態で提供される。
【実施例】
【0027】
以下、実施例によって本発明の発声改善剤をより具体的に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
以下に示す成分を混合して本実施例の発声改善剤を製造した。
【0029】
具体的には、ヘマトコッカス藻色素、トコトリエノール、ビタミンB12、葉酸、プロポリスエキス、α−リポ酸、りんごポリフェノール、クランベリーシードオイル、オリーブ油、グリセリン、グリセリンエステル、ミツロウ、結晶セルロースを混合し、ゼラチンカプセルに充填した。
【0030】
カプセル1粒(470mg)あたり、アスタキサンチン、トコトリエノール、ビタミンB12等は以下の量で含まれる。
【0031】
【表1】

【0032】
以上の本実施例の発声改善剤を、1日2回食後、1カプセルづつ30日間、声楽家、歌手(ロック、民謡、長唄、ヨーデル)、アナウンサー、舞台俳優、声優、能役者などを職業とするモニター(15名)に服用してもらい、官能試験を行った。また、比較例として、服用前の試験結果を用いた。
【0033】
まず、モニターの発声可能な音域について試験を行った。試験結果を表2および表3に示す。表2および表3において、音名表記は、国際音声言語医学会の規定による。
【0034】
【表2】

【0035】
以上のように、音域の下限(低音側)において音域が広がった人は15名中5名であり、有効率は約33.3%であった。
【0036】
【表3】

【0037】
以上のように、音域の上限(高音側)において音域が広がった人は15名中10名であり、有効率は約66.6%であった。
【0038】
続いて、各モニターの出しやすい音における発声持続時間について試験を行った。
【0039】
【表4】

【0040】
その結果、最長発声持続時間が20%以上伸びた人は全体の33.3%であった。
【0041】
また、モニターからは、以下のような意見も寄せられた。
飲んでいる間、声が出やすい印象を受けた。
仕事(歌手)の翌日の声の疲れが出なくなった。
声が高い方も楽に出せるようになったほか、力強い声が出せるようになり、さらに歌っていて疲れにくくなった。
長い間続いていた声枯れの症状が緩和した。
喉が軽くなった。
ファルセットへの移行がスムーズにできるようになった。
【0042】
さらに、上記のモニターとは異なるモニターに、本実施例の発声改善剤を服用してその効果を実感できるまでの時間、具体的には発声可能な音域が広がったと感じるまでの時間を測定した。
【0043】
以下、具体的に説明する。本試験に係るモニター(5名)は、歌唱を開始する前に、本実施例の発声改善剤を2個、経口により服用した。続いて、喉の状態が良くなったことを自覚するまで安静を維持した。表5に、モニターが、服用後から喉の状態が良くなったことを自覚するまでの時間を示す。さらに、自覚後、モニターがよく歌う曲のうち、比較的音調が高めで歌いにくい曲を歌ってみて、いつもよりスムーズに歌えることをそれぞれ確認した。また、3曲以上歌っても喉が痛くなるか否か、翌朝も通常どおり発声できたか否かを確認した。
【0044】
【表5】

【0045】
当該試験の結果、モニターはいずれも、20〜40分の間、平均しておよそ30分程度で効果を実感することができた。また、いずれのモニターも、通常歌いにくかった歌をスムーズに歌うことができた。さらに、3曲以上歌っても喉の痛みは生じず、翌朝も通常どおり発声することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスタキサンチンと、トコトリエノールと、ビタミンB12とを含有してなることを特徴とする発声改善剤。
【請求項2】
前記アスタキサンチンが、0.5質量%以上含有されることを特徴とする請求項1に記載の発声改善剤。
【請求項3】
前記トコトリエノールが、3.7質量%以上含有されることを特徴とする請求項1または2に記載の発声改善剤。
【請求項4】
前記ビタミンB12が、0.005質量%以上含有されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の発声改善剤。
【請求項5】
葉酸をさらに含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の発声改善剤。
【請求項6】
プロポリスエキスをさらに含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の発声改善剤。
【請求項7】
α−リポ酸をさらに含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の発声改善剤。
【請求項8】
りんごポリフェノールをさらに含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の発声改善剤。
【請求項9】
クランベリーシードオイルをさらに含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の発声改善剤。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つの発声改善剤を投与することを特徴とする発声改善方法。

【公開番号】特開2009−227625(P2009−227625A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76905(P2008−76905)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(505291985)株式会社イムダイン (1)
【Fターム(参考)】