説明

発泡ゴム、並びにそれを具えたタイヤ及び靴

【課題】従来と全く異質な作用効果を有し、氷雪路面上でのグリップ性に優れ、滑り難く、特にタイヤのトレッドや靴の靴底に好適な発泡ゴムを提供する。
【解決手段】独立気泡2を含み、該独立気泡2が表面層3で囲まれている発泡ゴム1において、前記独立気泡を囲む表面層3が親水性を有することを特徴とする発泡ゴム1である。前記独立気泡を囲む表面層3は極性基を有することが好ましく、該極性基は、水素結合能を有することが好ましく、また、該極性基としては、イオン性官能基が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ゴム、並びに該発泡ゴムを具えたタイヤ及び靴に関し、特に氷雪路面上でのグリップ性に優れ、滑り難い発泡ゴムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の路面上に加え、氷上や雪上でも走行するために使用されるスタッドレスタイヤの氷上性能を向上させるために、これまで、種々のスタッドレスタイヤ用のトレッドゴムが開発されてきた。例えば、トレッドゴムとして発泡ゴムを用い、該発泡ゴム中の気泡がポリエチレン皮膜で囲まれているタイヤが知られている。該タイヤにおいては、気泡が効率的な排水を行うためのミクロな排水路として機能すると共に、ポリエチレン皮膜が排水路の形状保持性等を向上させる結果として、タイヤの氷上性能が向上している。しかしながら、該タイヤにおいては、トレッドの水膜除去能は向上するものの、エッヂ効果及びスパイク効果が十分に向上しておらず、氷上性能に改良の余地があった。
【0003】
これに対して、特開2003−201371号公報(特許文献1)には、ゴムマトリックスとモース硬度が2以上の微粒子を含有する微粒子含有有機繊維とかなるゴム組成物が開示されており、該ゴム組成物をトレッドに用いることで、トレッドの水膜除去能を向上させつつ、エッヂ効果及びスパイク効果を向上させられることが開示されている。
【0004】
ここで、タイヤの氷上性能の更なる向上には、微粒子含有有機繊維に含有させる微粒子を増量することが効果的である。しかしながら、微粒子を増量すると、トレッド面の押出肌が悪化したり、加硫後にスピュー詰まり等が発生したり、タイヤの耐摩耗性が悪化するなどの問題がある。
【0005】
この問題に対して、特開2006−274136号公報(特許文献2)には、微粒子を含まない有機繊維と微粒子を含有する有機粒子とを含む発泡ゴム層をトレッドに具えたタイヤが開示されている。そして、該発泡ゴム層においては、微粒子含有有機粒子を使用しつつ有機繊維量を低減することで、押出外観が改良されると共に、加硫後のスピュー詰まり等が防止されており、更に、該発泡ゴム層を具えたタイヤにおいては、トレッド面の押出肌が良好である上、微粒子の脱離による耐摩耗性の低下が抑制される等の効果が奏されることが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−201371号公報
【特許文献2】特開2006−274136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、従来の発泡ゴムをトレッドに具えるタイヤは、トレッドの水膜除去能、エッヂ効果及びスパイク効果を向上させて、氷上性能を向上させるものであり、精力的な研究開発により、一応の成果を上げている。しかしながら、スタッドレスタイヤの氷上性能を抜本的に向上させるには、従来知られている効果のレベルを上げるだけでは限界がある。
【0008】
そこで、本発明は、従来と全く異質な作用効果を有し、氷雪路面上でのグリップ性に優れ、滑り難く、特にタイヤのトレッドや靴の靴底に好適な発泡ゴムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、独立気泡を含み、該独立気泡が表面層で囲まれている発泡ゴムにおいて、吸盤の減圧吸着原理を応用して、独立気泡を囲む表面層に親水性を付与することで、発泡ゴムの平滑面への吸着能が大幅に向上し、該発泡ゴムをタイヤのトレッドに使用することで、タイヤの氷雪路面上でのグリップ性が大幅に向上し、また、該発泡ゴムを靴の靴底に使用することで、靴が氷雪路面上でも滑り難くなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明の発泡ゴムは、独立気泡を含み、該独立気泡が表面層で囲まれており、該独立気泡を囲む表面層が親水性を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の発泡ゴムの好適例においては、前記独立気泡を囲む表面層が極性基を有する。ここで、該極性基は、水素結合能を有することが好ましく、また、該極性基としては、イオン性官能基が好ましい。
【0012】
本発明の発泡ゴムの他の好適例においては、前記独立気泡を囲む表面層がイオン性ポリマーからなる。
【0013】
本発明の発泡ゴムの他の好適例においては、前記表面層を構成する材料の融点が200℃以下である。この場合、発泡ゴム用ゴム組成物の加硫工程で、表面層用材料が独立気泡とゴムマトリックスとの界面に析出して、独立気泡を親水性の表面層で容易に囲むことができる。
【0014】
本発明の発泡ゴムの他の好適例においては、前記表面層の表面エネルギーが30mJ/m2以上である。この場合、独立気泡がポリエチレンで囲まれている発泡ゴムよりも、氷雪路面に対する吸着力を確実に向上させることができる。
【0015】
また、本発明のタイヤは、トレッドゴムとして上記の発泡ゴムを具えることを特徴とし、本発明の靴は、靴底として上記の発泡ゴムを具えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、独立気泡を含み、該独立気泡が表面層で囲まれている発泡ゴムにおいて、独立気泡を囲む表面層に親水性を付与することで、発泡ゴムの平滑面への吸着能を大幅に向上させることができる。また、該発泡ゴムをタイヤのトレッドに使用することで、タイヤの氷雪路面上でのグリップ性を大幅に向上させることができ、該発泡ゴムを靴の靴底に使用することで、靴が氷雪路面上でも大幅に滑り難くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の発泡ゴムの部分断面図である。本発明の発泡ゴム1は、独立気泡2を含み、該独立気泡2が表面層3で囲まれており、該独立気泡を囲む表面層3が親水性を有することを特徴とする。本発明においては、吸盤の理論を応用して、発泡ゴム内に液体を充満させた状態で一部の液体を外部からの入力により外部に排出させ、発泡ゴム内を負圧状態にすることで、発泡ゴムを氷雪路面等の平滑面に吸着させる。
【0018】
物体を平滑面に固定または滑り難くする方法として、吸盤の技術が存在する。該吸盤においては、吸盤内の気圧が外部気圧よりも低くなることで、物体が平滑面に固定される。一般に、閉空間に閉じ込められた気体や液体の体積変化によって、以下の式(I):
dp=−K・(dv/v) ・・・ (I)
に従って、圧力変化が生じる。ここで、dvは体積vに対する微小体積変化を表わし、dpはこの体積変化によって生じる圧力変化を表わし、比例定数Kは体積弾性率を表わす。そして、本発明においては、外圧により微小体積dvの液体を発泡ゴムの外部に排出させることで、発泡ゴムに内部負圧dpを発生させて、発泡ゴムを氷雪路面等の平滑面に吸着させる。
【0019】
上記体積弾性率Kに関して、水(1気圧、20℃)の体積弾性率Kは2.06×109(Pa)であり、空気(1気圧)の体積弾性率Kは1.4×105(Pa)である。従って、水は、空気に比べて15000倍の体積弾性率Kを有し、空気に比べて微小の体積変化で大きな負圧力を生じて、大きな吸盤効果を示す。ここで、吸盤の開口部に発生する吸着力Fは、開口部の面積をSとすると、dp・Sで計算できる。例えば、開口部の面積Sが1cm2で、吸盤の剛性が無限大で、シーリング機能が100%と仮定した場合、体積変化が全体の1%であるとすると、内容物が水の場合は、約200kgfの力で吸着可能となる。一方、内容物が空気の場合は、約13gfと僅かな吸着力しか発生しない。
【0020】
上述のように、開口部の面積Sが1cm2で、吸盤の剛性が無限大で、シーリング機能が100%と仮定した場合、体積変化が全体の1%であるとすると、内容物が水の場合は、約200kgfの力で吸着可能となるが、実際には、物体の剛性は無限大ではないため、微小変形することで実際の体積変化が小さくなり、また、シーリング部からの漏れ等で実際にはかかる大きな吸着力は発生しない。従って、吸着力を向上させるためには、これらの点を改良すべく、以下の三点に留意する必要である。
【0021】
(1)閉空間を形成する壁面は、負圧に耐えられるだけの剛性を有する材質及び構造であることが好ましい。
(2)閉空間を形成するために、平面と物体の壁面間に液体に対するシーリング機能を持たせることが好ましい。
(3)閉空間の大きさが小さい場合、閉空間内に液体を導入するには、閉空間を形成する壁面は、内面の濡れ性が大きいことが好ましい。
【0022】
上記(1)に対して、閉空間を形成する壁面の剛性を保つためには、閉空間内の液体の体積弾性率よりも高い体積弾性率を有する材質で閉空間を形成する壁面を構成することが好ましい。従って、閉空間内の液体が水の場合は、2000MPa以上の体積弾性率Kを有する材料で壁面を構成することが好ましい。また、閉空間内の液体を外部に放出するためには、外力Fによって、体積がdv相当分は変形する必要があるので、物体を断面積Sのシリンダー構造と仮定した場合、物体の剛性Mは、下記式(II):
F>M・(dv/v)・h ・・・ (II)
で表わされる関係を維持する必要がある。ここで、hは、物体の高さである。また、壁面部が平面と接触している面積S'が全体の構造を支えていると仮定すると、壁面材料のせん断弾性率Gは、使用条件で以下の式(III):
F>G・(dv/v)・S' ・・・ (III)
を満たす必要がある。例えば、外力F=10kgf、S'=1cm2、体積変化=1%とした場合は、せん断弾性率Gが100MPa以下の材料を用いる必要がある。以上の点から、閉空間を形成する壁面を構成する材料としては、充填剤を配合したゴム組成物が好適である。但し、1%の体積変化で、1cm2当り200kgfの力が発生することから、壁面はこの力に耐えられるだけの剛性が必要となる。このためには、1000MPa以上のせん断弾性率Gを有する材料で壁面の内面を構成することが好ましい。
【0023】
また、上記(2)に対して、平面との密着性を達成するためには、使用環境条件において、柔らかい材料を使用する必要がある。更に、横方向に物体が滑らないようにするためには、高い摩擦係数μを有する材料を使用することが好ましい。ここで、横方向で発生し得る摩擦力は、下記式(IV):
F=μ・dp・S ・・・ (IV)
で計算できる。最も滑り易い平面として水膜の存在する氷の表面では、ゴムでも摩擦係数μは0.01になってしまうが、体積変化1%で約200kgfの吸着力を発生させられれば、1cm2当り約2kgfの力を発生させることが可能となる。従って、シーリング部には、使用条件下でゴム状態にある材料を使用することが好ましい。なお、使用する材料のせん断弾性率Gは、1〜10MPaの範囲が好ましい。
【0024】
以上の二点から、閉空間を形成する壁面を構成する材料として、加硫ゴムが最適と考えられる。これまで、閉空間を有する加硫ゴム、即ち、独立気泡を含む発泡ゴムとして種々の発泡体が知られているが、従来の発泡ゴムは、独立気泡が疎水性の材料で囲まれているため、独立気泡内面の濡れ性が小さく、上記(3)の点で問題があり、結果として、独立気泡内に水が入り難く、水による負圧が十分に発生しない。この点に関して、本発明者は、以下のように、更に検討を進めた。
【0025】
上記(3)に対して、固体表面が濡れるための条件は、表面エネルギーγと接触角θの関数として、下記式(V):
γs>(γL・cosθ+γSL) ・・・ (V)
で与えられる。式(V)から、γsが大きければ、接触角や液体の種類によらず、濡れ性が良くなることが分かる。表1に、各種ポリマー材料のγsを示す。
【0026】
【表1】

【0027】
従来の発泡ゴムをトレッドに具えたスタッドレスタイヤは、独立気泡が加硫ゴムで囲まれていたり、或いは、独立気泡がポリエチレン層で囲まれており、γsが大きくないため、濡れ性が悪く、結果として、独立気泡内に水が入り難かった。この場合、独立気泡内に占める水の割合が低下し、空気の割合が上昇するため、押圧により排出される流体の体積弾性率が低い上、押圧により排出される水の量も少なかった。この点を改善すべく、本発明者は、独立気泡を含み、該独立気泡が表面層で囲まれている発泡ゴムにおいて、該独立気泡を囲む表面層に親水性を持たせることを想到した。
【0028】
上述の吸盤の理論に基づくと、独立気泡を含んだ発泡ゴムを、路面に押し当てた際の発泡ゴムの吸着力は、以下の式(VI):
吸着力∝F(体積弾性率、水の排出量) ・・・ (VI)
で表わされる。そして、本発明に従って、独立気泡を親水性の表面層で囲むことで、独立気泡内に水が入り込み易くなり、押圧により排出される流体の体積弾性率が向上すると共に、予め水が独立気泡内に入り込んでいるため、水の排出量も大きくなる。そして、これらの効果により、氷雪路面等の平滑面に対する発泡ゴムの吸着力が大幅に向上する。
【0029】
なお、発泡ゴムに負圧を発生させるためには、外圧により発泡ゴム内から微小体積の液体を外部に排出する機能が必要となるが、この点に対しては、力積の原理に基づき、一定のエネルギーを短時間で与え、大きな力を瞬間的に発生させることで、発泡ゴム内の液体を外部に排出することが可能となる。例えば、タイヤのトレッドに適用する場合には、路面にトレッド表面が接触する踏み込み部で発生する急激な圧力上昇を利用して、濡れた平滑面での吸着効果が得られる。
【0030】
独立気泡2を囲む表面層3に親水性を持たせるには、独立気泡を囲む表面層3が極性基を有することが好ましく、該極性基は、親水性の観点から、水素結合能を有することが好ましい。ここで、該極性基としては、水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等のイオン性官能基の他、エステル基、スルフォン基、アミド基等が挙げられる。これらの中でも、イオン性官能基が好ましい。
【0031】
また、上記独立気泡2を囲む表面層3は、高い親水性を有する点で、イオン性ポリマーからなることが好ましい。ここで、イオン性ポリマーとしては、エチレン-メタアクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタアクリル酸共重合体、スルホン化ポリスチレン、ポリビニルピリジウム塩、ポリビニルトリメチルアンモニウム塩、ポリビニルベンジルホスホニウム塩、ポリウレタンアイオノマー等が挙げられる。
【0032】
また、独立気泡がポリエチレン皮膜で囲まれた発泡ゴムよりも高い吸着力を発現させる観点から、上記表面層3の表面エネルギーは、30mJ/m2以上であることが好ましい。
【0033】
本発明の発泡ゴムは、例えば、ゴム成分に、イオン性ポリマー等の親水性化合物、発泡剤等を配合し、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによってゴム組成物を調製し、該ゴム組成物を所望の形状に成形加工した後、加硫することで作製することができる。なお、ゴム組成物の加硫工程において、発泡剤により加硫ゴム中に独立気泡が形成されて、発泡ゴムとなる。ここで、親水性化合物は、親水性であるため、ゴムとの相溶性が低く、ゴムマトリックス側から加硫中に生成する独立気泡側へ移動して、表面に析出し、独立気泡を囲むこととなる。従って、独立気泡2を囲む表面層3を形成する材料(親水性化合物)の融点は、加硫中に溶融・分散するために、200℃以下であることが好ましく、190℃以下であることが更に好ましく、180℃以下であることが特に好ましい。なお、分散が悪いと、ゴム組成物中に補強されていない異物として残ることになるため、破壊核となり、破壊強力が低下する。
【0034】
上記親水性化合物としては、上記イオン性ポリマーの他に、ポリオキシエチレン等が挙げられる。なお、該親水性化合物のせん断弾性率Gは、ゴムマトリクスのせん断弾性率Gよりも大きいことが好ましく、この場合、独立気泡の体積弾性率Kが増大し、吸着力が大きくなる。
【0035】
上記発泡ゴム用ゴム組成物に用いるゴム成分としては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)等が挙げられる。これらゴム成分は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
上記発泡ゴム用ゴム組成物に用いる発泡剤としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、p,p'-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、p,p'-オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。これら発泡剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。また、該発泡剤には、発泡助剤として尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛や亜鉛華等を併用することが好ましい。
【0037】
なお、本発明の発泡ゴムに用いるゴム組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、カーボンブラックやシリカ等の充填剤、シランカップリング剤、軟化剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸等の通常ゴム業界で用いられ各種配合剤を適宜配合することができる。
【0038】
本発明のタイヤは、トレッドゴムとして上述した発泡ゴムを具えることを特徴とする。本発明のタイヤは、減圧吸盤吸着理論に基づく発泡ゴムをトレッド部に具えるため、氷雪路面等の滑り易い路面上においても優れたグリップ性能を発揮し、スタッドレスタイヤとして好適に使用できる。本発明のタイヤは、例えば、発泡ゴム用の未加硫ゴム組成物をトレッドゴムとして用いて生タイヤを作製した後、該生タイヤを加硫することで製造できる。
【0039】
また、本発明の靴は、靴底として上述した発泡ゴムを具えることを特徴とする。本発明の靴は、減圧吸盤吸着理論に基づく発泡ゴムを靴底に具えるため、氷雪路面等の滑り易い路面上においても滑り難く、安全な歩行を可能とする。本発明の靴は、例えば、上述した発泡体からなる所望の形状の靴底を作製し、該靴底を別途作製した靴の靴底以外の部分に貼付することで製造できる。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
上述の理論を実証するために、表2に示すポリマーを用い、モデル試験片を以下の手順で作製した。なお、本試験では、シーリング部は外側を囲うゴム片にその機能を持たせた。
【0042】
1.表面に突起を有する金属モールドを作製した。なお、突起の高さは、100μmとした。
2.金属モールドの上に表2に示したポリマーの薄膜を溶媒キャスティング法により形成した。
3.金属モールド上に、未加硫ゴム組成物を配置し、145℃で、33分間加硫を行った。
4.金属モールド表面の突起パターンが転写された加硫ゴムの表面をミクロトームでスライスした。なお、凹部の深さは、30μmとした。
【0043】
次に、上記モデル試験片を、水膜の存在する平滑面(0℃付近の氷表面)に一定荷重Fで押し付け、約0.1秒後に引き剥がし力をロードセルによって計測し、吸着力とした。結果は、ポリエチレンの吸着力を100として、指数表示した。
【0044】
【表2】

【0045】
表2から明らかなように、表面エネルギーγsの大きなポリマー、即ち、親水性のポリマーを使用することで、吸着力が大きくなることが確認できた。
【0046】
次に、表3及び表4に示す配合処方のゴム組成物を調製し、該ゴム組成物をトレッドゴムとして用いた、サイズ195/60R15のスタッドレスタイヤを試作した。また、該タイヤに対して、氷上制動試験を行い、ブレーキ停止距離を測定し、比較例5のタイヤの停止距離の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、停止距離が短く、氷上性能に優れることを示す。また、トレッドゴムの破壊強力をJIS K6251に従って測定し、比較例4を100として指数表示した。指数値が大きい程、破壊強力が高く、良好であることを示す。結果を表3及び表4に示す。また、使用したポリマーの表面エネルギー及び融点を表5に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
*1 宇部興産社製, UBEPOL 150L
*2 旭カーボン社製, N134, N2SA=142m2/g
*3 日本シリカ社製, Nipsil AQ
*4 デグッサ社製, Si69
*5 N-イソプロピル-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン
*6 ジベンゾチアジルジスルフィド
*7 N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド
*8 ジニトロソペンタメチレンテトラミン
*9 三井デュポンクロロケミカル社製
*10 旭化成社製
*11 JSR社製
*12 旭化成社製
*13 旭化成社製
*14 住友化学社製
*15 出光石油化学社製
*16 旭化成社製
*17 住友化学社製
*18 三井化学社製
*19 日産化学社製
*20 三井化学社製
【0050】
【表5】

【0051】
表3及び表4から、トレッドに用いる発泡ゴム用のゴム組成物にリニアポリエチレンよりも表面エネルギーγsが大きい材料を配合することで、タイヤの氷上性能が向上することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の発泡ゴムの部分断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 発泡ゴム
2 独立気泡
3 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立気泡を含み、該独立気泡が表面層で囲まれている発泡ゴムにおいて、
前記独立気泡を囲む表面層が親水性を有することを特徴とする発泡ゴム。
【請求項2】
前記独立気泡を囲む表面層が極性基を有することを特徴とする請求項1に記載の発泡ゴム。
【請求項3】
前記極性基が水素結合能を有することを特徴とする請求項2に記載の発泡ゴム。
【請求項4】
前記極性基がイオン性官能基であることを特徴とする請求項2に記載の発泡ゴム。
【請求項5】
前記独立気泡を囲む表面層がイオン性ポリマーからなることを特徴とする請求項1に記載の発泡ゴム。
【請求項6】
前記表面層を構成する材料の融点が200℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の発泡ゴム。
【請求項7】
前記表面層の表面エネルギーが30mJ/m2以上であることを特徴とする請求項1に記載の発泡ゴム。
【請求項8】
トレッドゴムとして請求項1〜7のいずれかに記載の発泡ゴムを具えるタイヤ。
【請求項9】
靴底として請求項1〜7のいずれかに記載の発泡ゴムを具える靴。

【図1】
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【公開番号】特開2008−260889(P2008−260889A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106134(P2007−106134)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】