説明

発振器

【課題】回路要素の配置も考慮に入れることで、発振器自体の小型化並びに該発振器を実装した電子機器の小型化をさらに促進させる。
【解決手段】発振器10は、複数の誘電体層が積層されて構成された誘電体基板30に、少なくとも位相器12と、電力分配器18とを有する発振器であって、誘電体基板30内に、位相器12のカプラ20を構成する複数の電極が形成された第1の形成領域A1と、位相器12の反射回路22を構成する複数の電極が形成された第2の形成領域A2と、電力分配器18を構成する複数の電極が形成された第3の形成領域A3とを有し、第1の形成領域A1、第2の形成領域A2及び第3の形成領域A3が、それぞれ平面的に分離した位置に配置されている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の誘電体層が積層されて構成された誘電体基板内に、少なくとも位相器と、電力分配器とを有し、光通信機器に用いられる電圧制御発振器等の発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、薄型化の影響により、光通信機器に使用される発振器等も同じく小型化、薄型化の要求が強まっている。
【0003】
従来の発振器は、ガラスエポキシ基板上にチップ部品を実装したものであって、構成部品の搭載面積が大きくなり、小型化は困難であった。
【0004】
そこで、小型化を実現するために、ガラスエポキシ基板等の有機多層基板を用いた発振器は、配線とストリップラインを基板の層間に形成し、表層に個別部品を搭載していたが、実装する部品のレイアウトで基板サイズが決まるため、配線の線幅を狭くしたり、小型チップ部品を実装して基板の搭載面積を小さくするようにしている。
【0005】
一方、低誘電率アルミナ等の誘電体基板を用いた発振器は、厚膜形成手法で形成できる受動部品及び配線を誘電体基板の内層に収納できるため、表層に搭載する個別部品数を低減することができ、基板面積をさらに小さくすることができる(特許文献1参照)。
【0006】
また、誘電体基板内に形成される回路を集中定数回路ではなく、分布定数回路とすることで、部品点数を大幅に減らすようにした例もある(例えば特許文献2〜4参照)。なお、集中定数回路を分布定数回路とする場合に、渦巻状に形成された2つののストリップラインを誘電体層を間に挟んで対向させることで、小型化を有効に図ることができる例も開示されている(例えば特許文献5及び6参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2002−57525号公報
【特許文献2】特開平4−207512号公報
【特許文献3】特開2001−313501号公報
【特許文献4】特開2003−110360号公報
【特許文献5】特開昭51−78671号公報
【特許文献6】特開平5−243820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来においては、集中定数回路を分布定数回路に変更することと、分布定数回路の形状を特定することで小型化を図ることがほとんどであり、誘電体基板内での回路要素の配置については、何ら示唆していない。すなわち、回路要素の配置も考慮に入れることで、集中定数回路でも十分に小型化が図れ、また、分布定数回路に変更することで、部品点数の低減と小型化を図ることができ、発振器を実装した電子機器の小型化をさらに促進させることができる。
【0009】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、回路要素の配置も考慮に入れることで、発振器自体の小型化並びに該発振器を実装した電子機器の小型化をさらに促進させることができる発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る発振器は、複数の誘電体層が積層されて構成された誘電体基板に、少なくとも位相器と、電力分配器とを有する発振器であって、前記誘電体基板内に、前記位相器のカプラを構成する複数の電極が形成された第1の形成領域と、前記位相器の反射回路を構成する複数の電極が形成された第2の形成領域と、前記電力分配器を構成する複数の電極が形成された第3の形成領域とを有し、前記第1の形成領域、前記第2の形成領域及び前記第3の形成領域が、それぞれ平面的に分離した位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
これにより、誘電体基板内に形成される回路要素(位相器のカプラ及び反射回路及び電力分配器)と接続される外部回路を、誘電体基板上に配置できる程度に誘電体基板の主面(例えば)上面の面積を確保しつつ、発振器の低背化及び小型化を図ることができる。これは、本発明に係る発振器を実装した電子機器の小型化をも図ることができることにつながる。
【0012】
そして、前記構成において、前記第2の形成領域が、前記誘電体基板の平面上、ほぼ中央に配置され、前記第1の形成領域が、前記誘電体基板の平面上、前記第2の形成領域と前記誘電体基板の一方の端面の間に形成され、前記第3の形成領域が、前記誘電体基板の平面上、前記第2の形成領域と前記誘電体基板の他方の端面の間に形成されていてもよい。
【0013】
これにより、誘電体基板内での平面的な配置でみると、位相器の反射回路が位相器のカプラと電力分配器の間に形成された形態となる。所望の特性が得られるように回路定数が決められて形成される位相器のカプラと電力分配器が互いに離間する位置に配置され、その間に位相器の反射回路が配置された形態となる。従って、第1〜第3の形成領域を、位相器のカプラと電力分配器とが電磁的に干渉することなく、しかも、コンパクトにまとめることが可能となる。
【0014】
このように、本発明においては、回路要素の配置も考慮に入れるようにしたので、集中定数回路でも十分に小型化が図れ、また、分布定数回路に変更することで、部品点数の低減と小型化を図ることができ、発振器を実装した電子機器の小型化をさらに促進させることができる。
【0015】
また、前記構成において、前記第1の形成領域には、前記位相器のカプラを構成する2つの渦巻状のストリップライン電極が誘電体層を間に挟んで対向されて形成されていてもよい。
【0016】
つまり、特許文献6にも示すように、集中定数回路を単に直線状のストリップライン電極にした場合、直線状のストリップライン電極の長さとしてλ/4が必要であることから、例えば1GHzの信号では、7.5cm(但し、比誘電率=1とする)もの長さは必要になり、直線状のストリップライン電極を結合させるためには、比較的広い面積が必要になり、小型化と性能維持を両立させることは困難である。
【0017】
しかし、2つのストリップライン電極を渦巻状とし、かつ、これら2つのストリップライン電極が誘電体層を間に挟んで対向させることで、伝送特性インピーダンスを高くすることができ、小型化と性能維持を両立させることが可能となる。
【0018】
なお、前記第2の形成領域には、複数のインダクタンス用電極とコンデンサ用電極が形成され、前記複数のインダクタンス用電極のインダクタンスによって前記位相器の反射回路のインダクタンスが構成され、前記複数のコンデンサ用電極と前記誘電体基板に形成されたグランド用電極で形成された静電容量によって、前記位相器の反射回路のキャパシタンスが構成されてもよい。
【0019】
また、前記第3の形成領域には、複数のインダクタンス用電極と複数のコンデンサ用電極が形成され、前記複数のインダクタンス用電極のインダクタンスによって前記電力分配器のインダクタンスが構成され、前記複数のコンデンサ用電極と前記誘電体基板に形成されたグランド電極で形成された静電容量によって、前記電力分配器のキャパシタンスが構成されていてもよい。
【0020】
この場合、前記位相器の反射回路のインダクタンスを構成する前記複数のインダクタンス用電極と、前記位相器の反射回路のキャパシタンスを構成する前記複数のコンデンサ用電極とを、前記誘電体基板における複数の誘電体層の積層方向上下に分離して配置し、前記電力分配器のインダクタンスを構成する前記複数のインダクタンス用電極と、前記電力分配器のキャパシタンスを構成する前記複数のコンデンサ用電極とを、前記誘電体基板における複数の誘電体層の積層方向上下に分離して配置することが好ましい。
【0021】
すなわち、誘電率が異なる複数の誘電体層を積層させることで、インダクタンス用電極が形成される部分の誘電率と、キャパシタンス用電極が形成される部分の誘電率を容易に変えることができ、さらなる小型化に寄与させることができるからである。
【0022】
また、本発明において、前記第3の形成領域には、前記電力分配器を構成する2つの渦巻状のストリップライン電極が誘電体層を間に挟んで対向されて形成されていてもよい。この場合、伝送特性インピーダンスを高くすることができ、小型化と性能維持を両立させることが可能となる。
【0023】
そして、前記第2の形成領域には、複数のインダクタンス用電極とコンデンサ用電極が形成され、前記複数のインダクタンス用電極のインダクタンスによって前記位相器の反射回路のインダクタンスが構成され、前記複数のコンデンサ用電極と前記誘電体基板に形成されたグランド用電極で形成された静電容量によって、前記位相器の反射回路のキャパシタンスが構成されてもよい。
【0024】
この場合、前記位相器の反射回路のインダクタンスを構成する前記複数のインダクタンス用電極と、前記位相器の反射回路のキャパシタンスを構成する前記複数のコンデンサ用電極とを、前記誘電体基板における複数の誘電体層の積層方向上下に分離して配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明に係る発振器によれば、回路要素の配置も考慮に入れることで、発振器自体の小型化並びに該発振器を実装した電子機器の小型化をさらに促進させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る発振器を例えば電圧制御発振器に適用した実施の形態例を図1〜図5を参照しながら説明する。
【0027】
まず、本実施の形態に係る発振器10は、図1に示すように、位相器12と、発振子14と、増幅器16と、電力分配器18とを有する。
【0028】
位相器12は、カプラ20と反射回路22とを有し、制御端子24に供給された制御電圧Vtによって、位相器12を通過する信号の位相を変化させる。すなわち、発振周波数を変化させる。発振子14は、特定の周波数のみで発振し、表面波発振子あるいは水晶発振子などが用いられる。増幅器16は、発振子14からの信号を増幅する回路であり、電源端子26には電源電圧Vccが供給される。電力分配器18は、増幅器16からの信号を位相器12側と出力端子28に分配する。
【0029】
そして、本実施の形態においては、図2に示すように、複数の誘電体層が積層されて構成された誘電体基板30に、少なくとも位相器12のカプラ20と、位相器12の反射回路22と、電力分配器18とを有する。位相器12のカプラ20、位相器12の反射回路22、電力分配器18は、それぞれ図示しないが、集中定数回路にて構成されている。
【0030】
図2及び図3に示すように、誘電体基板30の第1の側面30aには、制御端子24と、NC端子(無接続端子)32と、出力端子28とが形成され、誘電体基板30の第2の側面30b(第1の側面30aと反対側の側面)には、2つのグランド端子34a及び34bと電源端子26とが形成されている。また、誘電体基板30の第3の側面30c及び第4の側面30d(第3の側面30cと反対側の側面)には、それぞれグランド端子34c及び34dが形成されている。
【0031】
そして、誘電体基板30内に、位相器12のカプラ20を構成する電極が形成された第1の形成領域A1と、位相器12の反射回路22を構成する複数の電極が形成された第2の形成領域A2と、電力分配器18を構成する複数の電極が形成された第3の形成領域A3とを有する。
【0032】
第1の形成領域A1、第2の形成領域A2及び第3の形成領域A3は、図2及び図3に示すように、誘電体基板30内において、それぞれ平面的に分離した位置に配置されている。
【0033】
具体的には、第2の形成領域A2が、誘電体基板30の平面上、ほぼ中央に配置され、第1の形成領域A1が、誘電体基板30の平面上、第2の形成領域A2と誘電体基板の一方の端面(第4の側面30d)の間に形成され、第3の形成領域A3が、誘電体基板30の平面上、第2の形成領域A2と誘電体基板30の他方の端面(第3の側面30c)の間に形成されている。
【0034】
このように、本実施の形態に係る発振器10においては、誘電体基板30内に形成される回路要素(位相器12のカプラ20、位相器12の反射回路22及び電力分配器18)と接続される外部回路(位相器12の一部、発振子14及び増幅器16)を、誘電体基板30上に配置できる程度に誘電体基板30の主面(例えば)上面の面積を確保しつつ、発振器10の低背化及び小型化を図ることができる。これは、本実施の形態に係る発振器10を実装した電子機器の小型化をも図ることができることにつながる。
【0035】
しかも、誘電体基板30内での平面的な配置でみると、位相器12の反射回路22が位相器12のカプラ20と電力分配器18の間に形成された形態としたので、所望の特性が得られるように回路定数が決められて形成される位相器12のカプラ20と電力分配器18とが互いに離間する位置に配置し、その間に反射回路22が配置された形態とすることができる。従って、第1〜第3の形成領域A1〜A3を、位相器12のカプラ20と電力分配器18とが互いに電磁的に干渉することなく、しかも、コンパクトにまとめることが可能となる。
【0036】
各回路素子(位相器12のカプラ20、位相器12の反射回路22及び電力分配器18)間の電磁結合の発生を抑制するためには、位相器12のカプラ20のインダクタンス成分と電力分配器18のインダクタンス成分を離すのがよい。インダクタンス成分を構成する電極の形状が大きいからである。従って、反射回路22のインダクタンス成分を、位相器12のカプラ20のインダクタンス成分と電力分配器18のインダクタンス成分から等距離に置くのが好ましい。また、位相器12のカプラ20のインダクタンス成分と反射回路22のインダクタンス成分との間、並びに電力分配器18のインダクタンス成分と反射回路22のインダクタンス成分との間にそれぞれ図示しないグランドビア(誘電体基板30に形成されたグランド電極につながるビア)を形成することで、位相器12のカプラ20のインダクタンス成分と反射回路22のインダクタンス成分との間の距離、並びに電力分配器18のインダクタンス成分と反射回路22のインダクタンス成分との間の距離を短縮することができ、発振器10の小型化をさらに促進させることができる。
【0037】
このように、本実施の形態においては、回路要素の配置も考慮に入れるようにしたので、集中定数回路でも十分に小型化が図れ、発振器10を実装した電子機器の小型化を促進させることができる。
【0038】
次に、第1の変形例に係る発振器10aについて図4を参照しながら説明する。この第1の変形例に係る発振器10aは、位相器12のカプラ20が2つのストリップライン電極を渦巻状とし、かつ、これら2つのストリップライン電極が誘電体層を間に挟んで対向されて構成されている点で異なる。
【0039】
具体的に説明すると、この第1の変形例に係る発振器10aは、図4に示すように、複数の誘電体層が積層、焼成一体化されて構成された誘電体基板30を有する。
【0040】
誘電体基板は、位相器12のカプラ20、反射回路22及び電力分配器18が形成された主要回路形成部分30Aと、該主要回路形成部分30Aの上部に積層され、位相器12のカプラ20、反射回路22及び電力分配器18と外部回路とを接続するための接続部が形成された図示しない接続部形成部分とを有する。以下の説明では、主として主要回路形成部分30Aの構成について説明する。
【0041】
誘電体基板30の主要回路形成部分30Aは、図4に示すように、上から順に、第1の誘電体層S1〜第5の誘電体層S5が積み重ねられて構成されている。これら第1〜第5の誘電体層S1〜S5は1枚あるいは複数枚の層にて構成される。
【0042】
誘電体基板30の主要回路形成部分30A内には、上述したように、位相器12のカプラ20、反射回路22及び電力分配器18が形成されている。すなわち、位相器12のカプラ20と電力分配器18とが互いに離間する位置に配置され、その間に反射回路22が配置された形態となっている。
【0043】
第1の誘電体層S1及び第5の誘電体層S5の各主面には、それぞれ内層グランド電極42及び44が形成されている。これら内層グランド電極42及び44は、図3に示すように、誘電体基板30の側面に形成されたグランド端子34a〜34dに接続されている。
【0044】
そして、図4に示すように、第2の誘電体層S2の主面には、位相器12のカプラ20を構成する第1の渦巻状のストリップライン電極40aと、反射回路22を構成する第1のインダクタンス用電極46aと、電力分配器18を構成する第1のインダクタンス用電極48aが形成されている。また、第3の誘電体層S3の主面には、位相器12のカプラ20を構成する第2の渦巻状のストリップライン電極40bと、反射回路22を構成する第2のインダクタンス用電極46bと、電力分配器18を構成する第2のインダクタンス用電極48bが形成されている。第1の渦巻状のストリップライン電極40aと第2の渦巻状のストリップライン電極40bは、第2の誘電体層S2を間に挟んで互いに対向する位置に形成されている。
【0045】
第4の誘電体層S4の主面には、位相器12の反射回路22を構成するコンデンサ電極50と、電力分配器18を構成するコンデンサ電極52が形成されている。
【0046】
つまり、図4に示すように、第2及び第3の誘電体層S2及びS3に形成された第1及び第2のインダクタンス用電極46a及び46bで位相器12の反射回路22のインダクタンス成分が構成され、第4の誘電体層S4に形成されたコンデンサ電極50と内層グランド電極44とで反射回路22のキャパシタンス成分(静電容量)が構成される。
【0047】
また、第2及び第3の誘電体層S2及びS3に形成された第1及び第2の渦巻状のストリップライン電極40a及び40bで位相器12のカプラ20が構成される。
【0048】
さらに、第2及び第3の誘電体層S2及びS3に形成された第1及び第2のインダクタンス用電極48a及び48bで電力分配器18のインダクタンス成分が構成され、第4の誘電体層S4に形成されたコンデンサ電極52と内層グランド電極44とで電力分配器18のキャパシタンス成分(静電容量)が構成される。
【0049】
このように、第1の変形例に係る発振器10aにおいては、上述した実施の形態に係る発振器10と同様に、位相器12のカプラ20と電力分配器18とが互いに離間する位置に配置され、その間に反射回路22が配置された形態となっているため、位相器12のカプラ20と電力分配器18とが互いに電磁的に干渉することなく、しかも、コンパクトにまとめることが可能となる。
【0050】
また、この第1の変形例では、位相器12のカプラ20を、第1及び第2の渦巻状のストリップライン電極40a及び40bを第2の誘電体層S2を間に挟んで対向させて構成するようにしたので、伝送特性インピーダンスを高くすることができ、小型化と性能維持を両立させることが可能となる。
【0051】
そのため、位相器12のカプラ20を集中定数回路で構成した場合よりも部品点数を大幅に低減させることができ、コストの低廉化に有利となる。また、直線状のストリップライン電極の分布定数回路で構成した場合よりも大幅な小型化を図ることができる。
【0052】
また、この第1の変形例に係る発振器10aにおいては、第2及び第3の誘電体層S2及びS3に、位相器12のカプラ20を構成する第1及び第2の渦巻状のストリップライン電極40a及び40bと、位相器12の反射回路22を構成する第1及び第2のインダクタンス用電極46a及び46bと、電力分配器18を構成する第1及び第2のインダクタンス用電極48a及び48bを形成し、第4の誘電体層S4に、位相器12の反射回路22を構成するコンデンサ電極50と、電力分配器18を構成するコンデンサ電極52を形成するようにしている。
【0053】
すなわち、インダクタンス用電極が形成される部分とコンデンサ電極が形成される部分を、誘電体基板30における複数の誘電体層の積層方向上下に分離して配置するようにしている。
【0054】
そのため、誘電率が異なる複数の誘電体層を積層させることで、インダクタンス用電極が形成される部分の誘電率と、コンデンサ電極が形成される部分の誘電率を容易に変えることができ、さらなる小型化に寄与させることができる。
【0055】
上述した第1の変形例に係る発振器10aでは、例えば第2の誘電体層S2にカプラ20を構成する第1の渦巻状のストリップライン電極40aと反射回路22を構成する第1のインダクタンス用電極46aと電力分配器を構成する第1のインダクタンス用電極48aを形成するようにしているが、それぞれ別の誘電体層に形成するようにしてもよい。これは、第3の誘電体層S3に形成された第2の渦巻状のストリップライン電極40b、第2のインダクタンス用電極46b及び第2のインダクタンス用電極48bや、第4の誘電体層S4に形成された反射回路22を構成するコンデンサ用電極50と電力分配器18を構成するコンデンサ用電極52についても同様である。
【0056】
次に、第2の変形例に係る発振器10bについて図5を参照しながら説明する。なお、図4と対応する部材については同符号を付してその重複説明を省略する。
【0057】
この第2の変形例に係る発振器10bは、上述した第1の変形例に係る発振器とほぼ同様の構成を有するが、電力分配器18が第2の誘電体層S2の主面に形成された第1の渦巻状のストリップライン電極54aと第3の誘電体層S3の主面に形成された第2の渦巻状のストリップライン電極54bとが第2の誘電体層S2を間に挟んで対向されて構成されている。
【0058】
なお、第1の変形例との比較でみた場合、図4において第4の誘電体層S4に形成された電力分配器18を構成するコンデンサ電極52が、図5(第2の変形例)では省略されている。
【0059】
この第2の変形例に係る発振器においては、位相器12のカプラ20に加えて電力分配器18についても、伝送特性インピーダンスを高くすることができ、小型化と性能維持を両立させることが可能となる。
【0060】
そのため、位相器12のカプラ20及び電力分配器18をそれぞれ集中定数回路で構成した場合よりも部品点数を大幅に低減させることができ、さらなるコストの低廉化並びに小型化を図ることができる。
【0061】
上述した第2の変形例に係る発振器10bでは、例えば第2の誘電体層S2にカプラ20を構成する第1の渦巻状のストリップライン電極40aと反射回路22を構成する第1のインダクタンス用電極46aと電力分配器を構成する第1の渦巻状のストリップライン電極54aを形成するようにしているが、それぞれ別の誘電体層に形成するようにしてもよい。これは、第3の誘電体層S3に形成された第2の渦巻状のストリップライン電極40b、第2のインダクタンス用電極46b及び第2の渦巻状のストリップライン電極54bについても同様である。
【0062】
なお、本発明に係る発振器は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施の形態に係る発振器を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態に係る発振器において、誘電体基板内における第1〜第3の形成領域の配置関係を示す説明図である。
【図3】誘電体基板内における第1〜第3の形成領域の配置関係を示す横断面図である。
【図4】本実施の形態に係る発振器の第1の変形例において、誘電体基板の主要回路形成部分における第1〜第5の誘電体層に形成される電極を示す平面図である。
【図5】本実施の形態に係る発振器の第2の変形例において、誘電体基板の主要回路形成部分における第1〜第5の誘電体層に形成される電極を示す平面図である。
【符号の説明】
【0064】
10、10a、10b…発振器 12…位相器
14…発振子 16…増幅器
18…電力分配器 20…カプラ
22…反射回路
40a、40b、54a、54b…ストリップライン電極
A1…第1の形成領域 A2…第2の形成領域
A3…第3の形成領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層が積層されて構成された誘電体基板に、少なくとも位相器と、電力分配器とを有する発振器であって、
前記誘電体基板内に、前記位相器のカプラを構成する複数の電極が形成された第1の形成領域と、前記位相器の反射回路を構成する複数の電極が形成された第2の形成領域と、前記電力分配器を構成する複数の電極が形成された第3の形成領域とを有し、
前記第1の形成領域、前記第2の形成領域及び前記第3の形成領域が、それぞれ平面的に分離した位置に配置されていることを特徴とする発振器。
【請求項2】
請求項1記載の発振器において、
前記第2の形成領域が、前記誘電体基板の平面上、ほぼ中央に配置され、
前記第1の形成領域が、前記誘電体基板の平面上、前記第2の形成領域と前記誘電体基板の一方の端面の間に形成され、
前記第3の形成領域が、前記誘電体基板の平面上、前記第2の形成領域と前記誘電体基板の他方の端面の間に形成されていることを特徴とする発振器。
【請求項3】
請求項1又は2記載の発振器において、
前記第1の形成領域には、前記位相器のカプラを構成する2つの渦巻状のストリップライン電極が誘電体層を間に挟んで対向されて形成されていることを特徴とする発振器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の発振器において、
前記第2の形成領域には、複数のインダクタンス用電極とコンデンサ用電極が形成され、前記複数のインダクタンス用電極のインダクタンスによって前記位相器の反射回路のインダクタンスが構成され、前記複数のコンデンサ用電極と前記誘電体基板に形成されたグランド電極で形成された静電容量によって、前記位相器の反射回路のキャパシタンスが構成され、
前記第3の形成領域には、複数のインダクタンス用電極と複数のコンデンサ用電極が形成され、前記複数のインダクタンス用電極のインダクタンスによって前記電力分配器のインダクタンスが構成され、前記複数のコンデンサ用電極と前記誘電体基板に形成されたグランド電極で形成された静電容量によって、前記電力分配器のキャパシタンスが構成されていることを特徴とする発振器。
【請求項5】
請求項4記載の発振器において、
前記位相器の反射回路のインダクタンスを構成する前記複数のインダクタンス用電極と、前記位相器の反射回路のキャパシタンスを構成する前記複数のコンデンサ用電極とが、前記誘電体基板における複数の誘電体層の積層方向上下に分離して配置され、
前記電力分配器のインダクタンスを構成する前記複数のインダクタンス用電極と、前記電力分配器のキャパシタンスを構成する前記複数のコンデンサ用電極とが、前記誘電体基板における複数の誘電体層の積層方向上下に分離して配置されていることを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の発振器において、
前記第3の形成領域には、前記電力分配器を構成する2つの渦巻状のストリップライン電極が誘電体層を間に挟んで対向されて形成されていることを特徴とする発振器。
【請求項7】
請求項6記載の発振器において、
前記第2の形成領域には、複数のインダクタンス用電極とコンデンサ用電極が形成され、前記複数のインダクタンス用電極のインダクタンスによって前記位相器の反射回路のインダクタンスが構成され、前記複数のコンデンサ用電極と前記誘電体基板に形成されたグランド電極で形成された静電容量によって、前記位相器の反射回路のキャパシタンスが構成されていることを特徴とする発振器。
【請求項8】
請求項7記載の発振器において、
前記位相器の反射回路のインダクタンスを構成する前記複数のインダクタンス用電極と、前記位相器の反射回路のキャパシタンスを構成する前記複数のコンデンサ用電極とが、前記誘電体基板における複数の誘電体層の積層方向上下に分離して配置されていることを特徴とする発振器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−165904(P2006−165904A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353274(P2004−353274)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】