説明

発泡体及び該発泡体からなる寝具

【課題】 使用感の温度による変化が小さく、毒性の少ない、枕類、マットレス類等の寝具に好適に使用することができる発泡体を提供すること。
【解決手段】 シリコン系重合体を基材樹脂とし、40℃におけるアスカーFP硬度と−20℃におけるアスカーFP硬度の差が30以下である発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体、および、これを用いた枕類、マットレス類等の寝具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、枕、マットレス等の寝具、クッション、座布団、衣類用のパッド等に、軟質のポリウレタン発泡体が使用されており、ことに近年、低反発弾性のものが多く使用されている。
【0003】
しかしながら、低反発弾性を有するポリウレタン発泡体は、温度感受性が強く、温度が高くなると柔らかくなり、低くなると硬くなる傾向がある。このため、枕、マットレス等寝具とした際、使用環境温度の変化により感触が変化し、使用感が大きく変化するという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、特許文献1には、温度変化による高度上昇が少ないポリウレタンからなる発泡体が開示されているが、ポリウレタンは、加水分解性があり、また毒性の懸念されるイソシアネートを使用するという問題がある。
【特許文献1】特開2004−2591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、化学的に安定であり、かつ、温度差による硬度変化の小さい発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題の解決のため鋭意研究を重ねた結果、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体が、温度差による硬度変化が小さいことを見出し、かつ、これを枕類、マットレス類等の寝具として用いることにより、温度による使用感の変化が小さいことを見出し、本発明に至った。
【0007】
即ち、本発明の第一は、40℃におけるアスカーFP硬度と−20℃におけるアスカーFP硬度の差が30以下である、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体に関する。
【0008】
好ましい態様としては、
(1)前記シリコン系重合体が、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、を含んでなる液状樹脂組成物を硬化してなる、
(2)重合体(B)が、数平均分子量10,000以上の直鎖状重合体である、
(3)重合体(B)の主鎖を構成する繰返し単位が、オキシプロピレンである、
(4)硬化剤(A)/重合体(B)(モル/モル)が1/2以上である、
(5)25℃におけるアスカーFP硬度が、50以下である、
前記記載の発泡体に関する。
【0009】
本発明の第2は、前記記載の発泡体を使用してなる寝具に関し、好ましい態様としては、前記寝具が、枕類またはマットレス類である前記寝具に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発泡体は、化学的に安定であり、柔軟で、かつ、温度差による硬度変化が小さい。したがって、枕類、マットレス類等の寝具に適用した場合、温度による使用感の変化が小さく、冬場でも快適な使い心地の良い枕類、マットレス類等の寝具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の発泡体は、シリコン系重合体を基材樹脂とし、40℃におけるアスカーFP硬度と−20℃におけるアスカーFP硬度の差が30以下である。
【0012】
本発明においてアスカーFP硬度とは、アスカーFP硬度計(高分子計器(株)製)を用いて測定して得られた値である。本発明の発泡体は、40℃におけるアスカーFP硬度と−20℃におけるアスカーFP硬度の差が30以下であり、好ましくは、20以下である。40℃と−20℃のアスカーFP硬度の差が、当該範囲であると、枕類、マットレス類等の寝具として用いた場合、温度差による使用感の変化が小さいことから好ましい。アスカーFP硬度差が30を越える場合は、冬場就寝時に固すぎると感じ、また、体温によって使用温度が上昇した時、或いは、夏場では柔らかすぎると感じるなど、違和感がある。また、本発明の発泡体は、枕類、マットレス類等の寝具として用いた場合に好適な、柔軟な触感を得るために、25℃におけるアスカーFP硬度が50以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。
【0013】
本発明のシリコン系重合体は、分子骨格中にシロキサン単位を有した樹脂であれば、特に制限されるものではなく、例えば、主鎖がポリシロキサンから形成される、いわゆるシリコーンゴムやシリコーン樹脂と呼ばれるもののほか、主鎖の一部もしくは側鎖や架橋鎖としてシロキサン単位を有するものの、大部分が有機系高分子からなる、いわゆる変成シリコーン樹脂と呼ばれるものも含まれる。
【0014】
中でも、本発明の発泡体のシリコン系重合体としては、変成シリコーン樹脂、特に、付加型変成シリコーン樹脂と呼ばれる、ヒドロシリル基を有する化合物、アルケニル基を有する化合物、ヒドロシリル化触媒を含有する混合物を硬化してなる樹脂を使用することが、発泡成形性や機械物性のバランスに優れ、枕類、マットレス類等の寝具としての諸物性のバランスに優れることから好ましい。
【0015】
とりわけ、ヒドロシリル基を有する化合物として、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、アルケニル基を有する化合物として、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位またはオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)を使用することが、柔軟性のある発泡体が得られるため好ましい。
【0016】
前記ヒドロシリル基を有する化合物としては、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)(以下、単に硬化剤(A)と称す場合がある)が好ましい。即ち、硬化剤(A)は、後述する、アルケニル基を有する化合物の硬化剤として作用する。
【0017】
前記硬化剤(A)は、分子鎖中に少なくとも2個、好ましくは2〜100個、より好ましくは2〜70個、さらに好ましくは3〜50個のヒドロシリル基を有し、そのため、それぞれのヒドロシリル基が後述するアルケニル基を有する化合物の分子鎖中に存在するアルケニル基と反応して硬化する。前記ヒドロシリル基の数が2個より少ないと、本発明の組成物をヒドロシリル化反応により硬化させる場合の硬化速度が遅くなり、硬化不良を起こす場合がある。また、前記ヒドロシリル基の個数が100個より多くなると、硬化剤(A)の安定性、や本発明のシリコン系重合体の安定性が悪くなり、その上、硬化後も多量のヒドロシリル基がシリコン系重合体中に残存しやすくなり、クラックの原因となる場合がある。
【0018】
なお本発明において、ヒドロシリル基を1個有するとは、SiH結合を1個有することを言い、例えば、SiHの場合にはヒドロシリル基を2個有することになる。しかしながら、1つのSiに結合するHの数は、1つである方が硬化性は良くなり、また、柔軟性の点からも好ましい。
【0019】
硬化剤(A)の分子量は、後述する(D)成分の分散性や発泡体の加工性などの点から、数平均分子量(Mn)で30,000以下であることが好ましく、20,000以下がより好ましく、15,000以下であることがさらに好ましい。アルケニル基を有する化合物との反応性や相溶性を考慮すると、300〜10,000が特に好ましい。
【0020】
前記硬化剤(A)の構造について特に制限はないが、例えば、炭化水素系硬化剤やポリシロキサン系硬化剤が挙げられる。
【0021】
炭化水素系硬化剤としては、
一般式(1):R
(式中、X:少なくとも1個のヒドロシリル基を含む基、R:炭素数2〜150の1〜4価の炭化水素基、a:1〜4から選ばれる整数、但しXに1個のヒドロシリル基しか含まれない場合のaは2以上)
で示され、好適な具体例として、平均分子量が30,000以下であるヒドロシリル基を含有する炭化水素系硬化剤が挙げられる。
【0022】
前記Xの具体例としては、例えば―SiH(CH3−n、―SiH(C3−n、―SiHn(C3−n(以上のn=1〜3)、―SiH(C13)などのケイ素原子を1個だけ含有するヒドロシリル基、
【0023】
【化1】

などのケイ素原子を2個以上含むヒドロシリル基(化1)、
【0024】
【化2】

【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

化2〜化4などで示される鎖状、枝分かれ状、環状の各種の多価ハイドロジエンシロキサンより誘導されたヒドロシリル基などが挙げられる。なお、式中、m個の単位とp個の単位、n個の単位とq個の単位、m個の単位とp個の単位とx個の単位、n個の単位とq個の単にとy個の単位、m個の単位とn個の単位、さらにはm個の単位とn個の単位とp個の単位とq個の単位がブロック結合で結合しているように記載されているが、これらはブロック結合でもランダム結合でもよい。以下の記載においても同様である。
【0027】
前述の各種のヒドロシリル基のうち、ヒドロシリル基含有炭化水素系である硬化剤(A)が他の有機重合体との相溶性を損なう可能性が少ないという点から、一般式(1)のXの部分の分子量が500以下であるのが好ましく、さらにヒドロシリル基の反応性も考慮すれば、化5で示される基が好ましい。
【0028】
【化5】

一般式(1)中、Rは炭素数2〜150で1〜4価の炭化水素基を表し、重合体からなる基であってもよい。
【0029】
重合体でない具体例としては、特開平3−95266号公報などに記載されている化6、7に示すものなどが挙げられる。
【0030】
【化6】

【0031】
【化7】

また、重合体からなるR基の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレンなどのような炭素数2〜6のオレフィン系化合物を主モノマーとして重合させたもので、結合手を1〜4個有するもの、ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合させたり、前記オレフィン系化合物とジエン系化合物とを共重合させたりした後、水素添加したもので、結合手を1〜4個有するものなどが挙げられる。
【0032】
前記ヒドロシリル基含有炭化水素系である硬化剤(A)の中でも、Rが炭素数5〜20の炭化水素基で、Xが化5で示される基の場合の組み合わせが、反応性を上げ、良好な網目構造を取らせる点および重合体(B)との相溶性の点から好ましい。また、原料が容易に入手できる点からは、これらのなかでもRの炭素数が5〜12の炭化水素基であることがより好ましく、重合体(B)との相溶性が特に良くなる点からは、Xが化5で示される基の中でも環状ポリシロキサン化合物であることがより好ましい。この組み合わせによって得られる化合物が、炭化水素系硬化剤としては好ましい。その具体例としては、例えば、化8に示すものなどが挙げられる。
【0033】
【化8】

ヒドロシリル基含有炭化水素系である硬化剤(A)の製法については特に制限はなく、任意の方法で製造すればよい。例えば、(i)分子中にSiCl基を持つ炭化水素系硬化剤をLiAlH、NaBHなどの還元剤で処理して該硬化剤中のSiCl基をSiH基に還元する方法、(ii)分子内にある官能基Xを持つ炭化水素系化合物と分子内に前記官能基Xと反応する官能基Yおよびヒドロシリル基の両者を有する化合物とを反応させる方法、(iii)アルケニル基を含有する炭化水素系化合物に対して少なくとも2個のヒドロシリル基を持つポリヒドロシラン化合物を選択ヒドロシリル化することにより、反応後もヒドロシリル基を該炭化水素系化合物の分子中に残存させる方法、などが例示される。
【0034】
前記方法のうち、製造工程が一般に簡便なことから(iii)の方法が好適に用いられる。この場合、一部のポリヒドロシラン化合物に含まれるヒドロシリル基の2個以上が、炭化水素系化合物中のアルケニル基と反応して分子量が増大することがあるが、このように、分子量が増大したものを含むものを硬化剤(A)として用いても何ら差し支えない。
【0035】
ポリシロキサン系硬化剤の具体例としては、化9〜11に示すような鎖状、環状のポリオルガノハイドロジェンシロキサン(ポリオキシアルキレン変性体、スチレン類変性体、オレフィン変性体などを含む)が挙げられる。
【0036】
【化9】

(m、n:2≦m+n≦100、2≦m、0≦nを満たす整数、R:メチル基を基本とし、分子量が100〜10,000のポリオキシアルキレン基または炭素数2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有していてもよい。Rが複数個含まれる場合、これらは同じである必要はない。)
【0037】
【化10】

(m、nは、2≦m+n≦100,0≦m,0≦nを満たす整数、R:メチル基を基本とし、分子量が100〜10,000のポリオキシアルキレン基または炭素数2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有していてもよい。Rが複数個含まれる場合、これらは同じである必要はない。)
【0038】
【化11】

(m、nは、3≦m+n≦20,2≦m≦19,0≦n≦18を満たす整数、R:メチル基、分子量が100〜10,000のポリオキシアルキレン基または炭素数2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有していてもよい。Rが複数個含まれる場合、これらは同じである必要はない。)
アルケニル基を有する化合物との相溶性をより良くするためには、化9〜11の内、Rがフェニル基を含有しているものが好ましい。さらに入手のしやすさからRは、―CH―CH―C、―CH―CH(CH)―C、また、貯蔵安定性の点から―CH―CH(CH)―Cであることが好ましい。
【0039】
本発明におけるアルケニル基を有する化合物としては、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位が飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位である重合体(B)(以下、単に重合体(B)と称す場合がある)が好適に使用される。重合体(B)は、硬化剤(A)とヒドロシリル化反応して硬化する成分であり、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有するため、ヒドロシリル化反応が起こって高分子状となり、硬化する。重合体(B)に含まれるアルケニル基の数は、硬化剤(A)とヒドロシリル化反応するという点から少なくとも1個必要であるが、硬化性、柔軟性の点からは分子鎖の両末端にアルケニル基が存在するのが好ましい。
【0040】
重合体(B)の分子量は、取り扱いやすさなどの点から数平均分子量で500〜50,000が好ましく、さらには1,000〜30,000の液状物〜流動性を有するものであるのが好ましい。さらに、得られる発泡体の柔軟性や触感をよくするという観点からは、10,000〜50,000が好ましく、取り扱いのしやすさも考慮すると10,000〜30,000がより好ましく、12,000〜25,000がさらに好ましい。
【0041】
重合体(B)の主鎖を構成する繰り返し単位が飽和炭化水素系単位からなる場合の主鎖は、(1)エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレンなどのような炭素数2〜6のオレフィン系化合物を主モノマーとして重合させる、
(2)ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合させたもの、或いは、(1)記載のオレフィン系化合物とジエン系化合物との共重合させたものを水素添加する、などの方法により得ることができる。末端に官能基を導入しやすい、分子量を制御しやすい、末端官能基の数を多くすることができるなどの点から、イソブチレンを主モノマーとした重合体やブタジエン、イソプレンを重合させたものに水素添加した水添ポリブタジエン系重合物あるいは水添ポリイソプレン系重合体が好ましい。なお、本明細書にいう飽和炭化水素系単位をからなる主鎖とは、芳香環以外の炭素―炭素不飽和結合を実質的に含有しないことを意味する。
【0042】
前記イソブチレンを主モノマーとした重合体(以下、イソブチレン系重合体と称す場合がある)は、単量体単位の全てがイソブチレン単位から形成されていても良く、イソブチレンと共重合性を有する他の単量体単位を含んでいても良い。その場合、他の単量体単位は、イソブチレン系重合体の好ましくは50重量%未満、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。イソブチレンと共重合性を有する他の単量体単位としては、例えば炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アクリルシラン類などが挙げられる。このような共重合成分の具体例としては、1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン、ビニルシクロヘキサン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、β−ピネン、インデン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン、アリルトリクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。前記イソブチレンと共重合性を有する単量体成分の中でも、アルコキシシリル基を含まない化合物は、共重合が容易であり、好ましい。
【0043】
前記水添ポリブタジエン系重合体や水添ポリイソプレン系重合体などにおいても、前記イソブチレン系重合体の場合と同様に、主成分となる単量体単位の他に、前記のごとき他の単量体単位を含有させてもよい。
【0044】
また、重合体(B)として用いる飽和炭化水素系単位からなる場合の主鎖中には、本発明の目的が達成される範囲でブタジエン、イソプレンのように重合後二重結合の残るようなポリエン化合物のごとき単量体単位を少量、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下の範囲で含有させてもよい。
【0045】
重合体(B)の主鎖となる飽和炭化水素系重合体にアルケニル基を導入する方法については、種々提案されている公知の方法を用いることができるが、重合後にアルケニル基を導入する方法と重合中にアルケニル基を導入する方法とに大別することができる。
【0046】
重合後にアルケニル基を導入する方法としては、例えば、末端、主鎖または側鎖の水酸基を―ONaや―OKなどの基にした後、一般式(2):
CH=CH―R―Y (2)
(Y:塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、R:―R―、―R―OCO―、または、―R―CO―(R:炭素数1〜20の2価の炭化水素基で、好ましい具体例としてはアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基が挙げられる)で示される2価の有機基で、化12(R:炭素数1〜10の炭化水素基)より選ばれた2価の基が特に好ましい)
【0047】
【化12】

で示される有機ハロゲン化合物を反応させることにより、末端、主鎖または側鎖にアルケニル基を有する飽和炭化水素系重合体が製造できる。前記飽和炭化水素系重合体の好ましい具体例としては、両末端にアルケニル基を2個有する直鎖状の数平均分子量(Mn)が10,000〜20,000でMw(重量平均分子量)/Mnが1.1〜1.2程度のポリイソブチレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン系重合体などが挙げられる。
【0048】
重合体(B)の主鎖を構成する繰返し単位がオキシアルキレン系単位である場合、主鎖を形成する出発物質として活性水素を2個以上有する化合物、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノール化合物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールなどを用い、C〜Cのアルキレンオキシドを重合させることにより製造される。主鎖を構成する繰返し単位がオキシアルキレン系単位である重合体(B)の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドの2種以上のランダムまたはブロック共重合体などが挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種の末端に、飽和炭化水素系の重合体(B)の場合と同様に、アルケニル基が導入される方が好ましい。
【0049】
前記主鎖を構成する繰返し単位がオキシアルキレン系単位である重合体(B)の好ましい具体例としては、柔軟性および触感の点から、主鎖の繰返し単位がオキシプロピレン単位のものが好ましい。
【0050】
本発明のシリコン系重合体を基材樹脂とした発泡体において、硬化剤(A)および重合体(B)の含有割合は、硬化剤(A)中のヒドロシリル基および重合体(B)中のアルケニル基の数にもよるが、柔軟性および触感の点から、硬化剤(A)/重合体(B)(モル/モル)1/2以上であることが好ましく、3/4以上であることがより好ましく、4/5以上であることがさらに好ましい。
【0051】
さらに、硬化剤(A)中のヒドロシリル基の含有量が、重合体(B)中のアルケニル基1モル当り0.1〜50モルとなるようにすることが好ましく、0.2〜30モルとなるようにすることがより好ましい。
【0052】
本発明のヒドロシリル化触媒(C)としては、ヒドロシリル化触媒として使用しうるものである限り、特に制限はなく、任意のものを使用し得る。ヒドロシリル化触媒(C)の具体例としては、白金の担体、アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO))、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh、Pt(PBu)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(以上の式中、Me:メチル基、Bu:ブチル基、Vi:ビニル基、Ph:フェニル基、m、nは1以上の整数)、ジカルボニルジクロロ白金などが挙げられる。また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3,159,601号明細書および米国特許第3,159,662号明細書に記載された白金−炭化水素複合体、ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3,220,972号明細書に記載された白金アルコラート触媒、モディック(Modic)の米国特許第3,516,946号明細書に記載された塩化白金酸−オレフィン複合体なども本発明に有用に使用し得る。さらに、白金化合物以外の触媒も使用することができ、その具体例としては、RhCl(PPh、RhCl、Rh/Al2O、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiClなど(Phはフェニル基を表す)が挙げられる。上記で挙げられたヒドロシリル化触媒群より選ばれる少なくとも1種が、ヒドロシリル化触媒(C)として用いられる。それらの中でも、触媒活性および安全性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体が好ましい。
【0053】
ヒドロシリル化触媒(C)の含有量としては、重合体(B)のアルケニル基1モルに対して10−1〜10−8モルが好ましく、10−3〜10−6モルがより好ましい。前記含有量が10−8モルより少ないと十分に硬化が進行しない場合がある。また10−1よりも多いと、硬化の制御が困難な場合や着色する場合がある。
【0054】
本発明においては、シリコン系重合体を基材樹脂とし、該基材樹脂に発泡剤(D)を含ませ発泡させることにより、発泡体とする。
【0055】
本発明の発泡剤(D)としては、特に限定するものではないが、例えば、通常、ポリウレタン、フェノール、ポリスチレン、ポリオレフィン等の有機発泡体に用いられる、揮発性液体や気体等の物理発泡剤、加熱分解もしくは化学反応により気体を発生させる化学発泡剤、ヒドロシリル基と反応して水素を発生させる活性水素基含有化合物などが挙げられ、これらを併用しても良い。これらのうちでも、活性水素基含有化合物が、連続気泡率の向上や柔軟性等の物性発現に寄与するため、好ましく用いられる。
【0056】
前記物理発泡剤としては、ヒドロシリル化反応を阻害しないものであれば特に限定はないが、発泡性、および作業性と安全性の点から、物理発泡剤の沸点は、100℃以下であることが好ましく、50℃以下がより好ましい。具体的には、炭化水素、フロン、塩化アルキル、エーテルなどの有機化合物、二酸化炭素、窒素、空気などの無機化合物が挙げられるが、環境適合性の観点から、炭化水素、エーテル、二酸化炭素、窒素、空気から選ばれる化合物を用いることが好ましい。
【0057】
このうち、炭化水素としては、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタンクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0058】
また、エーテル類としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、tert−ブチルエチルエーテル、1,1−ジメチルプロピルメチルエーテル等が挙げられる。
【0059】
なお、発泡体製造時に、空気中で機械的な攪拌を行う場合は、攪拌に伴って巻き込まれた空気により気泡が形成される場合があり、これもまた物理発泡剤のひとつであると考える。ただし、これら物理発泡剤を使用する場合、残存物による発泡体成形後の物性変化が懸念されることなどから、発泡体製造後、使用した物理発泡剤の沸点以上の温度で加熱養生することにより、残留発泡剤を取り除いておくことが好ましい。
【0060】
前記化学発泡剤としては、ヒドロシリル化反応を阻害しないものであれば特に限定はないが、例えば、NaHCOなどの無機系化学発泡剤や有機系化学発泡剤などが挙げられる。
【0061】
前記活性水素基含有化合物としては、1級飽和炭化水素アルコール、カルボン酸または水が好ましく用いられる。
【0062】
その具体例としては、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテルなどの1価のアルコール;
【0063】
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,9−ノナメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、グリセリンモノアリルエーテルなどの多価アルコール;
ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、これらの共重合体、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオール(ソルビトール、スクロース、テトラエチレンジアミン、エチレンジアミン等を開始剤とした1分子内にヒドロキシル基を3個以上含むものも含む);
【0064】
アジペート系ポリオール、ポリカプロラクトン系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオールなどのポリエステルポリオール;エポキシ変性ポリオール;ポリエーテルエステルポリオール;ベンジリックエーテル型フェノールポリオールなどのフェノール系ポリオール;ルミフロン(旭硝子社製)などのフッ素ポリオール;ポリブタジエンポリオール;
【0065】
水添ポリブタジエンポリオール;ひまし油系ポリオール;ハロゲン含有難燃性ポリオール;リン含有難燃性ポリオール;
【0066】
酢酸、プロピオン酸等の一価の飽和カルボン酸等のカルボン酸類;
フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールS、フェノール樹脂などのフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物;
【0067】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、東亜合成化学工業(株)製「アロニクス5700」、4−ヒドロキシスチレン、日本触媒化学工業(株)製「HE−10」、「HE−20」、「HP−10」および「HP−20」(いずれも末端にヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルオリゴマー)、日本油脂(株)製のブレンマーシリーズとして、PPシリーズ(ポリプロピレングリコールメタクリレート)、ブレンマーPEシリーズ(ポリエチレングリコールモノメタクリレート)、ブレンマーPEPシリーズ(ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタクリレート)、ブレンマーAP−400(ポリプロピレングリコールモノアクリレート)、ブレンマーAE−350(ポリエチレングリコールモノアクリレート)、ブレンマーNKH−5050(ポリプロピレングリコールポリトリメチレンモノアクリレート)およびブレンマーGLM(グリセロールモノメタクリレート)、ヒドロキシル基含有ビニル系化合物とε−カプロラクトンとの反応により得られるε−カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルビニル系モノマーなどのヒドロキシル基含有ビニル系モノマー(なお、ヒドロキシル基含有ビニル系モノマーは、硬化剤(A)成分と発泡剤(D)の何れとしても利用できる);
【0068】
前記ヒドロキシル基含有ビニル系モノマーとアクリル酸、メタクリル酸、それらの誘導体などとの共重合により得ることが可能なヒドロキシル基を有するアクリル樹脂;その他アルキド樹脂、エポキシ樹脂などのヒドロキシル基を有する樹脂が挙げられ、発泡速度の調整のために、2種類以上の活性水素含有化合物を併用することも可能である。
【0069】
これらの活性水素基含有化合物のなかでも、反応性や取り扱い性の点から、水、アルコール、およびポリエーテルポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有させることが好ましく、また、柔軟性や透湿性付与の観点からは、酸素が直接炭素に結合している化合物または水が好ましい、即ち水、エタノール、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0070】
本発明における活性水素基含有化合物中の水酸基当量は、該水酸基当量が小さくなると、添加する活性水素基含有化合物の体積が大きくなり、発泡倍率が上がらなくなるため、0.1mmol/g以上が好ましく、さらに反応性の点から0.5mmol/g以上がより好ましい。
【0071】
なお、シリコン系重合体として、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)を含んでなる液状樹脂組成物に、発泡剤として1分子内に2個以上のヒドロキシル基、もしくはヒドロキシル基とアルケニル基を有する活性水素化合物を用いた場合は、硬化剤(A)中のヒドロシリル基と、発泡剤(D)中の活性水素化合物中のヒドロキシル基との反応により、水素ガスを発生すると共に架橋構造を形成するため、発泡性の低下や発泡体の機械強度が低下する場合があるので、配合の際には以下のようにすることが好ましい。
【0072】
本発明において発泡剤(D)として活性水素化合物を用いる場合、硬化剤(A)、重合体(B)および発泡剤(D)の配合割合は、各化合物の構造、目的とする発泡倍率、目的とする物性により適宜選択されるものであって特に限定はされないが、硬化剤(A)中のヒドロシリル基のモル数:xと、重合体(B)中のアルケニル基のモル数:yおよび発泡剤(D)中のヒドロキシル基のモル数:zの和との比率が、x/(y+z)=1/10〜50/1であることが好ましく、x/(y+z)=1/5〜30/1であることがより好ましく、x/(y+z)=1/2〜20/1であることがさらに好ましい。x/(y+z)が50/1を越えると、架橋密度が低くなり、十分な機械的強度が得られない場合があり、x/(y+z)が1/10未満であると、十分な発泡、硬化が起こらない場合がある。
【0073】
また、重合体(B)のアルケニル基のモル数:yと発泡剤(D)のヒドロキシル基のモル数:zとの比率には特に限定はなく、目的とする発泡倍率、目的とする物性、硬化剤(A)の骨格、発泡剤(D)の種類により、適宜選定することが出来るが、一般的には、y:z=100:1〜1:100が好ましく、y:z=10:1〜1:20がより好ましい。
【0074】
なお、基材樹脂中にはその他に、本発明の効果をなくさない程度に、気泡調整剤、充填材、貯蔵安定剤、増粘剤などを必要に応じて添加してもよい。
【0075】
さらに、必要に応じて、充填剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、ポリジメチルシロキサン―ポリアルキレンオキシド系界面活性剤あるいは有機界面活性剤(ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル等)などの整泡剤、酸あるいは塩基性化合物(ヒドロシリル基とヒドロキシル基との反応調整のための添加剤であり、酸で縮合反応を抑制し、塩基で加速する。)、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、カップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤などを、本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0076】
また、整泡性や、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)の相溶性を向上する目的で、界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤の種類としては特に限定されるものではないが、具体例としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエ一テル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化アルコキシプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム液、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン生界面活性剤などが挙げられる。
【0077】
さらには、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)を含んでなる液状樹脂組成物に、必要であれば貯蔵安定性を改良するために貯蔵安定性改良剤を添加してもよい。貯蔵安定性改良剤としては、硬化剤(A)の貯蔵安定剤として知られている通常の安定剤で所期の目的を達成するものであれば使用することができる。このような貯蔵安定性改良剤の好ましい例としては、例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、チッ素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などが挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。具体例としては、例えばベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、ジメチルアセチレンジカルボキシレート、2−ペンテンニトリル、2,3−ジクロロプロペン、キノリンなどが挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができるが、これらに限定されるわけではない。これらの中では、ポットライフおよび速硬化性の両立という点から、チアゾール、ベンゾチアゾール、ジメチルマレートが特に好ましい。
【0078】
前記貯蔵安定性改良剤の使用量は、硬化剤(A)および重合体(B)に均一に分散するかぎりほぼ任意に選ぶことができるが、硬化剤(A)1モルに対し、10−6〜10−1モルの範囲で用いるのが好ましい。前記使用量が10−6モル未満では硬化剤(A)の貯蔵安定性が充分に改良されない場合があり、また10−1モルを超えると硬化性が不充分になる場合がある。
【0079】
さらには、本発明の発泡体には、必要であれば、気泡調整剤を添加しても良い。該気泡調整剤の種類には特に限定はなく、通常使用される、例えばタルク、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、シリカなどの無機固体粉末や、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどのシリコーンオイル系化合物、フッ素系化合物などが挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種用いることができる。気泡調整剤の使用量は、通常使用される量でよい。具体的には、シリコン系重合体を100重量部としたときに、0.1〜100重量部が好ましく、0.5〜50重量部がより好ましい。
【0080】
本発明の発泡体の製造方法は、特に限定はないが、例えば以下のように製造できる。発泡剤(D)として液体や固体を用いる場合には、液体状の基材樹脂を混合した後、型枠内に注入、もしくはベルトコンベア上で連続的に塗工するなどした後、適当な条件で加熱硬化させながら発泡させることにより本発明のシリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体が得られる。
【0081】
発泡剤(D)として気体を用いる場合には、基材樹脂に気体である発泡剤(D)を密閉状態で共存させてから所定の圧力で圧縮し、その後、直ちに圧縮された樹脂原料をミキサーに移送し、高速撹拌し、気体を樹脂原料中に分散させる。気体が分散した樹脂原料を加圧する。加圧後に得られた樹脂原料を型枠内に、圧入などの手段によって入れ、加熱することにより本発明のシリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体が得られる。
【0082】
シリコン系重合体として、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、を含んでなる液状樹脂組成物を硬化してなるシリコン系重合体を使用する場合、以下のようにして製造することができる。
【0083】
発泡剤(D)として液体や固体を用いる場合には、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位またはオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)、および、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、必要に応じてその他の任意成分を加えて混合した後、型枠内に注入、もしくはベルトコンベア上で連続的に塗工するなどした後、適当な条件で加熱硬化させることにより本発明のシリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体が得られる。
【0084】
発泡剤(D)として気体を用いる場合には、まず、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)および気泡調整剤などの任意成分の混合液を撹拌混合して調整し、樹脂原料とする。次に、この樹脂原料と気体である発泡剤(D)とを密閉状態で共存させてから好ましくは0.001〜50MPa程度の範囲内、より好ましくは0.01〜40MPa程度の範囲で圧縮する。直ちに圧縮された樹脂原料をミキサーに移送し、高速撹拌する。このとき、気体は樹脂原料中に分散する。次に、気体が分散した樹脂原料を加圧する。加圧後に得られた樹脂原料を型枠内に、圧入などの手段によって入れる、もしくはベルトコンベア上で連続的に塗工するなどした後、加熱することにより本発明のシリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体が得られる。加圧条件,加熱条件は発泡倍率や粘度により変わるので、適宜調整する。泡立ち(分散させる気体量)と泡立ち後の気泡の維持の点から、例えば室温(23℃)でB型粘度計を用い4rpmで測定した液状樹脂組成物の粘度は、100〜3,000P(ポイズ)が好ましく、300〜1500Pの液状樹脂組成物がより好ましい。粘度が100Pより低いと、破泡して好適な発泡体が得られない場合があり、3,000Pよりも高いと、気体の分散不良を起こす場合がある。
【0085】
発泡剤(D)として、気体および液体または固体を用いる場合には、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、液体または固体である発泡剤(D)および気泡調整剤などの任意成分の混合液を攪拌混合して調整し、樹脂原料とする。この樹脂原料に、気体である発泡剤(D)を上記と同様の方法で分散させ、発泡体を得る。
【0086】
成形時の発泡体の形状としては、特に限定するものではないが、例えば板状、シート状、不定形塊状、ビーズ状、あるいは袋状や寝具の形状に成形したものなどが挙げられる。
【0087】
以上のようにした本発明の発泡体は、柔軟性が高く、また、温度差による硬度変化の小さいため、寝具として好適に使用することができる。寝具としては、頭部を支持するいわゆる枕、抱き枕、腰枕、脚枕、首枕、目枕、尻枕、三角枕等の枕類、マットレス、敷きパッド等のマットレス類が挙げられる。枕類、マットレス類等の寝具として使用する場合は、そのまま、あるいは発泡成形時に形成される表皮層を切除したり、適当な形状に切り出したりしたものを枕、マットレス、その他寝具として使用することができる。上記で得られた発泡体単独で使用してもよいが、発泡体の特徴である温度による硬度変化が小さいことを生かす範囲であれば、未発泡体であるプラスチック、発泡倍率の異なる発泡体、フィルム、布、不織布、紙等の素材と一体成形して用いても良く、発泡体の表面に綿、アクリル繊維、毛、ポリエステル繊維等でできた織布や不織布を、張り合わす、縫合する等して組み合わせて使用しても良い。この様に組み合わせることで、発泡体の触感をさらに良好にし、さらに、高温・多湿時の発汗時にこの組み合わされた生地によって、寝具に吸汗作用を施すこともできる。
【0088】
本発明の発泡体、および枕類、マットレス類等の寝具の形状としては、特に限定されるものではないが、長方形、正方形、円形、楕円形、ひし形などの多角形や、短冊状やドーナツ型の内部がくりぬいてあるもの、表面に任意の凹凸を付けたもの等が挙げられる。ただし、通気性を効果的に発現させることが必要な場合、表皮層を切除するか、もしくは表皮層に開孔部を設けるか、貫通孔をあけることが好ましい。
【0089】
以上のようにして得られる本発明の寝具は、温度差による使用感の変化が小さいため、四季を通じて快適に使用することができる。
【実施例】
【0090】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例中の測定、評価は、次の条件・方法により行った。なお、特にことわりがない場合、実施例および比較例の部や%は重量基準である。
【0091】
<アスカーFP硬度測定法>
発泡体の硬さは、試料を測定温度で3時間以上養生した後、ASKER FP型硬度計をそっと載せて、その指示値により評価した。試料によっては、経時的に指示値が下がっていく場合もあるため、該硬度計を載せた直後の値を読み取った。
【0092】
<反発弾性評価>
反発弾性は、JISK6400−3に準拠して測定を行い、反発弾性率を算出した。反発弾性の測定には、呼び5/8の鋼球(直径16±0.5mm、質量16±0.5g)を、回転させずに試験片に落下させる方法にて行った。鋼球の落下高さは500±0.5mmであり、跳ね返った高さの測定は、鋼球の最上部の位置とした。得られた測定結果から、以下の式(3)を用いて反発弾性率を算出した。
R=(L−16)/500×100 (3)
式中、Rは反発弾性率(%)であり、Lは測定時の跳ね返り高さ(mm)である。
【0093】
<使用化合物>
実施例・比較例においては、表1に示す化合物を用いた。
【0094】
【表1】

(実施例1)
100部の重合体B−1に対して、シリカ(商品名:ニップシールSS−50A、東ソー・シリカ(株)製)を25部、さらに酸化防止剤(商品名:IRGANOX245、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を1部配合し、撹拌・混合した。また、別に100部の重合体B−1に対して炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製MCコートS−20)200部および上記と同様の酸化防止剤を1部配合し、撹拌・混合した。それぞれの混合物をそれぞれ混合物B−1a、混合物B−1bとした。
【0095】
重合体B−1を950g、混合物B−1aを1,000g、混合物B−1bを750g混合し、さらに、硬化剤A−1を40.33g、遅延剤マレイン酸ジメチル(ナカライテスク(株)製)および3−メチル−1−ペンチン−3−オール(日信科学工業(株)製オルフィンP)をそれぞれ29.78μL、403.93μL加え、触媒C−1を900μL配合し、減圧下で脱泡することにより樹脂原料を得た。
【0096】
機械発泡機を用いて、発泡剤の導入圧力を0.41MPaに設定し、発泡剤D−1を上記で得た樹脂原料に導入してから高速攪拌させることにより水アメ状樹脂組成物を得た。この水アメ状樹脂組成物を型枠に注入し、140℃の温度に設定したオーブンにて30分程度加熱硬化させることにより、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体を得た。得られた発泡体の密度は206kg/mであった。得られた発泡体の評価結果は表2に示す。
【0097】
【表2】

(実施例2)
100部の重合体B−2に対して、発泡剤D−2を7.5部、触媒C−2を0.08部加えて十分に混合し、さらに、硬化剤A−2を13部添加してすばやく混合した。この混合物を型枠に注入し、40℃に設定したオーブンで60分加熱硬化し、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体を得た。得られた発泡体の密度は171kg/mであった。また、得られた発泡体の評価結果は表2に示す。
【0098】
(実施例3)
100部の重合体Bに対して、発泡剤Dを7.7部、触媒Cを0.03225部加えて十分に混合し、さらに、硬化剤Aを12部添加してすばやく混合した。この混合物を型枠に注入し、40℃に設定したオーブンで60分加熱硬化し、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体を得た。得られた発泡体の密度は526kg/mであった。また、得られた発泡体の評価結果は表2に示す。
【0099】
(比較例1)
ポリウレタン発泡体を使用した枕(商品名:テンピュール(登録商標)ネックピロー、テンピュール社製)を実施例1と同様に評価し、結果を表2に示した。
【0100】
以上の結果より、本発明の発泡体は、温度による硬度の変化が小さく、安定した柔軟性が得られること、また、特定の処方により、低反発弾性のものが得られることが理解される。
【0101】
(実施例4〜6)
実施例1〜3の材料を用いて枕およびマットレスを製造した。これらの枕およびマットレスを寝具として使用した結果、気温の低い状況でも寝心地がよく、また、体温で寝具の環境温度が上昇した場合でも、硬さと柔らかさの変化が小さく、安定した寝心地が得られる点で、良好な寝具であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
40℃におけるアスカーFP硬度と−20℃におけるアスカーFP硬度の差が30以下である、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体。
【請求項2】
前記シリコン系重合体が、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、を含んでなる液状樹脂組成物を硬化してなる請求項1記載の発泡体。
【請求項3】
重合体(B)が、数平均分子量10,000以上の直鎖状重合体である請求項1または2に記載の発泡体。
【請求項4】
重合体(B)の主鎖を構成する繰返し単位が、オキシプロピレンである請求項1〜3何れか一項に記載の発泡体。
【請求項5】
硬化剤(A)/重合体(B)(モル/モル)が1/2以上である請求項1〜4何れか一項に記載の発泡体。
【請求項6】
25℃におけるアスカーFP硬度が、50以下である請求項1〜5何れか一項に記載の発泡体。
【請求項7】
請求項1〜6何れか一項に記載の発泡体を使用してなる寝具。
【請求項8】
前記寝具が、枕類またはマットレス類である請求項7記載の寝具。

【公開番号】特開2009−114300(P2009−114300A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288218(P2007−288218)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】