説明

発泡チョコレート及びその製造法

【課題】食感の良い発泡チョコレートを提供する。
【解決手段】発泡チョコレートの製造法であって、密閉式攪拌容器中で融解チョコレートに炭酸ガスを含ませ、次いで減圧条件下で融解チョコレートに含ませた炭酸ガスを発泡させることを特徴とする、発泡チョコレートの製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡チョコレート及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡チョコレートを製造するには、例えば常圧で高速攪拌して溶解状態のチョコレートにエアを抱き込ませ、次いで減圧にすることで発泡させる方法が知られている(特許文献1)。
しかしながら、このように常圧で抱き込ませたエアを減圧で発泡させて発泡チョコレートを製造した場合、その比重を大きく下げることは困難であり、またふんわりしたやわらかいチョコレートを得ることは難しい。
特許文献2には、平均気泡径が0.01〜0.4mmの発泡チョコレートが記載されている。しかしながら、このような小さい気泡を有する発泡チョコレートでは、気泡径が小さく、発泡組織が密な組織になり、噛み砕いたときに粉っぽい食感になるため、ふんわりしたやわらかい食感は得られ難い。
また、焼き菓子等にチョコレートをエンローバーする方法としては、従来から、(i)液状のチョコレートを焼き菓子の上に噴霧する、(ii)焼き菓子を一旦チョコレートに浸し、後で余分なチョコレートをタッピングで落とす、といったものが知られている。しかしながら、これらの方法ではチョコレートを付着したいと意図している以外の部分にもチョコレートが付着することが多く、例えばコーン上部の盛り上がったチョコレート部分に別のチョコレートをエンローバーする際に有効な方法はなかった。また従来、チョコレートに更にチョコレートをエンローバーするためにはもとのチョコレートを一旦冷却固化させた後に新たにチョコレートをエンローバーさせ冷却固化させるという二回の冷却工程が必要であり、設備面や生産性に問題があった。
【特許文献1】特開平6−62742号公報
【特許文献2】特公平7−121197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、軽くてやわらかくふんわりとした食感を有し、口溶けが良く、甘さ切れが良い発泡チョコレート及びその製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の発泡チョコレート及びその製造方法に関する。
1. 多数の気泡を有する発泡チョコレートであって、比重が0.1〜0.4g/mlであり、均一な気泡組織を有する発泡チョコレート。
2. 多数の気泡を有する発泡チョコレートであって、比重が0.2〜0.35g/mlであり、気泡の平均気泡径が0.5〜3.0mmである均一な気泡組織を有する項1記載の発泡チョコレート。
3. 可食性容器に充填された項1または2に記載の発泡チョコレート。
4. 発泡チョコレートがエンローバー様の外観を有する非発泡チョコレートで覆われている、項1、2又は3に記載の発泡チョコレート。
5. 発泡チョコレートが高圧の炭酸ガスを含ませた後に減圧条件下で得られることを特徴とする項1〜5のいずれかに記載の発泡チョコレート。
6. 発泡チョコレートの製造法であって、密閉式攪拌容器中で融解チョコレートに高圧の炭酸ガスを含ませ、それを常圧下に解放する事により発泡させ、次いで減圧条件下で融解チョコレートに含ませた炭酸ガスを更に発泡させることを特徴とする、発泡チョコレートの製造法。
7. 炭酸ガスを含ませた融解チョコレートを可食性容器又はモールドに入れ、減圧下の発泡工程に供する、項7に記載の方法。
8. 炭酸ガスを含ませた融解チョコレートを、常圧下で非発泡性融解チョコレートの層で覆い、減圧下の発泡処理にかけることで、発泡チョコレートをエンローバー様の外観を有する非発泡チョコレートで覆うことを特徴とする項7又は8に記載の方法。
【0005】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明にいうチョコレートとは、通常いうところのチョコレート生地(ホワイトチョコレート、ミルクチョコレート、カラーチョコレートなど)及び準チョコレート生地を含むものである。
チョコレートには、例えばカカオマス、ココア、ココアバター、油脂(テンパリング型植物性油脂を含む)、砂糖、全粉乳、レシチン、乳糖、香料等の成分が配合され得る。
発泡に使用される気体は、特に炭酸ガスが好ましい。炭酸ガスを使用した場合には、発泡チョコレートの比重を十分に下げることができるだけでなく、チョコレートの気泡が大きく且つ均一になり、やわらかさ、口溶け、ふんわり感が向上するため好ましい。
発泡チョコレートの比重は0.1〜0.4g/ml程度、好ましくは0.2〜0.35g/ml程度である。発泡チョコレートがこのような低い比重を有する場合、やわらかさ、口溶け、ふんわり感が向上するため好ましい。
本発明の発泡チョコレートは、粗く大きさのバラツキの少ない気泡組織を有するものである。気泡の大きさとしては、平均気泡径0.5〜5.0mm程度、好ましくは0.5〜3.0mm程度である。気泡が小さすぎると、粉っぽい食感となり、気泡が大きすぎると強度が弱くなり、例えば製造時或いは輸送中にチョコレートが割れたり気泡組織が壊れたりする危険がある。
本発明のチョコレートは、密閉系の容器において特に炭酸ガスを加圧攪拌条件下で融解チョコレートに抱き込ませ常圧に解放し、次いで減圧にすることで、抱き込ませた炭酸ガスを発泡させて製造することができる。この加圧攪拌下に炭酸ガスをチョコレート中に導入し常圧に解放する工程と減圧下で発泡させる工程の組み合わせによりチョコレート中の炭酸ガスの気泡を大きく且つ均一にし、比重が小さく、やわらかさ、ふんわり感、口溶け、甘さの切れなどに優れ、しかも十分な強度を有する発泡チョコレートを得ることができる。チョコレートに抱き込ませるガスとしては、炭酸ガスが特に好適に使用できる。炭酸ガスを使用することにより大きくて均一な気泡からなる粗い気泡組織を有し、やわらかくふんわりした食感を有する発泡チョコレートが得られる。
なお、常圧に解放する工程と減圧下で発泡させる工程は、連続的に行ってもよく、いったん常圧に解放し、必要に応じて炭酸ガスを含ませた融解チョコレートを非発泡性融解チョコレートの層で覆い、次に減圧下でさらに発泡させて本発明の発泡チョコレートとしてもよい。
本発明の1つの好ましい製造条件としては、28〜32℃程度の温度下に、融解チョコレートを含む容器の内部圧力を2.0〜6.0気圧、出口圧力を1.0〜6.0気圧とし、必要に応じて適当なモールド又は可食性容器に発泡後の体積膨張を考慮した量を充填し、好ましくは常圧下で気泡を抱き込ませる処理を行っていないチョコレートを表面に塗布し、次いで減圧(例えば、50〜700mmHg)処理を行い、−40〜20℃程度の温度に冷却して、本発明の発泡チョコレートを得ることができる。
本発明は、例えば、密閉式の高速混合機においてその一部から炭酸ガス等を注入ないし圧入できる様に調整されたものを使用して、加圧攪拌下にチョコレート中に炭酸ガスを含ませ、後の常圧への解放工程及び減圧工程で発泡させることができる。
減圧用容器の内部の雰囲気の温度は、チョコレートの成分(組成)により異なる。一般にその温度は、チョコレートの融点よりも数℃以上低い温度が好適に用いられる。
チョコレートは、発泡を開始するときは融解状態であるから、通常はモールドまたは可食性容器などに充填し、減圧用容器内において発泡させられる。
また、本発明のエンローバー様の外観を有するチョコレートについては、まず容器に入った気体を抱き込ませたチョコレートの上に気体を抱き込ませていないチョコレートを被せる。その後、発泡させると気体を抱き込んだチョコレートは発泡するが、気体を抱き込ませていないチョコレートは発泡しない。その結果、非発泡チョコレートは容器を汚すことなく発泡チョコレートの表面にほぼ一様に被覆することができる。更に、発泡チョコレートを予め冷却固化させることなく、発泡チョコレートの上部に非発泡チョコレートを充填し一度に発泡させるだけでよく、一段階の工程のみでエンローバー様の外観を得ることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ふんわり感、やわらかさ、口溶けの良さ、甘さの切れの良さなどが優れた発泡チョコレートが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことはいうまでもない。
参考例1
ココアバター25部、テンパリング型植物性油脂10部、砂糖30部、乳糖10部、全粉乳25部、レシチン0.5部及び適量の香料からなるホワイトチョコレートを得た。
実施例1
参考例1のホワイトチョコレート100部に対し、起泡性油脂(SSW-DP、不二製油(株)製)10部を添加して得られたチョコレートを、常法通りテンパリング処理を行い、密閉式攪拌容器(モンドミックス社製)を用いて高圧の(7bar程度)炭酸ガスを封入し、常圧下で比重0.6 g/ml程度の気泡入りチョコレートを得た。
得られたチョコレートを容積80mlのカップに20g充填して減圧発泡し(300mmHg程度)、最終比重0.25、平均気泡径1.2mm程度の発泡チョコレートを得た。
比較例1
参考例1のホワイトチョコレートを、常法通りテンパリング処理を行い、密閉式攪拌容器(モンドミックス社製)を用いて圧縮空気を封入し、比重0.95 g/ml程度の気泡入りチョコレートを得た。
得られたチョコレートを容積80mlのカップに32g充填して減圧発泡し、冷却(−20℃)することで最終比重0.40の発泡チョコレートを得た。
試験例1
実施例1と比較例1で得た発泡チョコレートを、9名のパネラーで官能評価を行った。結果を表1に示す。
なお、表1の評価は、いずれのチョコレートが各項目(ふんわり感、やわらかさ、口溶けの良さ、甘さの切れの良さ)において優れているのかを選択することで行った。
【0008】
【表1】

【0009】
表1に示すように、本発明の発泡チョコレートは、比較例1のチョコレートよりもふんわり感、やわらかさ、口溶けの良さ、甘さの切れの良さの全ての評価項目において優れていることが明らかになった。

実施例2
ココアバター25部、テンパリング型植物性油脂10部、砂糖35部、乳糖10部、全粉乳20部、レシチン0.5部及び適量の香料からなるホワイトチョコレートを完全に融解した後、常法通りのテンパリング処理を行い、ホバートミキサーで高速攪拌し、比重1.1の気泡入りホワイトチョコレートを得た。一方、カカオマス20部、砂糖35部、ココアバター15部、テンパリング型植物性油脂5部、全粉乳20部、乳糖5部、レシチン0.5部及び適量の香料からなるチョコレートを完全融解し、常法通りのテンパリング処理を行い、ミルクチョコレートを得た。市販のシュガーコーン(日世(株)製)に気泡入りホワイトチョコレートを30重量部充填し、その上にミルクチョコレートを5重量部充填した。その後、減圧発泡し(400mmHg)、冷却(-40℃)することにより、発泡し盛り上がった部分がエンローバー様の外観を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の気泡を有する発泡チョコレートであって、比重が0.1〜0.4g/mlであり、均一な気泡組織を有する発泡チョコレート。
【請求項2】
多数の気泡を有する発泡チョコレートであって、比重が0.2〜0.35g/mlであり、気泡の平均気泡径が0.5〜3.0mmである均一な気泡組織を有する請求項1記載の発泡チョコレート。
【請求項3】
可食性容器に充填された請求項1または2に記載の発泡チョコレート。
【請求項4】
発泡チョコレートがエンローバー様の外観を有する非発泡チョコレートで覆われている、請求項1、2又は3に記載の発泡チョコレート。
【請求項5】
発泡チョコレートが高圧の炭酸ガスを含ませた後に減圧条件下で得られることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の発泡チョコレート。
【請求項6】
発泡チョコレートの製造法であって、密閉式攪拌容器中で融解チョコレートに高圧の炭酸ガスを含ませ、それを常圧下に解放する事により発泡させ、次いで減圧条件下で融解チョコレートに含ませた炭酸ガスを更に発泡させることを特徴とする、発泡チョコレートの製造法。
【請求項7】
炭酸ガスを含ませた融解チョコレートを可食性容器又はモールドに入れ、減圧下の発泡工程に供する、請求項7に記載の方法。
【請求項8】
炭酸ガスを含ませた融解チョコレートを、常圧下で非発泡性融解チョコレートの層で覆い、減圧下の発泡処理にかけることで、発泡チョコレートをエンローバー様の外観を有する非発泡チョコレートで覆うことを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。