説明

発泡プラスチック複合断熱材およびその製造方法

【課題】遮熱性、断熱性、耐久性および抗菌性に優れた発泡プラスチック複合断熱材とその製造方法を提供する。
【解決手段】発泡プラスチックから構成される芯材2の両面に、水溶性樹脂12により被覆された比重1未満のセラミック系またはガラス系の多数のバルーン粒子11と、水溶性樹脂12をバインダーとしてセラミック系またはガラス系のバルーン粒子11および遮熱顔料13が結合された多数のバルーン粒子・遮熱顔料結合体16を含む混練水溶液10を塗布し、乾燥させて、芯材2の両面に、表層部3Aに水溶性樹脂12を遮熱バインダーとしてバルーン粒子11と遮熱顔料13が結合されたバルーン粒子・遮熱顔料結合体16が多数配列され、内層部3Bに水溶性樹脂12をバインダーとしてバルーン粒子11が多数配列された遮熱断熱塗膜層3を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性に優れる発泡プラスチック複合断熱材と、発泡プラスチック複合断熱材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡プラスチック材は、軽量で断熱性を備えるため、従来より、住宅用の断熱材、設備、食品容器などの用途に幅広く使用されている。
【0003】
断熱材にアルミニウム箔を接合した複合断熱材の例(特許文献1)、プラスチック系発泡体の表面にシート状物を積層し、シート状物に遮熱塗料を塗布するプラスチック系断熱材の例(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−30344号公報
【特許文献2】特開2009−269329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者の例は耐久性に欠けかつ製造コストが高くつき、後者の例も同様な耐久性や製造コストが高くつく問題がある。したがって、遮熱性能、断熱性能を長く維持し、また、低コストで提供することは難しい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、遮熱性、断熱性、耐久性さらには抗菌性に優れた発泡プラスチック複合断熱材を提供すること、また、同発泡プラスチック複合断熱材を低コストで製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る発泡プラスチック複合断熱材は、発泡プラスチックから構成される芯材の少なくとも片面に、水溶性樹脂を遮熱バインダーとして遮熱顔料が多数配列された表層部と、水溶性樹脂をバインダーとしてバルーン粒子が多数配列された内層部を有する遮熱断熱膜層を形成したことを主要な特徴とする。
【0008】
バルーン粒子は、比重1未満のセラミック系、アルミナ系またはガラス系等のバルーン粒子からなり、断熱性および保温性に優れる。また、比重が1を超える遮熱顔料は、例えば酸化チタンや鉄クロム等からなり、これらは赤外線反射効果があり、遮熱性に優れ、耐久性に優れる。また、セラミック系またはガラス系等のバルーン粒子は吸水率が0.1%以下であり、防水機能があるため、遮熱断熱膜層に防水機能を付与する。
【0009】
本発明に係る発泡プラスチック複合断熱材によると、発泡プラスチックから構成される芯材の断熱性に、遮熱断熱膜層の断熱性が加わり、それらの複合効果により、遮熱性、断熱性が向上する。また、表層部に水溶性樹脂を遮熱バインダーとする酸化チタン等の遮熱顔料が強固に定着されるから、抗菌性および耐久性に優れる。さらに、保温性や防水性があるため、外装材としてまたは内装材としても好適である。
【0010】
本発明に係る発泡プラスチック複合断熱材は、発泡プラスチックから構成される芯材の少なくとも片面に、水溶性樹脂を遮熱バインダーとしてバルーン粒子と遮熱顔料が結合したバルーン粒子・遮熱顔料結合体が多数配列された表層部と、水溶性樹脂をバインダーとしてバルーン粒子が多数配列された内層部を有する遮熱断熱膜層を形成したことを第2の特徴とする。
【0011】
外層部に水溶性樹脂を遮熱バインダーとしてバルーン粒子と遮熱顔料が強固に定着し、遮熱・断熱性能の高い遮熱断熱膜層が形成される。
【0012】
本発明に係る発泡プラスチック複合断熱材は、発泡プラスチックから構成される芯材の周囲に、前記遮熱断熱膜層を形成したことを第3の特徴とする。
【0013】
本発明に係る発泡プラスチック複合断熱材によると、芯材の周囲に遮熱断熱膜層を形成する強固なサンドイッチ構造とすることにより、断熱性および防水性がより一層向上し、また、同断熱材により区画された空間の保温効果も大きくなる。
【0014】
本発明に係る発泡プラスチック複合断熱材は、遮熱断熱膜層の乾燥厚さが100〜3000μであることを第4の特徴とする。
【0015】
乾燥厚さが100μ未満であると断熱性が低下し、3000μを超えると膜厚み強度が不足し、ひび割れ、亀裂などの原因となる。このため100〜3000μの範囲が、断熱性と強度上の理由から好ましい。
【0016】
本発明に係る発泡プラスチック複合断熱材は、比重が1を超える遮熱顔料として、酸化チタン(TiO)または鉄クロム(Fe-Cr)を用いることを第5の特徴とする。
【0017】
遮熱顔料として、酸化チタンまたは鉄クロムが用いられることにより、抗菌性および減菌性を発揮する。すなわち、発泡プラスチック複合断熱材を外装材に用いることにより、遮熱断熱膜層に含まれる酸化チタン等の光触媒効果により有機物質や菌を分解する。また、発泡プラスチック複合断熱材を内装材に用いることにより、室内環境の改善、ホルムアルデヒド等の臭いや汚れの付着を抑止する。
【0018】
本発明に係る発泡プラスチック複合断熱材の製造方法は、発泡プラスチックから構成される芯材の少なくとも片面に、水溶性樹脂により被覆された比重1未満のセラミック系またはガラス系の多数のバルーン粒子と、水溶性樹脂をバインダーとして比重1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子および比重1超の遮熱顔料が結合された多数のバルーン粒子・遮熱顔料結合体を含む混練水溶液を塗布し、乾燥させて、前記芯材の少なくとも片面に、表層部に水溶性樹脂を遮熱バインダーとしてバルーン粒子と遮熱顔料が結合されたバルーン粒子・遮熱顔料結合体が多数配列され、内層部に水溶性樹脂をバインダーとしてバルーン粒子が多数配列された遮熱断熱塗膜層を形成したことを第6の特徴とする。
【0019】
芯材の表面に混練水溶液を塗布し乾燥させるだけで、芯材の表面に強固な遮熱断熱塗膜層が形成される。低コストで発泡プラスチック複合断熱材を製造できる。
【0020】
発泡プラスチック複合断熱材を製造するにあたり、芯材の表面(片面)に、水溶性樹脂により被覆された比重1未満のセラミック系またはガラス系の多数のバルーン粒子と、水溶性樹脂をバインダーとして比重1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子および比重1超の遮熱顔料が結合された多数のバルーン粒子・遮熱顔料結合体を含む混練水溶液を塗布することにより、バルーン粒子の浮力によって、バルーン粒子に結合された比重が1を超える遮熱顔料が塗膜層の表層部に浮上する。
【0021】
比重1超の遮熱顔料は、その重さによって沈降し、単体では塗膜層の表層部に浮上しないのに対し、バルーン粒子の浮力を利用して塗膜層の表層部に浮上させ遮熱顔料を表面に並べて露出および強固に定着させることができる。これにより、乾燥後の発泡プラスチック複合断熱材の表層部に遮熱顔料が並ぶことにより、発泡プラスチックから構成される芯材の断熱性と、遮熱断熱膜層の断熱性の複合効果により、断熱性が向上する。また、防水性が向上する。これにより、遮熱性、断熱性、防水性、保温性に優れた外装材、断熱性、保温性に優れた内装材を製造できる。
【0022】
塗膜層の乾燥後は、遮熱バインダーがバルーン粒子と遮熱顔料の結合状態を強固に保持し、塗膜層の耐久性を発揮する。さらには、水溶性樹脂を用い有機溶剤を使用しないから、作業環境や安全衛生にも最適である。
【0023】
本発明に係る発泡プラスチック複合断熱材の製造方法は、混練水溶液を得るにあたり、バルーン粒子100重量%に対し、水10〜55重量%、水溶性樹脂10〜80を混錬して一次混練水溶液を得、一次混練水溶液100重量%に対し、遮熱顔料1〜80重量%を混錬して最終の混練水溶液を得ることを第2の特徴とする。
【0024】
本発明に係る発泡プラスチック複合断熱材の製造方法は、上型と下型の中間位置に発泡性プラスチックビーズを多数配置し、発泡性プラスチックビーズ群の少なくとも上下いずれか片面または側面に、バルーン粒子に水溶性樹脂が被覆されたバルーン粒子ビーズを多数配置し、配置したバルーン粒子ビーズ群の外側に遮熱顔料に水溶性樹脂が被覆された遮熱顔料ビーズを多数配置し、次いで型を閉じて加熱することにより、中間のプラスチックビーズ群を発泡させて芯材を形成すると共に、芯材の少なくとも片面に、内層部に水溶性樹脂をバインダーとしてバルーン粒子が多数配列され、外層部に水溶性樹脂を遮熱バインダーとして遮熱顔料が多数配列された遮熱断熱膜層を形成した発泡プラスチック複合断熱成型品を得ることを第3の特徴とする。
【0025】
型内に発泡プラスチックビーズ、バルーン粒子ビーズ、遮熱顔料ビーズを並べるだけで、遮熱性、断熱性、耐久性に優れた発泡プラスチック複合断熱成型品を容易にかつ低コストで製造することができる。
【0026】
得られた発泡プラスチック複合断熱成型品は、発泡プラスチックから構成される芯材の周囲に遮熱断熱膜層が密着し、発泡プラスチック複合断熱成型品の温度による収縮・伸びに対しても、遮熱断熱膜層の水溶性樹脂遮熱バインダーの引っ張り強度および圧縮強度がいずれも高く、また、弾力性もあり、したがって、遮熱断熱膜層にひび割れ、亀裂が生じることがなく、耐久性に優れる。また、耐候性にも優れる。
【0027】
本発明に係る発泡プラスチック複合断熱材の製造方法は、上型と下型の中間位置に発泡性プラスチックビーズを多数配置し、発泡性プラスチックビーズ群の周囲に、バルーン粒子に水溶性樹脂が被覆されたバルーン粒子ビーズを多数配置し、バルーン粒子ビーズ群の周囲に遮熱顔料に水溶性樹脂が被覆された遮熱顔料ビーズを多数配置し、次いで型を閉じて加熱することにより、中間のプラスチックビーズ群を発泡させて中間の芯材を形成すると共に、芯材の周囲に、内層部に水溶性樹脂をバインダーとしてバルーン粒子が多数配列され、外層部に水溶性樹脂を遮熱バインダーとして遮熱顔料が多数配列された遮熱断熱膜層を形成した発泡プラスチック複合断熱成型品を得ることを第4の特徴とする。
【0028】
より一層断熱性、断熱性、保温性、防水性、抗菌性等に優れた発泡プラスチック複合断熱成型品を容易にかつ低コストで製造することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明に係る発泡プラスチック複合断熱材によると、軽量で遮熱性、断熱性、耐久性、保温性、抗菌性に優れた発泡プラスチック複合断熱材を得ることができ、住宅や建物用の遮熱材、断熱材、断熱構造部品として、あるいは食品容器その他の保温容器として幅広い用途に適用できるという優れた効果を奏する。
【0030】
また、本発明に係る発泡プラスチック複合断熱材の製造方法によると、上に述べた優れた性能を備える複合断熱材を容易かつ低コストで得ることができるという優れた効果を奏する。さらに、遮熱断熱膜層にひび割れ・亀裂などを起こさない高弾力のプラスチック複合断熱成型品を得ることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態における発泡プラスチック複合断熱材の断面図、
【図2】図1の要部断面図、
【図3】混練水溶液を製造するフローチャート図、
【図4】(A)は一次混練物を示す図、(B)は二次混練物(混練水溶液)を示す図、
【図5】第2実施形態における発泡プラスチック複合断熱材の断面図、
【図6】第3実施形態における発泡プラスチック複合断熱材成型品の製造の様子を示す説明図、
【図7】型を閉じて加熱により発泡プラスチック複合断熱材成型品を得る様子を示す説明図、
【図8】発泡プラスチック複合断熱材成型品の製造に用いるバルーン粒子ビーズと遮熱顔料ビーズの説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1ないし図4は本発明の第1実施形態を示すもので、図1において、符号1は発泡プラスチック複合断熱材を示している。
【0033】
発泡プラスチック複合断熱材1は、図1に示すように、芯材2の表面に遮熱断熱膜層3が形成されている。芯材2は発泡プラスチックから構成されている。
【0034】
芯材2を構成する発泡プラスチックは、合成樹脂を発泡成形させたもので、発泡スチロール(EPS)、発泡スチレンなどが含まれる。また、発泡プラスチックに用いられる原料としては、ポリスチロール(PS)、ポリスチレン(PS)の他、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PUR)、フェノール樹脂(PF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリミイド(PI)、シリコン(SI)などがある。
【0035】
遮熱断熱膜層3は、図2に示すように、表層部3Aに水溶性樹脂12を遮熱バインダーとしてバルーン粒子11と遮熱顔料13が結合したバルーン粒子・遮熱顔料結合体16が多数配列され、内層部3Bに水溶性樹脂12をバインダーとしてバルーン粒子11が多数配列されている。かかる遮熱断熱膜層3は、芯材2の表面に、混練水溶液10、すなわち水溶性樹脂12により被覆された多数のバルーン粒子11と、水溶性樹脂12をバインダーとしてバルーン粒子11および遮熱顔料13が結合された多数のバルーン粒子・遮熱顔料結合体16を含む混練水溶液10が塗布および乾燥されて形成されている。遮熱断熱膜層3の乾燥厚さtは、混練水溶液10の1回または数回の重ね塗りによって、100〜3000μに設定されている。図2に示すように、遮熱断熱膜層3の表層部3Aは内層部3Bよりも遮熱顔料13の占める割合が高く、内層部3Bは表層部3Aよりもバルーン粒子11の占める割合が高くなっている。バルーン粒子11には比重が1未満のセラミック系またはガラス系が用いられ、遮熱顔料13には比重が1を超える酸化チタンまたは鉄クロムが用いられる。
【0036】
かかる遮熱断熱膜層3内の配置により、発泡プラスチック複合断熱材1の表面に照射された太陽光は、表層部3Aの遮熱顔料13と水溶性樹脂遮熱バインダー12により反射されて遮熱効果が発揮される。また、表層部3Aおよび内層部3Bのバルーン粒子11により断熱されて断熱効果が発揮される。そして、芯材2を構成する発泡プラスチックの断熱効果との複合効果により材としての断熱性が向上する。
【0037】
バルーン粒子11は、保温性に優れるとともに、吸水率が0.1%以下で防水機能があり、遮熱断熱膜層3に防水機能を付与する。これにより、発泡プラスチック複合断熱材1に優れた保温性と防水性を持たせることができる。
【0038】
上記構成の発泡プラスチック複合断熱材1は以下のようにして製造される。
【0039】
まず、混錬水溶液10を準備する。図3のフローチャートに示すように、混練装置の容器内にバルーン粒子11、水14、水溶性樹脂12の各材料を投入し、攪拌および混練して、一次混錬物15を得る。各材料の配合割合はバルーン粒子100重量部に対し、水50重量部、水溶性樹脂50重量部とする。なお、バルーン粒子100重量部に対し、水は10〜55重量部のうちから、水溶性樹脂は10〜80重量部のうちから、それぞれ適宜選択できる。容器内で攪拌板を回転させることにより、個々のバルーン粒子11の周囲に水溶性樹脂12がコーティングされる。バルーン粒子11はセラミック系を用い、粒径20ミクロン〜100ミクロン、平均空孔率10%以上、比重0.8以下の酸化アルミニウム(Al)の球状体を用いる。酸化アルミニウムは、約1400℃の高温で焼成されることによって球体形状で平均空孔率10%以上のバルーン粒子が安定して得られる。水溶性樹脂12にはアクリル樹脂等を用いる。
【0040】
容器内で一次混練物15を攪拌することにより、図4(A)に示すように、バルーン粒子11が水溶液中に攪拌分散し、個々のバルーン粒子11の周囲に水溶性樹脂12がコーティングされる。
【0041】
次に、容器中の一次混練物15に遮熱顔料(例えば酸化チタン)13を投入し、攪拌および混練して、最終の混練水溶液(二次混練物)10を得る。このときの配合割合は、一次混練物100重量部に対し、遮熱顔料30重量部とする。なお、一次混錬物100重量部に対し、遮熱顔料は1〜80重量部のうちから適宜選択することができる。遮熱顔料13を後から投入することで、図4(B)に示すように、個々のバルーン粒子11の周囲に水溶性樹脂12が遮熱バインダーとなって遮熱顔料13が結合し、バルーン粒子・遮熱顔料結合体16を形成する。また、バルーン粒子・遮熱顔料結合体16が互いに結合し、複合ユニットUを構成する場合もある。そして、個々のバルーン粒子11の浮力の合計が、遮熱顔料13の沈降力を上回ることにより、個々のバルーン粒子・遮熱顔料結合体16(あるいはそれらの複合ユニット)が混練水溶物10の表層部に浮上する。
【0042】
そして、かかる混練水溶物10を芯材2の表面に塗布することにより、図2に示すように、乾燥前の塗膜層3の表層部3Aにバルーン粒子・遮熱顔料結合体16が浮上して多数配列され、また、内層部3Bにバルーン粒子11が多数配列され、乾燥後、遮熱顔料13が表層部3Aに並ぶように定着する。
【0043】
塗膜層3の乾燥後は、水溶性樹脂12が遮熱バインダーとしてバルーン粒子11と遮熱顔料13の結合状態を強固に保持し、塗膜層3の耐久性を発揮する。さらには、水溶性樹脂12を用い、有機溶剤を使用しないから、有機溶剤を使用する場合に有機溶剤が表層に表出して、遮熱顔料のもつ本来の機能を阻害するような事態を防止できる。
【0044】
遮熱顔料13として、酸化チタンを用いることにより、抗菌性および減菌性を発揮する。すなわち、外装材に用いることにより、遮熱断熱膜層3に含まれる酸化チタンの光触媒効果により有機物質や菌を分解する。また、内装材に用いることにより、室内環境の改善、ホルムアルデヒド、VOC等の分解作用で臭いや汚れの付着を抑止する。
【0045】
図5は、本発明の第2実施形態を示すもので、本実施形態の発泡プラスチック複合断熱材20は、芯材2の両面に遮熱断熱膜層3を形成したものである。すなわち、芯材2の上面に、水溶性樹脂12を遮熱バインダーとしてバルーン粒子11と遮熱顔料13が結合したバルーン粒子・遮熱顔料結合体Uが多数配列された表層部3Aと、水溶性樹脂12をバインダーとしてバルーン粒子11が多数配列された内層部3Bを有する遮熱断熱膜層3が形成され、芯材2の下面に、同じく水溶性樹脂12を遮熱バインダーとしてバルーン粒子11と遮熱顔料13が結合したバルーン粒子・遮熱顔料結合体Uが多数配列された表層部3Aと、水溶性樹脂12をバインダーとしてバルーン粒子11が多数配列された内層部3Bを有する遮熱断熱膜層3が形成されている。
【0046】
そして、発泡プラスチック複合断熱材20は、芯材2の上面に混練水溶液10を塗布して乾燥させた後、芯材2の下面を上面にして混練水溶液10を塗布して乾燥させることにより、図5に示す構造の発泡プラスチック複合断熱材20が得られる。なお、芯材2の両側面に、それぞれを上面にした姿勢で順次混練水溶液10を塗布乾燥させることにより芯材2の周囲を遮熱断熱膜層3で被覆することができる。
【0047】
図6ないし図8は、本発明の第3実施形態を示すもので、型40を用いて、発泡プラスチック複合断熱成型品(発泡プラスチック複合断熱材)30を得る例である。
【0048】
図6に示すように、型40の上型41と下型42を開き、上型41と下型42の中間位置Cに発泡性プラスチックビーズ31を多数配置し、発泡性プラスチックビーズ31群の周囲に、バルーン粒子11に水溶性樹脂12が被覆されたバルーン粒子ビーズ32(図8(A)参照)を多数配置し、バルーン粒子ビーズ32群の周囲で各型41、42の内面との間に遮熱顔料13に水溶性樹脂12が被覆された遮熱顔料ビーズ33(図8(B)参照)を多数配置し、型40を閉じる。
【0049】
次いで型40を閉じた状態で上下の加熱部43からの加熱により、中間のプラスチックビーズ31群を発泡させて、図7に示すように、中間の芯材2を形成すると共に、芯材2の周囲に、内層部3Bに水溶性樹脂12をバインダーとしてバルーン粒子11が多数配列され、表層部3Aに水溶性樹脂12を遮熱バインダーとして遮熱顔料13が多数配列された遮熱断熱膜層3’が形成される。そして、型40を開くことにより、発泡プラスチック複合断熱成型品30を取り出すことができる。
【0050】
得られた発泡プラスチック複合断熱成型品30は、発泡プラスチックから構成される芯材2の周囲に遮熱断熱膜層3’が強固に密着し、発泡プラスチック複合断熱成型品30の温度による収縮・伸びに対しても、遮熱断熱膜層3’の水溶性樹脂遮熱バインダー12の引っ張り強度および圧縮強度がいずれも高いことから、また、弾力性もあることから、遮熱断熱膜層3’にひび割れ、亀裂が生じることがなく、耐久性に優れる。また、耐候性にも優れる。
【0051】
軽量で遮熱性、断熱性、保温性、抗菌性、耐久性、耐候性に優れた発泡プラスチック複合断熱成型品30が得られるので、従来用途である住宅用断熱材、断熱構造部品、食品容器に好適である。また、新用途として、抗菌・断熱シート(屋根や室内天井用など)、抗菌・結露防止構造材、抗菌・断熱・保温容器、家畜・口蹄疫対応部材に適用できる。さらに、発泡プラスチック複合断熱成型品30に不織布などを組み合わせて用いることもできる。
【実施例】
【0052】
本発明者は、図1および図5に示す発泡プラスチック複合断熱材の試料を2種類製作し、比較品と本発明品の断熱評価試験を行った。比較品は厚さ10mmの発泡スチロールを用いた。図1に示す構造の発泡プラスチック複合断熱材は、発泡スチロールの片面に混練水溶液を1回塗布し乾燥させて、乾燥厚さ100μの遮熱断熱膜層3を形成した(実施例1)。図5に示す構造の発泡プラスチック複合断熱材は、同発泡スチロールの両面に混練水溶液を1回塗布し乾燥させて、乾燥厚さ100μの遮熱断熱膜層3を形成した(実施例2)。混練水溶液は、セラミック系バルーン粒子100重量部に対し、水50重量部、水溶性エポキシ樹脂50重量部の割合で攪拌し一次混練物を得、一次混練物100重量部に酸化チタン30重量部の割合で攪拌し最終の混練水溶液を得た。
【0053】
比較品(発泡スチロール単体)と実施例1、2の発泡プラスチック複合断熱材を室内に設置し、それぞれ60℃の熱源を0.5時間照射させ、試料の裏面温度を測定したところ、比較品は24.3℃であったのに対し、実施例1の発泡プラスチック複合断熱材は21.2℃、実施例2の発泡プラスチック複合断熱材は11.5℃で、それぞれ比較品よりも3.2℃、13.8℃低く、比較品よりも発明品の断熱効果が高いことが確認された。特に実施例2の発泡プラスチック複合断熱材は、断熱効果が際立って高いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る発泡プラスチック複合断熱材は、住宅断熱材、断熱構造部品、食品容器などの用途に利用可能である。また、抗菌・断熱シート(屋根や室内天井など)、抗菌・結露防止構造部材、抗菌・断熱・保温容器などの用途の他、抗菌ビーズ商品、家畜・口蹄疫対応部材などの用途にも利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1,20,30 発泡プラスチック複合断熱材
2 芯材
3 遮熱断熱膜層
3A 表層部
3B 内層部
10 混練水溶液
11 バルーン粒子
12 水溶性樹脂(水溶性樹脂バインダー)
13 遮熱顔料
14 水
15 一次混錬物
16 バルーン粒子・遮熱顔料結合体
31 発泡性プラスチックビーズ
32 バルーン粒子ビーズ
33 遮熱顔料ビーズ
40 型
41 上型
42 下型
43 加熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡プラスチックから構成される芯材の少なくとも片面に、水溶性樹脂を遮熱バインダーとして遮熱顔料が多数配列された表層部と、水溶性樹脂をバインダーとしてバルーン粒子が多数配列された内層部を有する遮熱断熱膜層が形成されていることを特徴とする発泡プラスチック複合断熱材。
【請求項2】
表層部に、水溶性樹脂を遮熱バインダーとしてバルーン粒子と遮熱顔料が結合されたバルーン粒子・遮熱顔料結合体が多数配列されていることを特徴とする請求項1記載の発泡プラスチック複合断熱材。
【請求項3】
発泡プラスチックから構成される芯材の周囲に、前記遮熱断熱膜層が形成されていることを特徴とする請求項1記載又は請求項2記載の発泡プラスチック複合断熱材。
【請求項4】
遮熱断熱性膜層の乾燥厚さが100〜3000μであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の発泡プラスチック複合断熱材。
【請求項5】
遮熱顔料として、酸化チタンまたは鉄クロムが用いられることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の発泡プラスチック複合断熱材。
【請求項6】
発泡プラスチックから構成される芯材の少なくとも片面に、水溶性樹脂により被覆された比重1未満のセラミック系またはガラス系の多数のバルーン粒子と、水溶性樹脂をバインダーとして比重1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子および比重1超の遮熱顔料が結合された多数のバルーン粒子・遮熱顔料結合体を含む混練水溶液を塗布し、乾燥させて、前記芯材の少なくとも片面に、表層部に水溶性樹脂を遮熱バインダーとしてバルーン粒子と遮熱顔料が結合されたバルーン粒子・遮熱顔料結合体が多数配列され、内層部に水溶性樹脂をバインダーとしてバルーン粒子が多数配列された遮熱断熱塗膜層を形成したことを特徴とする発泡プラスチック複合断熱材の製造方法。
【請求項7】
混練水溶液を得るにあたり、バルーン粒子100重量%に対し、水10〜55重量%、水溶性樹脂10〜80を混錬して一次混練水溶液を得、一次混練水溶液100重量%に対し、遮熱顔料1〜80重量%を混錬して最終の混練水溶液を得ることを特徴とする請求項6記載の発泡プラスチック複合断熱材の製造方法。
【請求項8】
上型と下型の中間位置に発泡性プラスチックビーズを多数配置し、発泡性プラスチックビーズ群の少なくとも上下いずれか片面または側面に、バルーン粒子に水溶性樹脂が被覆されたバルーン粒子ビーズを多数配置し、配置したバルーン粒子ビーズ群の外側に遮熱顔料に水溶性樹脂が被覆された遮熱顔料ビーズを多数配置し、次いで型を閉じて加熱することにより、中間のプラスチックビーズ群を発泡させて芯材を形成すると共に、芯材の少なくとも片面に、内層部に水溶性樹脂をバインダーとしてバルーン粒子が多数配列され、外層部に水溶性樹脂を遮熱バインダーとして遮熱顔料が多数配列された遮熱断熱膜層を形成した発泡プラスチック複合断熱成型品を得ることを特徴とする発泡プラスチック複合断熱材の製造方法。
【請求項9】
上型と下型の中間位置に発泡性プラスチックビーズを多数配置し、発泡性プラスチックビーズ群の周囲に、バルーン粒子に水溶性樹脂が被覆されたバルーン粒子ビーズを多数配置し、バルーン粒子ビーズ群の周囲に遮熱顔料に水溶性樹脂が被覆された遮熱顔料ビーズを多数配置し、次いで型を閉じて加熱することにより、中間のプラスチックビーズ群を発泡させて芯材を形成すると共に、芯材の周囲に、内層部に水溶性樹脂をバインダーとしてバルーン粒子が多数配列され、外層部に水溶性樹脂を遮熱バインダーとして遮熱顔料が多数配列された遮熱断熱膜層を形成した発泡プラスチック複合断熱成型品を得ることを特徴とする発泡プラスチック複合断熱材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−14037(P2013−14037A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147053(P2011−147053)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(508130661)スターハード株式会社 (7)
【出願人】(511161236)
【出願人】(511161247)
【Fターム(参考)】