説明

発泡体シート

【課題】優れた乳化性および優れた静置保存安定性を有するW/O型エマルションを開発して該W/O型エマルションを応用することにより、球状気泡のサイズを精密に制御でき、特に、球状気泡の平均孔径が小さく、また、十分な強度を有し得る、新規な発泡体シートを提供する。
【解決手段】本発明の発泡体シートは、連続油相成分と該連続油相成分と不混和性の水相成分を含むW/O型エマルションを重合して脱水することで得られる、発泡体シートであって、該連続油相成分は、親水性ポリウレタン系重合体とエチレン性不飽和モノマーを含み、該親水性ポリウレタン系重合体は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール由来のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位を含み、該ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中の5重量%〜25重量%がポリオキシエチレンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体シートに関する。詳細には、W/O型(油中水型)エマルションから得られる発泡体シートに関する。特徴的には、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有する発泡体シートに関する。
【背景技術】
【0002】
W/O型エマルションは、特に、W/O型のHIPE(高不連続相エマルション)として知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
外部油相に重合性モノマーを含むW/O型HIPEを形成して重合することにより、エマルションの油相および水相の幾何学的配置を検討することが行われている。例えば、90%の水相成分を含み、且つ、油相成分中にスチレンモノマーを用いる、W/O型HIPEを調製した後に重合することにより、エマルションの油相および水相の幾何学的配置を検討することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1では、油相と水相とを親油性の乳化剤を用いて撹拌することによってW/O型HIPEを調製した後に重合を行い、該W/O型HIPEの前駆体の相関係によって決定される気泡形状を有する硬質の多孔質体が形成されることが報告されている。
【0004】
W/O型エマルションを重合させることによって形成される多孔質体の物性は、該W/O型エマルションを構成する成分の種類および該W/O型エマルションを調製する際の乳化条件によって左右される。
【0005】
例えば、少なくとも90重量部の水と、重合性モノマーと界面活性剤および重合触媒を含む油相とを含んでなる、W/O型HIPEから、吸収性の多孔性ポリマーを調製する方法が報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
例えば、少なくとも水相成分と、重合性モノマーと界面活性剤および重合触媒を含む油相成分とを含んでなる、W/O型HIPEに対して、重合を行った後に洗浄と脱水を繰返すことにより、約100mg/cc未満の乾燥密度を有する疎水性多孔質体を調製する方法が報告されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
例えば、W/O型HIPEの調製からその重合までを連続して行う、多孔質架橋重合体の製造方法が報告されている(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
例えば、W/O型HIPEを光重合してフォームを製造する方法が報告されている(例えば、特許文献5参照)。
【0009】
上記のように、W/O型エマルションはいくつか知られている。しかし、W/O型エマルションの調製や保存については、いくつかの問題がある。
【0010】
W/O型エマルション、特に、水相対油相の比率が高いW/O型HIPEの静置保存安定性は、常温下でも低い。また、水相対油相の比率が低いW/O型HIPEの静置保存安定性も、同様に、常温下でも低い。
【0011】
また、W/O型エマルションの連続油相成分組成(例えば、モノマー/架橋剤含量、乳化剤量、乳化剤種類の選択)、乳化時の温度、撹拌条件などがごく僅かに変化するだけでも、W/O型エマルションのエマルション状態が壊れてしまい、それらの少なくとも一部が水相または油相へと明確に分離してしまう。
【0012】
乳化性および静置保存安定性が良好なW/O型エマルションを得るためには、一般に、乳化剤または乳化剤代替材料の配合は必須である。親油性乳化剤としては、ソルビタンモノオレエート、表面疎水化処理を施した無機微粒子や層状粘土鉱物などが用いられている。例えば、ポリアルキルシラセスキオキサンの微細な固体球状粒子を含有する、界面活性剤を含まないW/O型エマルションの調製方法が報告されている(例えば、特許文献6参照)。
【0013】
上記のように、乳化性および静置保存安定性が良好なW/O型エマルションを調製するためには、乳化剤または乳化剤代替材料の配合は必須である。この場合、乳化剤または乳化剤代替材料の配合量は、油相成分の30重量部までの範囲で用いることが一般的である。しかし、乳化剤または乳化剤代替材料を配合することによって、乳化性および静置保存安定性が良好なW/O型エマルションが調製できたとしても、低分子量成分として存在する乳化剤または乳化剤代替材料が汚染物質として作用してしまい、最終的に重合によって得られる多孔質ポリマー材料の物性に著しく影響するという問題がある。
【0014】
上記のような問題を回避するために、多孔質ポリマー材料を構成する連続相に導入可能な反応性乳化剤の検討がなされている。例えば、多孔質ポリマー材料を構成する連続相に導入可能な反応性乳化剤として、官能化酸化金属ナノ粒子が報告されている(例えば、特許文献7参照)。
【0015】
しかしながら、工業的または試験的なプラントの規模において、連続工程によって、以上に述べたようなW/O型エマルション、特に、重合性のW/O型HIPEを製造して、多孔質ポリマー材料を商業的に生産する必要がある場合には、調製するW/O型エマルションの安定性が十分ではないという問題や、乳化剤や乳化剤代替材料や反応性乳化剤の影響によって多孔質ポリマー材料の物性が目的の物性とは大きく異なったものになるという問題がある。
【0016】
油相成分に重合性モノマーを含むW/O型エマルションを調製して重合することによって多孔質ポリマー材料を製造する方法として、乾式法による微多孔性シート材料の製造方法が知られている。例えば、ポリウレタン系重合体を主成分とし、沸点が120℃以下であり且つ25度における水の溶解度が1g〜50g(有機液体100g当り)である有機液体と該ポリウレタン系重合体を混合した溶液または分散液に、該ポリウレタン系重合体に対して50重量%以上の量の水を混合して、W/O型の混合分散液を調製し、得られた混合分散液を基材に含浸させた後、短時間で水と接触させ、次いで、該混合分散液から有機液体を選択的に蒸発させてゲル化させ、その後に乾燥する方法が報告されている。具体的には、2〜25重量%のポリオキシエチレン基を含むポリウレタン系重合体とポリオキシエチレン基を含まないポリウレタン系重合体とを主成分とするW/O型エマルションから微多孔性シート材料を形成する方法が報告されている(例えば、特許文献8参照)。
【0017】
しかしながら、上記のような乾式法によるW/O型エマルションの調製、特に、乾式法によるW/O型HIPEの調製は、環境負荷物質である各種有機溶剤が必須成分であるという問題がある。
【0018】
さらに、従来のW/O型エマルションから得られる発泡体シートにおいては、球状気泡のサイズの制御が難しく、特に、球状気泡の平均孔径が小さい発泡体シートを選択的に得ることは困難である。また、従来のW/O型エマルションから得られる発泡体シートは、十分な強度を有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第3565817号明細書
【特許文献2】特公平3−66323号公報
【特許文献3】特表2003−514052号公報
【特許文献4】特表2001−163904号公報
【特許文献5】特表2003−510390号公報
【特許文献6】特許第2656226号公報
【特許文献7】特表2004−504461号公報
【特許文献8】特公昭58−48579号公報
【非特許文献1】「中および高不連続相比の水/ポリマーエマルション」(LissantおよびMahan、Journal of Colloid and Interfacecience,Vol.42,No.1,1973年1月、201〜208頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の課題は、優れた乳化性および優れた静置保存安定性を有するW/O型エマルションを開発して該W/O型エマルションを応用することにより、球状気泡のサイズを精密に制御でき、特に、球状気泡の平均孔径が小さく、また、十分な強度を有し得る、新規な発泡体シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の発泡体シートは、
連続油相成分と該連続油相成分と不混和性の水相成分を含むW/O型エマルションを重合して脱水することで得られる、発泡体シートであって、
該連続油相成分は、親水性ポリウレタン系重合体とエチレン性不飽和モノマーを含み、
該親水性ポリウレタン系重合体は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール由来のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位を含み、
該ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中の5重量%〜25重量%がポリオキシエチレンである。
【0022】
好ましい実施形態においては、本発明の発泡体シートは、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有する。
【0023】
好ましい実施形態においては、上記球状気泡の平均孔径が200μm以下である。
【0024】
好ましい実施形態においては、上記貫通孔の平均孔径が10μm以下である。
【0025】
好ましい実施形態においては、上記エチレン性不飽和モノマーが、(メタ)アクリル酸エステルを含む。
【0026】
好ましい実施形態においては、上記エチレン性不飽和モノマーが、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な極性モノマーをさらに含む。
【0027】
好ましい実施形態においては、上記親水性ポリウレタン系重合体が、末端にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、優れた乳化性および優れた静置保存安定性を有するW/O型エマルションを開発して該W/O型エマルションを応用することにより、球状気泡のサイズを精密に制御でき、特に、球状気泡の平均孔径が小さく、また、十分な強度を有し得る、新規な発泡体シートを提供することができる。
【0029】
本発明の発泡体シートは、精密に制御された三次元網目構造を有するので、優れた耐熱性や優れた機械的物性を発現できる。
【0030】
本発明の発泡体シートは、W/O型エマルションをシート状に賦形して重合および脱水することで、所望の表層形状と厚みを制御しながら連続的に提供することができる。
【0031】
本発明の発泡体シートは、商業的に有意義な規模において、連続工程によって提供することができる。
【0032】
本発明の発泡体シートを得るために用い得るW/O型エマルションは、乳化剤等を積極的に添加せずとも、優れた乳化性および優れた静置保存安定性を有するので、本発明の発泡体シートを安定的に提供することができる。
【0033】
本発明のW/O型エマルションは、好ましくは、その調製の際にエチレン性不飽和モノマー中で合成した親水性ポリウレタン系重合体を含む混合シロップを用いると、環境負荷物質である有機溶剤を使用しなくて済むか、あるいはその有機溶剤の使用を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例2において、エマルション調製直後に作製した発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図2】実施例2において、エマルション調製から常温下で1時間静置保存したエマルションを用いて作製した発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図3】実施例4において、エマルション調製直後に作製した発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図4】実施例4において、エマルション調製から常温下で1時間静置保存したエマルションを用いて作製した発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図5】実施例5において、エマルション調製直後に作製した発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図6】実施例5において、エマルション調製から常温下で1時間静置保存したエマルションを用いて作製した発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図7】比較例1において、エマルション調製直後に作製した発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図8】比較例1において、エマルション調製から常温下で1時間静置保存したエマルションを用いて作製した発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図9】比較例4において、エマルション調製直後に作製した発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図10】比較例4において、エマルション調製から常温下で1時間静置保存したエマルションを用いて作製した発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図11】比較例6において、エマルション調製直後に作製した発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図12】比較例6において、エマルション調製から常温下で1時間静置保存したエマルションを用いて作製した発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図13】本発明の発泡体シートの断面SEM写真の写真図であって、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を明確に表す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
≪≪A.W/O型エマルション≫≫
本発明の発泡体シートを得るために用い得るW/O型エマルションは、連続油相成分と該連続油相成分と不混和性の水相成分を含むW/O型エマルションである。W/O型エマルションは、より具体的に説明すると、連続油相成分中に水相成分が分散したものである。
【0036】
本発明の発泡体シートを得るために用い得るW/O型エマルションにおける、水相成分と連続油相成分との比率は、W/O型エマルションを形成し得る範囲で任意の適切な比率を採り得る。本発明の発泡体シートを得るために用い得るW/O型エマルションにおける、水相成分と連続油相成分との比率は、該W/O型エマルションの重合によって得られる多孔質ポリマー材料の構造的、機械的、および性能的特性を決定する上で重要な因子となり得る。具体的には、本発明の発泡体シートを得るために用い得るW/O型エマルションにおける、水相成分と連続油相成分との比率は、該W/O型エマルションの重合によって得られる多孔質ポリマー材料の密度、気泡サイズ、気泡構造、および多孔構造を形成する壁体の寸法などを決定する上で重要な因子となり得る。
【0037】
本発明の発泡体シートを得るために用い得るW/O型エマルション中の水相成分の比率は、下限値として、好ましくは30重量%であり、より好ましくは40重量%であり、さらに好ましくは50重量%であり、特に好ましくは55重量%であり、上限値として、好ましくは95重量%であり、より好ましくは90重量%であり、さらに好ましくは85重量%であり、特に好ましくは80重量%である。本発明の発泡体シートを得るために用い得るW/O型エマルション中の水相成分の比率が上記範囲内にあれば、本発明の効果を十分に発現し得る。
【0038】
本発明の発泡体シートを得るために用い得るW/O型エマルションは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれ得る。このような添加剤としては、例えば、粘着付与樹脂;タルク;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸やその塩類、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、亜鉛華、ベントナイン、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、アセチレンブラック、アルミニウム粉などの充填剤;顔料;染料;などが挙げられる。このような添加剤は、1種のみ含まれていても良いし、2種以上が含まれていても良い。
【0039】
≪A−1.水相成分≫
水相成分としては、実質的に連続油相成分と不混和性のあらゆる水性流体を採用し得る。取り扱いやすさや低コストの観点から、好ましくは、イオン交換水などの水である。
【0040】
水相成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれ得る。このような添加剤としては、例えば、重合開始剤、水溶性の塩などが挙げられる。水溶性の塩は、本発明のW/O型エマルションをより安定化させるために有効な添加剤となり得る。このような水溶性の塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどが挙げられる。このような添加剤は、1種のみ含まれていても良いし、2種以上が含まれていても良い。水相成分に含まれ得る添加剤は、1種のみでも良いし、2種以上でも良い。
【0041】
≪A−2.連続油相成分≫
連続油相成分は、親水性ポリウレタン系重合体とエチレン性不飽和モノマーを含む。連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採り得る。
【0042】
親水性ポリウレタン系重合体は、該親水性ポリウレタン系重合体を構成するポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール単位中のポリオキシエチレン比率、または、配合する水相成分量にもよるが、例えば、好ましくは、エチレン性不飽和モノマー70〜90重量部に対して親水性ポリウレタン系重合体が10〜30重量部の範囲であり、より好ましくは、エチレン性不飽和モノマー75〜90重量部に対して親水性ポリウレタン系重合体が10〜25重量部の範囲である。また、例えば、水相成分100重量部に対し、好ましくは、親水性ポリウレタン系重合体が1〜30重量部の範囲であり、より好ましくは、親水性ポリウレタン系重合体が1〜25重量部の範囲である。親水性ポリウレタン系重合体の含有割合が上記範囲内にあれば、本発明の効果を十分に発現し得る。
【0043】
<A−2−1.親水性ポリウレタン系重合体>
親水性ポリウレタン系重合体は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール由来のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位を含み、該ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中の5重量%〜25重量%がポリオキシエチレンである。
【0044】
上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中のポリオキシエチレンの含有割合は、上記のように5重量%〜25重量%であり、下限値として、好ましくは10重量%であり、より好ましくは10重量%であり、上限値として、好ましくは25重量%であり、より好ましくは20重量%である。上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中のポリオキシエチレンは、連続油相成分中に水相成分を安定に分散させる効果を発現するものである。上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中のポリオキシエチレンの含有割合が5重量%未満の場合、連続油相成分中に水相成分を安定に分散させることが困難になるおそれがある。上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中のポリオキシエチレンの含有割合が25重量%を超える場合、HIPE条件に近づくにつれてW/O型エマルションからO/W型(水中油型)エマルションに転相するおそれがある。
【0045】
従来の親水性ポリウレタン系重合体は、ジイソシアネート化合物と疎水性長鎖ジオール、ポリオキシエチレングリコールならびにその誘導体、低分子活性水素化合物(鎖伸長剤)を反応させることによって得られるが、このような方法で得られる親水性ポリウレタン系重合体中に含まれるポリオキシエチレン基の数は不均一であるため、このような親水性ポリウレタン系重合体を含むW/O型エマルションは乳化安定性が低下するおそれがある。一方、本発明の発泡体シートを得るために用い得るW/O型エマルションの連続油相成分に含まれる親水性ポリウレタン系重合体は、上記のような特徴的な構造を有することにより、W/O型エマルションの連続油相成分に含ませた場合に、乳化剤等を積極的に添加せずとも、優れた乳化性および優れた静置保存安定性を発現することができる。
【0046】
親水性ポリウレタン系重合体は、好ましくは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとジイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる。この場合、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとジイソシアネート化合物との比率は、NCO/OH(当量比)で、下限値として、好ましくは1であり、より好ましくは1.2であり、さらに好ましくは1.4であり、上限値として、好ましくは3であり、より好ましくは2.5であり、さらに好ましくは2である。NCO/OH(当量比)が1未満の場合は、親水性ポリウレタン系重合体を製造する際にゲル化物が生成しやすくなるおそれがある。NCO/OH(当量比)が3を超える場合は、残存ジイソシアネート化合物が多くなってしまい、本発明の発泡体シートを得るために用い得るW/O型エマルションが不安定になるおそれがある。
【0047】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、例えば、ADEKA株式会社製のポリエーテルポリオール(アデカ(登録商標)プルロニックL−31、L−61、L−71、L−101、L−121、L−42、L−62、L−72、L−122、25R−1、25R−2、17R−2)や、日本油脂株式会社製のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(プロノン(登録商標)052、102、202)などが挙げられる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0048】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのジイソシアネートの二量体や三量体、ポリフェニルメタンポリイソシアネートなどが挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。ジイソシアネートの三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられる。ジイソシアネート化合物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0049】
ジイソシアネート化合物は、ポリオールとのウレタン反応性などの観点から、その種類や組み合わせ等を適宜選択すれば良い。ポリオールとの速やかなウレタン反応性や水との反応の抑制などの観点からは、脂環族ジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0050】
親水性ポリウレタン系重合体の重量平均分子量は、下限値として、好ましくは5000であり、より好ましくは7000であり、さらに好ましくは8000であり、特に好ましくは10000であり、上限値として、好ましくは50000であり、より好ましくは40000であり、さらに好ましくは30000であり、特に好ましくは20000である。
【0051】
親水性ポリウレタン系重合体は、末端にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有していても良い。親水性ポリウレタン系重合体の末端にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有することにより、本発明の効果がより一層発現され得る。
【0052】
<A−2−2.エチレン性不飽和モノマー>
エチレン性不飽和モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーであれば、任意の適切なモノマーを採用し得る。エチレン性不飽和モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0053】
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルを含む。エチレン性不飽和モノマー中の(メタ)アクリル酸エステルの含有割合は、下限値として、好ましくは80重量%であり、より好ましくは85重量%であり、上限値として、好ましくは100重量%であり、より好ましくは98重量%である。(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0054】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、好ましくは、炭素数が1〜20のアルキル基(シクロアルキル基、アルキル(シクロアルキル)基、(シクロアルキル)アルキル基も含む概念)を有するアルキル(メタ)アクリレートである。上記アルキル基の炭素数は、好ましくは4〜18である。なお、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルの意味であり、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートの意味である。
【0055】
炭素数が1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。炭素数が1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0056】
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な極性モノマーをさらに含む。エチレン性不飽和モノマー中の極性モノマーの含有割合は、下限値として、好ましくは0重量%であり、より好ましくは2重量%であり、上限値として、好ましくは20重量%であり、より好ましくは15重量%である。極性モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0057】
極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;などが挙げられる。
【0058】
<A−2−3.連続油相成分中のその他の成分>
連続油相成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分が含まれ得る。このようなその他の成分としては、代表的には、好ましくは、重合開始剤、架橋剤、触媒、酸化防止剤、有機溶媒などが挙げられる。このようなその他の成分は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0059】
重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤、レドックス重合開始剤などが挙げられる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。
【0060】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、過酸化物、ペルオキシ炭酸、ペルオキシカルボン酸、過硫酸カリウム、t−ブチルペルオキシイソブチレート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
【0061】
光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;ダロキュア−2959)、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;ダロキュア−1173)、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−651)、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−184)などのアセトフェノン系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系光重合開始剤;その他のハロゲン化ケトン;アシルフォスフィンオキサイド(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−819);などを挙げることができる。
【0062】
重合開始剤は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0063】
重合開始剤の含有割合は、連続油相成分全体に対し、下限値として、好ましくは0.05重量%であり、より好ましくは0.1重量%であり、上限値として、好ましくは5.0重量%であり、より好ましくは1.0重量%である。重合開始剤の含有割合が連続油相成分全体に対して0.05重量%未満の場合には、未反応のモノマー成分が多くなり、得られる多孔質材料中の残存モノマー量が増加するおそれがある。重合開始剤の含有割合が連続油相成分全体に対して5.0重量%を超える場合には、得られる多孔質材料の機械的物性が低下するおそれがある。
【0064】
なお、光重合開始剤によるラジカル発生量は、照射する光の種類や強度や照射時間、モノマーおよび溶剤混合物中の溶存酸素量などによっても変化する。そして、溶存酸素が多い場合には、光重合開始剤によるラジカル発生量が抑制され、重合が十分に進行せず、未反応物が多くなることがある。したがって、光照射の前に、反応系中に窒素等の不活性ガスを吹き込み、酸素を不活性ガスで置換しておく、または、減圧処理によって脱気しておくことが好ましい。
【0065】
架橋剤は、典型的には、ポリマー鎖同士を連結して、より三次元的な分子構造を構築するために用いられる。架橋剤の種類と含有量の選択は、得られる多孔質材料に所望される構造的特性、機械的特性、および流体処理特性に左右される。架橋剤の具体的な種類および含有量の選択は、多孔質材料の構造的特性、機械的特性、および流体処理特性の望ましい組み合わせを実現する上で重要となる。
【0066】
架橋剤としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、およびそれらの混合物が挙げられる。多官能(メタ)アクリレートとしては、ジアクリレート類、トリアクリレート類、テトラアクリレート類、ジメタクリレート類、トリメタクリレート類、テトラメタクリレート類などが挙げられる。多官能(メタ)アクリルアミドとしては、ジアクリルアミド類、トリアクリルアミド類、テトラアクリルアミド類、ジメタクリルアミド類、トリメタクリルアミド類、テトラメタクリルアミド類などが挙げられる。
【0067】
多官能(メタ)アクリレートは、例えば、ジオール類、トリオール類、テトラオール類、ビスフェノールA類などから誘導できる。具体的には、例えば、1,10−デカンジオール、1,8−オクタンジオール、1,6ヘキサン−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4ブタン−2−エンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性物などから誘導できる。
【0068】
多官能(メタ)アクリルアミドは、例えば、対応するジアミン類、トリアミン類、テトラアミン類などから誘導できる。
【0069】
架橋剤としては、上記の他に、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、コポリエステル(メタ)アクリレート、オリゴマージ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0070】
架橋剤は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0071】
架橋剤の含有割合は、親水性ポリウレタン系重合体とエチレン性不飽和モノマーとの合計量に対し、下限値として、好ましくは10重量%であり、より好ましくは20重量%であり、さらに好ましくは30重量%であり、上限値として、80重量%であり、より好ましくは70重量%であり、さらに好ましくは65重量%である。架橋剤の含有割合が親水性ポリウレタン系重合体とエチレン性不飽和モノマーとの合計量に対して10重量%未満の場合には、耐熱性の低下に伴い高含水架橋重合体を脱水する工程において収縮により気泡構造が殆ど崩れてしまうおそれがある。架橋剤の含有割合が親水性ポリウレタン系重合体とエチレン性不飽和モノマーとの合計量に対して80重量%を超える場合には、得られる多孔質材料の機械的特性が低下するおそれがある。
【0072】
触媒としては、例えば、ウレタン反応触媒が挙げられる。ウレタン反応触媒としては、任意の適切な触媒を採用し得る。具体的には、例えば、ジブチル錫ジラウリレートが挙げられる。
【0073】
触媒の含有割合は、目的とする触媒反応に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0074】
触媒は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0075】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0076】
酸化防止剤の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0077】
酸化防止剤は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0078】
有機溶媒としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な有機溶媒を採用し得る。
【0079】
有機溶媒の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0080】
有機溶媒は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0081】
≪≪B.W/O型エマルションの製造方法≫≫
本発明の発泡体シートを得るために用い得るW/O型エマルションを製造する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。本発明の発泡体シートを得るために用い得るW/O型エマルションを製造する方法としては、例えば、連続油相成分と水相成分を連続的に乳化機に供給することでW/O型エマルションを形成する「連続法」や、連続油相成分に対して適当な量の水相成分を乳化機に仕込み、攪拌しながら連続的に水相成分を供給することでW/O型エマルションを形成する「バッチ法」などが挙げられる。
【0082】
本発明の発泡体シートを得るために用い得るW/O型エマルションを製造する際、エマルション状態を得るための剪断手段としては、例えば、ローターステーターミキサー、ホモジナイザー、ミクロ流動化装置などを用いた高剪断条件の適用が挙げられる。また、エマルション状態を得るための別の剪断手段としては、例えば、動翼ミキサーまたはピンミキサーを使用した振盪、電磁撹拌棒などを用いた低剪断条件の適用による連続および分散相の穏やかな混合が挙げられる。
【0083】
「連続法」によってW/O型エマルションを調製するための装置としては、例えば、静的ミキサー、ローターステーターミキサー、ピンミキサーなどが挙げられる。撹拌速度を上げることで、または、混合方法でW/O型エマルション中に水相成分をより微細に分散するようデザインされた装置を使用することで、より激しい撹拌を達成しても良い。
【0084】
「バッチ法」によってW/O型エマルションを調製するための装置としては、例えば、手動での混合や振盪、被動動翼ミキサー、3枚プロペラ混合羽根などが挙げられる。
【0085】
連続油相成分を調製する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。連続油相成分を調製する方法としては、代表的には、例えば、親水性ポリウレタン系重合体とエチレン性不飽和モノマーを含む混合シロップを調製し、続いて、該混合シロップに、重合開始剤、架橋剤、その他の任意の適切な成分を配合し、連続油相成分を調製することが好ましい。
【0086】
親水性ポリウレタン系重合体を調製する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。親水性ポリウレタン系重合体を調製する方法としては、代表的には、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとジイソシアネート化合物とをウレタン反応触媒の存在下で反応させることにより得られる。
【0087】
≪≪C.発泡体シート≫≫
本発明の発泡体シートを得るために用い得るW/O型エマルションは、賦形および重合することによって、本発明の発泡体シートを製造し得る。本発明の発泡体シートは、シート状であれば、その厚み、長辺および短辺の長さは、任意の適切な値を採り得る。
【0088】
本発明の発泡体シートの製造方法としては、例えば、連続的に連続油相成分と水相成分を乳化機に供給して本発明の発泡体シートを得るために用い得るW/O型エマルションを調製し、続いて、得られたW/O型エマルションを重合して含水重合体を製造し、続いて、得られた含水重合体を脱水する、「連続法」が挙げられる。発泡体シートの製造方法としては、また、例えば、連続油相成分に対して適当な量の水相成分を乳化機に仕込み、攪拌しながら連続的に水相成分を供給することで本発明の発泡体シートを得るために用い得るW/O型エマルションを調製し、得られたW/O型エマルションを重合して含水重合体を製造し、続いて、得られた含水重合体を脱水する、「バッチ法」が挙げられる。
【0089】
W/O型エマルションを連続的に重合する連続重合法は生産効率が高く、重合時間の短縮効果と重合装置の短縮化とを最も有効に利用できるので好ましい方法である。
【0090】
本発明の発泡体シートは、より具体的には、好ましくは、
本発明の発泡体シートを得るために用い得るW/O型エマルションを調製する工程(I)と、
得られたW/O型エマルションを賦形する工程(II)と、
賦形されたW/O型エマルションを重合する工程(III)と、
得られた含水重合体を脱水する工程(IV)と、
を含む製造方法によって製造することができる。ここで、得られたW/O型エマルションを賦形する工程(II)と賦形されたW/O型エマルションを重合する工程(III)とは少なくとも一部を同時に行っても良い。
【0091】
工程(II)において、W/O型エマルションを賦形する方法としては、任意の適切な賦形方法を採用し得る。例えば、走行するベルト上にW/O型エマルションを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状に賦形する方法が挙げられる。また、熱可塑性樹脂フィルムの一面に塗工して賦形する方法が挙げられる。
【0092】
工程(II)において、W/O型エマルションを賦形する方法として、熱可塑性樹脂フィルムの一面に塗工して賦形する方法を採用する場合、塗工する方法としては、例えば、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーターなどを用いる方法が挙げられる。
【0093】
工程(III)において、賦形されたW/O型エマルションを重合する方法としては、任意の適切な重合方法を採用し得る。例えば、加熱装置によってベルトコンベアーのベルト表面が加温される構造の、走行するベルト上にW/O型エマルションを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状に賦形しつつ加熱によって重合する方法や、活性エネルギー線の照射によってベルトコンベアーのベルト表面が加温される構造の、走行するベルト上にW/O型エマルションを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状に賦形しつつ活性エネルギー線の照射によって重合する方法が挙げられる。
【0094】
加熱によって重合する場合、重合温度(加熱温度)は、下限値として、好ましくは23℃であり、より好ましくは50℃であり、さらに好ましくは70℃であり、特に好ましくは80℃であり、最も好ましくは90℃であり、上限値としては、好ましくは150℃であり、より好ましくは130℃であり、さらに好ましくは110℃である。重合温度が23℃未満の場合は、重合に長時間を要し、工業的な生産性が低下するおそれがある。重合温度が150℃を越える場合は、得られる発泡体シートの孔径が不均一となるおそれや、発泡体シートの強度が低下するおそれがある。なお、重合温度は、一定である必要はなく、例えば、重合中に2段階や多段階で変動させてもよい。
【0095】
活性エネルギー線の照射によって重合する場合、活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線などが挙げられる。活性エネルギー線としては、好ましくは、紫外線、可視光線であり、より好ましくは、波長が200nm〜800nmの可視〜紫外の光である。W/O型エマルションは光を散乱させる傾向が強いため、波長が200nm〜800nmの可視〜紫外の光を用いればW/O型エマルションに光を貫通させることができる。また、200nm〜800nmの波長で活性化できる光重合開始剤は入手しやすく、光源が入手しやすい。
【0096】
活性エネルギー線の波長は、下限値として、好ましくは200nmであり、より好ましくは300nmであり、上限値として、好ましくは800nmであり、より好ましくは450nmである。
【0097】
活性エネルギー線の照射に用いられる代表的な装置としては、例えば、紫外線照射を行うことができる紫外線ランプとして、波長300〜400nm領域にスペクトル分布を持つ装置が挙げられ、その例としては、ケミカルランプ、ブラックライト(東芝ライテック(株)製の商品名)、メタルハライドランプなどが挙げられる。
【0098】
活性エネルギー線の照射を行う際の照度は、照射装置から被照射物までの距離や電圧の調節によって、任意の適切な照度に設定され得る。例えば、特開2003-13015号公報に開示された方法によって、各工程における紫外線照射をそれぞれ複数段階に分割して行い、それにより重合反応の効率を精密に調節することができる。
【0099】
紫外線照射は、重合禁止作用のある酸素が及ぼす悪影響を防ぐために、例えば、熱可塑性樹脂フィルム等の基材の一面にW/O型エマルションを塗工して賦形した後に不活性ガス雰囲気下で行うことや、熱可塑性樹脂フィルム等の基材の一面にW/O型エマルションを塗工して賦形した後にシリコーン等の剥離剤をコートしたポリエチレンテレフタレート等の紫外線は通過するが酸素を遮断するフィルムを被覆させて行うことが好ましい。
【0100】
熱可塑性樹脂フィルムとしては、一面にW/O型エマルションを塗工して賦形できるものであれば、任意の適切な熱可塑性樹脂フィルムを採用し得る。熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムやシートが挙げられる。
【0101】
不活性ガス雰囲気とは、光照射ゾーン中の酸素を不活性ガスにより置換した雰囲気をいう。したがって、不活性ガス雰囲気においては、できるだけ酸素が存在しないことが必要であり、酸素濃度で5000ppm以下であることが好ましい。
【0102】
工程(IV)では、得られた含水重合体を脱水する。工程(III)で得られた含水重合体中には水相成分が分散状態で存在する。この水相成分を脱水により除去して乾燥することにより、本発明の発泡体シートが得られる。
【0103】
工程(IV)における脱水方法としては、任意の適切な乾燥方法を採用し得る。このような乾燥方法としては、例えば、真空乾燥、凍結乾燥、圧搾乾燥、電子レンジ乾燥、熱オーブン内での乾燥、赤外線による乾燥、またはこれらの技術の組み合わせ、などが挙げられる。
【0104】
本発明の発泡体シートは、特徴的に、好ましくは、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有する。この連続気泡構造は、ほとんどまたは全ての隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造であっても良いし、該貫通孔の数が比較的少ない半独立半連続気泡構造であっても良い。隣接する球状気泡間に有する貫通孔は、発泡体シートの物性に影響する。例えば、貫通孔の平均孔径が小さいほど、発泡体の強度が高くなる傾向がある。図13に、本発明の発泡体シートの断面SEM写真の写真図であって、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を明確に表す写真図を示す。なお、本明細書において「球状気泡」とは、厳密な真球状の気泡でなくても良く、例えば、部分的にひずみのある略球状の気泡や、大きなひずみを有する空間からなる気泡であっても良い。
【0105】
本発明の発泡体シートが有する球状気泡の平均孔径は、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは100μm未満であり、さらに好ましくは50μm未満であり、特に好ましくは20μm未満、最も好ましくは10μm未満である。本発明のW/O型エマルションから製造される発泡体シートが有する球状気泡の平均孔径の下限値は特に限定されず、例えば、好ましくは0.01μmであり、より好ましくは0.1μmであり、さらに好ましくは1μmである。
【0106】
本発明の発泡体シートが有する貫通孔の平均孔径は、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。本発明のW/O型エマルションから製造される発泡体シートが有する貫通孔の平均孔径の下限値は特に限定されず、例えば、好ましくは0.001μmであり、より好ましくは0.01μmであり、さらに好ましくは0.1μmである。
【0107】
本発明の発泡体シートは、クッション材、絶縁、断熱材、防音材、防塵材、濾過材、反射材などをはじめとする無数の用途に適する。
【実施例】
【0108】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、常温とは23℃を意味する。
【0109】
(分子量測定)
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により重量平均分子量を求めた。
装置:東ソー(株)製「HLC−8020」
カラム:東ソー(株)製「TSKgel GMHHR−H(20)」
溶媒:テトラヒドロフラン
標準物質:ポリスチレン
【0110】
(エマルションの保存安定性)
調製したW/O型エマルションを容量50mlの容器に約30g秤量し、調製直後から1時間後、3時間後、24時間後の遊離水の発生状況を観察し、常温下での静置保存安定性を評価した。
○:24時間後も遊離水なし
△:3時間までに遊離水なし
×:1時間までに遊離水なし
【0111】
(平均孔径の測定)
作製した発泡体シートをミクロトームカッターで厚み方向に切断したものを測定用試料とした。測定用試料の切断面を走査型電子顕微鏡(日立製、S−4800)で800〜2000倍にて撮影した。撮影した画像を用いて、任意範囲の球状気泡の孔径や、任意範囲の球状気泡間を貫通する貫通孔の孔径を測定し、その測定値から球状気泡の平均孔径や貫通孔の平均孔径を算出した。
【0112】
〔製造例1〕:混合シロップ1の調製
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、エチレン性不飽和モノマーとしてアクリル酸2−エチルヘキシル(東亜合成(株)製、以下「2EHA」と略す)からなるモノマー溶液173.2重量部と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしてアデカ(登録商標)プルロニックL−61(分子量2000、ADEKA(株)製、ポリエーテルポリオール)100重量部と、ウレタン反応触媒としてジブチル錫ジラウレート(キシダ化学(株)製、以下「DBTL」と略す)0.015重量部とを投入し、攪拌しながら、水素化キシリレンジイソシアネート(武田薬品(株)製、タケネート600、以下「HXDI」と略す)15.5重量部を滴下し、65℃で4時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.6であった。その後、メタノール(キシダ化学(株)製、特級)1.9重量部を滴下し、65℃で2時間反応させ、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップを得た。得られた親水性ポリウレタン系重合体の重量平均分子量は1.4万であった。得られた親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ100重量部に対して2EHAを48重量部、極性モノマーとしてアクリル酸(東亜合成社製、以下、「AA」と略す)12重量部を加え、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ1とした。
【0113】
〔製造例2〕:混合シロップ2の調製
製造例1における混合シロップ1の調製において、2EHAを168重量部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしてアデカ(登録商標)プルロニックL−61の代わりにアデカ(登録商標)プルロニックL−62(分子量2500、ADEKA(株)製、ポリエーテルポリオール)を100重量部、DBTLを0.014重量部投入し、攪拌しながら、HXDIを12.4重量部滴下し、65℃で4時間反応させた。その後、メタノール(キシダ化学(株)製、特級)1.5重量部を滴下し、65℃で2時間反応させ、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップを得た。得られた親水性ポリウレタン系重合体の重量平均分子量は1.5万であった。得られた親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ100重量部に対して2EHAを48重量部、極性モノマーとしてAAを12重量部加え、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ2とした。
【0114】
〔製造例3〕:混合シロップ3の調製
製造例1におけるシロップ1の調製において、2EHAを165重量部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしてアデカ(登録商標)プルロニックL−61の代わりにアデカ(登録商標)プルロニックL−64(分子量2900、ADEKA(株)製、ポリエーテルポリオール)を100重量部、DBTLを0.014重量部投入し、攪拌しながら、HXDIを10.7重量部滴下し、65℃で4時間反応させた。その後、メタノール(キシダ化学(株)製、特級)1.3重量部を滴下し、65℃で2時間反応させ、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップを得た。得られた親水性ポリウレタン系重合体の重量平均分子量は1.5万であった。得られた親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ100重量部に対して2EHAを48重量部、極性モノマーとしてAAを12重量部加え、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ3とした。
【0115】
〔製造例4〕:混合シロップ4の調製
製造例1におけるシロップ1の調製において、2EHA中にポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしてアデカ(登録商標)プルロニックL−61の代わりにアデカ(登録商標)プルロニックL−62(分子量2500、ADEKA(株)製、ポリエーテルポリオール)を100重量部とDBTLを投入し、攪拌しながら、HXDIを滴下し、65℃で4時間反応させた後、メタノールの代わりに2−ヒドロキシエチルアクリレート(キシダ化学(株)製、以下「HEA」と略す)5.6重量部を滴下し、65℃で2時間反応させ、両末端にアクリロイル基を有する親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップを得た。得られた両末端にアクリロイル基を有する親水性ポリウレタン系重合体の重量平均分子量は1.5万であった。得られた両末端にアクリロイル基を有する親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ100重量部に対して2EHAを48重量部、極性モノマーとしてAAを12重量部加え、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ4とした。
【0116】
〔実施例1〕
製造例1で得られた親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ1の100重量部に、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名「NKエステルA−HD−N」)30重量部、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名「ルシリンTPO」)0.5重量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・ジャパン社製、商品名「イルガノックス1010」)1.0重量部を均一混合し、連続油相成分(以下、「油相」と称する)とした。一方、上記油相100重量部に対して水相成分(以下、「水相」と称する)としてイオン交換水150重量部を常温下、上記油相を仕込んだ乳化機である攪拌混合機内に連続的に滴下供給し、安定なW/O型エマルションを調製した。なお、水相と油相の重量比は60/30であった。
調製直後のW/O型エマルションを、光照射後の厚さが300μmとなるように離型処理された基材上に塗布し連続的に成形した。さらにその上に厚さ38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を照射し、厚さ300μmの高含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、上記高含水架橋重合体を130℃にて10分間に亘って加熱することによって、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(1A)を得た。
さらに、W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存したW/O型エマルションについても、同様の操作により、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(1B)を得た。
結果を表1に示した。
【0117】
〔実施例2〕
実施例1において、水相としてイオン交換水300重量部を常温下、連続的に滴下供給した以外は、実施例1と同様に行い、安定なW/O型エマルションを調製した。水相と油相の重量比は75/25であった。
調製直後のW/O型エマルションを、光照射後の厚さが300μmとなるように離型処理された基材上に塗布し連続的に成形した。さらにその上に厚さ38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を照射し、厚さ300μmの高含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、上記高含水架橋重合体を130℃にて10分間に亘って加熱することによって、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(2A)を得た。
さらに、W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存したW/O型エマルションについても、同様の操作により、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(2B)を得た。
結果を表1に示した。
また、W/O型エマルション調製直後に作製した発泡体の断面SEM写真の写真図を図1に示し、W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存したエマルションを用いて作製した発泡体の断面SEM写真の写真図を図2に示した。
【0118】
〔実施例3〕
実施例1において、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ1の代わりに親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ2とした以外は、実施例1と同様に行い、安定なW/O型エマルションを調製した。水相と油相の重量比は60/30であった。
調製直後のW/O型エマルションを、光照射後の厚さが300μmとなるように離型処理された基材上に塗布し連続的に成形した。さらにその上に厚さ38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を照射し、厚さ300μmの高含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、上記高含水架橋重合体を130℃にて10分間に亘って加熱することによって、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(3A)を得た。
さらに、W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存したW/O型エマルションについても、同様の操作により、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(3B)を得た。
結果を表1に示した。
【0119】
〔実施例4〕
実施例3において、水相としてイオン交換水300重量部を常温下、連続的に滴下供給した以外は、実施例3と同様に行い、安定なW/O型エマルションを調製した。水相と油相の重量比は75/25であった。
調製直後のW/O型エマルションを、光照射後の厚さが300μmとなるように離型処理された基材上に塗布し連続的に成形した。さらにその上に厚さ38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を照射し、厚さ300μmの高含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、上記高含水架橋重合体を130℃にて10分間に亘って加熱することによって、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(4A)を得た。
さらに、W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存したW/O型エマルションについても、同様の操作により、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(4B)を得た。
結果を表1に示した。
また、W/O型エマルション調製直後に作製した発泡体の断面SEM写真の写真図を図3に示し、W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存したエマルションを用いて作製した発泡体の断面SEM写真の写真図を図4に示した。
【0120】
〔実施例5〕
実施例2において、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ1の代わりに親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ4とした以外は、実施例2と同様に行い、安定なW/O型エマルションを調製した。水相と油相の重量比は75/25であった。
調製直後のW/O型エマルションを、光照射後の厚さが300μmとなるように離型処理された基材上に塗布し連続的に成形した。さらにその上に厚さ38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を照射し、厚さ300μmの高含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、上記高含水架橋重合体を130℃にて10分間に亘って加熱することによって、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(5A)を得た。
さらに、W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存したW/O型エマルションについても、同様の操作により、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(5B)を得た。
結果を表1に示した。
また、W/O型エマルション調製直後に作製した発泡体の断面SEM写真の写真図を図5に示し、W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存したエマルションを用いて作製した発泡体の断面SEM写真の写真図を図6に示した。
【0121】
〔比較例1〕
実施例1において、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ1の代わりに親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ3とした以外は、実施例1と同様に行い、W/O型エマルションを調製した。水相と油相の重量比は60/30であった。W/O型エマルション調製直後に遊離水の発生を確認した。
調製直後のW/O型エマルションを、光照射後の厚さが300μmとなるように離型処理された基材上に塗布し連続的に成形した。さらにその上に厚さ38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を照射し、厚さ300μmの高含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、上記高含水架橋重合体を130℃にて10分間に亘って加熱することによって、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(C1A)を得た。
さらに、W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存したW/O型エマルションについても、同様の操作により、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(C1B)を得た。
結果を表2に示した。
また、W/O型エマルション調製直後に作製した発泡体の断面SEM写真の写真図を図7に示し、W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存したエマルションを用いて作製した発泡体の断面SEM写真の写真図を図8に示した。
【0122】
〔比較例2〕
実施例2において、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ1の代わりに親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ3とした以外は、実施例2と同様に行い、W/O型エマルションの調製を試みたが、含水率が約40%から乳化工程中に遊離水が発生し、W/O型エマルションを得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0123】
〔比較例3〕
実施例1において、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ1の代わりに、アデカ(登録商標)プルロニックL−62が20重量部、2EHAが72重量部、AAが8重量部からなる混合モノマー溶液1を100重量部とした以外は、実施例1と同様に行い、W/O型エマルションを調製した。水相と油相の重量比は60/30であった。W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存後に遊離水の発生を確認した。
調製直後のW/O型エマルションを、光照射後の厚さが300μmとなるように離型処理された基材上に塗布し連続的に成形した。さらにその上に厚さ38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を照射し、厚さ300μmの高含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、上記高含水架橋重合体を130℃にて10分間に亘って加熱することによって、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(C3A)を得た。
さらに、W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存したW/O型エマルションについても、同様の操作により、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(C3B)を得た。
結果を表2に示した。
【0124】
〔比較例4〕
実施例2において、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ1の代わりにアデカ(登録商標)プルロニックL−62が20重量部、2EHAが72重量部、AAが8重量部からなる混合モノマー溶液1を100重量部とした以外は、実施例2と同様に行い、W/O型エマルションを調製した。水相と油相の重量比は75/25であった。W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存後に遊離水の発生を確認した。
調製直後のW/O型エマルションを、光照射後の厚さが300μmとなるように離型処理された基材上に塗布し連続的に成形した。さらにその上に厚さ38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を照射し、厚さ300μmの高含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、上記高含水架橋重合体を130℃にて10分間に亘って加熱することによって、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(C4A)を得た。
さらに、W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存したW/O型エマルションについても、同様の操作により、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(C4B)を得た。
結果を表2に示した。
また、W/O型エマルション調製直後に作製した発泡体の断面SEM写真の写真図を図9に示し、W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存したエマルションを用いて作製した発泡体の断面SEM写真の写真図を図10に示した。
【0125】
〔比較例5〕
実施例1において、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ1の代わりに、モノオレイン酸ソルビタン(花王社製、商品名「レオドールSP−O10V」)が20重量部、2EHAが72重量部、AAが8重量部からなる混合モノマー溶液2を100重量部とした以外は、実施例1と同様に行い、W/O型エマルションを調製した。水相と油相の重量比は60/30であった。W/O型エマルション調製直後に遊離水の発生を確認した。
調製直後のW/O型エマルションを、光照射後の厚さが300μmとなるように離型処理された基材上に塗布し連続的に成形した。さらにその上に厚さ38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を照射し、厚さ300μmの高含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、上記高含水架橋重合体を130℃にて10分間に亘って加熱することによって、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(C5A)を得た。
さらに、W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存したW/O型エマルションについても、同様の操作により、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(C5B)を得た。
結果を表2に示した。
【0126】
〔比較例6〕
実施例2において、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ1の代わりにモノオレイン酸ソルビタン(花王社製、商品名「レオドールSP−O10V」)が20重量部、2EHAが72重量部、AAが8重量部からなる混合モノマー溶液2を100重量部とした以外は、実施例2と同様に行い、W/O型エマルションの調製を試みた。水相と油相の重量比は75/25であった。エマルション調製直後に遊離水の発生を確認した。また、W/O型エマルションの賦形工程および重合工程においても遊離水が確認された。
調製直後のW/O型エマルションを、光照射後の厚さが300μmとなるように離型処理された基材上に塗布し連続的に成形した。さらにその上に厚さ38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を照射し、厚さ300μmの高含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、上記高含水架橋重合体を130℃にて10分間に亘って加熱することによって、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(C6A)を得た。
さらに、W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存したW/O型エマルションについても、同様の操作により、厚さ約300μmの架橋型発泡体シート(C6B)を得た。
結果を表2に示した。
また、W/O型エマルション調製直後に作製した発泡体の断面SEM写真の写真図を図11に示し、W/O型エマルション調製から常温下で1時間静置保存したエマルションを用いて作製した発泡体の断面SEM写真の写真図を図12に示した。
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の発泡体シートは、クッション材、絶縁、断熱材、防音材、防塵材、濾過材、反射材などをはじめとする無数の用途に適する。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続油相成分と該連続油相成分と不混和性の水相成分を含むW/O型エマルションを重合して脱水することで得られる、発泡体シートであって、
該連続油相成分は、親水性ポリウレタン系重合体とエチレン性不飽和モノマーを含み、
該親水性ポリウレタン系重合体は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール由来のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位を含み、
該ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中の5重量%〜25重量%がポリオキシエチレンである、
発泡体シート。
【請求項2】
隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有する、請求項1に記載の発泡体シート。
【請求項3】
前記球状気泡の平均孔径が200μm以下である、請求項2に記載の発泡体シート。
【請求項4】
前記貫通孔の平均孔径が10μm以下である、請求項2に記載の発泡体シート。
【請求項5】
前記エチレン性不飽和モノマーが、(メタ)アクリル酸エステルを含む、請求項1から4までのいずれかに記載の発泡体シート。
【請求項6】
前記エチレン性不飽和モノマーが、前記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な極性モノマーをさらに含む、請求項5に記載の発泡体シート。
【請求項7】
前記親水性ポリウレタン系重合体が、末端にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する、請求項1から6までのいずれかに記載の発泡体シート。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−41491(P2012−41491A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185840(P2010−185840)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】