説明

発振装置および携帯端末装置

【課題】発振装置の音圧レベルを向上させる。
【解決手段】発振装置100は、振動部材20と、振動部材20を支持し、かつ、振動部材20の一面側の空間60を囲うように設けられている支持部材30と、を備えている。支持部材30は、空間60に面する部分において、空間60から外側へ向けて広くなる空孔42、および空間60から外側へ向けて狭くなる空孔40を有しており、空間60は、空孔40および空孔42を介して、空間60の外部へ開放されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振装置および携帯端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気音響変換器の一つとして、動電型電気音響変換器がある。動電型電気音響変換器は、磁気回路の作用を利用して振動振幅を発生させるものである。他にも、例えば特許文献1に記載されるように、メカニカルエアポンプを用いて音響再生を行うというものもある。
【0003】
また、例えば特許文献2〜5に記載されるように、圧電音響素子を用いて音響再生を行うものがある。特許文献2に記載のものは、振動源である圧電素子と振動膜を、弾性を有する振動伝達部材を介して接合するというものである。特許文献3に記載のものは、圧電セラミック材を支持するケースに設けられた漏洩孔を覆う不織布等を、両面テープによってケースへ貼り付けるというものである。
【0004】
特許文献4に記載のものは、圧電体を支持する台座、および音波の指向性を高めるホーンを、シリコン材料によって形成するというものである。特許文献5に記載のものは、圧電振動子を支持するケースの上面を凹面状とし、この凹面部分に放音孔を設けるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−501849号公報
【特許文献2】国際公開WO2005/094121号パンフレット
【特許文献3】特開平8−205289号公報
【特許文献4】特開平5−292598号公報
【特許文献5】特開昭61−89799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発振装置が電子装置の基板等によって保持されている場合、発振装置を構成する振動膜は、振動膜と基板等との間の空間を満たす空気により音響抵抗の負荷を受ける。振動膜が空気による負荷を受ける場合、発振装置の音圧は減衰してしまう。従って、発振装置における音圧レベルの向上を図ることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、振動部材と、
前記振動部材を支持し、かつ、前記振動部材の一面側の空間を囲うように設けられている支持部材と、
を備え、
前記支持部材は、前記空間に面する部分において、前記空間から外側へ向けて広くなる第1空孔、および前記空間から外側へ向けて狭くなる第2空孔を有しており、
前記空間は、前記第1空孔および前記第2空孔を介して、前記空間の外部へ開放されている発振装置が提供される。
【0008】
本発明によれば、上述の発振装置を搭載した、携帯端末装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発振装置の音圧レベルを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る発振装置を示す断面図である。
【図2】図1に示す圧電振動子を示す断面図である。
【図3】比較例に係る発振装置を示す断面図である。
【図4】第1の実施形態および比較例に係る発振装置の音響特性を示すグラフである。
【図5】第2の実施形態に係る発振装置を示す断面図である。
【図6】第3の実施形態に係る発振装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1は、第1の実施形態に係る発振装置100を示す断面図である。本実施形態に係る発振装置100は、振動部材20と、支持部材30と、を備えている。発振装置100は、例えば携帯電話機等の携帯端末装置に搭載される。
【0013】
支持部材30は、振動部材20を支持し、かつ振動部材20の一面側の空間60を囲うように設けられている。また、支持部材30は、空間60に面する部分において、空間60から外側へ向けて広くなる空孔42、および空間60から外側へ向けて狭くなる空孔40を有している。空間60は、空孔40および空孔42を介して、空間60の外部へ開放されている。以下、発振装置100の構成について詳細に説明する。
【0014】
振動部材20は、例えば平板形状を有している。振動部材20は、金属や樹脂等、脆性材料であるセラミックに対して高い弾性率を持つ材料によって構成され、例えばリン青銅、又はステンレス等の汎用材料によって構成される。振動部材20の厚みは、5〜500μmであることが好ましい。また、振動部材20の縦弾性係数は、1〜500GPaであることが好ましい。振動部材20の縦弾性係数が過度に低い、または高い場合、発振装置の振動特性や信頼性を損なうおそれがある。
支持部材30は、図1に示すように、振動部材20の縁を支持している。
【0015】
図1に示すように、発振装置100は、弾性部材22を備えている。弾性部材22は、振動部材20の縁に設けられている。また、弾性部材22は、例えば振動部材20の全周に設けられる。弾性部材22は、例えばウレタン、PET、又はポリエチレン等の樹脂材料等によって構成される。支持部材30は、弾性部材22を介して振動部材20を支持している。
【0016】
発振装置100は、基板32を備えている。基板32は、支持部材30を固定している。空間60は、振動部材20、弾性部材22、支持部材30および基板32によって囲われた閉空間を構成している。
振動部材20の他面側は、外部に開放されている。発振装置100の出力時においては、振動部材20の他面を出力面として音波を出力することとなる。
【0017】
支持部材30に設けられている空孔40および空孔42は、例えばテーパ状に形成されている。また、空孔40および空孔42は、例えば階段状に形成されていてもよい。さらに、空孔40および空孔42は、それぞれ複数ずつ設けられていても良い。なお、空孔40および空孔42の外部への開口端の形状は、例えば円形であるが、これに限られない。
【0018】
発振装置100は、圧電振動子10を備えている。発振装置100は、圧電振動子10の伸縮運動を受けて振動部材20を振動させることにより、音波を出力する。圧電振動子10は、図1に示すように、例えば振動部材20の両面に設けられ、振動部材20によって拘束される。また、圧電振動子10は、振動部材20の一面または一面とは反対の他面のいずれかにのみ設けられていてもよい。
【0019】
図2は、図1に示す圧電振動子10を示す断面図である。図2に示すように、圧電振動子10は、圧電体70、上部電極72および下部電極74を有している。圧電体70は、上部電極72および下部電極74に挟まれている。また、圧電体70は、その厚さ方向(図2中上下方向)に分極している。圧電振動子10は、振動部材20の一面と水平な面方向において、例えば円形または楕円形を有する。
【0020】
圧電体70は、圧電効果を有する材料により構成され、例えば電気機械変換効率が高い材料としてジルコン酸チタン酸鉛(PZT)またはチタン酸バリウム(BaTiO)等により構成される。また、圧電体70の厚みは、10μm〜1mmであることが好ましい。厚みが10μm未満である場合、圧電体70は脆性材料により構成されるため、取り扱い時において破損等が生じやすい。一方、厚みが1mmを超える場合、圧電体70の電界強度が低減する。このため、エネルギー変換効率の低下を招く。
【0021】
上部電極72および下部電極74は、電気伝導性を有する材料によって構成され、例えば銀または銀/パラジウム合金等によって構成される。銀は、低抵抗な汎用材料であり、製造コストや製造プロセスの観点から優位である。また、銀/パラジウム合金は、耐酸化性に優れた低抵抗材料であり、信頼性に優れる。上部電極72および下部電極74の厚みは、1〜50μmであることが好ましい。厚みが1μm未満の場合、均一に成形することが難しくなる。一方、50μmを超える場合、上部電極72または下部電極74が圧電体70に対して拘束面となり、エネルギー変換効率の低下を招く。
【0022】
発振装置100は、制御部90と、信号生成部92と、を備えている。信号生成部92は、圧電振動子10と接続し、圧電振動子10に入力する電気信号を生成する。制御部90は、信号生成部92に接続し、信号生成部92による信号の生成を制御する。外部から入力された情報に基づいて制御部90が信号生成部92の信号の生成を制御することにより、発振装置100の出力を制御することができる。
【0023】
発振装置100をパラメトリックスピーカとして使用する場合、制御部90は信号生成部92を介して、パラメトリックスピーカとしての変調信号を入力する。この場合、圧電振動子10は、20kHz以上、例えば100kHzの音波を信号の輸送波として用いる。
また、発振装置100を通常のスピーカとして使用する場合には、制御部90は信号生成部92を介して、音声信号をそのまま圧電振動子10へ入力してもよい。
また、発振装置100を音波センサとして使用する場合、制御部90に入力される信号は、音波を発振する旨の指令信号である。そして、発振装置100を音波センサとして使用する場合、信号生成部92は圧電振動子10に圧電振動子10の共振周波数の音波を発生させる。
【0024】
パラメトリックスピーカの動作原理は次のようである。パラメトリックスピーカの動作原理は、AM変調やDSB変調、SSB変調、FM変調をかけた超音波を空気中に放射し、超音波が空気中に伝播する際の非線形特性により、可聴音が出現する原理で音響再生を行うというものである。ここでいう非線形とは、流れの慣性作用と粘性作用の比で示されるレイノルズ数が大きくなると、層流から乱流に推移することをいう。すなわち、音波は流体内で微少にじょう乱しているため、音波は非線形で伝播している。特に超音波を空気中に放射した場合に、非線形性に伴う高調波が顕著に発生する。また音波は、空気中の分子集団が濃淡に混在する疎密状態である。空気分子が圧縮よりも復元するのに時間が生じた場合、圧縮後に復元できない空気が、連続的に伝播する空気分子と衝突し、衝撃波が生じて可聴音が発生する。パラメトリックスピーカは、使用者の周囲にのみ音場を形成することができ、プライバシー保護という観点から優れる。
【0025】
次に、本実施形態の効果を説明する。空間60が閉空間の場合、振動部材20が振動する際に、空間60に発生した内圧によって振動部材20は音響抵抗の負荷を受ける。この場合、振動部材20の振動振幅は低減し、発振装置の音圧レベルは減衰してしまう。発振装置100が携帯端末装置に搭載される場合には、振動部材20の背面空間となる空間60が狭小となるため、この問題が特に顕著となる。
本実施形態によれば、空間60を囲うように設けられている支持部材30には、空孔40と空孔42が設けられている。このため、振動部材20が振動する際に、空間60内の空気を排入出することができる。これにより、空間60による内圧抵抗を抑制することができる。従って、発振装置の音圧レベルを向上することができる。
【0026】
図3は、比較例に係る発振装置106を示す断面図である。図3に示すように、比較例に係る発振装置106において、支持部材30に設けられている空孔48は、空間60から外側に向けてその広さが一定である。
一方で、本実施形態によれば、支持部材30に設けられた空孔42は、空間60から外側に向けて広くなるように設けられている。また、支持部材30に設けられた空孔40は、空間60から外側に向けて狭くなるように設けられている。このため、図1に示すように、空間60を満たす空気50は、空孔42から空孔40へ流れ、空孔40から放出されることとなる。このように、空気50の流れを制御し、空気50の排出入を行う循環経路を形成することができる。これにより、空間60を満たす空気50から振動部材20への内圧抵抗を緩和することが可能となる。このように、空間60による内圧抵抗を抑制することができる。従って、発振装置の音圧レベルを向上することができる。
【0027】
図4は、第1の実施形態および比較例に係る発振装置の音響特性を示すグラフである。図4は、本実施形態および比較例に係る発振装置をパラメトリックスピーカとして用いた場合の、復調された可聴音波の音圧レベルを測定した結果を示している。図4に示すように、1000Hz前後において、本実施形態に係る発振装置100は、比較例に係る発振装置106よりも音圧レベルが高い。また、他の周波数帯域においては、発振装置100の音圧レベルは、発振装置106の音圧レベルとほぼ同程度かそれ以上である。従って、本実施形態によれば音圧レベルの向上を図ることができることがわかる。
【0028】
また、振動部材20の一面から出力される音波と一面とは反対の他面から出力される音波は逆位相の音波である。このため、これらが互いに干渉しあう場合、音波がキャンセリングしてしまい、音圧レベルの低下を引き起こす。
本実施形態によれば、空気50の循環経路を形成することにより、音波52が放射される方向を制御することができる。すなわち、振動部材20の一面から出力された音波52は、空気50の流れと同様に空孔40から放射される。音波52の放射方向を制御することで、振動部材20の一面から出力された音波52と、一面とは反対の他面から出力された音波が干渉することを防ぐことができる。従って、発振装置の音圧レベルを向上することができる。
【0029】
本実施形態において、発振装置100をパラメトリックスピーカとして使用する場合、振動部材20は20kHz以上の超音波を出力する。超音波は指向性が高いため、振動部材20の一面から出力された音波52と、他面から出力された音波が干渉することが抑制される。また、超音波は並進性が小さいため、音波52の放射経路を形成することが容易となる。さらに、空孔40の形状を小さくすることも可能となる。
【0030】
図5は、第2の実施形態に係る発振装置102を示す断面図であって、第1の実施形態に係る発振装置100に対応している。本実施形態に係る発振装置102は、吸音部材34を備えている点を除いて、第1の実施形態に係る発振装置100と同様の構成を有する。
【0031】
吸音部材34は、空孔40の外部への開口端の周囲に設けられている。吸音部材34は、例えばウレタン、又は繊維状にしたグラスウール、グラスファイバー、アルミニウム等の吸音材料により構成される。吸音部材34は、図5に示すように、例えば内面において振動部材20を支持する支持部材30の外面であって、少なくとも空孔40の外部への開口端よりも振動部材20の他面側に設けられている。
この場合において、吸音部材34は、空孔40の外部への開口端に近い程、空孔40から放射される音波52を吸収しやすいため好ましい。
また、空孔40の外部への開口端のうち最も振動部材20の他面側に近い点における接線方向において、吸音部材34の幅が、当該開口端の幅よりも大きいことが好ましい。この場合、空孔40から放射される音波52が振動部材20の他面側から出力される音波と干渉することを、効果的に抑制することができる。
なお、吸音部材34は、空孔40を囲うように設けられていてもよい。
【0032】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、空孔40の外部への開口端の周囲に吸音部材34を形成しているため、振動部材20の一面から出力される音波52と、他面から出力される音波が、互いに干渉することを防ぐことができる。この効果は、吸音部材34が、内面において振動部材20を支持する支持部材30の外面であって、少なくとも空孔40の外部への開口端よりも振動部材20の他面側に設けられている場合において、特に顕著となる。
また、本実施形態によれば、音波52は、空孔40から放射され、空孔42からは放射されない。このため、吸音部材34は、空孔40の外部への開口端の周囲にのみ設けられていればよい。従って、容易に製造することが可能となる。
【0033】
図6は、第3の実施形態に係る発振装置104を示す断面図であって、第1の実施形態に係る図1に対応している。本実施形態に係る発振装置104は、遮蔽部材36を備えている点を除いて、第1の実施形態に係る発振装置100と同様の構成を有する。
【0034】
遮蔽部材36は、支持部材30に固定されている。振動部材20、弾性部材22、遮蔽部材36、および支持部材30は、振動部材20の他面側において閉空間を形成する。遮蔽部材36には、他面側から出力される音波を放射するための、複数の空孔46が設けられている。
【0035】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、振動部材20の他面から出力された音波は、遮蔽部材36に設けられた空孔46から放射される。このため、振動部材20の他面から出力される音波の放射方向を制御することができる。従って、振動部材20の一面から出力される音波52と、他面から出力される音波が、互いに干渉しあうことを防止することができる。
【0036】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0037】
10 圧電振動子
20 振動部材
22 弾性部材
30 支持部材
32 基板
34 吸音部材
36 遮蔽部材
40 空孔
42 空孔
46 空孔
48 空孔
50 空気
52 音波
60 空間
62 空間
70 圧電体
72 上部電極
74 下部電極
90 制御部
92 信号生成部
100 発振装置
102 発振装置
104 発振装置
106 発振装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部材と、
前記振動部材を支持し、かつ、前記振動部材の一面側の空間を囲うように設けられている支持部材と、
を備え、
前記支持部材は、前記空間に面する部分において、前記空間から外側へ向けて広くなる第1空孔、および前記空間から外側へ向けて狭くなる第2空孔を有しており、
前記空間は、前記第1空孔および前記第2空孔を介して、前記空間の外部へ開放されている発振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発振装置において、
前記支持部材を固定する基板を備え、
前記空間は、前記振動部材、前記支持部材および前記基板によって囲われた閉空間を構成する発振装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発振装置において、
前記振動部材に拘束されている圧電振動子を備える発振装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の発振装置において、
前記第1空孔および前記第2空孔は、テーパ状に形成されている発振装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載の発振装置において、
前記第2空孔の前記外部への開口端の周囲に設けられた吸音部材をさらに備える発振装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発振装置において、
前記振動部材は、前記一面から第1音波を、前記一面とは反対の他面から第2音波を出力し、
前記吸音部材は、内面において前記振動部材を支持する前記支持部材の外面であって、少なくとも前記第2空孔の前記外部への開口端よりも前記振動部材の他面側に設けられている発振装置。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1項に記載の発振装置において、
前記振動部材の縁に設けられた弾性部材をさらに備え、
前記支持部材は、前記弾性部材を介して前記振動部材を支持する発振装置。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか1項に記載の発振装置を搭載した、携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−217034(P2012−217034A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81030(P2011−81030)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】