発振器
【課題】異常発振を抑圧する発振器を提供する。
【解決手段】発振信号を起動および増幅する増幅部120と、所望の発振周波数を決定する共振部130と、を備えた発振回路110と、発振回路110の出力端子に緩衝回路160が接続された発振器100であって、増幅部120は入出力用の2端子を有する低域濾波器140と、3段の増幅回路とを有し、増幅部120の1段目増幅器121と2段目増幅器122とが不平衡型増幅器で、3段目増幅器123がオペアンプであり、2段目増幅器122の出力端子が、低域濾波器140の入力端子と3段目増幅器(オペアンプ)123の反転入力端子に接続され、低域濾波器140の出力端子が、3段目増幅器(オペアンプ)123の非反転入力端子に接続されている。
【解決手段】発振信号を起動および増幅する増幅部120と、所望の発振周波数を決定する共振部130と、を備えた発振回路110と、発振回路110の出力端子に緩衝回路160が接続された発振器100であって、増幅部120は入出力用の2端子を有する低域濾波器140と、3段の増幅回路とを有し、増幅部120の1段目増幅器121と2段目増幅器122とが不平衡型増幅器で、3段目増幅器123がオペアンプであり、2段目増幅器122の出力端子が、低域濾波器140の入力端子と3段目増幅器(オペアンプ)123の反転入力端子に接続され、低域濾波器140の出力端子が、3段目増幅器(オペアンプ)123の非反転入力端子に接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常発振を抑制する発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
発振器には発振回路が備えられ、発振回路は発振信号の起動と維持を行う増幅部と、発振周波数を決定する共振部とで構成されるのが一般的である。また、この発振回路を外部回路へ接続する際には、外部回路との一定の絶縁性を確保する事を目的に、緩衝回路を介して接続される。
特許文献1の水晶発振器では、増幅部にインバーター回路と帰還抵抗を、共振部に水晶振動子と容量を、緩衝回路にインバーター回路を用いた事例である。
【0003】
増幅部で必要となる利得は共振部の損失分により主に決定され、共振部の損失が小さい場合は特許文献1に示す様に1段の増幅器でも必要な利得を実現出来る。
一方で、共振部の損失が大きい場合、1段の増幅器で必要な利得を実現出来ない場合がある。この様な場合は、増幅部の増幅器の段数を増やして必要利得を確保するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−167236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、増幅部の段数が増加すると利得は増加するが、増幅段全体での位相変動量も増加する。この結果、増幅段の入力信号と出力信号の位相差がゼロとなる周波数f1が共振部の共振周波数f0以下となる現象が発生する。
【0006】
共振部の損失が大きい場合、増幅段の入力信号と出力信号の位相差がゼロとなる周波数f1での発振回路内の閉ループの利得が、共振部の共振周波数f0での閉ループの利得よりも大きくなり、本来望まない発振が生ずる現象、即ち異常発振が発生する。
一般的に増幅器はその性質上、低周波帯域での利得が大きくなる傾向があり、回路内の寄生容量や寄生抵抗が大きい場合、増幅段の入力信号と出力信号の位相差がゼロとなる周波数f1は低周波帯域で生じ、異常発振が発生しやすくなるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例に係る発振器は、発振信号を起動および増幅する増幅部と、所望の発振周波数を決定する共振部と、を備えた発振回路と、前記発振回路の出力端子に緩衝回路が接続された発振器であって、前記増幅部は入出力用の2端子を有する低域濾波器と、3段の増幅回路とを有し、前記増幅回路の1段目と2段目とが不平衡型増幅器で、前記増幅回路の3段目がオペアンプであり、前記2段目の前記不平衡型増幅器の出力端子が、前記低域濾波器の入力端子と前記オペアンプの反転入力端子に接続され、前記低域濾波器の出力端子が、前記オペアンプの非反転入力端子に接続されていることを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、増幅回路の3段目のオペアンプの非反転入力端子に低域濾波器を接続することにより、低域周波数での利得を抑圧することが出来る。この結果、低域周波数での発振回路の閉ループの利得を抑える事が出来、発振器の異常発振を抑圧する事が出来る。
【0010】
本適用例における具体的な数値としては、例えば共振部の共振周波数が10MHzであり、増幅段の入力信号と出力信号の位相差がゼロとなる周波数f1が100kHzである場合、低域濾波器のカットオフ周波数fcを1MHzに設定することで実用上十分な効果を得る事が出来る。
【0011】
[適用例2]上記適用例における発振器において、前記共振部に水晶振動子を備えたことが望ましい。
本適用例によれば、共振部に周波数精度の高い水晶振動子を用いることから、異常発振を抑制した高精度の発振器を提供することができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例における発振器において、前記共振部にMEMS振動子を備えたことが望ましい。
本適用例によれば、共振部にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用したMEMS振動子を用いることから、異常発振を抑制した小型化された発振器を提供することができる。
【0013】
[適用例4]本発明に係る別の適用例の発振器は、発振信号を起動および増幅する増幅部と、所望の発振周波数を決定する共振部と、を備えた発振回路と、前記発振回路の出力端子に緩衝回路が接続された発振器であって、前記増幅部は入出力用の2端子を有する低域濾波器と、3段の増幅回路とを有し、前記増幅回路の1段目と3段目とが不平衡型増幅器で、前記増幅回路の2段目がオぺアンプであり、前記1段目の前記不平衡型増幅器の出力端子が、前記低域濾波器の入力端子と前記オペアンプの反転入力端子に接続され、前記低域濾波器の出力端子が、前記オペアンプの非反転入力端子に接続されていることを特徴とする。
【0014】
本適用例によれば、増幅回路の2段目のオペアンプの非反転入力端子に低域濾波器を接続することにより、低域周波数での利得を抑圧することが出来る。この結果、低域周波数での発振回路の閉ループの利得を抑える事が出来、発振器の異常発振を抑圧する事が出来る。
【0015】
[適用例5]上記適用例における発振器において、前記共振部に水晶振動子を備えたことが望ましい。
本適用例によれば、共振部に周波数精度の高い水晶振動子を用いることから、異常発振を抑制した高精度の発振器を提供することができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例における発振器において、前記共振部にMEMS振動子を備えたことが望ましい。
本適用例によれば、共振部にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用したMEMS振動子を用いることから、異常発振を抑制した小型化された発振器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一の実施形態に係る発振器の回路構成図。
【図2】第一の実施形態に係る発振器に用いた低域濾波器の周波数通過特性図。
【図3】第一の実施形態に係る低域濾波器の構成例。
【図4】第一の実施形態に係る発振器における増幅部の開ループ利得の周波数特性図。
【図5】第二の実施形態に係る発振器の回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一の実施形態)
以下、本発明の第一の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は第一の実施形態に係る発振器の回路構成である。
発振器100は、発振信号を起動および増幅する増幅部120と、所望の発振周波数を決定する共振部130と、で構成された発振回路110と、発振回路110の出力端子に接続された緩衝回路160と、を有している。
増幅部120は、1段目増幅器121と2段目増幅器122と、3段目増幅器123と、低域濾波器140とを有している。
1段目増幅器121と2段目増幅器122は不平衡型の増幅器であり、3段目増幅器123はオペアンプにて構成されている。
低域濾波器140は入力端子141と出力端子142を備え、入力端子141は、2段目増幅器122の出力端子と3段目増幅器123の反転入力端子123Aとに接続されており、低域濾波器140の出力端子142は、3段目増幅器123の非反転入力端子123Bに接続されている。
また、共振部130は水晶振動子、またはMEMS振動子などで構成される。
なお、MEMS振動子とは、半導体プロセスを使用して半導体基板上に形成された、固有振動周波数での機械的振動を有する微小構造体であり、振動を電気特性に変換する仕組みを持った素子である。
【0019】
ここで、低域濾波器140の周波数通過特性を図2に示す。横軸に周波数、縦軸に濾波器の通過量を示す。
図2の通り、低域濾波器140は直流から一定のカットオフ周波数fc以下では通過量の減衰がほぼゼロであるが、カットオフ周波数fc以上では減衰量が斬増し、通過量が減少する特性を有する。
【0020】
この低域濾波器140の特性によれば、増幅部120での低周波帯域(例えば周波数f2の信号)の利得は、3段目増幅器(オペアンプ)123では反転入力端子123Aと非反転入力端子123Bには同じ振幅の交流信号(交流電圧)が注入されるため、信号は増幅されず、増幅部120全体での利得は1段目増幅器121及び2段目増幅器122での利得で決定される。
【0021】
一方で低域濾波器140のカットオフ周波数fc以上の周波数帯域(例えば周波数f1の信号)では、3段目増幅器123の反転入力端子123Aには一定の交流信号が入力されるのに対し、非反転入力端子123Bには低域濾波器140で阻止された交流信号が入力されないため、オペアンプの増幅能力に準じて信号が増幅される。この結果、増幅部120全体での利得は1段目増幅器121、2段目増幅器122及び3段目増幅器123の利得で決定される。
【0022】
この結果、低域濾波器140のカットオフ周波数fc以上の周波数帯域(例えば周波数f2)の増幅段の利得よりも低域濾波器140のカットオフ周波数fc以下の周波数帯域(例えば周波数f1)の増幅段の利得を低く抑える事ができる。これにより、低周波帯域での異常発振の発生を抑える事が出来る。
【0023】
図3は低域濾波器140の構成例を示した図である。ここでは抵抗Rxと容量Cxそれぞれ1素子による構成例を示しているが、例えばこれを複数段形成した2段以上の低域濾波器で構成されていても良い。
【0024】
図4に発振器における増幅部120の閉ループを1段目増幅器の入力端子で切断した場合の開ループ利得の周波数特性図を示す。この周波数特性図では横軸に周波数、縦軸に利得を示す。
上記で説明した通り、低周波帯域(例えば周波数f2)での増幅部120の利得が抑えられている事がわかる。
【0025】
なお、上記において共振部130の例として水晶振動子やMEMS振動子を示したが、これに限らず、セラミック発振子やその他の振動子及び共振器を用いても良い。
【0026】
なお、図1では3段目増幅器(オペアンプ)123の出力端子からの出力信号が発振回路出力として緩衝回路160へ接続されているが、接続方法はこれに限らず、例えば2段目増幅器122の出力端子、若しくは1段目増幅器121の出力端子が緩衝回路160に接続されていても良い。即ち、発振回路110の出力信号が効率良く緩衝回路160に注入される接続形態であれば良い。
【0027】
(第二の実施形態)
図5は第二の実施形態に係る発振器の回路構成である。
発振器200は、発振信号を起動および増幅する増幅部220と、所望の発振周波数を決定する共振部230と、で構成された発振回路210と、発振回路210の出力端子に接続された緩衝回路260と、を有している。
増幅部220は、1段目増幅器221と、2段目増幅器222と、3段目増幅器223と、低域濾波器240と、を有している。
1段目増幅器221と3段目増幅器223は不平衡型の増幅器であり、2段目増幅器222はオペアンプにて構成されている。
前記低域濾波器240は入力端子241と出力端子242を備え、1段目増幅器221の出力端子と2段目増幅器222の反転入力端子222Aとに接続されており、低域濾波器240の出力端子242は、2段目増幅器222の非反転入力端子222Bに接続されている。
また、共振部230は水晶振動子、またはMEMS振動子などで構成される。
【0028】
低域濾波器240の通過特性は第一の実施形態と同様に、直流から一定のカットオフ周波数fc以下の周波数帯域(例えば周波数f2の信号)では減衰量がほぼゼロであるが、カットオフ周波数fc以上の周波数帯域(例えば周波数f1の信号)では減衰量が斬増する特性を有する。
【0029】
これによれば、増幅部220での低周波帯域(例えば周波数f2の信号)の利得は、2段目増幅器(オペアンプ)222では反転入力端子222Aと非反転入力端子222Bには同じ振幅の交流信号(交流電圧)が注入されるため、信号は増幅されず、増幅部220全体での利得は1段目増幅器221及び3段目増幅器223での利得で決定される。
【0030】
一方で低域濾波器240のカットオフ周波数fc以上の周波数帯域(例えば周波数f1の信号)では、2段目増幅器(オペアンプ)222の反転入力端子222Aには一定の交流信号が入力されるのに対し、非反転入力端子222Bには前記低域濾波器240で阻止された交流信号が入力されないため、2段目増幅器(オペアンプ)222の増幅能力に準じて信号が増幅される。この結果、増幅部220全体での利得は1段目増幅器221、3段目増幅器223及び2段目増幅器(オペアンプ)222の利得で決定される。
【0031】
この結果、低域濾波器240のカットオフ周波数fc以上の周波数帯域(例えば周波数f2の信号)の増幅段の利得よりも前記低域濾波器240のカットオフ周波数fc以下の周波数帯域(例えば周波数f1の信号)での増幅器の利得を低く抑える事ができる。これにより、低周波帯域での異常発振の発生を抑える事が出来る。
【0032】
なお、上記において共振部230の実例として水晶振動子やMEMS振動子を示したが、第一の実施形態と同様に、セラミック発振子やその他の振動子及び共振器を用いても良い。
【0033】
なお、図5では3段目増幅器223の出力端子からの出力信号が発振回路出力として緩衝回路260へ接続されているが、接続方法はこれに限らず、例えば2段目増幅器(オペアンプ)222の出力端子、若しくは1段目増幅器221の出力端子が緩衝回路260に接続されていても良い。即ち、発振回路210の出力信号が効率良く緩衝回路260に注入される接続形態であれば良い。
【符号の説明】
【0034】
100…発振器、110…発振回路、120…増幅部、121…1段目増幅器、122…2段目増幅器、123…3段目増幅器(オペアンプ)、130…共振部、140…低域濾波器、160…緩衝回路、200…発振器、210…発振回路、220…増幅部、221…1段目増幅器、222…2段目増幅器(オペアンプ)、223…3段目増幅器、230…共振部、240…低域濾波器、260…緩衝回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常発振を抑制する発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
発振器には発振回路が備えられ、発振回路は発振信号の起動と維持を行う増幅部と、発振周波数を決定する共振部とで構成されるのが一般的である。また、この発振回路を外部回路へ接続する際には、外部回路との一定の絶縁性を確保する事を目的に、緩衝回路を介して接続される。
特許文献1の水晶発振器では、増幅部にインバーター回路と帰還抵抗を、共振部に水晶振動子と容量を、緩衝回路にインバーター回路を用いた事例である。
【0003】
増幅部で必要となる利得は共振部の損失分により主に決定され、共振部の損失が小さい場合は特許文献1に示す様に1段の増幅器でも必要な利得を実現出来る。
一方で、共振部の損失が大きい場合、1段の増幅器で必要な利得を実現出来ない場合がある。この様な場合は、増幅部の増幅器の段数を増やして必要利得を確保するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−167236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、増幅部の段数が増加すると利得は増加するが、増幅段全体での位相変動量も増加する。この結果、増幅段の入力信号と出力信号の位相差がゼロとなる周波数f1が共振部の共振周波数f0以下となる現象が発生する。
【0006】
共振部の損失が大きい場合、増幅段の入力信号と出力信号の位相差がゼロとなる周波数f1での発振回路内の閉ループの利得が、共振部の共振周波数f0での閉ループの利得よりも大きくなり、本来望まない発振が生ずる現象、即ち異常発振が発生する。
一般的に増幅器はその性質上、低周波帯域での利得が大きくなる傾向があり、回路内の寄生容量や寄生抵抗が大きい場合、増幅段の入力信号と出力信号の位相差がゼロとなる周波数f1は低周波帯域で生じ、異常発振が発生しやすくなるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例に係る発振器は、発振信号を起動および増幅する増幅部と、所望の発振周波数を決定する共振部と、を備えた発振回路と、前記発振回路の出力端子に緩衝回路が接続された発振器であって、前記増幅部は入出力用の2端子を有する低域濾波器と、3段の増幅回路とを有し、前記増幅回路の1段目と2段目とが不平衡型増幅器で、前記増幅回路の3段目がオペアンプであり、前記2段目の前記不平衡型増幅器の出力端子が、前記低域濾波器の入力端子と前記オペアンプの反転入力端子に接続され、前記低域濾波器の出力端子が、前記オペアンプの非反転入力端子に接続されていることを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、増幅回路の3段目のオペアンプの非反転入力端子に低域濾波器を接続することにより、低域周波数での利得を抑圧することが出来る。この結果、低域周波数での発振回路の閉ループの利得を抑える事が出来、発振器の異常発振を抑圧する事が出来る。
【0010】
本適用例における具体的な数値としては、例えば共振部の共振周波数が10MHzであり、増幅段の入力信号と出力信号の位相差がゼロとなる周波数f1が100kHzである場合、低域濾波器のカットオフ周波数fcを1MHzに設定することで実用上十分な効果を得る事が出来る。
【0011】
[適用例2]上記適用例における発振器において、前記共振部に水晶振動子を備えたことが望ましい。
本適用例によれば、共振部に周波数精度の高い水晶振動子を用いることから、異常発振を抑制した高精度の発振器を提供することができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例における発振器において、前記共振部にMEMS振動子を備えたことが望ましい。
本適用例によれば、共振部にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用したMEMS振動子を用いることから、異常発振を抑制した小型化された発振器を提供することができる。
【0013】
[適用例4]本発明に係る別の適用例の発振器は、発振信号を起動および増幅する増幅部と、所望の発振周波数を決定する共振部と、を備えた発振回路と、前記発振回路の出力端子に緩衝回路が接続された発振器であって、前記増幅部は入出力用の2端子を有する低域濾波器と、3段の増幅回路とを有し、前記増幅回路の1段目と3段目とが不平衡型増幅器で、前記増幅回路の2段目がオぺアンプであり、前記1段目の前記不平衡型増幅器の出力端子が、前記低域濾波器の入力端子と前記オペアンプの反転入力端子に接続され、前記低域濾波器の出力端子が、前記オペアンプの非反転入力端子に接続されていることを特徴とする。
【0014】
本適用例によれば、増幅回路の2段目のオペアンプの非反転入力端子に低域濾波器を接続することにより、低域周波数での利得を抑圧することが出来る。この結果、低域周波数での発振回路の閉ループの利得を抑える事が出来、発振器の異常発振を抑圧する事が出来る。
【0015】
[適用例5]上記適用例における発振器において、前記共振部に水晶振動子を備えたことが望ましい。
本適用例によれば、共振部に周波数精度の高い水晶振動子を用いることから、異常発振を抑制した高精度の発振器を提供することができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例における発振器において、前記共振部にMEMS振動子を備えたことが望ましい。
本適用例によれば、共振部にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用したMEMS振動子を用いることから、異常発振を抑制した小型化された発振器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一の実施形態に係る発振器の回路構成図。
【図2】第一の実施形態に係る発振器に用いた低域濾波器の周波数通過特性図。
【図3】第一の実施形態に係る低域濾波器の構成例。
【図4】第一の実施形態に係る発振器における増幅部の開ループ利得の周波数特性図。
【図5】第二の実施形態に係る発振器の回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一の実施形態)
以下、本発明の第一の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は第一の実施形態に係る発振器の回路構成である。
発振器100は、発振信号を起動および増幅する増幅部120と、所望の発振周波数を決定する共振部130と、で構成された発振回路110と、発振回路110の出力端子に接続された緩衝回路160と、を有している。
増幅部120は、1段目増幅器121と2段目増幅器122と、3段目増幅器123と、低域濾波器140とを有している。
1段目増幅器121と2段目増幅器122は不平衡型の増幅器であり、3段目増幅器123はオペアンプにて構成されている。
低域濾波器140は入力端子141と出力端子142を備え、入力端子141は、2段目増幅器122の出力端子と3段目増幅器123の反転入力端子123Aとに接続されており、低域濾波器140の出力端子142は、3段目増幅器123の非反転入力端子123Bに接続されている。
また、共振部130は水晶振動子、またはMEMS振動子などで構成される。
なお、MEMS振動子とは、半導体プロセスを使用して半導体基板上に形成された、固有振動周波数での機械的振動を有する微小構造体であり、振動を電気特性に変換する仕組みを持った素子である。
【0019】
ここで、低域濾波器140の周波数通過特性を図2に示す。横軸に周波数、縦軸に濾波器の通過量を示す。
図2の通り、低域濾波器140は直流から一定のカットオフ周波数fc以下では通過量の減衰がほぼゼロであるが、カットオフ周波数fc以上では減衰量が斬増し、通過量が減少する特性を有する。
【0020】
この低域濾波器140の特性によれば、増幅部120での低周波帯域(例えば周波数f2の信号)の利得は、3段目増幅器(オペアンプ)123では反転入力端子123Aと非反転入力端子123Bには同じ振幅の交流信号(交流電圧)が注入されるため、信号は増幅されず、増幅部120全体での利得は1段目増幅器121及び2段目増幅器122での利得で決定される。
【0021】
一方で低域濾波器140のカットオフ周波数fc以上の周波数帯域(例えば周波数f1の信号)では、3段目増幅器123の反転入力端子123Aには一定の交流信号が入力されるのに対し、非反転入力端子123Bには低域濾波器140で阻止された交流信号が入力されないため、オペアンプの増幅能力に準じて信号が増幅される。この結果、増幅部120全体での利得は1段目増幅器121、2段目増幅器122及び3段目増幅器123の利得で決定される。
【0022】
この結果、低域濾波器140のカットオフ周波数fc以上の周波数帯域(例えば周波数f2)の増幅段の利得よりも低域濾波器140のカットオフ周波数fc以下の周波数帯域(例えば周波数f1)の増幅段の利得を低く抑える事ができる。これにより、低周波帯域での異常発振の発生を抑える事が出来る。
【0023】
図3は低域濾波器140の構成例を示した図である。ここでは抵抗Rxと容量Cxそれぞれ1素子による構成例を示しているが、例えばこれを複数段形成した2段以上の低域濾波器で構成されていても良い。
【0024】
図4に発振器における増幅部120の閉ループを1段目増幅器の入力端子で切断した場合の開ループ利得の周波数特性図を示す。この周波数特性図では横軸に周波数、縦軸に利得を示す。
上記で説明した通り、低周波帯域(例えば周波数f2)での増幅部120の利得が抑えられている事がわかる。
【0025】
なお、上記において共振部130の例として水晶振動子やMEMS振動子を示したが、これに限らず、セラミック発振子やその他の振動子及び共振器を用いても良い。
【0026】
なお、図1では3段目増幅器(オペアンプ)123の出力端子からの出力信号が発振回路出力として緩衝回路160へ接続されているが、接続方法はこれに限らず、例えば2段目増幅器122の出力端子、若しくは1段目増幅器121の出力端子が緩衝回路160に接続されていても良い。即ち、発振回路110の出力信号が効率良く緩衝回路160に注入される接続形態であれば良い。
【0027】
(第二の実施形態)
図5は第二の実施形態に係る発振器の回路構成である。
発振器200は、発振信号を起動および増幅する増幅部220と、所望の発振周波数を決定する共振部230と、で構成された発振回路210と、発振回路210の出力端子に接続された緩衝回路260と、を有している。
増幅部220は、1段目増幅器221と、2段目増幅器222と、3段目増幅器223と、低域濾波器240と、を有している。
1段目増幅器221と3段目増幅器223は不平衡型の増幅器であり、2段目増幅器222はオペアンプにて構成されている。
前記低域濾波器240は入力端子241と出力端子242を備え、1段目増幅器221の出力端子と2段目増幅器222の反転入力端子222Aとに接続されており、低域濾波器240の出力端子242は、2段目増幅器222の非反転入力端子222Bに接続されている。
また、共振部230は水晶振動子、またはMEMS振動子などで構成される。
【0028】
低域濾波器240の通過特性は第一の実施形態と同様に、直流から一定のカットオフ周波数fc以下の周波数帯域(例えば周波数f2の信号)では減衰量がほぼゼロであるが、カットオフ周波数fc以上の周波数帯域(例えば周波数f1の信号)では減衰量が斬増する特性を有する。
【0029】
これによれば、増幅部220での低周波帯域(例えば周波数f2の信号)の利得は、2段目増幅器(オペアンプ)222では反転入力端子222Aと非反転入力端子222Bには同じ振幅の交流信号(交流電圧)が注入されるため、信号は増幅されず、増幅部220全体での利得は1段目増幅器221及び3段目増幅器223での利得で決定される。
【0030】
一方で低域濾波器240のカットオフ周波数fc以上の周波数帯域(例えば周波数f1の信号)では、2段目増幅器(オペアンプ)222の反転入力端子222Aには一定の交流信号が入力されるのに対し、非反転入力端子222Bには前記低域濾波器240で阻止された交流信号が入力されないため、2段目増幅器(オペアンプ)222の増幅能力に準じて信号が増幅される。この結果、増幅部220全体での利得は1段目増幅器221、3段目増幅器223及び2段目増幅器(オペアンプ)222の利得で決定される。
【0031】
この結果、低域濾波器240のカットオフ周波数fc以上の周波数帯域(例えば周波数f2の信号)の増幅段の利得よりも前記低域濾波器240のカットオフ周波数fc以下の周波数帯域(例えば周波数f1の信号)での増幅器の利得を低く抑える事ができる。これにより、低周波帯域での異常発振の発生を抑える事が出来る。
【0032】
なお、上記において共振部230の実例として水晶振動子やMEMS振動子を示したが、第一の実施形態と同様に、セラミック発振子やその他の振動子及び共振器を用いても良い。
【0033】
なお、図5では3段目増幅器223の出力端子からの出力信号が発振回路出力として緩衝回路260へ接続されているが、接続方法はこれに限らず、例えば2段目増幅器(オペアンプ)222の出力端子、若しくは1段目増幅器221の出力端子が緩衝回路260に接続されていても良い。即ち、発振回路210の出力信号が効率良く緩衝回路260に注入される接続形態であれば良い。
【符号の説明】
【0034】
100…発振器、110…発振回路、120…増幅部、121…1段目増幅器、122…2段目増幅器、123…3段目増幅器(オペアンプ)、130…共振部、140…低域濾波器、160…緩衝回路、200…発振器、210…発振回路、220…増幅部、221…1段目増幅器、222…2段目増幅器(オペアンプ)、223…3段目増幅器、230…共振部、240…低域濾波器、260…緩衝回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振信号を起動および増幅する増幅部と、
所望の発振周波数を決定する共振部と、を備えた発振回路と、
前記発振回路の出力端子に緩衝回路が接続された発振器であって、
前記増幅部は入出力用の2端子を有する低域濾波器と、3段の増幅回路とを有し、
前記増幅回路の1段目と2段目とが不平衡型増幅器で、前記増幅回路の3段目がオペアンプであり、
前記2段目の前記不平衡型増幅器の出力端子が、前記低域濾波器の入力端子と前記オペアンプの反転入力端子に接続され、
前記低域濾波器の出力端子が、前記オペアンプの非反転入力端子に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の発振器において、
前記共振部に水晶振動子を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項3】
請求項1に記載の発振器において、
前記共振部にMEMS振動子を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項4】
発振信号を起動および増幅する増幅部と、
所望の発振周波数を決定する共振部と、を備えた発振回路と、
前記発振回路の出力端子に緩衝回路が接続された発振器であって、
前記増幅部は入出力用の2端子を有する低域濾波器と、3段の増幅回路とを有し、
前記増幅回路の1段目と3段目とが不平衡型増幅器で、前記増幅回路の2段目がオぺアンプであり、
前記1段目の前記不平衡型増幅器の出力端子が、前記低域濾波器の入力端子と前記オペアンプの反転入力端子に接続され、
前記低域濾波器の出力端子が、前記オペアンプの非反転入力端子に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項5】
請求項4に記載の発振器において、
前記共振部に水晶振動子を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項4に記載の発振器において、
前記共振部にMEMS振動子を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項1】
発振信号を起動および増幅する増幅部と、
所望の発振周波数を決定する共振部と、を備えた発振回路と、
前記発振回路の出力端子に緩衝回路が接続された発振器であって、
前記増幅部は入出力用の2端子を有する低域濾波器と、3段の増幅回路とを有し、
前記増幅回路の1段目と2段目とが不平衡型増幅器で、前記増幅回路の3段目がオペアンプであり、
前記2段目の前記不平衡型増幅器の出力端子が、前記低域濾波器の入力端子と前記オペアンプの反転入力端子に接続され、
前記低域濾波器の出力端子が、前記オペアンプの非反転入力端子に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の発振器において、
前記共振部に水晶振動子を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項3】
請求項1に記載の発振器において、
前記共振部にMEMS振動子を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項4】
発振信号を起動および増幅する増幅部と、
所望の発振周波数を決定する共振部と、を備えた発振回路と、
前記発振回路の出力端子に緩衝回路が接続された発振器であって、
前記増幅部は入出力用の2端子を有する低域濾波器と、3段の増幅回路とを有し、
前記増幅回路の1段目と3段目とが不平衡型増幅器で、前記増幅回路の2段目がオぺアンプであり、
前記1段目の前記不平衡型増幅器の出力端子が、前記低域濾波器の入力端子と前記オペアンプの反転入力端子に接続され、
前記低域濾波器の出力端子が、前記オペアンプの非反転入力端子に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項5】
請求項4に記載の発振器において、
前記共振部に水晶振動子を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項4に記載の発振器において、
前記共振部にMEMS振動子を備えたことを特徴とする発振器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2013−62704(P2013−62704A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200255(P2011−200255)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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