説明

発情雌家畜誘引捕獲設備

【課題】発情した雌家畜を見付け出して誘引し、簡便、確実かつ安全に捕獲するのに用いられ、既存の畜舎や放牧地等の飼育域に大掛かりな改築や改修を行ったり家畜同士の接触等により破損し易い高価な機材を用いたりする必要がなく、適切な家畜管理を行うことができる簡易で安価な発情雌家畜誘引捕獲設備を提供する。
【解決手段】雌家畜の飼育域10の一区画に、捕獲すべき発情雌家畜21a・21bの捕獲柵16が、その柵16内部への一方通行ゲート17を有しつつ設けられており、その捕獲柵16外近傍に前記発情雌家畜21a・21bを誘き寄せる雄家畜咆哮声のスピーカー12と、その捕獲柵16内に前記発情雌家畜21a・21bを誘き込む開放した雄家畜尿の溜め容器15と、その捕獲柵16内に前記発情雌家畜21a・21bを誘き込む雄家畜13のおとりの少なくとも何れかの誘引手段が、前記ゲート17の一方通行方向前方に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排卵しており人工授精可能な発情した雌家畜のみを誘引して捕獲する発情雌家畜誘引捕獲設備、及び発情雌家畜誘引方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大型家畜、特に牛は、フリーストール畜舎内での放し飼い飼育や、牧草地や林内放牧地のような屋外での放牧飼育がなされている。殆どの雄牛は、生後数ヵ月で去勢され、育成期に雌牛と別々に飼育される。その雌牛から効率よく出産させるために、人工授精が行われる。
【0003】
人工授精を行うために、排卵に伴う発情兆候を示しながら動き回っている発情雌牛のみを目視で見付け出し、追い立てて捕獲するのは、長年の経験と長い捕獲作業時間とを必要とするうえ、危険な重労働である。
【0004】
近年の経営規模拡大に伴う多頭集約飼育の現場での労力の軽減のため濃厚飼料の多給が行われる所為で、発情回帰・排卵周期の遅延や、発情兆候の鈍性化等の繁殖障害が生じ易くなっている。そのため盛んな発情兆候を示さなかったり排卵時特有の生理変化が少なかったりするので、発情雌牛を、見付け出し難い。しかも牛の場合、発情回帰や排卵周期は通常約21日であるが、その発情持続期間は、十分に発情兆候を示す雌牛で約15時間、鈍性発情の雌牛で約18時間しかないから、発情を見逃す恐れがある。
【0005】
発情回帰の遅延や鈍性発情等の所為で発情個体を見付け出すことすらできなかったり、例え発情雌個体を見付け出しても逃げ回られて捕獲できなかったりすると、十分に発情兆候を示す個体のみならず鈍性発情の個体でさえ授精可能であるのに、人工授精可能な発情期をみすみす逃してしまう。
【0006】
折角の発情期を逃すと、次の発情期まで待たねばならず、飼育経費や種付け経費がかさむ。
【0007】
発情期の雌牛が他の雌牛に乗ったり乗られたりする発情兆候の一つである乗駕行動を利用して発情雌牛を見付け出す装置として、特許文献1に、発情雌牛の背部に、その後部から他の牛が乗架した際、その雌牛の背部に加わる他の牛の押圧力を検知する検知器が、開示されている。この検知器では、十分に発情兆候を示す雌牛を見付け出すことはできても、発情兆候が少ない鈍性発情の雌牛を見付け出し難く、しかも人工授精を施すのに容易に捕獲することができない。
【0008】
特許文献2に、サーモグラフィーを用いて哺乳類の外陰部周辺部位とその隣接部位を撮影し、その熱画像を解析して発情の可能性のある個体のスクリーニング方法が、開示されている。大型家畜の多頭集約飼育や放飼いの現場で、外陰部周辺を撮影するために、1頭ずつ捕獲するのは容易でないうえ、高価で精密なサーモグラフィーを用いてその画像を解析するのは煩雑で効率が悪い。特に放飼いの場合、1頭ずつ捕獲することは相当の重労働である。
【0009】
特許文献3に、キトサンを家畜の子宮内に注入して、その発情を誘起させ受胎率を向上させる方法が、開示されている。薬物を投与するとその頻度が多くなるにつれ薬物耐性が生じ、薬物の効果が発現し難くなるため、薬物の投与は一時的な処方に限定される。さらに、その家畜の食肉・乳製品を購入する消費者の安全性の観点や、家畜の健全な発情回帰・健康保全の観点から、可能な限り薬物を使用しないことが望まれている。
【0010】
また、牛の他、馬のような大型家畜や、豚・羊のような中型家畜等の発情した雌家畜を、新規就農者でも簡便に見付け出して、能率良く捕獲することが、人工授精時期の管理、労務の軽減、作業効率の改善等の観点から、求められている。
【0011】
【特許文献1】特開2004−57069号公報
【特許文献2】特開2005−204750号公報
【特許文献3】特開平11−103717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、発情した雌家畜を見付け出して誘引し、簡便、確実かつ安全に捕獲するのに用いられ、既存の畜舎や放牧地等の飼育域に大掛かりな改築や改修を行ったり家畜同士の接触等により破損し易い高価な機材を用いたりする必要がなく、適切な家畜管理を行うことができる簡易で安価な発情雌家畜誘引捕獲設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載の発情雌家畜誘引捕獲設備は、雌家畜の飼育域の一区画に、捕獲すべき発情雌家畜の捕獲柵が、その柵内部への一方通行ゲートを有しつつ設けられており、その捕獲柵外近傍に前記発情雌家畜を誘き寄せる雄家畜咆哮声を流すスピーカーと、その捕獲柵内に前記発情雌家畜を誘き込む開放した雄家畜尿の溜め容器と、その捕獲柵内に前記発情雌家畜を誘き込む雄家畜のおとりの少なくとも何れかの誘引手段が、前記ゲートの一方通行方向前方に配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発情雌家畜誘引捕獲設備は、請求項1に記載されたもので、前記家畜が、牛であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発情雌家畜誘引捕獲設備は、請求項2に記載されたもので、前記雄家畜が、種雄牛、又はテストステロン投与された去勢育成雄牛であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発情雌家畜誘引捕獲設備は、請求項2に記載されたもので、前記雄家畜咆哮声が、発情した雌牛を前にして咆哮した種雄牛の咆哮声を録音した種雄牛咆哮声であることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発情雌家畜誘引捕獲設備は、請求項2に記載されたもので、前記雄家畜尿が、種雄牛の尿であることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発情雌家畜誘引捕獲設備は、請求項2に記載されたもので、前記誘引手段が、発情した雌牛を前にして咆哮した種雄牛の咆哮声を録音した種雄牛咆哮声を繰返し流す前記スピーカーと、種雄牛の尿の前記溜め容器と、テストステロン投与されている去勢育成雄牛の前記おとりとであり、又は種雄牛の前記おとりであることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発情雌家畜誘引方法は、雌家畜の飼育域の一区画で、雄家畜咆哮声をスピーカーから流してその近傍に捕獲すべき発情雌家畜を誘き寄せ、又は雄家畜尿の溜め容器若しくは雄家畜を設置してその近傍に前記発情雌家畜を誘き寄せることを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の発情雌家畜誘引方法は、請求項7に記載されたもので、前記雄家畜咆哮声、前記雄家畜尿、前記雄家畜の少なくとも何れかで、前記発情雌家畜を、誘き寄せつつ、捕獲柵に設けられた一方通行ゲートから前記捕獲柵内へ誘き込んで、捕獲することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の発情雌家畜誘引捕獲設備は、十分に発情した雌家畜のみならず、鈍性発情の雌家畜、とりわけ牛のような大型雌家畜を、見付け出して誘引し自発的に柵へ入らせ、簡便に捕獲して、留置することができるというものである。この設備を用いると、人工授精に適した排卵を伴う発情期の雌家畜であれば、十分に発情行動を行っている発情雌家畜のみならず十分に発情兆候を示していない鈍性発情雌家畜も、その発情レベルに関わらず、選択的かつ確実に、捕獲することができる。
【0022】
この発情雌家畜誘引捕獲設備によれば、畜舎内のみならず、地形が複雑な広大な放牧地においても,発情雌家畜を、確実に、発見し、誘引、捕獲することができる。
【0023】
また、この発情雌家畜誘引捕獲設備は、簡易な構成であるから、既存の畜舎や放牧地等の飼育域に大掛かりな改築や改修を行わなくとも短期間で容易く設置でき、また破損し易い高価な機材を用いる必要もない。
【0024】
本発明の発情雌家畜誘引方法によれば、発情雌家畜を誘き寄せたときの長い滞在時間から、発情雌家畜を簡易かつ確実に見付け出すことができる。
【0025】
本発明の発情雌家畜誘引捕獲設備を用いたり本発明の発情雌家畜誘引方法を行ったりすれば、発情雌家畜が自発的に参集したり捕獲柵へ捕らわれたりするので、わざわざ発情雌家畜を苦労して見付け出す必要も、また発情雌家畜を追い立てたり無理矢理牽引したりする必要もない。しかも雌家畜に対して薬物を使用しないから、家畜の健全な発情回帰・飼育を行うことができ、その家畜の食肉や乳製品の消費者の安全を担保でき、環境を汚染しない。
【0026】
そのため、経験の浅い新規就農者のような家畜管理者でも発情雌家畜を安全かつ確実に発見したり捕獲したりでき、家畜管理者による発情雌家畜捕獲作業や人工授精管理業務のみならず家畜飼育管理業務全般の軽減を図ることができ、畜産経営向上、市場の安定化に資する。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0027】
以下、本発明の実施の好ましい形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0028】
本発明の発情雌家畜誘引捕獲設備1は、その形態を示す図1を参照しながら、家畜である乳牛の飼育を例にして説明すると、以下の通りである。
【0029】
地形が複雑で広大な林内放牧地若しくは牧草地で屋外飼育している牛飼育域10の一区画、又は畜舎である牛舎11に隣接した一区画に、発情雌家畜誘引捕獲設備1が設置される。
【0030】
発情雌家畜誘引捕獲設備1は、捕獲すべき発情雌牛21a・21bの閉鎖捕獲柵16が、設けられている。捕獲柵16の一部にその内部への一方通行ゲート17が設けられている。
【0031】
ゲート17の一方通行方向前方であって牛舎11の屋根近傍に、スピーカー12が、配置されている。スピーカー12からは、発情した雌牛を前にして咆哮した種雄牛の咆哮声を録音した種雄牛咆哮声が、牛舎11内の録音再生器を介して、飼育域10へ向けて、繰返し放送されている。牛の咆哮声は5種類に分類され、人間には同じに聞こえる声であっても、場面によってその機能が異なると言われているが、この録音した種雄牛咆哮声は、発情した雌牛を呼んでいる咆哮声である。
【0032】
ゲート17の一方通行方向前方で捕獲柵16内部に、雄牛尿を開放して溜めている溜め容器15が、配置されている。雄牛尿は、種雄牛又はテストステロンを注射されている去勢育成雄牛の尿が挙げられ、中でも種雄牛の尿であると一層好ましい。これらの雄牛から排泄された尿には、昆虫フェロモンほどの揮発性でないにしても、発情した雌牛が嗅ぎ分けることのできる幾分揮発性の発情雌牛誘引物質が含まれている。
【0033】
また、ゲート17の一方通行方向前方で捕獲柵16内部に、雄牛13を囲っている内部柵14が、配置されている。雄牛13は、テストステロンを注射して投与されている去勢育成雄牛であっても、種雄牛であってもよい。テストステロン投与去勢育成雄牛や、種雄牛であると、尿中のものと同種又は異種の発情雌牛誘引物質を分泌したり排出したりするから、一層好ましい。このような去勢育成雄牛が、飼育費を抑制でき飼育し易い例えば9ヵ月齢程度の弱齢の雄牛であっても、種雄牛と同程度の効果を奏する。雄牛13が、種雄牛であると、なお一層好ましい。
【0034】
捕獲柵16には、捕獲された発情雌牛を必要に応じて開放する開閉ゲート18が、設けられている。捕獲柵16外で牛舎11の壁に沿って、飲水場20が設けられている。
【0035】
発情雌家畜誘引捕獲設備1を用いた発情雌家畜誘引方法は、以下のようにして実施される。
【0036】
雌牛21・22を、飼育域境界柵19内の飼育域10で放牧する。雌牛21・22は、飲水のために牛舎11の飲水場20近傍に、一日数回必ず立ち寄る。その飲水場20近傍やさらに遠方に居る雌牛21・22は、スピーカー12から流れる種雄牛咆哮声が聞こえ、捕獲柵16内の内部柵14で囲われている去勢育成雄牛13が見えている。非発情雌牛22a〜22eは、全く去勢育成雄牛にも種雄牛咆哮声にも興味を示さないが、排卵を伴っている発情雌牛21a・21bは、十分に発情していても鈍性発情であっても、去勢育成雄牛や種雄牛咆哮声に興味を示し、それらが提示されている捕獲柵16外近傍に誘き寄せられる。またそれら発情雌牛21a・21bは、捕獲柵16内の種雄牛又はテストステロンを注射されている去勢育成雄牛の尿の溜め容器15からの発情雌牛誘引物質を嗅ぎ付けたり、捕獲柵16内のおとりである去勢育成雄牛13を見付けたり嗅ぎ付けたりして、それに近付こうと自発的に一方通行ゲート17から進入して捕獲柵16内へ誘き込まれ、発情雌牛21aが、捕獲される。
【0037】
その雌牛21aが発情していることは、咆哮、乗駕、陰部を嗅いだり嗅がれたりする発情特有の行動と、外陰部の光沢や腫れ、外陰部からの透明な粘液の分泌など発情特有の生理変化のような外観とから、判断できる。捕獲された雌牛21aは、全頭、発情雌牛である。発情雌牛21aは捕獲後に開閉ゲート18から開放しても、直ぐに再捕獲される。
【0038】
なお、種雄牛咆哮声のスピーカー12と、種雄牛等の尿の溜め容器15と、去勢育成雄牛13を囲う柵14とを有する発情雌家畜誘引捕獲設備1の例を好ましい態様として示したが、それらの何れかを、有するものであってもよい。種雄牛13を囲う柵14を有する場合には、種雄牛咆哮声のスピーカー12と、種雄牛等の尿の溜め容器15とを、有しなくてもよい。家畜として乳牛の例を示したが、黒毛牛のような肉牛であってもよく、他の哺乳動物例えば馬のような大型家畜や豚・羊のような中型家畜であってもよい。家畜を屋外で放牧飼育している例を示したが、フリーストール畜舎内で放し飼い飼育していてもよい。
【0039】
雄牛は、通常、生後数日で出荷され、雌牛と共に飼育することが無いから、本発明に付随する去勢育成雄牛の飼育の労力・費用の負担が幾分増大するが、発情雌牛の誘引・捕獲に利用して、人工授精・妊娠を適正管理することによる経費削減・労務軽減の効果の方が遥かに大きい。
【実施例】
【0040】
本発明の発情雌家畜誘引方法を用い、発情雌家畜誘引捕獲設備を実際に試作して使用し、発情雌家畜誘引方法の効果を確かめた実施例を、以下に示す。
【0041】
(実施例1)
雌牛8頭を放牧し、取り扱い易く飼育費を抑制できる9ヵ月齢であってテストステロンを投与された去勢育成雄牛をおとりにして、それを囲う柵に誘き寄せられる雌牛の挙動について、約1ヵ月間半にわたり、検討した。全頭のうち5頭が発情期になったとき、去勢育成雄牛を囲う柵から5m以内の区域内に、誘き寄せられた。誘き寄せられた雌牛は、外観や行動から発情兆候を示しており何れも発情雌牛であり、うち2頭は盛に発情行動を示す雌牛であり、うち3頭は鈍性発情を示す雌牛であった。誘き寄せられなかった残余の雌牛は、外観や行動から何れも非発情雌牛であった。したがって、発情している雌牛だけを確実に捕獲できた。
【0042】
その発情時の雌牛と非発情時の雌牛とが同区域内に持続して滞在している時間を測定した結果を、図2(A)に示す。また、外観及び行動から発情が持続していると判断される期間中、同区域内に滞在している時間の割合を、同図(B)に示す。
【0043】
なお、その平均と平均±標準偏差とを図中に示し、ウェルチのt検定を行ったときP<0.05の場合に有意差ありと判断しP≧0.05のとき有意差なし(NS)と判断した。
【0044】
図2から明らかな通り、非発情時の雌牛は、同区域内に持続して滞在していなかったが、同図(A)のように発情時の雌牛は、同区域内に1回当り約300秒持続して滞在しており、両者の間には有意差があり、また、同図(B)のように発情時の雌牛は、発情全期間中の約3%もの長時間に、同区域内に持続して滞在していた。
【0045】
(実施例2)
実施例1と同様に9ヵ月齢の去勢育成雄牛を用い、又はそれに代えて種雄牛を用い、実施例1と同様にして、雌牛の平均滞在持続時間と、雌牛の発情持続時間に対する滞在時間の割合とを求めた。その結果を図3に示す。
【0046】
図3から明らかな通り、雌牛の平均滞在持続時間と、雌牛の発情持続時間に対する滞在時間の割合とにおけるテストステロンを投与された去勢育成雄牛と種雄牛との間に、有意差がなかった。
【0047】
実施例1及び2から、発情雌家畜誘引捕獲設備1は、捕獲柵16と、その内部に配置される種雄牛13を囲う柵14との間隔は、5mあれば十分であると判断された。
【0048】
(実施例3)
雌牛を飼育している牛舎内で、飲水場、ミルキングパーラー付近であって酪農作業者が観察・管理し易い牛舎内の一区画に、テストステロンが投与された9ヵ月齢去勢育成雄牛を柵で囲って別飼した。そこから約5m離して取り囲みつつ内部への一方通行ゲートを有する捕獲柵を設け、その捕獲柵外で雌牛を飼育した。捕獲柵内でゲートの一方通行前方に、種雄牛の尿溜め槽を配置し、種雄牛の咆哮声を放送するスピーカーを配置した。盛んな発情兆候を示す雌牛と、鈍性発情の雌牛とが、去勢育成雄牛、種雄牛の尿、種雄牛の咆哮声の提示に誘かれて、一方通行ゲートから捕獲柵内に自発的に進入した。その雌牛を効率良く捕獲して、適時に人工授精させて妊娠させることができた。
【0049】
(実施例4)
雌牛を放牧飼育している複雑な地形の林内放牧地内で、雌牛が必ず訪れる飲水場近傍の一区画に、テストステロンが投与された9ヵ月齢去勢育成雄牛を柵で囲って別飼した。そこから約5m離して取り囲みつつ内部への一方通行ゲートを有する捕獲柵を設け、その捕獲柵外で雌牛を飼育した。捕獲柵内でゲートの一方通行前方に、種雄牛の尿溜め槽を配置し、種雄牛の咆哮声を放送するスピーカーを配置した。十分に発情した雌牛と、鈍性発情の雌牛とが、去勢育成雄牛、種雄牛の尿、種雄牛の咆哮声の提示に誘かれて、一方通行ゲートから捕獲柵内に自発的に進入した。その雌牛を効率良く捕獲して、適時に人工授精させて妊娠させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の発情雌家畜誘引捕獲設備及び発情雌家畜誘引方法は、畜舎や放牧地での放し飼いを営む酪農に、利用できる。この設備及び方法によれば、畜舎や放牧地で発情雌家畜を簡便かつ確実に発見し捕獲して、人工授精させ妊娠させて繁殖させる畜産に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明を適用する発情雌家畜誘引捕獲設備の概要図である。
【図2】本発明を適用する発情雌家畜誘引方法の効果を示す図である。
【図3】本発明を適用する発情雌家畜誘引方法の効果を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1は発情雌家畜誘引捕獲設備、10は飼育域、11は牛舎、12はスピーカー、13は雄牛、14は内部柵、15は雄牛尿の溜め容器、16は捕獲柵、17は一方通行ゲート、18は開閉ゲート、19は飼育域境界柵、20は飲水場、21a・21bは発情雌牛、22a・22b・22c・22d・22eは非発情雌牛、である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌家畜の飼育域の一区画に、捕獲すべき発情雌家畜の捕獲柵が、その柵内部への一方通行ゲートを有しつつ設けられており、その捕獲柵外近傍に前記発情雌家畜を誘き寄せる雄家畜咆哮声を流すスピーカーと、その捕獲柵内に前記発情雌家畜を誘き込む開放した雄家畜尿の溜め容器と、その捕獲柵内に前記発情雌家畜を誘き込む雄家畜のおとりの少なくとも何れかの誘引手段が、前記ゲートの一方通行方向前方に配置されていることを特徴とする発情雌家畜誘引捕獲設備。
【請求項2】
前記家畜が、牛であることを特徴とする請求項1に記載の発情雌家畜誘引捕獲設備。
【請求項3】
前記雄家畜が、種雄牛、又はテストステロン投与された去勢育成雄牛であることを特徴とする請求項2に記載の発情雌家畜誘引捕獲設備。
【請求項4】
前記雄家畜咆哮声が、発情した雌牛を前にして咆哮した種雄牛の咆哮声を録音した種雄牛咆哮声であることを特徴とする請求項2に記載の発情雌家畜誘引捕獲設備。
【請求項5】
前記雄家畜尿が、種雄牛の尿であることを特徴とする請求項2に記載の発情雌家畜誘引捕獲設備。
【請求項6】
前記誘引手段が、発情した雌牛を前にして咆哮した種雄牛の咆哮声を録音した種雄牛咆哮声を繰返し流す前記スピーカーと、種雄牛の尿の前記溜め容器と、テストステロン投与されている去勢育成雄牛の前記おとりとであり、又は種雄牛の前記おとりであることを特徴とする請求項2に記載の発情雌家畜誘引捕獲設備。
【請求項7】
雌家畜の飼育域の一区画で、雄家畜咆哮声をスピーカーから流してその近傍に捕獲すべき発情雌家畜を誘き寄せ、又は雄家畜尿の溜め容器若しくは雄家畜を設置してその近傍に前記発情雌家畜を誘き寄せることを特徴とする発情雌家畜誘引方法。
【請求項8】
前記雄家畜咆哮声、前記雄家畜尿、前記雄家畜の少なくとも何れかで、前記発情雌家畜を、誘き寄せつつ、捕獲柵に設けられた一方通行ゲートから前記捕獲柵内へ誘き込んで、捕獲することを特徴とする請求項7に記載の発情雌家畜誘引方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−219457(P2009−219457A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69086(P2008−69086)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、農林水産省、先端技術を活用した農林水産研究高度化委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)