説明

発振器

【課題】PLL回路を有する発振器であって、小型化を図ることができる発振器を提供する。
【解決手段】発振器100は、基板110の上方に配置された第1MEMS振動子12を含み第1発振信号を出力する基準発振回路と、基板110の上方に配置された第2MEMS振動子52を含み制御信号で発振周波数が制御され第2発振信号を出力する電圧制御発振回路と、前記第2発振信号を分周して分周信号を出力する分周回路と、前記分周信号と前記第1発振信号との位相差に基づいた前記制御信号を出力する位相比較回路と、を含み、第1MEMS振動子12および第2MEMS振動子52の各々は、第1電極と、第2電極と、を有し、第2電極は、第1電極と対向配置された可動部を有し、基板の平面視において第1MEMS振動子12の可動部の面積は、第2MEMS振動子52の可動部の面積よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
位相同期回路(PLL回路:Phase locked loop)は、周波数精度の高い出力信号を得ることができ、かつ当該出力信号の周波数を可変にできることを特徴としている。このPLL回路を有する発振器は、通信系を中心とした幅広い分野で利用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、PLL回路を有する発振器は、基準周波数となる基準信号の位相と、分周回路から出力される帰還信号の位相とを比較して、この位相差に応じた信号を電圧制御発振器に入力することにより、出力信号を基準信号の整数倍の周波数とすることができる。
【0004】
このようなPLL回路を有する発振器は、一般的に、基準周波数となる基準信号を、水晶振動子を用いた発振回路から得ている。これは、水晶振動子を用いることで、精度が高く安定した周波数が得られるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−278751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、水晶振動子は、一般的に、半導体基板上に設けることが困難である。したがって、PLL回路を有する発振器では、水晶振動子が、例えば、半導体基板上に設けられずに外付けされる。そのため、装置が大型化してしまうという問題があった。
【0007】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、PLL回路を有する発振器であって、小型化を図ることができる発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る発振器は、
基板と、
前記基板の上方に配置された第1MEMS振動子を含み、第1発振信号を出力する基準発振回路と、
前記基板の上方に配置された第2MEMS振動子を含み、制御信号に基づいて発振周波数が制御され、第2発振信号を出力する電圧制御発振回路と、
前記第2発振信号を分周して、分周信号を出力する分周回路と、
前記分周信号と前記第1発振信号との位相差に基づいた前記制御信号を出力する位相比較回路と、
を含み、
前記第1MEMS振動子および前記第2MEMS振動子の各々は、
第1電極と、
第2電極と、
を有し、
前記第2電極は、前記第1電極と対向配置された可動部を有し、
前記基板の平面視において、前記第1MEMS振動子の前記可動部の面積は、前記第2MEMS振動子の前記可動部の面積よりも大きい。
【0009】
このような発振器によれば、第1MEMS振動子を含んで構成された基準発振回路を有することができる。これにより、基準発振回路を構成する振動子を、外付けすることなく基板に配置することができる。したがって、装置の小型化を図ることができる。
【0010】
さらに、このような発振器によれば、第2MEMS振動子を含んで構成された電圧制御発振回路を有することができる。MEMS振動子を用いた発振回路は、例えば、電圧制御発振回路に一般的に用いられるLC発振回路と比べて、基板を占有する面積を小さくできる。したがって、装置の小型化を図ることができる。
【0011】
なお、本発明に係る記載では、「上方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下、「A」という)」の上方に他の特定のもの(以下、「B」という)を形成する」などと用いる場合、A上に直接Bを形成するような場合と、A上に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとして、「上方」という文言を用いている。
【0012】
本発明に係る発振器において、
さらに、前記基板の上方に配置された支持基板を含み、
前記第1MEMS振動子および前記第2MEMS振動子のうちの一方は、前記基板と前記支持基板の間に配置され、
前記第2MEMS振動子および前記第2MEMS振動子のうちの他方は、前記支持基板の上方に配置されていてもよい。
【0013】
このような発振器によれば、装置の平面視における大きさを小さくすることができる。
【0014】
本発明に係る発振器において、
前記基板の平面視において、前記第1MEMS振動子を囲む空洞空間は、前記第2MEMS振動子を囲む空洞空間と重なる領域を有してもよい。
【0015】
このような発振器によれば、装置の平面視における大きさを小さくすることができる。
【0016】
本発明に係る発振器において、
前記基準発振回路、前記電圧制御発振回路、前記分周回路、および前記位相比較回路は、前記基板の上方に配置されていてもよい。
【0017】
このような発振器によれば、装置の小型化を図ることができる。さらに、例えば、発振器を1チップ化することができる。
【0018】
本発明に係る発振器において、
前記電圧制御発振回路は、複数設けられ、
複数の前記電圧制御発振回路の各々は、互いに発振周波数が異なり、
複数の前記電圧制御発振回路のうちの1つを選択する選択回路をさらに含んでいてもよい。
【0019】
このような発振器によれば、発振器が出力する出力信号の周波数の可変幅を大きくすることができる。
【0020】
本発明に係る発振器において、
前記複数の電圧制御発振回路の各々は、互いに共振周波数が異なる第2MEMS振動子を有してもよい。
【0021】
このような発振器によれば、発振器が出力する出力信号の周波数の可変幅を大きくすることができる。
【0022】
本発明に係る発振器は、
第1面、および前記第1面とは反対側の第2面を有する基板と、
前記第1面側に配置された第1MEMS振動子を含み、第1発振信号を出力する基準発振回路と、
前記第2面側に配置された第2MEMS振動子を含み、制御信号に基づいて発振周波数が制御され、第2発振信号を出力する電圧制御発振回路と、
前記第2発振信号を分周して、分周信号を出力する分周回路と、
前記分周信号と前記第1発振信号との位相差に基づいた前記制御信号を出力する位相比較回路と、
を含み、
前記第1MEMS振動子および前記第2MEMS振動子の各々は、
第1電極と、
第2電極と、
を有し、
前記第2電極は、前記第1電極と対向配置された可動部を有し、
前記基板の平面視において、前記第1MEMS振動子の前記可動部の面積は、前記第2MEMS振動子の前記可動部の面積よりも大きい。
【0023】
このような発振器によれば、第1MEMS振動子を含んで構成された基準発振回路を有することができる。これにより、基準発振回路を構成する振動子を、外付けすることなく基板に配置することができる。したがって、装置の小型化を図ることができる。
【0024】
さらに、このような発振器によれば、第2MEMS振動子を含んで構成された電圧制御発振回路を有することができる。MEMS振動子を用いた発振回路は、例えば、電圧制御発振回路に一般的に用いられるLC発振回路と比べて、基板を占有する面積を小さくできる。したがって、装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態に係る発振器の構成を示すブロック図。
【図2】第1実施形態に係る発振器の基準発振回路を示す回路図。
【図3】第1実施形態に係る発振器の基準発振回路の変形例を示す回路図。
【図4】第1実施形態に係る発振器の電圧制御発振回路を示す回路図。
【図5】第1実施形態に係る発振器を模式的に示す断面図。
【図6】第1実施形態に係る発振器の第1MEMS振動子を模式的に示す平面図。
【図7】第1実施形態に係る発振器の第1MEMS振動子を模式的に示す断面図。
【図8】第1実施形態に係る発振器の第2MEMS振動子を模式的に示す平面図。
【図9】第1実施形態に係る発振器の第2MEMS振動子を模式的に示す断面図。
【図10】第1実施形態に係る発振器の製造工程を模式的に示す断面図。
【図11】第1実施形態に係る発振器の製造工程を模式的に示す断面図。
【図12】第1実施形態に係る発振器の製造工程を模式的に示す断面図。
【図13】第1実施形態に係る発振器の製造工程を模式的に示す断面図。
【図14】第1実施形態に係る発振器の製造工程を模式的に示す断面図。
【図15】第1実施形態に係る発振器の製造工程を模式的に示す断面図。
【図16】第1実施形態の第1変形例に係る発振器を模式的に示す断面図。
【図17】第1実施形態の第2変形例に係る発振器を模式的に示す断面図。
【図18】第1実施形態の第3変形例に係る発振器を模式的に示す断面図。
【図19】第2実施形態に係る発振器の構成を示すブロック図。
【図20】第2実施形態に係る発振器の電圧制御発振回路を示す回路図。
【図21】第2実施形態に係る発振器を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0027】
1. 第1実施形態
1.1 第1実施形態に係る発振器の構成
ます、第1実施形態に係る発振器について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る発振器100の構成を示すブロック図である。
【0028】
発振器100は、基板と、基板の上方に配置された第1MEMS振動子を含む基準発振回路10と、位相比較回路20と、チャージポンプ回路30と、ループフィルター40と、基板の上方に配置された第2MEMS振動子を含む電圧制御発振回路50と、分周回路60と、を含む。基準発振回路10、位相比較回路20、チャージポンプ回路30、ループフィルター40、電圧制御発振回路50、および分周回路60は、位相同期回路(PLL回路)を構成している。
【0029】
基準発振回路10は、基準信号(第1発振信号)freを出力する。図2は、基準発振回路10を示す回路図である。基準発振回路10は、例えば、第1MEMS振動子12と、反転増幅回路14と、を有する。
【0030】
第1MEMS振動子12は、例えば、静電型のMEMS振動子である。この第1MEMS振動子12は、電圧制御発振回路50に用いられる第2MEMS振動子よりもQ値が高い。したがって、第1MEMS振動子12を用いた基準発振回路10は、電圧制御発振回路50と比べて、周波数精度の高い信号freを出力することができる。第1MEMS振動子12は、第1端子12aと第2端子12bとを有している。第1MEMS振動子12の第1端子12aは、反転増幅回路14の入力端子14aと少なくとも交流的に接続する。第1MEMS振動子12の第2端子12bは、反転増幅回路14の出力端子14bと少なくとも交流的に接続する。なお、第1MEMS振動子12の構成例については、後述する。
【0031】
反転増幅回路14は、所望の発振条件が満たされるように、複数のインバーター(反転回路)や増幅回路を組み合わせて構成されていてもよい。図2に示す例では、反転増幅回路14は、入力端子14aから出力端子14bに向かって順に、インバーター14−1、インバーター14−2、インバーター14−3が直列に接続されて構成されている。
【0032】
基準発振回路10は、反転増幅回路14に対する帰還抵抗を含んで構成されていてもよい。図2に示す例では、インバーター14−1の入力端子と出力端子とが抵抗16を介して接続され、インバーター14−2の入力端子と出力端子とが抵抗17を介して接続され、インバーター14−3の入力端子と出力端子とが抵抗18を介して接続されている。
【0033】
基準発振回路10は、反転増幅回路14の入力端子14aと基準電位(接地電位)との間に接続された第1キャパシター19aと、反転増幅回路14の出力端子14bと基準電位(接地電位)との間に接続された第2キャパシター19bと、を含んで構成されている。これにより、基準発振回路10は、第1MEMS振動子12とキャパシター19a,19bとで共振回路を構成する発振回路とすることができる。基準発振回路10は、この発振回路で得られた発振信号を、基準信号freとして出力する。基準信号freは、図1に示すように、位相比較回路20に入力される。
【0034】
なお、基準発振回路10は、図3に示すように、さらに、分周回路10aを有していてもよい。分周回路10aは、発振回路の出力信号Voutを分周し、基準信号freを出力する。これにより、発振器100は、例えば、出力信号Voutの周波数よりも低い周波数の出力信号を得ることができる。
【0035】
位相比較回路20は、図1に示すように、基準信号freと、分周回路60の出力信号である帰還信号(分周信号)fVCO/n(nは正の整数)との位相差を比較して、この位相差に基づいた制御信号21を出力する。位相比較回路20は、2つの入力端子を有しており、一方の入力端子に基準信号freが入力され、他方の入力端子に帰還信号fVCO/nが入力される。制御信号21は、チャージポンプ回路30に入力される。
【0036】
チャージポンプ回路30は、コンデンサーを含んで構成されている。当該コンデンサーには、制御信号21に応じて、電荷が蓄積される。チャージポンプ回路30は、当該コンデンサーに蓄積された電荷によって規定される電圧を制御電圧31として出力する。すなわち、チャージポンプ回路30は、制御信号21を制御電圧31に変換する。制御電圧31は、ループフィルター40に入力される。
【0037】
ループフィルター40は、制御電圧31の高周波成分を取り除き、制御電圧41を出力する。制御電圧41は、電圧制御発振回路50に入力される。
【0038】
電圧制御発振回路50は、制御信号21に基づいて発振周波数が制御され、発振信号(第2発振信号)fVCOを出力する。図示の例では、位相比較回路20で出力された制御信号21をチャージポンプ回路30で制御電圧31に変換し、制御電圧31の高周波成分をループフィルター40で取り除いて制御電圧41とし、この制御電圧41が電圧制御発振回路50に入力される。そして、電圧制御発振回路50は、制御電圧41に基づいて発振周波数が制御される。電圧制御発振回路50は、制御電圧41(制御信号21)に基づいて、帰還信号fVCO/nの位相と基準信号freの位相とを一致させるように発振周波数を変化させる。電圧制御発振回路50は、発振信号fVCOを外部へ出力する。すなわち、発振信号fVCOは、発振器100の出力信号となる。また、電圧制御発振回路50の発振信号fVCOは、分周回路60を介して、位相比較回路20へフィードバックされる。
【0039】
図4は、電圧制御発振回路50を示す回路図である。電圧制御発振回路50は、例えば、第2MEMS振動子52と、反転増幅回路54と、第1可変コンデンサー59aと、第2可変コンデンサー59bと、を有する。
【0040】
第2MEMS振動子52は、例えば、静電型のMEMS振動子である。第2MEMS振動子52は、例えば、基準発振回路10に用いられる第1MEMS振動子12よりもQ値が低い。したがって、第2MEMS振動子52を用いた電圧制御発振回路50は、基準発振回路10と比べて、発振周波数の可変幅を大きくできる。第2MEMS振動子52は、第1端子52aと第2端子52bとを有している。第2MEMS振動子52の第1端子52aは、反転増幅回路54の入力端子54aと少なくとも交流的に接続する。第2MEMS振動子52の第2端子52bは、反転増幅回路54の出力端子54bと少なくとも交流的に接続する。なお、第2MEMS振動子52の構成例については、後述する。
【0041】
反転増幅回路54は、所望の発振条件が満たされるように、複数のインバーター(反転回路)や増幅回路を組み合わせて構成されていてもよい。図4に示す例では、反転増幅回路54は、入力端子54aから出力端子54bに向かって順に、インバーター54−1、インバーター54−2、インバーター54−3が直列に接続されて構成されている。
【0042】
電圧制御発振回路50は、反転増幅回路54に対する帰還抵抗を含んで構成されていてもよい。図4に示す例では、インバーター54−1の入力端子と出力端子とが抵抗56を介して接続され、インバーター54−2の入力端子と出力端子とが抵抗57を介して接続され、インバーター54−3の入力端子と出力端子とが抵抗58を介して接続されている。
【0043】
第1可変コンデンサー59aは、反転増幅回路54の入力端子54aと基準電位(接地電位)との間に接続されている。第2可変コンデンサー59bは、反転増幅回路54の出力端子54bと基準電位(接地電位)との間に接続されている。
【0044】
可変コンデンサー59a,59bには、制御電圧41が印加される。可変コンデンサー59a,59bに制御電圧41が印加されると、制御電圧41に応じて可変コンデンサー59a,59bの静電容量が変化し、電圧制御発振回路50の発振周波数が変化する。このようにして、電圧制御発振回路50は、帰還信号fVCO/nの位相と基準信号freの位相とを一致させるように発振周波数を変化させることができる。
【0045】
分周回路60は、図1に示すように、発振信号fVCOを所望の分周比n(nは正の整数)で分周して、帰還信号(分周信号)fVCO/nを出力する。この分周比nは、可変であってもよい。これにより、発振器100の出力信号の周波数を制御することができる。例えば、分周回路60は、制御信号CSを受けつけ、この制御信号CSに基づいて、分周比nが制御されてもよい。なお、分周回路60の分周比nは固定されていてもよい。帰還信号fVCO/nは、位相比較回路20に入力される。
【0046】
発振器100では、基準発振回路10が基準信号freを出力し、分周回路60が帰還信号fVCO/nを出力し、位相比較回路20が基準信号freと帰還信号fVCO/nとの位相差に基づいて制御信号21を出力し、電圧制御発振回路50が制御信号21に基づいて発振周波数が制御されて発振信号fVCOを出力する。これにより、発振器100は、基準信号freのn倍の周波数で信号fVCOを出力することができる。
【0047】
図5は、発振器100を模式的に示す断面図である。
【0048】
発振器100では、図5に示すように、基板110の上方に第1MEMS振動子12が配置され、基板110の上方に支持基板140が配置され、支持基板140の上方に第2MEMS振動子52および回路部160が配置されている。
【0049】
基板110は、基体112と、第1下地層114と、第2下地層116と、を有している。基体112としては、例えば、シリコン基板等の半導体基板を用いることができる。基体112として、セラミックス基板、ガラス基板、サファイア基板、ダイヤモンド基板、合成樹脂基板などの各種の基板を用いてもよい。第1下地層114は、基体112上に形成されている。第1下地層114の材質は、例えば、酸化シリコンである。第2下地層116は、第1下地層114上に形成されている。第2下地層116の材質は、例えば、窒化シリコンである。
【0050】
第1MEMS振動子12は、図示の例では、基板110と支持基板140との間に配置されている。第1MEMS振動子12は、基板110上に形成されている。図6は、第1MEMS振動子12を模式的に示す平面図である。図7は、第1MEMS振動子12を模式的に示す断面図である。なお、図7は、図6のVII−VII線断面図である。
【0051】
第1MEMS振動子12は、固定電極(第1電極)122と、可動電極(第2電極)124と、を有する。
【0052】
固定電極122は、基板110上に形成されている。固定電極122の形状は、例えば、層状又は薄膜状である。固定電極122の長さL122は、例えば、30μm以上50μm以下であり、固定電極122の幅W122は、例えば、100μm程度である。
【0053】
ここで、固定電極122の長さL122とは、可動電極124の可動部126が延出する方向(延出方向)D1における固定電極122の大きさをいう。また、固定電極122の幅W122とは、平面視において、延出方向D1に直交する方向の固定電極122の大きさをいう。なお、平面視とは、基板110の厚さ方向から見た場合をいう。また、基板110の厚さ方向とは、基板110の主面(素子が形成される面)の垂線方向をいう。第1MEMS振動子12の共振周波数は、可動部126の延出方向D1の大きさ(長さL126)に依存する。
【0054】
可動電極124は、基板110上に形成された支持部125と、支持部125から延出し固定電極122と対向配置された可動部126と、を有する。支持部125は、可動部126が固定電極122に対して対向配置されるように可動部126を支持している。可動部126は、固定電極122の上方に所定の間隔を空けて配置されている。図示の例では、可動電極124は、片持ち梁状に形成されている。
【0055】
可動電極124の長さL124は、例えば、30μm以上50μm以下である。また、可動部126の長さL126は、20μm以上40μm以下であり、可動部126の幅W126は、例えば、80μm程度である。また、可動部126の厚さT126は、例えば、100nm以上200nm以下である。
【0056】
ここで、可動電極124の長さL124とは、延出方向D1の可動電極124の大きさをいう。また、可動部126の長さL126とは、延出方向D1の可動部126の大きさをいう。可動部126の幅W126とは、平面視において、延出方向D1に直交する方向の可動部126の大きさをいう。
【0057】
固定電極122および可動電極124の間に電圧が印加されると、可動部126は、電極122,124間に発生する静電力により振動することができる。すなわち、第1MEMS振動子12は、静電型のMEMS振動子である。
【0058】
固定電極122および可動電極124の材質は、例えば、所定の不純物をドーピングすることにより導電性が付与された多結晶シリコンである。
【0059】
第1MEMS振動子12は、基板110、絶縁層130、支持基板140で囲まれた空間(空洞空間)S1に配置されている。空間S1は、例えば、減圧状態であってもよい。これにより、可動部126の振動時における空気抵抗を減少させることができる。
【0060】
空間S1の長さLS1は、例えば、300μm程度であり、空間S1の幅WS1は、例えば、200μm程度である。ここで、空間S1の長さLS1は、延出方向Dの空間S1の大きさであり、空間S1の幅WS1は、平面視において、延出方向Dと直交する方向の空間S1の大きさである。
【0061】
絶縁層130は、図5に示すように、基板110と支持基板140との間に設けられている。絶縁層130の材質は、例えば、酸化シリコンである。
【0062】
支持基板140は、絶縁層130上に形成されている。支持基板140は、図示の例では、絶縁層130を介して、基板110の上方に配置されている。支持基板140は、基体142と、第3下地層144と、第4下地層146と、を有している。
【0063】
基体142としては、例えば、シリコン基板等の半導体基板を用いることができる。基体142として、セラミックス基板、ガラス基板、サファイア基板、ダイヤモンド基板、合成樹脂基板などの各種の基板を用いてもよい。第3下地層144は、基体142上に形成されている。第3下地層144の材質は、例えば、酸化シリコンである。第4下地層146は、第3下地層144上に形成されている。第4下地層146の材質は、例えば、窒化シリコンである。支持基板140上には層間絶縁層148が形成されている。
【0064】
第2MEMS振動子52は、支持基板140上に形成されている。図8は、第2MEMS振動子52を模式的に示す平面図である。図9は、第2MEMS振動子52を模式的に示す断面図である。なお、図9は、図8のIX−IX線断面図である。
【0065】
第2MEMS振動子52は、固定電極(第1電極)522と、可動電極(第2電極)524と、を有する。
【0066】
固定電極522は、支持基板140上に形成されている。固定電極522の形状は、例えば、層状又は薄膜状である。固定電極522の長さL522は、例えば、3μm以上5μm以下であり、固定電極522の幅W522は、例えば、5μm程度である。
【0067】
ここで、固定電極522の長さL522とは、可動電極524の可動部526が延出する方向(延出方向)D2における固定電極522の大きさをいう。また、固定電極522の幅W522とは、平面視において、延出方向D2に直交する方向の固定電極522の大きさをいう。なお、第2MEMS振動子52の共振周波数は、可動部526の延出方向D2の大きさ(長さL526)に依存する。
【0068】
可動電極524は、支持基板140上に形成された支持部525と、支持部525から延出し固定電極522と対向配置された可動部526と、を有する。支持部525は、可動部526が固定電極522に対して対向配置されるように可動部526を支持している。可動部526は、固定電極522の上方に所定の間隔を空けて配置されている。図示の例では、可動電極524は、片持ち梁状に形成されている。
【0069】
可動電極524の長さL524は、例えば、3μm以上5μm以下である。また、可動部526の長さL526は、2μm以上4μm以下であり、可動部526の幅W526は、例えば、4μm程度である。また、可動部526の厚さT526は、例えば、300nm程度である。
【0070】
ここで、可動電極524の長さL524とは、延出方向D2の可動電極524の大きさをいう。また、可動部526の長さL526とは、延出方向D2の可動部526の大きさをいう。可動部526の幅W525とは、平面視において、延出方向D2に直交する方向の可動部526の大きさをいう。
【0071】
固定電極522および可動電極524の間に電圧が印加されると、可動部526は、電極522,524間に発生する静電力により振動することができる。すなわち、第2MEMS振動子52は、静電型のMEMS振動子である。
【0072】
固定電極522および可動電極524の材質は、例えば、所定の不純物をドーピングすることにより導電性が付与された多結晶シリコンである。
【0073】
被覆構造体150は、支持基板140上に設けられている。被覆構造体150は、第2MEMS振動子52を減圧状態で気密封止していてもよい。これにより、可動部526の振動時における空気抵抗を減少させることができる。第2MEMS振動子52は、被覆構造体150と支持基板140とによって囲まれた空間(空洞空間)S2に配置されている。空間S2の長さLS2(図8参照)は、例えば、15μm程度であり、空間S2の幅WS2は、例えば、12μm程度である。ここで、空間S2の長さLS2とは、延出方向D2の空間S2の大きさであり、空間S2の幅WS2とは、平面視において、延出方向D2と直交する方向の空間S2の大きさである。
【0074】
第1MEMS振動子12を囲む空間S1は、例えば、基板110の平面視において、第2MEMS振動子52を囲む空間S2と重なる領域を有する。すなわち、空間S1を基板110上に投影した投影領域が、空間S2を基板110上に投影した投影領域と重なる領域を有する。これにより、発振器の平面視における大きさを小さくすることができる。すなわち、装置の小型化を図ることができる。図5の例では、空間S1は、基板110の平面視において、空間S2と一部が重なっている。
【0075】
発振器100では、平面視において、第1MEMS振動子12の可動部126の面積(L126×W126)が、第2MEMS振動子52の可動部526の面積(L526×W526)よりも大きい。そのため、第1MEMS振動子12は、第2MEMS振動子52と比べて、損失が小さく、Q値が高い。さらに、第1MEMS振動子12は、製造誤差の影響を、第2MEMS振動子52よりも小さくできる。したがって、第1MEMS振動子12を用いた基準発振回路10は、周波数精度の高い基準信号freを出力することができる。
【0076】
また、言い換えると、発振器100では、平面視において、第2MEMS振動子52の可動部526の面積(L526×W526)が、第1MEMS振動子12の可動部126の面積(L126×W126)よりも小さい。そのため、第2MEMS振動子52は、第1MEMS振動子12と比べて、損失が大きく、Q値が低い。したがって、第2MEMS振動子52を用いた電圧制御発振回路50は、発振周波数の可変幅を大きくすることができる。
【0077】
回路部160は、支持基板140上に形成されている。回路部160は、MEMS振動子12,52以外の発振器100を動作させるための回路を有している。具体的には、回路部160は、例えば、図1に示す位相比較回路20、チャージポンプ回路30、ループフィルター40、および分周回路60を有している。さらに、回路部160は、例えば、図2に示す基準発振回路10を構成する反転増幅回路14、および図4に示す電圧制御発振回路50を構成する反転増幅回路54や可変容量ダイオード59a,59bなどを有している。すなわち、発振器100では、基準発振回路10、位相比較回路20、チャージポンプ回路30、ループフィルター40、電圧制御発振回路50、および分周回路60が、基板110の上方に形成されている。回路部160は、例えば、トランジスター162や配線164等を含んで構成されている。
【0078】
第1MEMS振動子12と回路部160とは、ボンディングワイヤ等の接続部材170を介して電気的に接続されている。図示の例では、第1MEMS振動子12は、基板110上に形成されたパッド172と電気的に接続され、このパッド172と接続部材170とが電気的に接続されている。そして、接続部材170と回路部160の配線164とが電気的に接続されている。また、第2MEMS振動子52と回路部160とは、層間絶縁層148に形成された配線(図示しない)等によって電気的に接続されている。
【0079】
封止部180は、基板110、第1MEMS振動子12、支持基板140、第2MEMS振動子52、および回路部160を封止している。これにより、これらの部材110,12,140,52,160を外部からの衝撃、湿度、熱などから保護することができる。封止部180の材質は、例えば、エポキシ樹脂である。
【0080】
端子190は、接続部材(図示しない)を介して回路部160と接続されている。端子190は、発振器100の入力端子および出力端子として機能する。端子190の材質は、例えば、導電性を有する金属である。
【0081】
1.2 第1実施形態に係る発振器の製造方法
次に、第1実施形態に係る発振器100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図10〜図15は、発振器100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0082】
図10に示すように、支持基板140上に第2MEMS振動子52、回路部160、および被覆構造体150を形成する。具体的には、まず、支持基板110上に固定電極522を形成し、次に、熱酸化処理により固定電極522を覆う犠牲層(図示しない)を形成し、犠牲層上および支持基板140上に可動電極524を形成する。固定電極522および可動電極524は、例えば、CVD法やスパッタ法などによる成膜処理、およびフォトリソグラフィー技術によるパターニング処理により形成される。次に、層間絶縁層148および被覆構造体150を形成し、被覆構造体150に形成された貫通孔(図示しない)を介してエッチング液を犠牲層に供給し、犠牲層を除去する。被覆構造体150は、例えば、CVD法などによる成膜処理およびフォトリソグラフィー技術によるパターニング処理を組み合わせることにより形成される。以上の工程により、第2MEMS振動子52および被覆構造体150が形成される。また、回路部160は、例えば、第2MEMS振動子52を形成する工程と同一工程、もしくは同種の工程で形成される。
【0083】
図11に示すように、層間絶縁層148上に保護膜132を形成する。保護膜132の材質は、例えば、ポリイミド樹脂やレジストである。次に、支持基板140の裏面(主面とは反対側の面)に絶縁層130を形成する。絶縁層130は、例えば、CVD法により形成される。
【0084】
図12に示すように、絶縁層130上にレジスト134を形成する。レジスト134は、露光および現像されることにより、所定の形状に形成される。なお、図12および図13では、便宜上、図11とは、上下を逆に示している。
【0085】
図13に示すように、レジスト134をマスクとして、絶縁層130および支持基板140をエッチングして、凹部を形成する。その後、保護膜132およびレジスト134を除去する。
【0086】
図14に示すように、基板110上に第1MEMS振動子12を形成する。第1MEMS振動子12は、例えば、上述した第2MEMS振動子52と同様の工程で形成される。次に、基板110上にパッド172を形成する。
【0087】
図15に示すように、絶縁層130と基板110を張り合わせる。これにより、基板110と支持基板140とが積層されて、積層体101が形成される。絶縁層130と基板110の張り合わせは、例えば、減圧状態で行われる。これにより、空間S1を減圧状態にすることができる。絶縁層130と基板110とは、例えば、接着剤によって接着される。次に、積層体101を、所定の大きさにダイシングしてもよい。次に、パッド172と配線164とを電気的に接続する接続部材170を形成する。
【0088】
図5に示すように、端子190および封止部180を形成する。封止部180は、基板110、第1MEMS振動子12、支持基板140、第2MEMS振動子52、および回路部160を樹脂等で覆うことにより形成される。
【0089】
以上の工程により、発振器100を製造することができる。
【0090】
発振器100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0091】
発振器100によれば、第1MEMS振動子12を含んで構成された基準発振回路10を有することができる。これにより、基準発振回路10を構成する振動子を外付けすることなく、基板110に配置することができる。したがって、装置の小型化を図ることができる。さらに、例えば、発振器100を1チップ化することができる。
【0092】
発振器100によれば、第2MEMS振動子52を含んで構成された電圧制御発振回路50を有することができる。MEMS振動子を用いた発振回路は、例えば、電圧制御発振回路に一般的に用いられるLC発振回路と比べて、基板を占有する面積を小さくできる。したがって、発振器100によれば、より装置の小型化を図ることができる。
【0093】
さらに、MEMS振動子を含んで構成された発振回路は、LC発振回路と比べて、周波数精度を高めることができる。そのため、第2MEMS振動子52を含んで構成された電圧制御発振回路50を有することにより、ループフィルター40の時定数を低くできる。これにより、帯域内のノイズを抑えることができるため、発振器の発振特性を向上できる。
【0094】
発振器100では、第1MEMS振動子12が基板110と支持基板140との間に配置され、第2MEMS振動子52が支持基板140上に配置されている。このように、発振器100では、基板110と支持基板140とが積層されているため、発振器の平面視における大きさを小さくすることができる。すなわち、装置の小型化を図ることができる。
【0095】
発振器100では、基準発振回路10、電圧制御発振回路50、分周回路60、および位相比較回路20が、基板110の上方に形成されている。これにより、装置の小型化を図ることができる。さらに、例えば、発振器を1チップ化することができる。
【0096】
1.3. 第1実施形態に係る発振器の変形例
次に、第1実施形態の変形例に係る発振器について、図面を参照しながら説明する。なお、ここでは、上述した発振器100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0097】
(1)第1変形例
まず、第1変形例について説明する。図16は、第1変形例に係る発振器200を模式的に示す断面図である。以下、第1変形例に係る発振器において、本実施形態に係る発振器100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0098】
発振器100の例では、図5に示すように、第1MEMS振動子12が基板110と支持基板140との間に配置され、第2MEMS振動子52が支持基板140の上方に配置されていた。これに対して、発振器200では、図16に示すように、第2MEMS振動子52が基板110と支持基板140との間に配置され、第1MEMS振動子12が支持基板140の上方に配置されている。このように、発振器200では、発振器100と同様に、基板110と支持基板140とが積層されているため、発振器の平面視における大きさを小さくすることができる。すなわち、装置の小型化を図ることができる。
【0099】
発振器200では、図16に示すように、層間絶縁層210および被覆構造体220が基板110上に形成されている。第2MEMS振動子52は、被覆構造体220と基板110とによって囲まれた空間S2に配置されている。第2MEMS振動子52は、基板110上に形成されている。絶縁層130は、層間絶縁層210と支持基板140との間に配置されている。また、第1MEMS振動子12は、被覆構造体150と支持基板140とによって囲まれた空間S1に配置されている。第1MEMS振動子12は、支持基板140上に形成されている。また、回路部160は、基板110上に形成されている。すなわち、回路部160は、基板110と支持基板140との間に配置されている。
【0100】
(2)第2変形例
次に、第2変形例について説明する。図17は、第2変形例に係る発振器300を模式的に示す断面図である。以下、第2変形例に係る発振器において、上述した発振器100,200の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0101】
発振器100の例では、図5に示すように、基板110と支持基板140とを有していた。これに対して、発振器300では、図17に示すように、基板110を有している。すなわち、発振器300は、支持基板を有していない。これにより、発振器300は、発振器100,200と比べて、高さHを小さくすることができる。なお、発振器300の高さHとは、端子190の先端部と封止部180の上面との間の距離をいう。
【0102】
発振器300では、第1MEMS振動子12および第2MEMS振動子52は、基板110上に形成されている。第1MEMS振動子12は、基板110上に形成された被覆構造体150と基板110とによって囲まれた空間S1に配置されている。また、第2MEMS振動子52は、被覆構造体220と基板110によって囲まれた空間S2に配置されている。回路部160は、基板110上に形成されている。
【0103】
第1MEMS振動子12の可動部126の厚さは、例えば、300nmであり、第2MEMS振動子52の可動部526の厚さは、例えば、300nmである。第1MEMS振動子12の固定電極122の厚さと、第2MEMS振動子52の固定電極122の厚さとは、例えば、同じである。このように、対応する各電極の厚さを同じにすることで、容易に第1MEMS振動子12および第2MEMS振動子52を同一基板110上に形成することができる。
【0104】
(3)第3変形例
次に、第3変形例について説明する。図18は、第3変形例に係る発振器400を模式的に示す断面図である。以下、第3変形例に係る発振器において、上述した発振器100,200,300の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0105】
発振器100の例では、図5に示すように、第1MEMS振動子12が基板110と支持基板140との間に配置され、第2MEMS振動子52が支持基板140の上方に配置されていた。これに対して、発振器400では、図18に示すように、基板110の第1面110a側に第1MEMS振動子12が配置され、基板110の第2面110b側に第2MEMS振動子52が配置されている。このように、発振器400では、発振器100,200と同様に、基板110と支持基板140とが積層されているため、発振器の平面視における大きさを小さくすることができる。すなわち、装置の小型化を図ることができる。
【0106】
基板110は、第1面110aと、第1面110aとは反対側の第2面110bと、を有している。図示の例では、第1面110aは、基板110の下面であり、第1MEMS振動子12が形成される面(主面)である。第2面110bは、基板110の上面(裏面)である。第1下地層114および第2下地層116は、第1面110aに形成されている。
【0107】
第1MEMS振動子12は、基板110の第1面110aに形成されている。また、第2MEMS振動子52および回路部160は、支持基板140の上面(主面)に形成されている。発振器400では、基板110の第2面110bと、支持基板140の下面(裏面)とが接着されている。接着は、例えば、公知の接着剤を用いて行われる。
【0108】
2. 第2実施形態
次に、第2実施形態に係る発振器について、図面を参照しながら説明する。図19は、本実施形態に係る発振器500の構成を示すブロック図である。以下、第2実施形態に係る発振器において、上述した発振器100,200,300,400の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0109】
発振器500では、互いに発振周波数の異なる電圧制御発振回路が複数設けられている。発振器500は、さらに、複数の電圧制御発振回路のうちの1つを選択する選択回路を含む。
【0110】
図示の例では、発振器100は、第1電圧制御発振回路551、第2電圧制御発振回路552、および第3電圧制御発振回路553と、第1〜第3電圧制御発振回路551,552,553のうちの1つを選択する選択回路554と、を含んで構成されている。
【0111】
第1〜第3電圧制御発振回路551,552,553は、それぞれ発振周波数が異なっている。選択回路554は、第1〜第3電圧制御発振回路551,552,553のうちの1つを選択する。図19に示す例では、第1電圧制御発振回路551を選択している状態を示している。この場合、制御電圧41は、第1電圧制御発振回路551に入力される。第1電圧制御発振回路551は、制御電圧41に基づいて発振周波数が制御され、発振信号fVCOを出力する。
【0112】
図20は、電圧制御発振回路551(552)(553)の構成を示すブロック図である。なお、図20では、図示の例が第2電圧制御発振回路552である場合、第2MEMS振動子を52−2で示し、図示の例が第3電圧制御発振回路553である場合、第2MEMS振動子を52−3で示している。
【0113】
第1電圧制御発振回路551は、第2MEMS振動子52−1を含んで構成されている。第2電圧制御発振回路552は、第2MEMS振動子52−2を含んで構成されている。第3電圧制御発振回路553は、第2MEMS振動子52−3を含んで構成されている。第2MEMS振動子52−1,52−2,52−3は、それぞれ共振周波数が異なっている。このため、第1〜第3電圧制御発振回路551,552,553は、それぞれ発振周波数が異なっている。
【0114】
選択回路554は、図19に示すように、ループフィルター40の出力端子と電圧制御発振回路551,552,553の入力端子との間の、接続状態を切り替える第1スイッチ556a,556b,556c、および電圧制御発振回路551,552,553の出力端子と分周回路60の入力端子および発振器500の出力端子との間の接続状態を切り替える第2スイッチ557a,557b,557cのうちの少なくとも一方を含むことができる。すなわち、選択回路554は、第1〜第3電圧制御発振回路551,552,553のそれぞれに対応する第1スイッチおよび第2スイッチを含んで構成されている。
【0115】
第1スイッチ556a,556b,556cおよび第2スイッチ557a,557b,557cは、少なくとも接続状態を1回以上切り換えられる構成であり、例えば、接続状態を何度も切り換えられるアナログスイッチなどで構成されていてもよいし、接続状態を1度のみ切り換えられるヒューズなどで構成されていてもよい。
【0116】
図21は、発振器500を模式的に示す断面図である。
【0117】
発振器500は、複数の第2MEMS振動子を含んで構成されている。図示の例では、発振器500は、3つの第2MEMS振動子52−1,52−2,52−3を含んで構成されている。第2MEMS振動子52−1,52−2,52−3は、支持基板140上に形成されている。第2MEMS振動子52−1,52−2,52−3は、支持基板140上に形成された3つの空間S2にそれぞれ配置されている。第2MEMS振動子52−1,52−2,52−3の可動部の長さは、例えば、それぞれ異なっている。これにより、第2MEMS振動子52−1,52−2,52−3の共振周波数を互いに異ならせることができる。
【0118】
発振器500では、電圧制御発振回路が、複数設けられ、複数の電圧制御発振回路551,552,553は、互いに発振周波数が異なり、複数の電圧制御発振回路551,552,553のうちの1つを選択する選択回路554を含んで構成されている。これにより、発振器500の出力信号fVCOの周波数の可変幅を大きくすることができる。
【0119】
さらに、発振器500は、上述した効果に加えて、第1実施形態に係る発振器100と同様の効果も奏する。
【0120】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。
【0121】
例えば、上述した例では、第1MEMS振動子および第2MEMS振動子の可動電極がいわゆる片持ち梁形状(可動部に対して支持部が1つ)である場合について説明したが、第1MEMS振動子および第2MEMS振動子の可動電極は、これに限定されず、例えば、可動部に対して支持部が複数設けられた複数梁形状(例えば両持ち梁形状)であってもよい。
【0122】
また、例えば各実施形態及び各変形例は、複数を適宜組み合わせることが可能である。
【0123】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0124】
10 基準発振回路、10a 分周回路、12 第1MEMS振動子、
12a 第1端子、12b 第2端子、14 反転増幅回路、
14−1,14−2,14−3 インバーター、14a 入力端子、14b 出力端子、
16,17,18 抵抗、19a 第1キャパシター、19b 第2キャパシター、
20 位相比較回路、21 制御信号、30 チャージポンプ回路、
31,41 制御電圧、40 ループフィルター、50 電圧制御発振回路、
52、52−1,52−2,52−3 第2MEMS振動子、52a 第1端子、
52b 第2端子、54 反転増幅回路、
54−1,54−2,56−3 インバーター、54a 入力端子、54b 出力端子、
56,57,58 抵抗、59a 第1可変コンデンサー、
59b 第2可変コンデンサー、60 分周回路、100 発振器、101 積層体、
110 基板、112 基体、114 第1下地層、116 第2下地層、
122 固定電極、124 可動電極、125 支持部、126 可動部、
130 絶縁層、132 保護膜、134 レジスト、140 支持基板、
142 基体、144 第3下地層、146 第4下地層、148 層間絶縁層、
150 被覆構造体、160 回路部、162 トランジスター、164 配線、
170 接続部材、172 パッド、180 封止部、190 端子、200 発振器、
210 層間絶縁層、220 被覆構造体、300,400 発振器、500 発振器、
522 固定電極、525 支持部、526 可動部、551 第1電圧制御発振回路、
552 第2電圧制御発振回路、553 第3電圧制御発振回路、554 選択回路、
556a,556b,556c 第1スイッチ、
557a,557b,557c 第2スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に配置された第1MEMS振動子を含み、第1発振信号を出力する基準発振回路と、
前記基板の上方に配置された第2MEMS振動子を含み、制御信号に基づいて発振周波数が制御され、第2発振信号を出力する電圧制御発振回路と、
前記第2発振信号を分周して、分周信号を出力する分周回路と、
前記分周信号と前記第1発振信号との位相差に基づいた前記制御信号を出力する位相比較回路と、
を含み、
前記第1MEMS振動子および前記第2MEMS振動子の各々は、
第1電極と、
第2電極と、
を有し、
前記第2電極は、前記第1電極と対向配置された可動部を有し、
前記基板の平面視において、前記第1MEMS振動子の前記可動部の面積は、前記第2MEMS振動子の前記可動部の面積よりも大きい、発振器。
【請求項2】
請求項1において、
さらに、前記基板の上方に配置された支持基板を含み、
前記第1MEMS振動子および前記第2MEMS振動子のうちの一方は、前記基板と前記支持基板の間に配置され、
前記第2MEMS振動子および前記第2MEMS振動子のうちの他方は、前記支持基板の上方に配置されている、発振器。
【請求項3】
請求項2において、
前記基板の平面視において、前記第1MEMS振動子を囲む空洞空間は、前記第2MEMS振動子を囲む空洞空間と重なる領域を有する、発振器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記基準発振回路、前記電圧制御発振回路、前記分周回路、および前記位相比較回路は、前記基板の上方に配置されている、発振器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記電圧制御発振回路は、複数設けられ、
複数の前記電圧制御発振回路の各々は、互いに発振周波数が異なり、
複数の前記電圧制御発振回路のうちの1つを選択する選択回路をさらに含む、発振器。
【請求項6】
請求項5において、
前記複数の電圧制御発振回路の各々は、互いに共振周波数が異なる第2MEMS振動子を有する、発振器。
【請求項7】
第1面、および前記第1面とは反対側の第2面を有する基板と、
前記第1面側に配置された第1MEMS振動子を含み、第1発振信号を出力する基準発振回路と、
前記第2面側に配置された第2MEMS振動子を含み、制御信号に基づいて発振周波数が制御され、第2発振信号を出力する電圧制御発振回路と、
前記第2発振信号を分周して、分周信号を出力する分周回路と、
前記分周信号と前記第1発振信号との位相差に基づいた前記制御信号を出力する位相比較回路と、
を含み、
前記第1MEMS振動子および前記第2MEMS振動子の各々は、
第1電極と、
第2電極と、
を有し、
前記第2電極は、前記第1電極と対向配置された可動部を有し、
前記基板の平面視において、前記第1MEMS振動子の前記可動部の面積は、前記第2MEMS振動子の前記可動部の面積よりも大きい、発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−222420(P2012−222420A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83353(P2011−83353)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】