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発振回路及び発振器

【課題】周波数などの発振特性を安定化しながら、出力変調が可能な負性抵抗素子を用いた発振回路、及びそれを用いた発振器を提供することである。
【解決手段】発振回路100は、負性抵抗素子101と、負性抵抗素子101に接続した共振回路102と、負性抵抗素子101と並列に接続した寄生発振を抑制する為の安定化回路103と、を備える。安定化回路103は、可変なシャント抵抗104と、シャント抵抗104を調整する為の調整手段105とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を発生させる為の負性抵抗素子を有する発振回路及び、それを用いた発振器などに関する。特には、テラヘルツ帯(30GHz以上30THz以下の周波数)の周波数領域における周波数成分を少なくとも一部に含む電磁波を発振する、共鳴トンネルダイオードなどの負性抵抗素子を用いた発振回路、及びそれを用いた発振器などに関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ波の周波数帯で動作して発振する固体素子として共鳴トンネルダイオード(Resonant tunneling Diode:RTD)などの負性抵抗素子を用いた発振器が提案されている。特に、RTDを用いた発振器は、RTDの半導体量子井戸構造中の電子のサブバンド間遷移に基づく電磁波利得を利用しており、テラヘルツ帯における室温発振が報告されている。特許文献1及び非特許文献1は、2重障壁型RTDと平面状のスロットアンテナを半導体基板上に集積した発振器を開示している。該発振器は、RTDの電流−電圧特性で微分負性抵抗が現れるバイアス電圧においてテラヘルツ帯で室温発振する。
【0003】
RTDなどの負性抵抗素子を用いた発振器は、電源を含むバイアス回路に起因した寄生的な低周波発振が生じることが知られている。寄生発振は、テラヘルツ波の周波数帯における所望の共振周波数の発振出力を低下させる原因となる。この課題に対して、非特許文献2は、バイアス電源とRTDとの間に安定化回路を配置する手法を開示している。安定化回路は、RTDと並列に配置した抵抗と容量から構成され、共振周波数以外の全ての周波数において共振回路を低インピーダンスにする。また、安定化回路は、RTDからλ/4以内(λはテラヘルツ帯の周波数領域における所望の共振周波数の波長)の位置に配置される。これらの工夫により、寄生発振を抑制し、負性抵抗素子を用いた発振器でテラヘルツ帯の室温発振を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−124250号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 47, No. 6 ,pp4375−4384,2008
【非特許文献2】IEEE MICROWAVE AND GUIDED WAVE LETTERS,VOL.5,NO.7,JULY 1995 pp219−221
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの発振器をテラヘルツ帯における通信やイメージングに応用するためには、発振出力の変調動作が必要となる。出力変調の方法には、従来の半導体レーザーと同様に、負性抵抗素子に印加するバイアスのスイッチングによる直接変調方法や、外部にメカニカルチョッパーや光学部品を設ける外部変調による方法がある。このうち、装置の小型化や高速化には直接変調による方法が有望である。一方、負性抵抗素子を用いた発振器は、バイアス電圧の変化によって発振周波数が変化することが知られている。非特許文献1のRTDを用いた発振器では、約0.05Vのバイアス変化で、発振周波数が7%程度変動し、それに伴い発振出力も変動している。このため、負性抵抗素子を用いた発振器は、バイアスのスイッチングによる直接変調時において、発振周波数などの発振特性が安定しない可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明の発振回路及び、それを用いた発振器は、負性抵抗素子と、負性抵抗素子に接続した共振回路と、負性抵抗素子と並列に接続した寄生発振を抑制する為の安定化回路と、を備える。そして、安定化回路は、可変なシャント抵抗と、シャント抵抗を調整する為の調整手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発振回路では、主に低周波の寄生発振を抑制する為の安定化回路に、抵抗が可変なシャント抵抗と、該シャント抵抗を調整する為の調整手段を設けた。シャント抵抗を調整することで、典型的には、負性抵抗素子を含む発振回路の低周波数帯域(DC〜数GHz)におけるインピーダンスが変化する。これに応じて、発振回路の発振周波数帯は、所望の周波数帯(代表的にはテラヘルツ帯)と低周波数帯(DC〜数GHz程度、寄生発振と呼ぶ)との間でスイッチされる。即ち、本発明の発振回路は、調整手段でシャント抵抗を変化させて寄生発振を調整することで、バイアス電圧を印加したまま、発振動作のスイッチングや発振出力の調整を行うことが可能な構成となっている。こうして、本発明の発振回路を用いれば、バイアス電圧を保持しながら、スイッチングや出力調整による変調動作が可能となる。従って、テラヘルツ帯においても、周波数などの発振特性を安定化しながら、出力変調が可能な発振回路及び、それを用いた発振器が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態の発振回路の構成と動作を説明する図。
【図2】実施形態の変形例の構成を説明する図。
【図3】実施例の発振器の構成を説明する図。
【図4】実施例の変形例の構成を説明する図。
【図5】実施例の変形例の外観図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の発振回路において重要な点は、寄生発振を抑制する為の安定化回路に、可変なシャント抵抗を設けて、周波数などの発振特性を安定化しながら発振器の出力変調を可能とすることである。こうした考え方に基づき、本発明の発振回路の基本的な構成は、上述した様になっている。
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る発振回路について図1(a)、(b)を用いて説明する。図1(a)は本実施形態の発振回路を説明し、図1(b)は本実施形態の発振回路の動作を説明する。本実施形態では、負性抵抗素子として共鳴トンネルダイオードを用いる。ただし、本発明の発振回路の範囲は以下の構成には限られず、上記基本的な構成を備えるものであれば、どの様なものでもよい。本実施形態の発振回路100は、共鳴トンネルダイオード(RTD)101、共振回路102、FET104と調整手段105を含む安定化回路103等から構成される。RTD101は、高周波利得部であり、図1(b)に示した電流電圧特性において微分負性抵抗を示す(IBias2)。共振回路102は、発振回路100の共振周波数を決定する為の共振器の役割を持つ。発振回路100は、RTD101が持つ微分負性抵抗と、共振回路102の構造で決まる共振周波数の関係から決定される周波数で発振する。ここで、本実施形態において、前記周波数は、典型的には、テラヘルツ帯の周波数領域である。電源106は、RTD101、共振回路102及び安定化回路103と並列に接続されており、発振回路100にバイアスを印加する。
【0012】
安定化回路103は、発振回路100において低周波の寄生発振を抑制する回路であり、RTD101に並列接続した容量Cstabとシャント抵抗である抵抗Rstabを少なくとも備える。安定化回路103は、電源106を含む外部回路等とRTD101とが共振しないように、RTDからλ/4以内(λはテラヘルツ帯の周波数領域における発振周波数の波長)の位置に配置することが好ましい。また、RTD101と安定化回路103とが共振しないように、安定化回路103は、低周波帯の寄生発振の波長に比べて小さい構造であることが好ましい。また、安定化回路103は、共振回路102内の定在波に対して損失とならない位置に配置されることが好ましく、例えば、定在波の節の位置に配置すると良い。
【0013】
本実施形態の発振回路100には、安定化回路103のシャント抵抗として、Rstabの他に、RTD101と並列に接続したFET104が設けられる。また、発振回路100は、FET104の抵抗を調整する為の調整手段105を備える。本実施形態では、可変抵抗の一例として、三端子素子である電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、FET)を用いている。例えば、FET104のドレイン電極はRTD101の正極側に接続され、ソース電極は接地される。ゲート電極は、調整手段105に接続され、調整手段105より適当なゲート電圧Vgが印加される。ゲート電圧Vgを調整することで、FET104のソース−ドレイン間の抵抗が可変となっている。
【0014】
発振回路100は、次の式1、式2の条件を同時に満たす時に、高周波(典型的にはテラヘルツ帯)で発振する。
振幅条件
Re[YRTD]+Re[YOSC]≦0 式1
位相条件
Im[YRTD]+Im[YOSC]=0 式2
また、低周波の領域における寄生発振は、次の式3を満たす時に抑制される。これは、RTD101は、端子aa’から電源106側の外部回路と共振する場合に、低周波帯(DC〜数GHz)で寄生発振するためである。
寄生発振抑制条件
Re[YRTD]+Re[Y]>0 式3
ここで、YRTDはRTD101のアドミタンス、Yoscは共振回路102のアドミタンス、Yaは端子aa'から電源106側の回路(安定化回路103、電源106、その他外部回路などを含んだ回路)のアドミタンスである。また、Re[YRTD]、Re[Y]、Re[YOSC]、は、アドミタンスYRTD、Y、YOSCの実部で、Im[YRTD]、Im[YOSC]は、アドミタンスYRTD、YOSCの虚部である。
【0015】
この様に、寄生発振を抑制する為には、発振回路100が式3を満たす必要があり、これを満たすためには、安定化回路103により、発振回路100を、所望の発振周波数ωosc以外の全ての周波数において低インピーダンスにすればよい。このうち、DCから数GHzまでの低周波の領域は、主に、RTD101と並列に接続された抵抗であるシャント抵抗で低インピーダンスにする。そして、それより高い周波数領域(数GHzから発振周波数ωoscまで)は、主に、並列容量Cstabで低インピーダンスにする。上記非特許文献2によれば、シャント抵抗は、RTD101の微分負性抵抗の絶対値と同じか少し小さいくらいが良いとされる。本実施形態では、抵抗が固定の並列抵抗であるRstabと抵抗が可変な並列抵抗であるFET104とがシャント抵抗の役割を果たす。
【0016】
発振回路100は、調整手段105によりFET104のゲート電圧Vを変化させてソース−ドレイン間の抵抗を調整することで、上記シャント抵抗を任意の値に調整可能である。例えば、VをVg1として、FET104とRstabの合成抵抗がRTD101の微分負性抵抗の絶対値と略同じとなるように設定した時、シャント抵抗と発振回路100の電流電圧特性はそれぞれ図1(b)のIstab1、IBias1となる。この時、DCから数GHzの周波数帯で上記式3の条件が満たされるので、低周波の寄生発振は抑制される。従って、発振回路100は、RTD101と共振回路102で決まるテラヘルツ帯の高周波において発振する(図1(b)のLosc1)。
【0017】
一方、FET104のVをVg2として、FET104とRstabの合成抵抗を微分負性抵抗の絶対値より大きくすれば、シャント抵抗と発振回路100の電流電圧特性は図1(b)のIstab2、IBias2のようになる。この時、寄生発振の抑制条件(上記式3)が満たされなくなる為、発振回路100は、例えば数GHzの低周波において発振し、テラヘルツ帯の高周波では、発振出力が弱まる(図1(b)のLosc2)。このように、発振回路100は、バイアス電圧(VBias)を印加したまま、調整手段105とFET104とでシャント抵抗の値を調整して、発振のスイッチングや発振出力の調整を行うことができる。また、シャント抵抗を調整することで、発振回路100の出力変調を行うことが可能となる。
【0018】
以上の様に、安定化回路104に配置した、抵抗が可変なシャント抵抗を調整して、発振回路100の低周波におけるインピーダンスを調整することで、発振回路100の出力調整やスイッチングが可能となる。これを利用することで、従来の懸案であったRTD発振回路の出力変調時における発振周波数などの発振特性の不安定性の問題が解決されることになる。
【0019】
更に、本実施形態の構成であれば、トランジスタなどの変調手段をRTDの近傍に小型に集積することができる。このため、バイアスによる直接変調に比べて、電源などの外部回路に起因する遅延が回避され、より高速な変調動作が期待される。また、バイアス以外の調整手段105で変調ができるため、従来の直接変調に比べて制御の自由度が向上する。また、変調の際にバイアス切替を行う必要が無いため、過渡現象に起因したサージ電流などにより素子が故障するリスクも低減される。
【0020】
尚、以上の本実施形態において、負性抵抗素子として、エサキダイオードや、ガンダイオード、IMPATTダイオード、TUNNETTダイオードなどを用いても良い。また、抵抗が可変なシャント抵抗としては、本実施形態にあげたトランジスタ以外に、フォトレジスタ、サーミスタ、磁気抵抗や歪抵抗のように、それぞれ、光、熱、磁気や応力で抵抗変化する材料を用いても良い。この場合、発振回路300は図2(a)に示したようになり、例えば、光照射手段305によってフォトレジスタ素子304を調整してもよいし、応力印加手段305で歪抵抗素子304を調整してもよい。いずれの場合も、可変抵抗は寄生発振の波長より小さい構造であることが好ましい。また、図2(b)に示した発振回路400のように、調整手段405により、スイッチ404を調整してシャント抵抗を切り替えることで、発振出力のスイッチングや調整を行っても良い。この際、調整手段405は、RTD101と共振回路102に対して干渉しないように選択される。スイッチ404は、寄生発振の波長より小さい構造であることが好ましい。
【0021】
また、共振回路102として、空洞導波管、マイクロストリップ共振器、パッチアンテナ共振器、スロットアンテナ共振器などを用いれば、発振回路100から効率良く高周波を電磁波として外部に取り出すことが可能となる。また、共振回路として、後述する図5に示したプラズモン導波路を用いれば、より高出力な発振回路が実現される。
【0022】
以下、本発明のより具体的な実施例について詳細を説明する。
(実施例)
本実施例に係る発振回路について、図3から図5を用いて説明する。図3(a)は本実施例の外観図であり、図3(b)は本実施例の断面図である。図4(a)、図4(b)、及び図5は本実施例の変形例を説明する図である。
【0023】
本実施例の発振回路200は、基板230上に形成され、主にRTD201、パッチアンテナ202、FET204、調整手段205、MIM(Metal−Insulator−Metal)構造209、抵抗体210から構成される。RTD201は、以下の構成の3重障壁量子井戸構造を用いている。
第一障壁層 AlAs 1.3nm
第一量子井戸層 InGaAs 7.6nm
第二障壁層 InAlAs 2.6nm
第二量子井戸層 InGaAs 5.6nm
第三障壁層 AlAs 1.3nm
ここで、第一量子井戸層、第二障壁層、第二量子井戸層は面方位(100)のInPに格子整合したInGaAs/InAlAsである。第一障壁層、第三障壁層は、InPに格子整合していないAlAsで、臨界薄膜より薄く、エネルギーの高い障壁となっている。3重障壁量子井戸構造を、ノンドープInGaAsからなるスペーサ層、n+InGaAsから構成される電気接点層で上下から挟み共鳴トンネルダイオードが構成される。また、RTD201の上下には、高濃度にドーピングしたn++InGaAsのコンタクト層220a、220bを配置する。
【0024】
RTD201は、直径約2μmΦのメサ構造で、塩素系ガスを用いたICP−RIE(Inductive Coupled Plasama−Reactive Ion Etching)法により形成する。RTD201は、コンタクト層220aに接続した第1電極211と、コンタクト層220bに接続したGND電極212aとで上下から挟まれている。本実施例で用いたRTD201では、電流密度がJ=280kA/cm、ピークバレイ比が約3、微分負性抵抗が約−22Ωの電流電圧特性が得られる。
【0025】
パッチアンテナ202は、2枚の金属層で誘電体を挟んだ構造のアンテナであり、図1の回路図では共振回路102にあたる。発振周波数は、誘電体材料の種類と厚さ、パッチアンテナ202の辺の長さ、RTD201の大きさや位置などで決定される。パッチアンテナ202は、第1電極211とGND電極212aの間に誘電体層208がサンドイッチされた構造であり、第1電極211とGND電極212a間の誘電体中を電磁波が定在する。第1電極211は、150μm×150μmの正方形状のλ/2パッチであり、発振周波数は約0.5THzである。RTD201は、第1電極211の中心からA’A方向に40μm程ずらした位置に配置することで、パッチアンテナ202とRTD201とがインピーダンスマッチするように設計している。λ/2パッチには、λ/4マイクロストリップ線路224が接続され、MIM構造209の第2電極221とFET204の第3電極222とに接続する。マイクロストリップ線路は、パッチアンテナ202の共振電磁界の定在波が節となる位置に配置する。
【0026】
第1電極211は、リフトオフで形成したTi/Pd/Au(20nm/20nm/200nm)からなる金属層であり、高濃度にドーピングしたn++InGaAsへの低抵抗オーミック電極として知られている。本実施例では、第1電極211、第2電極221、第3電極222は、Ti/Pd/Au(20nm/20nm/200nm)層で一体形成する。誘電体層208は、高周波電磁波の低損失材料として知られるBCB(ベンゾシクロブテン)を用いる。誘電体層208の層厚は約3μmであり、スピンコート法とドライエッチング法を用いて形成する。誘電体層208は第1電極211とGND電極212aをDC的に絶縁する役割も持つ。GND電極層212aはリフトオフで形成したTi/Pd/Au/Ti(20nm/20nm/200nm/20nm)からなる金属層を用いる。GND電極層212a、212b、212cは接地している。
【0027】
安定化回路103は、並列容量CstabであるMIM構造209と、可変抵抗のFET204と固定抵抗の並列抵抗体210とからなるシャント抵抗と、調整手段105となる電源205より構成される。並列容量Cstabは、第2電極221とGND電極212bとで誘電体層208をサンドイッチしたMIM構造209を用いる。本実施例では、数GHzから発振周波数ωoscまでの高い周波数領域でショートするように、容量が数pFとなるように設計されている。
【0028】
並列抵抗体210は、第2電極221とGND電極層212bとの間に接続され、両者間を低周波で低インピーダンスにするシャント抵抗の一部となる。並列抵抗体210には半金属であるビスマスを使用し、約50Ωとなるように200μm×80μm×1μm厚のビスマス膜をリフトオフ法で形成する。FET204は、InP系のRTDと集積する為に、InP系のHEMT(High Electron Mobility Transistor)を用いる。同一のInP基板上に、HEMT、RTDの順にエピタキシャル成長し、RTDを含む多層膜の一部をウェットエッチングで除去することで、HEMT構造を形成する。例えば、Jpn.J.Appl.Phys.,Vol,42,2367(2003)に開示された構造を利用する。その主な構成は、InAlAsキャリア供給層235、InGaAsチャネル層236、InGaAs/InAlAsキャップ層234、InAlAsバッファ層237、ゲート長0.1μmである。ゲート幅は、所望の抵抗値を得るために300μmとした。ドレイン電極231、ソース電極232、ゲート電極233は、n+InGaAsにはオーミック接触、且つ、InAlAsにはショットキー接触となるTi/Pt/Auを用いる。ドレイン電極231、ソース電極232、ゲート電極233は、それぞれAuで形成したスルーホール238a、238b、238cで誘電体層の上面に引き出され、第3電極222、第4電極225、第5電極226と接続する。第3電極222は、マイクロストリップ線路224を介してパッチアンテナ202と接続され、MIM構造209の第2電極221と実質的には一致する。また、第4電極225はGND電極212cと接続して接地される。第5電極226は、調整手段105となる電源205に接続される。
【0029】
RTD201は、Vbias=0.7Vで約−22Ωの微分負性抵抗を持つ。本実施例のHEMTであれば、V=0.3Vにおいて、ソース−ドレイン間の微分抵抗は約30Ωとなり、RstabとFET204からなるシャント抵抗の合成抵抗は約20Ωとなる。発振回路200は、低周波においてショートされ、寄生発振は抑制されるため、テラヘルツ帯の0.4THzにおいて発振する。一方、V=−0.3Vにおいて、ソース−ドレイン間の微分抵抗は約500Ωとなり、RstabとFET204からなるシャント抵抗の合成抵抗は約45Ωとなる。このため、発振回路200は、低周波では十分にショートされず寄生発振が生じ、その結果、テラヘルツ帯における発振出力は弱まる。
【0030】
このように、本実施例の発振回路200は、安定化回路に設置したFET204のソース−ドレイン間の抵抗を調整手段で調整して、発振回路の発振出力のスイッチングや調整が可能となる。本実施例により、従来の懸案であったRTD発振回路の出力変調時の周波数などの発振特性の不安定性の問題が解決される。本実施例の変形例として、図4(a)のように、電流源505を含む安定化回路503の可変抵抗にHBT504を用い、共振回路の構造としてプラズモン導波路を用いた構成がある。プラズモン導波路は、図5に示した通り、2つ電極511、512でRTD501と誘電体層508をサンドイッチした共振構造で、本実施例の発振回路500を高出力化する上で好適な構造である。また、複数のRTD501を共振構造内に周期的に配置しても良い。このような構造では、RTD501を含む層とHBT504を含む層は、金属接合により基板530に転写される。ここで、電極522、電極525、電極526(電流源505に接続)はそれぞれHBT504のコレクタ電極、エミッタ電極、ベース電極(不図示)から引き出された電極であり、HBT504はエミッタ接地である。
【0031】
このような構成であれば、高出力で、且つ、出力の調整やスイッチングが容易な発振回路500が実現される。また、本実施例の他の変形例として、図4(b)のようにシャント抵抗として、可変抵抗のFET604(ベースは電圧源605に接続)と、非線形素子であるショットキーバリアダイオード606を並列に配置した構成であって良い。この場合は、より低消費電力な発振回路600が実現される。可変抵抗は、例えば三端子素子であれば、HFET、MOSFET、JFET、IGBTなどがある。また、抵抗変化の生じる材料としては、TMR(トンネル磁気抵抗)のような不揮発性記録能力を利用した材料や、電気パルスで抵抗変化が生じるペロブスカイト材料や、歪で抵抗が変化する歪抵抗効果を有する材料を用いた可変抵抗であっても良い。抵抗体に電気信号や光や熱を入力することで抵抗を調整できる可変抵抗であれば何でも良く、図2(a)に示したように、調整手段からの入力信号で抵抗を調整する。また、図2(b)のように、複数のシャント抵抗とスイッチとを備える場合は、静電引力で動作するアクチュエータを利用したMEMSスイッチや、FETやダイオードを組み合わせたスイッチング回路がある。
【0032】
本実施例では、RTD201として、InP基板上に成長したInGaAs/InAlAs、InGaAs/AlAsからなる3重障壁共鳴トンネルダイオードについて説明してきた。しかし、これらの構造や材料系に限られることなく、他の構造や材料の組み合わせであっても本実施例の半導体素子を提供できる。例えば、2重障壁量子井戸構造を有する共鳴トンネルダイオードや、4重以上の多重障壁量子井戸を有する共鳴トンネルダイオードを用いても良い。また、材料系としては、GaAs基板上に形成したGaAs/AlGaAs/、GaAs/AlAs、InGaAs/GaAs/AlAs、InP基板上の、InGaAs/AlGaAsSb、InAs基板上のInAs/AlAsSb、InAs/AlSbや、Si基板上に形成したSiGe/SiGeの組み合わせであっても良い。これら構造と材料は、所望の周波数などに応じて適宜選定すれば良い。尚、本発明ではキャリアが電子である場合を想定して説明をしているが、これに限定されるものではなく、正孔(ホール)を用いたものであっても良い。ただし、この場合、回路素子の極性を入れ替える必要がある。また、基板230、530の材料は用途に応じて選定すればよく、シリコン基板、ガリウムヒ素基板、インジウムヒ素基板、ガリウムリン基板、窒化ガリウム基板などの半導体基板や、ガラス基板、セラミック基板、樹脂基板などを用いても良い。上述した構造は既存の半導体プロセスを用いて作製することができる。
【符号の説明】
【0033】
100…発振器、101…負性抵抗素子(RTD)、102…共振回路、103…安定化回路、104…シャント抵抗(トランジスタ)、105…調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負性抵抗素子と、前記負性抵抗素子に接続した共振回路と、前記負性抵抗素子と並列に接続した寄生発振を抑制する為の安定化回路と、を備え、
前記安定化回路は、可変なシャント抵抗と、前記シャント抵抗を調整する為の調整手段とを備えることを特徴とする発振回路。
【請求項2】
前記調整手段により前記シャント抵抗を調整することで発振出力の調整またはスイッチングを行うことを特徴とする請求項1に記載の発振回路。
【請求項3】
前記シャント抵抗はトランジスタを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の発振回路。
【請求項4】
前記安定化回路は、前記共振回路を共振する定在波の節となる位置に接続されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の発振回路。
【請求項5】
前記負性抵抗素子は共鳴トンネルダイオードであることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の発振回路。
【請求項6】
請求項1から5記載の何れか1項に記載の発振回路を基板上に集積したことを特徴とする発振器。
【請求項7】
負性抵抗素子を備えた発振回路の調整方法であって、寄生発振を抑制する安定化回路のシャント抵抗を変化させて、前記発振回路の低周波帯におけるインピーダンスを調整して、前記発振回路の前低周波帯よりも高い周波帯における発振出力の調整やスイッチングを行うことを特徴とする調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−61274(P2011−61274A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205671(P2009−205671)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,297)