説明

発泡ゴムの製造方法

【課題】加硫温度におけるゴム生地中の水分率を一定化させてその変動を無くし、均一な発泡ゴムを得ることができる発泡ゴムの製造方法を提供する。
【解決手段】原料ゴムに発泡剤を添加し、原料ゴムの加硫時にその加硫温度で発泡剤を分解してゴム生地を発泡させる発泡ゴムの製造方法において、原料ゴムを構成するポリマー100重量部に対し、ハイドロタルサイトを3〜9重量部配合添加する。好適例として、ハイドロタルサイトの配合添加量が5〜7重量部である。また、原料ゴムを構成するポリマーがEPDMである。さらに、原料ゴムがポリマーに加えて熱可塑性エラストマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料ゴムに発泡剤を添加し、原料ゴムの加硫時にその加硫温度で発泡剤を分解してゴム生地を発泡させる発泡ゴムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、OA機器における帯電ローラ、転写ローラ、給紙ローラ、搬送ローラ、定着ローラ、加圧ローラなどのOAローラとして、OAローラと、紙、感光ドラム、他のローラなどの被圧着体との密着性を高めるために、ゴムを発泡させたり、あるいは、発泡ゴムと非発泡ゴムとを組み合わせた積層構造にしたりした発泡ゴムローラが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような発泡ゴムで構成されたOAローラにおいて、発泡ゴムの製造方法として、原料ゴムに発泡剤を添加し、原料ゴムの加硫時、添加した発泡剤が加硫温度で分解して窒素ガス等の気体を発生させて、ゴム生地を発泡させる手法が一般的に知られている。
【特許文献1】特開2003−220620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した発泡ゴムにおいて、発泡ゴムを成型するにあたり、発泡セル(泡)の均一性と発泡度が重要なパラメータと成るが、ゴム材料中の水分が発泡剤の分解を阻害させてしまい、不均一な発泡ゴムが出来てしまう問題があった。また、OA機器の種々のローラは、導電性や摩擦係数等の特性が安定的に付与されていなければならず、高精度、精密な特性を得るには、このゴム成型における発泡度の安定化は最も重要な特性のひとつである。
【0005】
本発明の目的は上述した問題点を解消して、加硫温度におけるゴム生地中の水分率を一定化させてその変動を無くし、均一な発泡ゴムを得ることができる発泡ゴムの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発泡ゴムの製造方法は、原料ゴムに発泡剤を添加し、原料ゴムの加硫時にその加硫温度で発泡剤を分解してゴム生地を発泡させる発泡ゴムの製造方法において、原料ゴムを構成するポリマー100重量部に対し、ハイドロタルサイトを3〜9重量部配合添加することを特徴とするものである。
【0007】
なお、本発明の発泡ゴムの製造方法の好適例としては、ハイドロタルサイトの配合添加量が5〜7重量部であること、原料ゴムを構成するポリマーがEPDMであること、原料ゴムがポリマーに加えて熱可塑性エラストマーを含むこと、がある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、原料ゴムを構成するポリマー100重量部に対し、ハイドロタルサイトを3〜9重量部配合添加することによって、ハイドロタルサイトが加硫温度で容易に水に解離する性質を利用し、加硫温度におけるゴム生地中の水分率を一定化させてその変動を無くし、均一な発泡ゴムを得ることができる発泡ゴムの製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まず、本発明の製造方法で得られた発泡ゴムの使用例として、給紙ローラの例を説明する。図1は、本発明の製造方法で得られた発泡ゴムを使用する給紙ローラの一例の構成を示す図である。図1に示す例において、芯体1の外周面に、非発泡層からなる外層2と発泡層からなる内層3との2層からなる環状弾性体が形成されている。
【0010】
上述した給紙ローラにおける内層3を構成する発泡ゴムは、原料ゴムに発泡剤を添加し、原料ゴムの加硫時にその加硫温度で発泡剤を分解してゴム生地を発泡させて製造されるが、本発明の発泡ゴムの製造方法における特徴は、原料ゴムを構成するポリマー100重量部に対し、ハイドロタルサイトを3〜9重量部配合添加する点にある。
【0011】
ここで、ハイドロタルサイトの添加量を3〜9重量部と限定するのは、以下の実施例からもわかるように、ハイドロタルサイトの添加量が3重量部未満であると、発泡が異常な勢いで進み、過発泡となり、例えば図1に示すような2層構造であると、ガスがうまく抜けず、表面の非発泡層からなる外層2を破壊してしまうためである。また、ハイドロタルサイトの添加量が9重量部を超えると、発泡が不充分となり、特に内部の発泡が不足し、所定の発泡ゴムを得られないためである。
【0012】
上述したように、この発泡状態は加硫時のゴム生地の水分量に関係している。すなわち、水分量が少ないと過発泡となり、水分量が多いと発泡不足となる。このゴム生地の水分量のコントロールを、ハイドロタルサイトが加硫温度で容易に水に解離する性質を利用し、原料ゴムに所定量のハイドロタルサイトを添加することにより行っている。
【0013】
本発明のハイドロタルサイトによるゴム生地中の水分量のコントロールは、温度が高い夏場は空気中の水分量が多く、雰囲気中に放置してその後加硫するときのゴム生地中の水分量は下限を下回ることはないため、それほど効果はない。一方、温度が低い冬場は空気中の水分量が少なく、雰囲気中に放置してその後加硫するときのゴム生地中の水分量は下限を下回ることが多く、効果が大きい。そのため、大気の温度に応じて、ハイドロタルサイトの添加量を所定の範囲内で細かく制御することが好ましい。
【0014】
本発明の製造方法の対象となる発泡ゴムの材質としては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレンの他、加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマーに発泡剤を添加したものを使用することができる。
【0015】
加硫ゴムとしては、例えばエチレンプロピレンゴム(EPR),エチレンプロピレンジエン三元共重合体ゴム(EPDM),天然ゴム,イソプレンゴム,スチレンブタジエンゴム,ポリノルボルネンゴム,ブタジエンゴム,ニトリルゴム,クロロプレンゴム,ブチルゴム,ハロゲン化ブチルゴム,アクリルゴム,エチレン−酢酸ビニルゴム(EVA),ウレタンゴム等の一般ゴム、シリコーンゴム,フッ素ゴム,エチレンアクリルゴム,ポリエステルエラストマー,エピクロルヒドリンゴム,多硫化ゴム,ハイパロン(登録商標),塩素化ポリエチレン等の特殊ゴムが挙げられるが、これらの中で、エチレンプロピレンゴム,エチレンプロピレンジエン三元共重合体ゴム,天然ゴム,イソプレンゴム,スチレンブタジエンゴム,ポリノルボルネンゴム,ブタジエンゴム,クロロプレンゴム,ニトリルゴム,ブチルゴム,ハロゲン化ブチルゴム,アクリルゴム,エピクロルヒドリンゴム及び塩素化ポリエチレンゴムが好ましい。これらの加硫ゴムは、単独であるいは二種以上をブレンドして用いることができる。
【0016】
熱可塑性エラストマーとしては、例えばポリオレフィン系,ポリウレタン系,ポリエステル系,ポリアミド系,ポリスチレン系などの中から、任意のものを選択して用いることができるが、中でも結晶構造,凝集構造などの硬質ブロックを形成しやすい部分と、アモルファス構造などの軟質ブロックとを一緒に持ち合わせているものが特に好ましく、具体的には、下記(1)〜(3)が挙げられる。
【0017】
(1)ポリブタジエンとブタジエン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体を水添して得られる結晶性ポリエチレンとエチレン/ブチレン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体。
(2)ポリブタジエンとポリスチレンとのブロック共重合体、あるいは、ポリブタジエン又はエチレン−ブタジエンランダム共重合体とポリスチレンとのブロック共重合体を水添して得られる、例えば、結晶性ポリエチレンとポリスチレンとのジブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンのトリブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンのトリブロック共重合体など、中でも、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体又はスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体。
(3)エチレン/ブチレン共重合体の片末端又は両末端に結晶性ポリエチレンが連結したブロック共重合体。
【0018】
これらの中で、特に(2)に挙げられた、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つからなるブロック共重合体を水添して得られる水添ブロック共重合体であって、その数平均分子量が150000〜400000であるものが好ましい。これらの熱可塑性エラストマーは、単独であるいは二種以上をブレンドして用いることができる。
【0019】
発泡剤としては、例えば、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH),ベンゼンスルホニルヒドラジド,トルエンスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド、アゾジカルボンアミド(ADCA),アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン,N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物などの有機発泡剤;重炭酸ナトリウム,重炭酸アンモニウム等の無機発泡剤が挙げられる。これらの中でもOBSH,ADCAあるいはこれらを併用した発泡剤が好ましい。発泡剤の添加量は、ゴム100重量部に対して1〜10重量部が好ましく、3〜8重量部が特に好ましい。発泡剤は、その粒子径を可及的小さくすることが、発泡セルを小さくするために好ましい。発泡剤の粒子径は10μm以下が好ましく、5μm以下が特に好ましい。
【0020】
本発明によれば、原料ゴムを構成するポリマー100重量部に対し、ハイドロタルサイトを3〜9重量部配合添加することによって、ハイドロタルサイトが加硫温度で容易に水に解離する性質を利用し、加硫温度におけるゴム生地中の水分率を一定化させてその変動を無くしている。具体的には、例えばゴム生地中の水分量が少なくなったときに、水分量を増加させて、加硫温度におけるゴム生地中の水分率を一定化させてその変動を無くしている。これにより、加硫速度を変化させずに発泡速度を遅延させることができ、過剰な発泡圧に依るセルの荒れ(不均一)を防止させて、微細の発泡セルを得ることが出来る。その結果、均一な発泡ゴムを得ることができる。
【実施例】
【0021】
以下、実際の例について説明する。なお、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
【0022】
<実験例1>
ポリマーとしてのEPDM(JSR製EP33):100重量部、その他、以下の表1に示す配合の原料ゴムに対し、ハイドロタルサイト(協和化学製:DHT−4A)を以下の表1に示すように3〜9重量部添加した実施例1〜5のゴム生地と、ハイドロタルサイトを添加しなかった比較例1〜3およびハイドロタルサイトを10重量部添加した比較例4のゴム生地と、を準備した。準備したゴム生地を、それぞれ、150℃×30分の加硫条件で加硫し、ゴム生地を発泡させて、発泡ゴムを得た。その際、発泡状態を評価した。発泡状態の評価は、発泡レオメータに70%のゴム生地を仕込み、加硫が完結した時点の状態を評価した。結果を以下の表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
表1の結果から、ポリマー100重量部に対してハイドロタルサイト3〜9重量部添加した実施例1〜5は、ハイドロタルサイトを添加しなかった比較例1〜3およびハイドロタルサイトを10重量部添加した比較例4と比べて、発泡状態が良好であることがわかる。また、本発明例の中でも、ハイドロタルサイトを5〜7重量部添加した実施例2〜4は、ハイドロタルサイトの添加量が3重量部の実施例1およびハイドロタルサイトの添加量が9重量部の実施例5と比べて、発泡状態がより良好であることがわかる。
【0025】
<実験例2>
実験例1と同じ組成の原料ゴムに対し、熱可塑性エラストマーSEBS(スチレン・エチレン/ブチレン・スチレン)を以下の表2に示すように15〜30重量部添加し、さらに、ハイドロタルサイトを7重量部添加した実施例11〜14のゴム生地と、熱可塑性エラストマーおよびハイドロタルサイトのいずれも添加しなかった比較例11のゴム生地と、を準備した。準備したゴム生地を、それぞれ、実験例1と同じ条件で加硫、発泡させて発泡ゴムを得るとともに、実験例1と同様に発泡状態を評価した。結果を以下の表2に示す。
【0026】
【表2】

【0027】
表2の結果から、ハイドロタルサイトを7重量部添加した実施例11〜14とハイドロタルサイトを添加しなかった比較例11とを比較することで、EPDMに加えて熱可塑性エラストマーを添加した例においても、ハイドロタルサイト添加の効果が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の発泡ゴムの製造方法は、原料ゴムを構成するポリマー100重量部に対し、ハイドロタルサイトを3〜9重量部配合添加することによって、ハイドロタルサイトが加硫温度で容易に水に解離する性質を利用し、加硫温度におけるゴム生地中の水分率を一定化させてその変動を無くし、均一な発泡ゴムを得ることができる発泡ゴムの製造方法を得ることができる。そのため、OA機器における帯電ローラ、転写ローラ、給紙ローラ、搬送ローラ、定着ローラ、加圧ローラなどのOAローラの発泡層として、本発明の製造方法で得られた発泡ゴムを好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の製造方法で得られた発泡ゴムを使用する給紙ローラの一例の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 芯体
2 外層
3 内層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ゴムに発泡剤を添加し、原料ゴムの加硫時にその加硫温度で発泡剤を分解してゴム生地を発泡させる発泡ゴムの製造方法において、原料ゴムを構成するポリマー100重量部に対し、ハイドロタルサイトを3〜9重量部配合添加することを特徴とする発泡ゴムの製造方法。
【請求項2】
ハイドロタルサイトの配合添加量が5〜7重量部であることを特徴とする請求項1に記載の発泡ゴムの製造方法。
【請求項3】
原料ゴムを構成するポリマーがEPDMであることを特徴とする請求項1または2に記載の発泡ゴムの製造方法。
【請求項4】
原料ゴムがポリマーに加えて熱可塑性エラストマーを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡ゴムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−308654(P2007−308654A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141390(P2006−141390)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】