説明

発泡体の製造方法

【課題】エチレン単位を有する未架橋重合体、架橋剤及び発泡剤を含有する発泡性樹脂組成物を原料として、少なくとも一方に、水平な底面及び傾斜面により形成された凹部を有する金型を用いて、加圧一段発泡法に供し、引っ掻き傷、割れ、欠け等の不良現象が抑制された発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、発泡倍率x、ASTM D 1822−61Tに準じて測定される未架橋重合体の引張衝撃強度T、金型の凹部における底面に対する傾斜面の角度θ、及び、金型の凹部の深さrにより、下記式(1)又は(2)を満たす条件で、架橋重合体を含む発泡体を製造する方法である。
【数1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未架橋のオレフィン系重合体、発泡剤、架橋剤等を含む発泡性樹脂組成物を用いて、架橋重合体を含む厚物発泡体を効率よく製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オレフィン系架橋重合体を含む厚物発泡体を製造する方法として、互いに内表面が平滑な凹部を有し、型締めによりキャビティ空間を形成する、上型及び下型を備える成形用金型を用いた加圧一段発泡法及び加圧二段発泡法が知られている(例えば、特許文献1〜3等)。
加圧二段発泡法に比べて低コストである加圧一段発泡法は、未架橋のオレフィン系重合体、発泡剤、架橋剤等を含む混和物からなる発泡性樹脂組成物を、成形用金型のキャビティ空間に収容し、次いで、加熱及び加圧することにより、発泡剤や架橋剤を分解させ、その後、成形用金型内を除圧して一気に膨張させて、成形用金型から、架橋重合体を含む発泡体を飛び出させる方法である。
加圧一段発泡法において用いられる成形用金型は、通常、上型及び下型の少なくとも一方が、図1及び図4に示すように、凹部を有する形状を有するものとなっている。従来法では、発泡体が一気に飛び出すのを容易にするため、例えば、図1における、凹部の内表面のうち、傾斜面34が、いずれも、型合わせ部(面)36に向けてキャビティが拡開するように、底面38(水平面)に対する傾斜角度θを、45度程度とする金型が広く用いられている。しかしながら、このような構造の上型及び下型からなる成形用金型を用いると、図8に示すように、周縁部が鋭角に突き出る形状の発泡体となる傾向にある。そして、発泡体から、所定の大きさの発泡体製品を得るために、切削加工等によるトリミングを行うと、不要部に由来する切削屑が大量に発生することとなり、即ち、歩留まりが低下し、経済的ではなかった。また、これを抑制し、直方体に近い形状の発泡体を得るために、凹部における傾斜角度θを、更に大きくして、例えば、80度とすると、図9に示すように、その端部に、引っ掻き傷、割れ等の不良部が形成されることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭45−29381号公報
【特許文献2】特開昭57−191029号公報
【特許文献3】特開昭61−266441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、エチレン単位を有する未架橋重合体、発泡剤及び架橋剤を含有する発泡性樹脂組成物を用いて、加圧一段発泡法に供し、引っ掻き傷、割れ、欠け等の不良現象が抑制された厚物発泡体を効率的に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、得られる厚物発泡体における、引っ掻き傷、割れ等の不良現象が抑制される製造条件について検討し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、以下に示される。
1.上型及び下型の少なくとも一方に、水平な底面と傾斜面とから形成される凹部を有し且つ型締めによりキャビティ空間を形成する、該上型及び該下型を備える発泡成形用金型の該キャビティ空間に、エチレン単位を有する未架橋重合体、発泡剤及び架橋剤を含有する組成物を収容して、加熱及び加圧を行った後、除圧することにより、架橋重合体を含む発泡体を製造する方法において、
上記組成物中の上記未架橋重合体の含有量に対する上記発泡剤の含有量の割合により決定される発泡倍率x、
ASTM D 1822−61Tに準じて測定される上記未架橋重合体の引張衝撃強度T(単位:kJ/m)、
上記発泡成形用金型の上記凹部における、上記底面に対する上記傾斜面の角度θ(但し、60度≦θ≦90度)、及び、
上記発泡成形用金型の上記凹部の深さr(単位:mm)、
により、下記式(1)又は(2)を満たす条件で発泡体を製造する方法。
【数1】

(但し、上型又は下型に凹部を有する場合である。)
【数2】

(但し、上型及び下型がいずれも凹部を有し、同一形状の場合である。)
2.上記発泡倍率xが5〜30倍である上記1に記載の発泡体の製造方法。
3.上記発泡成形用金型の上記凹部の深さrが、5〜60mmである上記1又は2に記載の発泡体の製造方法。
4.上記未架橋重合体が、エチレン・α−オレフィン共重合体を含む上記1乃至3のいずれか一項に記載の発泡体の製造方法。
5.上記発泡剤が、アゾ化合物である上記1乃至4のいずれか一項に記載の発泡体の製造方法。
6.上記架橋剤が、有機過酸化物である上記1乃至5のいずれか一項に記載の発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、引っ掻き傷、割れ等の不良現象が抑制された厚物発泡体を効率よく製造することができる。特に、好ましい態様においては、図1に示される傾斜角度θ、即ち、傾斜面34の、底面38(水平面)に対する傾斜角度θを、90度に近づけることができ、材料のロス率を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明で用いられる発泡成形用金型として、凹部を有する金型における、底面に対する傾斜面の傾斜角度θ及び深さrを示す断面図である。
【図2】本発明で用いられる発泡成形用金型の上型及び下型の1例を示す断面図である。
【図3】本発明で用いられる発泡成形用金型の上型及び下型の他の例を示す断面図である。
【図4】凹部を有する金型の概略斜視図である。
【図5】図2に類似した発泡成形用金型が型閉じして形成されたキャビティ空間に発泡性樹脂組成物が収容されていることを示す断面図である。
【図6】図5の構成より得られた発泡体の断面形状を示す概略図である。
【図7】図3の発泡成形用金型が型閉じして形成されたキャビティ空間に発泡性樹脂組成物が収容されていることを示す断面図である。
【図8】従来の発泡成形用金型を用いて得られた1の発泡体の断面形状を示す概略図である。
【図9】従来の発泡成形用金型を用いて得られた他の発泡体の断面形状を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、上型及び下型の少なくとも一方に、水平な底面と傾斜面とから形成される凹部を有し且つ型締めによりキャビティ空間を形成する、上型及び下型を備える発泡成形用金型のキャビティ空間に、エチレン単位を有する未架橋重合体、発泡剤及び架橋剤を含有する組成物(以下、「発泡性樹脂組成物」という。)を収容して、加熱及び加圧を行った後、除圧することにより、架橋重合体を含む発泡体を、特定の条件により製造する方法である。
【0010】
はじめに、発泡性樹脂組成物について、説明する。
未架橋重合体は、エチレン単位を有し、架橋剤の存在下、架橋する重合体であれば、特に限定されず、ポリエチレン;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・3,3−ジメチル−1−ブテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体;エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体等のエチレン・ビニルカルボン酸エステル共重合体;エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸プロピル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体等のエチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体;エチレン・酢酸ビニル・アクリル酸アルキルエステル共重合体;塩素化ポリエチレン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体等が好ましく、不良現象が抑制された発泡体を効率よく製造することができることから、エチレン・α−オレフィン共重合体を含むことが特に好ましい。
【0011】
上記未架橋重合体の、ASTM D 1822−61Tに準じて測定される引張衝撃強度(以下、「引張衝撃強度T」という。)は、好ましくは200〜1,400kJ/m、より好ましくは280〜1,300kJ/m、更に好ましくは450〜1,250kJ/mである。上記引張衝撃強度Tが高いほど、不良現象が抑制された発泡体を効率よく製造することができる。尚、未架橋重合体原料として、引張衝撃強度が互いに異なる複数の重合体を用いる場合は、各重合体の引張衝撃強度と質量割合とを用いて算出される引張衝撃強度の平均値が採用される。
【0012】
本発明に係る発泡性樹脂組成物は、エチレン単位を有する未架橋重合体以外に、他の重合体(樹脂)を含有してもよい。
他の重合体としては、アクリル系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、ノルボルネン等の環状オレフィンに由来する単位を有する重合体、ポリ乳酸系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。
【0013】
発泡性樹脂組成物が、他の重合体(樹脂)を含有する場合、その含有量は、エチレン単位を有する未架橋重合体と、他の重合体(樹脂)とを含む全ての重合体100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0014】
発泡剤は、好ましくは、エチレン単位を有する未架橋重合体の溶融温度以上の温度で分解され、炭酸ガス等の気体を発生する化合物である。その例としては、アゾ化合物、ニトロソ化合物、スルホニルヒドラジド化合物、スルホニルセミカルバジド化合物、アジド化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
アゾ化合物としては、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート、ジアゾアミノベンゼン、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
ニトロソ化合物としては、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソ−テレフタルアミド等が挙げられる。
スルホニルヒドラジド化合物としては、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゼン−1,3−ジスルホヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3−ジスルホヒドラジド、ジフェニルオキシド−4,4−ジスルホヒドラジド等が挙げられる。
スルホニルセミカルバジド化合物としては、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド、トルエンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。
また、アジド化合物としては、テレフタルアジド,p−tert−ブチルベンズアジド等が挙げられる。
【0015】
発泡性樹脂組成物における発泡剤の含有量は、エチレン単位を有する未架橋重合体を含む全ての架橋性重合体100質量部に対して、好ましくは1.5〜25質量部、より好ましくは2.0〜20質量部、更に好ましくは2.5〜15質量部である。
【0016】
架橋剤は、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生して、その分子間もしくは分子内に架橋結合を生じせしめるラジカル発生剤であるところの有機過酸化物が好ましく用いられる。この有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルパーオキシヘキシン、α,α−ジ−tert−ブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、tert−ブチルパーオキシケトン、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
発泡性樹脂組成物における架橋剤の含有量は、エチレン単位を有する未架橋重合体を含む全ての架橋性重合体100質量部に対して、好ましくは0.1〜10.0質量部、より好ましくは0.15〜5.0質量部、更に好ましくは0.3〜2.0質量部である。架橋剤の含有量が上記範囲にあると、加熱時における発泡性樹脂組成物の粘度が発泡に好適なものとなり、発泡ガスが良好に保持された発泡体を効率よく製造することができる。
【0018】
本発明に係る発泡性樹脂組成物は、必要に応じて、発泡助剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、着色剤等を含有してもよい。
【0019】
発泡助剤としては、尿素;酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物;低級又は高級脂肪酸あるいはそれらの金属塩等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
発泡性樹脂組成物が、発泡助剤を含有する場合、その含有量は、エチレン単位を有する未架橋重合体を含む全ての架橋性重合体100質量部に対して、好ましくは0.005〜10質量部、より好ましくは0.07〜7質量部、更に好ましくは0.01〜5質量部である。
【0021】
本発明に係る発泡性樹脂組成物は、好ましくは、上記の各成分を、予め、架橋剤及び発泡剤が分解等、変質しない条件で混練することにより得られた混和物である。その製造に用いる装置としては、従来、公知の、混練機を用いることができ、一軸又は二軸押出機、バンバリー型ミキサー、加圧ニーダー、二軸ロール等が挙げられる。発泡体の製造に際しては、各成分を混練した後、適当な大きさに加工・調整されてなる小片成形物等を用いることができる。
【0022】
上記のように、製造しようとする発泡体の発泡倍率(以下、「発泡倍率x」という。)は、上記組成物中の、エチレン単位を有する未架橋重合体の含有量に対する、発泡剤の含有量の割合により決定される。例を挙げると、未架橋重合体を100質量部としたとき、発泡剤が3質量部である場合には、発泡倍率xを5倍とすることができ、発泡剤が5質量部である場合には、発泡倍率xを10倍とすることができ、発泡剤が5.5質量部である場合には、発泡倍率xを12.5倍とすることができ、発泡剤が7質量部である場合には、発泡倍率xを15倍とすることができ、発泡剤が9質量部である場合には、発泡倍率xを20倍とすることができる。
本発明において、発泡倍率xは、好ましくは5〜30倍、より好ましくは5〜15倍である。
【0023】
次に、発泡成形用金型について説明する。
本発明においては、上型及び下型の少なくとも一方に、水平な底面と傾斜面とから形成される凹部を有する金型が用いられる(図1及び図4参照)。図1は、凹部を有する金型の一例であり、凹部は、底面38と、平面又は平滑な曲面である傾斜面34とから形成されていることを示す。また、図4は、凹部を有する金型の斜視図であり、4箇所の傾斜面34は、いずれも、型合わせ部(面)36に向けてキャビティが拡開するように、底面に対する傾斜面の角度θを60度〜90度とした傾斜面である(図1参照)。傾斜角度θが小さいほど、発泡成形用金型を開放して除圧したときに、膨張した発泡体が傾斜面34を滑って飛び出しやすくなるが、本発明においては、材料のロス率を低減させつつ、不良現象の抑制された発泡体を得るために、角度θが90度又はそれに近くてもよい特定の製造条件が適用される。
【0024】
発泡成形用金型における凹部の深さは、好ましくは5〜60mm、より好ましくは15〜40mmである。凹部の深さが上記範囲にあると、厚さのばらつきが抑制された発泡体を効率よく製造することができる。
【0025】
上型及び下型のうちの一方のみが、凹部を有する金型である場合には、通常、下型32に、凹部を有する金型が用いられ、図2に示す構成で、発泡体の製造が行われる。
また、上型及び下型の両方が、凹部を有する金型である場合には、図3に示すように、同じ形状の、凹部を有する金型が用いられる。
発泡成形用金型が、図2及び図3のいずれの構成であっても、発泡体を製造する場合には、型閉じにより形成されるキャビティ空間に、発泡性樹脂組成物を満たした状態とされる。そして、加熱及び加圧により生成した発泡体は、発泡成形用金型のキャビティ空間を形成している上型31及び下型32の内表面の全体と接触する。
【0026】
以下、発泡体の製造方法について、説明する。
本発明では、発泡性樹脂組成物中の未架橋重合体の含有量に対する発泡剤の含有量の割合により決定される発泡倍率x、ASTM D 1822−61Tに準じて測定される未架橋重合体の引張衝撃強度T(単位:kJ/m)、発泡成形用金型の凹部における、底面に対する傾斜面の角度θ(但し、60度≦θ≦90度)、及び、発泡成形用金型の凹部の深さr(単位:mm)により、下記式(1)又は(2)を満たす条件で発泡体を製造する。下記の式における左辺は、発泡成形用金型の除圧時に、凹部に配された発泡前加熱体が3次元方向に膨張しようとすることを考慮したものである。除圧時には、発泡性樹脂組成物中の未架橋重合体は、架橋重合体に変性しており、架橋重合体の引張衝撃強度は、未架橋重合体の引張衝撃強度Tと異なるものとなるが、下記式(1)又は(2)の条件を満たすことにより、引っ掻き傷、割れ等の不良現象が抑制された厚物発泡体を効率よく製造することができる。
【数3】

(但し、上型又は下型に凹部を有する場合である。)
【数4】

(但し、上型及び下型がいずれも凹部を有し、同一形状の場合である。)
【0027】
上記式(1)は、上型又は下型に凹部を有する場合、例えば、図2で示される発泡成形用金型を用いる場合に適用される。この式(1)における右辺は、好ましくは600、より好ましくは500である。尚、下限値は、通常、3.3である。
また、上記式(2)は、上型及び下型がいずれも凹部を有し、同一形状の場合、例えば、図3で示される発泡成形用金型を用いる場合に適用される。この式(1)における右辺は、好ましくは860、より好ましくは750である。尚、下限値は、通常、3.3である。
【0028】
図5及び図7に示すように、発泡性樹脂組成物24が、発泡成形用金型のキャビティ空間に収容される。そして、上型31及び下型32が閉じられて、加熱及び加圧が行われる。加熱温度は、好ましくは130℃〜165℃、より好ましくは135℃〜160℃、更に好ましくは138℃〜158℃である。また、加圧時における上型31及び下型32の圧着圧力は、通常、収容された発泡性樹脂組成物24における発泡剤の含有量や目的の気泡径によって選択される。即ち、キャビティ空間に収容した発泡性樹脂組成物の発泡圧により発泡成形用金型が開放しない程度又は若干漏れる程度となるように、例えば、片側の金型に連設された油圧シリンダー(ラム径φ760mm)を有するプレス機において、圧力は、通常、3MPa以上であり、好ましくは3〜30MPa、より好ましくは5〜25MPa、更に好ましくは8〜20MPaである。圧力が小さいと、発泡ガスが金型の型合わせ部(面)から漏れる場合があり、加圧が大きすぎると、得られる発泡体の気泡径が小さくなる傾向になる。
尚、上型31及び下型32は、発泡性樹脂組成物が、発泡成形用金型のキャビティ空間に収容される前に、予め、加熱されていてもよい。
【0029】
発泡成形用金型における加熱及び加圧の時間は、通常、10〜60分であり、この間において、発泡性樹脂組成物に含まれた発泡剤が分解し、また、架橋反応が進行して、キャビティ空間に、発泡ガスを含む膨張前発泡体が満たされる。
【0030】
その後、発泡成形用金型を開放して除圧することにより、キャビティ空間の形状に準じて膨張したブロック状(直方体又はそれに近い形状)の厚物発泡体20が飛び出てくる(図6参照)。金型の凹部における傾斜面34の角度が鋭角であるほど、飛び出てくる発泡体は、表面に不良現象の抑制されたものとなる。しかしながら、傾斜面34の角度を60度以上とした場合であっても、本発明に係る上記式(1)又は(2)を満たす条件とすることにより、不良現象を抑制することができるだけでなく、発泡性樹脂組成物のロス率を低減することができる。得られる厚物発泡体の厚さは、通常、30〜150mmである。
【0031】
本発明により製造された厚物発泡体は、切削加工等のトリミングに供されて、例えば、厚さの均一な板状物等とされる。
【0032】
尚、図7に示す上型31及び下型32を備える発泡成形用金型を用いて、発泡倍率5〜20倍の発泡体を製造する場合、凹部における、底面に対する傾斜面の角度θが60〜90度であり、且つ、深さが5〜60mm、好ましくは15〜40mmである金型のキャビティ空間に、エチレン単位を有し、引張衝撃強度Tが450〜1,300kJ/mである未架橋重合体、発泡剤及び架橋剤を含有する組成物を収容して、加熱及び加圧を行った後、除圧する製造方法とすることができる。これにより、引っ掻き傷、割れ、欠け等の不良現象が抑制された厚物発泡体を効率的に製造することができる。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0034】
1.原料成分
下記の実施例及び比較例において用いる材料を示す。
1−1.未架橋重合体
(1)重合体A1
旭化成社製低密度ポリエチレン「サンテックF2225.4」(商品名)であり、ASTM D 1822−61Tに準ずる引張衝撃強度は280kJ/mである。
(2)重合体A2
住友化学社製エチレン・1−ヘキセン共重合体「スミカセンEP GT050」(商品名)であり、ASTM D 1822−61Tに準ずる引張衝撃強度は600kJ/mである。
(3)重合体A3
住友化学社製エチレン・1−ヘキセン共重合体「スミカセンEP CU5001」(商品名)であり、ASTM D 1822−61Tに準ずる引張衝撃強度は760kJ/mである。
(4)重合体A4
住友化学社製エチレン・1−ヘキセン共重合体「エクセレンGMH CB5001」(商品名)であり、ASTM D 1822−61Tに準ずる引張衝撃強度は1,150kJ/mである。
(5)重合体A5
住友化学社製エチレン・1−ヘキセン共重合体「エクセレンGMH GH030」(商品名)であり、ASTM D 1822−61Tに準ずる引張衝撃強度は1,160kJ/mである。
(6)重合体A6
住友化学社製エチレン・1−ヘキセン共重合体「エクセレンGMH CB5002」(商品名)であり、ASTM D 1822−61Tに準ずる引張衝撃強度は1,215kJ/mである。
【0035】
1−2.発泡剤
永和化成社製アゾジカルボンアミド「ビニホールAC#3」(商品名)を用いた。
1−3.発泡助剤
(1)発泡助剤C1
ハクスイテック社製酸化亜鉛「酸化亜鉛2種」(商品名)を用いた。
(2)発泡助剤C2
淡南化学工業社製ステアリン酸亜鉛「ジンクステアレート」(商品名)を用いた。
(3)発泡助剤C3
永和化成社製尿素「セルペーストK5」(商品名)を用いた。
【0036】
1−4.架橋剤
化成アクゾ社製ジクミルパーオキサイド「カヤクミルD−40C」(商品名)を用いた。
1−5.充填剤
丸尾カルシウム社製重質炭酸カルシウム「重炭スーパーSSS」(商品名)を用いた。
【0037】
2.発泡体の製造及び評価(1)
以下の実施例1〜43及び比較例1〜14において用いた発泡成形用金型は、図2に示すように、平板状の上型31と、凹部を有する下型32とを備え、これらを型締め(型合わせ)することによりキャビティ空間を形成する発泡成形用金型を用いた。
尚、各実験例に対応させて、凹部の傾斜面34(各4箇所)は、型合わせ部(面)36に向けてキャビティが拡開するように、凹部の底面に対する傾斜角度θが60度、65度、70度、75度、80度、85度又は90度となる傾斜面を備える下型32を用いた。また、キャビティ空間の寸法は、凹部の底面38では、500mm×1,000mm、型合わせ部36の内周では、(500〜560)mm×(1,000〜1,060)mm、下型32における凹部の深さrは、10〜60mmであり、型締め(型合わせ)時のキャビティ空間の体積は(0.005〜0.016)mである。
発泡成形用金型は、コビキ社製800t油圧プレス機内に連設されており、このプレス機は、ラム径φ760mmの油圧シリンダーを備える。
【0038】
実施例1
100部の重合体A1と、3部の発泡剤と、1.4部の架橋剤とを、トーシン社製ニーダー「TDS75−100」(型式名)に投入し、120℃で混練した。その後、混練物を、トーシン社製押出機「HTC−505」(型式名)に供給して、115℃で処理することにより、直方体形状を有し、大きさが50mm×400mm×900mmである成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約5倍の発泡体を得るための原料である。
次に、下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを60度とし、凹部の深さrを50mmとした発泡成形用金型を140℃に調整した後、成形体原料を、図5のような形態で、キャビティ空間に高密度充填し、油圧プレス機におけるプレス圧を14MPaとして上型31及び下型32を型締めし、40分間保持した。その後、型開きにより、膨張した発泡体を飛び出させ、大きさが85.3mm×684mm×1,539mmの板状の厚物発泡体を得た。
【0039】
得られた発泡体について、外観性を目視観察し、下記の基準で判定し、その結果を表1に示した。
○:引っ掻き傷、割れ、欠け等の不良現象がなかった。
×:引っ掻き傷、割れ、欠け等の不良現象があった。
【0040】
また、表1には、発泡倍率x、ASTM D 1822−61Tに準じて測定される未架橋重合体の引張衝撃強度T、金型の凹部における底面に対する傾斜面の角度θ、及び、金型の凹部の深さrを用いて、下記式(5)により算出されたYの値を併記した。
【数5】

【0041】
実施例2〜4及び比較例1
発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、それぞれ、65度、70度、75度及び80度とした以外は、実施例1と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表1に併記した。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例5〜8及び比較例2
発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、90度とし、凹部の深さrを、それぞれ、10mm、20mm、30mm、40mm及び50mmとした以外は、実施例1と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表2に併記した。
【0044】
【表2】

【0045】
実施例9
100部の重合体A1と、5部の発泡剤と、1.4部の架橋剤とを用い、実施例1と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約10倍の発泡体を得るための原料である。
次に、発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、90度とし、凹部の深さrを、50mmに代えて、20mmとした以外は、実施例1と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表3に併記した。
【0046】
実施例10〜11及び比較例3
発泡成形用金型の下型32における凹部の深さrを、20mmに代えて、それぞれ、30mm、40mm及び50mmとした以外は、実施例9と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表3に併記した。
【0047】
【表3】

【0048】
実施例12
100部の重合体A1と、7部の発泡剤と、1.4部の架橋剤とを用い、実施例1と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約15倍の発泡体を得るための原料である。
次に、発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、90度とし、凹部の深さrを、50mmに代えて、20mmとした以外は、実施例1と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表4に併記した。
【0049】
実施例13〜14及び比較例4
発泡成形用金型の下型32における凹部の深さrを、20mmに代えて、それぞれ、30mm、40mm及び50mmとした以外は、実施例12と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表4に併記した。
【0050】
【表4】

【0051】
実施例15
100部の重合体A1と、9部の発泡剤と、1.4部の架橋剤とを用い、実施例1と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約20倍の発泡体を得るための原料である。
次に、発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、90度とし、凹部の深さrを、50mmに代えて、20mmとした以外は、実施例1と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表5に併記した。
【0052】
実施例16及び比較例5
発泡成形用金型の下型32における凹部の深さrを、20mmに代えて、それぞれ、30mm及び40mmとした以外は、実施例15と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表5に併記した。
【0053】
【表5】

【0054】
実施例17
100部の重合体A2と、3部の発泡剤と、1.4部の架橋剤とを用い、実施例1と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約5倍の発泡体を得るための原料である。
次に、発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、90度とし、凹部の深さrを、50mmに代えて、40mmとした以外は、実施例1と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表6に併記した。
【0055】
実施例18〜19及び比較例6
発泡成形用金型の下型32における凹部の深さrを、40mmに代えて、それぞれ、50mm、55mm及び60mmとした以外は、実施例17と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表6に併記した。
【0056】
【表6】

【0057】
実施例20
100部の重合体A2と、5部の発泡剤と、1.4部の架橋剤とを用い、実施例1と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約10倍の発泡体を得るための原料である。
次に、発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、90度とし、凹部の深さrを、50mmに代えて、30mmとした以外は、実施例1と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表7に併記した。
【0058】
実施例21〜22及び比較例7
発泡成形用金型の下型32における凹部の深さrを、30mmに代えて、それぞれ、40mm、50mm及び55mmとした以外は、実施例20と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表7に併記した。
【0059】
【表7】

【0060】
実施例23
100部の重合体A2と、7部の発泡剤と、1.4部の架橋剤とを用い、実施例1と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約15倍の発泡体を得るための原料である。
次に、この成形体原料を用いて、実施例1と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表8に併記した。
【0061】
比較例8
発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、65度とした以外は、実施例23と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表8に併記した。
【0062】
実施例24〜25及び比較例9
発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、90度とし、凹部の深さrを、50mmに代えて、それぞれ、30mm、40mm及び50mmとした以外は、実施例23と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表8に併記した。
【0063】
【表8】

【0064】
実施例26
100部の重合体A2と、9部の発泡剤と、1.4部の架橋剤とを用い、実施例1と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約20倍の発泡体を得るための原料である。
次に、発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、90度とし、凹部の深さrを、50mmに代えて、20mmとした以外は、実施例1と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表9に併記した。
【0065】
実施例27〜28及び比較例10
発泡成形用金型の下型32における凹部の深さrを、20mmに代えて、それぞれ、30mm、40mm及び50mmとした以外は、実施例26と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表9に併記した。
【0066】
【表9】

【0067】
実施例29
100部の重合体A4と、3部の発泡剤と、1.4部の架橋剤とを用い、実施例1と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約5倍の発泡体を得るための原料である。
次に、この成形体原料を用いて、実施例1と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表10に併記した。
【0068】
実施例30〜32
発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、それぞれ、70度、80度及び90度とした以外は、実施例29と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表10に併記した。
実施例33
発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、90度とし、凹部の深さrを、50mmに代えて、60mmとした以外は、実施例29と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表10に併記した。
【0069】
【表10】

【0070】
実施例34
100部の重合体A4と、5部の発泡剤と、1.4部の架橋剤とを用い、実施例1と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約10倍の発泡体を得るための原料である。
次に、発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、70度とした以外は、実施例1と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表11に併記した。
【0071】
実施例35及び36
発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、70度に代えて、それぞれ、80度及び90度とした以外は、実施例34と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表11に併記した。
【0072】
実施例37及び比較例11
発泡成形用金型の下型32における凹部の深さrを、50mmに代えて、それぞれ、55mm及び60mmとした以外は、実施例36と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表11に併記した。
【0073】
【表11】

【0074】
実施例38
100部の重合体A4と、7部の発泡剤と、1.4部の架橋剤とを用い、実施例1と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約15倍の発泡体を得るための原料である。
次に、発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、70度とした以外は、実施例1と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表12に併記した。
【0075】
実施例39及び40
発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、70度に代えて、それぞれ、80度及び90度とした以外は、実施例38と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表12に併記した。
【0076】
比較例12
発泡成形用金型の下型32における凹部の深さrを、50mmに代えて、55mmとした以外は、実施例40と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表12に併記した。
【0077】
【表12】

【0078】
実施例41
100部の重合体A4と、9部の発泡剤と、1.4部の架橋剤とを用い、実施例1と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約20倍の発泡体を得るための原料である。
次に、発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、70度とした以外は、実施例1と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表13に併記した。
【0079】
実施例42及び比較例13〜14
発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、70度に代えて、それぞれ、80度、85度及び90度とした以外は、実施例41と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表13に併記した。
【0080】
実施例43
発泡成形用金型の下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、70度に代えて、90度とし、凹部の深さrを、50mmに代えて、40mmとした以外は、実施例41と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表13に併記した。
【0081】
【表13】

【0082】
表1〜表13から明らかなように、上記式(5)により算出されるYが640を超える比較例では、得られる発泡体において、引っ掻き傷、割れ、欠け等の不良現象が観察されたのに対し、実施例では、これらの不具合が見られなかった。
【0083】
3.発泡体の製造及び評価(2)
以下の実施例44〜60及び比較例15〜17において用いた発泡成形用金型は、図3に示すように、互いに同じ形状及び大きさの凹部を有する上型31及び下型32を備え、これらを型締め(型合わせ)することによりキャビティ空間を形成する発泡成形用金型を用いた。
尚、各実験例に対応させて、凹部の傾斜面34(各4箇所)は、型合わせ部(面)36に向けてキャビティが拡開するように、凹部の底面に対する傾斜角度θが、60度、70度又は90度となる傾斜面を備える上型31及び下型32を用いた。また、キャビティ空間の寸法は、凹部の底面38では、500mm×1,000mm、型合わせ部36の内周では、(500〜560)mm×(1,000〜1,060)mm、上型31及び下型32の凹部の深さは、いずれも28mmであり、型締め(型合わせ)時のキャビティ空間の体積は(0.028〜0.031)mである。
発泡成形用金型は、コビキ社製800t油圧プレス機内に連設されており、このプレス機は、ラム径φ760mmの油圧シリンダーを備える。
【0084】
実施例44
70部の重合体A1と、30部の重合体A5と、9部の発泡剤と、2部の発泡助剤C1と、0.3部の発泡助剤C2と、0.1部の発泡助剤C3と、0.8部の架橋剤とを、トーシン社製ニーダー「TDS75−100」(型式名)に投入し、120℃で混練した。その後、混練物を、トーシン社製押出機「HTC−505」(型式名)に供給して、115℃で処理することにより、直方体形状を有し、大きさが100mm×400mm×900mmである成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約20倍の発泡体を得るための原料である。
次に、上型31及び下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θをいずれも60度とし、凹部の深さrをいずれも28mmとした発泡成形用金型を145℃に調整した後、成形体原料を、図7に示すように、キャビティ空間に高密度充填し、油圧プレス機におけるプレス圧を15MPaとして上型31及び下型32を型締めし、40分間保持した。その後、型開きにより、膨張した発泡体を飛び出させ、大きさが、152.5mm×684mm×1,539mmの板状の厚物発泡体を得た。その後、発泡体の外観性を評価し、その結果を表14に示した。
【0085】
比較例15
発泡成形用金型の上型31及び下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、70度とした以外は、実施例44と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表14に併記した。
【0086】
実施例45
75部の重合体A1と、25部の重合体A5と、5.5部の発泡剤と、2部の発泡助剤C1と、0.3部の発泡助剤C2と、0.1部の発泡助剤C3と、0.8部の架橋剤とを用い、実施例44と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約12.5倍の発泡体を得るための原料である。
次に、この成形体原料を用いて、実施例44と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表14に併記した。
【0087】
実施例46及び比較例16
発泡成形用金型の上型31及び下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、それぞれ、70度及び90度とした以外は、実施例45と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表14に併記した。
【0088】
実施例47
80部の重合体A1と、20部の重合体A5と、5.5部の発泡剤と、2部の発泡助剤C1と、0.3部の発泡助剤C2と、0.1部の発泡助剤C3と、0.8部の架橋剤とを用い、実施例44と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約12.5倍の発泡体を得るための原料である。
次に、この成形体原料を用いて、実施例44と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表14に併記した。
【0089】
実施例48及び比較例17
発泡成形用金型の上型31及び下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、それぞれ、70度及び90度とした以外は、実施例47と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表14に併記した。
【0090】
【表14】

【0091】
実施例49
50部の重合体A1と、50部の重合体A5と、5.5部の発泡剤と、2部の発泡助剤C1と、0.3部の発泡助剤C2と、0.1部の発泡助剤C3と、0.8部の架橋剤とを用い、実施例44と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約12.5倍の発泡体を得るための原料である。
次に、この成形体原料を用いて、実施例44と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表15に併記した。
【0092】
実施例50
発泡成形用金型の上型31及び下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、90度とした以外は、実施例49と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表15に併記した。
【0093】
実施例51
100部の重合体A2と、5.5部の発泡剤と、2部の発泡助剤C1と、0.3部の発泡助剤C2と、0.1部の発泡助剤C3と、0.8部の架橋剤とを用い、実施例44と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約12.5倍の発泡体を得るための原料である。
次に、この成形体原料を用いて、実施例44と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表15に併記した。
【0094】
実施例52
発泡成形用金型の上型31及び下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、90度とした以外は、実施例51と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表15に併記した。
【0095】
実施例53
100部の重合体A3と、5.5部の発泡剤と、2部の発泡助剤C1と、0.3部の発泡助剤C2と、0.1部の発泡助剤C3と、0.8部の架橋剤とを用い、実施例44と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約12.5倍の発泡体を得るための原料である。
次に、この成形体原料を用いて、実施例44と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表15に併記した。
【0096】
実施例54
発泡成形用金型の上型31及び下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、90度とした以外は、実施例53と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表15に併記した。
【0097】
【表15】

【0098】
実施例55
100部の重合体A4と、5.5部の発泡剤と、2部の発泡助剤C1と、0.3部の発泡助剤C2と、0.1部の発泡助剤C3と、0.8部の架橋剤とを用い、実施例44と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約12.5倍の発泡体を得るための原料である。
次に、この成形体原料を用いて、実施例44と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表16に併記した。
【0099】
実施例56
発泡成形用金型の上型31及び下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、90度とした以外は、実施例55と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表16に併記した。
【0100】
実施例57
100部の重合体A5と、5.5部の発泡剤と、2部の発泡助剤C1と、0.3部の発泡助剤C2と、0.1部の発泡助剤C3と、0.8部の架橋剤とを用い、実施例44と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約12.5倍の発泡体を得るための原料である。
次に、この成形体原料を用いて、実施例44と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表16に併記した。
【0101】
実施例58
発泡成形用金型の上型31及び下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、90度とした以外は、実施例57と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表16に併記した。
【0102】
実施例59
100部の重合体A6と、5.5部の発泡剤と、2部の発泡助剤C1と、0.3部の発泡助剤C2と、0.1部の発泡助剤C3と、0.8部の架橋剤とを用い、実施例44と同様にして、成形体原料(発泡性樹脂組成物)を得た。この成形体原料は、発泡倍率が約12.5倍の発泡体を得るための原料である。
次に、この成形体原料を用いて、実施例44と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表16に併記した。
【0103】
実施例60
発泡成形用金型の上型31及び下型32における凹部の傾斜面34の傾斜角度θを、60度に代えて、90度とした以外は、実施例59と同様にして、厚物発泡体を製造し、外観性の評価を行った。その結果を表16に併記した。
【0104】
【表16】

【0105】
表14〜表16から明らかなように、上記式(5)により算出されるYが910を超える比較例では、得られる発泡体において、引っ掻き傷、割れ、欠け等の不良現象が観察されたのに対し、実施例では、これらの不具合が見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の製造方法により得られる発泡体は、切削加工等に供されて、大型のシート、リング状、三次元形状等の形態とした後、パッキン、ガスケット、スポーツ用具等としてのパッド、床材、壁材等の建材、目地材等の封止性、断熱性、緩衝性等を必要とする用途に好適である。
【符号の説明】
【0107】
20 発泡体
24 発泡性樹脂組成物
31 発泡成形用金型(上型)
32 発泡成形用金型(下型)
34 凹部の傾斜面
35 稜線
36 型合わせ部(面)
38 凹部の底面
51 引っ掻き傷
53 割れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型及び下型の少なくとも一方に、水平な底面と傾斜面とから形成される凹部を有し且つ型締めによりキャビティ空間を形成する、該上型及び該下型を備える発泡成形用金型の該キャビティ空間に、エチレン単位を有する未架橋重合体、発泡剤及び架橋剤を含有する組成物を収容して、加熱及び加圧を行った後、除圧することにより、架橋重合体を含む発泡体を製造する方法において、
上記組成物中の上記未架橋重合体の含有量に対する上記発泡剤の含有量の割合により決定される発泡倍率x、
ASTM D 1822−61Tに準じて測定される上記未架橋重合体の引張衝撃強度T(単位:kJ/m)、
上記発泡成形用金型の上記凹部における、上記底面に対する上記傾斜面の角度θ(但し、60度≦θ≦90度)、及び、
上記発泡成形用金型の上記凹部の深さr(単位:mm)、
により、下記式(1)又は(2)を満たす条件で発泡体を製造する方法。
【数1】

(但し、上型又は下型に凹部を有する場合である。)
【数2】

(但し、上型及び下型がいずれも凹部を有し、同一形状の場合である。)
【請求項2】
上記発泡倍率xが5〜30倍である請求項1に記載の発泡体の製造方法。
【請求項3】
上記発泡成形用金型の上記凹部の深さrが、5〜60mmである請求項1又は2に記載の発泡体の製造方法。
【請求項4】
上記未架橋重合体が、エチレン・α−オレフィン共重合体を含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発泡体の製造方法。
【請求項5】
上記発泡剤が、アゾ化合物である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発泡体の製造方法。
【請求項6】
上記架橋剤が、有機過酸化物である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発泡体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−236911(P2012−236911A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106720(P2011−106720)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】