説明

発泡プリント及び発泡体

【課題】元になる模様や図柄を作成者の意図する形状として正確に描き出し、得られた模様や図柄の形状に基づいて一定の高さで一定の形状の立体形状を天然皮革の表面に形成した天然皮革の提供。
【解決手段】直径が150μm以下の微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を天然皮革の表面にプリントし、模様や図柄を天然皮革の表面にプリントしている天然皮革を、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱して、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分を立体形状とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮革の表面に熱膨張性マイクロカプセルにより形成される発泡体による発泡プリントに関するするものである。
【背景技術】
【0002】
皮革は特性が優れているところから人々の生活に用いる製品の材料として積極的に取り入れられてきた。装飾を施す観点から皮革の表面に色付け、模様をつけるなどして、表現の多様化が行なわれてきた。具体的には以下のものが知られている。
(1)エンボスと呼ばれている型押しによる模様を形成するもの(特許文献1特開平01−232990号公報、特許文献2特開平05−31267号公報、特許文献3 特開平07−59960号公報、特許文献4 特開平07−138600号、特許文献5 特開2000−104100号公報、特許文献6 特許3069064号、特許文献7 特開2002−188100号公報)。
型押しは型を用いて天然皮革の表面に型による凸部を形成するものである。形成される形状は、型により規制され、角張るものとなる。自由な表現には不向きであり、型押しによる模様であり、形状の変化は乏しく、同じ模様の繰り返しとなることが多く、又その表面は光の反射も一方的なものであり、模様全体から受ける印象は変化に乏しく、製作者の自由な表現を行う制作意欲や天然皮革の製品を購入する利用者の要求を満たすことはない。
【0003】
(2)高度な図柄や模様を描く手段としてはプリント技術が用いられてきた。具体的には、グラビア印刷、捺染、ローラープリント、転写、手描き、ろうけつ染め、絞り染め、ぼかし塗り、シルクスクリーンなどの方法があり、個々の技術の内容に応じて採用される。
又、図柄を描く場合においては、(1)写真、イラスト、絵図柄、文字等をコンピューター処理したデジタル画像データを元に転写シート加工処理、皮革への転写プリント処理を行うこと、同じ画像データを元にしたCADデータに基づき立体(エンボス)加工用の立体型製作を行い、加湿軟化処理を施した皮革に立体型製作によって得た立体型により立体成形処理をし、乾燥(固定化)処理を経て装飾化と立体(エンボス)化すること、(2)下絵となる写真、イラスト、絵図柄、文字等をコンピュータ処理したデジタル画像データを元にCADデータ4を作成し、これにより上型(雄型)や下型(雌型)等、皮革用成形型の立体型製作を行うこと、一方皮革に加湿軟化処理を施し、先の立体型製作によって得た立体型によって皮革を立体(エンボス)形に立体成形処理(塑性成形)をし、乾燥(固定化)処理を施し、その皮革に前記の画像データをもとに緻密な装飾をインクジェットによりプリント処理することで立体装飾された皮革製品を得ること、又は(3)写真、イラスト、絵図柄、文字等の下絵となる画像等をデジタル画像データを基にポジフィルム、シルクスクリーン印刷用の製版加工、皮革へのシルクスクリーン印刷、加湿軟化処理を行い、次に、画像CADデータを立体(エンボス)加工用の立体型製作に利用して、立体成形処理、乾燥(固定化)処理、仕上げ塗装等を経て、シルクスクリーン印刷と立体(エンボス)化が一体化することによる装飾的、且つ造形度の高い皮革製品を得ること(特許文献8 特開2002−188100号公報)が知られている。この場合の立体化はエンボス化により達成しようとするものである。
これらは、工程が煩雑であり製品を仕上げるまでに多大な人手と時間を要する。近年インクジェットを用いるインクジェットプリンタにより、対象とする天然皮革に高い精度でインクを付着させる手段も提案されている。インクジェットプリンタに用いられるインクでは皮革地に、インクが拡散しやすく、鮮明精細な画像が得られなかったとして、皮革素材からなる基材上に水性下塗り剤層を有し、さらにその上にアルミナ水和物を含有する多孔質インク受容層を有するインクジェット描画用皮革(特許文献9 特開平9−59700号公報)も行なわれている。
又、表面を削り取るヌバックである模様を形成する、型押しにより生じた凹凸状皮革の凸部分の表面を削り取ることにより下地のヌバックを表すと共に、その部分の厚みを絶対的に減少させ、次いで皮革に水分を含ませることにより圧縮されていた凹部分を本来の厚みに戻す皮革(特許文献10 特開2001−123200号公報)などがる。
【0004】
以上の天然皮革表面処理に関する技術を用いると、製作者が意図しているように模様や図柄を描くことができる。現在、天然皮革の表面に描き出した模様や図柄をもとに、エンボス化などの限られた方法により天然皮革の表面の立体化が実現されている。逆にいうと、天然皮革の表面の立体化はエンボス化により可能になるだけである。その意味では天然皮革の表面に製作者が思い描く立体形状を得ていないということになる。したがって、(1)元になる模様や図柄を作成者の意図する形状として正確に描き出すこと、及び(2)得られた模様や図柄の形状に基づいて正確に立体形状を天然皮革の表面に形成した天然皮革が求められている。
【0005】
天然皮革の表面に発泡体による図柄を形成することが従来から知られている。
例えば、身近にある袋物の表面に発泡剤を含有する染料で絵画、模様などをプリントして発泡させる考案であり、発泡後に防水加工を行う考案(特許文献11 実開61−159350号公報、実願60−43585号)がある。
この考案で言う、絵画及び模様などをプリントすることは、絵画及び模様などを描くことであり、元になる模様や図柄を作成者の意図する形状として正確に描き出すこと意味していない。又、得られた模様や図柄の形状に基づいて正確に立体形状を天然皮革の表面に形成した天然皮革というものでもない。
他の事例として以下の通りである。
厚さ200〜1000μmの銀面層を有する天然皮革の表面に、ホットメルトウレタンプレポリマーとウレタン硬化剤の反応により形成されるポリウレタン樹脂からなり、凹凸模様を有する厚さ50〜300μmの発泡層が積層され、さらにその表面に厚さ10〜100μmの保護層が、発泡層が有する凹凸模様を消失させること無く積層されている皮革素材(特許文献12 特開2008−265300号公報)では皮革表面にポリウレタン発泡層を形成すること述べている。この発明では、バフ加工した皮革表面に発泡層を設けることを特徴としている。発泡層の表面の凹凸は皮革表面のしぼなどを反映しているものとなっている。元になる模様や図柄を作成者の意図する形状として正確に描き出すこと、得られた模様や図柄の形状に基づいて正確に立体形状を天然皮革の表面に形成した天然皮革を得るというものではない。
【0006】
又、車両用の内装用に用いられる天然皮革などの表皮材付き熱可塑性樹脂にあっては、表皮材と該表皮材に一体的に積層された未発泡の発泡剤と該発泡剤を分散保持する熱可塑性樹脂とを含むシート状の基材からなるシートの熱可塑性樹脂とを含むシート状の基材の発泡体を形成しコールドプレスする表皮材付き熱可塑性樹脂成形体(特許文献13 特開2002−19046号公報)とすること、自動車などの天然皮革を用いる皮革に関しては、発泡体層を形成する場合する場合には表皮材である皮革と裏打ち材の間にウレタン発泡層を設けることが行われている(特許文献14 特開平9−123267号公報)。このことから明らかなように皮革表面に直接発泡体を設けることは行われていない。
【0007】
ブタン等の揮発性有機化合物を内包したマイクロカプセルを含有している合成樹脂系処理剤を、熱可塑性合成樹脂を主成分とするシート状物上に、全面若しくは任意の模様状に積層し、該処理剤中に含有せしめたマイクロカプセルの膨張と熱可塑性樹脂の軟化とを同時に進行させることにより、該合成樹脂層に微細な凹凸を持たせるシート状の製造方法(特許文献15 特開平2−76735号公報)では、シート状物としての取り扱いについて述べているものであり、シート状物とは形状が相違する天然皮革については言及していない。この公報で引用する発明(特許文献16特開62−28481号公報)においても壁紙について述べるものであり、天然皮革については開示していない。
【0008】
しっとり感やさらさら感等の好触感および非常にソフトな弾性感や硬めの弾性感等を有する塗装体である車両の内装材について、親水性ポリウレタンポリオールを含有する主剤と親水性ポリイソシアネートを含有する硬化剤と整泡剤と発泡剤と場合により更に添加剤とを含有する下塗り用水系2液型ポリウレタン塗料組成物とこの下塗り用水系2液型ポリウレタン塗料組成物を用いた好触感塗装体(特許文献17 特開2005−297200号公報、特許文献18 特開2004−285341号公報)では、親水性ポリウレタンポリオールを含有する主剤と親水性ポリイソシアネートを含有する硬化剤からなるポリウレタンによる成形体層をのべるものであり、天然皮革の表面に形成する模様などの発泡層を述べるものではない。
【特許文献1】特開平1−232990号公報
【特許文献2】特開平5−31267号公報
【特許文献3】特開平07−59960号公報
【特許文献4】特開平07−138600号
【特許文献5】特開2000−104100号公報
【特許文献6】特許3069064号
【特許文献7】特開2002−188100号公報
【特許文献8】特開2002−188100号公報
【特許文献9】特開平9−59700号公報
【特許文献10】特開2001−123200号公報
【特許文献11】実開昭61−159350号公報、実願昭60−43585号
【特許文献12】特開2008−265300号公報
【特許文献13】特開2002−19046号公報
【特許文献14】特開平9−123267号公報
【特許文献15】特開平2−76735号公報
【特許文献16】特開62−28481号公報
【特許文献17】特開2005−297200号公報
【特許文献18】特開2004−285341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、(1)元になる模様や図柄を作成者の意図する形状として正確に描き出すこと、及び(2)得られた模様や図柄の形状に基づいて一定の高さで一定の形状の立体形状を天然皮革の表面に形成した天然皮革を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題について鋭意研究し、以下の点を明らかにし、前記課題を解決できた。
1 (1)元になる模様や図柄を作成者の意図する形状として正確に描き出すことを達成するめには、模様や図柄を正確に天然皮革の表面にプリントすることが必要とされる。従来知られているプリント技術を採用することが有効である。プリント技術には、グラビア印刷、スクリーン捺染、ローラー捺染、転写捺染などの方法が採用することに達成される。
(2)得られた模様や図柄の形状に基づいて正確に立体形状を天然皮革の表面に形成した天然皮革を得るためには、発泡倍率が高くなく、直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて、模様や図柄を天然皮革の表面にプリントし、模様や図柄の部分を、熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱すると、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより、模様や図柄の部分が一定の高さ及び一定形状に保たれた立体形状を天然皮革の表面に形成した天然皮革を得ることができる。
2 前記内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルについては、いくつもの内容のものが知られているが、以下のものが有効である。
(ア)水系乳化重合方式で得られる5〜50μmの粒子径で、中空状微小球体からなり、外殻(シェル)はアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等の単独又は複数種からなる重合体及び又は共重合体で、熱可塑性を有する素材で構成されるものを使用できる(特許第3881181号記載のものであり、熱膨張性マイクロカプセルの公知のものを用いることができるとしている)。発泡条件は 180℃で1分程度であり、発泡倍率は4.5倍程度である。
(イ)水系乳化重合方式で得られる5〜50μmの粒子径で、重合体から形成された外殻が、シランカップリング剤を有する有機ケイ素化合物であり、塩化ビニリデン(共)重合体及び(メタ)アクリロニトリル(共)重合体からなる群より選ばれた重合体から形成されている熱発泡性マイクロカプセル(特開2002−363537号公報)を使用することができる。発泡温度145℃での発泡倍率は、40倍であり、他の材料との接着性が向上し、発泡体粒子間の融着が抑制され、高温での熱履歴を受けてもシャープな発泡挙動を示す。
(ウ)水系乳化重合方式で得られる5〜50μmの粒子径で、重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ熱発泡性マイクロスフェアーにおいて、 重合体から形成された外殻が、重合性単量体と、該重合性単量体を基準として1重量%超過5重量%以下の割合の架橋性単量体とを重合してなる重合体から形成されたものであり、かつ、 最大発泡倍率が5倍以上である熱発泡性マイクロカプセルであり、重合性単量体が、重合体から形成された外殻が、(a) 重合性単量体として塩化ビニリデン単独もしくは塩化ビニリデンとそれと共重合可能なビニル系単量体との混合物と、架橋性単量体とを重合してなる塩化ビニリデン(共)重合体、または(b) 重合性単量体として(メタ)アクリロニトリル単独もしくは(メタ)アクリロニトリルとそれと共重合可能なビニル系単量体との混合物と、架橋性単量体とを重合してなる(メタ)アクリロニトリル(共)重合体から形成されたものである。170℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約50倍としている(特開2002−012693号公報)。
3. 本発明の概要は以下の通りである。
(1)直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を表面にプリントしている天然皮革である天然皮革。
(2)前記天然皮革の表面は、(a)前処理工程、なめし工程及び再なめし、染色及び加脂工程及び乾燥工程を経た天然皮革に、更に、ベースコート層を形成している天然皮革、又は(b)前処理工程、なめし工程及び再なめし、染色及び加脂工程及び乾燥工程を経た天然皮革に、更に、ベースコート層及びカラーコート層を形成している天然皮革のいずれかである天然皮革。
(3)前記直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を表面にプリントしている天然皮革が、直径が5〜50μm以下の微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いてシルクスクリーンにより模様や図柄を表面にプリントしている天然皮革である(1)記載の天然皮革。
(4)前記直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて、シルクスクリーンにより模様や図柄を表面にプリントしていることが、顔料又は染料が添加されている、直径が5〜50μm以下の微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて、シルクスクリーンにより色分けされている模様や図柄を表面にプリントしている天然皮革である(3)記載の天然皮革。
(5)前記顔料又は染料が添加されている、直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いてシルクスクリーンにより色分けされている模様や図柄を表面にプリントしていることが、前記顔料又は染料が添加されている、直径が5〜50μm以下の微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクをシルクスクリーンにより色分けされて模様や図柄を表面に複数回にわたりプリントしている天然皮革である(3)記載の天然皮革。
(6)(1)及び(3)から(5)何れか記載の模様や図柄を天然皮革の表面にプリントしている天然皮革を、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱して、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分を立体形状とする天然皮革。
(7)前記内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱しては、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱されている平板を2〜6kgf/cmの圧力下に天然皮革を熱プレスすることである(6)記載の天然皮革。
(8)前記熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分を模様や図柄の部分の立体形状が、100μmから1000μmの高さの立体形状であることである(6)記載の天然皮革。
(9)前記内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱して、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分を立体形状とすることに先立って、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクによる模様や図柄の部分を乾燥状態とすることを特徴とする(6)記載の天然皮革。
(10)前記天然皮革の表面は、(a)前処理工程、なめし工程及び再なめし、染色及び加脂工程及び乾燥工程を経た天然皮革に、更に、ベースコート層を形成している天然皮革、又は(b)前処理工程、なめし工程及び再なめし、染色及び加脂工程及び乾燥工程を経た天然皮革に、更に、ベースコート層及びカラーコート層を形成している天然皮革のいずれかであり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱して、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分の成形形状が形成され、成形形状の表面に、前記天然皮革の表面に対応して、(a)カラーコート層及びトップコート層を形成する、又は(b)トップコート層を形成する(6)記載の天然皮革。
(11)前記直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を表面にプリントしている天然皮革は、予めパーホレーションが形成されている(6)記載の天然皮革。
(12)(6)又は(11)いずれか記載の天然皮革からなるカーシート用、インパネ用又は自動車内装部品用天然皮革。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、模様や図柄を作成者の意図する形状を、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて、天然皮革の表面にプリントし、模様や図柄の部分を熱膨張性マイクロカプセルを発泡温度で加熱して発泡化することにより一定の高さで一定の形状の立体形状を形成した天然皮革を得ることかできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明について、請求項の記載にしたがって、以下に具体的に説明する。
【0013】
(1)直径が5〜50μm以下の微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を天然皮革の表面にプリントしている天然皮革である。
【0014】
前記樹脂エマルジョンのインクを構成する成分は、(a)直径が5〜50μmである微粒子状で、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセル及び、(b)樹脂エマルジョンインクである。
【0015】
熱膨張性マイクロカプセルは、外殻が、ガスバリア性が良好な熱可塑性樹脂により形成されており、外殻の熱可塑性樹脂を加熱すると軟化する。外殻の内側に詰め込まれている発泡剤には、重合体の軟化点以下の温度でガス状になるものを選択する。熱膨張性マイクロカプセルを加熱すると、発泡剤が気化して膨脹する力が外殻に働くが、同時に、外殻を形成する重合体の弾性率が急激に減少する。そのため、ある温度を境にして、急激な膨脹が起きる。この温度を発泡温度という。すなわち、熱膨張性マイクロカプセルは、発泡温度に加熱すると、それ自体が膨脹して、独立気泡体(発泡体粒子)を形成する特性を有している。
【0016】
具体的な熱膨張性マイクロカプセルを挙げると以下の通りである。
(ア)水系乳化重合方式で得られる5〜50μmの粒子径で、中空状微小球体からなり、外殻(シェル)はアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等の単独又は複数種からなる重合体及び又は共重合体で、熱可塑性を有する素材で構成されるものを使用できる(特許第3881181号記載のものであり、熱膨張性マイクロカプセルの公知のものを用いることができるとしている)。発泡条件は 180℃で1分程度であり、発泡倍率は4.5倍程度である。
(イ)水系乳化重合方式で得られる5〜50μmの粒子径で、重合体から形成された外殻が、シランカップリング剤を有する有機ケイ素化合物であり、塩化ビニリデン(共)重合体及び(メタ)アクリロニトリル(共)重合体からなる群より選ばれた重合体から形成されている熱発泡性マイクロカプセル(特開2002−363537号公報)を使用することができる。発泡温度145℃での発泡倍率は、40倍であり、他の材料との接着性が向上し、発泡体粒子間の融着が抑制され、高温での熱履歴を受けてもシャープな発泡挙動を示す。
(ウ)水系乳化重合方式で得られる5〜50μmの粒子径で、重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ熱発泡性マイクロスフェアーにおいて、 重合体から形成された外殻が、重合性単量体と、該重合性単量体を基準として1重量%超過5重量%以下の割合の架橋性単量体とを重合してなる重合体から形成されたものであり、かつ、 最大発泡倍率が5倍以上である熱発泡性マイクロカプセルであり、重合性単量体が、重合体から形成された外殻が、(a) 重合性単量体として塩化ビニリデン単独もしくは塩化ビニリデンとそれと共重合可能なビニル系単量体との混合物と、架橋性単量体とを重合してなる塩化ビニリデン(共)重合体、または(b) 重合性単量体として(メタ)アクリロニトリル単独もしくは(メタ)アクリロニトリルとそれと共重合可能なビニル系単量体との混合物と、架橋性単量体とを重合してなる(メタ)アクリロニトリル(共)重合体から形成されたものである。170℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約50倍としている(特開2002−012693号公報)。
【0017】
熱膨張性マイクロカプセルは、水系媒体中で、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を懸濁重合する方法により製造することができる。
【0018】
熱発泡性マイクロカプセルの平均粒径は、5〜50μmの範囲内にある。熱発泡性マイクロカプセルの含有量は、通常5〜50重量%、好ましくは7〜35重量%である。
熱発泡性マイクロカプセルに含まれる発泡剤は、低沸点有機溶剤、加熱により分解してガスを発生する化合物などがあり、これらの中でも、低沸点有機溶剤が好ましい。具体的には、高級第一アルコール(例えばn−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、n−デカノール等)、高級第二アルコール(4−メチル−2−ペンタノール、2−オクタノール等)、2価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールを挙げることができる。
発泡剤は、外殻を形成する重合体の軟化点以下の温度でガス状になるものから選択される。
【0019】
樹脂エマルジョンとしては、水性樹脂エマルジョンである、特開平7−188502号公報に記載のエチレン−ビニルエステル系共重合体のエマルジョンを用いることができる。ビニルエステルとしては、たとえば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどを挙げることができる。
【0020】
エチレン−ビニルエステル系共重合体のエマルジョンには、エチレンとビニルエステル以外の成分として、メタクリル酸エステルを含んでもよい。メタクリル酸エステルとしては、たとえばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリルなどを挙げることができる。これらは、その一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
エチレン−ビニルエステル系共重合体のエマルジョンは、官能性ビニル単量体を含有してもよい。官能性ビニル単量体としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸(半エステルを含む)、マレイン酸(半エステルを含む)などのカルボキシル基含有モノマー及びその無水物などをあげることができる。
【0022】
エチレン−ビニルエステル系共重合体のエマルジョンは、通常、乳化重合により得られる。ここで、乳化分散剤中の保護コロイドとして平均重合度200〜3000、好ましくは250〜2500のポリビニルアルコールを用いて乳化重合することが好ましい。
【0023】
樹脂エマルジョンには、アクリル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、スチレン−ブタジエン樹脂エマルジョンなどを用いることもできる。
【0024】
内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを各成分の組成比は、熱膨張性マイクロカプセル100重量部に対して、水性樹脂エマルジョン1〜200重量部、好ましくは2〜200重量部、より好ましくは20〜100重量部と、水1〜300重量部、好ましくは20〜250重量部、より好ましくは20〜200重量部である。
樹脂エマルジョンインクには、熱膨張性マイクロカプセルに流動性を付与し、インクが滑らかになるように添加される成分(界面活性剤、エチレングリコール)及び水から構成される。インクを染色するために色に対応した顔料を含むものである。
マイクロカプセルを含む組成物塗工材の発明は特許第3881181号(大日精化工業)については、これらは大日精化株式会社製、New Dyfoam W−46NFを購入して用いることができる。これは発泡インク(白色粘稠、粘度50,000〜65、000mPa・s)である。
【0025】
プリントするためには、グラビア印刷、スクリーン捺染(シルクスクリーンとも言う。デザインにしたがって特定の部分が透けた部分をエマルジョンインクが通り天然皮革に模様や図柄を印捺する)、ローラー捺染(ローラープリントとも言う。円筒形ローラーに彫られた窪みにエマルジョンインクを入れ込み、ローラーを回転させながら、天然皮革圧着させて模様や図柄を印捺する。)、転写捺染(分散性がよいエマルジョンインクにより転写紙に印刷した模様や図柄を天然皮革と密着させて、乾熱プレスにより模様や図柄を天然皮革に写す。)など方法が採用される。
いずれもよく知られている方法であり、公知の方法が採用できる。
【0026】
模様や図柄は以下の通りである。
模様や図柄としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、サイン、ロゴ、記号、抽象模様等が挙げられる。図柄は実際に存在する動物、植物、人物、風景、自動車などの交通手段、建物などを模写したもの、或いは絵画写真などを及びその一部を取り出すこともできる。
絵柄模様は、発泡壁紙の種類に応じて選択できる。
【0027】
天然皮革製造工程は以下の通りである。
天然皮革を製造する工程は、皮をなめすための準備工程、クロム又はクロムフリーなめし剤によるなめし工程、芳香族スルホン酸(主としてナフタレン及びフェノールのスルホン酸)のホルムアルデヒド縮合物などの合成なめし剤による再なめし・染色・加脂工程とこれに続く乾燥工程、及び仕上げ工程からなる一連の工程を得て製造される天然皮革であって、再なめし・染色・加脂工程とこれに続く乾燥工程がセッター工程、がら干し乾燥工程、味取り工程、バイブレーション工程及びバフ工程からなり、仕上げ工程のプレヒート工程を経て、裏のり工程を経た後、天然皮革をカーシートや自動車内装用部品に用いた場合の耐摩耗性を向上させるために以下の三層の形成をおこなう。ベースコート層を形成する工程、型押しをする工程、カラーコート層を形成する工程、トップコート層を形成する工程、バイブレーション工程、裏すき工程を経て天然皮革を製造するための一連の工程は終了する。
これらの工程は個々の条件及び工程の組み合わせなどについては、改良が進められているものの、各工程で行う操作自体は、独立しており、ほぼ定まっているといってよく、大きな変動はない。
【0028】
直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄をプリントする場合には、天然皮革製造工程中の天然皮革の表面に形成する。
天然皮革製造工程中の天然皮革の表面は、以下2通りの場合があり、この中から選ばれる。
【0029】
(2)前記天然皮革の表面は、(a)前処理工程、なめし工程及び再なめし、染色及び加脂工程及び乾燥工程を経た天然皮革に、更に、ベースコート層を形成している天然皮革、又は(b)前処理工程、なめし工程及び再なめし、染色及び加脂工程及び乾燥工程を経た天然皮革に、更に、ベースコート層及びカラーコート層を形成している天然皮革のいずれかである。
【0030】
内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄をプリントする場合には、本来の天然皮革の表面はわずかではあるが凹凸を有しており、またしぼが形成されている。天然皮革の表面は平坦な面ではなく、下地の天然皮革に樹脂エマルジョンによるインクをプリントすると、下地の天然皮革にインクがしみ込むことにより安定したプリントを得ることができない。平坦な面を利用するという観点から、以下の二つの場所があり、そのどちらか選択される。
【0031】
(a)前処理工程、なめし工程及び再なめし、染色及び加脂工程及び乾燥工程を経た天然皮革に、更に、ベースコート層を形成している天然皮革、又は(b)前処理工程、なめし工程及び再なめし、染色及び加脂工程及び乾燥工程を経た天然皮革に、更に、ベースコート層及びカラーコート層を形成している天然皮革。
【0032】
前処理工程、なめし工程及び再なめし、染色及び加脂工程及び乾燥工程を経た後の天然皮革に対して、(a)ベースコート層の形成、及び(b)ベースコート層及びカラーコート層の形成を行う。以下に各コート層の形成について具体的に述べる。
【0033】
(ア)ベースコート層の形成
ベースコート層は、塗膜層の最下層にあたり、皮革の表面にある凹凸を平らにし、安定して上部に層を形成する準備のための層である。この層を形成するにあたっては、樹脂、顔料、助剤、触感剤及レべリング剤及び水からなる組成物を皮革の表面に塗布する。樹脂には、二液性ポリウレタン樹脂が用いられる。顔料には色付けしたい色の顔料を用いる。助剤には界面活性剤、増粘剤、調整剤、マット剤などが含まれる。塗布方法には水溶液を含んだ状態で、はけ塗り、スプレー、カーテン塗装、ロール塗装が適宜選択して使用される。塗布量は70から150g/m、塗布後に温風を表面にあてて水分を蒸発させる。膜厚は20〜50μmである。
次いで、型押しを行う。型押しは、革表面に高圧プレスにより凹凸を出す加工で、革にさまざまな模様(シボ)をつけるものである。次に、空打ち工程そしてステーキング工程により、皮革繊維をほぐし風合いを調整する。
【0034】
(イ)カラーコート層の形成
ベースコート層表面上にカラーコート層を形成する。カラーコート層は、塗装幕の中間層にあたり、皮革を着色するための顔料及び染料を存在させるための層であって、皮革から見てベースコートの上部に設けられている。この層を形成するにあたっても、樹脂、顔料、助剤、架橋剤、触感剤及び水からなる組成物を皮革の表面に塗布する。樹脂には、二液性ポリウレタン樹脂が用いられる。顔料には色付けしたい色の顔料を用いる。助剤には界面活性剤(レベリング剤等)、増粘剤、調整剤などが含まれる。塗布方法には水溶液を含んだ状態で、はけ塗り、スプレー、カーテン塗装、ロール塗装が適宜選択して使用される。塗布量は20〜70g/m、塗布後に温風を表面にあてて水分を蒸発させる。膜厚は5〜25μmである。
【0035】
(ウ)トップコート層は、カラーコート層の表面に形成する。トップコート層は、塗装膜の最上層にあたり、耐摩耗性などの耐久性や、良好な外観(色、つや)、触感を付与するものである。トップコート層の形成には、樹脂、架橋剤、つや消し剤、顔料、触感剤を含む水性の組成物を用いる。樹脂としては、二液性ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂などが用いられる。塗布方法には水溶液を含んだ状態で、はけ塗り、スプレー、カーテン塗装、ロール塗装が適宜選択して使用される。塗布量は20〜70g/m、塗布後に温風を表面にあてて水分を蒸発させる。膜厚は5〜25μmである。
【0036】
(3)前記直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を天然皮革の表面にプリントして天然皮革が、直径が150μm以下の微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いてシルクスクリーンにより模様や図柄を表面にプリントしている天然皮革である。
【0037】
前記直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を天然皮革の表面にプリントする場合にはシルクスクリーンにより模様や図柄を表面にプリントすることが適している。
【0038】
シルクスクリーン法により皮革表面に模様や図柄をプリントする場合には、シルクスクリーン(現在ではポリエステル製のスクリーンを用いる)の下に模様や図柄の型紙を置き、その下に天然皮革をおいて、シルクスクリーンの表面から、直径が5〜50μmの微粒子状であり、かつ内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンによるインクを、へらで塗布する。型紙は模様や図柄の色に応じて変更して天然皮革の上にインクを塗布する。
シルクスクリーンの型を作成することは以下の通りである。
シルクスクリーンの型をつくる。模様や図柄は、コンピュータに模様や図柄のデータを入力し、その形状を描かせて形成する。
【0039】
シルクスクリーンはポリエステル製のものを用いる。
スクリーンは目開き100メッシュのものを用いる。70メッシュでは1回で塗布できるインク量が多くなる点ではよいが、発泡プリント部の縁(輪郭)がぎざぎざになってしまう。100メッシュより細かいメッシュでは、1回で塗布できるインク量が少なく使いにくい。
【0040】
(4)前記直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて、シルクスクリーンにより模様や図柄を表面にプリントしていることが、顔料又は染料が添加されている、直径が5〜50μm以下の微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて、シルクスクリーンにより色分けされている模様や図柄を表面にプリントしている天然皮革。
【0041】
模様や図柄は色付けをすることにより多彩な内容を表現できる。この場合には、染料により着色も可能であるが、顔料を用いることが長期に安定させることができるので有効である。
【0042】
顔料については、例えば酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等の無機顔料;例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等の有機顔料が挙げられる。顔料の含有量は、樹脂成分100重量部に対して10〜50重量部程度が好ましく、15〜30重量部程度がより好ましい(以上壁紙の顔料。特開2008−81858号公報、0029より)。
【0043】
(5)前記顔料又は染料が添加されている、直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いてシルクスクリーンにより色分けされている模様や図柄を表面にプリントしていることが、前記顔料又は染料が添加されている、直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクをシルクスクリーンにより色分けされて模様や図柄を表面に複数回にわたりプリントしている天然皮革。
【0044】
前記顔料又は染料が添加されている、直径が5〜50μm以下の微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクをシルクスクリーンにより色分けされて模様や図柄を表面に複数回にわたりプリントすることが有効である。
【0045】
樹脂エマルジョンによる天然皮革に対する1回あたりの塗布量は、単位面積あたり35〜50μm(塗布量の高さ)である。この程度の塗布量では熱膨張性マイクロカプセルの発泡操作により成形体を得ようとする場合には十分高さの成形体を得ることができない。そこで、樹脂エマルジョンの塗布操作を複数回行う必要がある。2回の塗布は必要であり、その場合には、55〜65μm程度の高さとすることができる。得ようとする成形体の高さにより、決定されるが、成形体の最大の高さを得ようとする場合には、4回程度の塗布が必要となる。安定した成形体を、得ようとする場合には、5回以上の塗布を行っても安定した成形体を得ることはできない。
【0046】
内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を表面にプリントする操作を複数回行った後に、模様や図柄の部分を発泡させることにより、発泡により形成される成形体は100μm〜1000μmの高さとすることができる。
100μmとすると、指で触って凹凸が感じられる程度の高さであり、1000μmを超えると、インクの角に指等がひっかかってインクが剥がれやすくなどの問題点が生ずる。1000μmの高さを得るためには4回程度にわたり、塗布する操作が必要となる。
【0047】
(6)(1)、及び(3)から(5)何れか記載の模様や図柄を天然皮革の表面にプリントしている天然皮革を、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱して、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分を立体形状とする天然皮革。
(1)、(3)から(5)記載の熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を天然皮革の表面にプリントしている天然皮革に対して、熱膨張性マイクロカプセル発泡温度以下に加熱すると、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分を立体形状とした天然皮革を得ることができる。
【0048】
熱膨張性マイクロカプセルを加熱すると、発泡剤が気化して膨脹する力が外殻に働くが、同時に、外殻を形成する重合体の弾性率が急激に減少する。そのため、ある温度を境にして、急激な膨脹が起きる。この温度を発泡温度という。すなわち、熱膨張性マイクロカプセルは、発泡温度に加熱すると、それ自体が膨脹して、独立気泡体(発泡体粒子)を形成する特性を有している。そこで、
直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を表面にプリントしている天然皮革の表面を、熱膨張性マイクロカプセル発泡温度以下に加熱することにより、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることができ、模様や図柄の部分を立体形状とした天然皮革を得ることができる。
発泡温度は、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクの内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルにより変化する。
【0049】
内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクの発泡温度は前記したとおりである。再度示すと以下の通りである。
(ア)水系乳化重合方式で得られる5〜50μmの粒子径で、中空状微小球体からなり、外殻(シェル)はアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等の単独又は複数種からなる重合体及び又は共重合体の場合には(特許第3881181号記載のものであり、熱膨張性マイクロカプセルの公知のものを用いるとしている場合)は、発泡条件は 180℃で1分程度であり、発泡倍率は4.5倍程度である。
(イ)水系乳化重合方式で得られる5〜50μmの粒子径で、重合体から形成された外殻が、シランカップリング剤を有する有機ケイ素化合物であり、塩化ビニリデン(共)重合体及び(メタ)アクリロニトリル(共)重合体からなる群より選ばれた重合体から形成されている熱発泡性マイクロカプセル(特開2002−363537号公報)の場合には、発泡温度は145℃であり、発泡倍率は40倍である。
(ウ)水系乳化重合方式で得られる5〜50μmの粒子径で、重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ熱発泡性マイクロカプセルにおいて、 重合体から形成された外殻が、重合性単量体と、該重合性単量体を基準として1重量%超過5重量%以下の割合の架橋性単量体とを重合してなる重合体から形成されたものであり、重合性単量体が、重合体から形成された外殻が、(a) 重合性単量体として塩化ビニリデン単独もしくは塩化ビニリデンとそれと共重合可能なビニル系単量体との混合物と、架橋性単量体とを重合してなる塩化ビニリデン(共)重合体、または(b) 重合性単量体として(メタ)アクリロニトリル単独もしくは(メタ)アクリロニトリルとそれと共重合可能なビニル系単量体との混合物と、架橋性単量体とを重合してなる(メタ)アクリロニトリル(共)重合体から形成されている場合には、170℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約50倍となる。(特開2002−012693号公報)。
【0050】
発泡により得られる成形体の性状は以下の通りである。
直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を天然皮革の表面にプリントし、天然皮革の表面に形成された模様や図柄の部分を熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱すると、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより、模様や図柄の部分を一定の厚さで一定形状の立体形状を形成することができる。熱膨張性マイクロカプセルは微粒子であり、かつ発泡倍率も小さいものを用いた結果、模様や図柄の部分を一定の厚さで一定形状の立体形状のものとなる。後述するように厚さは100μm〜1000μm程度である。又、一定形状は模様や図柄の部分を元の形状に保持するものとなる。
厚さについては内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクの重ね塗りの回数によって厚さを調節できる。
【0051】
(7)前記内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱しては、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱されている平板を2〜6kgf/cmの圧力下に天然皮革を熱プレスすることである(6)記載の天然皮革。
【0052】
前記(6)の熱膨張性マイクロカプセル発泡温度以下に加熱する操作は、条件を制御して以下の条件のもとで、行うことが重要である。熱膨張性マイクロカプセル発泡温度以下に加熱されている平板を2〜6kgf/cmの圧力下に天然皮革に押し付けて熱プレスすることにより、発泡操作を適切に行うことができる。この条件下に行うことにより模様や図柄の部分を均一に加熱することが可能となる。
【0053】
(8)前記熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分を模様や図柄の部分を立体形状とすることが、立体形状が100μmから1000μmの高さの立体形状とすることである天然皮革を得ることができる(請求項8)。
【0054】
マイクロカプセル発泡温度以下に加熱して熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分を模様や図柄の部分を立体形状とすることが、前記熱膨張性マイクロカプセル発泡温度以下に加熱して熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分を模様や図柄の部分を100μmから1000μmの高さの立体形状とすることにより、模様や図柄の部分に段差をつけることができるので、明確に区別ができることとなる。
【0055】
発泡により形成される成形体は100μm〜1000μmの高さとすることが適切である。100μmとすると、指で触って凹凸が感じられる程度の高さであり、1000μmを超えると、インクの角に指等がひっかかってインクが剥がれやすくなどの問題点が生ずる。
【0056】
(9)前記内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱して、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分を立体形状とすることに先立って、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクによる模様や図柄の部分を乾燥状態としたことにより得られる(6)記載の天然皮革。
【0057】
内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクによる模様や図柄の部分は発泡のための加熱を行う前に十分に乾燥させて行うことが必要である。
乾燥には加熱された空気を送り込むことにより行う。乾燥を十分に行わない場合には発泡が十分に行われない。具体的には40℃程度の熱板上で、その後、室温で24時間放置し乾燥処理を行う。均一に全部が乾燥した状態とすることが重要である。乾燥が十分でない部分が残ると、その部分は発泡が十分に行われない。
【0058】
(10)前記天然皮革の表面は、(a)前処理工程、なめし工程及び再なめし、染色及び加脂工程及び乾燥工程を経た天然皮革に、更に、ベースコート層を形成している天然皮革、又は(b)前処理工程、なめし工程及び再なめし、染色及び加脂工程及び乾燥工程を経た天然皮革に、更に、ベースコート層及びカラーコート層を形成している天然皮革のいずれかであり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱して、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分の立体形状が形成され、立体形状の表面に、前記天然皮革の表面に対応して、(a)カラーコート層及びトップコート層を形成する、又は(b)トップコート層を形成する(6)記載の天然皮革(請求項10)。
【0059】
直径が150μm以下の微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を表面にプリントしている天然皮革では、(2)で述べるように、(a)前処理工程、なめし工程及び再なめし、染色及び加脂工程及び乾燥工程を経た天然皮革に、更に、ベースコート層を形成している天然皮革、又は(b)前処理工程、なめし工程及び再なめし、染色及び加脂工程及び乾燥工程を経た天然皮革に、更に、ベースコート層及びカラーコート層を形成している天然皮革のいずれかの天然皮革に対して行う。
更に、ベースコート層及びカラーコート層を形成している天然皮革のいずれかであり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱することにより模様や図柄の部分の立体形状が形成される。その立体形状の表面に、前記(a)及び(b)の各コート層の形成に対応して、(a)カラーコート層及びトップコート層を形成する、又は(b)トップコート層を形成することにより、天然皮革の表面に形成した成形体を保護して、成形体を含めて天然皮革の表面が耐摩耗性を有する状態とする。
このようにコート層の間に立体形状を挟みこむ結果、立体形状は安定な状態に保たれ、同時に天然皮革の表面からはがれてしまうことを防止することができる。
【0060】
(11)前記直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を表面にプリントしている天然皮革は、予めパーホレーションが形成されているものである(6)記載の天然皮革(請求項11)。
【0061】
直径が150μm以下の微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を表面にプリントしている天然皮革は、予めパーホレーションが形成されている天然皮革である、エンボス加工が施されているもの、パーホレーションが形成されているものを用いることができる。パーホレーションの部分を避けて、又は場合によっては、パーホレーションがある部分を含めて、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱することにより模様や図柄の部分の立体形状が形成されることとなり、従来にない斬新なデザインを提供することができる。
【0062】
天然皮革にパーホレーションを設けることは、特開2004−197015号公報などに記載されている通りである。
【0063】
パーホレーションを具体的に形成する場合には以下の方法がある。
方法1
非プリント部のみにパーフォレーションを施す方法。
(1)乾燥工程を経た天然皮革の表面にベースコート層を形成し、直径が150μm以下の微粒子状であり、かつ内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンによるインクをシルクスクリーンにより模様や図柄をプリントする。その表面にカラーコート層及びトップコート層を設ける。
(2)プリント部分を避けて、パーフォレーションを施す。(孔径 0.8mm程度。孔間隔 5mm程度)
自動裁断機のヘッド(X−Y制御)にポンチを取り付けて孔をあけることにより、プリント部分を避けて、パーフォレーションを施すことができる。
(3)150℃の温度下にプリントをほどこした表面から平板熱プレスすることにより圧力2〜6kgf/cmの条件下に加熱した。その結果、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを発泡させて、500μmの成形体を得ることができた。
方法2
発泡プリント部、非プリント部の両方にパーフォレーションを施す方法。
(1)ベースコート層を形成し、次にカラーコート層を形成し、その表面に直径が5〜50μm以下の微粒子状であり、かつ内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンによるインクをシルクスクリーンにより模様や図柄をプリントする。其の表面にトップコート層を形成した後に、パーホレーションを行う。
(2)ベースコート層を形成し、その表面に直径が5〜50μmの微粒子状であり、かつ内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンによるインクをシルクスクリーンにより模様や図柄をプリントする。その表面にカラーコート層を形成した後に、パーホレーションを行う。
この場合は、従来のパンチングマシーンを使用できる。
パンチングピン300本を千鳥状にずらして2列に配した80cm幅の型を使用し、パンチングピンを上下させ皮革を1方向に送り進めていく機構で、皮革全面に等間隔に孔の開いたパーフォレーション皮革が連続的に製造される(金型溶接技術により隣合う穴端部最小間隔は3.5mm、開口率5〜10%)。前記(3)と同様の手順により500μmの成形体を得た。
【0064】
(12)前記(6)又は(11)いずれか記載の天然皮革からなるカーシート用、インパネ用又は自動車内装部品用天然皮革(請求項12)。
【0065】
前記(6)の天然皮革は、模様や図柄を天然皮革の表面にプリントしている天然皮革を、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱して、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分を立体形状とする天然皮革であり、又(11)の天然皮革は、前記直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を表面にプリントしている天然皮革は、予めパーホレーションが形成されている天然皮革であり、カーシート用、インパネ用又は自動車内装部品用天然皮革として、新しい意匠の分野を切り開くことができるものである。
【0066】
以下に実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施例により限定を受けるものではない。
【実施例1】
【0067】
(a)天然皮革を製造する工程として、皮をなめすための準備工程、クロム又はクロムフリーなめし剤によるなめし工程、合成なめし剤による再なめし・染色・加脂工程とこれに続く乾燥工程、及び仕上げ工程からなる一連の工程を得て製造される天然皮革であって、再なめし・染色・加脂工程とこれに続く乾燥工程がセッター工程、がら干し乾燥工程、味取り工程、バイブレーション工程及びバフ工程からなり、仕上げ工程のプレヒート工程を経た天然皮革に対して、大日精化工業株式会社製、New Dyfoam W−46NFの直径が150μm以下の微粒子状であり、かつ内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョン(主成分:エチレン酢酸ビニル樹脂、ガスを含む熱膨張性マイクロカプセル、エチレングリコール、界面活性剤、ミネラルスピリットからなる成分)を用いて、細線をシルクスクリーンを介して二回塗りにより60μmの高さにプリントした。この表面にベースコート層、カラーコート層及びトップコート層を施した。
(b)150℃の温度下にプリントをトップコート層の表面から平板熱プレスすることにより圧力5kgf/cmの条件下に加熱した。その結果、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを発泡させて、500μmの立体形状を得ることができることを確認した。図1に結果を示した。細い曲線を描き、これを発泡させたものである。
【実施例2】
【0068】
(a)天然皮革を製造する工程として、皮をなめすための準備工程、クロム又はクロムフリーなめし剤によるなめし工程、合成なめし剤による再なめし・染色・加脂工程とこれに続く乾燥工程、及び仕上げ工程からなる一連の工程を得て製造される天然皮革であって、再なめし・染色・加脂工程とこれに続く乾燥工程がセッター工程、がら干し乾燥工程、味取り工程、バイブレーション工程及びバフ工程からなり、仕上げ工程のプレヒート工程を経た天然皮革に対して、ベースコート層を形成した。
その表面に大日精化工業株式会社製、New Dyfoam W−46NFの直径が150μm以下の微粒子状であり、かつ内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョン(主成分:エチレン酢酸ビニル樹脂、ガスを含む熱膨張性マイクロカプセル、エチレングリコール、界面活性剤、ミネラルスピリットからなる成分)を、図柄をシルクスクリーンを介して二回塗りにより60μmの高さにプリントした。この表面にカラーコート層及びトップコート層を施した。
(b)150℃の温度下にプリントをトップコート層の表面から平板熱プレスすることにより圧力5kgf/cmの条件下に加熱した。その結果、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを発泡させて、500μmの立体形状を得ることができた。ほぼ一定の厚みを有しており、又、形状もプリントした形状を残すものであり、一定の形状を保持していることが分かった。図2にぐたい例を示した。曲線に太い部分と細い部分があり、発泡させている。黒い部分は、発泡していることを示している。
【実施例3】
【0069】
(a)天然皮革を製造する工程として、皮をなめすための準備工程、クロム又はクロムフリーなめし剤によるなめし工程、合成なめし剤による再なめし・染色・加脂工程とこれに続く乾燥工程、及び仕上げ工程からなる一連の工程を得て製造される天然皮革であって、再なめし・染色・加脂工程とこれに続く乾燥工程がセッター工程、がら干し乾燥工程、味取り工程、バイブレーション工程及びバフ工程からなり、仕上げ工程のプレヒート工程を経た天然皮革に対して、ベースコート層及びカラーコート層を形成した。
その表面に大日精化工業株式会社製、New Dyfoam W−46NFの直径が5〜50μmの微粒子状であり、かつ内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョン(主成分:エチレン酢酸ビニル樹脂、ガスを含む熱膨張性マイクロカプセル、エチレングリコール、界面活性剤、ミネラルスピリットからなる成分)を、図柄をシルクスクリーンにより二回塗りにより60μmの高さにプリントした。この表面にトップコート層を施した。
(b)150℃の温度下にプリントをトップコート層の表面から平板熱プレスすることにより圧力5kgf/cmの条件下に加熱した。その結果、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを発泡させて、300μmの立体形状を確認した。
4μmの立体形状を得ることができた。ほぼ一定の厚みを有しており、又、形状もプリントした形状を残すものであり、一定の形状を保持していることが分かった。
比較例1
【0070】
(a)天然皮革を製造する工程として、皮をなめすための準備工程、クロム又はクロムフリーなめし剤によるなめし工程、合成なめし剤による再なめし・染色・加脂工程とこれに続く乾燥工程、及び仕上げ工程からなる一連の工程を得て製造される天然皮革であって、再なめし・染色・加脂工程とこれに続く乾燥工程がセッター工程、がら干し乾燥工程、味取り工程、バイブレーション工程及びバフ工程からなり、仕上げ工程のプレヒート工程を経た天然皮革に対して、ベースコート層カラーコート層及びトップコート層を形成した。
その表面にBASF社製、Lepton Enhanncer CEをプリントした。
(b)150℃の温度下にプリントの表面から平板熱プレスすることにより圧力5kgf/cmの条件下に加熱した。発泡状態を得ることができなかった。
また色彩も期待したものをえることができなかった。
【実施例4】
【0071】
(1)乾燥工程を経た天然皮革の表面にベースコート層を形成し、その表面に大日精化工業株式会社製、New Dyfoam W−46NFの直径が5〜50μm以下の微粒子状であり、かつ内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョン(主成分:エチレン酢酸ビニル樹脂、ガスを含む熱膨張性マイクロカプセル、エチレングリコール、界面活性剤、ミネラルスピリットからなる成分)を、図柄の一方をシルクスクリーンを介して、図柄を二回塗りにより60μmの高さにプリントした。この表面にトップコート層を施した。
(2)プリント部分を避けて、パーフォレーションを施す。(孔径 0.8mm程度。孔間隔 5mm程度)
自動裁断機のヘッド(X−Y制御)にポンチを取り付けて孔をあけることにより、プリント部分を避けて、パーフォレーションを施すことができる。
(3)150℃の温度下にプリントの表面から平板熱プレスすることにより圧力2〜6kgf/cmの条件下に加熱した。その結果、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを発泡させて、500μmの成形形状を得ることができる。図3として具体例を示した。
黒い点はパーホレーションの部分である。
最上部はパーホレーションの間に曲線部分があり、この部分が発泡している。
中段部は四角の部分が発泡している部分である。
最下段はダブルウェーブのパーホレーションの間に発泡体が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分を立体形状とした図を示す(細い線を描いたもの)。
【図2】本発明の熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分を示す(曲線で太い部分と干そうイ部分をある状態を示している)。
【図3】パーホレーションを有する天然皮革に熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分を立体形状とした図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を天然皮革の表面にプリントしている天然皮革であることを特徴とする天然皮革。
【請求項2】
前記天然皮革の表面は、(1)前処理工程、なめし工程及び再なめし、染色及び加脂工程及び乾燥工程を経た天然皮革に、更に、ベースコート層を形成している天然皮革、又は(2)前処理工程、なめし工程及び再なめし、染色及び加脂工程及び乾燥工程を経た天然皮革に、更に、ベースコート層及びカラーコート層を形成している天然皮革のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の天然皮革。
【請求項3】
前記直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を天然皮革の表面にプリントしている天然皮革は、直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いてシルクスクリーンにより模様や図柄を表面にプリントしている天然皮革であることを特徴とする請求項1記載の天然皮革。
【請求項4】
前記直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて、シルクスクリーンにより模様や図柄を表面にプリントしている天然皮革は、顔料又は染料が添加されている、直径が5〜50μm以下の微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて、シルクスクリーンにより色分けされている模様や図柄を表面にプリントしている天然皮革であることを特徴とする請求項3記載の天然皮革。
【請求項5】
前記顔料又は染料が添加されている、直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いてシルクスクリーンにより色分けされている模様や図柄を表面にプリントしていることが、前記顔料又は染料が添加されている、直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクをシルクスクリーンにより色分けされて模様や図柄を表面に複数回にわたりプリントしている天然皮革であることを特徴とする請求項3記載の天然皮革。
【請求項6】
請求項1及び3から5何れか記載の模様や図柄を天然皮革の表面にプリントしている天然皮革を、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱して、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分を立体形状とすることを特徴とする天然皮革。
【請求項7】
前記内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱しては、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱されている平板を2〜6kgf/cmの圧力下に天然皮革を熱プレスすることであることを特徴とする請求項6記載の天然皮革。
【請求項8】
前記熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分を模様や図柄の部分の立体形状が、100μmから1000μmの高さの立体形状であることであることを特徴とする請求項6記載の天然皮革。
【請求項9】
前記内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱して、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分を立体形状とすることに先立って、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクによる模様や図柄の部分を乾燥状態とすることを特徴とする請求項6記載の天然皮革。
【請求項10】
前記天然皮革の表面は、(1)前処理工程、なめし工程及び再なめし、染色及び加脂工程及び乾燥工程を経た天然皮革に、更に、ベースコート層を形成している天然皮革、又は(2)前処理工程、なめし工程及び再なめし、染色及び加脂工程及び乾燥工程を経た天然皮革に、更に、ベースコート層及びカラーコート層を形成している天然皮革のいずれかであり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度に加熱して、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより模様や図柄の部分の成形体が形成され、成形体の表面に、前記天然皮革の表面に対応して、(1)カラーコート層及びトップコート層を形成する、又は(2)トップコート層を形成することを特徴とする請求項6記載の天然皮革。
【請求項11】
前記直径が5〜50μmの微粒子状であり、内部にガスを含む熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂エマルジョンインクを用いて模様や図柄を表面にプリントしている天然皮革は、予めパーホレーションが形成されていることを特徴とする請求項6記載の天然皮革。
【請求項12】
前記請求項6又は11いずれか記載の天然皮革からなるカーシート用、インパネ用又は自動車内装部品用天然皮革。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−241964(P2010−241964A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92346(P2009−92346)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(591189535)ミドリホクヨー株式会社 (37)
【Fターム(参考)】