説明

発泡シート及び該発泡シートからなるガラス基板用間紙

【課題】本発明は、電子製品、精密機器、回路基盤、シリコン半導体、ディスプレイ用ガラス基板などの精密電子機器の包装材料として好適なものであって、精密電子機器に異物が移行しても水洗いや、水を含んだ布で拭う等の精密電子機器表面の汚染物質洗浄時に優れた洗浄性能を付与することができる、ポリオレフィン系樹脂積層発泡体を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂発泡シート(a)の少なくとも一方の表面に、ポリエチレングリコール(G1)及び曇点が30℃以上のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤(G2)から選択される1種又は2種以上からなる化合物(G)を塗布してなることを特徴とする発泡シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡シート及び該発泡シートからなるガラス基板用間紙に関し、特にディスプレイ用ガラス基板等の包装用シートや間紙として好適な発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィン系樹脂押出発泡シートは、柔軟性及び緩衝性に富み、被包装物の損傷、傷つきを防止できることから、家電製品、ガラス器具、陶器等の包装材料として広く使用されてきた。更に、近年、薄型テレビの開発、需要拡大に伴い、ポリオレフィン系樹脂押出発泡シートがディスプレイ用ガラス基板の包装材料として使用されるようになったことから、新たな技術課題が創出され、様々な技術改良がなされてきている。
このような発泡シートとしては、例えば、特許文献1、2には発泡シートに帯電防止剤が添加された、ガラス基板用間紙が開示されている。又、特許文献3には発泡シートにポリアルキレンオキサイド及びポリアルキレンオキサイド系界面活性剤から選択される1種以上の添加剤が添加されたポリオレフィン系樹脂押出発泡シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−262409号公報
【特許文献2】特開2008−303298号公報
【特許文献3】特開2009−185210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の各種の画像表示機器用のガラスパネルに用いられるガラス基板は、非常に高いレベルの表面清浄性が要求される。特許文献1、2に開示の帯電防止剤が添加されたガラス基板用間紙は、空気中の塵や埃の付着を抑制してガラス基板表面への耐汚染性が改善されてはいるが、更に改善の余地を残すものであった。
【0005】
このような要求を考慮して、特許文献3では、ポリオレフィン系樹脂押出発泡シートを構成する樹脂にポリアルキレンオキサイド及びポリアルキレンオキサイド系界面活性剤から選択される化合物を樹脂100重量部に対し0.5〜9重量部添加して包装材料に使用すると、被包装物の洗浄性が向上できることが記載されている。しかし、被包装物の洗浄性を向上するためには、前記ポリオレフィン系樹脂押出発泡シート表面に前記化合物がブリードアウトする必要があり、前記化合物を多量に添加しなければならないという問題点があった。
また、特許文献3に記載の前記化合物を含有させた発泡シートでは、製造の際に該化合物が引取りロールや断裁機テーブルに付着、堆積してしまう等の問題点があった。
【0006】
本発明は、前記各種画像表示用機器のディスプレイ等に使用されるガラス基板等の緩衝材として好適な発泡シートを提供することを目的とする。特に、洗浄性改良のための添加剤の使用量を少なくしても、被包装物の洗浄性を向上することができる、発泡シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの表面に特定のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤、及びポリエチレングリコールから選択される化合物を塗布してなる発泡シートが、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の〈1〉〜〈5〉に記載する発明を要旨とする。
〈1〉ポリオレフィン系樹脂発泡シート(a)(以下、発泡シート(a)と記載することがある)の少なくとも一方の表面に、ポリエチレングリコール(G1)及び曇点が30℃以上のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤(G2)から選択される1種又は2種以上からなる化合物(G)を塗布してなることを特徴とする発泡シート(以下、発泡シート(a)に化合物(G)を塗布してなる発泡シートを発泡シート(A)と記載することがある)。
〈2〉前記ポリオレフィン系樹脂発泡シート(a)がポリオレフィン系樹脂発泡層、又はポリオレフィン系樹脂発泡層とポリオレフィン系樹脂非発泡層とからなり、前記化合物(G)が塗布されている層(I)には、該層(I)を構成するポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.5重量部以上の、親水性ポリマーブロックとポリオレフィンブロックとからなるブロック共重合体(H)が添加されていることを特徴とする前記〈1〉に記載の発泡シート(A)。
〈3〉前記化合物(G)の塗布量が0.01〜2.5g/mであることを特徴とする前記〈1〉又は〈2〉に記載の発泡シート(A)。
〈4〉前記ブロック共重合体(H)が、ポリエーテルブロックとポリオレフィンブロックとからなるブロック共重合体であることを特徴とする前記〈2〉又は〈3〉に記載の発泡シート(A)。
〈5〉前記〈1〉〜〈4〉のいずれかに記載の発泡シート(A)からなるガラス基板用間紙。
【発明の効果】
【0009】
(イ)上記〈1〉に記載する発泡シート(A)は、ポリオレフィン系樹脂発泡シート(a)の少なくとも一方の表面に化合物(G)を塗布してなるので、ディスプレイ用ガラス基板などの被包装物の緩衝材、包装材として使用して、該発泡シート(A)から塵、埃、ブリードアウト物質などの異物が被包装物の表面に移行する場合に、該異物と共に、発泡シート(a)の表面に塗布された化合物(G)が被包装物の表面に移行するので、ガラス基板などの被包装物を水で洗浄したり、水を含有するシートで拭くなどの簡易な洗浄によって、該異物を化合物(G)と共に被包装物から容易に除去することができる。
特に、前記発泡シート(a)からナトリウムイオン等の金属イオン、オリゴマー物質等の洗浄が比較的困難な異物が被包装物に移行する場合であっても、簡易な洗浄により、該異物は化合物(G)と共に被包装物から除去することが可能である。また、化合物(G)をポリオレフィン系樹脂発泡シート(a)の少なくとも一方の表面に塗布してなるので、化合物(G)を発泡層内又は非発泡層内に含有するタイプの発泡シートと比較して、化合物(G)の使用量を大幅に削減でき、かつ化合物(G)を添加する際に必要とされる相溶化剤は不要となる。
更に、発泡シート(a)中に、化合物(G)が実質的に添加されていないので、押出発泡の際に化合物(G)が発泡性を阻害することがないため、より優れた機械的強度を有する発泡シート(A)を得ることが可能になる。
(ロ)前記〈2〉に記載する発泡シート(A)において、化合物(G)が塗布された層(I)には、ブロック共重合体(H)が含有されているため、優れた帯電防止性を有し、発泡シート(A)への塵や埃の付着が抑制されるので、被包装物への異物の付着が一層抑制されることから、より洗浄性が向上する。
更に、前記化合物(G)が塗布されている層(I)に、特定量のブロック共重合体(H)が添加されていることにより、層(I)に塗布された化合物(G)とブロック共重合体(H)との親和性が良好となり、優れた洗浄性能を有しつつ、塗布された化合物(G)が層(I)から脱離して被包装物以外に移行することが抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発泡シート(A)は、ポリエチレングリコール(G1)及び曇点が30℃以上のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤(G2)から選択される1種又は2種以上からなる化合物(G)を塗布してなる発泡シートである。
(1)化合物(G)
化合物(G)は、ポリエチレングリコール(G1)及び曇点が30℃以上のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤(G2)から選択される1種又は2種以上からなる。前記化合物(G)は異物と共に、発泡シート(A)から被包装物に移行するので、洗浄により被包装物から異物を除去する際の洗浄性(以下、洗浄性ということがある。)を向上することが可能となる。
(1−1)ポリエチレングリコール(G1)
前記ポリエチレングリコール(G1)は、下式の一般式で現される化合物である。
HOCH(CHCHCHOH
前記ポリエチレングリコール(G1)の数平均分子量は水溶性の観点からは、数平均分子量15000以下であることが好ましく、10000以下であることがより好ましい。
【0011】
(1−2)ポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤(G2)
ポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤(G2)としては、分子内にエーテル結合を有するエーテル型、エーテル結合とエステル結合を有するエステル・エーテル型の非イオン性界面活性剤が挙げられ、主としてエチレンオキシドを付加して得られるためポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤と総称されるものである。具体的には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸物エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどが挙げられ、これらを主成分とするものであれば、混合物であっても良い。また、主成分とは、前記化合物を50質量%以上、好ましくは80質量%以上含有するものをいう。
【0012】
前記ポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤(G2)の曇点は30℃以上である。曇点が低すぎる場合には、親水性が低くなり、洗浄性の向上が期待できない。曇点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上である。さらに、ブロック共重合体(H)との親和性の観点から、曇点は好ましくは85℃以上、さらに好ましくは90℃以上である。
【0013】
曇点は、以下に示す方法により測定することができる。曇点が10℃以上90℃未満の場合には、2.0質量%濃度の測定試料水溶液を調整して測定試料とし、該測定試料を約5mLの試験管に取り、温度計でかき混ぜながら不透明になるまで水浴中で加熱した後、この測定試料をかき混ぜながら徐々に冷却し、測定試料が透明となった温度を曇点として測定することができる。一方、曇点が90℃以上の場合には、2.0質量%濃度の測定試料溶液を毛細管に10mmから15mmの深さに入れて封管し、該毛細管を温度計の感温球の部分に輪ゴムなどで取り付け、グリセリンを入れた試験管に該毛細管を取り付けた温度計を差し入れ、測定試料が不透明になるまで該試験管を加熱した後、該試験管を徐々に冷却して測定試料が透明になる温度を読み取ることにより、曇点を測定することができる。この際、2回の測定値の差が0.5℃以下になるまで繰り返し測定を行う。
【0014】
本発明におけるポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤(G2)の融点は、30℃以上であることが好ましい。上記範囲内であれば、親水性が高いので、洗浄性を向上することができる。
融点の測定方法は、JIS K7121(1987)に記載の「標準状態で調整し、転移温度を測定する場合」を採用し、熱流束示差走査熱量計装置により加熱速度10℃/分で昇温してDSC曲線を描かせた際に、該DSC曲線上の樹脂の融解に伴う吸熱ピークの頂点温度として求められる値である。なお、DSC曲線上に複数の吸熱ピークが存在する場合には、高温側のベースラインを基準に吸熱ピークの頂点高さが最も高い吸熱ピークの頂点を融点とする。測定装置としては、ティー・エイ・インスツルメント社製、型式:DSCQ1000などを使用することができる。
【0015】
前記発泡シート(a)の少なくとも一方の表面に化合物(G)を塗布する方法は、特に限定はなく、化合物(G)を溶媒に溶解した後、例えば、ロールコーター法、ディップコート法、スピンコート法、バーコート法、ダイコート法等により塗布することができる。化合物(G)を溶媒に溶解する際に、具体的には、化合物(G)を水に溶解して、化合物(G)の水溶液として塗布することができる。この際、化合物(G)水溶液と塗布面との濡れ性を調整するために、エタノール等の有機溶媒を水溶液中でそれぞれ70%以下の濃度となるように配合することができる。
化合物(G)の水溶液中の化合物(G)の濃度は、塗布の作業性の観点から、0.5〜20質量%であることが好ましく、0.5〜15質量%であることがより好ましく、1.0〜10質量%であることが更に好ましい。
化合物(G)の濃度が上記範囲内であれば、化合物(G)溶液を塗布した後の溶媒の乾燥が容易となり、溶媒の乾燥に必要なエネルギーを削減することができる。尚、化合物(G)を2種以上併用する場合には、それらの合計量が前記範囲を満たすようにすることが好ましい。
【0016】
前記化合物(G)の水溶液を塗布する方法としては、実用性を考慮すると、ロールコーター法、複数の回転ロールを使用して化合物(G)の水溶液を塗布、乾燥することが望ましい。
その具体例としては、厚み方向(中心線方向)に一定の溝が設けられている第1溝ロールの外周面に存在する溝部分に化合物(G)溶液を注いだ後、外表面が接触していて同じ円周方向に回転している第2ゴムロールへの転写を介して、第2ゴムロールと外周面が接していて第2ゴムロールとは反対の円周方向に回転している第3ゴムロールの前記接触部分に、発泡シート(a)を導いて、該発泡シート(a)表面に転写する手段により、化合物(G)溶液を連続的に塗布し、その後乾燥して、化合物(G)が塗布された発泡シート(A)を得ることができる。その後、外周面が金属製の回転ロールで発泡シートの輸送方向を制御して巻取りロールで巻き取ることができる。尚、外周面が金属製の回転ロールを使用する場合には、前記化合物(G)が脱離して、その外周面に前記化合物(G)が移転しないように、表面を鍍金処理、鏡面仕上処理等をしておくことが望ましい。
前記層(I)の表面に化合物(G)溶液を塗布後、乾燥する方法は特に限定されるものではなく、自然乾燥、熱風乾燥等により乾燥できる。
尚、層(I)への化合物(G)の塗布量の調整は、化合物(G)溶液の濃度と、溝ロールの溝深さによって制御することができる。溝ロールの溝深さは、適正塗布量の観点から、10〜200μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
【0017】
発泡シート(A)の塗布面における、化合物(G)の塗布量は、層(I)の表面に塗布された化合物(G)の単位面積当たりの重量をいい、塗布の際に使用される溶媒を除いた化合物(G)の重量である。前記塗布量は、0.01〜2.5g/mであることが好ましい。塗布量が上記範囲内であれば、洗浄性がより向上し、被包装物に化合物(G)が過度に移行されて被包装物の洗浄性が低下するおそれもない。発泡シート表面における化合物(G)の塗布量は、0.02〜2g/mがより好ましく、0.05〜1.5g/mが更に好ましい。
【0018】
発泡シート(A)表面の化合物(G)の塗布量は、例えば、表面に塗布された化合物(G)を定性分析により特定した後、発泡シート表面を特定量の純水で洗浄し、その洗浄水を全有機炭素分析して、検量線法により、算出することができる。具体的には、(株)島津製作所製、全有機炭素計TOC−VCSHを用いて、TC−IC法にて測定することができる。定性分析により特定した化合物(G)の既知濃度溶液を作製し、既知濃度溶液のTC値(水中の総炭素)およびIC値(水中の無機炭素)を測定し、TC値からIC値を差し引いた値をTOC値(全有機炭素)として、化合物(G)のTOC値と濃度で検量線を作成する。一方、特定重量の発泡シートを特定量の純水に浸漬して化合物(G)を抽出し、ガラスろ紙で抽出液をろ過した後、そのろ液のTOC値を同様に測定する。前記した検量線をもとに、抽出液のTOC値から化合物(G)の濃度を算出し、発泡シート単位面積当たりの塗布量を算出することができる。尚、抽出液を得る際の発泡シートの重量や、抽出液の量は、塗布量に対応させて適宜決定することができる。
【0019】
(2)ポリオレフィン系樹脂発泡シート(a)
本発明の発泡シート(A)において、ポリオレフィン系樹脂発泡シート(a)は、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とするものである。該ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン成分単位が50モル%以上の樹脂である。該ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、表面硬度が低く柔軟性に優れ、被包装体の表面保護に優れることから好ましく用いられ、特にポリエチレン系樹脂が、より柔軟性に優れ、被包装体の表面保護性により優れているので好ましい。
【0020】
前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレン成分単位が50モル%以上の樹脂が挙げられ、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体などが挙げられ、さらにそれらの2種以上の混合物等が挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂の中でも、発泡性を考慮すると、密度が935g/L以下のポリエチレン系樹脂を主成分とするものが好ましい。具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンを用いることが好ましく、発泡性が特に良好な低密度ポリエチレンがより好ましい。
尚、密度が935g/L以下のポリエチレン系樹脂を「主成分」とするとは、該ポリエチレン樹脂の含有量が50モル%以上であることをいい、好ましくは70モル%以上である。また、ポリエチレン系樹脂の密度の下限は、概ね890g/Lである。
【0021】
また、前記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと共重合可能な他のオレフィン等の成分との共重合体等が挙げられる。プロピレンと共重合可能な他のオレフィンとしては、例えば、エチレンや、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセンなどの炭素数4〜10のα−オレフィンが例示される。また上記共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体等であってもよく、さらに二元共重合体のみならず三元共重合体であってもよい。なお、上記共重合体中のプロピレンと共重合可能な他の成分は、25質量%以下、特に15質量%以下の割合で含有されていることが好ましい。なお、該共重合可能な他成分の含有量の下限値としては共重合体を選択する理由等を勘案して概ね0.3質量%である。また、これらのポリプロピレン系樹脂は、2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
また、上記ポリオレフィン系樹脂の融点は概ね100〜170℃である。上記ポリオレフィン系樹脂の融点は、JIS K7121−1987に準拠する方法により測定することができる。即ちJIS K7121−1987における試験片の状態調節(2)の条件(但し、冷却速度は10℃/分)により前処理を行い、10℃/分にて昇温することにより融解ピークを得る。そして得られた融解ピークの頂点の温度を融点とし、測定することができる。尚、融解ピークが2つ以上現れる場合には、主融解ピーク(最も面積の大きいピーク)の頂点の温度とする。尚、最も大きな面積を有するピークのピーク面積に対して80%以上のピーク面積を有するピークが他に存在する場合には、該ピークの頂点温度と最も面積の大きいピークの頂点の温度との相加平均値を融点として採用する。
本発明におけるポリオレフィン系樹脂には、本発明における目的及び効果を阻害しない範囲で、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、エチレンプロピレンゴム等のエラストマー、ポリブテン等のブテン系樹脂等が添加されていてもよい。その場合の添加量は40質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
【0023】
(3)ブロック共重合体(H)
さらに、本発明に使用される発泡シート(a)は、化合物(G)が塗布されている層(I)には、該層(I)を構成するポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.5重量部以上の、親水性ポリマーブロックとポリオレフィンブロックとからなるブロック共重合体(H)が添加されていることが好ましい。
上記特定量のブロック共重合体(H)が添加された層を有することにより、より帯電防止性能を有するようになり、発泡シート(A)自体に埃が付着するのを抑制できる。
尚、非発泡層、又は発泡層に前記共重合体(H)を前記割合配合することにより、発泡シート(a)の表面抵抗率が1×10〜1×1014(Ω/□)程度とすることが可能になる。
【0024】
本発明においては、発泡シート(a)の、ポリオレフィン系樹脂発泡層、又はポリオレフィン系樹脂発泡層とポリオレフィン系樹脂非発泡層とからなることが好ましい。ここで、各発泡層と非発泡層はそれぞれ単層であっても、多層であってもよいが、製造上の観点からは、発泡層と非発泡層はそれぞれ単層構造であることが好ましい。また、帯電防止性能を効果的に発揮させ、前記ブロック共重合体(H)の添加量を少なくすることができるという観点からは、ポリオレフィン系樹脂発泡層とポリオレフィン系樹脂非発泡層とからなる少なくとも2層、ポリオレフィン系樹脂発泡層の両面にポリオレフィン系樹脂非発泡層が積層された3層の積層発泡シートであることがより好ましい。更に、積層発泡シートにおいても、非発泡層にのみブロック共重合体(H)が添加されている場合には、積層発泡シート全体へのブロック共重合体(H)の添加量を低減することができることから好ましい。
【0025】
前記発泡シート(a)において、前記化合物(G)が塗布されている層(I)が発泡層で、該発泡層にブロック共重合体(H)が添加されている場合には、前記共重合体(H)の添加量は、発泡層を構成する樹脂100重量部に対して1〜10重量部であることがより好ましい。
一方、前記層(I)が非発泡層で、該非発泡層にブロック共重合体(H)が添加されている場合には、ブロック共重合体(H)の添加量は該非発泡層を構成する樹脂100重量部に対して5〜50重量部であることがより好ましい。
前記ブロック共重合体(H)の添加量が上記範囲内であれば、発泡シート表面に静電荷が蓄積することなく、埃などの付着抑制効果がより発揮される。
【0026】
本明細書における表面抵抗率は、下記の試験片の状態調節を行った後、JIS K6911(1995)に準拠して測定される。すなわち、測定対象物である発泡シートから切り出した試験片(縦100mm×横100mm×厚み:試験片厚み)を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に36時間放置することにより試験片の状態調節を行ってから、印加電圧500kVの条件にて電圧印加を開始して1分経過後の表面抵抗率を求めることができる。
【0027】
ブロック共重合体(H)は、親水性ポリマーブロックとポリオレフィンブロックとからなるブロック共重合体であることが好ましい。尚、ブロック共重合体(H)は、高分子型の帯電防止剤として知られている。
具体的には、親水性ポリマーブロックとポリオレフィンブロックからなるブロック共重合体としては、体積抵抗率が10〜1011Ω・cmの親水性ポリマーブロックと、ポリオレフィンブロックとのブロック共重合体が挙げられる。
該親水性ポリマーブロックとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、及びこれらの変性物等のポリエーテル、ポリエーテルセグメント形成成分としてポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルセグメント形成成分としてポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルセグメント形成成分としてポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステル、ポリエーテルセグメント形成成分としてポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルアミド、ポリエーテルセグメント形成成分としてポリエーテルジオールまたはポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルウレタン等のポリエーテル含有親水性ポリマー、非イオン性分子鎖で隔てられた2〜80個、好ましくは3〜60個のカチオン性基を分子内に有するカチオン性ポリマー、及びスルホニル基を有するジカルボン酸とジオール又はポリエーテルとを必須構成単位とし、かつ分子内に2〜80個、好ましくは3〜60個のスルホニル基を有するアニオン性ポリマーなどが使用できる。
【0028】
また、ブロック共重合体(H)は、ポリオレフィン系樹脂との相溶性を向上させ、優れた帯電防止効果を与えると共に、強度などの物性低下を抑制する効果を得るために、ポリオレフィン系樹脂と同種或いは相溶性の高いポリオレフィンブロックをブロック共重合させたものが好ましく、例えば、ポリオレフィンブロックと、体積抵抗率が10〜1011Ω・cmの上記親水性ポリマーブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有する数平均分子量(Mn)が2000〜60000のブロック共重合体が挙げられる。これらの中でも、ポリエーテルブロックとポリオレフィンブロックとのブロック共重合体であることが好ましい。また、ブロック共重合体(H)に好ましく用いられるポリオレフィンブロックとしては、カルボキシル基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン、カルボニル基をポリマーの片末端に有するポリオレフィンが好ましい。
上記ポリオレフィンブロックと親水性ポリマーブロックとは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合から選ばれる少なくとも1種の結合を介して繰り返し交互に結合した構造を有する。尚、ブロック共重合体(H)は、親水性ポリマーブロックとポリオレフィンブロックとからなるが、他の構成成分を含むものであってもよい。
【0029】
更に詳しくは、上記のような親水性ポリマーブロックとポリオレフィンブロックとからなるブロック共重合体(H)としては、特開平3−103466号公報、特開2001−278985号公報等に記載の組成物が挙げられる。また、上記ブロック共重合体(H)に金属塩を含んだ物質も使用することができる。このようなブロック共重合体(H)としては、例えば三洋化成工業(株)製、商品名:ペレスタット300などが市販されている。
【0030】
ブロック共重合体(H)の数平均分子量は、好ましくは2000以上であり、ブロック共重合体(H)の数平均分子量の上限は概ね1,000,000である。より好ましくは、2,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜60,000、特に好ましくは8,000〜40,000である。従って、ブロック共重合体(H)は、界面活性剤からなる帯電防止剤とは区別される高分子型の帯電防止剤として知られている。ブロック共重合体(H)の数平均分子量を前記の範囲とすることにより、被包装体へブロック共重合体(H)自体は発泡シート(A)から被包装物へ移行することはなく、安定した帯電防止性能が得られ、被包装物表面を汚染することがより防止される。
なお、前記数平均分子量は、高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて求めることができる。例えば、ブロック共重合体(H)を、オルトジクロロベンゼンを溶媒として試料濃度3mg/mlとし、ポリスチレンを基準物質としてカラム温度135℃の条件にて測定することにより数平均分子量値を算出することができる。なお、前記溶媒の種類、カラム温度は、ブロック共重合体(H)の種類に応じて適宜変更される。
上記ブロック共重合体(H)はそれぞれ単独で使用することができるが、複数組み合わせて使用してもよい。
また、ブロック共重合体(H)の融点は、好ましくは70〜270℃、より好ましくは80〜230℃、特に好ましくは80〜200℃であることが、帯電防止機能発現性の観点から望ましい。ブロック共重合体(H)の融点は、以下のJIS K7121(1987)に準拠する方法により、前述のように測定することができる。
【0031】
発泡シート(a)の化合物(G)が塗布されている層(I)に、ブロック共重合体(H)が添加されていると、塗布された前記化合物(G)とブロック共重合体(H)との親和性が良好であることから、優れた洗浄性能を有しつつ、塗布された化合物(G)が脱離して、被包装物以外に移行することを抑制することができる。また発泡シート(A)の断裁時に、化合物(G)が脱離し、ロールなどに付着、堆積するトラブルを防止することができる。即ち、ブロック共重合体(H)は、発泡シート(A)の帯電防止性能を向上させるだけでなく、塗布された化合物(G)の脱離を防ぐという新たな効果をもたらすものである。
上記のような観点から、ブロック共重合体(H)としては、特に、化合物(G)との親和性が良好である、ポリエーテルブロックとポリオレフィンブロックからなるブロック共重合体であることが好ましい。特に、化合物(G)が、曇点が85℃以上のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤(G2)、又はポリエチレングリコール(G1)である場合には、化合物(G)の親水性が高くなることから、ブロック共重合体(H)との親和性が更に高くなり、化合物(G)の脱離を防止する効果が一層発揮される。上記観点からは、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤(G2)の曇点は、好ましくは90℃以上、さらに好ましくは95℃以上である。
【0032】
本発明の発泡シート(A)の厚みに特に制限はないが、発泡シート(A)の厚みは、概ね0.2〜5mmが好ましい。なお、上記範囲内の厚みであれば、被包装物に対する緩衝性、表面保護性が十分なものとなる。このような観点から、発泡シート(A)の厚みは、0.2〜2.0mmがより好ましく、0.2〜1.5mmが更に好ましく、0.3〜1.0mmが更により好ましく、0.3〜0.7mmが特に好ましい。尚、本発明における発泡シート(A)全体の厚みは、発泡シート(A)の全幅に亘って幅方向に1cm間隔で測定される厚み(mm)の算術平均値である。
【0033】
本発明の発泡シート(a)の見掛け密度は、10〜300g/Lが好ましい。発泡シート(a)の見掛け密度が上記範囲内であれば、表面保護性が良好であり、保形性や圧縮強さなどの機械的強度や、特に垂れ下がりに関連するコシの強さが強く、ガラス基板などの間紙として好適である。なお、上記表面保護性の観点からは、発泡シート(a)の見掛け密度は150g/L以下がより好ましく、更に好ましくは120g/L以下、特に好ましくは100g/L以下である。また、コシの強い発泡シートは片持ち梁で支持した際の垂れ下がりが小さいものであり、このような観点から、該見掛け密度は20g/L以上がより好ましく、更に好ましくは30g/L以上、特に好ましくは40g/L以上である。尚、本発明における発泡シート(a)の見掛け密度は、発泡シート(a)から切り出した試験片の重量(g)を該試験片の外形寸法から求められる体積(cm)で除した値を単位換算(g/L)して求められる。
【0034】
発泡シート(a)が発泡層からなる単層発泡シートの場合の坪量は10〜80g/mが好ましく、12〜60g/mがより好ましく、15〜50g/mが更に好ましい。該坪量が上記範囲であれば、コシの強さが確保され、過大なコストアップに繋がることもない。
また、発泡シート(a)がポリオレフィン系樹脂発泡層とポリオレフィン系樹脂非発泡層とからなる2層構造、又はポリオレフィン系樹脂発泡層の両面にポリオレフィン系樹脂非発泡層が積層された3層構造の積層発泡シートの場合には、該非発泡層の坪量は一面あたり、0.5g/m以上が好ましく、0.7g/m以上がより好ましく、1g/m以上が更に好ましい。緩衝性や軽量性の観点からはその上限は100g/m以下が好ましく、60g/mがより好ましく、50g/m以下が更に好ましい。特に、非発泡層が共押出により形成されてなる場合には、非発泡層の厚みを薄くすることができるので、非発泡層の坪量は0.5〜20g/mであることが好ましく、0.7〜5g/mがより好ましく、1〜3g/mが更に好ましい。
【0035】
本発明において、上記の坪量は、以下に記載する2通りの方法のいずれかにより求めることができる。
坪量測定の第1の方法においては、発泡シート(a)の垂直断面を顕微鏡などで適宜拡大して、非発泡層の厚みを等間隔に幅方向に10点測定し、得られた値の算術平均値を非発泡層の平均厚みとし、該平均厚みに非発泡層を構成している基材樹脂の密度を乗じ、単位換算して非発泡層の坪量[g/m]を求めることができる。ただし、この方法は非発泡層と発泡層の界面が明確な場合に限られる。
坪量測定の第2の方法においては、発泡シート(a)が共押出によって製造される場合、発泡シート(a)を製造する際に、押出発泡条件の内、非発泡層の吐出量X[kg/時]と、得られる発泡シート(a)の幅W[m]、発泡シート(a)の単位時間あたりの長さL[m/時]から、以下の(1)式にて非発泡層の坪量[g/m]を求めることができる。なお、発泡層の両面に非発泡層を積層する場合には、それぞれの非発泡層の吐出量からそれぞれの非発泡層の坪量を求める。
坪量[g/m]=〔1000X/(L×W)〕・・・(1)
【0036】
次に、発泡シート(a)の製造方法について説明する。
発泡シート(a)が発泡層からなる単層の発泡シートの場合には、ポリオレフィン系樹脂、必要によりブロック共重合体(H)、気泡調整剤等を押出機に供給し、加熱混練し樹脂溶融物とした後、該樹脂溶融物に物理発泡剤を圧入して発泡性樹脂溶融物とし、次いで押出樹脂温度まで冷却して発泡性溶融樹脂とし、該発泡性溶融樹脂をダイから押出発泡することにより製造することができる。また、具体的には該発泡性溶融樹脂を環状ダイから押出し、押出された筒状発泡体を冷却されたマンドレルに沿わせて引き取りながら切開いて、発泡シート(a)を得ることができる。
【0037】
一方、発泡層と非発泡層とからなる積層発泡シートの場合には、発泡層の表面に、予め製造したフィルムを熱ラミネーションにより積層する方法や、押出ラミネーションにより積層する方法で製造することができる。また、発泡層と非発泡層とを一のダイから共押出することもできる。共押出法によれば、非発泡層の厚みを薄くできると共に、非発泡層と発泡層との間の接着力が高い積層発泡シートを得ることができることから好ましい。
共押出法により積層発泡シートを製造する方法には、共押出用フラットダイを用いてシート状に共押出発泡させて積層する方法と、共押出用環状ダイを用いて筒状積層発泡体を共押出発泡し、次いで筒状発泡体を切り開いてシート状の積層発泡シートとする方法等がある。これらの中では、共押出用環状ダイを用いる方法が、コルゲートと呼ばれる波状模様の発生を抑えることや、幅が1000mm以上の幅広の積層発泡体を容易に製造することができるので、好ましい方法である。
【0038】
前記環状ダイを用いて共押出する場合について以下に説明する。
ポリオレフィン系樹脂、必要に応じて添加されるブロック共重合体(H)を非発泡層形成用押出機に供給し、加熱溶融し混練した後、必要に応じて揮発性可塑剤を添加し溶融混練してポリオレフィン系樹脂非発泡層形成用樹脂溶融物とする。同時に、ポリオレフィン系樹脂と、必要に応じて添加されるブロック共重合体(H)、気泡調整剤などの添加剤とを発泡層形成用押出機に供給し、加熱溶融し混練してから物理発泡剤を圧入し、さらに混練してポリオレフィン系樹脂発泡層形成用樹脂溶融物とする。
尚、共押出方法においては、環状ダイ内で非発泡層形成用樹脂溶融物と発泡層形成用樹脂溶融物とを積層することもできれば、押出された上記溶融物同士をダイの出口の外で積層することもできる。また、前記環状ダイ、押出機、円柱状冷却装置、筒状積層発泡体を切開く装置等は、従来から押出発泡の分野で用いられてきた公知のものを用いることができる。
【0039】
前記揮発性可塑剤としては、炭素数2〜7の脂肪族炭化水素、炭素数1〜4の脂肪族アルコール、又は炭素数2〜8の脂肪族エーテルから選択される1種、或いは2種以上のものが好ましく用いられる。滑剤のように揮発性の低いものを可塑剤として用いた場合、滑剤等は非発泡層に残存し、被包装体の表面を汚染することがある。これに対し揮発性可塑剤は、非発泡層の樹脂を効率よく可塑化させ、得られる非発泡層に揮発性可塑剤自体が残り難いという点から好ましいものである。
前記炭素数2〜7の脂肪族炭化水素としては、例えば、エタン、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタンなどが挙げられる。
【0040】
前記揮発性可塑剤の沸点は、非発泡層から揮発し易いことから、120℃以下が好ましく、より好ましくは80℃以下である。揮発性可塑剤の沸点がこの範囲であれば、共押出しした後、得られた積層発泡シートを放置しておけば、共押出し直後の熱により、更に後の室温下でのガス透過により、揮発性可塑剤は積層発泡体の非発泡層から自然に揮散して、自然に除去される。該沸点の下限値は、概ね−50℃である。
揮発性可塑剤の添加量は、ポリオレフィン系樹脂と必要に応じて添加されるブロック共重合体(H)との混練物100重量部に対して5重量部〜50重量部であることが好ましい。
【0041】
上記発泡剤としては以下に示す物理発泡剤が挙げられる。該物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、塩化メチル、塩化エチル等の塩化炭化水素、1,1,1,2−テトラフロロエタン、1,1−ジフロロエタン等のフッ化炭化水素、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類、その他、ジメチルカーボネート、メタノール、エタノール等の有機系物理発泡剤、酸素、窒素、二酸化炭素、空気、水等の無機系発泡剤が挙げられる。これらの物理発泡剤は、2種以上を混合して使用することが可能である。これらのうち、ポリオレフィン系樹脂との相溶性、発泡性の観点から有機系物理発泡剤が好ましく、中でもノルマルブタン、イソブタン、又はこれらの混合物を主成分とするものが好適である。また、物理発泡剤ではないがアゾジカルボンアミド等の分解型発泡剤も使用することができる。
上記発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、目的とする見掛け密度に応じて調整する。即ち、発泡剤としてイソブタン30質量%とノルマルブタン70質量%とのブタン混合物などの物理発泡剤を用いた場合、発泡層を構成する基材樹脂100重量部当たり4〜35重量部、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは6〜25重量部である。
【0042】
また、発泡シート(a)を製造する際には、前記押出機に供給されるポリオレフィン系樹脂中には、通常、気泡調整剤が添加される。気泡調整剤としては有機系のもの、無機系のもののいずれも使用することができる。無機系気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また、有機系気泡調整剤としては、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。また、クエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等を組み合わせたもの等も気泡調整剤として用いることができる。これらの気泡調整剤は2種以上を混合して用いることができる。上記気泡調整剤の添加量は、主として目的とする気泡径に応じて調節するが、一般的には、基材樹脂100重量部当たり、0.2〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部がより好ましく、1〜3重量部が更に好ましい。
また、その他所望により、ポリオレフィン系樹脂押出発泡シート(a)の製造には、本発明の目的効果を阻害しない範囲において、例えば、造核剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、抗菌剤等の機能性添加剤、無機充填剤等の添加剤を含有させることができる。
なお、本発明においては、収縮防止剤やアンチブロッキング剤として使用される脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、及び脂肪酸アミド化合物が実質的に無添加であり、発泡シート(A)から抽出法により分析される水不溶解成分は概ね1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。上記化合物は、発泡シート(A)からブリードアウトして被包装物へ移行して、悪影響を及ぼすおそれがある。
【0043】
かくして得られた発泡シート(A)は、液晶ディスプレー、プラズマディスプレー、エレクトロルミネッセンスディスプレー等の各種の画像表示機器用のガラスパネルに用いられるガラス基板間に間紙として使用することができる。このようにガラス基板と間紙が交互に重ね合わされた状態で包装梱包して収納、保管したり、またユーザーに搬送され、ユーザーにおいて所望の大きさの寸法に加工される。
包装梱包されたガラス基板は、例えば、梱包用の収容函にガラス基板を縦置き、或いは水平置きに並列配置した状態で加工製造ラインに移送され加工製造工程において、ガラス基板間に配置された間紙は吸引操作によりガラス基板面から排除され、その後、水で洗浄したり、水を含有するシートで拭くなどの簡易な洗浄により、ガラス基板面から塵、埃等の異物が除去されて使用される。
【実施例】
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例により何ら限定されるものではない。
(1)発泡シートの作製に使用した材料等
(イ)ポリオレフィン系樹脂発泡シート
実施例、比較例に用いたポリオレフィン系樹脂発泡シートを表1に、及び該発泡シートにおける発泡層や非発泡層の基材樹脂を表2に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
(ロ)ブロック共重合体
ブロック共重合体として、ポリエーテル−ポリプロピレンブロック共重合体(三洋化成工業(株)製、商品名:ぺレスタット300、融点136℃、数平均分子量14000、密度990g/L)を用いた。
(ハ)物理発泡剤
物理発泡剤として、ノルマルブタン70質量%とイソブタン30質量%とからなる混合ブタンを用いた。
(ニ)気泡調整剤
ポリオレフィン系樹脂80重量部に対し、タルク(松村産業(株)製、商品名:ハイフィラー#12)20重量部を配合して得られた気泡調整剤マスターバッチを用いた。
(ホ)塗布した化合物(ポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤)
発泡シート(a)に塗布するために使用した、ポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤を表3に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
(2)発泡シートの形成方法
(イ)発泡シート(a2、a3)の作製
低密度ポリエチレン樹脂を基材樹脂とし、該基材樹脂100重量部に対して、気泡調整剤マスターバッチを3重量部配合して直径150mmの押出機の原料投入口に供給し、加熱混練し、約200℃に調整された樹脂溶融物とした。該樹脂溶融物に物理発泡剤としてノルマルブタン70質量%とイソブタン30質量%の混合ブタンを、基材樹脂100重量部に対して14.6重量部となるように圧入し、次いで冷却して発泡性樹脂溶融物とし、該発泡性樹脂溶融物を環状ダイにて押出して筒状発泡シートを形成した。押出された筒状発泡シートを冷却された円筒に沿わせて引き取りながら切開いて、単層の発泡層からなる発泡シート(a3)を得た。
尚、発泡シート(a2)においては、基材樹脂に対して、ブロック共重合体として9質量%のポリエーテル−ポリプロピレンブロック共重合体(融点136℃、結晶化温度90℃、密度990g/L、三洋化成工業(株)製、商品名:ペレスタット300)を添加した以外は、発泡シート(a3)と同様にして、発泡シート(a2)を得た。
【0050】
(ロ)発泡シート(a1、a4、a5)の作製
ポリオレフィン系樹脂発泡層の押出機として直径90mmと直径120mmの2台の押出機からなるタンデム押出機を使用し、ブロック共重合体を含有するポリオレフィン系非発泡層の押出機として直径65mm、L/D=46の押出機を使用した。また発泡シート体の共押出の為に直径95mmの環状ダイを用いた。
ポリオレフィン系樹脂発泡層形成のために、低密度ポリエチレン(密度922g/L、結晶化温度95.8℃、ダウケミカル日本(株)製、商品名:NUC8321)100重量部に対して、気泡調整剤マスターバッチを3重量部配合して、直径90mmの押出機の原料投入口に供給し、加熱混練し、約200℃に調整された溶融樹脂混合物とした。該溶融樹脂混合物に物理発泡剤としてノルマルブタン70質量%とイソブタン30質量%のブタン混合発泡剤を用いて、低密度ポリエチレン100重量部に対して16重量部となるように圧入し、次いで前記直径90mmの押出機の下流側に連結された直径120mmの押出機に供給して、108℃のポリオレフィン系樹脂発泡層形成用樹脂溶融物を得た。
【0051】
一方、ブロック共重合体を含有するポリオレフィン系非発泡層形成のために、低密度ポリエチレン(ダウケミカル日本(株)製、商品名:NUC8321)に対し、ブロック共重合体としてポリエーテル−ポリプロピレンブロック共重合体(融点136℃、結晶化温度90℃、密度990g/L、三洋化成工業(株)製、商品名:ペレスタット300)25質量%を直径65mmの押出機の原料投入口に供給し、加熱溶融して約200℃に調整された溶融樹脂混合物とし、該溶融樹脂混合物に揮発性可塑剤としてノルマルブタン70質量%とイソブタン30質量%からなる混合物を、低密度ポリエチレンとブロック共重合体との溶融樹脂混合物100重量部に対して16重量部にて圧入し、その後樹脂温度を108℃に調整してブロック共重合体を含有するポリオレフィン系非発泡層形成用樹脂溶融物を得た。
【0052】
得られたポリエチレン系樹脂非発泡層形成用樹脂溶融物及びポリエチレン系樹脂発泡層形成用樹脂溶融物を合流ダイ中へ供給し、ブロック共重合体を含有するポリエチレン系樹脂非発泡層形成用樹脂溶融物が表層になるように積層合流させて環状ダイから共押出し、外側からポリエチレン樹脂非発泡層/ポリエチレン系樹脂発泡層/ポリエチレン系樹脂非発泡層の順に3層構成に積層された筒状積層発泡体を形成した。押出された筒状積層発泡体を冷却された円筒に沿わせて引き取りながら該筒状積層発泡体を切開いて、発泡層と非発泡層とからなる積層発泡シート(a1)を得た。
なお、発泡シート(a4)においては、樹脂原料を表2に示す高密度ポリエチレンにした以外は、発泡シート(a1)と同様にして、発泡シート(a4)を得た。又、発泡シート(a5)においては、樹脂原料を表2に示すポリプロピレンとした以外は、発泡シート(a1)と同様にして発泡シート(a5)を作製した。
【0053】
[実施例1]
発泡シート(a3)に、表4に示す化合物(G)溶液を、ロールコーター方式により塗布した。ロールコーター装置(三和精機(株)製、ロールコーター)を用い、引き取り速度40m/分、溝深さ30μm、の溝ロールの表面に、濃度4質量%の化合物(G)水溶液を接触させた後、ゴムロールを介して発泡シートに転写することにより、塗布を行った。塗布後の発泡シートを、巻き取る間に自然乾燥して、化合物(G)を塗布した発泡シートを得た。
【0054】
[実施例2〜11]
表4に示す発泡シート(a)に、表4に示す化合物(G)水溶液の濃度として塗布した以外は、実施例1と同様にして塗布を行い、発泡シートを得た。
[比較例1〜3]
表4に示す発泡シート(a)に、表4に示す化合物水溶液の濃度として塗布した以外は、実施例1と同様にして塗布を行い、発泡シートを得た。
【0055】
[評価方法]
(1)鉄板への非移行性の評価
発泡シートから塗布した化合物が脱離し、被包装物以外に移行することを防止する効果を評価するために、以下に鉄板への非移行性の評価を行った。
塗布した化合物の、鉄板への移行が少ないほど、鉄板の光沢度の低下率は少なくなる傾向にある。
鉄板(ハードクロムメッキ、表面粗度0.4S)と発泡シートを、繰り返し圧縮試験機にて繰り返し(200回)圧着させた(圧着条件:23℃、湿度50wt%雰囲気下)。圧着前と、圧着させた後の鉄板の、圧着部分の光沢度を測定し、化合物(G)の鉄板への移行状況を、光沢度の低下率で確認した。
鉄板の光沢度は、日本電色工業(株)製、完全デジタル携帯用光沢計(商品名:PG−3D)により測定した。測定条件は、照射角20°による5点測定とした。
【0056】
(2)ガラス板の洗浄性の評価
鉄板非移行性試験後の発泡シートと、洗浄済みのガラス板(縦76mm、横26mm、厚さ0.9〜1.2mm、松浪硝子工業(株)製、商品名:S7213)とを圧着(圧着条件;荷重130g/cm、60℃、50wt%雰囲気下で18hr)させた。その後、ガラス板をビーカー(200mL)内の水道水(200mL)に1.5分間浸水させた後、ガラス表面を純水(20mL)で洗い流し、乾燥した。同様の操作を行ったガラス板10枚を重ね合わせ、10枚のガラス板を透過したヘイズの測定により、ガラス板の汚染状況を確認した。汚染度合は、発泡シートを圧着し、ガラス表面を洗浄した後のガラス板のヘイズ値から、発泡シートを圧着する前のヘイズ値を差し引いて、ヘイズ値の上昇値として評価した。
ヘイズは、JIS K7136(2000年)により、濁度計(日本電飾工業(株)製、型式:NDH2000)により測定した。
試験前後のヘイズ値の差を、ヘイズ上昇値(Hz)として下記評価基準を採用した。
◎:ヘイズ上昇値1.0以下
○:ヘイズ上昇値1〜2
△:ヘイズ上昇値2〜5
×:ヘイズ上昇値5以上
実施例1〜11、及び比較例1〜3について、鉄板への非移行性の評価と、ガラス板洗浄性の評価結果を表4、5に示す。
【0057】
【表4】

【0058】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂発泡シート(a)の少なくとも一方の表面に、ポリエチレングリコール(G1)及び曇点が30℃以上のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤(G2)から選択される1種又は2種以上からなる化合物(G)を塗布してなることを特徴とする発泡シート。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡シート(a)がポリオレフィン系樹脂発泡層、又はポリオレフィン系樹脂発泡層とポリオレフィン系樹脂非発泡層とからなり、前記化合物(G)が塗布されている層(I)には、該層(I)を構成するポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.5重量部以上の、親水性ポリマーブロックとポリオレフィンブロックとからなるブロック共重合体(H)が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の発泡シート。
【請求項3】
前記化合物(G)の塗布量が0.01〜2.5g/mであることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡シート。
【請求項4】
前記ブロック共重合体(H)が、ポリエーテルブロックとポリオレフィンブロックとからなるブロック共重合体であることを特徴とする請求項2又は3に記載の発泡シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の発泡シートからなるガラス基板用間紙。

【公開番号】特開2011−162688(P2011−162688A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28024(P2010−28024)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】