説明

発振装置

【課題】小型化を図りつつ、高い音圧レベルを実現することができる発振装置を提供する。
【解決手段】圧電振動子10と、圧電振動子10の一面を拘束する振動部材20と、振動部材20の縁を支持する弾性部材24と、弾性部材24の周囲に位置する支持部材30と、を備え、振動部材20は、支持部材30によって拘束されておらず、支持部材30は、弾性部材24が位置する側に突出部32を有しており、弾性部材24は、突出部32の一面によって支持されており、振動部材20の縁は、平面視で突出部32と重なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子を用いた発振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機器などの電気音響変換器として、動電型電気音響変換器がある。動電型電気音響変換器は、磁気回路の作用を利用して振動振幅を発生させる。しかし、磁気回路は永久磁石やボイスコイル等の多数の部材によって構成されるため、動電型電気音響変換器では薄型化に限界があった。
【0003】
動電型電気音響変換器に代わる電気音響変換器として、圧電型電気音響変換器がある。圧電型電気音響変換器は、圧電振動子に電界を印加することにより発生する伸縮運動を利用して、振動振幅を発生させるものである。圧電型電気音響変換器は、振動振幅を発生させるために多数の部材を必要としないため、薄型化に有利である。
【0004】
圧電振動子を用いた音響機器に関する技術として、特許文献1〜3に記載のものがある。特許文献1には、圧電振動子を一対の剛性部材で挟持させた受光型圧電素子が開示されている。特許文献2に記載の技術は、圧電発音素子を備える圧電発音体において、クオリティファクタの低減手段を設けるというものである。特許文献3では、圧電型スピーカエレメントを屏風状に屈曲、または配設した圧電型ホーンスピーカが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−269092号公報
【特許文献2】特開2002−108346号公報
【特許文献3】実開昭60−155300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
携帯通信端末等に搭載される電気音響変換器においては、小型化を図ることが求められる。一方で、電気音響変換器には、音響再生を可能とするための一定以上の音圧レベルを確保することが望まれる。
【0007】
本発明の目的は、小型化を図りつつ、高い音圧レベルを実現することができる発振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、圧電振動子と、
前記圧電振動子の一面を拘束する第1の振動部材と、
前記第1の振動部材の縁を支持する第1の弾性部材と、
前記第1の弾性部材の周囲に位置する支持部材と、
を備え、
前記第1の振動部材は、前記支持部材によって拘束されておらず、
前記支持部材は、前記第1の弾性部材が位置する側に突出部を有しており、
前記第1の弾性部材は、前記突出部の一面によって支持されており、
前記第1の振動部材の縁は、平面視で前記突出部と重なっている発振装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小型化を図りつつ、高い音圧レベルを実現することができる発振装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る発振装置を示す断面図である。
【図2】図1に示す圧電振動子を示す断面図である。
【図3】第2の実施形態に係る発振装置を示す断面図である。
【図4】第3の実施形態に係る圧電振動子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1は、第1の実施形態に係る発振装置100を示す断面図である。発振装置100は、圧電振動子10と、振動部材20と、弾性部材24と、支持部材30と、を備えている。発振装置100は、例えばスピーカ、又は音波センサの発振源として使用される。また圧電体の焦電効果を利用することで温度センサとして機能することもできる。発振装置100をスピーカとして使用する場合、例えば電子機器(携帯電話、ラップトップ型コンピュータ、小型ゲーム機器等)の音源として用いられる。
【0013】
振動部材20は、圧電振動子10の一面を拘束している。また振動部材20は、支持部材30によって拘束されていない。支持部材30は、弾性部材24の周囲に位置する。また支持部材30は、弾性部材24が位置する側に突出部32を有している。弾性部材24は、振動部材20の縁を支持している。また弾性部材24は、突出部32の一面によって支持されている。振動部材20の縁は、平面視で突出部32と重なっている。以下図1、及び図2を用いて、発振装置100の構成について詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、発振装置100は、制御部90と、信号生成部92と、をさらに備えている。信号生成部92は、圧電振動子10と接続しており、圧電振動子10に入力する電気信号を生成する。制御部90は、信号生成部92と接続しており、外部から入力された情報に基づいて信号生成部92を制御する。発振装置100をスピーカとして使用する場合、制御部90に入力される情報は音声信号である。また発振装置100を音波センサとして使用する場合、制御部90に入力される信号は、音波を発振する旨の指令信号である。そして発振装置100を音波センサとして使用する場合、信号生成部92は圧電振動子10に圧電振動子10の共振周波数の音波を発生させる。
【0015】
また圧電振動子10、振動部材20、及び弾性部材24が複数組設けられている場合、発振装置100はパラメトリックスピーカとして使用することができる。この場合、制御部90は信号生成部92を介してパラメトリックスピーカとしての変調信号を入力する。パラメトリックスピーカとして用いる場合、圧電振動子10は、20kHz以上、例えば100kHzの音波を信号の輸送波として用いる。
【0016】
図1に示すように発振装置100は、振動部材22と、弾性部材26と、をさらに備えている。また発振装置100において、圧電振動子10と、振動部材20、22と、弾性部材24、26と、突出部32によって構成される構造は、突出部32の厚さ方向における中心面を基準に面対称である。振動部材22は、支持部材30によって拘束されていない。弾性部材26は、突出部32の他面によって支持されている。振動部材22の縁は、平面視で突出部32と重なっている。
【0017】
図2は、図1に示す圧電振動子10を示す断面図である。図2に示すように、圧電振動子10は、上部電極40、下部電極45、圧電体50からなる。また圧電振動子10は、例えば円形、楕円形、又は矩形を有する。圧電振動子10は、例えば弾性部材24の厚さと、突出部32の厚さと、弾性部材26の厚さを合わせた厚さを有する。圧電体50は、上部電極40と下部電極45に挟まれている。圧電体50は、圧電効果を有する材料により構成され、例えばジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、又はチタン酸バリウム(BaTiO)等により構成される。また圧電体50の厚みは、10um〜1mmであることが好ましい。厚みが10um未満である場合、圧電体50は脆性材料により構成されるため、破損等が生じやすい。一方、厚みが1mmを超える場合、圧電体50の電界強度が低減する。従ってエネルギー変換効率の低下を招く。
【0018】
上部電極40、及び下部電極45は、例えば銀、又は銀/パラジウム合金等によって構成される。上部電極40、及び下部電極45の厚みは、1〜50umであることが好ましい。厚みが1um未満の場合、均一に成形することが難しくなる。一方、50umを超える場合、上部電極40、又は下部電極45が圧電体50に対して拘束面となり、エネルギー変換効率の低下を招く。
【0019】
振動部材20、22と支持部材30との間には、隙間が設けられている。振動部材20、22は、セラミック材料に対して高い弾性率を持つ材料によって構成され、例えばリン青銅、又はステンレス等によって構成される。振動部材20、22の厚みは、5〜500umであることが好ましい。また振動部材20、22の縦弾性係数は、1〜500GPaであることが好ましい。振動部材20、22の縦弾性係数が過度に低い、又は高い場合、機械振動子としての特性や信頼性を損なうおそれがある。
【0020】
弾性部材24、26は、弾性運動を行う材料により構成され、例えば樹脂材料によって構成される。振動部材20、22は、弾性部材24、26を介して支持部材30に支持されている。また振動部材20、22は、支持部材30によって拘束されていない。よって弾性部材24、26は、発振装置100の振動の端部において自由端を構成する機能を有する。また弾性部材24、26の一部は、振動部材20、22と支持部材30によって挟まれている。このため振動する際において、振動部材20、22には、弾性部材24、26の慣性と復元力が働くこととなる。さらに弾性部材24、26として内部損失の大きな材料を選択することにより、発振装置100の機械品質係数(Q値)を低減させる機能を有する。
【0021】
支持部材30の突出部32は、支持部材30の全周から内側に向けて形成されている(図示せず)。また突出部32の一面と他面は、互いに平行である。さらに突出部32の一面及び他面は、それぞれ支持部材30に垂直である。
【0022】
次に、本実施形態に係る発振装置100の製造方法について説明する。まず圧電体50を製造する。圧電体50の製造は、グリーンシート法により行い、大気中において1100℃で2時間焼成する。次いで圧電体50に、上部電極40、及び下部電極45を形成する。そして圧電体50に、厚み方向に分極処理を施す。これにより得られた圧電振動子10を、エポキシ系樹脂等を用いて、支持部材30に弾性部材24を介して固定された振動部材20へ接着する。その後、振動部材22を、弾性部材26を介して支持部材30に接着する。これにより発振装置100が形成される。
【0023】
次に、本実施形態に係る発振装置100を用いた圧電型電気音響変換器による音響再生方法について説明する。本実施形態では、例えばパラメトリックスピーカの動作原理を利用して音響再生をすることができる。この場合制御部90は、圧電振動子10に信号生成部92を介してパラメトリックスピーカとしての変調信号を入力する。パラメトリックスピーカとして用いる場合、圧電振動子10は、20kHz以上、例えば100kHzの音波を信号の輸送波として用いる。
【0024】
ここでパラメトリックスピーカの動作原理を説明する。パラメトリックスピーカの動作原理は、AM変調やDSB変調、SSB変調、FM変調をかけた超音波を空気中に放射し、超音波が空気中に伝播する際の非線形特性により、可聴音が出現する原理で音響再生を行うというものである。ここでいう非線形とは、流れの慣性作用と粘性作用の比で示されるレイノルズ数が大きくなると、層流から乱流に推移することをいう。すなわち、音波は流体内で微少にじょう乱しているため、音波は非線形で伝播している。特に超音波を空気中に放射した場合に、非線形性に伴う高調波が顕著に発生する。また音波は、空気中の分子集団が濃淡に混在する疎密状態である。空気分子が圧縮よりも復元するのに時間が生じた場合、圧縮後に復元できない空気が、連続的に伝播する空気分子と衝突し、衝撃波が生じて可聴音が発生する。
【0025】
次に本実施形態の効果を説明する。本実施形態に係る発振装置100において、振動部材20は、弾性部材24を介して支持部材30に設けられた突出部32の一面によって支持されている。このため、弾性部材24の慣性と復元力が振動部材20に働き、振幅は増大する。また振動の端部は自由端となるため、振幅の掃引体積は大きくなる。さらに、振動部材20、弾性部材24、及び突出部32は平面視で重なっていることから、発振装置100の面積が増大することを抑制できる。従って、小型化を図りつつ、高い音圧レベルを実現することができる。
【0026】
また、圧電振動子10は、弾性部材24、26を介して支持部材30に支持されている。よって、発振装置100の機械的強度を向上することができる。さらに、弾性部材24、26を、内部損失の大きい材料により構成した場合、発振装置100のQ値は低減する。このため平坦な音圧レベル周波数特性を実現することができる。さらに、弾性部材24、26を構成する材料を選択することにより、特定周波数帯域におけるQ値を制御することができる。よって低周波数帯域においてQ値を低減し、高周波数帯域においてQ値を高く調整した場合、可聴音スピーカまたは、パラメトリックスピーカとして動作可能な電気音響変換器を実現することができる。
【0027】
図3は、第2の実施形態に係る発振装置102を示す断面図であって、第1の実施形態における図1に対応している。本実施形態に係る発振装置102は、弾性部材24、26が、バネにより構成されている点を除いて、第1の実施形態に係る発振装置100と同様である。
【0028】
本実施形態においても、振動部材20は、弾性部材24を介して支持部材30に設けられた突出部32の一面によって支持されている。また、振動部材20、弾性部材24、及び突出部32は平面視で重なっている。従って、小型化を図りつつ、高い音圧レベルを実現することができる。
【0029】
図4は、第3の実施形態に係る圧電振動子110を示す斜視図である。本実施形態に係る発振装置は、圧電振動子の構成を除いて第1の実施形態に係る発振装置100と同様である。また本実施形態に係る圧電振動子110は、積層構造を有する点を除いて、第1の実施形態に係る圧電振動子10と同様である。
【0030】
図4に示すように圧電振動子110は、複数の圧電体と複数の電極を交互に積層して構成されている。圧電体60、61、62、63、64の間には、電極70、71、72、73が1層ずつ形成されている。電極70と電極72、及び電極71と電極73は、それぞれ互いに接続している。各圧電体の分極方向は、1層ごとに逆向きとなっている。また各電極間に生じる電界の向きも、交互に逆向きとなっている。
【0031】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また圧電振動子110は積層構造を有しているため、電極層間に生じる電界強度が高い。これにより圧電振動子110の駆動力を向上させることができる。なお、圧電振動子110の積層数は任意に増減できる。
【0032】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0033】
10 圧電振動子
20 振動部材
22 振動部材
24 弾性部材
26 弾性部材
30 支持部材
32 突出部
40 上部電極
45 下部電極
50 圧電体
60〜64 圧電体
70〜73 電極
90 制御部
92 信号生成部
100 発振装置
102 発振装置
110 圧電振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子と、
前記圧電振動子の一面を拘束する第1の振動部材と、
前記第1の振動部材の縁を支持する第1の弾性部材と、
前記第1の弾性部材の周囲に位置する支持部材と、
を備え、
前記第1の振動部材は、前記支持部材によって拘束されておらず、
前記支持部材は、前記第1の弾性部材が位置する側に突出部を有しており、
前記第1の弾性部材は、前記突出部の一面によって支持されており、
前記第1の振動部材の縁は、平面視で前記突出部と重なっている発振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発振装置において、
前記圧電振動子の他面を拘束する第2の振動部材と、
前記第2の振動部材の縁を支持する第2の弾性部材と、
をさらに備え、
前記第2の振動部材は、前記支持部材によって拘束されておらず、
前記第2の弾性部材は、前記突出部の他面によって支持されており、
前記第2の振動部材の縁は、平面視で前記突出部と重なっている発振装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発振装置において、
前記第1の弾性部材は、樹脂材料によって構成されている発振装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の発振装置において、
前記第1の弾性部材は、バネによって構成されている発振装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載の発振装置において、
前記発振装置は、音波センサの発信源である発振装置。
【請求項6】
請求項1ないし4いずれか1項に記載の発振装置において、
前記発振装置は、スピーカである発振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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