説明

発振装置及び電子機器

【課題】圧電素子を利用した発振装置において、出力を大きくする。
【解決手段】この発振装置は、多面体、及び圧電素子(20,22,24)を有している。多面体は、少なくとも2面が振動板(10,12,14)になっている。そして圧電素子は、各振動板に設けられている。このようにすると、発振板の面積が大きくなるため、発振装置の出力を大きくすることができる。多面体としては、例えば直方体を用いることができる。この場合、同一の頂点を構成する3面に、振動板10,12,14を設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子を利用した発振装置は、例えばパラメトリックスピーカや、超音波センサの発振源として使用されている。この発振装置は、磁石を用いて振動板を振動させる動電型のスピーカと比較して、小型化しやすい、という利点がある。
【0003】
特許文献1には、入れ子式に複数のエンクロージャーを組み合わせ、各エンクロージャーに圧電振動体及び音響振動板を設けることが記載されている。特許文献1では、エンクロージャー相互間で、音響振動板の寸法が互いに異なっている。
【0004】
なお、特許文献2には、筒状の共鳴壁の両端を、電磁駆動式のスピーカユニットで塞いだスピーカシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−328728号公報
【特許文献2】特開2008−178133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発振装置の出力は、振動部材の体積排除量によって定まる。圧電素子を利用した発振装置は、振動部材の縁は指示枠に固定されているため、振動状態は屈曲型になる。このため、振動部材の体積排除量が電子駆動式のスピーカユニットと比較して小さくなってしまう。すなわち、圧電素子を利用した発振装置は、出力を大きくしにくい、という欠点があった。
【0007】
本発明の目的は、圧電素子を利用した発振装置において、出力を大きくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、少なくとも2つの面が振動板からなる多面体と、
前記振動板それぞれに設けられた圧電素子と、
を備える発振装置が提供される。
【0009】
本発明によれば、第1振動板と、
前記第1振動板上に設けられた第1圧電素子と、
筒状であり、一方の開放端が前記第1振動板によって塞がれている第2振動板と、
前記第2振動板の他方の開放端を塞いでいる閉塞部材と、
を備える発振装置が提供される。
【0010】
本発明によれば、上記した発振装置と、
前記発振装置を内側に含む筐体と、
を有する電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圧電素子を利用した発振装置において、出力を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る発振装置の構成を示す斜視図である。
【図2】発振装置が有する振動要素の構成を示す断面図である。
【図3】図1及び図2に示した発振装置を電子機器に取り付けた状態を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る発振装置の構成を示す断面図である。
【図5】図4に示した発振装置の斜視図である。
【図6】図4の変形例を示す図である。
【図7】図4の変形例を示す図である。
【図8】図4〜図6に示した発振装置を電子機器に取り付けた状態を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る発振装置の構成を示す斜視図である。この発振装置は、多面体、及び圧電素子(20,22,24)を有している。多面体は、少なくとも2面が振動板(10,12,14)になっている。そして圧電素子は、各振動板に設けられている。本実施形態では、発振板の面積が大きくなるため、発振装置の出力を大きくすることができる。以下、詳細に説明する。
【0015】
本実施形態において、多面体は支持枠40によって各辺が形成されている。そして各面を塞ぐように、振動板10,12,14が設けられている。本実施形態において、多面体は直方体である。そして同一の頂点を構成する3面に、振動板10,12,14が設けられている。なお、残りの3面にも振動板10,12,14が設けられていても良い。
【0016】
振動板10,12,14はシート状であり、圧電素子20,22,24から発生した振動によって振動する。振動板10,12,14の平面形状は、互いに同一であっても良いし、異なっていても良い。また振動板10,12,14は、圧電素子20,22,24の基本共振周波数を調整する。機械振動子の基本共振周波数は、負荷重量と、コンプライアンスに依存する。コンプライアンスは振動子の機械剛性であるため、振動板10の剛性を制御することで、圧電素子20,22,24の基本共振周波数を制御できる。なお、振動板10の厚みは5μm以上500μm以下であることが好ましい。また、振動板10,12,14は、剛性を示す指標である縦弾性係数が1Gpa以上500GPa以下であることが好ましい。振動板10,12,14の剛性が低すぎる場合や、高すぎる場合は、機械振動子として特性や信頼性を損なう可能性が出てくる。なお、振動板10,12,14を構成する材料は、金属や樹脂など、脆性材料である圧電素子20,22,24に対して高い弾性率を持つ材料であれば特に限定されないが、加工性やコストの観点からリン青銅やステンレスなどが好ましい。
【0017】
振動板10,12,14上には、それぞれ圧電素子20,22,24が設けられている。圧電素子20,22,24は、PZTなどの圧電セラミックスにより形成されている。ただし、圧電素子20,22,24は、圧電特性を示す高分子材料、例えばポリフッ化ビニリデンにより形成されていてもよい。いずれの場合においても、圧電素子20の平面形状は、振動板10の平面形状よりも小さい。圧電素子20,22,24の平面形状は、互いに同一であっても良いし、互いに異なっていても良い。
【0018】
本実施形態では、支持枠40は、シート状の支持材30,32,34によって各面が塞がれている。支持材30,32,34は、例えばポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、又はウレタンなどの樹脂であり、平面形状は互いに異なる。そして支持材30,32,34上に、振動板10,12,14が設けられている。すなわち本実施形態では、圧電素子20、振動板10、及び支持材30が第1の振動要素として機能し、圧電素子22、振動板12、及び支持材32が第2の振動要素として機能し、圧電素子24、振動板14、及び支持材34が第3の振動要素として機能する。そして第1の振動要素、第2の振動要素、及び第3の振動要素は、いずれも基本共振周波数が互いに異なっている。そして、いずれかの振動要素の基本共振周波数は可聴域にあり、他の振動要素の基本共振周波数は超音波領域にある。
【0019】
なお、図1に示す例では、支持枠40の開口部は、いずれも直方体である。ただし、支持枠40の開口部は、円形であっても良い。
【0020】
図2は、発振装置が有する振動要素の構成を示す断面図である。上記したように、支持枠40に支持材30(32,34)が固定されており、支持材30(32,34)上に振動板10(12,14)及び圧電素子20(22,24)が固定されている。そして圧電素子20(22,24)には、制御部50から駆動信号が入力される。
【0021】
制御部50は、圧電素子20,22,24それぞれに駆動信号を同時に入力する。例えば制御部50は、発振装置を通常のスピーカとして使用する場合、外部から入力された音声データを増幅することにより駆動信号を生成する。また制御部50は、発振装置をパラメトリックスピーカとして使用する場合、外部から入力された音声データを変調してパラメトリックスピーカ用の変調データを生成し、このデータを増幅して駆動信号を生成する。
【0022】
図3は、図1及び図2に示した発振装置を電子機器に取り付けた状態を示す図である。この図に示す例において、発振装置は、電子機器の筐体70の内側に配置される。筐体70には、音孔72が設けられている。そして支持枠40は、平面視で音孔72を内側に含んでいる。このため、各振動要素が発振した音波Aは、音孔72を介して筐体70の外部に放射される。
【0023】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態によれば、発振装置は多面体形状を有しており、少なくとも2面に振動板及び圧電素子が設けられている。一般的な発振装置は、振動板及び圧電素子は一面のみに設けられている。このため、発振板の面積が大きくなり、発振装置の出力を大きくすることができる。
【0024】
また本実施形態では、振動板10,12,14は、支持材30,32,34を介して支持枠40に取り付けられている。支持材30,32,34の剛性は振動板10,12,14の剛性よりも低いため、振動板10,12,14を直接支持枠40に取り付けた場合と比較して、振動板10,12,14の振幅を大きくすることができる。従って、発振装置の出力をさらに大きくすることができる。
【0025】
また、本実施形態では、支持材30,32,34が、振動板10,12,14とともに振動板として機能するが、支持材30,32,34の平面形状は互いに異なる。このため、これらの基本共振周波数を互いに異ならせることができる。
【0026】
圧電体は機械品質係数Qが高いため、圧電素子を発振源として利用した場合、基本共振周波数の近傍では高い音圧を確保できるが、それ以外の周波数領域では音圧が低くなってしまう。しかし本実施形態のように、支持材30,32,34の基本共振周波数を互いに異ならせると、発振装置全体としてみた場合、音圧の周波数依存性を低下させることができる。
【0027】
また、第1の振動要素(圧電素子20、振動板10、及び支持材30)、第2の振動要素(圧電素子22、振動板12、及び支持材32)、及び第3の振動要素(圧電素子24、振動板14、及び支持材34)のうち、基本共振周波数が超音波領域にある振動要素を、パラメトリックスピーカとして使用することができる。この場合、基本共振周波数が可聴音域にある振動要素を、パラメトリックスピーカと同時に通常のスピーカとして使用しても良い。この場合、制御部50は、パラメトリックスピーカと通常のスピーカに、同じ音声再生させても良いし、互いに異なる音声を再生させても良い。
【0028】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る発振装置の構成を示す断面図であり、図5は、図4に示した発振装置の斜視図である。この発振装置は、振動板(第1振動板)10、圧電素子20、第2振動板90、及び閉塞部材60を備えている。第2振動板90は筒状であり、一方の開放端が、振動板10によって塞がれている。本実施形態では、振動板10は、圧電素子20が設けられている面を第2振動板90の内側に向けている。また第2振動板90の他方の開放端は、閉塞部材60によって塞がれている。閉塞部材60は、振動板10が発生する音波によって振動しても良いし、振動しなくてもよい。
【0029】
第2振動板90の材料及び厚さは、例えば、第1の実施形態に示した振動板10の材料及び厚さと同様である。ただし第2振動板90の材料は、振動板10よりも内部損失の大きい材料、例えば樹脂材料により形成されても良い。第2振動板90の断面形状は、円形である。なお、図6に示すように、第2振動板90の断面形状は多角形、例えば正方形などの矩形であっても良い。
【0030】
図7は、図4の変形例を示す図である。本図に示す例では、閉塞部材60の代わりに第2の振動板10(第3振動板)が用いられている。この振動板10にも、圧電素子20(第2圧電素子)が取り付けられている。第2の振動板10も、圧電素子20が設けられている面を第2振動板90の内側に向けている。すなわち2組の振動板10及び圧電素子20は、第2振動板90を介して連結している。本図に示す例において、制御部50は、2つの圧電素子20に駆動信号を入力する。この2つの圧電素子20に入力される駆動信号は、例えば同位相である。
【0031】
図8は、図4〜図7に示した発振装置を電子機器に取り付けた状態を示す図である。この図に示す例において、発振装置は図7に示した構成を有している。発振装置は、固定部材80を用いて電子機器の筐体70の内壁に固定されている。詳細には、振動板10の縁、すなわち振動板10のうち第2振動板90に固定されている部分には、固定部材80の一部が固定されている。固定部材80の他の部分は、筐体70の内壁に固定されている。
【0032】
筐体70には音孔72が設けられている。発振装置は、第2振動板90が音孔72と対向するように、筐体70の内壁に固定されている。本図に示す例では、筐体70のうち少なくとも互いに対向する2面に、音孔72が設けられている。そしていずれの音孔72も、第2振動板90に対向している。
【0033】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。制御部50から圧電素子20に駆動信号が入力すると、振動板10が振動する。振動板10の振動は、直接第2振動板90に伝播し、第2振動板90を振動させる。また振動板10が振動すると、音波を発生する。振動板10が放出した音波は、第2振動板90、振動板10、及び閉塞部材60で形成された閉空間内に伝播する。すると、第2振動板90も振動する。第2振動板90が振動すると、第2振動板90から外部に音波が放出される。すなわち本実施形態は、発振板の面積が大きくなるため、発振装置の出力を大きくすることができる。
【0034】
また、第2振動板90を樹脂材料で形成した場合、樹脂材料は一般的に内部損失が高いため、第2振動板90の音圧の周波数依存性を低下させることができる。すなわち、発振装置の効率の周波数依存性を低下させることができる。また第2振動板90を樹脂材料により形成すると、発振装置の耐衝撃性が向上する、という効果も得られる。
【0035】
また、振動板10は、圧電素子20が設けられている面を第2振動板90の内側に向けている。このため、発振装置に力が加わった場合、圧電素子20が破損することを抑制できる。
【0036】
また、図7に示すように第2振動板90の両端に振動板10及び圧電素子20を設けた場合、第2振動板90は、両端から振動板10によって押されることになる。この場合、第2振動板90の屈曲は大きくなり、その結果、第2振動板90から発振される音波の出力を大きくすることができる。
【0037】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0038】
10 振動板
12 振動板
14 振動板
20 圧電素子
22 圧電素子
24 圧電素子
30 支持材
32 支持材
34 支持材
40 支持枠
50 制御部
60 閉塞部材
70 筐体
72 音孔
80 固定部材
90 第2振動板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの面が振動板からなる多面体と、
前記振動板それぞれに設けられた圧電素子と、
を備える発振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発振装置において、
前記振動板は、平面形状が互いに異なる発振装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発振装置において、
前記多面体は直方体であり、
少なくとも同一の頂点を構成する3面が、前記振動板である発振装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発振装置において、
第1の前記振動板の基本共振周波数は可聴域にあり、
第2の前記振動板の基本共振周波数は超音波領域にある発振装置。
【請求項5】
第1振動板と、
前記第1振動板上に設けられた第1圧電素子と、
筒状であり、一方の開放端が前記第1振動板によって塞がれている第2振動板と、
前記第2振動板の他方の開放端を塞いでいる閉塞部材と、
を備える発振装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発振装置において、
前記第1振動板は、前記第1圧電素子が設けられている面を前記第2振動板の内側に向けている発振装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の発振装置において、
前記閉塞部材は、
第3振動板と、
前記第3振動板上に設けられた第2圧電素子と、
を備える発振装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の発振装置と、
前記発振装置を内側に含む筐体と、
を有する電子機器。
【請求項9】
請求項8に記載の電子機器において、
前記発振装置は、請求項5〜7のいずれか一項に記載の構造を有しており、
前記筐体は音孔を備え、
前記音孔は、前記第2振動板と対向している電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−216902(P2012−216902A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79002(P2011−79002)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】