説明

発汗量測定方法と発汗量測定パッチ

【課題】簡単で手軽に全身の発汗量を正確に測定することができる発汗量測定方法と発汗量測定パッチを提供する。
【解決手段】透明フィルムの片面に粘着剤11が設けられた第一フィルム12と、第一フィルム12の粘着剤11と反対側である表面に印刷され一方向に長い透明な表示部14を明けて形成された不透明な非表示部16を備える。表示部14の長手方向に沿って設けられた目盛り18と、第一フィルム12の裏面に表示部14に対向して取付けられた一方向に長い汗吸着材20と、汗吸着材20に設けられ水分により発色する発色剤22と、第一フィルム12の裏面に汗吸着材20と発色剤12を覆って取付けられ、汗吸着材20とは反対側の面に粘着剤25が設けられた第二フィルム24を備える。第二フィルム24の汗吸着材20の長手方向の一方の端部に対向して、第二フィルム24が切り抜かれて汗吸着材20が露出した開口部26を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、身体からの発汗量を測定する発汗量測定方法と発汗量測定パッチに関する。
【背景技術】
【0002】
気温が高いときや運動したときには大量の発汗が伴うが、発汗による体液の損失は体温調節反応や循環調節系など生体への負担度を大きくし、運動能力の低下だけでなく、体温が上昇して熱中症発生の誘引となる。熱中症を予防するためは、飲水量の目安として発汗量を知ることが健康管理に必要である。そこで、発汗量を把握するため、身体に取付けて発汗量を測定する装置が考えられている。例えば、特許文献1に開示されている発汗記録装置は、透水性合成紙を主体とする基体、汗を通さない柔軟な第1プラスチックシートと第2プラスチックシート、薄いメッシュ状シート、および柔軟な測定記録回路により柔軟に構成されている。基体にはマイクロコンピュータと、発汗量検出センサ、ナトリウムイオンセンサ、カリウムイオンセンサ等が設けられ、各センサは常に生体に密着され、各センサの検出値をマイクロコンピュータが記憶し、後でその汗のデータを読み取って利用することができるものである。
【0003】
また、特許文献2に開示されている光学発汗計は、身体に密着させるプローブが設けられ、プローブには発汗を吸収するサブシートと、発光素子と、受光素子が設けられている。使用方法は、皮膚から蒸散する多量な発汗水分をサブシートに吸着させ、サブシートに水分子吸収波長の光を発光素子から照射し、反射光を受光素子により電気信号に変換して皮膚から蒸散する発汗量を測定するものである。
【0004】
また、汗の成分を測定する方法として、特許文献3に開示されている被検物質の測定方法が提案されている。この被検物質の測定方法は、皮膚表面の汗を採集する成分採集部を有し、その成分採集部に皮膚表面から採集した成分を付着させた吸収パッチと分析用発色剤を接触させて被検物質と反応させて発色させ、比色分析により被検物質を測定するものである。
【特許文献1】特開平9−51877号公報
【特許文献2】特開2006−296816号公報
【特許文献3】特開2007−127422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、特許文献2開示されたものは、装置が複雑で高価であり、手軽に使用することができないものである。また、特許文献3に開示された方法は、構造が簡単で手軽に使用することができるが、汗の成分を測定するものであり、熱中症対策等で全身の発汗量を測定することができるものではなかった。
【0006】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単で手軽に全身の発汗量を正確に測定することができる発汗量測定方法と発汗量測定パッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、皮膚の一部からの発汗量を、汗に溶解して発色する発色剤を備えた汗吸着材により検知し、この汗吸着材の発色を指標として全身からの発汗総量を算出する発汗量測定方法である。前記指標は、水溶性の発色剤が設けられた汗吸着材に汗が浸透して前記発色剤が溶解した発色である。
【0008】
また本発明は、皮膚に貼付する粘着剤を備えたフィルムと、前記フィルムに積層され皮膚から分泌される汗を吸着する汗吸着材と、前記汗吸着材に設けられ汗に溶解して発色する水溶性の発色剤を備え、前記皮膚から分泌される汗により前記汗吸着材の発色剤の発色の広がる面積を基準として発汗量を測定する発汗量測定パッチである。
【0009】
またこの発明は、透明フィルムの片面に粘着やその他の接着手段による接着部が設けられた第一フィルムと、前記フィルムの前記接着部と反対側である表面に印刷され一方向に長い透明な表示部を明けて形成された不透明な非表示部と、前記表示部の長手方向に沿って設けられた目盛りと、前記第一フィルムの裏面に前記表示部に対向して取付けられた一方向に長い汗吸着材と、前記汗吸着材に設けられ水分により発色する発色剤と、前記第一フィルムの裏面に前記汗吸着材と前記発色剤を覆って取付けられ前記汗吸着材とは反対側の面に粘着剤が設けられた第二フィルムと、前記第二フィルムの前記汗吸着材の長手方向の一方の端部に対向して前記第二フィルムが切り抜かれて前記汗吸着材が露出した開口部が設けられている発汗量測定パッチである。
【0010】
またこの発明は、透明フィルムの片面に粘着剤が取り付けられた第一フィルムと、前記第一フィルムの前記粘着剤と反対側である表面に印刷され一方向に等間隔に並ぶ複数の透明な表示部を明けて形成された不透明な非表示部と、前記第一フィルムの裏面に前記表示部に対向して取付けられた一方向に長い一枚の汗吸着材と、前記汗吸着材に設けられ水分により発色する発色剤と、前記第一フィルムの裏面に前記汗吸着材と前記発色剤を覆って取付けられ前記汗吸着材と前記発色剤と反対側の面に粘着剤が設けられた第二フィルムと、前記第二フィルムの前記汗吸着材の長手方向の一方の端部に対向して前記第二フィルムが切り抜かれて前記汗吸着材が露出する開口部が設けられている発汗量測定パッチである。
【0011】
前記発色剤は水溶性染料であり、前記汗吸着材にインクジェットプリンタ等により印刷または塗布されて付着しているものである。または、前記発色剤は、着色層の地色上に、この色相と異なる透光性層を設け、汗の浸透によって光の透過性が増して地色を視認可能としたものである。さらに、前記発色剤は、汗によって変色するpH指示薬であり、前記汗吸着材にこのpH指示薬を塗布または含浸させたもの、またはさらに乾燥させたものでも良い。
【0012】
その他、前記発色剤は塩化コバルトであり、前記汗吸収剤は塩化コバルト含浸ろ紙でも良い。さらに、前記発色剤は、水溶性発色剤と化学的発色剤の両方を設けたものでも良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発汗量測定方法と発汗量測定パッチは、簡単で手軽に全身の発汗量を正確に測定することができるものである。さらに、この発汗量測定パッチは、軽量で薄形なので運動や作業をしながら発汗量を測定することができ、水分補給や休憩の目安とし、熱中症対策をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。この実施形態の発汗量測定方法は、後述する発汗量測定パッチ10を身体の一部、好ましくは前腕や上腕の内側に貼り、発汗量を測定するもので、図1、図2はこの実施形態の発汗量測定パッチ10を示す。発汗量測定パッチ10は、透明フィルムの片面に接着部を形成する粘着剤11が塗布された第一フィルム12が設けられ、その素材は柔軟性を有し透明な合成樹脂で作られている。例えば、ポリエステル等のポリオレフィン等が使用される。第一フィルム12は、例えば一方向に長い長円形に切断され、長手方向の両端部12b,12cは半円形状に設けられている。
【0015】
第一フィルム12の表面12aには、所定の印刷が施されている。この印刷により、第一フィルム12の長手方向に対して平行な中心線に沿う長細い矩形の表示部14が無色透明に設けられている。表示部14の長手方向の一方の端部14aは、第一フィルム12の長手方向中心よりも一方の端部12bにやや近い位置にあり、表示部14の他方の端部14bは、第一フィルム12の端部12c近傍に達して設けられている。表示部14の周囲には、不透明な非表示部16が印刷により形成されている。非表示部16には、表示部14の長手方向に平行な一方の側縁部に沿って、所定間隔に目盛り18が設けられている。ここでは目盛り18は、表示部14の端部14aが「0」であり、端部14bに向かって等間隔に「25」「50」「75」「100」と設けられている。非表示部16の、表示部14を挟んで目盛り18と反対側には、部位発汗量の単位が印刷されている。これは、後述する裏面側の開口部26に対向する皮膚面積あたりの発汗量を示す単位である。目盛り18の途中に「水分補給」などの文字が設けられてもよい。
【0016】
第一フィルム12の裏面12dには、表示部14に対向して表示部14よりも面積の大きい汗吸着材20が設けられている。汗吸着材20は、吸湿性が高く汗を吸収し浸透し易い繊維質の材料で作られ、例えばろ紙、親水性の不織布等である。汗吸着材20の、外側の面には、発色剤22がバインダ等を介して均一に取り付けられている。
【0017】
ここで、発色剤22は、食用色素、酸性染料、塩基性染料、直接染料、酸性媒染染料、反応染料から選ばれる少なくとも一種類であることが好ましい。例えば市販の青色1号、青色4号、青色404号、黄色4号、赤色102号等である。酸性染料は、例えばカヤノールレッドNBR、ブリリアントスカーレット
3B、アシッドファストオレンジ SG、アマランス、アシッドローダミン B、エオシン G、アシッドミリングレッド RS、アリザリンダイレクトブルー AGG、インジゴカルミンブルー G、アシッドミリングシアニン 5Rが挙げられる。塩基性染料は、例えばカチオンレッド 6B、カチオンピンク FG、クリスタルバイオレット、メチレンブルー Bが挙げられる。直接染料は、例えばカヤノールライトレッドF5B、ダイレクトファストスカーレット 4BS、べンゾパープリン 4B、ダイレクトファストオレンジS、ダイレクトロージュリンレッド B、クロランチファストレッド 6BLL、シリアスレッド 4B、シリアススプラレッドバイオレット RL、シリアススプラバイオレット
BL、ダイレクトスカイブルー 5Bが挙げられる。酸性媒染染料は、例えばクロムオレンジ A、クロムオレンジ GR、クロムレッド B、クロムブリリアントレッド
B、クロムブリリアントバイオレット R、クロムブラウン PGが挙げられる。反応染料は、例えばリアクトンレッド
2B−F、プロシオンルビン BS、シバクロンバイオレット F2R−A、プロシオンブリリアントブルー RSが挙げられる。水溶性染料は単独または複数がインキに配合される。
【0018】
バインダは、例えば水溶性の微粉末であるデキストリン等が使用され、例えばデキストリンに発色剤22を混合して汗吸着材20に塗布されている。発色剤22は、汗に溶解して発色するものであり、不可逆的な色変化である。
【0019】
第一フィルム12の裏面12dには、汗吸着材20を覆って第二フィルム24が設けられている。第二フィルム24は、透明フィルムの片面に粘着剤25が塗布され、粘着剤25が第一フィルム12と反対側となるように重ねられ、第一フィルム12の粘着剤11により取り付けられている。第二フィルム24には、表示部14の端部14aに対向して、第二フィルム24が切り抜かれた開口部26が設けられている。開口部26内側には、汗吸着材20が露出している。第二フィルム24の粘着剤25は、皮膚に確実に貼付される材料で設けられ、発汗しても容易に剥がれないものである。
【0020】
発汗量測定パッチ10は、第一フィルム12と同形状またはそれよりも大きな剥離シート28に貼り付けられている。発汗量測定パッチ10の粘着剤25の粘着力で剥離可能に取付けられている。一枚の大きな剥離シート28に、同形の発汗量測定パッチ10が複数個貼り付けられてもよい。剥離シート28が貼り付けられた発汗量測定パッチ10は、樹脂フィルム等の袋に包装され、密封されている。
【0021】
次に、この実施形態の発汗量測定パッチ10の使用方法について説明する。まず、発汗量測定パッチ10から剥離シート28を剥がし、粘着剤25を露出させる。そして、被験者の身体の測定部位に発汗量測定パッチ10を貼り付ける。測定部位は、例えば前腕の内側が好ましい。この部位の発汗量は、全身の各部位からの発汗量の平均的な数値を示しており、単位面積あたりの発汗量を調べることによって、全身の発汗量を調べることができる。被験者に発汗量測定パッチ10を貼付し放置しておくと、発汗量測定パッチ10の開口部26に対向する一定面積の皮膚から分泌される汗が、開口部26から侵入して汗吸着材20に吸収される。汗の量に比例して汗吸着材20に浸透し、クロマトグラフの原理で半定量的に広く浸透する。汗吸着材20の発色剤22は、吸収した汗によって溶解し発色する。発色剤22の発色は、表示部14から視認され、表示部14の目盛り18の「0」は開口部26に一番近くで最初に発色する。発汗量が増えて汗吸着材20に吸収される汗の量が増えると、汗吸着材20の長手方向に沿って汗が浸透して拡散し発色がひろがる。発色剤22の発色が表示部14から視認され、発色した端部の目盛り18を読み取り部位発汗量を確認する。
【0022】
この実施形態の発汗量測定パッチ10によれば、被験者の前腕の内側に貼って放置するだけの簡単な操作で、全身の発汗量を半定量的に測定することができる。発汗量測定パッチ10の構造は簡単で安価であり、手軽に使用し、使い捨てとすることができる。発汗量測定パッチ10は、1g程度であり薄形で軽量なため、違和感を感じることがなく、サッカー、野球、バスケットボール、ゴルフ等の各種のスポーツや、建設・土木工事、庭仕事等の日中の屋外作業をしながら発汗量を測定することができる。また、発汗量測定パッチ10の粘着剤25は、汗をかいても剥がれ難い材料で作られているため、サウナやアスレチックジムでの減量チェックとして発汗量を利用することができる。医療面では、脱水症や無汗症の症状を簡易的に確認したり、寝汗の測定など、治療の目安を得ることができる。表示部14には目盛り18が設けられているため、誰にでも簡単に部位発汗量を読み取ることができ、部位発汗量を使って全身発汗量を算出することができる。
【0023】
これにより、発汗量から、身体全体の水分ロス量を知り、熱中症対策として水分の補給や休憩の目安とすることができる。例えば全身発汗量で200〜300gの発汗量毎にスポーツドリンクなどにより水分補給をする目安を得ることができる。熱中症対策であれば、150〜200gの発汗量毎に、失われた水分量を補給することが好ましい。正確に発汗量を測定するには運動前後に衣類を除いて体重を測定し、体重差の値から、摂取した水分量や排出した尿量を調整して算出する手間がかかるが、発汗量測定パッチ10によれば、簡単に測定することができる。発汗量測定パッチ10の発色剤22は不可逆的な色変化であり、発汗量をそのまま記録することができる。
【0024】
身長が低い子供は地面に近いため、体感温度が高く特に注意が必要である。さらに、乳幼児や高齢者は脱水状態になりやすく、身体の水分の維持が困難であり、活動時にはきめ細かな水分補給が必要である。そこで、この発汗量測定パッチを用いることによって、スポーツなどでの発汗量に応じて適宜水分補給することによって、熱中症の予防、運動後の疲労感の低減につながる。なお、例えばバレーボールでは前腕にボールが触れるので、上腕での測定が好ましく、適宜貼付箇所を変更しても良い。
【0025】
また、この実施形態の発汗量測定パッチ10は、目盛り18は上記以外でも良く、図3に示すように「0」から「1000」までを200間隔で設け、単位は全身発汗量(g/60kg)としても良い。全身発汗量は、部位発汗量を換算したものであり、全身の発汗量を1〜2時間の激しいスポーツでは、すぐに測定することができる。身体全体からの発汗量は、最大で700〜900gであり、身体全体でどれだけ汗をかいたかを知ることができる。
【0026】
なお、この実施形態の発汗量測定パッチ10は、表示部14の形状は自由にデザインすることができる。例えば図4に示すものは、第一フィルム12の長手方向に対して平行な中心線上に、円形の表示部30が無色透明で設けられている。表示部30は、同形のものが第一フィルム12の中心線に沿って等間隔に複数個設けられ、ここでは7個が設けられている。表示部30の周囲には、不透明は非表示部16が印刷により形成されている。第一フィルム12の裏面12dには、7個の表示部30に対向して一方向に長い一枚の汗吸着材20が設けられ、さらに汗吸着材20を覆って第二フィルム24が設けられている。第二フィルム24には、第一フィルム12の端部12bに一番近い表示部30に対向する部分に、第二フィルム24が切り抜かれた開口部26が設けられている。この発汗量測定パッチ10によっても、簡単で手軽に発汗量を測定することができる。表示部30が同形の円形で独立して設けられているため、発色剤22の発色が視認しやすくなっている。なお、表示部30の形状は、円形以外に四角形や何かのマークでもよく、何個設けられても良く、周囲に目盛りや文字が印刷されていてもよい。
【0027】
また、この発明の発色剤は、上記以外に水性インキ等の水溶性染料でも良く、この場合、インクジェットプリンタ等で、汗吸着材であるろ紙等の台紙に印刷すれば良く、製造が容易である。
【0028】
さらに、発色剤は汗を吸着して視認可能に発色するものであれば良く、自身が変化せずに光の透光性や屈折率を変化させて視認可能とするものでも良い。例えば、表示部の発色剤は、着色層の地色の上に、この色相と異なる高屈折率着色層を設け、汗の浸透によって光の透過性が増して地色が観察できるようにした発汗量測定パッチでも良い。表示部には赤色や青色などの鮮やかな地色の上にホワイトカーボンなどの白色の顔料を含む層を設けることによって、汗の浸透で白色が赤色や青色などの鮮やかな地色に変色するものである。
【0029】
また、微量の発汗量の測定に適する発汗量測定パッチ用の発色剤としては以下のものが好ましい。例えば、汗によって変色するpH指示薬を含浸した汗吸収材でも良い。pH指示薬としてはメチルレッド、ブロモチモールブルーチモルブルーなどが好ましい。汗の浸透によって酸性色から中性色に変化する。その他、発色剤が塩化コバルトであり、汗吸収材が塩化コバルト含浸ろ紙でも良い。この場合、蒸発する汗も正確に検知し表示することができる。
【0030】
これらの構造による発汗量測定パッチは、微量の汗に反応し、変色する速度が速いので、10mg/cm以下の微量の発汗量の測定に適する。
【0031】
その他、水溶性発色剤と化学的発色剤の両方を設けた発汗量測定パッチでも良い。塩化コバルト等の化学的発色剤は微量の汗に反応するので、少量の発汗量には好ましいが、多量の発汗には適さない。一方、水溶性発色剤は多量の発汗に適しているが 10mg/cm以下の微量の発汗量には発色が遅い傾向がある。このため両方の発色剤を組み合わせることによって微量から多量の汗の測定に適した発汗量測定パッチが得られる。
【0032】
この場合、第二フィルムに複数の開口部と汗吸着材を独立に取り付け、各汗吸着材の汗吸着量を異なるものにしても良く、汗吸着材に設けられた発色剤を上述のように異なる種類、または異なる量にしても良い。これにより、汗の量の多い少ないにかかわらず発汗量を測定することが出来、高感度で且つ大量の発汗にも対応することが出来る。
【0033】
なお、この発明の発汗量測定パッチは、透明フィルムで作られた絆創膏形のほかに、腕時計形やリストバンド形にしても良く、腕時計形やリストバンド形にすることにより激しい動きでも剥がれ難く、確実に取付けられる。発色剤は、汗吸着材に面一に設けられたもの以外に、開口部に対向する部分のみに設けて汗の吸着量が増えるに従い汗吸着材を拡散してゆく様子を表示部から見て測定しても良い。さらに、発汗量測定パッチは、上記構造に限定されるものではなく、透明フィルムに汗吸着材を重ねた状態で裏面に粘着剤が均一に取付けられたものでもよい。
【0034】
また、発色剤は、汗吸着材の第一フィルム側の面に設けられても良い。この場合、表示部から汗吸着剤の色が見えないように、吸水性があり無色で不透明の薄いカバーを設けると良い。
【0035】
また、汗吸い取り用の開口部の面積と汗吸着材の汗吸収容量の組み合わせによって発汗量測定パッチの感度を種々調整することができる。すなわち汗吸い取り用の開口部を、例えば10mm×10mm、汗吸着材の汗吸収容量を100mg以下とすることによって、時間あたりの発汗量が0〜10mg/cmの少量の発汗量を測定することができる発汗量測定パッチが得られる。また、汗吸い取り用の開口部を8mm×6mm、汗吸着材の汗吸収容量を500mgとすることによって時間あたりの発汗量が 10〜150mg/cmの多量の発汗量を測定することができる発汗量測定パッチが得られる。
【実施例1】
【0036】
この発明の発汗量測定パッチにより部位発汗量を測定し、発汗計(積算計)による発汗量との比較を行った。被験者は女性(28歳、身長164cm、体重48kg)であり、被験者の上腕に発汗量測定パッチを貼付し、約30分間経過後、発汗量測定パッチの目盛りは20mg/cmを示した。同時に測定した発汗計(積算計)では18.5mg/cmであり、発汗量測定パッチは発汗計と近い値を示した。
【実施例2】
【0037】
この発明の発汗量測定パッチにより発汗量を測定し、体重の変化から算出した全身発汗量との比較を行った。被験者は男性(32歳、身長176cm、体重71kg)であり、被験者の前腕内側に貼付し、外気温30℃の路上で約30分間ランニングをした。この間の発汗量測定パッチで示した発汗量は、体重71kgに換算して200目盛を示した。一方、この間の体重減少は260gであった。
【実施例3】
【0038】
身体の一部の部位発汗量から、全身の全身発汗量を正確に計算することは、皮膚の表面性、体重、その他の因子によりばらつきがあり、正確に計算することは困難である。そこで、より正確な発汗量の測定のために、発汗試験パッチを貼付した部位の部位発汗量と、全身の全身発汗量の関係を調べた。
【0039】
まず、係数k=B/Aを求める。ここでAは、発汗量測定パッチの全身発汗量の目盛りであり、Bは、体重減少量(g)である。ここで、Bの測定方法について説明する。まず衣服を着けない状態で体重を測定した後、発汗量測定パッチを身体の一部、例えば上腕の内側に貼り、一定時間スポーツなどを行った後、再び衣服を着けない状態で体重を測定する。その結果、スポーツを行う前の体重が65.55kg、行った後の体重が65.10kg、発汗量測定パッチで示した全身発汗量は400を示した。これにより、
k=(65550−65100)/400=1.125
となる。
【0040】
この計算されたkを用いることにより発汗量測定パッチの貼付のみで全身発汗量を測定することができる。例えば、発汗量測定パッチの目盛りが350の場合、全身の発汗量は以下の通りである。
発汗量=350×1.125=394
よって、全身の発汗量は、補正した結果394gとなる。なお、補正しない場合は350gと判断する。
【実施例4】
【0041】
発汗量測定パッチを男性(34歳、体重63.0Kg、身長180cm)の前腕内側に貼付して発汗量を測定し、体重の変化から算出した全身発汗量との比較を行った。測定は、外気温31℃の路上を自転車で30分間走行して行った。この間の前腕内側の発汗量は、発汗量測定パッチで示した発汗量が、前腕内側の単位面積あたりの発汗量(積算量)で39.7±2.6mg/cmであり、全身発汗量は340目盛を示した。一方、この間の体重減少量は350gであった。
従って、係数kは以下の通りとなる。
k=350/340=1.029
【実施例5】
【0042】
発汗量測定パッチにより発汗量を測定し、体重の変化から算出した全身発汗量との比較を行った。被験者は男性(54歳、身長165cm、体重66kg)であり、被験者の前腕内側に貼付し、外気温30〜34℃で約4時間、ゴルフを行った。その間、清涼飲料水500gを摂取した。発汗量測定パッチで示した発汗量は体重66kgに換算して530を示した。一方、この間の体重減少は、飲料水の重さを補正し550gであり、発汗量測定パッチは体重減少から算出した発汗量に近い値を示すことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の一実施形態の発汗量測定パッチの正面図である。
【図2】図1のA−A線横断面図である。
【図3】この実施形態の発汗量測定パッチの変形例を示す正面図である。
【図4】この実施形態の発汗量測定パッチの変形例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0044】
10 発汗量測定パッチ
11 粘着剤
12 第一フィルム
14 表示部
16 非表示部
18 目盛り
20 汗吸着材
22 発色剤
24 第二フィルム
25 粘着剤
26 開口部
28 剥離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の一部からの発汗量を、汗に溶解して発色する発色剤を備えた汗吸着材により検知し、この汗吸着材の発色を指標として全身からの発汗総量を算出することを特徴とする発汗量測定方法。
【請求項2】
前記指標は、水溶性の発色剤が設けられた汗吸着材に汗が浸透して、前記発色剤が溶解した発色であることを特徴とする請求項1記載の発汗量測定方法。
【請求項3】
皮膚に貼付する粘着剤を備えたフィルムと、前記フィルムに積層され皮膚から分泌される汗を吸着する汗吸着材と、前記汗吸着材に設けられ汗に溶解して発色する水溶性の発色剤を備え、皮膚から分泌される前記汗により前記汗吸着材の発色剤の発色の広がる面積を基準として発汗量を測定することを特徴とする発汗量測定パッチ。
【請求項4】
透明フィルムの片面に接着部が設けられた第一フィルムと、前記フィルムの前記接着部と反対側である表面に印刷され一方向に長い透明な表示部を明けて形成された不透明な非表示部と、前記表示部の長手方向に沿って設けられた目盛りと、前記第一フィルムの裏面に前記表示部に対向して取付けられた一方向に長い汗吸着材と、前記汗吸着材に設けられ水分により発色する発色剤と、前記第一フィルムの裏面に前記汗吸着材と前記発色剤を覆って取付けられ前記汗吸着材とは反対側の面に粘着剤が設けられた第二フィルムと、前記第二フィルムの前記汗吸着材の長手方向の一方の端部に対向して前記第二フィルムが切り抜かれて前記汗吸着材が露出した開口部が設けられていることを特徴とする発汗量測定パッチ。
【請求項5】
透明フィルムの片面に粘着剤が取り付けられた第一フィルムと、前記第一フィルムの前記粘着剤と反対側である表面に印刷され一方向に等間隔に並ぶ複数の透明な表示部を明けて形成された不透明な非表示部と、前記第一フィルムの裏面に前記表示部に対向して取付けられた一方向に長い一枚の汗吸着材と、前記汗吸着材に設けられ水分により発色する発色剤と、前記第一フィルムの裏面に前記汗吸着材と前記発色剤を覆って取付けられ前記汗吸着材と前記発色剤と反対側の面に粘着剤が設けられた第二フィルムと、前記第二フィルムの前記汗吸着材の長手方向の一方の端部に対向して前記第二フィルムが切り抜かれて前記汗吸着材が露出する開口部が設けられていることを特徴とする発汗量測定パッチ。
【請求項6】
前記発色剤は水溶性染料であり、前記汗吸着材に印刷または塗布されて付着していることを特徴とする請求項4又は5記載の発汗量測定パッチ。
【請求項7】
前記発色剤は、着色層の地色上に、この色相と異なる透光性層を設け、汗の浸透によって光の透過性が増して地色を視認可能としたことを特徴とする請求項4又は5記載の発汗量測定パッチ。
【請求項8】
前記発色剤は、汗によって変色するpH指示薬であることを特徴とする請求項4又は5記載の発汗量測定パッチ。
【請求項9】
前記発色剤は塩化コバルトであり、前記汗吸収材は塩化コバルト含浸ろ紙であることを特徴とする請求項4又は5記載の発汗量測定パッチ。
【請求項10】
前記発色剤は、水溶性発色剤と化学的発色剤の両方を設けたものであることを特徴とする請求項4又は5記載の発汗量測定パッチ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−46196(P2010−46196A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211677(P2008−211677)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(397043190)ライフケア技研株式会社 (11)
【Fターム(参考)】