説明

発毛促進用組成物

本発明は、脱毛、脆い爪及び皮膚状態を治療し、発毛を促進又は増強するための組成物及び方法を提供する。該組成物は、通常少なくとも1種のメチオニンアナログ又は誘導体を含む。本発明は更に、本発明の組成物を含む構造化された液体送達系を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発毛を促進し、脆い爪及び皮膚状態を治療するための組成物及び方法を提供する。前記組成物は、一般に少なくとも1種のメチオニンアナログ又は誘導体を含有する。
【背景技術】
【0002】
脱毛と禿げは、哺乳類に共通した悩みである。ヒト男性人口の40%を超える人々、及びヒト女性人口のほぼ15%の人々が、何らかの形態の脱毛又は禿げに苦しんでいる。遺伝的特質と性ホルモンの化学的性質に関する知識が増えるのに伴い、脱毛の原因のいくつかが解明されたのはつい最近のことである。脱毛は、化学療法による治療、発熱、又は食事のような種々の過渡条件により誘発される場合があるが、ヒトの脱毛を引き起こす最も有力な要因は、遺伝的特質とホルモンの組合せである。男性の場合、男性型禿頭症又はアンドロゲン性脱毛症とも呼ばれるこの種の脱毛症が、全ての脱毛症の95%を超えている。アンドロゲン性脱毛症の正確な原因は知られていない。遺伝的特質に加えて、アンドロゲンの量(例えば、テストステロン及びジヒドロテストステロン)も重要な役割を果たすことは明らかであるが、簡潔に言えば、個体が有するアンドロゲンが多くなると、毛髪を早く失うこととなる。
【0003】
アンドロゲン性脱毛症の場合、健康な末端の毛髪を作り出している毛包は、毛幹(shaft)が弱まった、より薄く、より短く、より脆い毛髪を作り始める。最終的にこれらの毛包は、薄くて殆ど目に見えず短いうぶ毛のみを作り出すか、又は完全に消滅する場合がある。初めにこめかみが後退し、次いでその上部が薄くなり、その後頂上部に禿げが生じて、最終的に頭の上部から毛髪が全く消失するという共通した脱毛パターンの原因となるのは、これら毛包である。遺伝型の脱毛が進行した場合でも、通常頭の側部と後部の毛髪は残存する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脱毛又は禿げの根底にある原因に係らず、次の1点が確かに知られている:ヒトが何を摂取しても、ヒトの生活習慣がどのようであっても、又はどのような種類のビタミンをヒトが摂取しても、出生時に有する約150,000個よりも多い毛包は決して発育しない。毛包は毛髪を育てる。発毛を停止する遺伝的プログラムを有するヒトがある年齢に達した場合、毛包は、より薄くより短く、そしてより色の薄い毛髪を生成し始める。最終的に毛包は、新たな毛髪の生成を完全に停止させる。頭の一部にある十分な毛包がこのような状態になると、薄い部分が出現する。そして、この毛包の全てが生成を停止すると禿げとなる。
【0005】
新たな毛包はもはや再生できないため、治療方法としては毛包の保存に重点が置かれることとなる。共通の治療方法としては、局所療法、薬物療法及び毛髪回復手術が挙げられる。ミノキシジル(即ち、以前はthe UpJohn Company、そして最近はPfizer Inc.より、商標名Rogain(登録商標)で販売される)又はフィナステリド(即ち、Merck and Companyより商標名Propecia(登録商標)で販売される)のような薬物を用いた局所及び経口療法は、全ての個体ではないがある個体のアンドロゲン性脱毛症の治療に有効である。これら両方の薬物は有効ではあるが、重要な欠点がある。ミノキシジルは、大部分の人々にとって高価であることに加えて、過剰量が皮膚から吸収されると、心拍数又は血圧を変化させ、胸痛が生じ得る血管拡張性薬物である。男性の場合には、プロぺシアは性機能障害、乳房圧痛及び乳房肥大を引き起こす場合があり、前立腺肥大が生じる可能性がある。毛髪回復手術は有効な場合があるが、激しい痛みを伴い高価である。従って、費用効果があり副作用の少ない発毛刺激効果のある組成物に対する需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、対象の発毛を促進する方法を包含する。前記方法は、メチオニンのヒドロキシアナログ並びにその化学的及び物理的誘導体を該対象に投与することを含む。
【0007】
本発明の別の態様は、対象の脱毛症を治療し、発毛を促進するのに有効な組成物を提供する。該組成物は、メチオニンのヒドロキシアナログ並びにその化学的及び物理的誘導体を含む体系的な液体送達系を含む。
【0008】
本発明の更なる態様は、メチオニンのヒドロキシアナログを対象の皮膚細胞又は毛包に選択的に送達する方法を包含する。該方法は、メチオニンのヒドロキシアナログを含有する体系的な液体送達系を有する組成物を対象の皮膚に局所的に適用することを含む。通常、該体系的な液体送達系は、メチオニンのヒドロキシアナログを、対象の皮膚内に配された毛包又は皮膚細胞に選択的に送達する。
【0009】
本発明の他の態様及び特徴は、本明細書中でより詳細に記述される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
特定のメチオニン化合物が、脱毛症、皮膚状態及び脆い爪を治療するのに有効であることが見出された。該メチオニン化合物は、動物の毛髪又はファー(fur)の発育を促進又は増強するのにも有用である。特に、メチオニン化合物は、通常メチオニン誘導体又はメチオニンアナログである。メチオニン化合物は、上記状態のいずれかに有効であることが知られている他の薬剤と共に製剤でき、経口、局所及び注射を含む種々の適切な手段により対象に投与できる。毛包細胞又は皮膚細胞への選択的な投与経路としては、本発明の組成物を適切な体系的な液体送達系内に封入する経路が典型的である。
I. メチオニンアナログ及び誘導体
【0011】
本発明の1つの態様は、少なくとも1種のメチオニン誘導体又はメチオニンアナログ(以下、「メチオニン化合物」と称する)を有する組成物を包含する。本発明の組成物中での使用に適するメチオニン化合物は、通常発毛を促進するか、又は脱毛を防止する。あるいは、適切なメチオニン化合物は、種々の皮膚状態及び/又は脆い爪に対し効力を有する。
(a) メチオニンスルホキシド及びメチオニンスルホン
【0012】
1つの具体的態様において、前記メチオニン化合物は、式(I)のメチオニンスルホキシド又はメチオニンスルホンである。
【化1】

[式中、
*は不斉炭素であり;
1は、メチル又はエチルであり;
2は、酸素又は水素であり;
3は、アシル基又は水素であり;そして
nは1〜3の整数である]
【0013】
式(I)に相当する化合物は、メチオニンスルホキシド(即ち、R2が水素の場合)又はメチオニンスルホン(即ち、R2が酸素の場合)であってもよい。態様にもよるが、式(I)の化合物は、ノルメチオニン(即ち、nが1)、メチオニン(即ち、nが2)又はホモメチオニン(即ち、nが3)であってもよい。特定の態様においては、R3がアシル基の場合には、式(I)の化合物は、アセチルメチオニンスルホキシド又はアセチルメチオニンスルホンであってもよい。適切なアシル基の例としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル及びスクシニルが挙げられる。典型的なアシル基は、ホルミル及びアセチルである。式(I)の化合物は、エステル誘導体であってもよい。適切なエステル誘導体の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及びブチルエステルが挙げられる。式(I)の化合物の各態様においては、D−異性体とL−異性体の両方が本発明の範囲内に含まれる。本発明は、式(I)の化合物の薬剤的に許容可能な塩も包含する。塩の適切な例としては、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム及びカルシウム)、アルカリ金属塩(例えば、リチウム、ナトリウム、及びカリウム)、銅塩、亜鉛塩、コバルト塩、クロム塩、マンガン塩、及び鉄塩が挙げられる。
【0014】
1つの態様において、式(I)の化合物は、L−メチオニンスルホキシド又はD−メチオニンスルホキシド(即ち、R1がメチル;R2が水素、R3が水素であり、nが2である)である。代替となる態様では、式(I)の化合物は、L−メチオニンスルホン又はD−メチオニンスルホン(即ち、R1がメチル;R2が酸素、R3が水素であり、nが2である)である。更なる態様では、式(I)の化合物は、N−アセチル−L−メチオニンスルホキシド又はN−アセチル−D−メチオニンスルホキシド(即ち、R1がメチル;R2が水素、R3がアセチルであり、nが2である)である。別の態様では、式(I)の化合物は、N−ホルミル−L−メチオニンスルホキシド又はN−ホルミル−D−メチオニンスルホキシド(即ち、R1がメチル;R2が水素、R3がホルミルであり、nが2である)である。更に別の態様では、式(I)に相当する化合物は、N−アセチル−L−メチオニンスルホン又はN−アセチル−D−メチオニンスルホン(即ち、R1がメチル;R2が酸素、R3がアセチルであり、nが2である)である。更なる態様では、式(I)に相当する化合物は、N−ホルミル−L−メチオニンスルホン又はN−ホルミル−D−メチオニンスルホン(即ち、R1がメチル;R2が酸素、R3がホルミルであり、nが2である)である。
(b) アシルメチオニン化合物
【0015】
代替となる態様では、メチオニン化合物は、式(II)のアシルメチオニン誘導体である。
【化2】

[式中、
*は不斉炭素であり;
4は、メチル又はエチルであり;
5は、アシル基であり;
nは1〜3の整数である]
【0016】
式(II)の化合物は、ノルメチオニン(即ち、nが1)、メチオニン(即ち、nが2)又はホモメチオニン(即ち、nが3)であってもよい。適切なアシル基(即ち、R5)の例としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル及びスクシニルが挙げられる。典型的なアシル基は、ホルミル及びアセチルである。式(II)の化合物は、エステル誘導体であってもよい。適切なエステル誘導体の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及びブチルエステルが挙げられる。式(II)の化合物の各態様においては、D−異性体とL−異性体の両方が本発明の範囲内に含まれる。本発明は、式(II)の化合物の薬剤的に許容可能な塩も包含する。塩の適切な例としては、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム及びカルシウム)、アルカリ金属塩(例えば、リチウム、ナトリウム、及びカリウム)、銅塩、亜鉛塩、コバルト塩、クロム塩、マンガン塩、及び鉄塩が挙げられる。
【0017】
1つの態様において、式(II)の化合物は、N−アセチル−L−メチオニン又はN−アセチル−D−メチオニン(即ち、R4がメチル;R5がアセチルであり、nが2である)である。別の態様では、式(I)の化合物は、N−ホルミル−L−メチオニン又はN−ホルミル−D−メチオニン(即ち、R4がメチル;R5がホルミルであり、nが2である)である。更に別の態様では、式(II)の化合物は、N−プロピオニル−L−メチオニン又はN−プロピオニル−D−メチオニン(即ち、R4がメチル;R5がプロピオニルであり、nが2である)である。更なる典型的な態様では、(即ち、R1がメチル;R2が酸素、R3がホルミルであり、nが2である)。更なる態様では、式(II)の化合物は、N−スクシニル−L−メチオニン又はN−スクシニル−D−メチオニン(即ち、R4がメチル;R5がスクシニルであり、nが2である)である。
(c) メチオニンを有するペプチド
【0018】
更なる代替の態様において、メチオニン化合物は、1以上のメチオニンアミノ酸残基を含んでいてもよい。これに関し、該メチオニン化合物は、約1ないし約5のメチオニンアミノ酸残基を含むペプチドであってもよい。更なる態様では、前記メチオニン化合物は、約2ないし約4のメチオニンアミノ酸残基を有するペプチドであってもよい。更なる態様では、前記メチオニン化合物は、3のメチオニンアミノ酸残基を有するペプチドである。典型的な態様では、前記メチオニン化合物は、式(III)に相当するジペプチドであろう。
【化3】

[式中、
*は不斉炭素であり;
6及びR12は、独立にメチル又はエチルであり;
7、R8、R10及びR11は、独立に酸素又は水素であり;
9は、アシル基又は水素であり;
nは1〜3の整数であり;そして
mは1〜3の整数である]
【0019】
式(III)に相当する化合物は、1つのメチオニンスルホキシド基(例えば、R7又はR8の1つは水素であり、1つは酸素である)又は2つのメチオニンスルホキシド基(例えば、R7又はR8の1つは水素であり、1つは酸素;そしてR11又はR12の1つは水素であり、1つは酸素である)を含んでいてもよい。あるいは、式(III)に相当する化合物は、1つのメチオニンスルホン基(例えば、R7又はR8は酸素である)又は2つのメチオニンスルホン基(例えば、R7、R8、R10及びR11は酸素である)を含んでいてもよい。態様にもよるが、式(III)の化合物は、1若しくは2のノルメチオニン(即ち、n又はmは1)、1若しくは2のメチオニン(即ち、n又はmは2)、又は1若しくは2のホモメチオニン(即ち、n若しくはmは3)、及びそれらの組合せを含んでいてもよい。特定の態様では、式(III)の化合物は、アシル基を含んでいてもよい。適切なアシル基の例としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル及びスクシニルが挙げられる。典型的なアシル基は、ホルミル及びアセチルである。式(III)の化合物は、エステル誘導体であってもよい。適切なエステル誘導体の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、及びブチルエステルが挙げられる。式(III)の化合物の各態様においては、D−異性体とL−異性体の両方が本発明の範囲内に含まれる。1つの態様では、前記化合物は、D−D−異性体であってもよい。代替となる態様では、前記化合物は、L−L−異性体であってもよい。更なる態様では、前記化合物は、D−L−異性体であってもよい。本発明は、式(III)の化合物の薬剤的に許容可能な塩も包含する。塩の適切な例としては、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム及びカルシウム)、アルカリ金属塩(例えば、リチウム、ナトリウム、及びカリウム)、銅塩、亜鉛塩、コバルト塩、クロム塩、マンガン塩、及び鉄塩が挙げられる。
(d) メチオニンのヒドロキシアナログ
【0020】
典型的な態様では、前記メチオニン化合物は、メチオニンのヒドロキシアナログである。1つの態様では、メチオニンのヒドロキシアナログは、式(IV)の化合物である。
【化4】

[式中、
*は不斉炭素であり;
13は、メチル又はエチルであり;そして
14及びR15は、独立に酸素又は水素である]
【0021】
式(IV)に相当する化合物は、メチオニンスルホキシドヒドロキシアナログ(即ち、R14又はR15の1つは水素であり、1つは酸素である場合)又はメチオニンスルホンヒドロキシアナログ(即ち、R14及びR15が酸素の場合)であってもよい。式(IV)の化合物は、ノルメチオニン(即ち、nが1)、メチオニン(即ち、nが2)又はホモメチオニン(即ち、nが3)であってもよい。典型的な態様では、式(IV)の化合物はメチオニンである。式(IV)の化合物は、エステル誘導体であってもよい。適切なエステル誘導体の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及びブチルエステルが挙げられる。式(IV)の化合物の各態様においては、D−異性体とL−異性体の両方が本発明の範囲内に含まれる。本発明は、式(IV)の化合物の薬剤的に許容可能な塩も包含する。塩の適切な例としては、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム及びカルシウム)、アルカリ金属塩(例えば、リチウム、ナトリウム、及びカリウム)、銅塩、亜鉛塩、コバルト塩、クロム塩、セレン塩、マンガン塩、及び鉄塩が挙げられる。
【0022】
更なる代表的な態様においては、前記メチオニン化合物は、式(V)に相当するメチオニンのヒドロキシアナログである。
【化5】

【0023】
式(V)の化合物は、2−ヒドロキシ−4(メチルチオ)ブタン酸(一般に「HMTBA」として知られ、モンタナ州セントルイスにあるNovus Internationalにより、商標名Alimet(登録商標)で販売される)である。本発明の使用には、HMTBAの種々の塩、キレート、エステル、アミド、及びオリゴマーも適する。HMTBAの代表的な塩としては、以下に記載したものに加えて、アンモニウム塩、化学量論量及び超化学量論量のアルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム及びカルシウム)、化学量論量及び超化学量論量のアルカリ金属塩(例えば、リチウム、ナトリウム、及びカリウム)、並びに化学量論量及び超化学量論量の亜鉛塩が挙げられる。HMTBAの代表的なエステルとしては、HMTBAのメチル、エチル、2−プロピル、ブチル、及び3−メチルブチルエステルが挙げられる。HMTBAの代表的なアミドとしては、メチルアミド、ジメチルアミド、エチルメチルアミド、ブチルアミド、ジブチルアミド、及びブチルメチルアミドが挙げられる。HMTBAの代表的なオリゴマーとしては、より多くの繰返し単位を含むHMTBAの二量体、三量体、四量体及びオリゴマーが挙げられる。
【0024】
あるいは、前記メチオニンのヒドロキシアナログは、式(IV)の1種又は2種以上の配位化合物を1種又は2種以上の金属イオンと共に含む金属キレートであってもよい。態様に係らず、金属イオンの限定されない適切な例としては、亜鉛イオン、銅イオン、マンガンイオン、鉄イオン、クロムイオン、セレンイオン、コバルトイオン、及びカルシウムイオンが挙げられる。1つの態様では、前記金属イオンは、二価である。二価の金属イオン(即ち、2+の実効電荷を有するイオン)の例としては、銅イオン、マンガンイオン、カルシウムイオン、コバルトイオン及び鉄イオンが挙げられる。別の態様では、前記金属イオンは亜鉛である。更に別の態様では、前記金属イオンは銅である。更に別の態様では、前記金属イオンは鉄である。更なる態様では、前記金属イオンはカルシウムである。各態様において、式(IV)の配位化合物はHMTBAが好ましい。1つの典型的な態様では、前記金属キレートはHMTBA−Caである。更に典型的な態様では、前記金属キレートはHMTBA−Cuである。代替となる典型的な態様では、前記金属キレートはHMTBA−Znである。更に別の典型的な態様では、前記金属キレートはHMTBA−Feである。
【0025】
当業者が理解するように、金属キレート化合物を形成する配位子の金属イオンに対する比率は変化でき、また変化するであろう。一般的に言うと、配位子の数が金属イオンの電荷に等しい場合には、式(IV)の配位子のカルボキシ部分は脱プロトン化された形態であるため、分子の電荷は通常、基本的に中性である。更なる例としては、金属イオンが2+の電荷を有し、金属イオンに対する配位子の比率が2:1であるキレート種の場合には、各ヒドロキシル基は、配位共有結合により金属に結合すると考えられ、一方金属イオンの各カルボキシレート基の間にはイオン結合が存在する。このような状況は、例えば、二価の亜鉛、銅、又はマンガンが2つのHMTBA配位子と錯体を形成する場合である。更なる例としては、配位子の数が金属イオンの電荷を超える場合、例えば、二価の金属イオンの3:1キレートのような場合には、電荷が過剰な配位子は、通常プロトン化された状態で残存し、電荷のバランスをとる。反対に、金属イオンの正電荷が配位子の数を上回る場合には、例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸水素塩、硫酸水素塩、及びリン酸二水素のような別のアニオンの存在により電荷のバランスを取ることができる。
【0026】
一般的に言うと、配位子の金属イオンに対する適切な比率は、約1:1ないし約3:1又はそれ以上である。別の態様では、配位子の金属イオンに対する比率は、約1.5:1ないし約2.5:1である。金属キレート化合物の任意の混合物中には、金属イオンに対する配位子が種々の比率となる化合物が当然含まれるであろう。例えば、金属キレート化合物の組成は、配位子の金属イオンに対する比率が1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、及び3:1を含むような種を有する場合がある。
【0027】
本発明の金属キレート化合物は、米国特許第4,335,257号及び同第4,579,962号に記載されるような当該分野で一般に公知の方法に従って製造することができ、これら米国特許は両方共、その全体が参照により本明細書に組み入れられたものとする。金属キレート化合物の好ましい調製方法では、金属酸化物、金属炭酸塩、又は金属水酸化物のような金属原料化合物を反応器に供給し、HMTBA水溶液を該原料化合物に添加する。水溶液中のHMTBA濃度は、通常約40重量%ないし約89重量%である。反応は、通常、穏やかな攪拌下で、2時間継続される。反応で使用される出発材料にもよるが、通常、水及び/又は二酸化炭素が生成する。反応は、通常、大気圧で実施でき、反応物(reaction mass)は、約90℃ないし約130℃の範囲の温度に加熱される。反応の実質的な完了後も、該反応物の加熱が反応器中で継続され、実質的に乾燥した生成物が生成する。通常、遊離水の含有量は約2重量%まで低下し、該反応物はさらさらした粒状固体に変化する。乾燥した金属キレート生成物は、カルシウムベントナイトフィラー又はシリカと混合させて粉末に粉砕してもよい。あるいは、前記金属キレート化合物は、市販している供給元から購入してもよい。例えば、HMTBA−ZnとHMTBA−Cuは、モンタナ州セントルイスにあるNovus Internationalから購入でき、各々MINTREX(登録商標)Zn及びMINTREX(登録商標)Cuの商標名で販売されている。
【0028】
代替となる典型的な態様において、メチオニンのヒドロキシアナログは、式(IV)のアニオン性化合物を金属イオンと共に含む薬剤的に許容可能な金属塩であってもよい。適切な金属イオンは、通常、1+、2+又は3+の電荷を有し、亜鉛イオン、銅イオン、マンガンイオン、セレンイオン、鉄イオン、クロムイオン、銀イオン、コバルトイオン、及び銀イオンから選択されるであろう。特別な理論に縛られることはないが、通常、亜鉛イオン、銅イオン、マンガンイオン、鉄イオン、セレンイオン、クロムイオン、ニッケルイオン、及びコバルトイオンをHMTBAと組合せると、塩ではなく金属キレートが形成されると考えられている。形成される分子が塩であるか、又はキレートであるかに係らず、いずれの形態の分子も本発明の範囲内に包含される。本発明で有用な塩は、金属、金属酸化物、金属水酸化物又は金属塩(例えば、金属炭酸塩、金属硝酸塩、又は金属ハロゲン化物)を式(IV)の化合物の1種又は2種以上と反応させることで形成できる。典型的な態様では、式(IV)の化合物は、HMTBAであろう。
【0029】
塩は、当該分野で一般に公知の方法に従って調製できる。例えば、金属塩は、HMTBAを金属イオン源と接触させることにより形成できる。1つの態様では、1+に電荷を有する銀イオンをHMTBAと接触させて、金属塩である2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸銀を形成することができる。この塩におけるHMTBAに対する銀の比率は、通常約1:1であろう。
(e) メチオニン化合物の混合物
【0030】
本発明の組成物には、少なくとも1種のメチオニン化合物が含まれる。特定の組成物は、本明細書中で詳述されるか又は当該分野で公知のメチオニン化合物のいずれかの2種又は3種以上の組合せを含んでいてもよいことも推定される。ある態様では、前記組成物は2種のメチオニン化合物を含んでいてもよい。他の態様では、前記組成物は3種のメチオニン化合物を含んでいてもよい。更なる態様では、前記組成物は4種又は5種以上のメチオニン化合物を含んでいてもよい。2種以上のメチオニン化合物を有する適切な組成物の限定されない例を、表Aにおいて説明する。
【表1】


【0031】
表Aにおけるように本明細書中で詳述された任意のものを含む本発明の組成物は、発毛剤として有用である。特定の態様では、本発明の組成物を使用してフケを調節することもできる。より詳細には、該組成物を使用して温血対象の発毛を刺激することができる。該組成物はそのようなものとして使用されて、アンドロゲン性脱毛症(男性型禿頭症としても知られる)、円形脱毛症及び女性型禿頭症を含む(これらに限定されない)種々の形態の原発性脱毛症に起因する脱毛に関する種々の疾患状態又は障害を治療することができる。この場合本発明の組成物は、通常、脱毛症が発症した後に発毛を刺激する。あるいは本発明の組成物は、続発性脱毛症のような症状に予防的に投与してもよい。例えば、該組成物は、化学療法及び/又は放射線療法のように、通常脱毛が発症する前に投与してもよい。実施例2で実証されるように、前記組成物を使用して動物の毛質又は発毛を促進することもできる。
【0032】
本発明の更なる態様において、前記組成物は、脆い爪及び/又は種々の皮膚状態を治療するのに有用である。例えば、本発明の組成物を哺乳類の皮膚の治療方法に使用すると、皮膚の調子を整え滑らかにし、過剰な色素沈着を低減し、そして細かな線と皺の発生並びに光損傷と皮膚の加齢のような他の兆候を防止又は低減することができる。前記組成物を使用すると、過剰な乾燥又はざ瘡のような種々の皮膚障害を治療することもできる。前記方法には、皮膚に有効量の上記組成物を接触させることが含まれる。具体的な例としては、適切な容器又はアプリケーターから少量の材料(約0.1ないし約5ml)を皮膚の露出領域に塗布し、次いで必要に応じて手若しくは指、又は適切な装置を用いて、該材料を皮膚上に広げ及び/又は皮膚に擦り込む。本明細書中に開示した各組成物及び各製剤は、通常、容器内に包装され、その粘度と対象により意図される用途に適応させる。例えば、ローション又は液状クリームを、瓶、ロールボールアプリケーター(roll−ball applicator)、カプセル、噴霧剤駆動(propellant−driven)エアロゾル装置、又は手動ポンプを備えた容器中に詰めてもよい。クリームは、チューブ又は蓋付きジャーのような変形不能な瓶又は圧搾容器中に簡単に保管することができる。毛髪、皮膚、及び爪の治療に適する本発明の組成物の種々の剤形を、以下のII節においてより十分に詳述する。
【0033】
一般的に言うと、本発明の組成物は、結果として有効量の該組成物が塗布されるような方法で、それを要する対象に投与される。当業者であれば理解するであろうが、「有効量」を含む量は、治療される兆候、対象の年齢及び性別、組成物の剤形、及び本発明の組成物と組み合わされる他の活性薬剤の存在に依存して変化し得るし、変化するであろう。通常、上で詳述したメチオニン化合物のいずれかは、単独で又は組み合わせにより、約0.01重量%ないし約25重量%の範囲の量で組成物中に存在し得る。別の態様では、メチオニン化合物は、約0.01重量%ないし約10重量%の範囲の量で組成物中に存在し得る。更なる態様では、メチオニン化合物は、約0.01重量%ないし約5重量%の範囲の量で組成物中に存在し得る。適切な剤形及び投与経路を、以下のII節及びIII節に記載する。適切な組合せ治療を以下のIV節に詳述する。
II. 剤形及び投与経路
【0034】
メチオニン化合物を含む組成物は、毛包、爪又は皮膚の送達を含む、有効量の該組成物の送達をもたらすような、当該分野で公知の種々の方法により投与できる。当業者であれば理解するであろうが、かかる投与方法は、具体的な組成、適応、及び対象の症状により変化し得るし、変化するであろう。例えば、上記組成物は、所望により薬剤的に許容可能な無毒性の従来の担体、アジュバント、及び賦形剤を含む剤形の単位用量で、経口的に、非経口的に、噴霧により、直腸に、皮内に、経皮的に、又は局所的に投与することができる。薬物の剤形は、例えば、Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1975)、及びLiberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.(1980)で議論されている。
(a) 経口投与
【0035】
メチオニン化合物は、経口投与用に製剤してもよい。経口投与用の固体剤形としては、カプセル、錠剤、丸剤、粉剤、及び顆粒剤を挙げることができる。かかる固体剤形の場合には、化合物は、通常、指示された投与経路に適する1種又は2種以上のアジュバントと組み合わされる。前記化合物は、ラクトース、スクロース、でんぷん散剤、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸のナトリウム塩及びカルシウム塩並びに硫酸のナトリウム塩及びカルシウム塩、ゼラチン、アカシア・ゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、及び/又はポリビニルアルコールのような種々の糖質賦形剤/結合剤、コーティング材料、潤滑剤、錠剤分解物質、香料、着色剤と混合することができ、その後投与に好都合なように錠剤化されるか又はカプセル化される。かかるカプセル又は錠剤には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース中に活性化合物を分散させることで提供できるような、放出制御製剤を含んでいてもよい。カプセル、錠剤、及び丸剤の場合には、剤形には、クエン酸ナトリウム、又は炭酸マグネシウム若しくは炭酸カルシウム又は炭酸水素マグネシウム若しくは炭酸水素カルシウムのような緩衝剤が含まれていてもよい。錠剤と丸剤は、更に腸溶コーティングにより調製することができる。
【0036】
あるいは、前記組成物は液体として投与してもよい。経口投与用の液体剤形としては、当該分野で通常使用される、水のような不活性希釈剤を含む薬剤的に許容可能なエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、及びエリキシルを挙げることができる。かかる組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、並びに甘味剤、香味剤、及び香料のようなアジュバントを含んでいてもよい。
【0037】
担体材料と組合せて単回経口投与量の組成物を製造できるメチオニン化の量は、対象と具体的な投与様式により変化するであろう。一般的に言うと、製剤には、本明細書中に詳述する0.005重量%ないし約20重量%のメチオニン化合物のいずれかが、本明細書中に詳述するか又は当該分野で公知であるような経口製剤として許容できる、約80重量%ないし約99重量%の成分のいずれかと共に含まれていてもよい。投与量は、Goodman & Goldman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版(1996)、添付書類II、1707〜1711頁、及びGoodman & Goldman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第10版(2001)、添付書類II、475〜493頁に記載されたガイドラインにより決定可能なことも当業者であれば理解するであろう。
(b) 局所投与
【0038】
本発明の別の態様において、メチオニン化合物は局所投与用に製剤される。皮膚に局所的に塗布できる局所用組成物は、溶液、オイル、クリーム、液体、軟膏、ゲル、ローション、シャンプー、洗い流し不要タイプ又は洗い流しタイプのヘアコンディショナー、乳液、洗浄剤、モイスチャライザー、スプレー、スキンパッチ等を含むいかなる形態であってもよい。局所投与は、治療部位に直接適用することにより達成できる。例えば、上記適用は、前記製剤(ローション又はゲルのような)を治療部位の皮膚上に擦り込むことにより、又は液体製剤を治療部位に噴霧して適用することにより達成できる。典型的な態様では、以下の第III節でより詳細に説明するように、メチオニン化合物を体系的な液体送達媒体に組み入れることにより、局所送達は達成される。
【0039】
局所投与には、経皮貼付又はイオン導入装置のような経皮投与の利用が含まれていてもよい。例えば、イオン導入法によりメチオニン化合物を毛包に送達するよう適合させた機器を用いて製剤してもよい。当業者であれば理解するように、前記製剤は、通常、クリーム又はゲルではなく液体(即ち、溶液)の形態である。そのような送達用に適合させた機器の例には、チャンバー(chamber)を含み電流を流す大きな帯具(bandage)がある。該チャンバーは、皮膚と接触し、前記製剤を含むように配置されている。更なる態様では、メチオニン化合物は、超音波により毛包に送達するよう製剤される。特定の理論に拘束されるわけではないが、一般に超音波とイオン導入は、角質層を妨害して活性化合物の輸送を改善することにより、メチオニン化合物の毛包への送達を増強すると考えられている。
【0040】
当業者であれば理解するであろうが、局所製剤は、前記メチオニン化合物に加えて、種々の適切で不活性な、生理的に許容可能な担体及び賦形剤を含んでいてもよい。適切な担体又は賦形剤としては、水、生理食塩水、静菌性食塩水(0.9mg/mlベンジルアルコール含有食塩水)、ワセリン系クリーム(例えば、USP親水軟膏及び類似するクリーム、Unibase、Parke−Davis)、種々の薬剤的に許容可能なゲル、並びに短鎖アルコール及びグリコール(例えば、エチルアルコール及びプロピレングリコール)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
局所製剤は、担体及び賦形剤に加えて、浸透促進剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、噴霧剤、溶媒、保湿剤、増粘剤、散剤、及び芳香剤(即ち、「追加薬剤」)のような追加的な薬剤を含んでいてもよい。当業者であれば理解するであろうが、該局所製剤は、前述した追加薬剤の様々な量での組合せを含んでいてもよい。一般に、前記局所製剤は、1種又は2種以上のメチオニン化合物を、前記組成物の0.1重量%ないし20重量%、及び追加薬剤の任意の組合せの約80重量%ないし約99重量%の範囲の量で含むであろう。更なる態様では、前記局所製剤は、1種又は2種以上のメチオニン化合物を、前記組成物の0.1重量%ないし5重量%、及び追加薬剤の任意の組合せの約95重量%ないし約99重量%の範囲の量で含むであろう。各種の追加薬剤の適切な例を以下に詳述する。
【0042】
前記局所製剤は、1種又は2種以上の界面活性剤(乳化剤とも呼ばれる)を含んでいてもよい。乳化剤及び界面活性剤は、一般に、エマルションとして製剤される組成物を対象とする本発明の上記態様を調製するのに使用される。油中水型エマルション又は水中油型エマルションのいずれかを製剤することができる。適切な界面活性剤及び乳化剤の例としては、非イオン性のエトキシ化及び非エトキシ化界面活性剤、アビエチン酸、アーモンドPEG、蜜ろう、カプリン酸ブチルグルコシド、C18−C36酸グリコールエステル、リン酸C9−C15アルキル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリドPEG−4エステル、セテアレス−7、セチルアルコール、リン酸セチル、トウモロコシ油PEGエステル、セチルリン酸DEA、ラウリン酸デキストリン、クエン酸ジラウレス−7、リン酸ジミリスチル、グリセレス−17ココエート、エルカ酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、硬化ヒマシ油PEGエステル、イソステアレス−11カルボン酸、レシチン、リゾレシチン、ノノキシノール−9、オクチルドデセス−20、パームグリセリド、ジイソステアリン酸PEG、PEGステアラミン、ポロキサミン、ポリグリセリル、リノール酸カリウム、PPG、ミリスチン酸ラフィノース、カプロイルラクチル酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、ナトリウムココエート、イソステアリン酸ナトリウム、トコフェロールリン酸ナトリウム、ステアレス、(C12,C13)パレス−3硫酸TEA、トリ(C12,C15パレス−6リン酸)、及びトリデセスが挙げられる。
【0043】
更なる態様において、前記局所製剤は、皮膚を介した吸収を増大させるために1種又は2種以上の浸透促進剤を含んでいてもよい。典型的な浸透促進剤としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、尿素及び置換尿素化合物が挙げられる。他の適切な浸透増強剤の例としては、2−メチルプロパン−2−オール、プロパン−2−オール、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、ヘキサン−2,5−ジオール、ポリオキシエチレン(2)エチルエーテル、ジ(2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ペンタン−2,4−ジオール、アセトン、ポリオキシエチレン(2)メチルエーテル、2−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシオクタン酸、プロパン−1−オール、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ブタン−1,4−ジオール、ジペラルゴン酸プロピレングリコール、ポリオキシプロピレン15ステアリルエーテル、オクチルアルコール、オレイルアルコールのポリオキシエチレンエステル、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジカプリル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジオクチル、スベリン酸ジブチル、アゼライン酸ジオクチル、セバシン酸ジベンジル、フタル酸ジブチル、アゼライン酸ジブチル、ミリスチン酸エチル、アゼライン酸ジメチル、ミリスチン酸ブチル、コハク酸ジブチル、フタル酸ジデシル、オレイン酸デシル、カプロン酸エチル、サリチル酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸エチル、ペラルゴン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、ラウリン酸ブチル、安息香酸ベンジル、安息香酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、カプリン酸エチル、カプリル酸エチル、ステアリン酸ブチル、サリチル酸ベンジル、2−ヒドロキシプロパン酸、2−ヒドロキシオクタン酸、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、1,5−ジメチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、ホスフィンオキシド、糖エステル、テトラヒドロフルフラールアルコール、尿素、ジエチル−m−トルアミド、1−ドデシルアザシロヘプタン−2−オン、オメガ3脂肪酸及び魚油、並びにそれらの組合せが挙げられる。
【0044】
更なる態様において、前記局所製剤は、1種又は2種以上の皮膚軟化剤を含有していてもよい。本明細書中で使用される用語である皮膚軟化剤は、皮膚が柔軟で滑らかで且つしなやかな外観を維持するのに役立ち得る化粧品成分である。適切な皮膚軟化剤の例としては、アセチルアルギニン、アセチル化ラノリン、藻類抽出物、杏仁油PEG−6エステル、アボカド油PEG−11エステル、ビス−PEG−4ジメチコーン、ステアリン酸ブトキシエチル、C18−C36酸グリコールエステル、乳酸C12−C13アルキル、カプリリルグリコール、セチルエステル、ラウリン酸セチル、やし油PEG−10エステル、酒石酸ジ(C12−C13)アルキル、セバシン酸ジエチル、酪酸ジヒドロコレステリル、ジメチコノール、酒石酸ジミリスチル、ラウロイルグルタミン酸ジステアレス−5、アボカド油脂肪酸エチル、ミリスチン酸エチルヘキシル、イソステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、ステアリン酸ヘキシルデシル、イソステアリン酸ヘキシル、水素化パームグリセリド、水素化大豆グリセリド、水素化獣脂グリセリド、ヒドロキシプロピルビスイソステアルアミドMEA、ネオペンタン酸イソステアリル、パルミチン酸イソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、酢酸ラウレス−2、ラウリルポリグリセリル−6 セテアリルグリコールエーテル、安息香酸メチルグルセス−20、鉱油、パルミチン酸ミレス−3、オクチルデカノール、オクチルドデカノール、オドンテラアウリタ油、2−オレアミド−1,3オクタデカンジオール、パームグリセリド、PEGアボカドグリセリド、PEGヒマシ油、PEG−22/ドデシルグリコールコポリマー、PEGショレアバターグリセリド、フィトール、ラフィノース、クエン酸ステアリル、ヒマワリ種子油グリセリド、及びトコフェリルグルコシドが挙げられる。
【0045】
局所製剤は、保湿剤を含んでいてもよい。保湿剤は、通常、皮膚の水分量を維持するのに役立つ化粧品成分である。適切な保湿剤の例としては、アセチルアルギニン、藻類抽出物、アロエベラ葉エキス(aloe barbadensis leaf extract)、ベタイン、2,3−ブタンジオール、キトサンラウロイルグリシン(chitosan lauroyl glycinate)、リンゴ酸ジグリセレス−7、ジグリセリン、コハク酸ジグリコールグアニジン、エリスリトール、フルクトース、グルコース、グリセリン、ハチ蜜、加水分解小麦タンパク質/酢酸PEG−20 コポリマー、ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム、イノシトール、ラクチトール、マルチトール、マルトース、マンニトール、マンノース、メトキシPEG、酢酸ミリスタミドブチルグアニジン、ポリグリセリルソルビトール、PCAカリウム、プロピレングリコール、PCAナトリウム、ソルビトール、スクロース、及び尿素が挙げられる。
【0046】
特定の適用においては前記局所製剤を増粘させることが望ましい場合がある。増粘剤又は粘度向上剤の適切な例としては、アクリルアミドコポリマー、アガロース、アミロペクチン、ベントナイト、アルギニン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボマー、カルボキシメチルキチン、セルロースガム、デキストリン、ゼラチン、水素化獣脂、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、アルギニン酸マグネシウム、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ペクチン、種々のPEG、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコール、種々のPPG、アクリル酸ナトリウムコポリマー、カラギーナンナトリウム、キサンタンガム、及び酵母β−グルカンのような薬剤が挙げられる。
【0047】
スプレーとして製剤される局所投与用には、前記組成物は、通常噴霧剤を含有するであろう。適切な噴霧剤としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ジメチルエーテル、二酸化炭素、亜酸化窒素、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0048】
更なる態様において、局所用剤は、1種又は2種以上の溶媒を含んでいてもよい。適切な溶媒としては、水、エチルアルコール、塩化メチレン、イソプロパノール、ヒマシ油、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、及びそれらの組合せが挙げられる。典型的な溶媒は、エチルアルコールである。
【0049】
更なる態様において、前記局所製剤は、1種又は2種以上の散剤を含んでいてもよい。適切な散剤としては、白亜、タルク、フラー土、カオリン、デンプン、ゴム、コロイド状二酸化ケイ素、ポリアクリル酸ナトリウム、テトラアルキルアンモニウムスメクタイト、トリアルキルアリールアンモニウムスメクタイト、化学修飾ケイ酸アルミニウムマグネシウム、有機修飾モンモリロナイト粘土、水和珪酸アルミニウム、ヒュームドシリカ、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、モノステアリン酸エチレングリコール、及びそれらの組合せが挙げられる。
(C) 注射による投与
【0050】
本発明の別の態様においては、メチオニン化合物は、皮内注射等の注射により毛包に直接投与するように治療部位に投与してもよい。注射は典型的には皮内で行うが、他の適切な注射方法としては、皮下、静脈内、筋肉内、又は注入技術が挙げられる。
【0051】
非経口投与用製剤は、治療目的のためには、水性又は非水性の等張性で無菌の注射溶液又は懸濁液の形態であり得る。これらの溶液及び懸濁液は、経口投与用製剤中での使用が記載された1種若しくは2種以上の担体又は賦形剤を有する無菌の粉末又は顆粒から調製することができる。メチオニン化合物は、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、及び/又は種々のバッファー中に溶解させることができる。他のアジュバント及び投与方法は、製薬分野で十分に、また広く知られている。
III. 体系的な液体送達系
【0052】
典型的な態様において、本発明は、メチオニン化合物を毛包又は皮膚細胞に選択的に送達するための、体系的な液体系の使用も包含する。この点において、「選択的」という用語は、メチオニン化合物が、毛包若しくは皮膚細胞ではない周囲細胞に送達されるか、又は循環系に送達されるのとは対照的に、毛包若しくは皮膚細胞に、直接実質的に送達されることを意味する。この態様では、本発明の組成物は、典型的には適切な体系的な液体送達系に封入されて、毛包若しくは皮膚細胞への該化合物の送達を助けるか、又は該組成物の安定性を向上させる。当業者であれば理解するであろうが、本発明の使用には、種々の体系的な液体送達系が適する。適切な体系的な液体送達系の例としては、リポソーム、マイクロエマルション、ミセル、デンドリマー及び他のリン脂質含有系が挙げられる。
(a) リポソーム送達系
【0053】
1つの代替となる態様においては、リポソーム送達系が使用できる。リポソームは、その態様にもよるが、その構造的及び化学的特性を考慮すると、本発明の組成物の送達に適切である。一般的に言って、リポソームは、リン脂質二重層膜を有する球状の小胞である。リポソームの脂質二重層は、他の二重層(例えば、細胞膜)と融合する場合があり、それによりリポソームの内容物を細胞に送達する。このように本発明の組成物は、標的細胞膜と融合するリポソーム中に封入されることにより、毛包又は皮膚細胞に選択的に送達され得る。
【0054】
リポソームは、様々な炭化水素鎖長を有する異なる種類の種々のリン脂質から構成され得ると推定される。リン脂質は通常、グリセリンリン酸を介して種々の極性基の1つに結合する2つの脂肪酸を含む。適切なリン脂質としては、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ジホスファチジルグリセロール(DPG)、ホスファチジルコリン(PC)、及びホスファチジルエタノールアミン(PE)が挙げられる。リン脂質を含む脂肪酸鎖は、約6ないし約26個の炭素原子の長さで変化でき、脂質鎖は飽和でも不飽和であってもよい。適切な脂肪酸鎖としては、n−ドデカノアート(ラウレート)、n−トレトラデカノアート(ミリステート)、n−ヘキサデカノアート(パルミテート)、n−オクタデカノアート(ステアレート)、n−エイコサノアート(アラキダート)、n−ドコサノアート(ベヘネート)、n−テトラコサノアート(リグノセレート)、cis−9−ヘキサデセノアート(パルミトレエート)、cis−9−オクタデカノアート(オレエート)、cis,cis−9,12−オクタデカンジエノアート(リノレエート)、全cis−9,12,15−オクタデカトリエノエート(リノレネート)、及び全cis−5,8,11,14−エイコサテトラノアート(アラキドナート)が挙げられる(括弧内には慣用名が示される)。リン脂質の2つの脂肪酸鎖は、同一でも異なっていてもよい。許容されるリン脂質としては、ジオレオイルPS、ジオレオイルPC、ジステアロイルPS、ジステアロイルPC、ジミリストイルPS、ジミリストイルPC、ジパルミトイルPG、ステアロイル、オレオイルPS、パルミトイル、リノレイルPS等が挙げられる。
【0055】
前記リン脂質は、任意の天然源から得ることができ、それ自体リン脂質の混合物を含んでいてもよい。例えば、卵黄はPC、PG、及びPEを豊富に含み、大豆にはPC、PE、PI及びPAが含まれ、そして動物の脳又は脊髄はPSに富んでいる。リン脂質は、合成源から得ることもできる。個々のリン脂質を種々の比率で有するリン脂質の混合物を使用してもよい。種々のリン脂質の混合物は、活性又は活性の安定性の点で有利なリポソーム組成物をもたらす場合がある。上記のリン脂質は、N−(1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、1,1'−ジオクタデシル−3,3,3’,3'−テトラメチルインドカルボシアニン過塩素酸塩、3,3’−デヘプチルオキサカルボシアニンヨウ化物、1,1'−デドデシル−3,3,3’,3'−テトラメチルインドカルボシアニン過塩素酸塩、1,1’−ジオレイル−3,3,3’,3'−テトラメチルインドカルボシアニンメタンスルホン酸塩、N−4−(デリノレイルアミノスチリル)−N−メチルピリジニウムヨウ化物、又は1,1−ジリノレイル−3,3,3’,3'−テトラメチルインドカルボシアニン過塩素酸塩のようなカチオン性脂質と最適比率で混合させてもよい。
【0056】
リポソームは、スフィンゴシンがグリセロール構造に結合したものであり、ホスホグリセリドの脂肪酸の1つであるスフィンゴ脂質、又は動物の細胞膜の主要成分であるコレステロールを含んでいてもよい。リポソームはPEG化脂質を含んでいてもよく、これはポリエチレングリコール(PEG)のポリマーに共有結合した脂質である。PEG化脂質(PEG)は、一般にリポソーム中に取り込まれ得る化合物の量を増加させることができる。PEGは、約500ないし約10,000ダルトンの範囲で大きさを変化させることができる。適切なPEG化リン脂質は、5,000ダルトンのPEGを含むジパルミトイルPEである。
【0057】
リポソームは、更に適切な溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、有機溶媒又は無機溶媒であってよい。適切な溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メチルピロリドン、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本発明の組成物を有する(即ち、少なくとも1つのメチオニン化合物を有する)リポソームは、例えば、米国特許第4,241,046号、同4,394,448号、同4,529,561号、同4,755,388号、同4,828,837号、同4,925,661号、同4,954,345号、同4,957,735号、同5,043,164号、同5,064,655号、同5,077,211号及び同5,264,618号に詳述されているような、薬物送達のためのリポソームを調製する任意で公知の方法により調製することができ、これらの文献の開示は、その全体を参照することにより本明細書中に組み入れられる。1つの態様では、例えば、リポソームは、水溶液中での脂質の超音波処理、溶媒注入、脂質の水和、逆蒸発(reverse evaporation)、又は凍結と解凍の繰返しによる凍結乾燥により調製できる。好ましい態様では、リポソームは超音波処理により形成させる。リポソームは、タマネギのように多くの層を有する多層、又は単層であってよい。リポソームは大きくても小さくてもよい。高剪断の超音波処理を継続すると、より小さい単層のリポソームが形成する傾向がある。好ましい態様では、少なくとも大多数のリポソームは小さな単層リポソームである。典型的な態様では、リポソームの少なくとも90%は、小さな単層リポソームである。小さな単層リポソームは、リポソームの懸濁液の濾過及び/又は小さな孔から該懸濁液を機械的に押し出すことにより濃縮してもよく、それにより最終製剤中のリポソームの大多数が小さくそして単層になる。
【0059】
当業者であれば明らかであろうが、リポソームの形成を支配する全てのパラメータは変化し得る。これらのパラメータとしては、温度、pH、メチオニン化合物の濃度、脂質の濃度及び組成、多価陽イオンの濃度、混合速度、溶媒の存在及び濃度が挙げられるが、これらに限定されない。
(b) マイクロエマルション送達系
【0060】
別の態様において、本発明の組成物は、毛包又は皮膚細胞にマイクロエマルションとして送達させてもよい。マイクロエマルションは、一般に水溶液、界面活性剤、及び「オイル」を含む透明で、熱力学的に安定な溶液である。この場合の「オイル」は、超臨界流体相である。本発明での使用に適切なオイルは、気体のように固体を通して拡散し、液体のように材料を溶解する特有の性能をもつ超臨界流体である。界面活性剤は、油−水の界面に存在する。本明細書中で記載されるか、又は当該分野で公知のものを含むマイクロエマルション製剤中での使用には、種々の界面活性剤のいずれも適する。本発明での使用に適する水性微小ドメインは、一般に、約5nmないし約100nmの大きさの特徴的な構造を有するであろう。この大きさの凝集体は可視光の散乱が小さいため、上記溶液は光学的に透明である。当業者なら理解するであろうが、マイクロエマルションは、球状、棒状、又はディスク状の凝集体を含む多数の様々な微視的構造を有し得るし、また有するであろう。1つの態様では、該構造はミセルであってもよく、これは通常球状又は円柱状の最も単純な構造のマイクロエマルションである。ミセルは水中の油滴に類似し、逆ミセルは油中の水滴に類似する。代替となる態様では、マイクロエマルションの構造はラメラである。それは、界面活性剤の層で分離された水と油の連続層を含む。マイクロエマルションの「オイル」は、リン脂質を含むのが最も好ましい。リポソームのための上で詳述したいずれのリン脂質も、マイクロエマルションを対象とする態様に適切である。本発明の組成物は、当該分野で一般に公知のいかなる方法でマイクロエマルション中に封入させてもよい。
(c) デンドリマー送達系
【0061】
更に別の態様においては、本発明の組成物は、樹状高分子、即ち、デンドリマー中で送達されてもよい。一般的に言うと、デンドリマーは分岐した樹木状の分子であり、ここで各枝は、一定の長さの先で2つの新たな枝(分子)に分かれる連結された分子鎖である。この枝分かれは、枝(分子)が非常に密に詰まり、キャノピーが球(globe)を形成するまで続く。デンドリマーの特性は、通常その表面にある官能基により決定される。例えばカルボキシル基のような親水性末端基は、通常水溶性のデンドリマーを形成するであろう。あるいは、リン脂質は、皮膚を介した吸収を促進するために、デンドリマーの表面に取り込まれていてもよい。典型的な態様では、デンドリマーは、皮膚又は毛包細胞を介した輸送を助けるために、その表面上に配置されたリン脂質を有するであろう。デンドリマーの態様における使用には、リポソームの態様での使用のために詳述されたいずれのリン脂質も適切である。当該分野で一般に公知のいかなる方法を用いても、デンドリマーを形成し、デンドリマー中に本発明の組成物を封入することができる。例えばデンドリマーは、反応工程の繰返しにより製造することができ、ここでは各繰返し工程を追加することにより、高次のデンドリマーが得られる。その結果、デンドリマーは、殆ど均一な大きさと形状を有する規則的で高次に分岐した3次元構造となる。更に、デンドリマーの最終的な大きさは、通常合成過程で使用する繰返し工程の数により制御される。本発明での使用には、種々の大きさのデンドリマーが適する。通常、デンドリマーの大きさは、約1nmないし約100nmの範囲となり得る。
IV. 併用療法
【0062】
本発明のメチオニン化合物は、当該分野で公知の種々の他の活性薬剤と組み合せて、脱毛症、皮膚、又は脆い爪の治療を効果的とし、発毛を促進することができることも推定される。例えば、本発明の組成物と共に製剤すると、追加薬剤は相乗的に作用し、脱毛症、皮膚、又は脆い爪の治療を増強することができる。種々の適切な追加薬剤を以下に詳述する。
【0063】
本発明の1つの態様は、メチオニン化合物と組合せて抗酸化剤を使用することを包含する。代替法の1つにおいては、抗酸化剤は、抗酸化剤能のある1種又は2種以上のビタミンであるか、又は抗酸化剤能のあるビタミンと、栄養所要量を満たすよう対象に投与されるいくつかの他のビタミンの1つとの組合せである。この態様の代替法の1つにおいては、ビタミンは、ビタミンEとして一般に知られるトコフェロールである。トコフェラールの適切な形態としては、α−、β−、γ−又はδ−トコフェロール、及びそのエステル、特にビタミンE(酢酸トコフェロール)、コハク酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェリル又はコハク酸トコフェリルポリ(オキシエチレン)(tocopherylpoly(oxyethylene)−succinate)が挙げられる。別の適切なトコフェラールは、米国特許第6,346,544号に詳述されたデスメチルトコフェロールであり、この米国特許は、その全体を参照することにより本明細書中に組み入れられる。この態様の別の代替法では、前記ビタミンは、ビタミンCとして一般に知られるアスコルビン酸である。更に別の代替となる態様では、抗酸化剤は、ビタミンAに由来するようなカロチノイドである。前記組成物には、多くの様々なカロチノイドが使用できる。一例として、カロチノイドはβカロチンであってもよい。更なる例として、カロチノイドはリコピンであってもよい。本発明での使用に適する他のビタミンとしては、ニコチン酸エステル、ニコチン酸ベンジル、及びニコチン酸メチル又はニコチン酸ヘキシルなどのニコチン酸C1−C6アルキル;特にニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、及びニコチン酸メチル又はニコチン酸ヘキシルなどのニコチン酸C1−C6アルキルを含むニコチン酸エステル;2,4−ジアミノ−6−ピペリジノピリミジン3−オキシド、B1(チアミン)、B2(リボフラビン)、B3(ナイアシン)、B5(パントテナート)、B7(ビオチン、ビタミンH)、B9(葉酸)、B10、B12、ビタミンK(メナジオン)、ピリミジンNオキシド、PABA(p−アミノ酪酸)、コリン、及びイノシトールなどのイミジン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
更なる代替法においては、メチオニン化合物は、脱毛症、皮膚、又は脆い爪の治療に有効な1種若しくは2種以上の酵素又は補酵素と組み合わされる。特定の態様では、酵素又は補酵素は、本明細書中で詳述されるか、又は当該分野で公知の1種又は2種以上のビタミンと組合せてもよい。多くの補酵素は前記組成物中で使用することができる。適切な補酵素の一例は、ユビキノンとしても知られる補酵素Qである。代替となる態様では、補酵素は補酵素Qのアナログであってもよい。補酵素Qの適切なアナログはイデベノンである。更なる例としては、補酵素はリポ酸であってもよい。他の適切な酵素又は補酵素としては、スーパーオキシドジスムターゼ(金属結合ペプチド)、コカルボキシラーゼ、補酵素A(パントテナート又はB5としても知られる)、NAD、FAD、NADP、グルタチオン、及びバイオフラボノイドが挙げられる。
【0065】
更なる態様において、前記薬剤は、天然物から単離された抗酸化剤又は薬草(herb)であってもよい。本発明の組成物での使用に適する天然物としては、食料源、又は抗酸化剤能のある食料源から単離された組成物が挙げられる。1つの態様では、天然物は、イチョウの乾燥葉から作られるエキスである。Ginkgold(EGb761)、LL1369、及びChinese Ginkgo extract ZGEなど、イチョウ葉エキスの多くの様々な改良物が市販されている。あるいは、イチョウは、米国特許第6,447,819号に詳述されるような一般に公知の方法で乾燥葉から抽出することができ、この米国特許はその全体を参照することにより本明細書中に組み入れられる。更に別の態様では、天然物は植物から単離したフィトアレキシンである。1つの態様では、フィトアレキシンはレスベラトロル、又はそのアイソフォーム若しくは誘導体である。ユーカリ、エゾマツ、及びユリなど多くの植物、並びに桑及びピーナッツなど他の食品にも存在するが、レスベラトロルが最も豊富に含まれる天然源は、赤ワインの製造に使用されるヴィティス・ヴィニヘラ(vitis vinifera)、ラプラスカ(labrusca)、及びマスカットブドウである。他の適切な薬草としては、ゴツコーラ(gotu kola)、ムイラプアマ(muira puma)、セイヨウカボチャ(cucurbita maxima)(カボチャの種)、ソー・パルメット(saw palmetto)、ラディックス ウルティカエ(radix urticae)(スティンギング・ネトルルート(stinging nettle root))、エレウテロ(eleuthero)及びウワウルシ(Uva−Ursi)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
更なる態様において、メチオニン化合物は、アミノ酸、アミノ酸アナログ又はアミノ酸誘導体と共に投与してもよい。本発明のアミノ酸としては、天然のα-アミノ酸(以下の列挙において、アミノ酸の一文字記号を括弧内に示す):アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リジン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、スレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)及びバリン(V)(これらに限定されない)を含む、アミノ基を有する任意のカルボン酸が挙げられる。他の天然アミノ酸としては、ヒドロキシプロリン及びγ−カルボキシグルタミン酸が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい態様では、該アミノ酸は、アミノ基(即ち、プロリン中に存在するような、第二級アミン(−NH−)ではなく−NH2基)を有する天然のα−アミノ酸である。1つの態様では、前記アミノ酸は、メチオニン、リジン、アルギニン、システイン、タウリン、チロシンから選択される。代表的な態様では、前記アミノ酸は、システイン、システイン誘導体又はシステインアナログである。本発明のキラルなアミノ酸は具体的に示されていないが、本発明は、天然のL型並びにD型の両方を包含する。
【0067】
更なる態様において、メチオニン化合物は、脱毛症の治療に有用なことが知られる1種又は2種以上の市販の局所用薬物と組み合わされる。1つの態様では、該局所用薬物はミノキシジル(即ち、以前はUpJohn Company、そして最近はa Pfizer Coにより、商標名Rogaine(登録商標)で販売)である。代替となる態様では、該局所用薬物はフィナステリド(即ち、Merck and Companyにより、商標名Propecia(登録商標)で販売)である。更なる態様では、該局所用薬物は、リバイボゲン(revivogen)、アボダート(avodart)、フルーリディル(fluridil)、プロスカー(proscar)、レチンA(retin A)、及びファビオ101(fabio 101)からなる群から選択される。
【0068】
本発明の更なる態様は、メチオニン化合物を、脱毛症、皮膚、又は脆い爪の治療に有効な1種又は2種以上の金属イオンと組み合わせることを包含する。本態様の1つの代替法においては、該金属イオンは亜鉛である。本態様の更なる代替法では、該金属イオンはセレンである。本態様の更に別の代替法では、前記金属イオンは銅である。本態様の更なる代替法では、前記金属イオンはマグネシウムである。更なる代替となる態様では、前記金属イオンはカルシウムである。別の態様では、前記金属イオンは、金属イオンの錯体を形成してもよい。本態様の1つの代替法では、該錯体は白金系錯体である。本態様の更なる代替法では、該錯体はペプチド−銅錯体である。
【0069】
脱毛症、皮膚、又は脆い爪の治療に有効であることが知られている種々の他の薬剤を、メチオニン化合物と組合せてもよい。例えば、活性薬剤は、抗菌剤(例えば、マクロライド、ピラノシド及びテトラサイクリン、並びにエリスロマイシン)、寄生虫駆除剤(例えば、メトロニダゾール、クロタミトン又はピレスロイド)、抗真菌剤(例えば、エコナゾール、ケトコナゾール若しくはミコナゾール又はそれらの塩などのイミダゾール類に属する化合物、アンホテリシンBなどのポリエン化合物、テルビナフィンのようなアリルアミン系化合物、あるいはオクトピロックス)、抗ウイルス剤(例えば、アシクロビル)、抗炎症剤(例えば、ヒドロコルチゾン、吉草酸ベタメタゾン若しくはプロピオン酸クロベタゾール、又は非ステロイド性抗炎症剤、例えばイブプロフェン及びその塩、ジクロフェナク及びその塩、アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン又はグリチルレチン酸)、抗そう痒剤(例えば、テナルジン、トリメプラジン又はシプロヘプタジン)、麻酔剤(例えば、塩酸リドカイン及びその誘導体)、角質溶解剤(例えば、α−及びβ−ヒドロキシカルボン酸又はβ−ケトカルボン酸、それらの塩、アミド又はエステル、及びより具体的には、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、クエン酸、及び一般的なフルーツ酸、並びに5−(n−オクタノイル)サリチル酸などのヒドロキシ酸)、遊離基除去剤(例えば、スーパーオキシドジスムターゼ又はジメチルスルホキシド)、抗脂漏剤(例えば、プロゲステロン)、フケ防止剤(例えば、オクトピロックス又は亜鉛ピリチオン)、抗にきび剤(例えば、レチノイン酸又は過酸化ベンゾイル)、皮膚色素沈着及び/又は増殖及び/又は分化を調節する薬剤、ブラジキニン拮抗剤、ラミン、ポリソルベート80、ジメチルグリシン(DMG)、メチルスルホニルメタン(MSM)、抗酸化剤(例えば、BHT)、血管拡張性物質、キレート剤(例えば、EDTA)、バッファー(例えば、リン酸及びトリス(ヒドロキシアミノメタン))、カルシウム拮抗薬(例えば、シンナリジン及びジルチアゼム)、ホルモン(例えば、エストリオール若しくはそのアナログ、又はサイロキシン及びその塩)、ステロイド性抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド)、抗アンドロゲン剤(例えば、オキセンドロン、スピロノラクトン又はジエチルスチルベストロール)、及び5−α−還元酵素拮抗剤から選択できる。
<定義>
【0070】
本明細書で使用する「脱毛症」という用語は、その消失理由に係らず、哺乳類の毛髪、羊毛、又は羽毛の消失に関する。
【0071】
「毛髪」、「ファー(fur)」、及び毛(coat)という用語は、本明細書中で同義的に使用される。
【0072】
「脆い爪」という用語は、本明細書において最も広い意味で使用され、長い爪の発育不能、又は乾燥し、弱く、裂けやすく、若しくは壊れやすいような爪の特徴を指す。脆い爪に見されるより客観的で臨床的な特徴は、爪甲層状分裂(横方向の分裂)、爪甲縦裂(縦方向の分裂)、及び爪板表面のざらざら感の消失(degranulation)である。乾癬、扁平苔癬及び円形脱毛症のような特定の皮膚疾患においても、脆い爪が見られる場合がある。
【0073】
本明細書中で使用する「薬剤的に許容可能な塩」という用語は、アルカリ金属塩を形成し、遊離酸又は遊離塩基の付加塩を形成するのに通常使用される塩である。該塩の性質は、薬剤的に許容可能である限り変化してもよい。本発明の方法で使用する化合物の薬剤的に許容可能な適切な酸付加塩は、無機酸又は有機酸から調製できる。上記無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸及びリン酸である。適切な有機酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、アルアリファチック(araliphatic)、複素環、カルボン酸及びスルホン酸系の有機酸から選択でき、有機酸の例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、4−ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモン酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルゲン酸、ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、ガラクタル酸及びガラクツロン酸である。本発明の方法で使用する化合物の薬剤的に許容可能な適切な塩基付加塩としては、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛から製造される金属塩、又はN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン−(N−メチルグルカミン)及びプロカインから製造される有機塩が挙げられる。これらの塩は全て、例えば、適当な酸又は塩基を本明細書中で説明されるメチオニン化合物のいずれかと反応させることにより、対応する化合物から従来の方法により調製できる。
【0074】
「皮膚状態」は本明細書において最も広い意味で使用され、本発明の組成物のいずれかが治療に有効な種々の皮膚疾患、障害、不快感、又は異常のいずれをも包含する。これらの状態としては、例えば、細菌性、真菌性又はウイスル性感染、太陽光若しくは他の環境的要因、遺伝性素因、又は未知の原因による要因から生じる皮膚の何らかの変容状態(例えば皮疹、疱疹、そう痒、変色)が挙げられる。皮膚障害の例としては、種々の形態のにきび、皮膚炎、湿疹、粃糠疹、及び乾癬並びにクーペロース(couperose)、魚鱗癬(極端に乾燥した皮膚)、酒さ、日光性角化症、日焼け、及び黄色板症が挙げられる。
【0075】
本明細書中で使用する「対象」は、当該分野で一般に公知の任意の方法により、脱毛症、脆い爪又は皮膚状態を有すると診断された哺乳類のような、治療を必要とする哺乳類を意味する。典型的な態様においては、該対象は、脱毛症、皮膚、又は脆い爪の治療を必要とするヒトである。別の典型的な態様では、前記対象は、脱毛症、皮膚状態又は脆い爪と診断された。更に、前記対象は、発毛の増強又は促進が望まれる哺乳類であってもよい。哺乳類の限定されない例としては、ヒト、霊長類、ヤギ、ヒツジ、ブタ、雌ウシ、イヌ科(例えば、イヌ、キツネ、コヨーテ、及びオオカミ)、げっ歯類(例えば、ミンク、チンチラ、ウサギ、アライグマ、及びビーバー)、及びウマ科(例えば、ウマ、シマウマ、ロバ、及びラバ)が挙げられる。
【0076】
上記の化合物、生成物及び方法には、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更をなし得るが、上述した説明及び以下に挙げる実施例に含まれる全ての内容は、例示として解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈すべきでないことが意図される。
<実施例>
【0077】
以下の実施例で本発明を説明する。特に、実施例1では、脱毛症のマウスモデルにおいて、発毛を促進する組成物の使用を試験する方法を実証する。実施例2では、イヌの毛(coat)の発育を促進又は増強する組成物を試験する方法を実証する。
実施例1. SKH−1無毛マウスの発毛を刺激するリポソーム組成物の局所適用
【0078】
性質不明/血統不明の無毛系マウスであるSKH−1マウスは、様々な種類の皮膚研究において日常的に使用されている。そのため、これらのマウスは、発毛の刺激を試験できる優れた系を提供する。従って、メチオニンのヒドロキシアナログの金属キレートを含む本発明のリポソーム組成物については、発毛刺激による脱毛症の治療性能をSKH−1マウスで試験することができる。
【0079】
<マウス> 年齢、大きさ、及び性別を一致させた5週令のSKH−1無毛マウス(Charles River、ボストン、マサチューセッツ州)の2グループを本研究に使用した。試験グループの各マウスは、約20〜30μlのリポソーム組成物を、背中中央部の3x3cmの所定領域に、プラスチック製スパチュラで7日間局所的に毎日投与して処置してもよい。コントロールグループは、賦形剤のみで治療できる。
【0080】
<マウスの毛髪特性の測定> 1週間後マウスを屠殺し、背部の全層皮膚サンプルを採取した。サンプルはホルマリン中に固定し、パラフィンに包理し、そして縦方向に切片化した。真皮及び表皮の厚さを測定し、突き出た毛髪の数を数えることができるように、組織切片(ヘマトキシリンエオジン染色した)上に表皮の2mm区域の外枠を無作為に線引きしてもよい。発毛長評価のために、マウスを屠殺前に撮影し、断面が見える10本の毛髪を無作為に測定した。
【0081】
<マウスの表皮増殖の評価> 表皮増殖は、新たに合成したDNAへの、3H−チミジンの取込みと5−ブロモ−2'−デオキシウリジン(BrdU;Roche Molecular Biochemicals、マンハイム、ドイツ)の取込みを測定することにより評価できる。屠殺24時間前に、各マウスの腹腔内に3H−チミジンを注射し、また屠殺3時間前に、各動物に更に3H−チミジンをBrdUと共に注射してもよい。DNAへの3H−チミジンの取込みは、β−カウンターを用いて評価でき、DNA含量として補正できる。上述した皮膚サンプルは、BrdU(Isseroff et al.,1989,Br J Dermatol 120:503−510)で染色できる。BrdUのデータは、表皮1ミリメートル当たりの染色された細胞核の数、又はBrdUにポジティブに染色している毛包のパーセンテージとして報告され得る。
【0082】
<統計分析> データの統計分析は、Student’s t testにより実施でき、また、データは±標準誤差(SEM)で示すことができる。
実施例2. イヌの被毛を改善するための組成物の経口摂取
【0083】
本研究の目的は、イヌの食餌にキレート化有機又は無機鉱物を補充した場合の、免疫パラメータ、及び種々の血統をもつイヌの被毛中の鉱物含量に対する効果を評価することである。従って、成体のイヌの体液性免疫、被毛中のZn沈着及び微量鉱物のうちのセレン濃度に対する効果に関し、微量の有機鉱物混合物(メチオニンヒドロキシアナログ混合物として、Zn、Mn、Se、及びCuを含む)を補充した食餌を、微量の無機鉱物(同濃度で添加された)を補充した食餌と比較することができる。
【0084】
<食餌> 添加する微量鉱物の形態の点でのみ異なる2つの別々の食餌を製造することができる。Zn、Cu、及びMnの濃度は、市販の食餌中で通常使用される濃度と同様である。「コントロール用」食餌A−食餌B中にメチオニンのヒドロキシアナログ(HMTBA)を含有させて提供される濃度に相当するメチオニン濃度まで、微量の無機鉱物とDL−Metを補充。「実験用」食餌B−微量の有機鉱物であるZn、Mn、Se及びHMTBA−Cuを、食餌Aと同濃度で補充。他の鉱物は無機形態で添加した。
【0085】
基本的な食餌は、以下の配合を有し得る(表1)。
【表2】

【0086】
2種類の鉱物予備混合物を製造することができる:a)100%微量無機鉱物+DL−Met:とb)有機Zn、Mn、Se、及びHMTBA−Cu、残りは無機物として添加される微量鉱物である。単一バッチの飼料を調製して、分割してもよく(AとB)、前記予備混合物が添加され混合される。試験開始前には、食餌を分析して、Zn、Cu及びMnの栄養濃度とHMTBAの存在を確認してもよい。
【0087】
<動物及び実験計画> 年齢2ないし4の、種々の血統をもつ20匹のイヌ(ドイツシェパード、マリノアシェパード、ラブラドール、又はロットワイラー)を2つのグループに分け、年齢、性別、及び大きさを一致させた。これらのイヌは、ブラジル、リオ・グランデ・ド・スル州(RS)、ポルトアレグレ(Porto Alegre)にある州警察特殊作戦隊(the Special Operations Unit of the State Police Department)に属する。各々のイヌには、その体重に応じて1日1回食事を与えてもよく、また逃亡囚人の追跡又は警察の手入れ時の使用又は麻薬探知のような激しい身体活動に服従させてもよい。
【0088】
実験は、7日間の予備実験期間と30日間の実験期間に分けてもよい。7日間の予備実験期間の間には、新たな食餌に適応させるために、20匹全てのイヌに食餌Aを与えてもよい。30日間の実験期間の間には、10匹のイヌに食餌Aを与え、10匹のイヌに食餌Bを与えてもよい。性能パラメータ(飼料摂取、体重増加、身体状態、被毛、便の硬さ)及びワクチンによる免疫応答(ワクチンの力価)が評価できる。
【0089】
<体液性免疫> 実験期間の10日目に、イヌには免疫原(ヒツジ赤血球)を皮下注射できる。ワクチン投与後0ないし10日目に、抗凝固剤を使用しないで、5mlの静脈血サンプルをバイアルに採取してもよい。サンプルは遠心分離してもよく、免疫源に対する抗体を数えるために血清を分離してもよい。
【0090】
<毛髪の定性分析> 予備実験期間を開始する前と、実験期間の0日目、10日目、及び30日目に再度、被毛を分析してもよい。二重盲検法を使用して、以下に述べるパラメータのスコアを決定することができる。そのスコアは、皮膚と毛髪の両方にアクセス(access)する。スコアの段階は、0から3の範囲にわたり、即ち、0=得点無し、1=低得点、2=平均点、3=高得点である。以下のパラメータで評価してもよい:以下の部位(顔、鼻、腹側部、腋窩、体幹側部(lateral trunk)、前肢、後肢、背下部、臀部、及び尾部)におけるそう痒、脱毛症、紅斑、膿疱、丘疹、油毛、痂皮及び落屑、脱毛、光沢、及び肌目(texture)。
【0091】
<毛髪の定量分析> 毛髪中のZn、Cu及びMn濃度を評価するため、実験期間の0日目と30日目に、毛髪サンプルを胸部から採取してもよい。この操作のために、予備実験期間の1日目に、毛髪のある5cmx5cmの部分を切り取ることができる。実験期間の1日目に、この部位に発育した毛髪を再度除去してもよく、毛髪サンプルは、Zn試験のために凍結されるであろう。同じ手順を30日目に繰り返してもよい。
【0092】
<血清ミネラル> 血清ミネラル、特にZnを試験するために、実験期間の0日目と30日目に、抗凝固剤を用いて血液サンプルを採取してもよい。このサンプルは、更なる試験のために凍結させてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の発毛を促進する方法であって、前記対象にメチオニンのヒドロキシアナログを投与することを含む方法。
【請求項2】
前記メチオニンのヒドロキシアナログが、式(IV)の化合物である請求項1記載の方法。
【化1】

[式中
*は不斉炭素であり;
13は、メチル又はエチルであり;及び
14及びR15は、独立して酸素又は水素である]
【請求項3】
前記メチオニンのヒドロキシアナログが、2−ヒドロキシ−4(メチルチオ)ブタン酸である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記メチオニンのヒドロキシアナログが、式(IV)の化合物を金属イオンと共に含む薬剤的に許容可能な金属塩である請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記メチオニンのヒドロキシアナログが、式(IV)の化合物を金属イオンと共に含む金属キレートである請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記金属イオンが、亜鉛イオン、銅イオン、マンガンイオン、鉄イオン、クロムイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、銀イオン、セレンイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンからなる群から選択される請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記メチオニンのヒドロキシアナログが、2−ヒドロキシ−4(メチルチオ)ブタン酸である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記メチオニンのヒドロキシアナログが、経口、注射、及び局所からなる群から選択される経路により対象に投与するよう製剤された組成物である請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、約0.005重量%ないし約20重量%の前記メチオニンのヒドロキシアナログを含む請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、ビタミン、アミノ酸、補酵素、抗酸化剤、ミノキシジル、フィナステリド、ペプチド金属錯体、浸透促進剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、噴霧剤、溶媒、保湿剤、増粘剤、及び散剤からなる群から選択される少なくとも1種の追加の薬剤を更に含む請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、2−ヒドロキシ−4(メチルチオ)ブタン酸、2−ヒドロキシ−4(メチルチオ)ブタン酸のエステル、2−ヒドロキシ−4(メチルチオ)ブタン酸の金属キレート、2−ヒドロキシ−4(メチルチオ)ブタン酸の薬剤的に許容可能な金属塩からなる群から選択される少なくとも2種のメチオニンのヒドロキシアナログ含む請求項8記載の方法。
【請求項12】
金属キレート又は金属塩が、亜鉛イオン、銅イオン、マンガンイオン、鉄イオン、クロムイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、銀イオン及びカルシウムイオンからなる群から選択される金属イオンを含む請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記対象が、アンドロゲン性脱毛症、円形脱毛症、及び続発性脱毛症からなる群から選択される脱毛症を有するヒトである請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、ヒト類、霊長類、ヤギ類、ヒツジ類、ブタ類、雌ウシ類、イヌ類、げっ歯類、及びウマ類からなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項15】
メチオニンのヒドロキシアナログを含む体系的な液体送達系。
【請求項16】
前記体系的な液体送達系が、リポソーム、マイクロエマルション、及びデンドリマーからなる群から選択される請求項15記載の体系的な液体送達系。
【請求項17】
前記体系的な液体送達系が、リン脂質二重層膜を含む請求項15記載の体系的な液体送達系。
【請求項18】
前記体系的な液体送達系が、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、及びホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種のリン脂質から構成される二重層膜を有するリポソームである請求項15記載の体系的な液体送達系。
【請求項19】
前記メチオニンのヒドロキシアナログが、式(IV)の化合物である請求項15記載の体系的な液体送達系。
【化2】

[式中
*は不斉炭素であり;
13は、メチル又はエチルであり;及び
14及びR15は、独立して酸素又は水素である]
【請求項20】
前記メチオニンのヒドロキシアナログが、式(IV)の化合物を金属イオンと共に含む薬剤的に許容可能な金属塩である請求項19記載の体系的な液体送達系。
【請求項21】
前記メチオニンのヒドロキシアナログが、式(IV)の化合物を金属イオンと共に含む金属キレートである請求項19記載の体系的な液体送達系。
【請求項22】
前記金属イオンが、亜鉛イオン、銅イオン、マンガンイオン、鉄イオン、クロムイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、銀イオン、セレンイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンからなる群から選択される請求項21記載の体系的な液体送達系。
【請求項23】
前記メチオニンのヒドロキシアナログが、2−ヒドロキシ−4(メチルチオ)ブタン酸である請求項22記載の体系的な液体送達系。
【請求項24】
前記系が、約0.005重量%ないし約20重量%の前記メチオニンのヒドロキシアナログを含む請求項15記載の体系的な液体送達系。
【請求項25】
前記系が、2−ヒドロキシ−4(メチルチオ)ブタン酸、2−ヒドロキシ−4(メチルチオ)ブタン酸のエステル、2−ヒドロキシ−4(メチルチオ)ブタン酸の金属キレート、及び2−ヒドロキシ−4(メチルチオ)ブタン酸の薬剤的に許容可能な金属塩からなる群から選択される少なくとも2種のメチオニンのヒドロキシアナログを含む請求項15記載の体系的な液体送達系。
【請求項26】
メチオニンのヒドロキシアナログを対象の毛包又は皮膚細胞に選択的に送達する方法であって、メチオニンのヒドロキシアナログを含む体系的な液体送達系を有する組成物を対象の皮膚に局所的に適用することを含み、前記体系的な液体送達系が、メチオニンのヒドロキシアナログを対象の皮膚内に配された毛包又は皮膚細胞に選択的に送達することが可能な方法。
【請求項27】
前記組成物が、ビタミン、アミノ酸、補酵素、抗酸化剤、ミノキシジル、フィナステリド、ペプチド金属錯体、浸透促進剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、噴霧剤、溶媒、保湿剤、増粘剤、及び散剤からなる群から選択される少なくとも1種の追加の薬剤を更に含む請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が、2−ヒドロキシ−4(メチルチオ)ブタン酸、2−ヒドロキシ−4(メチルチオ)ブタン酸のエステル、2−ヒドロキシ−4(メチルチオ)ブタン酸の金属キレート、2−ヒドロキシ−4(メチルチオ)ブタン酸の薬剤的に許容可能な金属塩からなる群から選択される少なくとも2種のメチオニンのヒドロキシアナログを含む請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記対象が脱毛症を有するヒトである、請求項26記載の方法。

【公表番号】特表2009−531461(P2009−531461A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503236(P2009−503236)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/065336
【国際公開番号】WO2007/112433
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(508069936)ノバス インターナショナル インク (2)
【Fターム(参考)】