説明

発振器

【課題】回路規模を増大することなく、複数の発振周波数を自由に選択することができる発振器を提供する。
【解決手段】複数の発振回路の出力を1つの出力ノードN1に束ね、圧電素子X1,X2の一端を、それぞれ各圧電素子に対応する増幅器の入力端に接続すると共に、圧電素子X1,X2の他端を出力ノードN1に共通して接続する。そして、選択信号SELによって、選択用トランジスタSM1,SM2及びスイッチSW1,Sw2を制御することで、圧電素子X1,X2の何れか一方を選択し駆動させることで、多入力1出力の発振器を実現する。また、複数の圧電素子のうち少なくとも一つは外部環境に影響を受けるよう実装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を使用した発振器に関し、特に複数の基本波発振を行う発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発振器を複数システムに適応させるための解決法として、発振器の多チャンネル化がある。これは、システムの要求にあわせて発振周波数を切り替え、柔軟に対応するために必須な技術である。
複数の周波数で発振する発振器としては、オーバートーン発振を利用したデュアルモード水晶発振回路(NDK)が知られている(例えば、特許文献1参照)。ここでは、水晶振動子の基本波振動に対する3次のオーバートーン振動を発振する第1の発振手段と、水晶振動子の基本波振動に対する5次のオーバートーンを発振する第2の発振手段と、第1、第2の発振手段のいずれか一方と水晶振動子との間に5次のオーバートーン振動の干渉を阻止する帯域制限手段と、を備えることで、安定な3次と5次のオーバートーン発振を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−274633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のデュアルモード水晶発振回路にあっては、1つの圧電素子でオーバートーンを取り出す方法を適用することで複数の発振周波数を得るようにしているため、周波数間隔を自由に選択できない。したがって、自由に周波数を選択するには、必要な分だけ発振器を持つ必要がある。
一般に、発振器は、図11に示すように、インバータ回路と、インバータ回路に並列に接続された帰還抵抗と、インバータ回路の入出力と接地間に夫々接続された容量素子とを含む発振回路と、一端がインバータ回路の入力端に接続されると共に他端がインバータ回路の出力端に接続される圧電素子とを備え、1つの発振回路と1つの圧電素子とを電気的に接続するために2つの電極が必要な構成となっている。
【0005】
したがって、複数(例えば、N個)の発振器を持つ場合、図12に示すように、複数の発振回路と複数の圧電素子とが必要となる。この図12に示す例では、各発振器の出力が結合容量Cc1〜CcNを介して1つに束ねられており、N個の発振回路のうち1つがオンすることで所望の発振出力を取り出すことができる。しかしながら、このようにN個の発振器を束ねた場合、回路面積は図11に示す発振器のN倍になる。
【0006】
また、図13に示すような伸長コイルが挿入された発振器を複数持つ場合、図14に示すように、出力の本数(ここではN本)分の伸長コイルと電極の数が増えるため、上述した図12の例よりもさらに回路規模の増大を招く。
そこで、本発明は、回路規模を増大することなく、複数の発振周波数を自由に選択することができる発振器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る発振器の一態様は、所定の周波数で励振される圧電素子と、増幅器を有し前記圧電素子に電流を流して当該圧電素子を励振駆動する発振回路と、をそれぞれ含む複数の圧電発振回路を備える発振器であって、前記複数の発振回路の出力が1つの出力ノードに束ねられ、前記複数の圧電素子の一端が、それぞれ各圧電素子に対応する前記増幅器の入力端に接続されると共に、前記複数の圧電素子の他端が前記出力ノードに共通して接続されており、前記複数の圧電素子のうち何れか1つを選択的に駆動する選択回路を備え、前記複数の圧電素子のうち少なくとも一つが、外部環境に影響を受けるよう実装されていることを特徴としている。
【0008】
このように、複数の発振回路の出力を1つの出力ノードに束ね、ここに必要な周波数の圧電素子の他端を共通して接続する構成とし、選択回路で複数の圧電素子のうち何れか1つを選択して駆動することで、多入力1出力の発振器を実現することができる。これにより、回路規模の増大を抑制しつつ、1つの発振器で複数の発振が可能となる。さらに、複数の圧電素子のうち少なくとも一つを、外部環境に影響を受けるよう実装することで、外部環境の変化に応じて発振周波数が変化するセンサ発振器として適用することが可能となる。
【0009】
また、上記において、前記外部環境に影響を受けるよう実装される圧電素子は、外部環境に曝されるよう実装されていることを特徴としている。
これにより、確実に外部環境の影響を受けるように構成することができる。
さらに、上記において、前記外部環境に影響を受けるよう実装される圧電素子は、物質が付着するよう構成されていることを特徴としている。
【0010】
これにより、質量センサや応力センサなどの物理センサとして適用することができる。
また、上記において、前記外部環境に影響を受けるよう実装される圧電素子は、窓あけがなされていることを特徴としている。
これにより、複数の圧電素子のうち所望の圧電素子を、容易且つ適切に外部環境の影響を受ける構成とすることができる。
【0011】
さらにまた、上記において、前記外部環境に影響を受けるよう実装される圧電素子に、反応膜が形成されていることを特徴としている。
これにより、ガスセンサに代表される化学センサとして適用することができる。
さらに、上記において、前記複数の圧電素子のうち少なくとも一つは外部環境を遮断するよう実装されることを特徴としている。
【0012】
これにより、外部環境を遮断した圧電素子で、安定な発振を行う基準発振器を構成することができる。
また、上記において、前記選択回路は、電流源と各増幅器との間にそれぞれ介装されたスイッチング素子により構成されており、各スイッチング素子を制御して、前記電流源から前記複数の増幅器のうち何れか1つに電流供給を行うことで、前記複数の圧電素子のうち何れか1つを駆動することを特徴としている。
【0013】
これにより、比較的簡易な回路構成で選択回路を実現することができる。
さらに、上記において、前記複数の圧電素子の他端が1つに束ねられた共通ノードと前記出力ノードとの間に、伸長用コイルが接続されていることを特徴としている。
これにより、発振器の周波数感度を向上させることができる。
また、上記において、前記圧電素子を除く回路部をワンチップICで構成したことを特徴としている。
【0014】
これにより、圧電素子を除く回路部を完全なるIC化とすることができる。さらに、伸長用コイルを設ける場合にも、これをICチップに内蔵することで、外付けする場合と比較して寄生の影響を受けないようにすることができ、特性を出し易くすることができる。
また、IC内部の発振回路とIC外部の圧電素子とを電気的に接続するための電極が必要となるが、多入力1出力の回路構成とすることで、複数の圧電発振回路を含む場合でも電極の数が増大するのを抑制することができる。
【0015】
さらに、上記において、前記各増幅器の入出力端と接地との間に夫々配置された容量素子を備え、前記複数の容量素子の少なくとも1つが可変容量素子であることを特徴としている。
これにより、容量素子の容量値を調整することが可能となり、周波数出力を容易に目的とする周波数に調整することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の発振器は、回路規模や部品点数を増大させることなく、複数の基本波発振を自由に選択することができるセンサ発振器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態に係る発振器を示す図である。
【図2】第1の実施形態の概念図である。
【図3】第1の実施形態における別の例(4入力1出力)を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る発振器を示す図である。
【図5】伸長コイルの機能を説明するための等価回路である。
【図6】第2の実施形態の概念図である。
【図7】第2の実施形態における別の例(4入力1出力)を示す図である。
【図8】第3の実施形態に係る発振器を示す図である。
【図9】第4の実施形態に係る発振器を示す図である。
【図10】第5の実施形態に係る発振器を示す図である。
【図11】従来の発振器(伸長コイル無)を示す図である。
【図12】N個の発振器(伸長コイル無)を持つ例を示す図である。
【図13】従来の発振器(伸長コイル有)を示す図である。
【図14】N個の発振器(伸長コイル有)を持つ例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る発振器を示す図である。
本実施形態における発振器は、IC内部に配置された発振回路とIC外部に配置された圧電素子との組からなる圧電発振回路11,12を備える。
図中NM1,NM2はインバータとして機能するトランジスタであり、トランジスタNM1,NM2の各ゲートは、夫々圧電素子X1,X2の一端と電極EL1,EL2を介して電気的に接続されている。
【0019】
また、トランジスタNM1,NM2と電流源との間に介装されるSM1,SM2は、選択信号SEL1,SEL2を受けることでオン/オフ制御されるトランジスタであり、トランジスタSM1(又はSM2)がオンの場合は、インバータとして機能するトランジスタNM1(又はNM2)へ発振器電流Idcを流し込み、オフの場合はトランジスタNM1(又はNM2)へ流れ込む発振器電流Idcを遮断する。
【0020】
さらに、R1,R2は発振回路の動作点を決定する抵抗で、該抵抗に直列につながるSW1,SW2はトランジスタSM1,SM2と夫々連動してオン/オフするスイッチである。また、C1,C2は発振回路の入力側につく容量、Cxは発振回路の出力側につく容量である。
圧電発振回路11,12の出力は、図示の通り出力ノードN1で1つに束ねられており、出力ノードN1と圧電素子X1,X2の他端を1つに束ねた共通ノードN2とが、電極EL3を介して電気的に接続された構成となっている。
【0021】
そして、制御信号SELがHレベルであるときには、制御信号SEL1=Hレベル、制御信号SEL=Lレベルとなり、トランジスタSM1及びスイッチSW1がオン、トランジスタSM2及びスイッチSW2がオフとなる。その結果、電流源Idcと圧電発振回路11のNM1,C1,Cx,X1を含む閉ループとで発振器を構成し、圧電発振回路11の出力が最終的な出力OUTとなる。
【0022】
一方、制御信号SELがLレベルであるときには、制御信号SEL1=Lレベル、制御信号SEL=Hレベルとなり、トランジスタSM2及びスイッチSW2がオン、トランジスタSM1及びスイッチSW1がオフとなる。その結果、電流源Idcと圧電発振回路12のNM2,C2,Cx,X2を含む閉ループとで発振器を構成し、圧電発振回路12の出力が最終的な出力OUTとなる。
【0023】
このように、選択信号SELを切り替えることで動作する圧電素子を切り替え、発振周波数を切替えることができる。言い換えると、選択信号SELによって閉ループを切り替えることで、1つの回路で2つの異なる発振周波数が得られる発振回路を構成することができる。
つまり、この発振器は、2個のインバータを持つために2個の入力を持つが、出力はすべて束ねて1つで実現できる、2入力1出力の回路構成を有している。
【0024】
図2は、本実施形態の概念図である。なお、ここではN個の圧電発振回路を備えた例を示している。
この図2に示すように、各圧電発振回路は、インバータ回路の入力端と出力端との間に帰還抵抗を接続した増幅器をそれぞれ有し、各出力が1つの出力ノードに束ねられている。また、各圧電素子の一端はそれぞれ対応するインバータ回路の入力端に接続され、各圧電素子の他端は共通して上記出力ノードに接続されている。
【0025】
このとき、制御信号1〜Nによって、N個の圧電発振回路のうち何れか1つが動作するように制御することで、複数の圧電発振回路の出力同士がぶつかることなく、1つだけを選択的に発振させることができる。
ところで、N個の異なる発振周波数を得るために、図11に示す構成の発振器をN個持たせる場合、N個の圧電発振回路をそのまま接続すると図12に示すような構成となり、回路規模は単純にN倍となる。また、1組の発振回路と圧電素子とを電気的に接続するためには電極が2個必要であり、N個の圧電発振回路を持つ場合には2×N個の電極が必要となる。
【0026】
したがって、図12に示す構成では出力の本数が入力と同じ本数だけあるので、多チャンネル化する場合は大きなチップ面積、実装面積が必要となる。このように、複数の発振器を束ねて多チャンネル化に対応しようとする場合、回路規模の増大を抑えることは非常に困難である。
これに対して、本実施形態では、図2に示すように、各発振回路の出力を1つの出力ノードに束ね、各圧電素子の他端を共通して当該出力ノードに接続することで、出力の本数を1本としている。そのため、N個の圧電発振回路を持つ場合でも、電極の数は(N+1)個となり、図12に示す構成と比較して回路規模を抑えることができる。
【0027】
また、本実施形態における発振器はセンサ発振器であり、X1,X2は感度のそろった圧電素子であるものとする。感度とは、入力に対する出力の変化量を意味し、同じ共振周波数である必要はない。
本実施形態では、図1に示すように、圧電素子X1を、外部環境を遮断する実装にし、圧電素子X2を、窓あけするなどして外部環境に曝される(外部環境に影響を受ける)実装にすることで、圧電素子X1を基準発振器として機能させ、圧電素子X2をセンサ発振器として機能させる。
【0028】
図1に示す回路において、選択信号SELを一定時間ごとに切り替えて動作させると、基準素子側での発振とセンサ素子側の発振とで切り替わる動作になる。基準発振器側は外部環境と遮断されているので安定な発振を続けるが、センサ発振器側は外部環境に影響を受ける発振周波数になる。この周波数応答は、圧電素子表面に物質が付着するとその質量に応じて共振周波数が変動するために生じている。
【0029】
この性質を利用することで、質量センサや応力センサなどの物理センサだけでなく、圧電素子に反応膜を形成することでガスセンサに代表される化学センサとしても使用することができる。このように、容易にセンサ回路を構築することができる。
このように、上記第1の実施形態では、複数の発振回路の出力を1つの出力ノードに束ね、複数の圧電素子の一端をそれぞれ各圧電素子に対応する増幅器の入力端に接続すると共に複数の圧電素子の他端を上記出力ノードに共通して接続し、複数の圧電素子のうち何れか1つを駆動するようにするので、多入力1出力の発振器を実現することができる。
【0030】
このとき、集積した発振回路に、所望の周波数の圧電素子を上述したように接続することで、自由に基本波発振を選択することができる発振器とすることができる。
また、圧電素子を除く回路部をワンチップICで構成することで、IC内部の発振回路とIC外部の圧電素子とを電気的に接続するための電極が必要となるが、多入力1出力の回路構成とすることで、N個の圧電発振回路を含む場合でも電極の数は(N+1)個に止めることができ、回路規模の増大を抑制することができる。
【0031】
このように、回路規模や部品点数の増大を抑制しつつ、1つの発振器で複数の発振周波数を自由に選択することができる。
また、電流源と増幅用のトランジスタとの間にそれぞれスイッチング素子(トランジスタ)介装し、各スイッチング素子を制御することで、電流源から複数の増幅器のうち何れか1つのみに電流供給を行うようにするので、比較的簡易な回路構成で、複数の圧電素子から1つを選択する選択回路を実現することができる。
【0032】
なお、上記第1の実施形態においては、2入力1出力の発振回路について説明したが、入力はいくつであってもよい。例えば、4入力1出力の発振回路とした場合の回路構成は図3に示すようになる。この場合、選択信号SEL1〜SEL4は、圧電発振回路11〜14のうち何れか1つがオンするように制御される。仮に、SEL1=Hレベル、SEL2=Lレベル、SEL3=Lレベル、SEL4=Lレベルとすると、トランジスタSM1およびスイッチSW1のみがオンとなり、トランジスタSM2〜SM4およびスイッチSW2〜SW4がオフとなるので、圧電発振回路11のみが動作する状態とすることができる。
この場合にも、4つの圧電素子X1〜X4のうち少なくとも一つは外部環境に影響を受ける実装にし、少なくとも一つは外部環境を遮断する実装にすることで、容易にセンサ回路を構築することができる。
【0033】
次に、本発明における第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態は、前述した第1の実施形態において、伸長用コイルを追加したものである。
図4は、第2の実施形態に係る2入力1出力の発振器を示す図である。
この図4に示すように、第2の実施形態の発振器は、前述した図1の発振器において、発振器の出力ノードN1と圧電素子の共通ノードN2との間に伸長コイルLsが挿入されていることを除いては、図1の発振器と同様の構成を有する。
【0034】
なお、前述した第1の実施形態と同様に、X1,X2は感度のそろった圧電素子であるものとする。また、特に図示しないが、圧電素子X1を、外部環境を遮断する実装にし、圧電素子X2を、窓あけするなどして外部環境に曝される(外部環境に影響を受ける)実装にすることで、圧電素子X1を基準発振器として機能させ、圧電素子X2をセンサ発振器として機能させる。
伸長コイルLsは、周波数感度を向上させるために設けられるものであり、ここではICチップ外部に配置するものとする。
【0035】
次に、伸長コイルの機能について以下に詳述する。
図5は、伸長コイルの機能を説明するための等価回路である。等価容量をCtとすると、CL1,CL2,Lsの直列インピーダンスは以下のようになる。
1/(jω*Ct)=1/(jω*CL1)+1/(jω*CL2)+jω*Ls
1/Ct =(1/CL1+1/CL2)−ω2*Ls ………(1)
ここで、ωは角周波数である。また、1/CL=1/CL1+1/CL2とすると、上記(1)式より以下の式が導出される。
1/Ct=1/CL−ω2*Ls
=(1−ω2*Ls*CL )/CL
∴ Ct=CL/(1−ω2*Ls*CL) ………(2)
また、圧電素子の発振周波数fは、直列共振周波数fsを用いると、
f=fs*{1+C1/(2*(C0+Ct))}
=fs*(1+Δ) ………(3)
で表される。ここで、Δ=C1/(2*(C0+Ct))、fs=1/{2*π*√(L1*C1)}である。
【0036】
上記(3)式が周波数感度(可変範囲)のLs依存性を示している。
このとき、上記(2)式からも明らかなように、
ω2*Ls*CL>1
Ls>1/(ω2*CL) ………(4)
を満たす伸長コイルではCtは負の容量として動作する。この領域では、上記(3)式が示すようにΔが大きくなるので、周波数可変範囲は大きくなる傾向になる。一方、Ctが正の領域ではΔは小さくなるので、周波数可変範囲は伸長コイルがあっても小さくなる傾向になる。
【0037】
このように、伸長コイルLsを挿入することで周波数の調整を行うことができる。
図6は、本実施形態の概念図である。なお、ここではN個の圧電発振回路を備えた例を示している。
この図6に示すように、各圧電発振回路は、インバータ回路の入力端と出力端との間に帰還抵抗を接続した増幅器をそれぞれ有し、各出力が1つの出力ノードに束ねられている。また、各圧電素子の一端はそれぞれ対応するインバータ回路の入力端に接続され、各圧電素子の他端は1つの共通ノードに束ねられ、伸長コイルを介して上記出力ノードに接続されている。
【0038】
このとき、制御信号1〜Nによって、N個の圧電発振回路のうち何れか1つが動作するように制御することで、複数の圧電発振回路の出力同士がぶつかることなく、1つだけを選択的に発振させることができる。
ところで、N個の異なる発振周波数を得るために、図13に示す構成の発振器をN個持たせる場合、N個の圧電発振回路をそのまま接続すると図14に示すような構成となり、回路規模は単純にN倍となる。また、1組の発振回路と圧電素子とを電気的に接続するためには電極が2個必要であり、さらには伸長コイルを接続するための電極も必要となるため、N個の圧電発振回路を持つ場合には3×N個の電極が必要となる。
【0039】
このように、図14に示す構成では、出力の本数が入力の本数と同じだけあるので、伸長コイルを挿入する場合、出力の本数分コイルを必要とすることになり、この伸長コイルと電極とによって回路面積が大幅に増大してしまう。
これに対して、本実施形態では、図4に示すように、各発振回路の出力を1つの出力ノードに束ね、各圧電素子の他端を共通して当該出力ノードに接続することで、出力の本数を1本とするので、挿入する伸長コイルは出力の本数と同じ1個だけで済み、大きな回路規模の増大を伴わない。また、伸長コイルを上記出力ノードと圧電素子の共通ノードとの間に挿入することにより、伸長コイルの挿入による電極の追加を伴わない。
【0040】
このように、上記第2の実施形態では、発振器に伸長コイルを挿入するので、伸長コイルのインダクタンス値を調整することで周波数感度を向上させることができる。
また、伸長コイルを発振器の出力ノードと圧電素子の共通ノードとの間に挿入するので、1個の伸長コイルを各発振回路で共通に使うことができるため、部品点数の削減効果があると共に、回路規模の増大を抑制することができる。
【0041】
なお、上記第2の実施形態においては、2入力1出力の発振回路について説明したが、入力はいくつであってもよい。例えば、4入力1出力の発振回路とした場合の回路構成は図7に示すようになる。この場合、選択信号SEL1〜SEL4は、圧電発振回路11〜14のうち何れか1つがオンするように制御される。例えば、SEL1=Hレベル、SEL2=Lレベル、SEL3=Lレベル、SEL4=Lレベルとすれば、トランジスタSM1およびスイッチSW1のみがオンとなり、圧電発振回路11のみが動作する状態とすることができる。
【0042】
次に、本発明における第3の実施形態について説明する。
この第3の実施形態は、前述した第1の実施形態において、容量素子C1,C2,Cxを可変容量素子としたものである。
図8は、第3の実施形態に係る2入力1出力の発振器を示す図である。
この図8に示すように、第3の実施形態の発振器は、前述した図1の発振器において、容量素子C1が可変容量素子C1´に置換され、容量素子C2が可変容量素子C2´に置換され、容量素子Cxが可変容量素子Cx´に置換されていることを除いては、図1の発振器と同様の構成を有する。
【0043】
なお、前述した第1の実施形態と同様に、X1,X2は感度のそろった圧電素子であるものとする。また、特に図示しないが、圧電素子X1を、外部環境を遮断する実装にし、圧電素子X2を、窓あけするなどして外部環境に曝される(外部環境に影響を受ける)実装にすることで、圧電素子X1を基準発振器として機能させ、圧電素子X2をセンサ発振器として機能させる。
【0044】
ここで、可変容量素子C1´,C2´,Cx´の容量値は、電圧レベルやデジタルコードによって変えることができる。
このような構成により、前述した第1の実施形態と同様に、選択信号SELで閉ループを切替えることで1つの回路で発振周波数が異なる発振回路を構成することができる。さらに、発振回路を構成するC1´、C2´及びCx´は可変容量素子であるので、各容量素子の容量値を変更することで、前記(3)式で示される範囲で周波数を調整することができる。
このように、上記第3の実施形態では、各増幅器の入出力端と接地との間に夫々配置された容量素子を可変容量素子とするので、容易に目的とする周波数に調整することができる。
【0045】
次に、本発明における第4の実施形態について説明する。
この第4の実施形態は、前述した第3の実施形態において、伸長コイルを追加したものである。
図9は、第4の実施形態に係る2入力1出力の発振器を示す図である。
この図9に示すように、第4の実施形態の発振器は、前述した図8の発振器において、発振器の出力ノードN1と圧電素子の共通ノードN2との間に伸長コイルLsが挿入されていることを除いては、図8の発振器と同様の構成を有する。
なお、前述した第3の実施形態と同様に、X1,X2は感度のそろった圧電素子であるものとする。また、特に図示しないが、圧電素子X1を、外部環境を遮断する実装にし、圧電素子X2を、窓あけするなどして外部環境に曝される(外部環境に影響を受ける)実装にすることで、圧電素子X1を基準発振器として機能させ、圧電素子X2をセンサ発振器として機能させる。
【0046】
伸長コイルLsは、周波数感度を向上させるために設けられるものであり、ここではICチップ外部に配置するものとする。
このような構成により、前述した第3の実施形態と同様に、選択信号SELで閉ループを切替えることで1つの回路で発振周波数が異なる発振回路を構成することができる。さらに、発振回路を構成するC1´、C2´及びCx´は可変容量素子であるので、各容量素子の容量値を変更することで、前記(3)式で示される範囲で周波数を調整することができる。加えて、伸長コイルLsのインダクタンス値を、前記(4)式を満たすように選択することにより、前述した第3の実施形態の回路よりも広い周波数可変幅をとることができる。
【0047】
図9に示すように、発振回路を構成するC1´、C2´及びCx´が可変容量素子である場合、各容量素子の容量値を変更することで容易に目的とする周波数に調整することができる。例えば、圧電素子として水晶やSAWデバイスを適用した場合にも同様に周波数の調整が可能であるが、高Q値のため、非常に狭い帯域での調整になる。このような場合、伸長コイルを挿入することで、上記不具合を容易に解消することができる。
【0048】
次に、本発明における第5の実施形態について説明する。
この第5の実施形態は、前述した第4の実施形態において、伸長コイルLsをICチップ内部に配置するようにしたものである。
図10は、第5の実施形態に係る2入力1出力の発振器を示す図である。
この図10に示すように、第5の実施形態の発振器は、前述した図9の発振器において、伸長コイルLsが、発振器の出力ノードN1と圧電素子の共通ノードN2との間で、且つICチップ内部に挿入されていることを除いては、図9の発振器と同様の構成を有する。
【0049】
なお、前述した第4の実施形態と同様に、X1,X2は感度のそろった圧電素子であるものとする。また、特に図示しないが、圧電素子X1を、外部環境を遮断する実装にし、圧電素子X2を、窓あけするなどして外部環境に曝される(外部環境に影響を受ける)実装にすることで、圧電素子X1を基準発振器として機能させ、圧電素子X2をセンサ発振器として機能させる。
【0050】
発振周波数fが1GHzを超える高周波の場合、必要な伸長コイルは1nH未満の大きさとなる。このような場合、ICチップ内部に取り込むことで所望の性能を達成できる。
例えば、発振周波数f=2GHz、CL=10pFとした場合、前記(4)式より、
Ls>0.63[nH]
を得る。この程度の数値ならば、伸長コイルLsを十分内蔵可能である。
【0051】
伸長コイルをICチップに内蔵することにより、伸長コイルを外付けにした場合よりも寄生の影響を受けないようにすることができ、特性を出し易くすることができる。
なお、上記第3〜第5の実施形態においては、容量C1´、C2´、Cx´をすべて可変容量素子で構成する場合について説明したが、仕様によっては全部を可変容量素子で構成する必要はない。
【符号の説明】
【0052】
11〜14 圧電発振回路
21,22 圧電発振回路
C1〜C4,Cx 容量素子
C1´,C2´,Cx´ 可変容量素子
EL1〜EL3 電極
NM1〜NM4 増幅用トランジスタ
SM1〜SM4 選択用トランジスタ
SW1〜SW4 選択用スイッチ
X1〜X4 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数で励振される圧電素子と、増幅器を有し前記圧電素子に電流を流して当該圧電素子を励振駆動する発振回路と、をそれぞれ含む複数の圧電発振回路を備える発振器であって、
前記複数の発振回路の出力が1つの出力ノードに束ねられ、
前記複数の圧電素子の一端が、それぞれ各圧電素子に対応する前記増幅器の入力端に接続されると共に、前記複数の圧電素子の他端が前記出力ノードに共通して接続されており、
前記複数の圧電素子のうち何れか1つを選択的に駆動する選択回路を備え、
前記複数の圧電素子のうち少なくとも一つが、外部環境に影響を受けるよう実装されていることを特徴とする発振器。
【請求項2】
前記外部環境に影響を受けるよう実装される圧電素子は、外部環境に曝されるよう実装されていることを特徴とする請求項1に記載の発振器。
【請求項3】
前記外部環境に影響を受けるよう実装される圧電素子は、物質が付着するよう構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発振器。
【請求項4】
前記外部環境に影響を受けるよう実装される圧電素子は、窓あけがなされていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の発振器。
【請求項5】
前記外部環境に影響を受けるよう実装される圧電素子に、反応膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の発振器。
【請求項6】
前記複数の圧電素子のうち少なくとも一つは外部環境を遮断するよう実装されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の発振器。
【請求項7】
前記選択回路は、電流源と各増幅器との間にそれぞれ介装されたスイッチング素子により構成されており、各スイッチング素子を制御して、前記電流源から前記複数の増幅器のうち何れか1つに電流供給を行うことで、前記複数の圧電素子のうち何れか1つを駆動することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の発振器。
【請求項8】
前記複数の圧電素子の他端が1つに束ねられた共通ノードと前記出力ノードとの間に、伸長用コイルが接続されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の発振器。
【請求項9】
前記圧電素子を除く回路部をワンチップICで構成したことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の発振器。
【請求項10】
前記各増幅器の入出力端と接地との間に夫々配置された容量素子を備え、前記複数の容量素子の少なくとも1つが可変容量素子であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−195974(P2012−195974A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−156367(P2012−156367)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【分割の表示】特願2008−188226(P2008−188226)の分割
【原出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】