説明

発振回路

【課題】高周波発振であっても安定した発振を行なえる。
【解決手段】発振回路1は、圧電振動子を所定の周波数で励振させる発振回路部を備え、発振回路部の等価回路ECは、負性抵抗RLと容量性リアクタンスCLが直接接続された直列モデルで構成されている。発振回路部の一方の端子ECAにコイルLSの一方の端子が直列接続され、発振回路部の他方の端子ECBとコイルLSの他方の端子との間に抵抗RPが並列接続されている。コイルLSの他方の端子と抵抗RPの一方の端子との接続点が、圧電振動子との接続を行う一方の圧電振動子接続用端子Aとされ、抵抗RPの他方の端子と発振回路部の他方の端子ECBとの接続点が、圧電振動子との接続を行う他方の圧電振動子接続用端子Bとされている。また、抵抗RPの絶対値は、負性抵抗RLの絶対値よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の周波数で励振する圧電振動子の発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、圧電振動子の発振回路として、コルピッツ型発振回路などがよく用いられている。
【0003】
コルピッツ型発振回路の一例として、下記する特許文献に記載の発振回路がある。
【0004】
下記する特許文献1の発振回路は、発振用トランジスタのベースと接地(GND)間に負荷容量の一部となるコンデンサとコンデンサとの直列回路を接続し、発振用トランジスタのエミッタと接地間にエミッタ抵抗となる抵抗と抵抗との直列回路を接続し、コンデンサとコンデンサとの直列回路の接続中点と抵抗と抵抗との直列回路の接続中点とを接続している。また、発振用トランジスタのベースと接地間に圧電振動子を接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−017258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した特許文献1に示すような従来の発振回路では、高周波発振で用いるために十分な負性抵抗を確保することが難しく、その結果、安定した発振が難しい。
【0007】
具体的に、上記したような発振回路の等価回路ECを、インピーダンスを負性抵抗RL,リアクタンスを容量性リアクタンスCLで表した場合、図14に示すような回路となる。この図14に示す発振回路では、圧電振動子のCI値よりも大きな負性抵抗RLを必要とするが、高周波発振の場合、負性抵抗が小さくなり(図3の記号2の波形参照)、圧電振動子のCI値よりも負性抵抗RLが小さい場合、圧電振動子の不発振などの不具合が生じる。
【0008】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、圧電振動子の高周波発振であっても安定した発振を行なえる発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる発振回路は、圧電振動子を所定の周波数で励振させる発振回路部を備える発振回路において、前記発振回路部の等価回路は、負性抵抗と容量性リアクタンスが直接接続された直列モデルで構成され、前記発振回路部の一方の端子に誘導性リアクタンス素子の一方の端子が直列接続され、前記発振回路部の他方の端子と前記誘導性リアクタンス素子の他方の端子との間に抵抗が並列接続され、前記誘導性リアクタンス素子の他方の端子と前記抵抗の一方の端子との接続点が、圧電振動子との接続を行う一方の圧電振動子接続用端子とされ、前記抵抗の他方の端子と前記直列等価回路の他方の端子との接続点が、圧電振動子との接続を行う他方の圧電振動子接続用端子とされ、前記抵抗の絶対値は、前記負性抵抗の絶対値よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、当該発振回路の負性抵抗の値を大きくすることが可能となる。具体的に、前記誘導性リアクタンスと前記容量性リアクタンスとにより負荷容量がキャンセルされ、前記容量性リアクタンスが原因となって前記発振回路部の等価回路における負性抵抗の値が低くなるのを防止することが可能となる。また、前記抵抗が前記発振回路部の等価回路に並列に接続されるので、前記負性抵抗と前記抵抗によって当該発振回路における負性抵抗の値を増加させることが可能となる。そのため、本発明は、高周波発振回路に好適である。また、前記抵抗の絶対値は、前記負性抵抗の絶対値よりも大きいので、当該発振回路における負性抵抗の値を顕著に(数倍)増加させることが可能となる。
【0011】
具体的に、負性抵抗をRLとし、容量性リアクタンスをCLとし、誘導性リアクタンスをLSとし、抵抗をRPとし、圧電振動子との接続用端子をA,Bとして、負性抵抗RLと容量性リアクタンスCLとの直列等価回路に、容量性リアクタンスCLとキャンセルする誘導性リアクタンス素子LSを直列に接続し、さらに抵抗RPを並列に接続した場合の圧電振動子との接続用端子A−B間のインピーダンスは、次のようにして求められる。
【0012】
誘導性リアクタンス素子LSと容量性リアクタンスCLがキャンセルされた場合、発振回路は抵抗RPと負性抵抗RLとの並列回路のみとなる。ここで、圧電振動子との接続用端子A−B間のインピーダンスをRL’とすると、圧電振動子との接続用端子A−B間のインピーダンスRL’は、以下の式により求められる。
【0013】
【数1】

【0014】
抵抗RPの値が負性抵抗の絶対値|RL|より大きければ、圧電振動子との接続用端子A−B間のインピーダンスRL’は絶対値が負性抵抗RLより大きい負の値となり、その結果、負性抵抗RLが拡大される。例えば、負性抵抗RL=−100Ω、抵抗RP=120Ωの場合、圧電振動子との接続用端子A−B間のインピーダンスRL’=600Ωとなり、圧電振動子との接続用端子A−B間のインピーダンスRL’は、負性抵抗RLの6倍の値になる。
【0015】
また、一般的に、上記した数1により、圧電振動子との接続用端子A−B間のインピーダンスRL’と負性抵抗RLとの比は次式となる。
【0016】
【数2】

【0017】
数2より、負性抵抗の拡大率RL’/RLは、付加する抵抗RPと負性抵抗RLとの比RP/|RL|で決定される。この式から、RP/|RL|が1倍を超えることが、負性抵抗を拡大することの必要条件となることがわかる。
【0018】
次に、これらの関係を図2のグラフに示す。
【0019】
図2に示すように、RP/|RL|の値が大きくなるほど負性抵抗の拡大の効果は減少し、10倍では負性抵抗の拡大の効果は約1.1倍となる。このことから、少なくとも10%程度の負性抵抗の拡大を得ることを考慮すると、抵抗RPの絶対値は、負性抵抗RLの絶対値に対して1倍を超えて10倍以下であることが好ましい。
【0020】
上記構成において、誘導性リアクタンス素子として、通常インダクタを用いてもよい。誘導性リアクタンス素子としてインダクタを用いた場合、負荷容量とキャンセルされるのは、これらの共振周波数近傍に限定される。このように、負性抵抗の拡大の効果が得られるのは、インダクタと負荷容量との共振周波数付近に限定される。このことから、誘導性リアクタンス素子としてインダクタを用いた場合、負性抵抗を拡大して、安定発振が可能になるのと同時に、他の周波数における不要発振の危険性を低減する効果も得られる。
【0021】
また、上記の目的を達成するため、本発明にかかる別の発振回路は、圧電振動子を所定の周波数で励振させる発振回路部を備える発振回路において、前記発振回路部の等価回路は、負性抵抗と誘導性リアクタンスが直接接続された直列モデルで構成され、前記発振回路部の一方の端子に容量性リアクタンス素子の一方の端子が直列接続され、前記発振回路部の他方の端子と前記容量性リアクタンス素子の他方の端子との間に抵抗が並列接続され、前記容量性リアクタンス素子の他方の端子と前記抵抗の一方の端子との接続点が、圧電振動子との接続を行う一方の圧電振動子接続用端子とされ、前記抵抗の他方の端子と前記発振回路部の他方の端子との接続点が、圧電振動子との接続を行う他方の圧電振動子接続用端子とされ、前記抵抗の絶対値は、前記負性抵抗の絶対値よりも大きいことを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、当該発振回路の負性抵抗の値を大きくすることが可能となる。具体的に、前記容量性リアクタンス素子と前記誘導性リアクタンスとにより負荷容量がキャンセルされ、前記誘導性リアクタンスが原因となって前記発振回路部の等価回路における負性抵抗の値が低くなるのを防止することが可能となる。また、前記抵抗が前記発振回路部の等価回路に並列に接続されるので、前記負性抵抗と前記抵抗によって当該発振回路における負性抵抗の値を増加させることが可能となる。そのため、本発明は、高周波発振回路に好適である。また、前記抵抗の絶対値は、前記負性抵抗の絶対値よりも大きいので、当該発振回路における負性抵抗の値を顕著に(数倍)増加させることが可能となる。
【0023】
前記構成において、前記発振回路部にバイポーラトランジスタが用いられ、前記抵抗に容量が直列接続され、直列接続された前記抵抗と前記容量とは、前記発振回路部の他方の端子と、前記誘導性リアクタンス素子の他方の端子との間に並列接続されてもよい。
【0024】
この場合、前記発振回路部にバイポーラトランジスタが用いられ、前記抵抗に容量が直列接続され、直列接続された前記抵抗と前記容量とは、前記発振回路部の他方の端子と、前記誘導性リアクタンス素子の他方の端子との間に並列接続されているので、前記トランジスタの直流動作に悪影響を与えることを無くして安定した発振回路が得られる。
【0025】
上記構成において、前記発振回路部にバイポーラトランジスタが用いられ、400MHz以上の高周波発振回路として用いられてもよい。
【0026】
この場合、前記発振回路部にバイポーラトランジスタが用いられているので、MOS−FETと比較して、フリッカ雑音(1/f雑音)が少なく、また高周波帯域において増幅器としてのゲインを大きくとることが可能となり、その結果、高周波発振に適しており、具体的に400MHz以上の高周波発振回路として用いることが好ましい。その結果、位相雑音性能の優れた高周波発振回路が得られる。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかる発振回路によれば、圧電振動子の高周波発振であっても安定した発振を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本実施の形態にかかる発振回路の概略図である。
【図2】図2は、本発明にかかる負性抵抗の拡大率RL’/RLと、抵抗RPと負性抵抗RLとの比RP/|RL|との関係を示したグラフ図である。
【図3】図3は、本実施の形態にかかる発振回路と、従来の発振回路との高周波の帯域における負性抵抗を示したグラフ図である。
【図4】図4は、本実施例にかかる発振回路の回路図である。
【図5】図5は、本実施例にかかる発振回路の高周波の帯域における負性抵抗を示し、パラメータを抵抗RPとしたグラフ図である。
【図6】図6は、本実施例にかかる発振回路の高周波の帯域における負性抵抗を示し、パラメータをコイルLSとしたグラフ図である。
【図7】図7は、本実施例にかかる発振回路において抵抗RP、コイルLS、コンデンサCacを省いた発振回路の高周波の帯域における負性抵抗を示したグラフ図である。
【図8】図8は、本実施の他の形態にかかる発振回路の概略図である。
【図9】図9は、本実施の他の形態にかかる発振回路の回路図である。
【図10】図10は、本実施の他の形態にかかる発振回路の回路図である。
【図11】図11は、本実施の他の形態にかかる発振回路の回路図である。
【図12】図12は、本実施の他の形態にかかる発振回路の回路図である。
【図13】図13は、本実施の他の形態にかかる発振回路の回路図である。
【図14】図14は、従来例にかかる発振回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態(実施例含む)では、圧電振動子として水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。
【0030】
本実施の形態にかかるエミッタ接地の発振回路1は、圧電振動子を所定の周波数で励振させる発振回路部を備え、図1に示すように、発振回路部の等価回路(以下、等価回路ECという)は、負性抵抗RLと容量性リアクタンスCLとが直列接続された直列モデルで構成されている。なお、ここでいう発振回路部の等価回路などの本実施の形態の発振回路1の具体例は、以下の実施例に示す。
【0031】
この発振回路1では、図1に示すように、発振回路部の等価回路ECと、発振回路1のリアクタンスの容量をキャンセルさせるための誘導性リアクタンス素子のコイルLSと、発振回路1の負性抵抗の値を増加させるための抵抗RPとから構成されている。
【0032】
具体的に、発振回路部の等価回路ECの一方の端子ECAに、コイルLSの一方の端子が直列接続され、発振回路部の等価回路ECの他方の端子ECBとコイルLSの他方の端子との間に抵抗RPが並列接続されて構成されている。
【0033】
また、コイルLSと抵抗RPとの接続点を一方の水晶振動子との接続用端子Aとし、抵抗RPと発振回路1との接続点を他方の水晶振動子との接続用端子Bとする。
【0034】
なお、本実施の形態では、コイルLSの他方の端子と抵抗RPの一方の端子との接続点が、水晶振動子との接続を行う接続用端子A(本発明でいう一方の圧電振動子接続用端子)とされ、抵抗RPの他方の端子と発振回路部の等価回路ECの他方の端子との接続点が、水晶振動子との接続を行う接続用端子B(本発明でいう他方の圧電振動子接続用端子)とされる。
【0035】
また、ここでいう抵抗RPの絶対値は、負性抵抗RLの絶対値よりも大きくなるように設定され、具体的に、抵抗RPの絶対値は、負性抵抗RLの絶対値に対して1倍を超えて10倍以下であることが望ましい。
【0036】
具体的に、負性抵抗RLと容量性リアクタンスCLとから構成される直列モデルの発振回路部の等価回路ECに、容量性リアクタンスCLとキャンセルする誘導性リアクタンス素子のコイルLSを直列に接続し、さらに抵抗RPを並列に接続した場合の水晶振動子との接続用端子A−B間のインピーダンスは、次のようにして求められる。
【0037】
この発振回路1によれば、誘導性リアクタンス素子のコイルLSと容量性リアクタンスCLがキャンセルされ、発振回路1は、実質、抵抗RPと負性抵抗RLとの並列回路のみとなる。ここで、水晶振動子との接続用端子A−B間のインピーダンスをRL’とすると、水晶振動子との接続用端子A−B間のインピーダンスRL’は、上記した数1の数式により求められる。
【0038】
抵抗RPの値が負性抵抗の絶対値|RL|より大きければ、水晶振動子との接続用端子A−B間のインピーダンスRL’は絶対値が負性抵抗RLより大きい負の値となり、その結果、負性抵抗RLが拡大される。例えば、負性抵抗RL=−100Ω、抵抗RP=120Ωの場合、水晶振動子との接続用端子A−B間のインピーダンスRL’=600Ωとなり、水晶振動子との接続用端子A−B間のインピーダンスRL’は、負性抵抗RLの6倍の値になる。
【0039】
また、一般的に、上記した数1により、水晶振動子との接続用端子A−B間のインピーダンスRL’と負性抵抗RLとの比は、上記した数2の数式から求められる。
【0040】
数2より、負性抵抗の拡大率RL’/RLは、付加する抵抗RPと負性抵抗RLとの比RP/|RL|で決定される。この式から、RP/|RL|が1倍を超えることが、負性抵抗を拡大することの必要条件となることがわかる。
【0041】
次に、これらの関係を図2のグラフに示す。
【0042】
図2に示すように、RP/|RL|の値が大きくなるほど負性抵抗の拡大の効果は減少し、10倍では負性抵抗の拡大の効果は約1.1倍となる。このように、少なくとも10%程度の負性抵抗の拡大を得ることを考慮すると、抵抗RPの絶対値は、負性抵抗RLの絶対値に対して1倍を超えて10倍以下であることが好ましい。
【0043】
上記したように、本実施の形態にかかる発振回路1の発振回路部の等価回路ECの接続端子ECAに、誘導性リアクタンス素子のコイルLSの一方の端子が直列接続され、発振回路部の等価回路ECの他方の端子ECBと誘導性リアクタンス素子のコイルLSの他方の端子との間に抵抗RPが並列接続されている。そして、この発振回路部の水晶振動子との接続点である接続用端子A,Bに、所定の周波数で励振する水晶振動子が接続されて発振回路1が構成される。
【0044】
上記した本実施の形態にかかる発振回路1によれば、上記した構成からなる発振回路部を設けているので、コイルLSと容量性リアクタンスCLとによりリアクタンスの負荷容量がキャンセルされる。そして、抵抗RPが発振回路部の等価回路EC(具体的に負性抵抗RL)に並列に接続されるので、抵抗RPと負性抵抗RLとによって発振回路1における負性抵抗の値が増加する。本実施の形態にかかる発振回路1によれば、抵抗RPを用いない発振回路(例えば図14に示す従来の発振回路)と比べて発振回路部における負性抵抗の値が実質数倍以上に増える。その結果、本実施の形態によれば、発振回路部の負性抵抗の値を大きくすることができ、特に、本実施の形態にかかる発振回路1は高周波発振回路に好適である。
【0045】
また、本実施の形態にかかる発振回路1は、エミッタ接地の発振回路であり、高周波の発振回路における負性抵抗を確保するのに好適なものとなっている。
【0046】
次に、具体的に、本実施の形態にかかる発振回路1と、発振回路部の等価回路ECのみからなる発振回路(以下、従来の発振回路という)とに関して、それぞれ高周波の帯域における負性抵抗を測定し、その値を図3に示す。図3に示す記号1の波形は従来の発振回路の高周波の帯域における負性抵抗の値を示し、記号2の波形は本実施の形態にかかる発振回路1の高周波の帯域における負性抵抗の値を示す。なお、本実施の形態では、基本波で600MHz辺りの周波数帯域の負性抵抗を増加させることを目的としている。
【0047】
図3に示すように、従来の発振回路によれば、周波数が上がるにつれて負性抵抗の絶対値が下がっていく。これに対して、本実施の形態にかかる発振回路1によれば、高周波(特に600MHz辺り)において負性抵抗を増加していることがわかる。なお、本実施の形態では、600MHz辺りの周波数帯域の負性抵抗を増加させることを目的としているので、他の高周波の帯域(例えば、400MHzとか800MHzなど)の負性抵抗を増加させることは、抵抗RPの値を変えることで可能となる。
【0048】
次に、上記した本実施の形態にかかる発振回路1の具体例を、実施例として図4を用いて説明する。
【実施例】
【0049】
本実施例にかかる発振回路1は、図4に示すように、発振用トランジスタQ1はエミッタ接地されており、発振用トランジスタQ1のベースにコンデンサC1(6pF)が接続されるとともに、抵抗R2(33kΩ)と抵抗R3(10kΩ)とからなるバイアス抵抗回路が接続されている。また、発振用トランジスタQ1のコレクタは電源電圧Vcc(3.3V)に接続され、その発振用トランジスタQ1のコレクタ・電源電圧Vccライン間に抵抗R1(220Ω)が直列接続されている。また、発振用トランジスタQ1のコレクタにはコンデンサC2が直列接続されている。
【0050】
そして、これら発振用トランジスタQ1、コンデンサC1,C2、抵抗R1,R2,R3、電源電圧Vccから、上記した本実施の形態にかかる発振回路部の等価回路ECが構成される。なお、本実施例の発振回路部の等価回路ECにおける負性抵抗RLの値は、−77Ωである。
【0051】
この発振回路部の等価回路ECの接続端子ECAに、コイルLSが直列接続され、発振回路部の等価回路ECの他方の端子ECBとコイルLSの他方の端子との間に、図1に示す抵抗RPおよびコンデンサCac(100pF)が並列接続されて、本実施例にかかる発振回路部が構成される。具体的に、本実施例にかかる発振回路部では、抵抗R3に対してコイルLSが直列接続され、抵抗RPとコンデンサCacが並列接続され、抵抗RPおよびコンデンサCacに対して並列に水晶振動子が接続される。
【0052】
なお、本実施例では、トランジスタである発振用トランジスタQ1としてバイポーラトランジスタを用い、400MHz以上の高周波発振回路として用いている。このように、発振回路部に発振用トランジスタQ1を用い、誘導性リアクタンス素子としてコイルLSを用いた場合、抵抗RPに対してコンデンサCacを互いに直列接続し、コンデンサCacをDCカット用のコンデンサとして用いている。このためトランジスタQ1の直流動作に悪影響を与えることがなくなり安定した発振回路1が得られる。
【0053】
上記したように、発振回路部にバイポーラトランジスタが用いられているので、MOS−FETと比較して、フリッカ雑音(1/f雑音)が少なく、また高周波帯域において増幅器としてのゲインを大きくとることができ、その結果、高周波発振に適しており、位相雑音性能の優れた高周波発振回路が得られる。具体的に400MHz以上の高周波発振回路として用いることが好ましい。
【0054】
上記した実施例にかかる発振回路1の負性抵抗について、抵抗RPとコイルLSの値を可変させて測定した。その測定結果を、図5,6に示す。また、抵抗RPとコイルLSとコンデンサCacを省いた等価回路EC(従来の発振回路)の負性抵抗について測定したものを図7に示す。
【0055】
なお、図5は、コイルLSの値を3.3μHに固定し、抵抗RPの値を68Ω、82Ω、100Ω、120Ω、150Ωとした場合の発振回路1の高周波の帯域に対する負性抵抗を示したグラフ図である。
【0056】
また、図6は、抵抗RPの値を100Ωに固定し、コイルLSの値を1μH、2.2μH、3.3μH、4.7μH、6.8μH、10μHとした場合の発振回路1の高周波の帯域に対する負性抵抗を示したグラフ図である。
【0057】
図5〜7に示すように、本実施例にかかる発振回路1によれば、抵抗RPと負性抵抗RLとによって発振回路1における負性抵抗の値が増加することが分かる。また、図5〜7に示すように、抵抗RPの値が小さいとスプリアスの抑制を行うのに好適であり、抵抗RPの値が大きいと発振回路の設計がし易く、回路部分の周波数にバラツキが生じたい場合でも発振を行うことができる。
【0058】
これは、誘導性リアクタンス素子であるコイルLSと容量性リアクタンスCLとによりリアクタンスの負荷容量がキャンセルされ、抵抗RPが発振回路部の等価回路EC(具体的に負性抵抗RL)に並列に接続されることに関係する。
【0059】
そして特に、本実施例では、抵抗RPが82ΩでコイルLSが3.3μHの時と、抵抗RPが100ΩでコイルLSが4.7μHの時の約600MHzにおける負性抵抗が顕著に増加している。すなわち、等価回路の負性抵抗が−77Ωに対して、抵抗RPが82Ωや100Ωなど、抵抗RPの絶対値を負性抵抗RLの絶対値よりも大きい値であって、抵抗RPの絶対値を、負性抵抗RLの絶対値に対して1倍を超えて2倍以下とすることで、発振回路1の負性抵抗を顕著に増加させることができる。
【0060】
また、本実施例に示すように、誘導性リアクタンス素子としてインダクタであるコイルLSを用いた場合、負荷容量とキャンセルされるのは、これらの共振周波数近傍に限定される。このように、負性抵抗の拡大の効果が得られるのは、インダクタと負荷容量との共振周波数付近に限定される。このことから、誘導性リアクタンス素子としてコイルLSを用いた場合、負性抵抗を拡大して、安定発振が可能になるのと同時に、他の周波数における不要発振の危険性を低減する効果も得られる。
【0061】
なお、上記した実施の形態および実施例では、負性抵抗と容量性リアクタンスとが直列接続された発振回路部の等価回路が構成され、発振回路部の等価回路に、誘導性リアクタンスであるコイルLSが直列接続され、抵抗RPが並列接続されているが、これに限定されるものではなく、図8に示すような回路構成であってもよい。
【0062】
この図8に示す発振回路1は、発振回路部の等価回路ECと、発振回路1のリアクタンスの容量をキャンセルさせるための容量性リアクタンス素子である容量のコンデンサC4と、発振回路1の負性抵抗の値を増加させるための抵抗RPとから構成されている。
【0063】
発振回路部の等価回路ECは、負性抵抗RLと誘導性リアクタンスLSが直接接続された直列モデルで構成されている。
【0064】
具体的に、図8に示す発振回路1は、発振回路部の等価回路ECの一方の端子ECAに、コンデンサC4の一方の端子が直列接続され、発振回路部の等価回路ECの他方の端子ECBとコンデンサC4の他方の端子との間に抵抗RPが並列接続されて構成されている。
【0065】
この場合、誘導性リアクタンスLSとコンデンサC4とにより容量がキャンセルされ、誘導性リアクタンスLSが原因となって発振回路部の等価回路ECにおける負性抵抗の値が低くなるのを防止することができる。また、抵抗RPが発振回路部の等価回路ECに並列に接続されるので、負性抵抗RLと抵抗RPによって発振回路部における負性抵抗の値を数倍以上増加させることができる。すなわち、この場合であっても、上記した実施の形態および実施例と同様に、発振回路部の負性抵抗の値を大きくすることができる。
【0066】
また、上記した実施の形態および実施例では、水晶振動子の発振を基本波とした発振回路1を用いているが、これに限定されるものではなく、発振用トランジスタにより高調波を得る逓抵方式、もしくは水晶振動子の発振に含まれる高調波を取り出すオーバートーン方式の発振回路であってもよい。この場合、図3の記号2の波形に示すように目的とする周波数以外の発振を止めることもできるので、誤発振を防ぐこともできる。
【0067】
また、上記した実施の形態および実施例では、エミッタ接地の発振回路部を用いているが、これに限定されるものではなく、図9に示すようなコレクタ接地の発振回路部であってもよい。なお、この図9に示すコンデンサCacは、DCカット用のコンデンサであり、トランジスタの直流動作点に影響を与えないことを目的として用いられ、図9に示す発振回路部では、コンデンサCacと抵抗RPとが直列接続されている。
【0068】
なお、図9に示す発振回路部では、トランジスタである発振用トランジスタQ1としてバイポーラトランジスタを用い、400MHz以上の高周波発振回路として用いている。このように、発振回路部に発振用トランジスタQ1を用い、誘導性リアクタンス素子としてコイルLSを用いた場合、抵抗RPに対してコンデンサCacを互いに直列接続し、コンデンサCacをDCカット用のコンデンサとして用いている。このためトランジスタQ1の直流動作に悪影響を与えることがなくなり安定した発振回路1が得られる。
【0069】
また、図10に示すようなC−MOSインバーターによる発振回路部であってもよい。なお、図10に示す記号Rfはフィードバック用抵抗であり、記号Cgはゲート用コンデンサであり、記号Cdはドレイン用コンデンサである。
【0070】
また、上記した実施の形態および実施例にかかる発振回路1と水晶振動子2とが水晶振動子との接続用端子A,Bにより直接接続されているが、図11に示すように周波数調整制御を行う周波数制御回路4を介在させて発振回路1と水晶振動子2とが接続されて水晶振動発振回路3が構成されてもよく、さらに、図12に示すように温度補償を行う温度補償回路5を介在させて発振回路1と水晶振動子2とが接続されて水晶振動発振回路3が構成されてもよい。
【0071】
また、図13に示すように、水晶振動子2に誘導性リアクタンス素子LPが並列接続されてもよい。この場合、誘導性リアクタンス素子LPが水晶振動子2のC0をキャンセルし、周波数可変量の確保や負性抵抗のC0による低下を防ぐことが可能となる。
【0072】
さらに、図11,13に示す周波数制御回路4と、図12に示す温度補償回路5とを介在させて発振回路1と水晶振動子2とが接続されて水晶振動発振回路3が構成されてもよい。
【0073】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、高周波発振回路に好適である。
【符号の説明】
【0075】
1 発振回路
2 水晶振動子
3 水晶振動発振回路
4 周波数制御回路
5 温度補償回路
L 負性抵抗
L 容量性リアクタンス
EC 等価回路
S 誘導性リアクタンス(コイル)
P 抵抗
C1 コンデンサ
C2 コンデンサ
ac コンデンサ
R1 抵抗
R2 抵抗
R3 抵抗
Q1 発振用トランジスタ
Vcc 電源電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子を所定の周波数で励振させる発振回路部を備える発振回路において、
前記発振回路部の等価回路は、負性抵抗と容量性リアクタンスが直接接続された直列モデルで構成され、
前記発振回路部の一方の端子に誘導性リアクタンス素子の一方の端子が直列接続され、前記発振回路部の他方の端子と前記誘導性リアクタンス素子の他方の端子との間に抵抗が並列接続され、
前記誘導性リアクタンス素子の他方の端子と前記抵抗の一方の端子との接続点が、圧電振動子との接続を行う一方の圧電振動子接続用端子とされ、
前記抵抗の他方の端子と前記発振回路部の他方の端子との接続点が、圧電振動子との接続を行う他方の圧電振動子接続用端子とされ、
前記抵抗の絶対値は、前記負性抵抗の絶対値よりも大きいことを特徴とする発振回路。
【請求項2】
圧電振動子と発振回路部を接続して所定の周波数で励振可能な発振回路において、
前記発振回路部の等価回路は、負性抵抗と誘導性リアクタンスが直接接続された直列モデルで構成され、
前記発振回路部の一方の端子に容量性リアクタンス素子の一方の端子が直列接続され、前記発振回路部の他方の端子と前記容量性リアクタンス素子の他方の端子との間に抵抗が並列接続され、
前記容量性リアクタンス素子の他方の端子と前記抵抗の一方の端子との接続点が、圧電振動子との接続を行う一方の圧電振動子接続用端子とされ、
前記抵抗の他方の端子と前記発振回路部の他方の端子との接続点が、圧電振動子との接続を行う他方の圧電振動子接続用端子とされ、
前記抵抗の絶対値は、前記負性抵抗の絶対値よりも大きいことを特徴とする発振回路。
【請求項3】
請求項1に記載の発振回路において、
前記発振回路部にバイポーラトランジスタが用いられ、
前記抵抗に容量が直列接続され、
直列接続された前記抵抗と前記容量とは、前記発振回路部の他方の端子と、前記誘導性リアクタンス素子の他方の端子との間に並列接続されたことを特徴とする発振回路。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の発振回路において、
前記発振回路部にバイポーラトランジスタが用いられ、
400MHz以上の高周波発振回路として用いられることを特徴とする発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−258782(P2010−258782A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106526(P2009−106526)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】