説明

発振回路

【課題】外部に水晶振動子を備えた発振回路において、水晶入力端子から進入するサージ電圧の急峻な立ち上がりに対してインバータを保護し、発振回路が破壊されることを防ぐ。
【解決手段】発振回路1は、水晶入力端子2からインバータ5の入力端に至る信号路に、水晶入力端子2から進入するサージ電圧よってインバータ5が破壊されることを防ぐ保護回路10を設けるとともに、保護回路10とインバータ5との間の信号路に、抵抗値が50Ω以上、好ましくは50Ω〜500Ωの入力抵抗14を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部に水晶振動子を備えた発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の発振回路は、水晶振動子を接続する入力端子と出力端子を備え、前記入力端子(以下、水晶入力端子といい、また、前記出力端子を水晶出力端子という。)とインバータの入力端との間の信号路に、前記水晶入力端子から進入するサージ電圧よって前記インバータが破壊されることを防ぐための保護回路を設けているのが一般的である。そして、この保護回路は、例えば、信号路とアース側(電源電圧VDD)との間にダイオードをアース側に順方向接続し、信号路と定電圧側(電源電圧より低い一定電圧)との間にダイオードを低電圧側に逆方向接続し、信号路に進入するサージ電圧をその極性に応じて、アース側あるいは定電圧側に放電させている。(特許文献1参照)
【0003】
また、従来の保護回路における静電破壊耐性の不十分さを補い、保護回路自体をサージ電圧による破壊から守るために、保護抵抗を保護回路に対応する信号路に直列に接続することが提案されている。(特許文献1)
【特許文献1】特開平10−160867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した改良提案では、保護回路の保護は可能となっても、サージ電圧の急峻な立ち上がりからインバータを保護し、発振回路が破壊されることを防ぐことはできなかった。本発明は、このような不都合を解消した発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、サージ電圧によるインバータの破壊には、保護回路とインバータとの間の信号路における抵抗値が関係していることに着目し、鋭意実験を重ねた結果、抵抗値が50Ω以上の入力抵抗を設けると、サージ電圧が発振回路に伝わる前に、保護回路によって放電することができることに想到し、本発明をなしたものである。図2はマイナス極性のサージ電圧における入力抵抗と静電耐圧の関係を示す実験結果のグラフであり、CDM(Charged Device Model)の規格に基づいた値である。このグラフから分かるように、入力抵抗が50Ω以上になると、破壊電圧が−2000Vを超えて、十分な耐圧特性を示すようになり、入力抵抗値を500Ωまで高くしてもこの耐圧特性は変わらず、破壊電圧値は−2000〜−2300V程度を維持することが確認された。
【0006】
すなわち、本発明は、水晶入力端子からインバータの入力端に至る信号路に、前記水晶入力端子から進入するサージ電圧よって前記インバータが破壊されることを防ぐ保護回路を設けてなる発振回路において、前記保護回路と前記インバータの入力端との間の信号路に、抵抗値が50Ω以上、好ましくは50Ω〜500Ωの入力抵抗を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る発振回路によれば、抵抗値が50Ω以上の入力抵抗を設けることによって、絶対値が2000V程度の高いサージ電圧が水晶入力端子から進入しても、保護回路が確実に機能して発振回路が破壊されることがないという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態を、図1に示す概略的な回路図に基づいて説明する。発振回路1の入出力端である水晶入力端子2と水晶出力端子3との間には、外部素子として水晶振動子4を接続している。前記水晶入力端子2はインバータ5の入力端に接続し、インバータ5の出力端はドレイン抵抗6を介して前記水晶出力端子3に接続している。また、インバータ5の出力端を、100kΩの帰還(フィードバック)抵抗7を介して、インバータ5の入力端に接続している。
【0009】
水晶入力端子2からインバータ5の入力端に至る信号路には、信号路とVSS(マイナス電源端子)との間にはダイオード8をVSS側に逆方向接続し、信号路とVDD(プラス電源端子)との間にはダイオード9をVDD側に順方向接続して、保護回路10を形成している。この保護回路10は、信号路の電圧がVDD以上になった場合にはダイオード9を介してVDD側に放電し、前記電圧がVSS以下になった場合にはダイオード8を介してVSS側に放電する。また、インバータ5の入力側及び出力側とVDDの間には、それぞれ位相補償用コンデンサ11,12を設けている。さらに、VDDとVSSとの間には、ダイオード13をVSS側に逆方向接続している。
【0010】
また、保護回路10とインバータ5の帰還路接続部との間の信号路に、50Ωの入力抵抗14を設けている。このように、保護回路10とインバータ5の帰還路接続部との間の信号路に、50Ωの入力抵抗14を設けることによって、急峻なサージ電圧が水晶入力端子2から進入した場合でも、このサージ電圧がインバータ5の入力端に加わる前に、保護回路10を介して放電することができる。すなわち、サージ電圧がプラス極性の場合にはダイオード9を介してVDD側に放電し、サージ電圧がマイナス極性の場合にはダイオード8を介してVSS側に放電する。そして、このサージ電圧の絶対値が2000V程度であっても、十分な耐圧効果を奏することは、図2に示すところで明らかである。
【0011】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、例えば、入力抵抗14を設ける位置は、信号路におけるインバータ5の入力端と帰還路接続部との間でもよい。また、入力抵抗14の抵抗値は、帰還抵抗7の抵抗値も考慮して設定することが好ましく、発振特性への影響を考慮すると、50〜500Ωが好適である。すなわち、本発明者らの実験によると、500Ωを超えると発振特性への影響が大きくなる一方、50Ω未満では、十分な静電耐圧効果を得られないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】発振回路の概略的な回路図。
【図2】入力抵抗の抵抗値と静電耐圧との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0013】
1 発振回路
2 水晶入力端子
3 水晶出力端子
4 水晶振動子
5 インバータ
8,9 ダイオード
10 保護回路
14 入力抵抗


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の水晶振動子を接続する入力端子と出力端子を備え、前記入力端子からインバータの入力端に至る信号路に、前記入力端子から進入するサージ電圧よって前記インバータが破壊されることを防ぐ保護回路を設けてなる発振回路において、
前記保護回路と前記インバータの入力端との間の信号路に、抵抗値が50Ω以上の入力抵抗を設けた
ことを特徴とする発振回路。


【図1】
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【図2】
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